説明

モータドライバを備えた機器、記録装置、閾値決定方法及びプログラム

【課題】モータドライバの温度性能を最大限に利用する。
【解決手段】所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、温度検出部にて検出された検出温度に応じ、モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する記録装置であって、相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性を、当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて複数の基準特性として予め記憶し、それら複数の基準特性のうち、温度検出部にて検出された検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、温度検出部にて検出された検出温度の中から、軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータドライバを有する機器、記録装置、閾値決定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータドライバは、モータを駆動させる機能のみを有するIC(Integrated Circuit)が一般的であった。しかし、近年では、モータを駆動させる機能に加え、DC(Direct Current)/DCコンバータや、リセット回路等のアナログ回路の機能を1チップICに集積化した複合的なモータドライバが一般的になってきている。
【0003】
一方、プリンタ等の記録装置においては、印字スピードの高速化が進んできていることから、モータドライバが昇温しやすくなっている。そのため、温度検出回路がモータドライバに内蔵され、その温度検出回路にて検出された温度の昇温状態を示す信号を出力できる記録装置が一般的になってきている。その信号としては、検出された温度に対応したアナログ電圧変動である構成や、サーマルシャットダウン時に出力レベルがデジタル的に反転出力される構成がある。なお、サーマルシャットダウンとは、モータドライバを過昇温から保護するために、モータドライバの動作を強制的に中止させることである。
【0004】
さらに最近では、過昇温となる直前の温度(プレサーマル温度)をレジスタ等に予め記憶しておき、モータドライバに内蔵された温度検出回路にて検出された温度がプレサーマル温度に達すると、モータドライバがその旨を示す信号を出力するという機能がある。以降、この機能のことをプレサーマル温度検出機能という。
【0005】
ここで、モータドライバを過昇温から保護するための他の技術が例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されている技術は、プリンタ、イメージスキャナー等の機器に実装されたモータドライバの動作条件や環境条件に応じ、サーマルシャットダウン温度の補正を行うというものである。
【0007】
特許文献1に開示されている技術では、機器内の不揮発性メモリにモータドライバのサーマルシャットダウンに関するランクテーブルを有している。なお、モータドライバのサーマルシャットダウン温度の補正は基本的に、機器の製造の際、または、工場出荷の際に行うことを前提としている。
【0008】
特許文献1に開示されている技術は、モータドライバを過昇温から保護することを目的としており、サーマルシャットダウンが発生したときは、機器の全ての動作が停止する。
【0009】
特許文献2に開示されている技術では、モータドライバの温度が第1の閾値を超える場合に、モータドライバの電源が切られる。また、モータドライバは温度検出手段を備えており、検出温度が第1の閾値よりも低い第2の閾値を超えると、モータドライバが所定のモータの駆動を停止するように制御される。
【0010】
特許文献3に開示されている技術では、モータドライバ回路の温度を検出するサーミスタが設けられている。なお、サーミスタは、モータドライバ回路の放熱用の足と同一ランド上に実装される。そして、サーミスタによって検出されたモータドライバ回路の温度と、予め設定された閾値温度との大小関係を比較し、その比較結果に基づいてモータの駆動電流値を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−143895号公報
【特許文献2】特開2003−220743号公報
【特許文献3】特開2004−330562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したプレサーマル温度検出機能を有する記録装置では、モータドライバからプレサーマル信号が出力された場合、モータドライバがモータの駆動をスローダウンさせたり、待ち時間を入れたりする。これにより、モータドライバの負荷が軽減される。つまり、モータドライバの温度が下がるのを待つことにより、モータドライバが過昇温から保護される。従って、モータドライバの過昇温によって記録装置が停止することはなく、動作を継続することができる。
【0013】
ここで、モータドライバに内蔵された温度検出回路は、製造工程のばらつき等により、±10℃程度の検出誤差を含んでいることがある。そのため、プレサーマル温度を検出するタイミングは、モータドライバの個体差に応じて異なる場合がある。この場合、モータドライバを過昇温から保護するシーケンス(昇温プロテクトシーケンス)が開始される際のモータドライバの実際の温度は、モータドライバの個体差に応じて異なることとなる。従って、モータドライバの推奨動作温度を満足するためには、モータドライバの個体差を考慮してプレサーマル温度を低めに設定せざるを得ない。
【0014】
プレサーマル温度を低めに設定すると、モータドライバの温度が実際にはプレサーマル温度に達していなくても、昇温プロテクトシーケンスが開始されてしまう可能性がある。この場合、モータドライバの温度性能を最大限に利用することができないという問題点がある。
【0015】
上述した特許文献2に開示されている技術では、ICチップの個体差に応じた温度検出方法は考慮されておらず、特許文献2に開示されている技術を用いても上述した問題点は解決されない。
【0016】
