説明

モータ制御装置及び画像形成システム

【課題】電力容量によって制限されるモータの駆動開始タイミングを、従来よりも早めることが可能な技術を提供する。
【解決手段】本発明が適用された複合機においては、加速駆動中の各モータの使用電流量について、駆動開始からピーク電流量に到達するまでの制御プロセスを終了したモータの使用電流量を、当該モータに現在供給されている電流量に推定し、上記制御プロセスを終了していないモータの使用電流量を、規定のピーク電流量に推定して、加速駆動中の各モータについての使用電流量の総計を、総使用電流量推定値として求める。そして、新規にモータを駆動する際には、上記総使用電流量推定値に、新規駆動するモータのピーク電流量を加算して、必要電流量を求め、必要電流量が上限値を超えている場合には、必要電流量が上限値以下となるまで待機し、必要電流量が上限値以下となった時点で、上記モータを新規駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモータを制御するモータ制御装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ機能、スキャナ機能及びコピー機能等を備えるディジタル複合機が知られている。この複合機には、ラインセンサを搬送するためのモータや、原稿をラインセンサによる読取位置に搬送するためのモータ、記録ヘッド(例えばインクジェットヘッド等)を主走査方向に搬送するためのモータ、及び、印刷用紙を記録ヘッドによる印刷位置に向けて副走査方向に搬送するためのモータ等、複数のモータが搭載されている。
【0003】
また、この複合機では、一度に全てのモータを動かす必要がないこと、及び、製品の小型化が求められていることから、上記複数のモータに供給可能な電力容量が、これらのモータについてのピーク電力の総和より小さい電源装置を用いて、上記複数のモータを制御することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このように電力容量の小さい電源装置を用いれば、複合機を小型化できると共に、安価に製品を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−109343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、容量の小さい電源装置を用いて、複数のモータを制御する従来装置では、次のような問題があった。図8は、従来装置によるモータの駆動態様(起動方法)を示した説明図である。
【0007】
図8に示すように、従来装置では、駆動中の各モータの使用電流量を、加速駆動中のモータについてはピーク電流量(図8太線参照)とみなし、定速駆動中のモータについてはゼロとみなして、駆動中の各モータについての使用電流量の総計を算出し、この総計を、加速中フラグレジスタに、レジスタ値として記憶している。尚、ここで定速駆動中のモータについての使用電流量をゼロとみなすのは、加速駆動中のモータに供給される電流量に対し、定速駆動中のモータに供給される電流量が微小であるためである。
【0008】
そして、新たなモータの起動要求がなされると(図8のモータC参照)、起動要求されたモータのピーク電流量とレジスタ値との加算値から、起動要求されたモータの駆動を開始したときに必要な電流量を求め、必要電流量が、電源装置の容量に対応じた上限値を超えているか否かによって、起動要求されたモータの駆動開始可否を判定している。
【0009】
そして、必要電流量が上限値を超えている場合には、必要電流量が上限値以下となるまで待機し、必要電流量が上限値以下となった時点で、該当モータの駆動を開始している。
しかしながら、このような手法で起動要求されたモータの駆動開始可否を判定する従来装置では、加速駆動中の各モータの使用電流量を、常時、最大(ピーク)電流量に推定するため、レジスタ値に記憶される総使用電流量が実際にモータに供給されている電流量よりも過大となる。従って、実際には起動要求されたモータの駆動を開始しても、電流量が上限値をオーバしないのにも拘らず、駆動開始可否が「否」と判定され、起動要求された
モータの駆動開始が遅れてしまうといった問題があった。
【0010】
尚、図8では、モータAのピーク電流量が値「4」、モータBのピーク電流量が値「4」、モータCのピーク電流量が値「5」である複合機において、モータA及びモータBの駆動中に、モータCの起動要求が入力された場合のモータCの駆動開始タイミングを示している。
【0011】
図8の例では、上限値が値「8」に設定されているため、モータA及びモータBが加速を終了するまでは、モータCの起動要求が入力されても、モータCの駆動を開始することができず、実際には、モータBの加速が後半に差し掛かってきた時点で、モータBに供給される電流量が十分に減少し、モータCの駆動を開始することができるのにも拘らず、従来手法では、モータCの駆動を開始することができないといった問題があった。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、複数のモータを制御対象とするモータ制御装置であって、これら複数のモータへ供給可能な電力容量が当該複数のモータについてのピーク電力の総和より小さい電源装置を用いて、制御対象の上記複数のモータを制御するモータ制御装置において、電力容量によって制限されるモータの駆動開始タイミングを、従来装置よりも早めることが可能な技術を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するためになされた本発明は、複数のモータを制御対象とし、これら複数のモータへ供給可能な電力容量が当該複数のモータについてのピーク電力の総和より小さい電源装置を用いて、制御対象の複数のモータを制御するモータ制御装置であって、制御手段と、推定手段と、ピーク電力記憶手段と、判定手段と、駆動開始指示手段とを備えるものである。
【0014】
制御手段は、上記制御対象とする複数のモータの内、駆動開始を指示されたモータの駆動を開始し、駆動中の各モータへ供給する電力を操作することにより、駆動中の各モータを制御する。一方、推定手段は、駆動中の各モータが使用する電力の総計である総使用電力を推定する。
【0015】
