説明

モータ駆動回路

【課題】モータ駆動の際に発生する音を静音化する。
【解決手段】ホール素子から出力されるロータの回転位置を示す正弦波信号が一方の入力端子に入力されるとともに、前記正弦波信号の反転信号が他方の入力端子に入力されることにより、コイルに電流を供給するための信号を出力する一定利得の差動増幅回路、を有するモータ駆動回路において、前記差動増幅回路の電源電圧に基づいて前記ホール素子の電源電圧を発生し、前記差動増幅回路の電源電圧が大きくなるにつれて前記ホール素子の電源電圧を大きくし、前記差動増幅回路の電源電圧が小さくなるにつれて前記ホール素子の電源電圧を小さくするホールバイアス制御回路、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器は、概ね当該電子機器が動作する際に熱を発生する発熱体を有している。また、発熱体を有する電子機器には、発熱を冷却するためのファンモータ、およびファンモータを駆動するためのモータ駆動回路が設けられているものがある。例えばノート型パーソナルコンピュータでは、動作する際に発熱するCPU(Central Processig Unit)を冷却するためのファンモータ、および当該ファンモータを駆動するモータ駆動回路が設けられている。
【0003】
前述のモータ駆動回路の駆動方式の1つとして、BTL(balanced trancefomer less)駆動方式が知られている。
【0004】
図7は、単相モータ用且つBTL駆動方式の従来のモータ駆動回路を用いた全体構成を示すブロック図である(例えば、以下に示す特許文献1の図3を参照。)。なお、モータ駆動回路は、一般的に、ホール素子100とコイル130を除き、同一チップ上に集積化された集積回路として提供される。ところで、三相ホールモータの場合は、三相分のコイル130がスター結線されるので、各相分のコイル130の一方の端子にのみ電流を供給すればよいため、各相のコイル130それぞれに対して、図7に示すホールアンプ110、120のうちいずれか一方のみを設ければよい。
【0005】
図7に示すモータ駆動回路は、ホールアンプ110、120、抵抗112、114、122、124を有している。また、ホールアンプ110とホールアンプ120は、同じ利得で増幅を行う。さらに、電源電圧VCCは、例えばスイッチングレギュレータ(不図示)によって得られる、大きさが可変の電圧であることとする。
【0006】
ホール素子100は、例えばモータのステータの所定位置に固着され、ホールバイアス電圧VHBが印加されて動作する。ホールバイアス電圧VHBとしては、例えば、公知のバンドギャップ型基準電圧発生回路(不図示)から得られる温度変化の影響を受けることのない基準電圧が用いられる。そして、ホール素子100は、モータのロータが回転している時、正弦波であり且つ互いに逆相となるホール素子出力S1、S2を生成する。尚、ホール素子出力S1、S2は、ロータの回転位置を示すものであり、その周波数は、モータの回転速度に比例する。
【0007】
ホールアンプ110は、電源電圧VCCを電源として動作する。ホールアンプ110の非反転入力端子(以下、+端子とする)には、ホール素子出力S1が入力され、ホールアンプ110の反転入力端子(以下、−端子とする)には、ホール素子出力S2が抵抗112を介して入力されとともに、当該ホールアンプ110のホールアンプ出力VOUT1が抵抗114を介して負帰還される。そして、ホールアンプ110は、ホール素子出力S1、S2の電位差を増幅した結果であるホールアンプ出力VOUT1を生成する。ホールアンプ出力VOUT1は、コイル130の一端に出力される。
【0008】
ホールアンプ120は、電源電圧VCCを電源として動作する。ホールアンプ120の+端子には、ホール素子出力S2が入力され、ホールアンプ120の−端子には、ホール素子出力S1が抵抗122を介して入力されるとともに当該ホールアンプ120のホールアンプ出力VOUT2が抵抗124を介して負帰還される。そして、ホールアンプ120は、ホール素子出力S1、S2の電位差を所定の利得で増幅した結果であるホールアンプ出力VOUT2を生成する。ホールアンプ出力VOUT2は、コイル130の他端に出力される。
【0009】
次にモータ駆動回路の動作について説明する。図8は、図7に示すモータ駆動回路の動作を説明するための波形図である。なお、図8の横軸は時間を示している。
【0010】
モータのロータが回転することによりホール素子100から、図8に示すような正弦波のホール素子出力S1(実線)、およびホール素子出力S1と逆相のホール素子出力S2(破線)が出力される。ホール素子出力S1とホール素子出力S2の大小関係は、モータの回転に応じて、時刻t1、t2、t3、t4で切り替わる。なお、時刻t1、t2、t3、t4の期間は電気角180度に相当する。
