説明

モータ制御装置

【課題】電力回生技術を光ディスク装置の応用しようとすると、スピンドルモータの回転数の制御性が悪くなる。
【解決手段】回生電力を蓄積する第1のコンデンサ9及び第2のコンデンサ10を選択的に接続する第1のスイッチ4、第2のスイッチ5、第3のスイッチ6、第4のスイッチ7及び第5のスイッチ8を、全体制御部13に指令により、モータ11の回転数に応じて切り替えることにより、電源1から印加される電圧に加算または減算することで、モータ11の目標回転数に制御する。この構成により、回生効率が高いモータ制御装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータの制御装置に関し、特に目標回転数にモータの回転数制御を高めることができるモータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、動画をDVDディスク等の光ディスクにデジタル信号で記録する例えばDVDレコーダが、従来のVTRに替わり広く普及しつつある。このDVDレコーダには、このような光ディスク装置の他にハードディスク装置も搭載される場合が多い。ハードディスク装置はその容量が光ディスク装置と比較しても格段に大きく、従って長時間の動画が記録でき、記録・消去・再生の動作が迅速に行える。しかしながらハードディスク装置は、記録媒体の取り出し、交換ができない。このため、好みの番組をとりあえずこのハードディスク装置に記録しておき、後で再生して視聴した後、不要なものは消去し、必要なものだけをDVD−RAM等の光ディスクに移して残すという使われ方がよく行われる。このような使われ方では、番組をハードディスク装置から光ディスクに編集記録するのに要する時間が短い方が好ましいのは言うまでも無い。
【0003】
従来このような光ディスク装置は、パーソナルコンピュータのデータ記録装置として使用される場合が大半であった。パーソナルコンピュータのデータは大半の場合それ程大きな容量ではなく、光ディスク装置の記録速度はそれ程は問題にならなかった。しかしながら、上述のような動画をデジタル記録したデータは非常に容量が大きく、光ディスク装置の記録速度が大きな問題となり、このため近年、高倍速での記録が行われるようになり、高回転数でディスクを回転させながら記録が行われる。再生の場合は、再生時のレーザーの出力はもともと5mW程度と小さく、また回転数が上がっても出力を増大させる必要もない。しかし、記録の場合はもともと数十mWの大きな出力が必要で、更に、概ね回転数に比例してレーザーの出力を増大する必要がある。レーザーの消費電力や発熱量そのものはドライブ全体からすればそれ程大きなものではないが、レーザーはディスク内外周に移動する光ピックアップに搭載されるので一般に十分な放熱対策を施すことができず、また、素子自体が通常のシリコンをベースとする半導体と比較し熱に弱く、このため、ドライブの内部の許容温度がこのレーザーで制限される場合が多い。前述のように、このレーザーの消費電力が高倍速化により非常に増大すると、レーザー自身の発熱によりレーザーの温度が上昇するため、ドライブ内部の他の部品の発熱量をより制限しなければならない。8000r.p.m程度の最高回転数で記録を行う場合、ドライブ内部の温度上昇はレーザーにとってほとんど限界に達しているドライブが多い。
【0004】
ディスクを回転させるスピンドルモータは、特にこのような高速回転や、Z―CLV制御で加減速を繰り返す場合、ドライブ内部の温度上昇の原因となる電力消費の大きな部分を消費する。このため、このスピンドルモータの消費電力の低減は大きな課題である。ところがこのモータ自体は既にかなり完成された技術であるため、有効な消費電力低減の方法が既に殆ど無いという問題点があった。
【0005】
このような問題点に対し、例えば特許文献1に記されているように、モータ回転数を減速させる際に余剰となる回転エネルギーをコンデンサ等に蓄積し加速の際に利用する、いわゆる電力回生により消費電力を低減させる方法が提案されている。この方法は、モータの加速減速を繰り返すDVD−RAM等のZ−CLV制御を行うディスク装置では特に有効な方法である。
【0006】
以下、特許文献1に開示されている技術について図を用いて説明する。図7は従来のディスク装置101のブロック図で、図8は図7に示したディスク装置101の制御および各部の電流、電圧のタイミングチャートである。図9は従来のディスク装置101の他のブロック図で、図10は図9に示したディスク装置101のタイミングチャートである。
【0007】