また、ピーク電力記憶手段は、上記制御対象とする複数のモータの夫々についてのピーク電力を記憶し、判定手段は、新規に駆動を開始すべきモータである開始対象モータのピーク電力記憶手段が記憶するピーク電力を、推定手段が推定した総使用電力に加算して得られる、開始対象モータ駆動開始時の必要電力と、電源装置の電力容量と、に基づき、開始対象モータの駆動可否を判定する。
【0016】
そして、駆動開始指示手段は、判定手段により駆動可と判定された開始対象モータの駆動開始を指示し、制御手段に、開始対象モータの駆動を開始させる。
また、上記推定手段は、駆動中の各モータの内、駆動開始からピーク電力に到達するまでの制御プロセスを終了したモータについては、当該モータの使用電力を、制御手段によって当該モータに現在供給されている電力と推定し、駆動中の各モータの内、制御プロセスを終了していないモータについては、当該モータの使用電力を、ピーク電力記憶手段が記憶する当該モータのピーク電力と推定して、駆動中の各モータについての使用電力の総計を、総使用電力であると推定する。
【0017】
このように構成されたモータ制御装置によれば、駆動中の各モータについての使用電力の推定方法を、駆動開始からピーク電力に到達するまでの制御プロセスを終了したか否かによって切り替え、これらの使用電力の総計である総使用電力の推定結果に基づき、開始対象モータの駆動可否を判定するので、一律に使用電力をピーク電力とみなして、総使用
電力を推定する従来装置よりも、迅速に開始対象モータの駆動を開始することができる。
【0018】
詳述すると、現実に即した総使用電力を求めるには、現在モータに供給されている電力の総計を求めればよいのであるが、単にモータに供給されている現在の電力の総計を求めるだけでは、これを、開始対象モータの駆動を開始してよいか否かの判断基準に用いることはできない。なぜなら、モータに供給される電力は、モータの加速度と相関があり、モータが静止状態から目標とする定速運動状態の速度まで加速される加速プロセスにおいて、モータに供給される電力は、徐々に増加し、加速プロセスの概ね中間地点でピークに到達するためである。
【0019】
即ち、駆動中のモータに供給される電力がピーク電力に到達しておらず、その後に供給される電力が増える状況下では、その増加分を考慮せず、開始対象モータの駆動を開始してしまうと、開始対象モータの駆動可否判定時においては、開始対象モータの駆動を開始しても容量オーバとならない場合であっても、いずれ容量オーバになってしまう。
【0020】
このため、従来装置では、加速中のモータの使用電力をピーク電力に評価し、容量オーバが生じないようにしていたのである。
しかしながら、この従来手法では、加速度がピークを迎え、電源装置から供給される電力が減少方向にあるモータの使用電力を、不必要に過大に評価するため、次に駆動を開始すべきモータの駆動開始タイミングが遅くなるといった問題があった。
【0021】
そこで、本発明では、ピーク電力を迎えていないモータについては、使用電力をピーク電力と推定し、ピーク電力を迎えたモータについては、使用電力を、実際にモータに供給される電力と推定して、総使用電力を導出するようにし、ピーク電力を迎えたモータの使用電力を、不必要に過大に、見積もらないようにしたのである。
【0022】
よって、本発明のモータ駆動装置によれば、電力容量によって制限されるモータの駆動開始タイミングを、従来装置よりも早めることができる。
ところで、上記モータ制御装置は、駆動開始からモータに供給される電力がピーク電力に到達するまでの所要時間の情報を、上記複数のモータの夫々について記憶する所要時間記憶手段を備え、駆動中の各モータの内、駆動開始からの経過時間が、所要時間記憶手段が記憶する所要時間を、上回るモータを、『駆動開始からピーク電力に到達するまでの制御プロセスを終了したモータ』であると判定し、駆動中の各モータの内、駆動開始からの経過時間が、所要時間記憶手段が記憶する所要時間を、下回るモータを、当該制御プロセスを終了していないモータであると判定して、上記手法で、総使用電力を推定する構成にすることができる(請求項2)。
【0023】
但し、『駆動開始からモータに供給される電力がピーク電力に到達するまでの所要時間』は、経時変化による負荷上昇等の様々な要因によって変化する。
そこで、上記モータ制御装置には、駆動開始からモータに供給される電力がピーク電力に到達するまでに要した時間を、複数のモータの夫々について計測する時間計測手段と、所要時間記憶手段が記憶する各モータの所要時間を、モータ毎に、時間計測手段により計測された当該モータについてのピーク電力に到達するまでに要した時間の計測値に基づき、更新する所要時間更新手段と、を設けるのが好ましい(請求項3)。
【0024】
このように構成されたモータ制御装置によれば、経時変化等に適切に対応して、高精度に、駆動中の各モータが『駆動開始からピーク電力に到達するまでの制御プロセスを終了したモータ』であるか否かを判定することができる。
【0025】
また、上記モータ制御装置には、モータのピーク電力を、複数のモータの夫々について
計測するピーク電力計測手段と、ピーク電力記憶手段が記憶する各モータのピーク電力を、モータ毎に、ピーク電力計測手段により計測された当該モータについてのピーク電力の計測値に基づき、更新するピーク電力更新手段と、を設けるのがよい(請求項4)。
【0026】
このように構成されたモータ制御装置によれば、経時変化等に適切に対応して、総使用電力を推定することができる。即ち、判定手段では、ピーク電力の誤差による影響を考慮して、電力不足が生じないように駆動可否の判定条件を厳しくするなどの対応を採る必要がなく、可能な限り迅速に、開始対象モータを起動することができる。
【0027】
また、本発明のモータ制御装置は、背景技術の欄で説明した複合機等の画像形成システムに適用されるとよい。
即ち、本発明のモータ制御装置は、『原稿を光学的に読み取る読取ユニットと、読取ユニットと読取対象の原稿との相対位置を変化させる搬送機構と、搬送機構に動力を与えるモータと、を備え、モータの駆動力により、読取ユニットと読取対象の原稿との相対位置を変化させて、読取対象の原稿を読み取る』読取装置と、『シートに画像を形成する記録ユニットと、記録ユニットを主走査方向に搬送するユニット搬送機構と、シートを副走査方向に搬送するシート搬送機構と、ユニット搬送機構に動力を与えるモータと、シート搬送機構に動力を与えるモータと、を備え、各モータの駆動力により、記録ユニットとシートとの相対位置を変化させて、シートに、読取装置が読み取った原稿を表す画像を形成する』画像形成装置と、を備える画像形成システムに適用されるとよい(請求項5)。