【0011】
ホールアンプ110およびホールアンプ120は、各々、+端子と−端子との差を所定の利得で増幅して出力する。ここで、ホールアンプ110とホールアンプ120には、ホール素子出力S1とホール素子出力S2が逆の極性で入力されるため、ホールアンプ出力VOUT1(実線)とホールアンプ出力VOUT2(破線)は逆相になる。なお、図8に示すようにホールアンプ出力VOUT1とホールアンプ出力VOUT2の大小関係も、ホール素子出力S1、ホール素子出力S2と同様に時刻t1、t2、t3、t4で切り替わることになる。
【0012】
つまり、コイル130の一端と他端には、ホールアンプ出力VOUT1、ホールアンプ出力VOUT2の電圧振幅の中点を中心として、相反する電圧が印加される。そして、コイル130には、ホールアンプ出力VOUT1とホールアンプ出力VOUT2の大きさの差に基づいた電流が流れることになる。例えば、時刻t0〜t1では、ホールアンプ出力VOUT1がホールアンプ出力VOUT2より大きいので、ホールアンプ110側からホールアンプ120側の方向(以下、正方向とする)に電流が流れる。また、時刻t1〜t2では、ホールアンプ出力VOUT2がホールアンプ出力VOUT1より大きいので、ホールアンプ120側からホールアンプ110側の方向(以下、負方向とする)に電流が流れる。そして、コイル130に流れる電流の方向が切り替わることによってモータが駆動することとなる。
【特許文献1】特開2004−166379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ホールアンプ110、120の利得は、それぞれ、ホールアンプ出力VOUT1、ホールアンプ出力VOUT2を大きくするため、例えば使用する電源電圧VCCの最大電圧に合わせて設定されている。つまり、電源電圧VCCを最大電圧よりも小さくした場合においても、ホールアンプ110およびホールアンプ120は前記利得で増幅を行うことになる。しかしながら、ホールアンプ110、120は、電源電圧VCCを電源として動作しているため、電源電圧VCCより大きい電圧を出力することができない。このことにより、ホールアンプ出力VOUT1、およびホールアンプ出力VOUT2は、電源電圧VCCを最大電圧より小さくした場合に、正弦波にならないことがある。
【0014】
図9は、従来のホールアンプ110において、電源電圧VCCをVA、VB、VC(VA>VB>VC)とした場合のホールアンプ出力VOUT1の変化を説明するための図である。図9において実線A、実線B、実線Cはそれぞれ電源電圧VCCがVA、VB、VCのときのホールアンプ出力VOUT1を示している。なお、電源電圧VCCがVA、VB、VCの場合において、ホール素子100から出力されるホール素子出力S1、ホール素子出力S2の大きさは同じであることとする。また、ホールアンプ110の利得は、図9における立ち上がりの傾きで表される。図9より電源電圧VCCがVA、VB、VCの場合において、利得は同じであることが分かる。
【0015】
電源電圧VCCがVAの場合、ホールアンプ出力VOUT1は、ホール素子出力S1とホール素子出力S2に基づいた正弦波となっている。
【0016】
電源電圧VCCがVBの場合にも、ホールアンプ110は、電源電圧VCCがVAの場合と同じ利得で入力信号の差を増幅する。しかし、ホールアンプ110は、電源電圧VCCより大きい電圧を出力することができないので、ホールアンプ出力VOUT1の最大値はVB以下となる。図9において、電源電圧VCCがVBの場合におけるホールアンプ出力VOUT1の最大値をV1とする。なお、V1は、電源電圧VCC(VB)より、例えば1ボルト低い電圧である。よって、図9に示す期間tbの間、ホールアンプ出力VOUT1はV1で一定になる。
【0017】
同様に、電源電圧VCCがVCの場合には、ホールアンプ出力VOUT1の最大値はVC以下となる。図9において、電源電圧VCCがVCの場合におけるホールアンプ出力VOUT1の最大値をV2とする。なお、V2は、電源電圧VCC(VC)より、例えば1ボルト低い電圧である。よって、図9に示す期間tcの間、ホールアンプ出力VOUT1はV2で一定になる。以下、期間tbおよび期間tcのように出力電圧が一定となる期間のことを飽和期間と呼ぶことにする。図9に示すように飽和期間は、電源電圧VCCが小さくなるほど長くなる。
【0018】
なお、電源電圧VCCの大きさがVA、VB、VCの場合におけるホールアンプ120のホールアンプ出力VOUT2は、図9に示すホールアンプ110のホールアンプ出力VOUT1と、それぞれ逆相になる。
【0019】