また、上述した特許文献3に開示されている技術では、モータドライバ回路の放熱用の足と同一ランド上に実装されたサーミスタを用いてモータドライバ回路の温度を検出している。つまり、モータドライバ自体の温度を検出しておらず、製造工程のばらつき等に起因する検出誤差に加えて、モータドライバ自体の温度との検出誤差が含まれてしまう可能性がある。さらに、別途サーミスタを設けていることからコストが上昇してしまう。
【0017】
本発明は、モータドライバの温度性能を最大限に利用することを可能にする記録装置、閾値決定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は、所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、前記温度検出部にて検出された検出温度に応じ、前記モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する記録装置であって、
相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性を、当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて複数の基準特性として予め記憶し、前記複数の基準特性のうち、前記検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する。
【0019】
また、上記目的を達成するために本発明の閾値決定方法は、所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、前記温度検出部にて検出された検出温度に応じ、前記モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する記録装置における閾値決定方法であって、
相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性として当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて予め記憶された複数の基準特性のうち、前記検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する決定処理を有する。
【0020】
また、上記目的を達成するために本発明のプログラムは、所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、前記温度検出部にて検出された検出温度に応じ、前記モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する記録装置に、
相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性として当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて予め記憶された複数の基準特性のうち、前記検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する決定機能を実現させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以上説明したように構成されているので、モータドライバの個体差を補正することができ、モータドライバの温度性能を最大限に利用することが可能となる。この効果は、何らコストアップ要因を含むことなく実現することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の記録装置の実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したモータドライバの構成の一例を示す図である。
【図3】図1及び図2に示したモータドライバに内蔵された温度検出回路の構成の一例を説明するための図である。
【図4】図1及び図2に示したモータドライバが備えるプレサーマル信号出力ブロックの一例を説明するためのブロック図である。
【図5】モータへの通電を開始してから、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれにおいてプレサーマル信号が出力されるまでの時間を計測した結果の一例を示す図である。
【図6】図1〜図4に示した記録装置がプレサーマル温度を決定する動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】図1及び図2に示したモータドライバが備える温度推移情報出力ブロックの一例を説明するためのブロック図である。
【図8】図7に示した温度推移情報出力ブロックから出力された温度推移情報の一例を示す図である。
【図9】モータへの通電を開始した後に、Typ品、Min品及びMax品に内蔵された温度検出回路にて検出された温度の推移の一例を示す図である。
【図10】図9に示した昇温カーブから接線の傾きを算出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の記録装置の実施の一形態の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態においては、近年、一般的になってきており、印刷機能以外の機能も備えたマルチファンクションプリンタを記録装置の一例として説明する。
【0025】
本実施形態の記録装置1は図1に示すように、スキャナユニット2と、コントローラ基板ユニット7と、プリンタユニット13と、操作/表示ユニット21と、インターフェイスユニット25とを備えている。
【0026】
スキャナユニット2は、LED(Light Emitting Diode)3と、LED3を駆動するためのLEDドライバ4と、受光イメージセンサであるCCD(Charge Coupled Device)5と、CCD5のアナログ信号をデジタル信号に変換するAFE(Analog Front End)6と、フラットベット(FB)スキャナキャリッジ(不図示)を駆動させるためのFBモータ17とを備えている。
【0027】
なお、本実施形態においてLEDドライバ4及びAFE6は、スキャナユニット2に実装されているが、これらはコントローラ基板ユニット7に実装されていてもよい。
【0028】