【0028】
この画像形成システムに、本発明のモータ制御装置を搭載し、読取装置及び画像形成装置が備える各モータを、本発明のモータ制御装置により制御すれば、読取装置が備えるモータ及び画像形成装置が備えるモータを動作させて、コピー機能に係る一連の処理(コピー処理)を実行する際に、当該一連の処理を迅速に行うことができ、コピー処理の実行速度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ディジタル複合機1の構成を表すブロック図である。
【図2】主制御部10にて実現される機能を示した機能ブロック図である。
【図3】各モータ起動処理タスクが実行する処理を表すフローチャートである。
【図4】各モータ起動処理タスクが実行するピーク電流量更新処理を表すフローチャートである。
【図5】各モータ起動処理タスクが実行するピーク後総計更新処理を表すフローチャートである。
【図6】複合機1によるモータの駆動態様を示した説明図である。
【図7】ADF読取処理時に印字を行う場合の各モータの駆動態様を示したタイムチャートである。
【図8】従来装置によるモータの駆動態様(起動方法)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。図1は、本発明が適用されたディジタル複合機1の構成を表すブロック図である。
本実施例の複合機1は、装置全体を統括制御する主制御部10を備えると共に、印字制御部20、読取制御部30、ADFモータ制御部40、SCNモータ制御部50、CRモータ制御部60、ASFモータ制御部70、及び、PFモータ制御部80を備える。
【0031】
更に、この複合機1は、ユーザ操作可能な操作キー群及び表示部を備えてユーザインタフェースとして機能する操作パネル90と、ネットワークを通じて外部の利用者端末(パーソナルコンピュータ等)と通信可能な通信インタフェース95と、を備える。
【0032】
また、この複合機1は、電源ケーブルから供給される交流電力を、所定電圧の直流電力に変換する電源装置100を備え、複合機1の各部は、この電源装置100からの電力供給を受けて動作する。
【0033】
詳述すると、主制御部10は、CPU11、CPU11が実行するプログラム等を記憶するROM13、CPU11によるプログラム実行時に作業領域として使用されるRAM15、及び、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリとしてのNVRAM17(フラッシュメモリ等)を備え、ROM13に記憶されたプログラムを実行することにより、装置全体を統括制御し、各種機能を実現する。例えば、主制御部10は、操作パネル90を通じて入力される指令や通信インタフェース95を通じて外部の利用者端末から受信した指令に従い、プリンタ機能、スキャナ機能及びコピー機能等を実現するための処理を実行する。
【0034】
一方、印字制御部20は、主制御部10から印字指令が入力されると、記録ヘッド21によるインク液滴の吐出制御を行うものである。記録ヘッド21は、周知のインクジェットヘッドと同様、ノズルからインク液滴を吐出して印刷用紙に画像を形成するものであり、印字制御部20は、インク液滴の吐出制御を行うことにより、記録ヘッド21に対向する印刷用紙に、主制御部10から指定された印刷対象の画像データに基づく画像を形成する。
【0035】
また、読取制御部30は、主制御部10から読取指令が入力されると、ラインセンサ31を駆動して、ラインセンサ31の読取動作を制御すると共に、ラインセンサ31による読取結果を表す画像データを、主制御部10に入力する構成にされたものである。この画像データは、主制御部10のRAM15に蓄積され、例えば、コピー機能に係る処理実行時に、印刷処理に供される。
【0036】
尚、ラインセンサ31は、周知のスキャナ装置と同様、主走査方向(ライン方向)に受光素子が複数個配列された構成にされており、読取制御部30からラインスタート信号が入力される度に、受光動作を開始し、更には、それまでの受光動作によって生成された1ライン分の画素信号を、読取制御部30に入力する構成にされている。ラインセンサ31から読取制御部30に入力される画素信号は、ディジタル変換されて、1ライン分の上記画像データとして、主制御部10に入力される。
【0037】
また、ADFモータ制御部40は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、ADF装置41に内蔵されたモータ(直流モータ)であるADFモータMT1を駆動することにより、ADF装置41が備える原稿搬送機構に動力を与え、原稿載置トレイ43に載置された原稿を、ラインセンサ31が固定配置された原稿読取位置に搬送し、更には、排紙トレイ45に排紙する構成にされたものである。具体的に、ADFモータMT1は、原稿を挟持して搬送するための各種ローラ47に接続されており、これらのローラ47を回転させることで、原稿に、副走査方向に移動する方向の動力を与える。
【0038】
ADFモータ制御部40は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、予め定められた目標プロファイルに従って、このADFモータMT1に対する操作量U(電流量)を求め、当該操作量Uに対応した電流量でADFモータMT1を駆動することにより、ADFモータMT1を制御し、原稿を、ラインセンサ31による原稿読取位置に定速搬送する。
【0039】
また、SCNモータ制御部50は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、ラインセンサ搬送機構51に内蔵されたモータ(直流モータ)であるSCNモータMT2を
駆動することにより、ラインセンサ搬送機構51が備えるラインセンサキャリッジ53に動力を与え、ラインセンサ31の受光素子配列方向(主走査方向)とは垂直な副走査方向に、キャリッジ53を搬送するものである。
【0040】