このような飽和期間を有するホールアンプ出力VOUT1とホールアンプ出力VOUT2が、コイル130の一端と他端にそれぞれ印加された場合、モータの回転方向と逆向きのトルクが発生することがある。
【0020】
図10は、従来のモータ駆動回路において、通電の切り替わり時にコイル130に流れる電流について説明するための図である。
【0021】
前述したように、ホール素子100から出力されるホール素子出力S1、ホール素子出力S2は、逆相の正弦波である。そして、ホールアンプ110のホールアンプ出力VOUT1と、ホールアンプ120のホールアンプ出力VOUT2は、ホール素子出力S1、ホール素子出力S2に基づいて、電圧振幅の中点を中心として相反する電圧となる。
【0022】
図10において、時刻tAまでは、ホールアンプ出力VOUT2の電圧の方がホールアンプ出力VOUT1の電圧より大きく、コイル130には負方向に電流が流れている。ホール素子出力S1、ホール素子出力S2の変化に伴い、時刻tAでホールアンプ出力VOUT2の電圧が下降し始めるとともに、ホールアンプ出力VOUT1の電圧が上昇し始める。そして、時刻tBでホールアンプ出力VOUT1の電圧とホールアンプ出力VOUT2の電圧の大小関係が逆転する。
【0023】
しかし、コイル130は電流が流れていた方向に電流を流し続けようとするため、図10に示す期間(tA〜tB)が短いと、ホールアンプ出力VOUT1の電圧とホールアンプ出力VOUT2の電圧の大小関係が逆転する時刻tBでコイル130に流れる電流の方向を切り替えることができなくなる。例えば図10では、時刻tBにおいても負方向の電流が流れ続けており、時刻tCでコイル130に流れる電流の向きが切り替わることになる。
【0024】
つまり、時刻tB〜tC間では、モータを回転させる方向とは逆方向の電流がコイル130に流れていることになり、モータの回転と逆向きのトルクが発生していることになる。そして、この逆向きのトルクによってモータ駆動の際に騒音が発生することとなる。なお、この逆向きのトルクは、期間(tA〜tB)が短いほど(飽和期間が長いほど)発生しやすくなる。つまり、電源電圧を小さくするほど、逆向きのトルクによる騒音が発生することになる。
【0025】
このように、従来のモータ駆動回路では、電源電圧VCCを小さくするのに従い、モータの回転と逆向きのトルクが発生し、モータ駆動の際に騒音が発生するという問題点があった。そこで、本発明は、モータ駆動の際に発生する音を静音化することができるモータ駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題を解決するための主たる発明は、ホール素子から出力されるロータの回転位置を示す正弦波信号が一方の入力端子に入力されるとともに、前記正弦波信号の反転信号が他方の入力端子に入力されることにより、コイルに電流を供給するための信号を出力する一定利得の差動増幅回路、を有するモータ駆動回路において、前記差動増幅回路の電源電圧に基づいて前記ホール素子の電源電圧を発生し、前記差動増幅回路の電源電圧が大きくなるにつれて前記ホール素子の電源電圧を大きくし、前記差動増幅回路の電源電圧が小さくなるにつれて前記ホール素子の電源電圧を小さくするホールバイアス制御回路、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、モータ駆動の際に発生する音を静音化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0029】
===モータ駆動回路の構成===
図1を参照しつつ、本発明のモータ駆動回路の構成について説明する。図1は、本発明のモータ駆動回路を用いた全体構成の一例を示すブロック図である。なお、モータ駆動回路は、一般的に、ホール素子100とコイル130を除き、同一チップ上に集積化された集積回路として提供される。ところで、三相モータの場合は、三相分のコイル130がスター結線されるので、各相分のコイル130の一方の端子にのみ電流を供給すればよいため、各相のコイル130それぞれに対して、図7に示すホールアンプ110、120のうちいずれか一方のみを設ければよい。
【0030】
ホール素子100は、例えばモータのステータの所定位置に固着され、ホールバイアス制御回路200から出力される電源電圧VCCに依存するホールバイアス電圧VHBSが印加されて動作する。そして、ホール素子100は、モータのロータが回転している時、正弦波であり且つ互いに逆相となるホール素子出力S1、S2を生成する。尚、ホール素子出力S1、S2は、ロータの回転位置を示すものであり、その周波数は、モータの回転速度に比例する。
【0031】