コントローラ基板ユニット7は、閾値変更部及び閾値決定部であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)8と、記憶部であるROM(Read Only Memory)9及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)11と、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)10と、モータドライバ12とを備えている。
【0029】
ASIC8は、CPU(Centeral Processing Unit)を内蔵したシステムLSI(Large Scale Integration)である。ASIC8は、CPUのペリフェラルとして標準的なA/D(Analog/Digital)コンバータ、タイマー(不図示)、割り込みコントローラ(不図示)等を備えている。さらに、ASIC8は、他のユニットを制御するためのハードウエアコントローラ(不図示)を備えている。また、ASIC8は、例えばJPEG(Joint Photographic Expert Group)画像を展開したり、AFE6から取り込んだRGB(Red Green Blue)信号を補正処理したり、印字データを展開したりするための各種のハードウエアモジュールを備えている。
【0030】
ROM9は、ASIC8をコントロールするためのファームウエアや、LUT(Look−Up Table)、モータ駆動用のテーブル等の固定値を記憶している。
【0031】
SDRAM10は、主にワーク用メモリとして用いられる。具体的には例えば、ファームウエアを展開したり、各種画像データ処理の中間データを一時的に記憶したりするためのメモリとして用いられる。
【0032】
EEPROM11は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。EEPROM11には、印字履歴や印字ヘッドのクリーニング回数等、着荷時からのトータルカウント数が必要なものが主に記録されている。
【0033】
モータドライバ12は、所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部である温度検出回路(不図示)を内蔵しており、モータドライバ12の温度はこの温度検出回路にて検出される。モータドライバ12は、ASIC8によって制御されるだけではなく、温度検出回路にて検出された検出温度を示す情報をASIC8へ出力する。ASIC8は、モータドライバ12から出力された温度を示す情報に応じ、モータドライバ12の負荷を軽減するための軽減動作である昇温プロテクトシーケンスを開始する。なお、温度検出回路の詳細については後述する。
【0034】
ここで、モータドライバ12からASIC8へ出力される情報は、後述する実施例に応じて異なる。具体的には、第1の実施例においてこの情報は、温度検出回路にて検出された検出温度が閾値温度であるプレサーマル温度に達したことを示すプレサーマル信号である。また、第2の実施例においてこの情報は、温度検出回路にて検出された検出温度の推移を示す温度推移情報である。プレサーマル信号及び温度推移情報の詳細については後述する。
【0035】
図2は、図1に示したモータドライバ12の構成の一例を示す図である。図2の図中の円で囲まれた“M”はDCモータを示している。DCモータとは例えば、上述したFBモータ17等である。
【0036】
マルチファンクションプリンタが備えるモータドライバ12は図2に示すように、例えば4軸のDCモータを駆動する機能を有している。さらに、DC/DCコンバータ3チャンネルとリセット回路とが内蔵されていることが多い。これは、モータドライバと言うよりはパワー系のアナログICである。図2の図中の“VM”は入力電源を示しており、モータドライバ12の動作中は32V程度の電圧が入力される。なお、DC/DCコンバータの電源に関しても同一のVMから変換を行う。
【0037】
再度、図1を参照すると、プリンタユニット13は、記録用紙にインクを吐出するためのプリントヘッド14と、環境温度測定部であるサーミスタ15と、センサ部16と、CRモータ18と、LFモータ19と、ASFPFモータ20とを備えている。
【0038】
サーミスタ15は、記録装置1の周囲の環境温度を測定する。ASIC8は、サーミスタ15にて測定された環境温度に基づいて吐出エネルギーを調整する。
【0039】
センサ部16は、アナログセンサを含む各種センサ類を備えている。プリンタユニット13においては、用紙の給紙・搬送・排紙動作、プリントヘッド14の副走査方向のスキャン、及び、プリントヘッド14のクリーニング等の多くのメカニカルな動作が行われる。そのため、プリンタユニット13は、センサ部16のセンサ類(例えば、エンコーダ、フォトインタラプタ、反射型センサ(不図示)等)を用いてそのメカニカルな動作を制御する。
【0040】
CRモータ18は、テンションベルト(不図示)によって張架されているプリントヘッド14を移動させるためのモータである。
【0041】
LFモータ19は、用紙の搬送を行うためのモータである。
【0042】
ASFPFモータ20は、給紙ユニット(不図示)から用紙を給紙したり、プリントヘッド14のクリーニングユニット(不図示)を動作させたりするためのモータである。
【0043】
操作/表示ユニット21は、コントローラ24と、コントローラ24によって制御されるLCD(Liquid Crystal Display)22及び操作部23とを備えている
インターフェイスユニット25は、各種インターフェイスの機能を有し、USB(Universal Serial Bus)インターフェイス26と、カードスロット27と、DSC(Digital Still Camera)インターフェイス28とを備えている。
【0044】
USBインターフェイス26は、ホストコンピュータ(不図示)との接続に利用される。
【0045】
カードスロット27は、CFカードや、SDカード等のフラッシュメモリ型の記録媒体からデータを読み出すためのカードリーダーである。カードスロット27を用いることにより、ホストコンピュータを接続していなくても、記録装置1単独で記録媒体に記憶されたデータに基づく画像等を印字することができる。また、カードスロット27は、ホストコンピュータを接続した際にはカードリーダーして用いることができる。
【0046】