SCNモータ制御部50は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、予め定められた目標プロファイルに従ってSCNモータMT2に対する操作量U(電流量)を求め、この操作量Uに対応した電流量でSCNモータMT2を駆動することにより、SCNモータMT2を制御し、キャリッジ53を、副走査方向に定速搬送する。
【0041】
本実施例の複合機1は、この動作により、ラインセンサ31が搭載されたキャリッジ53を副走査方向に一定速度で移動させつつ、ラインセンサ31に一定時間間隔で主走査方向の読取動作を実行させて、ラインセンサ31に対向するプラテンガラス55上に載置された原稿を段階的に読み取る。
【0042】
但し、周知の複合機と同様に、ADF装置41による原稿搬送時、このようなラインセンサ31の搬送動作は行われず、ラインセンサ31は、所定位置に固定配置され、ADF装置41により搬送されてくる原稿を、プラテンガラス55を介して光学的に読み取る。
【0043】
以下では、ADF装置41により原稿を搬送して、原稿とラインセンサ31との相対位置を変化させ、原稿を読み取る処理を、「ADF読取処理」と表現し、ADF装置41を用いずユーザの手動によりプラテンガラス55に載置された原稿を、ラインセンサ31を搬送して読み取る読取処理を、「FB(フラットベッド)読取処理」と表現する。
【0044】
このADF読取処理は、ADF装置41に原稿が載置されたことがセンサ(図示せず)により検知され、その検知結果が主制御部10に入力されているときに、操作パネル90等を通じてユーザからスキャン指令やコピー指令が入力されると、実行され、FB読取処理は、ADF装置41に原稿が載置されていないときに、操作パネル90等を通じてユーザからスキャン指令やコピー指令が入力されると、実行される。
【0045】
また、CRモータ制御部60は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、記録ヘッド搬送機構61に内蔵されたモータ(直流モータ)であるCRモータMT3を駆動することにより、記録ヘッド搬送機構61が備える記録ヘッド21が搭載されたヘッドキャリッジ63に動力を与え、印刷用紙が搬送される副走査方向とは垂直な主走査方向に、キャリッジ63を搬送するものである。
【0046】
この記録ヘッド搬送機構61は、印刷用紙の搬送路上に設けられている。上記キャリッジ63は、CRモータMT3に接続されたプーリ64とアイドルプーリ65との間に巻回された無端ベルト67に固定され、CRモータMT3の回転に伴いプーリ64及び無端ベルト67が回転することにより、動力を受けて、印刷用紙上を主走査方向に移動する。
【0047】
このCRモータ制御部60は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、予め定められた目標プロファイルに従ってCRモータMT3に対する操作量U(電流量)を求め、操作量Uに対応した電流量でCRモータMT3を駆動することにより、CRモータMT3を制御し、キャリッジ63(ひいては記録ヘッド21)を主走査方向に定速搬送する。
【0048】
この他、ASFモータ制御部70は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、用紙搬送機構71に内蔵された給紙ローラ73に接続されたモータ(直流モータ)であるASFモータMT4を駆動することにより、ASFモータMT4に接続された給紙ローラ73を回転させて、給紙トレイ74に載置された印刷用紙であって給紙ローラ73に圧接された最上層の印刷用紙を、用紙搬送路へと供給するものである。
【0049】
このASFモータ制御部70は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、予め定められた目標プロファイルに従ってASFモータMT4に対する操作量U(電流量)を求め、操作量Uに対応した電流量でASFモータMT4を駆動することにより、ASFモータMT4を制御し、印刷用紙を、用紙搬送路に供給する。
【0050】
尚、印刷用紙は、給紙ローラ73の回転に伴い用紙搬送路に沿って移動し、搬送路下流に設置された停止状態にある一対のレジストローラ75に突き当てられて、従来装置と同様に、斜行補正される。また、上記一対のレジストローラ75に突き当てられた後、レジストローラ75の回転によって、一対のレジストローラ75の間に引き込まれ、これらのレジストローラ75に挟持されて、記録ヘッド21による印刷位置に搬送される。
【0051】
また、PFモータ制御部80は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、用紙搬送機構71に内蔵された上記レジストローラ75及び排紙ローラ77に接続されたモータ(直流モータ)であるPFモータMT5を駆動することにより、レジストローラ75及び排紙ローラ77を回転させて、レジストローラ75に突き当てられた印刷用紙を、引き込み、当該印刷用紙を、記録ヘッド21による印刷位置に向けて、副走査方向に送り出すものである。
【0052】
このPFモータ制御部80は、主制御部10から駆動開始指令が入力されると、予め定められた目標プロファイルに従ってPFモータMT5に対する操作量U(電流量)を求め、操作量Uに対応した電流量でPFモータMT5を駆動することにより、PFモータMT5を制御し、印刷用紙を、所定量、副走査方向に送り出す。
【0053】
即ち、本実施例の複合機1は、ASFモータ制御部70を通じて給紙トレイ74に載置された印刷用紙を、レジストローラ75の設置位置まで搬送し、印刷用紙をレジストローラ75に突き当てることにより斜行補正を行い、その後、PFモータ制御部80を通じて、印刷用紙を、一対のレジストローラ75の間に引き込み、レジストローラ75の回転により、印刷用紙を副走査方向に搬送して、印刷用紙の位置合わせ動作を行う。
【0054】
そして、上記位置合わせ後には、記録ヘッド21が主走査方向に移動して所定ライン分の印刷動作が行われる度、当該所定ライン分、PFモータ制御部80を通じて印刷用紙を副走査方向に搬送することにより、印刷用紙に一連の画像を形成する。
【0055】