図7に示した磁気ディスク装置101のスピンドルモータ駆動部は、単相直流スピンドルモータ131と、コンデンサ111と、外部電源102と、コンデンサ111とスピンドルモータ131の端子の一方とを接続するスイッチ手段121と、スピンドルモータ回転数制御回路114と、コンデンサ111とスピンドルモータ回転数制御回路114の電源入力端子とを接続するスイッチ手段122で構成される。スイッチ手段121及び122は、例えばリレースイッチやパワーMOSトランジスタ等の半導体スイッチを用いることができるが、スイッチ駆動電力、スイッチオフ時の漏れ電流およびスイッチオン抵抗は小さいものが望ましい。
【0008】
記録再生時およびアイドル運転時は、スピンドルモータ回転数制御回路114によってスピンドルモータ131の回転数が所要の値になるように、スピンドルモータ131への電流を調整している。スピンドルモータ131の停止命令により、スピンドルモータ回転数制御回路114からスピンドルモータ131への電流を遮断すると同時もしくはそれより後にスイッチ手段121を接続し、スピンドルモータ131の惰性回転による逆起電力によりコンデンサ111を充電する。
【0009】
ここで図8に示すように、スピンドルモータ131の回転数の減少とともにスピンドルモータ131の逆起電圧は減少し、同時にコンデンサ111の端子間電圧は充電により増加して、これら2つの電圧が等しくなるまでコンデンサ111が充電される。従って、両者が一致した時点にスイッチ手段121を遮断することにより、コンデンサ111に蓄積されるエネルギが最大となる。予め測定やシミュレーションにより、スピンドルモータ131の逆起電力の経時変化およびコンデンサ111の端子電圧の経時変化を求めることにより、充電開始から上記の2つの電圧が一致するまでの時間を求めることが可能であり、この時間をスイッチ121の接続時間として制御を行う。
【0010】
コンデンサ111の充電に必要な時間は、コンデンサの容量とコンデンサとスピンドルモータで構成される回路の抵抗の積で決まる時定数に依存するため、スピンドルモータ131の逆起電力を効率よく充電するためには、この時定数がスピンドルモータ131の電流供給停止後の惰性回転時間よりも短いことが望ましい。充電後のコンデンサ電圧V1が外部電源102の電圧V0よりも低い場合、スイッチ手段121の遮断後、モータ始動命令によりスピンドルモータ131が始動する以前にスイッチ手段122を接続すると、コンデンサ111の電圧が外部電源102の電圧と等しくなるまで追充電が行われる。追充電によって消費されるエネルギは、コンデンサの容量をCとすると、
C(V0−V12/2 … (式1)
で表される。
【0011】
スピンドルモータ131の始動命令により、モータ回転数制御回路114からスピンドルモータ131へ電流が供給されると同時に、スイッチ手段122を接続してコンデンサ111よりモータ回転数制御回路114へ電流を供給する。ここでスイッチ手段122をスピンドルモータ131の始動後、コンデンサ111の電荷が十分に放出された時点で遮断することにより、外部電源102から供給する電流を抑制することができ、外部電源102に電池を用いた場合の内部抵抗による損失を抑制し、電池寿命を延長できる。
【0012】
スイッチ手段122の最適な接続−遮断時間は、予め測定やシミュレーションにより、スピンドルモータ131の始動時にスイッチ手段122を接続しない場合とスイッチ122を接続した場合とで、外部電源102からモータ回転数制御回路114に供給される電流の経時変化をそれぞれ求め、両者が一致するまでの時間として決定できる。また、スピンドルモータ131の始動時に、コンデンサ111から供給されるエネルギは、
CV02/2 … (式2)
で与えられ、V1がV0/2よりも大きく、さらに(式2)と(式1)との差が、スピンドルモータ131が停止している間におけるスイッチ手段121及び122の消費エネルギとコンデンサ111の漏れ電流等による損失分との和よりも大きい場合、モータ始動時の消費電力を低減することができる。
【0013】
図9に示したディスク装置101は、図7のディスク装置101にスイッチ手段123および電圧調整回路116を付加し、コンデンサ111を充電後、スイッチ手段123により電圧調整回路116の端子とコンデンサ111を接続する。電圧調整回路116は、予め設定した直流電圧、または任意の直流電圧を発生できる構造とする。電圧調整回路116の電圧をV2とおくと、V1とV2トの和がV0以上のときは追充電の必要はない。V1とV2との和がV0よりも低い場合、追充電によって消費されるエネルギは