DSCインターフェイス28は、デジタルカメラから直接印字を行うためのUSBホストインターフェイスであり、通常、PictBridgeに準拠している。また、DSCインターフェイス28は、赤外線通信による無線通信にも対応しており、赤外線モジュールを搭載した携帯端末等から転送されたデータを受信することができる。
【0047】
ここで、上述したようにモータドライバ12の温度は、モータドライバ12に内蔵された温度検出回路によって検出される。以下に、モータドライバ12に内蔵された温度検出回路の構成について説明する。
【0048】
図3は、図1及び図2に示したモータドライバ12に内蔵された温度検出回路の構成の一例を説明するための図である。
【0049】
図1及び図2に示したモータドライバ12は図3に示すように、モータに電圧を印加するための4つのFET(Field Effect Transister)から構成されるHブリッジ29を備えている。なお、モータドライバ12は、4つのモータの駆動軸(図3ではA〜D軸と表記している)を同時に駆動できるため、Hブリッジ29と同様の構成のHブリッジ30〜32を備えている。
【0050】
また、モータドライバ12は、温度を検出し、検出した温度を示す情報を出力する温度検出素子33〜37と、出力素子38とを備えている。温度検出素子33〜37と出力素子38とによってモータドライバ12の温度検出回路が構成されている。
【0051】
温度検出素子33〜36のそれぞれは、Hブリッジ29〜32に示す各駆動軸の近傍に設置されており、ある駆動軸だけが頻繁に駆動される場合でも、その駆動軸の近傍で温度検出を行うため、正確な温度検出を行うことができる。
【0052】
温度検出素子37は、駆動軸全体、及び、DC/DCコンバータの温度を検出するための素子である。
【0053】
出力素子38は、温度検出素子33〜37からの複数の出力を1つの出力にまとめ、温度検出回路にて検出された検出温度を示す温度情報として出力する。
(第1の実施例)
【0054】
本実施例では、温度検出回路にて検出された検出温度がプレサーマル温度に達すると、モータドライバ12からASIC8へプレサーマル信号を出力する場合について説明する。
【0055】
本実施例においてモータドライバ12は、プレサーマル信号を出力するためのプレサーマル信号出力ブロックを備えている。
【0056】
図4は、図1及び図2に示したモータドライバ12が備える信号出力部であるプレサーマル信号出力ブロックの一例を説明するためのブロック図である。
【0057】
プレサーマル信号出力ブロック39は、設定レジスタ40と、比較部42と、判定部43と、出力部44とを備えている。なお、プレサーマル信号出力ブロック39は、図3に示した温度検出素子33〜37及び出力素子38にて構成される温度検出回路41から出力される温度情報を受け付ける。
【0058】
設定レジスタ40は、ロジック回路からなり、駆動軸の使用軸数と、プレサーマル温度とを記憶する。
【0059】
比較部42は、設定レジスタ40に記憶されたプレサーマル温度と、温度検出回路41から出力された温度情報が示す検出温度とを比較する。
【0060】
判定部43は、比較部42における比較結果から、モータドライバ12の温度がプレサーマル温度に達したかどうかの判定を行う。
【0061】
出力部44は、判定部43においてモータドライバ12の温度がプレサーマル温度に達したと判定された場合、ASIC8へプレサーマル信号を出力する。そして、ASIC8は、割り込み(Interrupt)検出などの方法により、モータドライバ12の温度がプレサーマル温度に達したことを認識し、昇温プロテクトシーケンスを開始する。
【0062】
本実施例においては、まず、記録装置1の開発段階において、既知の検出誤差を含んで温度を検出する基準温度検出部である温度検出回路が内蔵された以下の(1)〜(3)に示すモータドライバを予め用意しておく。
【0063】
(1)検出誤差の無い温度検出回路が内蔵されたモータドライバ(以降、Typ品という)
(2)+10℃の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出回路が内蔵されたモータドライバ(以降、Min品という)
(3)−10℃の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出回路が内蔵されたモータドライバ(以降、Max品という)
上記、Typ品、Min品及びMax品は、モータドライバ12のプレサーマル温度を決定するための基準として用いられる基準モータドライバとなる。
【0064】
そして、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれを搭載した記録装置において、モータの軸が回転しない状態にした上で、モータに通電する。つまり、基準モータドライバは、モータの軸が回転しない状態という所定の動作条件で動作を開始することとなる。なお、モータの軸が回転しない状態は、プリントヘッドを走査範囲の端に設けた壁に突き当てている状態によって最も容易に実現できるが、LFモータ、またはASFPFモータを機械的にロックしてもよい。
【0065】
また、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれを搭載した記録装置としては、記録装置のメカ的な負荷や、モータのトルクがセンター値にあるものを使用し、記録装置1と比べて温度の検出誤差以外の誤差ができるだけないものを用いる。
【0066】
図5は、モータへの通電を開始してから、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれにおいてプレサーマル信号が出力されるまでの時間を計測した結果の一例を示す図である。
【0067】
ここでは、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれに記憶されたプレサーマル温度を120℃としている。また、図5は、室温が25℃に保たれた環境試験室で行われた測定結果を示している。つまり、環境温度を25℃としている。
【0068】
また、図5においては、Typ品、Min品及びMax品の実際の温度を図中上部に示している。また、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれにおいて、モータへの通電を開始してからプレサーマル信号が出力されるまでの時間を図中下部に示している。つまり、通電を開始してから、Typ品、Min品及びMax品に内蔵された温度検出回路のそれぞれがプレサーマル温度を検出するまでの経過時間が図中下部に示されている。