ホールアンプ110(『第1差動増幅回路』)の+端子には、ホール素子出力S1(『正弦波信号』)が入力され、ホールアンプ160の−端子には、ホール素子出力S2(『正弦波信号の反転信号』)が抵抗112を介して入力されとともに、当該ホールアンプ110のホールアンプ出力VOUT1が抵抗114を介して負帰還される。ホールアンプ110の出力端子はコイル130の一端と接続されている。そして、ホールアンプ110は、ホール素子出力S1、S2の電位差を増幅した結果であるホールアンプ出力VOUT1(『コイルに電流を供給するための信号』)を生成し、コイル130の一端に出力する。
【0032】
ホールアンプ120(『第2差動増幅回路』)の+端子には、ホール素子出力S2が入力され、ホールアンプ120の−端子には、ホール素子出力S1が抵抗122を介して入力されとともに、当該ホールアンプ120のホールアンプ出力VOUT2が抵抗124を介して負帰還される。ホールアンプ120の出力端子はコイル130の他端と接続されている。そして、ホールアンプ120は、ホール素子出力S1、S2の電位差を所定の利得で増幅した結果であるホールアンプ出力VOUT2を生成し、コイル130の他端に出力する。
【0033】
本発明のモータ駆動回路が従来のモータ駆動回路と異なる新規な点は、ホールバイアス制御回路200を設け、ホール素子100のホールバイアス電圧VHBSを電源電圧VCCに依存させているところにある。
【0034】
≪ホールバイアス制御回路≫
以下、図2を参照しつつホールバイアス制御回路200の構成について説明する。
図2は、ホールバイアス制御回路200の構成の一例を示す回路図である。図2に示すホールバイアス制御回路200は、PNP型バイポーラトランジスタ(以下、PNPトランジスタとする)214、218、NPN型バイポーラトランジスタ(以下、NPNトランジスタとする)210、216、抵抗202、204、定電流回路212、206を有している。
【0035】
定電流回路206は、電源電圧VCCから定電流Iを発生しPNPトランジスタ208のエミッタに供給する。
PNPトランジスタ208のベースは、電源電圧VCCと接地VSSとの間に直列接続された抵抗202と抵抗204の接続点(以下、a点とする)と接続され、PNPトランジスタ208のコレクタは接地VSSされている。
【0036】
NPNトランジスタ210のコレクタには電源電圧VCCが印加され、NPNトランジスタ210のベースはPNPトランジスタ208のエミッタと接続されている。また、NPNトランジスタ210のエミッタは、NPNトランジスタ216のエミッタとc点で接続されている。なお、c点の電圧がホールバイアス制御回路200の出力電圧VHBSとなり、ホール素子100に印加される。
【0037】
定電流回路212は、電源電圧VCCから定電流Iを発生しPNPトランジスタ214のエミッタに供給する。
【0038】
PNPトランジスタ214のベース(以下、b点とする)には基準電圧VREFが印加され、PNPトランジスタ214のコレクタは接地VSSされている。
NPNトランジスタ216のベースは、PNPトランジスタ214のエミッタと接続され、NPNトランジスタ216のコレクタには電源電圧VCCが印加されている。
なお、PNPトランジスタ208、214、NPNトランジスタ210、216、定電流回路206、212は、出力回路を構成している。
【0039】
次に、図2および図3を参照しつつホールバイアス制御回路200の動作について説明する。図3は電源電圧VCCとホールバイアス制御回路200の出力電圧VHBSとの関係を示す図である。
【0040】
抵抗202の抵抗値をR1とし、抵抗204の抵抗値をR2とするとa点の電圧Vaは、VCC×R2/(R1+R2)となる。PNPトランジスタ208およびNPNトランジスタ210のベース−エミッタ間電圧は等しいので、PNPトランジスタ208およびNPNトランジスタ210がオンすることにより、NPNトランジスタ210のエミッタの電圧は、Vaとほぼ等しい値となる。
一方、b点の電圧Vbは基準電圧VREFである。PNPトランジスタ214およびNPNトランジスタ216のベース−エミッタ間電圧は等しいので、PNPトランジスタ214およびNPNトランジスタ216がオンすることにより、NPNトランジスタ216のエミッタの電圧は、Vbとほぼ等しい値となる。
c点は、NPNトランジスタ210のエミッタとNPNトランジスタ216のエミッタとが接続されているため、c点にはVaとVbのうちの大きい方の電圧が現れることになる。
【0041】
VaがVbよりも大きい場合、つまり、電源電圧VCCが、VREF×(R1+R2)/R2(図3に示すVD)よりも大きい場合には、ホールバイアス制御回路200の出力電圧VHBSは電源電圧VCCに依存するVaとなる。よって、出力電圧VHBSは、電源電圧VCCが大きくなるにつれて大きくなり、電源電圧VCCが小さくなるにつれて小さくなる。