C(V0−V1−V22/2 … (式3)
となり、スピンドルモータ131の始動時にコンデンサ111から供給されるエネルギは
CV12/2 … (式4)
となる。
【0014】
従って、V0とV2との差がV1/2よりも小さく、さらに(式4)と(式3)との差がスピンドルモータ131が停止している間のスイッチ手段121、122、123及び電圧調整回路116の消費エネルギとコンデンサ111の損失エネルギとの和よりも大きいとき、モータ始動時の消費電力を低減することができる。
【特許文献1】特開2003−189679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら特許文献1で開示されている方法では、上述した図7のディスク装置101の構成では、現実にはコンデンサ111に充電された逆起電力は放電させることができない。なんとなれば、コンデンサ111に充電された電力を放電する際、スイッチ122がONになり、コンデンサ111と外部電源102とが並列に接続されるが、コンデンサ111に充電された電圧は図8に示される通り、常に外部電源の電圧よりも低いからである。上述の数式は、外部電源の電圧よりも充電電圧が低くても放電が可能であるというありえない前提で立てられている。充電された逆起電力は放電させることができないので、いわゆる回生動作は期待できない。
【0016】
また、図9のディスク装置101では、回生動作は正常に行われるが、第一に、電圧調整回路は実際にはかなりの容量のものが必要で、通常では光ディスクドライブの基板の片隅に実装が可能な規模ではない。第二に、例えば光ディスクドライブでZ−CLV制御を行いながら記録を行う場合、回転数を迅速に変化させ、かつ、安定に精度よく目標回転数に到達しなければならない。ところが図9のディスク装置101では、モータの減速時の最初にはコンデンサの電圧は0Vなのでショートブレーキが作用し、そこそこの減速の加速度が得られるが時間の経過と共にコンデンサの電圧が上昇し、かつモータの回転数が減少し、これに比例して逆起電圧も減少するので、徐々に回生電流が減少し、これに比例するブレーキトルクも減少し、コンデンサの電圧と逆起電圧が同じになった時点で全くブレーキが効かない状態となってしまう。しかも通常、光ディスクドライブではショートブレーキよりも強いブレーキトルクが得られる逆転ブレーキも併用されるが、この構成では逆転ブレーキを使用することはできない。加速時は減速時と比較すると問題は少ないが、加速中に電圧が変動するのでサーボゲインが変動し、安定な制御をかけられないという問題を有する。これらに対する解決策についても何ら記述がない。
【0017】
本発明は、モータの回転数の制御性、高いブレーキトルク、及び回生効率が高いモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のモータ制御装置は、モータと、前記モータを回転駆動する駆動電流を供給する電源と、前記モータの回転数を減少させる時に当該モータの回転エネルギーを蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段で蓄積した回転エネルギを前記モータの回転駆動エネルギとして前記駆動電流に付加する制御手段とを備える。この構成により、電力回生技術をモータ制御装置の応用しながら、スピンドルモータの回転数の制御性が良好で、十分なブレーキトルクが実現でき、回生効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のモータ駆動装置における第1のコンデンサは通常電源電圧で充電されており、減速時、必要に応じて第2のコンデンサと直列にブレーキ電流を増大する方向に接続される。また、加速時にはやはり第2のコンデンサと直列に接続するため、第2のコンデンサに蓄積された回生電力を十分に充放電させることができ、回生効率を向上でき、かつ十分なブレーキトルクを得られるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
スピンドルモータの回転数の制御性がよく、特に十分なブレーキトルクが得られ、また、回生効率も良い電力回生装置を得るという目的を最小の部品点数で実現した。図1は本発明のモータ制御装置を光ディスク装置に応用した好まし一実施形態における要部構成図である。これはDVDレコーダ等に用いられるもので、DVD−RAM等、Z−CLV制御が必要な光ディスクへの高倍速での記録再生を行うため、スピンドルモータの消費電力を少しでも抑制する必要がある用途であり、本発明のモータ駆動装置の適用としては好ましい実施形態である。