【0069】
以降、この経過時間のことを基準経過時間という。基準経過時間は、Typ品、Min品及びMax品に内蔵された温度検出回路のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性を示す基準特性となる。また、Typ品の基準経過時間を「Ttyp」と表記し、Min品の基準経過時間を「Tmin」と表記し、Max品の基準経過時間を「Tmax」と表記する。
【0070】
図5を参照すると、Typ品では、記憶されたプレサーマル温度と同じ120℃に到達した時点でプレサーマル信号が出力される。また、Min品では、110℃に到達した時点でプレサーマル信号が出力される。つまり、Typ品の場合よりも早くプレサーマル信号が出力される。一方、Max品では、130℃に到達した時点でプレサーマル信号が出力される。つまり、Typ品の場合よりも遅くプレサーマル信号が出力される。
【0071】
このように、記録装置1の開発段階において、相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出回路が内蔵されたTyp品、Max品及びMin品を予め用意する。
【0072】
そして、図5に示したようなTyp品、Max品及びMin品の基準経過時間と、それらに内蔵された温度検出回路の検出誤差のそれぞれとを対応付けた温度ランク判定用テーブルを生成する。
【0073】
そして、記録装置1のROM9またはEEPROM11に、温度ランク判定用テーブルと基準経過時間が計測されたときの環境温度とが記憶された状態で記録装置1の組み立てを行う。なお、上述したように、ROM9はファームウエア等を記憶するため、EEPROM11は印字枚数のカウントや印字ヘッドのクリーニング回数のカウント等を記憶するために、既に用いられている。そのため、温度ランク判定用テーブルを記憶させるための新たなメモリを用意する必要はない。
【0074】
以下に、上記のように構成された記録装置1においてプレサーマル温度を決定する動作について説明する。
【0075】
図6は、図1〜図4に示した記録装置1がプレサーマル温度を決定する動作を説明するためのフローチャートである。なお、図6に示すフローチャートは温度検出回路41の検出誤差が±10℃以内であることを前提としたものである。
【0076】
なお、ここでは、設定レジスタ40にプレサーマル温度として120℃が記憶されているものとする。また、記録装置1のモータは、温度ランク判定用テーブルの基準経過時間が計測されたときと同一の状態、つまり、モータの軸が回転しない状態にされているものとする。
【0077】
まず、ASIC8は、サーミスタ15にて測定された記録装置1の環境温度と、基準経過時間を計測したときの環境温度との差分に応じ、温度ランク判定用テーブルの基準経過時間にオフセット値を付加する。これにより、複数の基準経過時間のそれぞれが補正される(ステップS1)。
【0078】
次に、ASIC8は、モータに通電を開始する。これにより、モータドライバ12は、モータの軸が回転しない状態、つまり、温度ランク判定用テーブルの基準経過時間が計測されたときと同一の状態で動作を開始することとなる。
【0079】
ASIC8は、モータへの通電の開始とともに、タイマーを起動させる(ステップS2)。以上の動作により、ASIC8は、モータドライバ12から出力されるプレサーマル信号の待ち受け状態となる。
【0080】
そして、ASIC8は、モータドライバ12から出力されたプレサーマル信号を受け付けると、タイマーを停止する(ステップS3)。
【0081】
次に、ASIC8は、タイマーの経過時間がTmin以上でTtypと同等の時間範囲よりも短いかどうかを判定する(ステップS4)。なお、Ttypと同等の時間範囲は予め決めておけばよい。
【0082】
ステップS4における判定の結果、タイマーの経過時間がTmin以上でTtypと同等の時間範囲よりも短い場合、ASIC8は、温度ランク判定用テーブルを用いることにより、温度検出回路41の検出誤差がMin品の検出誤差である+10℃と判定する(ステップS5)。そして、モータへの通電を停止する。
【0083】
そして、ASIC8は、設定レジスタ40に記憶されているプレサーマル温度を130℃に変更する(ステップS6)。
【0084】
さらに、ASIC8は、設定レジスタ40に記憶されているプレサーマル温度をEEPROM11に記憶させ(ステップS7)、処理を終了する。
【0085】
一方、ステップS4における判定の結果、タイマーの経過時間がTtypと同等の時間範囲以上である場合には、ASIC8は、タイマーの経過時間がTtypと同等の時間範囲であるかどうかを判定する(ステップS8)。
【0086】
ステップS8における判定の結果、タイマーの経過時間がTtypと同等の時間範囲である場合、ASIC8は、温度ランク判定用テーブルを用いることにより、温度検出回路41の検出誤差がTyp品の検出誤差である±0℃と判定する(ステップS9)。そして、モータへの通電を停止する。
【0087】
そして、ASIC8は、設定レジスタ40に記憶されているプレサーマル温度を120℃にし(ステップS10)、ステップS7の動作へ遷移して処理を終了する。なお、ここでは、設定レジスタ40には、当初からプレサーマル温度として120℃が記憶されている。そのため、設定レジスタ40に記憶されているプレサーマル温度を改めて120℃に上書きしてもよいし、上書きしなくてもよい。
【0088】
一方、ステップS8における判定の結果、タイマーの経過時間がTtypと同等の時間範囲よりも長い場合には、ASIC8は、温度ランク判定用テーブルを用いることにより、温度検出回路41の検出誤差がMax品の検出誤差である−10℃と判定する(ステップS11)。そして、モータへの通電を停止する。
【0089】
そして、ASIC8は、設定レジスタ40に記憶されているプレサーマル温度を110℃に変更する(ステップS12)。つまり、温度検出回路41に−10℃の検出誤差があるため、モータドライバ12の実際の温度は、温度検出回路41にて検出された検出温度よりも高くなる。この場合、モータドライバ12の推奨動作温度を外れ、モータドライバ12が劣化したり、破壊したりする可能性がある。そのため、プレサーマル温度を10℃下げて110℃に変更し、モータドライバ12が過昇温にならないようにする。そして、ステップS7の動作へ遷移して処理を終了する。