例えば、複合機1は、操作パネル90等を通じてユーザからコピー指令が入力されると、ラインセンサ31を通じて読み取った原稿のコピー画像を、印字制御部20、CRモータ制御部60、ASFモータ制御部70、及びPFモータ制御部80を通じて、印刷用紙に形成する。この他、複合機1は、通信インタフェース95を通じて外部の利用者端末からプリント指令を受信すると、プリント指令と共に受信した印刷対象の画像データに基づく画像を、同様の手法で、印刷用紙に形成する。
【0056】
ところで、本実施例の複合機1には、電源装置100として、電力容量の小さい電源装置が設けられている。即ち、電源装置100の全電力容量の内、電源装置100が複数のモータMT1〜MT5へ供給可能な電力容量は、モータMT1〜MT5のピーク電力の総和より小さい。このため、本実施例の複合機1においては、モータMT1〜MT5へ供給する電力に不足が生じないように、主制御部10にて、各モータMT1〜MT5の駆動開始の可否を、駆動中の各モータMT1〜MT5に供給されている電力(詳細には、電力と等価な電流量)に基づいて判定するようにしている。
【0057】
図2は、プログラムの実行により主制御部10にて実現される機能を示す機能ブロック
図であって、モータの駆動開始に係る機能を示した図である。図2に示すように、本実施例の複合機1においては、プログラムの実行により、ADFモータ制御部40、SCNモータ制御部50、CRモータ制御部60、ASFモータ制御部70、及び、PFモータ制御部80の夫々に対し、モータ起動処理タスクが動作する。モータMT1〜MT5の駆動開始タイミングは、各モータMT1〜MT5に対応するモータ起動処理タスクにより制御される。
【0058】
これらの各モータ起動処理タスクは、プリンタ機能、スキャナ機能、及び、コピー機能等に係る一連の処理を統括する上位タスクの起動要求に応じて動作し、図3に示す処理を実行する。図3は、各モータのモータ起動処理タスクが、上位タスクから発せられる該当モータの起動要求に応じて実行する処理を表したフローチャートである。
【0059】
モータ起動処理タスクが実行する処理では、RAM15に記憶された該当モータのピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpの情報に基づき、該当モータの駆動開始の可否が判定され、所定条件が満足されると、駆動可と判定されて、上記モータ制御部40〜80の内、該当モータを制御するモータ制御部に、駆動開始指令が入力される。この動作により、駆動開始指令が入力されたモータ制御部は、制御対象のモータの駆動を開始し、予め定められた目標プロファイルに従って、モータを制御する。
【0060】
即ち、ADFモータ起動処理タスクは、上位タスクからADFモータMT1の起動要求が発せられると、図3に示す処理を実行し、RAM15に記憶されたADFモータMT1のピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpの情報に基づき、駆動開始指令を、ADFモータ制御部40に入力して、ADFモータMT1の駆動を開始させる。
【0061】
同様に、SCNモータ起動処理タスクは、上位タスクからSCNモータMT2の起動要求が発せられると、図3に示す処理を実行して、RAM15に記憶されたSCNモータMT2のピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpの情報に基づき、駆動開始指令をSCNモータ制御部50に入力して、SCNモータMT2の駆動を開始させる。
【0062】
この他、CRモータ起動処理タスクは、CRモータMT3の起動要求が発せられると、図3に示す処理を実行し、RAM15に記憶されたCRモータMT3のピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpの情報に基づき、駆動開始指令をCRモータ制御部60に入力して、CRモータMT3の駆動を開始させる。
【0063】
また、ASFモータ起動処理タスクは、ASFモータMT4の起動要求が発せられると、図3に示す処理を実行し、RAM15に記憶されたASFモータMT4のピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpの情報に基づき、駆動開始指令をASFモータ制御部70に入力して、ASFモータMT4の駆動を開始させ、PFモータ起動処理タスクは、PFモータMT5の起動要求が発せられると、図3に示す処理を実行し、RAM15に記憶されたPFモータMT5のピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpの情報に基づき、駆動開始指令をPFモータ制御部80に入力して、PFモータMT5の駆動を開始させる。
【0064】
尚、RAM15に記憶されるモータ毎のピーク電流量Ipの情報、及び、駆動開始からモータに供給される電流量がピークに到達するまでの所要時間を表すピーク到達時間Tpの情報は、複合機1の電源投入時にNVRAM17から読み出されてRAM15に記憶され、対応するモータ起動処理タスクにより、必要に応じて更新される。また、RAM15にて更新されたモータ毎のピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpの情報は、適宜、NVRAM17に書き込まれて、NVRAM17で記憶保持される。
【0065】
さて、起動要求を受けて動作するモータ起動処理タスクは、図3に示すように、まずR
AM15が記憶する総使用電流量推定値Itを読み込み(S110)、読み込んだ総使用電流量推定値Itと、RAM15が記憶する上記起動要求された自己が管理するモータ(以下、「管理モータ」と称する。)のピーク電流量Ipと、に基づき、管理モータ(起動要求されたモータ)の駆動を開始した場合の必要電流量Inを算出する(S120)。
【0066】
具体的には、総使用電流量推定値Itと、管理モータのピーク電流量Ipとの加算値It+Ipを、必要電流量Inとして算出する(In=It+Ip)。
また、この処理を終えると、上記算出した必要電流量Inが、上限値Imaxを超えているか否かを判断する(S130)。上限値Imaxは、電源装置100からモータMT1〜MT5に供給可能な電力容量に、予め設定されている。
【0067】
そして、必要電流量Inが上限値Imaxを超えていると判断すると(S130でYes)、管理モータの駆動可否を「否」と判定して、S135に移行し、総使用電流量推定値Itが更新されるまで待機する。そして、更新されると、S110に移行し、上述の処理を再度実行する。