【0021】
図1において1は電源、2は回転数制御部、3は回生制御部、4は第1のスイッチ、5は第2のスイッチ、6は第3のスイッチ、7は第4のスイッチ、8は第5のスイッチ、9は第1のコンデンサ、10は第2のコンデンサ、11はモータ、12は充電電圧検出部、13は全体制御部である。
【0022】
電源1は例えば12Vの一定の電圧を発生し、全体を動作させる電源として供給する。回転数制御部2は全体制御部13の指令により、モータ11に供給する電圧を制御し、モータ11の回転数を所定の回転数に制御する。回生制御部3は、第1のスイッチ4から第5のスイッチ8により構成され、これらをon−offすることにより第1のコンデンサ9と第2のコンデンサ10との接続を変え、回生動作を制御する。すなわち、第1のスイッチ4から第5のスイッチ8は回生制御部3の構成要素である。なお、これらのスイッチ類は、例えばD−MOSトランジスタ等の半導体素子により構成できる。第1のコンデンサ9は大容量の電解コンデンサ、または電気2重層コンデンサで、通常は第2のスイッチ5により電源1に接続された状態になっている。第2のコンデンサ10も同様に大容量の電解コンデンサ、または電気2重層コンデンサで、第5のスイッチ8及び第4のスイッチ7で接続が変えられるよう構成されている。モータ11はDCモータで、例えば3相ブラシレスDCモータ等が適用でき、ホール素子と半導体スイッチング素子による駆動回路を含んでいる。充電電圧検出部12で第2のコンデンサ10の電圧を測定し、全体制御部13に測定電圧を出力する。全体制御部13には充電電圧検出部12の出力及びモータ11の回転数等が入力され、このデータに基づき回転制御部2と回生制御部3とを制御し、回転数の制御が適正に行われるようにしつつ、回生動作を行う。
【0023】
以上のように構成された本実施形態における光ディスク装置の動作を説明する。まず、回生を行わない状態では、第1のスイッチ4はon、第2のスイッチ5はon、第3のスイッチ6はq側、第4のスイッチ7はs側、第5のスイッチ8はu側に設定する。図2は 回生を行わない状態での実質的な結線図であり、図2における電源1、回転数制御部2、回生制御部3、第1のコンデンサ9、第2のコンデンサ10、及びモータ11は図1と同じである。
【0024】
この状態では第1のコンデンサ9は電源1に直接接続された状態になっており、このため12Vの電圧で充電された状態になっている。この状態では常に12Vで充電電圧に変化はなく、第2のコンデンサ10は回路から切り離された状態となっている。また、回転制御部2の出力はモータ11に直接接続されている。このため回転制御部3はモータ11を直接制御し、この状態では上述したように第1のコンデンサ9の端子電圧は常に12Vで充電電圧に変化はなく、第2のコンデンサ10は回路から切り離されているので、回生動作は行われず、回転制御部2による通常の回転数制御が行われる。
【0025】
減速時には次の3種類の状態がある。第1の状態は前述の回生を行わない状態で、前述の場合と同様、第1のスイッチ4はon、第2のスイッチ5はon、第3のスイッチ6はq側、第4のスイッチ7はs側、第5のスイッチ8はu側に設定され、回生が行われず、回転制御部3はモータ11を直接制御することにより回転数を減速する。この状態を通常減速状態と称する。
【0026】
第2、第3の状態では回生動作により回転数を減速する。図3は回生動作による減速時の実質的な結線図で、同図Aは第2の状態、同図Bは第3の状態である。
【0027】
図3Aに示す第2の状態では、第1のスイッチ4はoff、第2のスイッチ5はon、第3のスイッチ6はq側、第4のスイッチ7はr側、第5のスイッチ8はu側に設定し、この状態をショートブレーキ状態と称する。図3Aは、このショートブレーキ状態における等価回路図である。図3Aより明らかなように、この状態では回転制御部2はモータ11から切り離され、第2のコンデンサ10がモータ11に接続される。第2のコンデンサ10に充電されていた電圧Vc2aが、モータ11の起電圧Vmrよりも低ければ、その電圧差により回生電流Ir1が流れ、第2のコンデンサ10が充電される。同時に、この回生電流Ir1にモータ11のトルク乗数Ktを乗じた値のトルクが、ブレーキトルクTB1として作用し、モータ11の回転数を減速する。ブレーキ開始時に第2のコンデンサ10に充電されていた電圧が0Vであれば、ブレーキ開始時は通常の制御、いわゆるショートブレーキと同じブレーキトルクが発生する(以下、ショートブレーキ状態と称する)。