【0090】
次回、記録装置1を起動した際には、上述したステップS7の動作によってEEPROM11に記憶されたプレサーマル温度がモータドライバ12の設定レジスタ40に書き込まれる。これにより、モータドライバ12の温度性能を最大限に利用できる。
【0091】
なお、上述した動作は、記録装置1の着荷時等のイニシャル動作において実行されることが望ましい。
(第2の実施例)
【0092】
上述した第1の実施例では、温度検出回路41にて検出された検出温度がプレサーマル温度に達すると、モータドライバ12からASIC8へプレサーマル信号を出力する場合について説明した。
【0093】
本実施例においては、温度検出回路41にて検出された検出温度の推移を示す温度推移情報を、モータドライバ12からASIC8へ出力する場合について説明する。
【0094】
本実施例においてモータドライバ12は、温度推移情報を出力する温度推移情報出力ブロックを備えている。
【0095】
図7は、図1及び図2に示したモータドライバ12が備える温度推移情報出力ブロックの一例を説明するためのブロック図である。
【0096】
温度推移情報出力ブロック61は、温度検出回路41から出力された温度情報を受け付ける。そして、温度推移情報出力ブロック61は、受け付けた温度情報が示す温度の推移を温度推移情報としてアナログの電圧レベル信号でASIC8のA/Dコンバータへ出力する。
【0097】
図7において、定電流源62は、直列に接続された3つのダイオード63の電源である。
【0098】
ダイオード63には、定電流源62によって3段分の電圧が発生し、ダイオード63の順方向電圧(VF)の変化で出力電圧が変化する。
【0099】
図8は、図7に示した温度推移情報出力ブロック61から出力された温度推移情報の一例を示す図である。
【0100】
ダイオード63の順方向電圧(VF)は、温度に対して反転するため、温度推移情報は図8に示すような形のアナログの電圧レベル信号となる。ASIC8は、この電圧レベル信号をA/Dコンバータを用いてデジタル多値に変換する。
【0101】
本実施例においても、第1の実施例と同様に、Typ品、Min品及びMax品を予め用意しておき、Typ品、Max品及びMin品のそれぞれを搭載した記録装置において、モータの軸が回転しない状態にした上で、モータに通電する。
【0102】
図9は、モータへの通電を開始した後に、Typ品、Min品及びMax品に内蔵された温度検出回路にて検出された温度の推移の一例を示す図である。ここでは、環境温度を25℃としている。以降、図9に示すような温度の推移のことを昇温カーブという。
【0103】
図9において、例えば110℃における昇温カーブの接線の傾きは、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれで異なることが分かる。同様に120℃、130℃においても、昇温カーブの接線の傾きは、Typ品、Min品及びMax品のそれぞれで異なることが分かる。
【0104】
これを利用し、所定の温度におけるTyp品、Min品及びMax品のそれぞれの昇温カーブの接線の傾きと、温度検出回路41にて検出された検出温度の昇温カーブの所定の温度における接線の傾きとを比較する。これにより、温度検出回路41の特性が、Typ品、Min品及びMax品に内蔵された温度検出回路のいずれに近い特性かを判定することができる。なお、所定の温度とは例えば、100℃、110℃、120℃、130℃等である。
【0105】
図10は、図9に示した昇温カーブから接線の傾きを算出する方法を説明するための図である。
【0106】
図10に示すように、接線の傾きKは、所定のサンプリング間隔でサンプリングした2点間の温度差から求めることができる。図10に示す方法からもわかるように、昇温カーブの所定の温度における接線の傾きは、所定の温度における時間微分値である。
【0107】
そこで、Typ品、Min品及びMax品に内蔵された温度検出回路のそれぞれにて検出された温度の推移の所定の温度における時間微分値である基準時間微分値と、それぞれの検出誤差とを対応付けた温度ランク判定テーブルを生成する。そして、記録装置1のROM9またはEEPROM11に温度ランク判定用テーブルが記憶された状態で記録装置1の組み立てを行う。
【0108】
なお、基準時間微分値は、第1の実施例において説明した基準経過時間と同様に、Typ品、Min品及びMax品に内蔵された温度検出回路にて検出された温度の時間変化による特性を示す基準特性となる。
【0109】
以下に、上記のように構成された記録装置1がプレサーマル温度を決定する動作について説明する。
【0110】
本実施例において、記録装置1がプレサーマル温度を決定する動作は、第1の実施例の場合と類似している。ここでは、記録装置1のモータは、温度ランク判定用テーブルの基準時間微分値が算出されたときと同一の状態、つまり、モータの軸が回転しない状態にされているものとする。
【0111】
まず、ASIC8は、温度推移情報出力ブロック61からアナログの電圧レベル信号で出力された温度推移情報を受け付ける。なお、温度検出回路41は±10℃程度の検出誤差を含んでいる可能性があるため、130℃付近まで温度推移情報を受け付ける。
【0112】
次に、ASIC8は、受け付けた温度推移情報が示す昇温カーブの所定の温度における接線の傾き、すなわち所定の温度における時間微分値を算出する。なお、図8に示したように、温度推移情報出力ブロック61から出力された温度推移情報が示す昇温カーブは反転されている。そのため、ASIC8は、元の状態に戻した上で、時間微分値を算出する。また、時間微分値を算出する際には、基準時間微分値を算出したときと同じサンプリング間隔を用いる。
【0113】
次に、ASIC8は、算出された時間微分値が温度ランク判定テーブルのTyp品、Min品及びMax品の基準時間微分値のいずれに近似するかを判定する。
【0114】
そして、ASIC8は、判定結果をEEPROM11に記憶させる。
【0115】
次回、記録装置1を起動した際には、温度推移情報出力ブロック61から出力される温度推移情報と、EEPROM11に記憶された判定結果とに応じ、モータドライバ12の昇温に対する制御が行われる。
【0116】
