説明

モータ

【課題】グリス漏れをより確実に防止することができるモータを提供する。
【解決手段】一端側が開口した有底で筒状のモータケースと、このモータケースの開口端に結合され、内部にモータ軸14のウォーム14a及び該ウォーム14aに噛合したウォームホイール15を収納する減速機構収納部13eを形成したギヤケース13と、減速機構収納部13eを覆うギヤカバー18と、ギヤケース13の開口部13b及びギヤカバー18を覆うギヤケースカバー19とを備えたモータ10において、ギヤカバー18の内面18d側に凹状のグリス溜まり部18fを形成すると共に、ギヤケースカバー19の内面19c側に凹状のグリス溜まり部19dを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のサンルーフ用モータ等に用いて好適なモータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサンルーフ用モータとして、図7及び図8に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このサンルーフ用モータ1は、図7及び図8に示すように、一端側が開口した略円筒状のヨーク(モータケース)2と、このヨーク2の開口端の周りのフランジ部2aをビスBを介して締結固定したギヤケース3と、このギヤケース3の開口部3aを覆う取付ブラケットを兼ねたギヤケースカバー4とを備えている。ヨーク2の他端の有底筒部2bに嵌合された軸受5aとギヤケース3の軸穴3bに嵌合された軸受5bとでアーマチュア6のアーマチュア軸(モータ軸)7を回転自在に支持してある。このアーマチュア軸7の一端近傍にウォーム7aを形成してある。
【0004】
また、図7及び図8に示すように、ギヤケース3にはその軸穴3bに連通する凹状の減速機構収納部3cを形成してある。この減速機構収納部3c内には、アーマチュア軸7のウォーム7aに噛合するウォームホイール8を回転自在に支持してある。このウォームホイール8の中央には出力軸9を固定してある。これらウォーム7aとウォームホイール8とでアーマチュア軸7の回転を減速させる減速機構Sが構成されている。尚、出力軸9は図示しないサンルーフ等に備えられた駆動装置に連結されている。
【0005】
さらに、図8に示すように、ギヤケースカバー4の凹部4aの底壁には出力軸9の下端部9aを臨む開口部4bを形成してある。また、ギヤケースカバー4の凹部4aの底壁には開口部4bを囲繞するように凸状のリブ部4cを円環状に形成してあり、このリブ部4cと凹部4aの周壁との間に凹溝状のグリス溜め4dを形成してある。
【0006】
【特許文献1】実公平6−24260号公報(第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のサンルーフ用モータ1では、手動でサンルーフを閉鎖できるようにギヤケースカバー4に出力軸9の下端部9aを臨む大径の開口部4bが形成してあるため、ギヤケースカバー4のグリス溜め4dに溜まったグリスが大径の開口部4bから外に漏れるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、グリス漏れをより確実に防止することができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、一端側が開口した有底で筒状のモータケースと、このモータケースの開口端に結合され、内部にモータ軸のウォーム及び該ウォームに噛合したウォームホイールを収納する減速機構収納部を形成したギヤケースと、前記減速機構収納部を覆うギヤカバーと、前記ギヤケースの開口部及び前記ギヤカバーを覆うギヤケースカバーとを備えたモータにおいて、前記ギヤカバーの内面側に凹状のグリス溜まり部を形成すると共に、前記ギヤケースカバーの内面側に凹状のグリス溜まり部を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のモータであって、前記ギヤカバーの前記ウォームホイールの中央に臨む位置に大径の開口部を形成すると共に、該大径の開口部の周りに該ウォームホイール側に突出する円環状のリブを形成し、かつ、前記ギヤケースカバーの前記ウォームホイールの中央に固定された出力軸の下端部に臨む位置に小径の開口部を形成すると共に、該小径の開口部の周りに該出力軸の下端部側に突出する円環状のリブを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ギヤカバーの内面側とギヤケースカバーの内面側の2箇所に凹状のグリス溜まり部をそれぞれ形成したことにより、ギヤケースカバーの凹状のグリス溜まり部に溜まるグリス量を少なくすることができる。