【0028】
しかし、ブレーキトルクTB1は回生電流Ir1に比例し、これは第2のコンデンサ10の電圧により大きく変動し、最初に第2のコンデンサ10に充電されていた電圧Vc2aがモータ11の起電圧Vmrよりも高ければ、逆にモータを加速してしまうことになる。これについては後ほど詳しく説明するが、上述のショートブレーキ状態の条件によっては、この減速方法が常に使用できるわけではないことは以上の説明でも明らかである。
【0029】
第3の状態では、第1のスイッチ4はoff、第2のスイッチ5はoff、第3のスイッチ6はp側、第4のスイッチ7はr側、第5のスイッチ8はu側に設定され、この状態を逆転ブレーキ状態と称する。図3Bは、この逆転ブレーキ状態における等価回路図である。図3Bより明らかなように、この状態では回転制御部2はモータ11から切り離され、第2のコンデンサ10と第1のコンデンサ9とがモータ11に直列に接続される。第1のコンデンサ9は電源1により12Vに充電されている。これがモータ11と直列に接続され、極性も回生電流を大きくする方向なので、第2のコンデンサ10に充電されていた電圧Vc2aがモータ11の起電圧Vmr+12Vよりも低ければその電圧差により回生電流Ir2が流れ、第2のコンデンサ10が充電される。同時に、この回生電流Ir2にモータ11のトルク乗数Ktを乗じた値のトルクが、ブレーキトルクTB2として作用し、モータ11の回転数を減速する。第1のコンデンサ9に充電されていた電圧12Vにより、ショートブレーキ状態よりも大きな回生電流が流れ、その結果大きなブレーキトルクが発生する。実質的にモータ11は第1のコンデンサ9に充電されていた電圧12Vにより逆回転方向に駆動されている(以下、逆転ブレーキ状態と称する)。ブレーキトルクTB2は回生電流Ir2に比例し、これは第2のコンデンサ10の電圧により大きく変動するのはショートブレーキ状態と同様であり、最初に第2のコンデンサ10に充電されていた電圧Vc2aがモータ11の起電圧Vmr+12Vよりも高ければ、逆にモータを加速してしまうことになるのも同様ではあるが、第1のコンデンサ9の充電電圧12Vの分、より広い範囲で使用可能である。
【0030】
減速時には以上3種類の状態を、状況により使い分けて使用することになるが、この使い分けの方法について説明する。図4A及び同図Bは、ショートブレーキ状態及び逆転ブレーキ状態における時間と各電圧との関係を示すグラフである。モータ11の起電圧はモータ11の回転数に正比例するが、図4A及び同図Bに示したグラフは傾向を説明するもので絶対値を示す必要は無いため、各グラフ中のモータ11の起電圧の曲線や、値は回転数の変化曲線や値と考えても差し支えない。
【0031】
図4Aは、前述のショートブレーキ状態におけるモータ11の起電圧と第2のコンデンサ10の充電電圧との経時の関係を示している。モータ11は回生電流によるブレーキトルクにより時間の経過とともに回転数が減少し、起電圧も減少する。一方、第2のコンデンサ10は回生電流により充電され、端子電圧が上昇する。このため、この間回生電流は減少し、これに比例してブレーキトルクも減少する。そのままこの状態を続けると、第2のコンデンサ10の端子電圧とモータ11の起電圧とは等しくなる。この状態で回生電流は0となる。この状態を減速可能な限界回転数とする。この状態を更に続けると、回生電流によるブレーキトルクは働かないが、ディスクの風損やモータ11の軸ロス等により、モータ11の回転数は更に減少する。これによりモータ11の起電圧は第2のコンデンサ10の端子電圧より低くなり、第2のコンデンサ10から放電され、モータ11が正方向に駆動されるようになる。この状態では減速加速度は当然非常に小さく、また回生電力が無駄に消費されるので、このような状態は避けなければならない。また、一方で減速時間は直接シークタイムに影響するので、ある値以下でなければならない。この減速可能な限界回転数及び減速時間は、減速開始時の回転数、目標回転数、第2のコンデンサ10の初期電圧、容量、モータ11の逆起電圧定数、コイル抵抗及び回転部の慣性モーメントより計算することができる。
【0032】