VaがVbよりも小さい場合、つまり、電源電圧VCCが、図3に示すVDよりも小さい場合には、出力電圧VHBSは、Vb(基準電圧VREF)となる。
【0042】
このように、本発明のモータ駆動回路では、出力電圧VHBSは、電源電圧VCCがVDよりも大きい場合には電源電圧VCCの大きさに応じた値となり、電源電圧VCCがVD−VE間では、基準電圧VREFとなる。なお、VEは、例えばトランジスタを動作させるのに必要な電圧である。
【0043】
よって、電源電圧VCCがVD−VE間では、基準電圧VREFをホール素子100の電源電圧とすることができ、電源電圧VCCをVDより下げてもホール素子出力S1とホール素子出力S2を用いる回路の正常な動作を保障することができる。
【0044】
図4は、本発明のモータ駆動回路におけるホール素子100の出力のホール素子出力S1とホール素子出力S2の電源電圧VCC依存を説明するための図である。なお、ホール素子出力S1を実線で示し、ホール素子出力S2を破線で示している。また、図4において紙面上側は、電源電圧VCCが大きい場合(例えば図3のVA)の図であり、紙面下側は電源電圧VCCが小さい場合(例えば図3のVC)の図である。
【0045】
図4より、ホール素子出力S1とホール素子出力S2の電圧振幅は、電源電圧VCCに応じて変化していることがわかる。そしてこのホール素子出力S1とホール素子出力S2の大きさが変化することにより、ホールアンプ出力VOUT1およびホールアンプ出力VOUT2の大きさも変化することになる。
【0046】
図5は、本発明のモータ駆動回路において、電源電圧VCCをVA、VB、VC(VA>VB>VC)とした場合のホールアンプ出力VOUT1の変化を説明するための図である。図5において実線A、実線B、実線Cはそれぞれ電源電圧VCCがVA、VB、VCのときのホールアンプ出力VOUT1を示している。なお、電源電圧VCCがVA、VB、VCの場合において、ホールアンプ110に入力されるホール素子出力S1、ホール素子出力S2の大きさは同じであることとする。なお、ホールアンプ110の利得は、例えば図5における立ち上がりの傾きで表される。
【0047】
図5より、電源電圧VCCの大きさに応じて利得が変化していることが分かる。例えば、電源電圧VCCがVAのときの傾きよりもVBのときの傾きの方が小さくなっている。このことにより、電源電圧VCCがVBの場合の飽和期間tb′は、図9に示す従来のモータ駆動回路の飽和期間tbよりも短くなる。
【0048】
同様に電源電圧VCCがVBのときの傾きよりもVCのときの傾きの方が小さくなっている。このことにより、電源電圧VCCがVCの場合の飽和期間tc′は、図9に示す従来のモータ駆動回路の飽和期間tcよりも短くなる。
【0049】
図6は、本発明のモータ駆動回路において、通電の切り替わり時にコイル130に流れる電流について説明するための図である。なお、図6において電源電圧VCCは、図10の電源電圧VCCと同じ大きさであるものとする。
【0050】
前述したように、ホール素子100から出力されるホール素子出力S1、ホール素子出力S2は、逆相の正弦波である。そして、ホールアンプ出力VOUT1とホールアンプ出力VOUT2は、電圧振幅の中点を中心として相反する電圧となる。
【0051】
図6において、時刻tA′までは、ホールアンプ出力VOUT2の電圧の方がホールアンプ出力VOUT1の電圧より大きく、コイル130には負方向に電流が流れている。そして、時刻tA′でホールアンプ出力VOUT2が下降し始めるとともに、ホールアンプ出力VOUT1が上昇し始め、時刻tBでホールアンプ出力VOUT1の電圧とホールアンプ出力VOUT2の電圧の大小関係が逆転する。そして、時刻tC′でコイルに流れる電流が切り替わる。
【0052】
本発明のモータ駆動回路では、図5に示すように電源電圧VCCが小さくなるにつれて立ち上がりの傾きが緩やかになるので、飽和期間を従来のモータ駆動回路よりも短くすることができる。よって、期間(tA′〜tB)を、図10に示す従来の期間(tA〜tB)よりも長くすることができる。このことにより、ホールアンプ出力VOUT1とホールアンプ出力VOUT2の大小関係が切り替わる時刻tBにおける負方向の電流を従来よりも小さくすることができ、さらに、期間(tB〜tC′)を従来の期間(tB〜tC)よりも短くすることができる。従って、モータの回転と逆向きのトルクが発生することを抑えることができる。
【0053】
以上、説明したように、本発明のモータ駆動回路は、電源電圧VCCの大きさに応じてホールバイアス制御回路200の出力電圧VHBSを変化させることにより、飽和期間を短くすることができる。よって、モータ駆動の際に発生する音を静音化することができる。