【0068】
一方、算出した必要電流量Inが、上限値Imax以下であると判断すると(S130でNo)、モータ起動処理タスクは、起動要求された管理モータの駆動可否を「可」と判定して、S140に移行し、RAM15が記憶する総使用電流量推定値Itを、S120で算出した必要電流量Inに更新する。即ち、総使用電流量推定値Itを、管理モータのピーク電流量Ip分加算した値に更新する。
【0069】
この後、モータ起動処理タスクは、S150に移行して、モータ制御部40〜80の内、管理モータ(起動要求されたモータ)を制御するモータ制御部(以下、「対応モータ制御部」と称する。)に、駆動開始指令を入力することで、該当モータの駆動を、対応モータ制御部に開始させ、対応モータ制御部に、予め定められた目標プロファイルに従って、該当モータを制御させる。
【0070】
また、対応モータ制御部に駆動開始指令を入力した後には、当該駆動開始指令の入力を契機に指令入力先の上記対応モータ制御部で駆動が開始されたモータについて、駆動開始からモータに供給される電流量がピーク電力に到達するまでの制御プロセスが終了したか否かを判断する(S170)。
【0071】
そして、上記制御プロセスが終了していないと判断すると(S170でNo)、この制御プロセスが終了するまで繰返し、図4に示すピーク電流量更新処理を実行する(S160)。
【0072】
図4は、S160で実行されるピーク電流量更新処理を表すフローチャートである。この処理を開始すると、モータ起動処理タスクは、対応モータ制御部が求めた管理モータに対する最新の操作量U=Unを、対応モータ制御部から取得すると共に(S161)、管理モータの駆動開始からの経過時間Teの情報を、タイマから取得する(S163)。
【0073】
更に、上記取得した最新の操作量Unが、RAM15が記憶する管理モータのピーク電流量Ipを超えているか否かを判断する(S165)。操作量Uは、上述したように、モータに供給される電流量を表す。即ち、S165では、最新の操作量Unを用いて、管理モータに現在供給されている電流量が、ピーク電流量Ipを超えているか否かを判断する。
【0074】
そして、最新の操作量Unがピーク電流量Ipを超えていると判断すると(S165でYes)、RAM15が記憶する管理モータのピーク電流量Ipを、上記最新の操作量U
nに更新すると共に(S167)、RAM15が記憶する管理モータのピーク到達時間Tpを、S163で取得した経過時間Teに更新する(S169)。その後、ピーク電流量更新処理を終了する。一方、最新の操作量Unがピーク電流量Ip以下であると判断すると(S165でNo)、RAM15が記憶する管理モータのピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpを更新することなく、ピーク電流量更新処理を終了する。
【0075】
そして、S170では、駆動開始からの経過時間Teが、このようにして更新される管理モータのピーク到達時間Tpを超えたか否かを判断することにより、上記制御プロセスが終了したか否かを判断し、Te>Tpであるときには、制御プロセスが終了したと判断し(S170でYes)、Te≦Tpであるときには、制御プロセスが終了していないと判断する(S170でNo)。
【0076】
尚、この判断手法により、S169で繰返しピーク到達時間Tpが更新されている期間において、S170では、上記制御プロセスは終了していないと判断される。
そして、上記制御プロセスが終了したと判断されると(S170でYes)、モータ起動処理タスクは、終了条件が満足されるまで、図5に示すピーク後総計更新処理を繰返し実行する(S180,S190)。図5は、モータ起動処理タスクが実行するピーク後総計更新処理を表すフローチャートである。
【0077】
このピーク後総計更新処理を開始すると、モータ起動処理タスクは、S161での処理と同様、対応モータ制御部が求めた最新の操作量U=Unを、対応モータ制御部から取得すると共に(S181)、管理モータの駆動開始からの経過時間Teの情報を、タイマから取得する(S182)。
【0078】
更に、対応モータ制御部が管理モータを定速で駆動中(定速駆動中)であるか否かを判断する(S183)。
尚、モータを加速させるようにして駆動する加速駆動から定速駆動への切替タイミングは、目標プロファイルによって予め定まる。即ち、加速駆動から定速駆動への切替タイミングは、目標速度が定速となるタイミングにより定まる。
【0079】
従って、S183では、例えば、駆動開始からの経過時間Teが、モータの定速駆動が開始される時間以上であるか否かによって、対応モータ制御部が管理モータを定速駆動中であるか否かを判断する。
【0080】
そして、定速駆動中ではなく加速駆動中であると判断すると(S183でNo)、RAM15が記憶する総使用電流量推定値Itを、現在値から操作量減少分ΔU引いた値に更新する(S185)。
【0081】
It←It−ΔU
尚、ここでいう操作量減少分ΔUとは、今回のS181で取得した最新の操作量Unと、前回のS181で取得した操作量Upとの差分である(ΔU=Up−Un)。但し、S170での肯定判断後、初回のピーク後総計更新処理では、操作量Upを、S120で必要電流量Inを求める際に用いたピーク電流量Ip(更新前のもの)に設定して、ΔUを求める。換言すれば、操作量Upを、S140で総使用電流量推定値Itを更新する際に、更新前の値から加算したピーク電流量Ipに設定する。
【0082】
そして、S185での処理を終えると、ピーク後総計更新処理を終了する。
モータ起動処理タスクは、モータの加速駆動中、S180〜S190において、このような処理を繰返し実行することにより、ピーク電流量Ipに到達した管理モータの使用電流量を、管理モータに現在供給されている電流量(最新の操作量Un)に推定し、総使用
電流量推定値Itを更新する。
【0083】
一方、管理モータが定速駆動に切り替わることにより、S183で肯定判断すると、モータ起動処理タスクは、定速駆動への切り替わり直後であるか否かを判断し(S187)、切り替わり直後であると判断すると(S187でYes)、RAM15が記憶する総使用電流量推定値Itを、現在値から最新の操作量Un分引いた値に更新する(S189)。
【0084】
It←It−Un