具体的には、算出された時間微分値がMin品の基準時間微分値と近似するという判定結果であった場合、温度推移情報が示す温度が130℃に達すると、ASIC8は昇温プロテクトシーケンスを開始する。また、算出された時間微分値がMax品の基準時間微分値と近似するという判定結果であった場合、温度推移情報が示す温度が110℃に達すると、ASIC8は昇温プロテクトシーケンスを開始する。また、算出された時間微分値がTyp品の基準時間微分値と近似するという判定結果であった場合、温度推移情報が示す温度が120℃に達すると、ASIC8は昇温プロテクトシーケンスを開始する。つまり、判定結果に従ってプレサーマル温度が決定されることとなる。
【0117】
なお、上述した動作は、第1の実施例と同様に、記録装置1の着荷時等のイニシャル動作において実行されることが望ましい。
【0118】
また、本実施例において温度推移情報出力ブロック61は、温度検出回路41とは別の構成としていたが、温度推移情報出力ブロック61は、温度検出回路41を兼ねていてもよい。
【0119】
このように本実施形態においては、相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する基準モータドライバの温度検出回路のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性が、それぞれの検出誤差と対応付けられて複数の基準特性として予め記憶される。そして、それら複数の基準特性のうち、温度検出回路41にて検出された検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、検出温度の中から、昇温プロテクトシーケンスを開始する際の温度が決定される。
【0120】
これにより、モータドライバの個体差を補正することができ、モータドライバの温度性能を最大限に利用することが可能となる。この効果は、何らコストアップ要因を含むことなく実現することができるものである。
【0121】
なお、モータドライバ12は、第1の実施例にて説明したプレサーマル信号出力ブロック39と、第2の実施例で説明した温度推移情報出力ブロック61との両方を備えていてもよい。その場合、プレサーマル信号出力ブロック39と温度推移情報出力ブロック61との切り替えは、設定レジスタ40への設定によって選択できるようにすればよい。
【0122】
また、本実施形態においては、プレサーマル温度は、Typ品、Min品及びMax品に基づいた3段階としたが、これに限定されない。例えば、基準モータドライバを3つよりもさらに多く用意することにより、プレサーマル温度として設定可能な温度の段階数を増やすことができる。また、プレサーマル温度は、10℃刻みではなく、より細かくしてもよい。これらにより、より確実にモータドライバの温度性能を最大限に利用できる。
【0123】
また、本実施形態においては、マルチファンクションプリンタを記録装置1の一例として説明を行ったが、本発明は、プリンタ、スキャナ、複写機、ファックス、ディスク駆動装置(例えばハードディスク装置、コンパクトディスク(CD)やDVD(Digital Versatile Disc)等のメディアを駆動する装置)、ファンを駆動する機器、光学機器(ビデオカメラ、カメラ)等のモータドライバを有した装置(機器)に容易に適用できる。
【0124】
また、本発明においては、記録装置内の処理は上述の専用のハードウェアにより実現されるもの以外に、その機能を実現するためのプログラムを記録装置にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを記録装置に読み込ませ、実行するものであっても良い。記録装置にて読取可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、DVD、CDなどの移設可能な記録媒体の他、記録装置に内蔵されたHDDなどを指す。
【符号の説明】
【0125】
1 記録装置
2 スキャナユニット
3 LED
4 LEDドライバ
5 CCD
6 AFE
7 コントローラ基板ユニット
8 ASIC
9 ROM
10 SDRAM
11 EEPROM
12 モータドライバ
13 プリントユニット
14 プリントヘッド
15 サーミスタ
16 センサ部
17 FBモータ
18 CRモータ
19 LFモータ
20 ASFPFモータ
21 操作/表示ユニット
22 LCD
23 操作部
24 コントローラ
25 インターフェイスユニット
26 USBインターフェイス
27 カードスロット
28 DSCインターフェイス
29〜32 Hブリッジ
33〜37 温度検出素子
38 出力素子
39 プレサーマル信号出力ブロック
40 設定レジスタ
41 温度検出回路
42 比較部
43 判定部
44 出力部
61 温度推移情報出力ブロック
62 定電流源
63 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、前記温度検出部にて検出された検出温度に応じ、前記モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する記録装置であって、
相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性を、当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて複数の基準特性として予め記憶し、前記複数の基準特性のうち、前記検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
所定の温度を前記閾値温度として予め記憶し、前記検出温度が前記所定の温度に達すると、その旨を示す信号を出力する信号出力部と、
前記複数の基準温度検出部のそれぞれを内蔵した複数の基準モータドライバが所定の動作条件で動作を開始してから、当該複数の基準温度検出部のそれぞれが前記所定の温度を検出するまでの時間を、当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて複数の基準経過時間として記憶する記憶部と、
前記信号出力部から出力された信号を受け付ける閾値変更部と、を有し、