図4Bは、前述の逆転ブレーキ状態でのモータ11の起電圧と、第2のコンデンサ10の充電電圧、第1のコンデンサ9の充電電圧、及びモータ11の起電圧と第1のコンデンサ9の充電電圧との合計電圧とのそれぞれの経時の関係を示している。ショートブレーキ状態の場合と同様、モータ11は回生電流によるブレーキトルクにより、時間の経過とともに回転数が減少し、起電圧も減少する。また、第1のコンデンサ9も放電し、電圧が減少する。一方、第2のコンデンサ10は回生電流により充電され、端子電圧が上昇する。このため、ショートブレーキの場合と同様に、この間回生電流は減少し、これに比例してブレーキトルクも減少する。そのままこの状態を続けると、第2のコンデンサ10の端子電圧とモータ11の起電圧は等しくなる。この状態で回生電流は0となる。この状態を同様に減速可能な限界回転数とする。この状態を更に続けると、同様に第2のコンデンサ10から放電されるようになり、この状態は前述したショートブレーキ状態と同様に避けなければならない。また、減速時間は直接シークタイムに影響するので、ある値以下でなければならないのも同様である。
【0033】
ショートブレーキの場合と異なるのは、第1のコンデンサ9の充電電圧のため回生電流が大きく、大きな減速加速度が得られ、減速時間が短時間になる点と、前述の減速可能な限界回転数が低く、低い回転数まで使用可能な点である。しかしながら、逆転ブレーキは振動や騒音が増大する傾向があり、ショートブレーキで目的が達せられる限り使用は避けた方が良い。この減速可能な限界回転数及び減速時間は、ショートブレーキの場合と同様に、減速開始時の回転数と目標回転数、第2のコンデンサ10の初期電圧、容量、第1のコンデンサ9の初期電圧、容量、モータ11の逆起電圧定数、コイル抵抗、回転部の慣性モーメントより計算することができる。よって、全体制御部13より目標回転数が指示されると、減速開始時の回転数と第2のコンデンサ10の初期電圧とを計測し、このデータとコンデンサの容量等固定のパラメータとにより、この減速可能な限界回転数及び減速時間を計算し、最適な減速方法を選択する。
【0034】
図5は、減速方法選択の手順のフローチャートである。図1の全体制御部13が減速を指示すると、まず目標回転数を入力し<ステップ50>、現状の回転数を測定する<ステップ51>。これはモータ11より出力されているFG等により測定する。回転数を制御する目的に使用されるモータは、一般にこのような回転数を測定するための信号が出力されている。次に、充電電圧検出部12により第2のコンデンサ10の充電電圧を測定する<ステップ52>。次に、ショートブレーキ時の限界回転数を計算し、指示された目標回転数がこれ以下かどうかを判定する<ステップ53>。目標回転数がショートブレーキ時の限界回転数以下であれば、ショートブレーキ時の減速時間を計算し、ある限界値以内に納まっているかどうかを判定する<ステップ54>。これがある限界値以内であれば、ショートブレーキ状態に各SWを設定することにより、ショートブレーキを選択する<ステップ55>。
【0035】
このように、指示された目標回転数がショートブレーキ時の限界回転数以下で、しかもショートブレーキ時の減速時間が、ある限界値以内であれば、ショートブレーキを使用する。<ステップ53>または<ステップ54>のいずれかがNOであれば、逆転ブレーキの条件で同様の判定を行う<ステップ56>。即ち、<ステップ53>または<ステップ54>の判定のいずれかがNOであった場合、<ステップ56>で逆転ブレーキ時の限界回転数を計算し、指示された目標回転数が限界回転数以下かどうかを判定する。目標回転数が逆転ブレーキ時の限界回転数以下であれば、逆転ブレーキ時の減速時間を計算し、ある限界値以内に納まっているかどうかを判定する<ステップ57>。<ステップ57>で計算した減速時間がある限界値以内であれば、逆転ブレーキ状態に各SWを設定することにより逆転ブレーキを選択する<ステップ58>。
【0036】
このように、<ステップ53>または<ステップ54>の判定のいずれかがNOの場合(すなわち、ショートブレーキが使用できないと判定された場合)、逆転ブレーキの条件での判定を行い、逆転ブレーキ時の限界回転数以下で、しかも逆転ブレーキ時の減速時間がある限界値以内であれば、逆転ブレーキを使用する。いずれかがNOであれば、即ち<ステップ56>または<ステップ57>の判定のいずれかがNOであれば、通常減速状態に各SWを設定することにより通常減速とする。
【0037】
減速方法が決定されるとそれぞれの接続により減速が開始され、回転数が目標回転数に近づく。通常減速状態の場合はそのまま目標回転数まで減速するが、ショートブレーキ状態と逆転ブレーキ状態の場合は、目標回転数の1.2倍程度の回転数に達した時点で通常減速状態に切り替える。これは、そのまま減速を続けると、回転数が0になってしまう点と、仮にこのような回生状態で回転数を制御する構成を設けたとしても、精密な回転数制御を行うには減速加速度を正確に制御する等の複雑な構成が必要で、現実的ではない点とからである。