その後、当該ピーク後総計更新処理を終了する。尚、モータ起動処理タスクは、S183での判断が否定から肯定に切り替わった後、初回のS187で、肯定判断してS189の処理を実行し、その後のS187では否定判断して、S189の処理を実行することなく、当該ピーク後総計更新処理を終了する。
【0085】
このような処理を実行することにより、モータ起動処理タスクは、定速駆動に切り替わったモータについての使用電流量(使用電力)をゼロに推定し、総使用電流量推定値Itを更新する(S189)。
【0086】
各モータ起動処理タスクは、このような内容のピーク後総計更新処理を、終了条件が満足されるまで繰返し実行し、終了条件が満足されると、一連の処理を終了して休止する。尚、モータ起動処理タスクは、S189の処理が実行された時点で、終了条件が満足されたと判断して休止する構成にすることができる。
【0087】
以上、各モータのモータ起動処理タスクが実行する処理について説明したが、このようにモータ起動処理タスクが動作すると、モータMT1〜MT5は、例えば、図6に示すように駆動される。
【0088】
図6は、本実施例の複合機1によるモータの駆動態様を示した説明図であり、モータA及びモータBの駆動中に、モータCの起動要求が入力された場合のモータCの駆動開始タイミングを示したものである。但し、図6では、モータAのピーク電流量Ipが値「4」、モータBのピーク電流量Ipが値「4」、モータCのピーク電流量Ipが値「5」、上限値Imaxが値「8」であるものとする。
【0089】
モータA及びモータB及びモータCは、上述したモータMT1〜MT5のいずれかに当てはめることができる。また、図6に示す各モータA,B,Cに対応するグラフの太線は、当該モータに対して推定される使用電流量を表す。図6最下段のグラフは、これら使用電流量の総計(総使用電流量推定値(It))を表したものである。
【0090】
上述したように、本実施例の複合機1においては、駆動開始からピーク電流量Ipに到達するまでの制御プロセスを終了したモータの使用電流量を、当該モータに現在供給されている電流量に推定し、上記制御プロセスを終了していないモータの使用電流量を、RAM15が記憶する当該モータのピーク電流量Ipに推定して、加速駆動中の各モータについての使用電流量の総計を、総使用電流量推定値Itに設定している。
【0091】
従って、この複合機1では、各モータA,B,Cの使用電流量を常にピーク電流量Ipに見積もって総使用電流量推定値Itを求める従来技術(図8参照)のように、総使用電流量推定値Itが、実際にモータに供給されている電流量よりも過大に見積もられてしまうことがない。従って、図6に示すように、モータCの起動要求から、モータCの駆動が実際に開始されるまでの起動遅れ時間を短縮することができる。
【0092】
即ち、図8に示すように、従来技術では、モータBの加速駆動が終了するまで、モータBの使用電流量がピーク電流量に推定されるため、モータCの駆動を開始しようとしても、必要電流量が値「9」となり、モータCの駆動を開始することができなかったが、本実施例の複合機1では、モータBの加速駆動後期において、総使用電流量推定値Itが、ピークから減少するので、モータBの加速駆動が終了するのを待たずに、総使用電流量推定値Itが、値「3」まで減少した時点で、ピーク電流量Ipが値「5」のモータCの駆動を開始することができ、結果として、モータCの起動遅れを短縮することができる。
【0093】
従って、本実施例の複合機1によれば、複数モータを用いた処理を迅速に行うことができ、製品の小型化及び性能維持を両立することができるのである。
ここで、コピー機能に係る処理が実行される場合、又は、スキャナ機能に係る処理及びプリンタ機能に係る処理が並列実行される場合を考える。図7は、ADFモータMT1を用いたADF読取処理時に、印刷用紙の搬送動作及び印字動作が行われる場合のADFモータMT1、ASFモータMT4、PFモータMT5、CRモータMT3の駆動態様を示したタイムチャートである。
【0094】
この場合には、ADFモータMT1の加速駆動中及びPFモータMT5の加速駆動中に、記録ヘッド21を搭載したキャリッジ63を、印刷開始位置に搬送するために、CRモータMT3の起動要求が上位タスクから発せられることがある。この際、本実施例の複合機1によれば、CRモータMT3の駆動を開始するまでの起動遅れ時間を短縮することができるので、キャリッジ63を迅速に、印刷開始位置に配置することができ、結果として、これらの処理の実行速度が向上することになる。
【0095】
また、本実施例の複合機1によれば、経時変化等によって負荷が上昇し、ピーク電流量Ipが上昇する場合やピーク到達時間Tpが長くなる場合を考慮して、ピーク電流量Ip及びピーク到達時間Tpを、計測結果に基づき逐次更新するようにした。従って、本実施例によれば、経時変化等にも適切に対応することができる。即ち、負荷上昇を見越して、電力不足を回避するために上限値Imaxを低めに設定する必要もなく、常に、迅速に起動要求されたモータを起動することができる。
【0096】
尚、「特許請求の範囲」に記載の各手段と、本実施例との対応関係は、次の通りである。即ち、ピーク電力記憶手段及び所要時間記憶手段は、RAM15及びNVRAM17に対応し、制御手段は、モータ制御部40〜80の一群に対応する。
【0097】
また、判定手段は、S130の処理により実現され、駆動開始指示手段は、S150の処理により実現され、推定手段は、モータ起動処理タスクで行われる総使用電流量推定値Itの更新動作(S140,S185,S189)により実現されている。
【0098】
この他、ピーク電力計測手段及び時間計測手段は、夫々、S161及びS163の処理により実現され、ピーク電力更新手段及び所要時間更新手段は、夫々、S167及びS169の処理により実現されている。
【0099】
また、読取ユニットは、ラインセンサ31に対応し、読取ユニットと読取対象の原稿との相対位置を変化させる搬送機構は、ADF装置41及びラインセンサ搬送機構51に対応し、この搬送機構に動力を与えるモータは、ADFモータMT1及びSCNモータMT2に対応する。
【0100】
この他、記録ユニットは、記録ヘッド21に対応し、ユニット搬送機構は、記録ヘッド搬送機構61に対応し、シート搬送機構は用紙搬送機構71に対応する。そして、ユニット搬送機構に動力を与えるモータは、CRモータMT3に対応し、シート搬送機構に動力