前記閾値変更部は、前記モータドライバが前記所定の動作条件で動作を開始してから、前記信号を受け付けるまでの時間を計測し、前記複数の基準経過時間のうち、前記計測された時間と近似する基準経過時間に対応する検出誤差の分だけ、前記所定の温度を変更する記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、
前記記録装置の環境温度を測定する環境温度測定部を有し、
前記記憶部は、前記基準モータドライバが前記所定の動作条件で動作したときの環境温度を記憶し、
前記閾値変更部は、前記測定された環境温度と前記記憶された環境温度との差分に応じ、前記複数の基準経過時間のそれぞれを補正する記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録装置において、
前記複数の基準温度検出部のそれぞれを内蔵した複数の基準モータドライバが所定の動作条件で動作を開始した後に、当該複数の基準温度検出部のそれぞれが検出した温度の推移の所定の温度における時間微分値を、当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて複数の基準時間微分値として記憶する記憶部と、
前記モータドライバが前記所定の動作条件で動作を開始した後の前記検出温度の推移の前記所定の温度における時間微分値を算出し、前記複数の基準時間微分値のうち、前記算出された時間微分値と近似する基準時間微分値に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記閾値温度を決定する閾値決定部と、を有する記録装置。
【請求項5】
所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、前記温度検出部にて検出された検出温度に応じ、前記モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する機器であって、
相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性を、当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて複数の基準特性として予め記憶し、前記複数の基準特性のうち、前記検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する機器。
【請求項6】
所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、前記温度検出部にて検出された検出温度に応じ、前記モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する記録装置における閾値決定方法であって、
相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性として当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて予め記憶された複数の基準特性のうち、前記検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する決定処理を有する閾値決定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の閾値決定方法において、
前記モータドライバが所定の動作条件で動作を開始してから、前記検出温度が、前記閾値温度として予め記憶された所定の温度に達するまでの時間を計測する処理をさらに有し、
前記決定処理は、前記複数の基準温度検出部のそれぞれを内蔵した複数の基準モータドライバが前記所定の動作条件で動作を開始してから、当該複数の基準温度検出部のそれぞれが前記所定の温度を検出するまでの時間として当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて予め記憶された複数の基準経過時間のうち、前記計測された時間と近似する基準経過時間に対応する検出誤差の分だけ、前記所定の温度を変更する処理である閾値決定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の閾値決定方法において、
前記決定処理は、
前記記録装置の環境温度を測定する処理と、
前記測定された環境温度と、前記基準モータドライバが前記所定の動作条件で動作したときの環境温度との差分に応じ、前記複数の基準経過時間のそれぞれを補正する処理と、をさらに含む閾値決定方法。
【請求項9】
請求項6に記載の閾値決定方法において、
前記モータドライバが所定の動作条件で動作を開始した後の前記検出温度の推移の所定の温度における時間微分値を算出する処理をさらに有し、
前記決定処理は、前記複数の基準温度検出部のそれぞれを内蔵した複数の基準モータドライバが前記所定の動作条件で動作を開始した後に、当該複数の基準温度検出部のそれぞれが検出した温度の推移の前記所定の温度における時間微分値として当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて予め記憶された複数の基準時間微分値のうち、前記算出された時間微分値と近似する基準時間微分値に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記閾値温度を決定する処理である閾値決定方法。
【請求項10】
所定の検出誤差を含んで温度を検出する温度検出部を内蔵し、モータを駆動させるモータドライバを有し、前記温度検出部にて検出された検出温度に応じ、前記モータドライバの負荷を軽減するための軽減動作を開始する記録装置に、
相互に異なる既知の検出誤差を含んで温度を検出する複数の基準温度検出部のそれぞれにて検出された温度の時間変化による特性として当該基準温度検出部の検出誤差と対応付けて予め記憶された複数の基準特性のうち、前記検出温度の時間変化による特性と近似する基準特性に対応する検出誤差に基づき、前記検出温度の中から、前記軽減動作を開始する際の温度を閾値温度として決定する決定機能を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−11717(P2012−11717A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151948(P2010−151948)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】