また、本発明のモータ駆動装置では、電源電圧VCCがVD−VE間では出力電圧VHBSをVREFで保持する。このことにより、電源電圧VCCがVDより小さくしても、ホール素子出力S1、ホール素子出力S2を用いる回路の正常な動作を保障することができる。
また、BTL駆動方式とすることで効果的にモータ駆動の際に発生する音を静音化することができる。
【0054】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るホールバイアス制御回路の構成の一例を示す回路図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電源電圧VCCと電圧VHBSとの関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るホール素子出力S1とホール素子出力S2の電源電圧VCC依存を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係るホールアンプ出力の変化を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る通電の切り替わり時にコイルに流れる電流について説明するための図である。
【図7】従来のモータ駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図8】従来のモータ駆動回路の動作を説明するための波形図である。
【図9】従来のホールアンプ出力の変化を説明するための図である。
【図10】従来のモータ駆動装置において通電の切り替わり時にコイルに流れる電流について説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
100 ホール素子
110、120 ホールアンプ
112、114、122、124、202、204 抵抗
130 コイル
208、214 PNPトランジスタ
210、216 NPNトランジスタ
200 ホールバイアス制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール素子から出力されるロータの回転位置を示す正弦波信号が一方の入力端子に入力されるとともに、前記正弦波信号の反転信号が他方の入力端子に入力されることにより、コイルに電流を供給するための信号を出力する一定利得の差動増幅回路、を有するモータ駆動回路において、
前記差動増幅回路の電源電圧に基づいて前記ホール素子の電源電圧を発生し、前記差動増幅回路の電源電圧が大きくなるにつれて前記ホール素子の電源電圧を大きくし、前記差動増幅回路の電源電圧が小さくなるにつれて前記ホール素子の電源電圧を小さくするホールバイアス制御回路、
を備えたことを特徴とするモータ駆動回路。
【請求項2】
前記ホールバイアス制御回路は、
前記差動増幅回路の電源電圧を抵抗分割する直列抵抗と、
前記直列抵抗の接続点に現れる電圧が基準電圧よりも大きいときには、前記直列抵抗の接続点に現れる電圧を前記ホール素子の電源電圧として出力し、前記直列抵抗の接続点に現れる電圧が前記基準電圧よりも小さいときには、前記基準電圧を前記ホール素子の電源電圧として出力する出力回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
【請求項3】
前記差動増幅回路は、第1差動増幅回路及び第2差動増幅回路として2つ設けられており、
前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の極性が互いに異なる一方の入力端子には、前記正弦波信号が入力され、
前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の極性が互いに異なる他方の入力端子には、前記正弦波信号の反転信号が入力され、
前記第1差動増幅回路の出力端子は、前記コイルの一端と接続され、
前記第2差動増幅回路の出力端子は、前記コイルの他端と接続されることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ駆動回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−37386(P2007−37386A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221632(P2005−221632)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】