を与えるモータは、ASFモータMT4及びPFモータMT5に対応する。
【0101】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、本発明をディジタル複合機1に適用した例を説明したが、本発明は、複数のモータを備えるその他の種々の電気機器に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1…ディジタル複合機、10…主制御部、11…CPU、13…ROM、15…RAM、17…NVRAM、20…印字制御部、21…記録ヘッド、30…読取制御部、31…ラインセンサ、40…ADFモータ制御部、41…ADF装置、43…原稿載置トレイ、45…排紙トレイ、47…ローラ、50…SCNモータ制御部、51…ラインセンサ搬送機構、53…ラインセンサキャリッジ、55…プラテンガラス、60…CRモータ制御部、61…記録ヘッド搬送機構、63…ヘッドキャリッジ、64,65…プーリ、67…無端ベルト、70…ASFモータ制御部、71…用紙搬送機構、73…給紙ローラ、74…給紙トレイ、75…レジストローラ、77…排紙ローラ、80…PFモータ制御部、90…操作パネル、95…通信インタフェース、100…電源装置、MT1〜MT5…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータを制御対象とし、前記複数のモータへ供給可能な電力容量が前記複数のモータについてのピーク電力の総和より小さい電源装置を用いて、制御対象の前記複数のモータを制御するモータ制御装置であって、
前記複数のモータの内、駆動中の各モータが使用する電力の総計である総使用電力を推定する推定手段と、
前記複数のモータの夫々についてのピーク電力を記憶するピーク電力記憶手段と、
新規に駆動を開始すべきモータである開始対象モータの前記ピーク電力記憶手段が記憶するピーク電力を、前記推定手段が推定した総使用電力に加算して得られる、開始対象モータ駆動開始時の必要電力と、前記電源装置の電力容量と、に基づき、前記開始対象モータの駆動可否を判定する判定手段と、
前記判定手段により駆動可と判定されると、前記開始対象モータの駆動開始を指示する駆動開始指示手段と、
前記駆動開始指示手段により駆動開始を指示されたモータの駆動を開始し、駆動中の各モータへ供給する電力を操作することにより、前記駆動中の各モータを制御する制御手段と、
を備え、
前記推定手段は、前記駆動中の各モータの内、駆動開始からピーク電力に到達するまでの制御プロセスを終了したモータについては、当該モータの使用電力を、前記制御手段によって当該モータに現在供給されている電力と推定し、前記駆動中の各モータの内、前記制御プロセスを終了していないモータについては、当該モータの使用電力を、前記ピーク電力記憶手段が記憶する当該モータのピーク電力と推定して、前記駆動中の各モータについての前記使用電力の総計を、前記総使用電力であると推定すること
を特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
駆動開始からモータに供給される電力がピーク電力に到達するまでの所要時間の情報を、前記複数のモータの夫々について記憶する所要時間記憶手段
を備え、
前記推定手段は、前記駆動中の各モータの内、駆動開始からの経過時間が、前記所要時間記憶手段が記憶する所要時間を、上回るモータを、前記制御プロセスを終了したモータであると判定し、前記駆動中の各モータの内、駆動開始からの経過時間が、前記所要時間記憶手段が記憶する所要時間を、下回るモータを、前記制御プロセスを終了していないモータであると判定して、前記総使用電力を推定すること
を特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
駆動開始からモータに供給される電力がピーク電力に到達するまでに要した時間を、前記複数のモータの夫々について計測する時間計測手段と、
前記所要時間記憶手段が記憶する各モータの前記所要時間を、前記モータ毎に、前記時間計測手段により計測された当該モータについての前記ピーク電力に到達するまでに要した時間の計測値に基づき、更新する所要時間更新手段と、
を備えることを特徴とする請求項2記載のモータ制御装置。
【請求項4】
モータのピーク電力を、前記複数のモータの夫々について計測するピーク電力計測手段と、
前記ピーク電力記憶手段が記憶する各モータの前記ピーク電力を、前記モータ毎に、前記ピーク電力計測手段により計測された当該モータについての前記ピーク電力の計測値に基づき、更新するピーク電力更新手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項5】
原稿を光学的に読み取る読取ユニットと、前記読取ユニットと読取対象の原稿との相対位置を変化させる搬送機構と、前記搬送機構に動力を与えるモータと、を備え、前記モータの駆動力により、前記読取ユニットと読取対象の原稿との相対位置を変化させて、読取対象の原稿を読み取る読取装置と、
シートに画像を形成する記録ユニットと、前記記録ユニットを主走査方向に搬送するユニット搬送機構と、前記シートを副走査方向に搬送するシート搬送機構と、前記ユニット搬送機構に動力を与えるモータと、前記シート搬送機構に動力を与えるモータと、を備え、前記各モータの駆動力により、前記記録ユニットと前記シートとの相対位置を変化させて、前記シートに、前記読取装置が読み取った原稿を表す画像を形成する画像形成装置と、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のモータ制御装置と、
を備え、
前記モータ制御装置は、前記読取装置及び前記画像形成装置が備える各モータを、前記制御対象の各モータとして、制御する装置であること
を特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−239452(P2010−239452A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85995(P2009−85995)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】