【0038】
このように減速方法を切り替えて選択して使用し、また目標回転数近くでは通常の制御とすることにより、回生動作を行いながらも常に適正な時間内に精度よく減速することができる。また、特に逆転ブレーキ状態では大きな減速加速度が得られ、また通常より低い回転数まで電力回生を行うことができるので回生効率がよい。
【0039】
次に、加速時の動作について説明する。加速時には第1のスイッチ4はoff、第2のスイッチ5はon、第3のスイッチ6はq側、第4のスイッチ7はr側、第5のスイッチ8はt側に設定される。図6は 加速状態の、実質的な結線図である。図6より明らかなように、この状態では回転制御部2はモータ11から切り離され、第2のコンデンサ10が電源1に直列に接続され、これがモータ11に接続される。第1のコンデンサ9は電源1と並列に接続されるため実質的な動作はしない。第2のコンデンサ10は、回生電力が充電され、ある電圧になっている。これが電源1に直列に接続され、これがモータ11に接続され、極性も駆動電流を増大する方向であるため、加速時には通常よりも大きな駆動電流を流すことができ、加速時間を短縮することができる。加速時も或る時点で通常動作による加速に切り替えるが、それは下記の条件1または条件2のいずれかの条件が成立した場合である。
【0040】
条件1は、第2のコンデンサ10の電圧が0Vになった時点である。駆動電流を流すことにより第2のコンデンサ10の電圧は下がり、やがて0Vになる。この時点で減速時の回生電力を使い切ったと判定でき、また、これ以降は通常の動作での加速よりも加速度が劣るのでこの時点で通常動作に切り替えなければならない。
【0041】
条件2は、モータ11の回転数が目標回転数の90%に達した時点である。これはそのまま加速を続けると、回転数がどこまで上昇するのか不明であるのはもちろんであるが、仮にこのような回生状態で回転数を制御する構成を設けたとしても、精密な回転数制御を行うためには加速度を正確に制御するには複雑な構成が必要で、現実的ではないからである。
【0042】
このように本実施形態では、回生電力の蓄積用のコンデンサが実質的に複数個備えられて、この複数個のコンデンサの、互いの接続、また、前記モータ、及び前記電源に対する接続を切り替える切替手段を備え、1個のコンデンサ(上述の実施形態では第1のコンデンサ)は通常電源電圧で充電されており、減速時、必要に応じて別のコンデンサ(同実施形態では第2のコンデンサ)と直列に、ブレーキ電流を増大する方向に接続することもできるように配置し、また、加速時にはやはり別のコンデンサと直列に接続するようにしたことにより、別のコンデンサに蓄積された回生電力を十分に充放電させることができるので、回生効率を向上でき、十分なブレーキトルクを得るられ、かつ1個のコンデンサを使用しない構成、または回生を使用しない構成も選択できるようにし、目標回転数近くでは通常の制御とするようにしたので、必要に応じて最適な、大きな減速加速度を得ることができ、また目標回転数近くでは通常の制御とすることができる。その結果、これらにより回生動作を行いながらも、常に適正な時間内に精度よく減速することができる。また、特に逆転ブレーキ状態では、通常より低い回転数まで電力回生を行うことができるので、回生効率がよい。またこれらはコンデンサの切替によって実現しているので、安価に実現することができる。よって、電力回生技術を光ディスク装置の応用しようとすると、スピンドルモータの回転数の制御性が悪く、特に十分なブレーキトルクが得られず、また、回生効率も悪い、という課題を解決する光ディスク装置を得ることができる。
【0043】
尚、上述の実施形態ではコンデンサは2個使用したが、3個以上を使用し、接続を切り替えるようにしてもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態では、充電電圧を検出する充電電圧検出部を設けたが、これを設けず、例えば第2のコンデンサ10の初期電圧を使用履歴により予想するようにしたり、あるいは一定の値と仮定するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、加速時は回生動作は1つの接続方法のみであったが、複数の方法を切り替えて使用するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、減速時の回生動作の接続は、減速の開始時に決定したのちは変更しなかったが、状況に応じて減速の途中で変更できるようにしてもよい。
【0047】
なお、上述の実施形態では本発明のモータ制御装置を光ディスク装置に適用した例を挙げたが、モータの回転数を目標回転数に加・減速することが要請される電動機器であればいずれにお適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかるモータ制御装置は、目標回転数に加速または減速することが要請される電動機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態におけるブロック構成図
【図2】同実施形態における第1の状態での等価回路構成図
【図3A】同実施形態における第2の状態での等価回路構成図
【図3B】同実施形態における第3の状態での等価回路構成図
【図4A】同実施形態における電圧の経時特性を説明する図
【図4B】同実施形態における電圧の経時特性を説明する図
【図5】同実施形態のおける減速方法選択のフローチャート
【図6】同実施形態における加速状態での等価回路構成図
【図7】第1の従来例におけるブロック構成図
【図8】同従来例におけるタイミングチャート
【図9】第2の従来例におけるブロック構成図
【図10】同従来例におけるタイミングチャート
【符号の説明】
【0050】
1 電源
2 回転数制御部
3 回生制御部
4 第1のスイッチ
5 第2のスイッチ
6 第3のスイッチ
7 第4のスイッチ
8 第5のスイッチ
9 第1のコンデンサ
10 第2のコンデンサ
11 モータ
12 充電電圧検出部
13 全体制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータを回転駆動する駆動電流を供給する電源と、前記モータの回転数を減少させる時に当該モータの回転エネルギーを蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段で蓄積した回転エネルギを前記モータの回転駆動エネルギとして前記駆動電流に付加する制御手段とを備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記蓄積手段はコンデンサであることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記コンデンサを複数備えることを特徴とする請求項2記載のモータ制御装置
【請求項4】
前記複数のコンデンサ相互の接続を切り替えるコンデンサ切替手段と、前記コンデンサ切替手段で切り替えたコンデンサ及び前記電源の何れかを選択して前記モータと接続する切替手段とを備えることを特徴とする請求項3記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記コンデンサが電気二重層コンデンサであることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータの回転数を所定の回転数に制御する回転数制御手段を更に備え、前記切替手段は、前記所定の回転数、および、前記所定の回転数と前記モータの実際の回転数との差に応じて、前記接続を切り替えることを特徴とする請求項4記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記モータの回転数を所定の回転数に制御する回転数制御手段を更に備え、前記切替手段は、前記所定の回転数と前記モータの実際の回転数との差が所定の値以内になったとき、前期複数のコンデンサに対する充放電を中止し、前記制御手段と前記電源のみで前記モータを駆動することを特徴とする請求項4記載のモータ制御装置。
【請求項8】
半導体によるスイッチング回路で構成された駆動回路を前記モータに備え、前記モータは直流発電機として前記複数のコンデンサに蓄電することを特徴とする請求項3記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記コンデンサの充電電圧を検出する検出手段を備えたことを特徴とする請求項4記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−230068(P2006−230068A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38807(P2005−38807)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】