これにより、ギヤケースカバーから外へのグリスの漏れを確実に防止することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ギヤカバーのウォームホイールの中央に臨む位置に大径の開口部を形成すると共に、該大径の開口部の周りに該ウォームホイール側に突出する円環状のリブを形成し、かつ、ギヤケースカバーのウォームホイールの中央に固定された出力軸の下端部に臨む位置に小径の開口部を形成すると共に、該小径の開口部の周りに該出力軸の下端部側に突出する円環状のリブを形成したことにより、ギヤカバーの凹状のグリス溜まり部に溜まったグリスが大径の開口部から漏れたとしても、この漏れたグリスをギヤケースカバーの凹状のグリス溜まり部に溜めることができると共に小径の開口部の周りの円環状のリブで確実に堰き止めることができる。その結果、ギヤケースカバーの小径の開口部から外へのグリスの漏れをより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態のモータを示す平面図、図2は同モータの底面図、図3は同モータの側面図、図4は同モータの要部の断面図、図5は同モータに用いられるギヤカバーの斜視図、図6は同モータに用いられるギヤケースカバーの斜視図である。
【0015】
図1〜図4に示すように、サンルーフ用モータ(モータ)10は、一端側が開口した有底で筒状のヨーク(モータケース)11と、このヨーク11の開口端の周りのフランジ部11aをビス12Aを介して締結固定され、内部にアーマチュアのアーマチュア軸(モータ軸)14のウォーム14a及び該ウォーム14aに噛合したウォームホイール15を収納する減速機構収納部13eを形成した合成樹脂製のギヤケース13と、このギヤケース13の減速機構収納部13eを覆う合成樹脂製のギヤカバー18と、ギヤケース13の開口部13b及びギヤカバー18を覆う合成樹脂製のギヤケースカバー19と、これらギヤケース13の開口部13bとギヤカバー18及びギヤケースカバー19との間に形成された基板収納部Xに収納される回路基板(基板)20とを備えており、図示しないサンルーフを開閉する際の駆動源として用いられるものである。
【0016】
図4に示すように、ギヤケース13の仕切壁13cに形成された軸穴13dにはアーマチュアのアーマチュア軸14を回転自在に支持してある。このアーマチュア軸14の一端近傍にはウォーム14aを形成してある。また、ギヤケース13には軸穴13dに連通する凹状の減速機構収納部13eを形成してある。この減速機構収納部13e内には、ウォーム14aに噛合するウォームホイール15をギヤケース13の円筒状の軸受部13fを介して回転自在に支持してある。これらウォーム14aとウォームホイール15とでアーマチュア軸14の回転を減速させる減速機構Yが構成されている。
【0017】
図4に示すように、ウォームホイール15は、外周に歯15bを有する合成樹脂製の環状部材15aと、この環状部材15aの内側にインサート成形により結合された金属製の芯部材15cとを備えている。この芯部材15cは、中央に出力軸16が嵌合される嵌合孔15eを形成した円板部15dと、この円板部15dの外周部から周方向へ離隔して径方向へ突設されると共に軸方向へ互い違いに折り曲げられた複数の突片15f,15gとを有している。また、芯部材15cの円板部15dの嵌合孔15eはスプライン状に形成してあり、この嵌合孔15eに出力軸16のスプライン状の下部16aが動力伝達をして嵌合している。さらに、出力軸16はギヤケース13の円筒状の軸受部13fを介して回転自在に支持されており、また、出力軸16の下端部16bは止め輪17によりウォームホイール15に対して抜け止めされている。尚、この出力軸16は、サンルーフ等に備えられた図示しない駆動装置に連結されるようになっている。
【0018】
図4及び図5に示すように、ギヤカバー18は環円板状に形成してあり、その中央(ウォームホイール15の中央に臨む位置)に円形で大径の開口部18aを形成してある。そして、ギヤカバー18の大径の開口部18aの周りには上側(ウォームホイール側)に突出する円環状のリブ18bを一体形成してある。また、ギヤカバー18の外周縁の周りには上側に突出する円環状のリブ18cを一体形成してある。これらギヤカバー18の内側の円環状のリブ18bと内面18dと外側の円環状のリブ18cとで円環凹状のグリス溜まり部18fを形成してある。さらに、図4に示すように、ギヤカバー18の外側の円環状のリブ18cがギヤケース13の周壁13aの下面と仕切壁13cの下面に連続して形成された円環状の凹部13gに嵌め込まれている。
【0019】
図1〜図4及び図6に示すように、ギヤケースカバー19はギヤケース13の周壁13aの下面及びギヤカバー18の外面18eに当接する周壁19aを上側に一体形成した所定形状の板状に形成してあり、その周壁19aの4箇所の位置に矩形枠状の係合凹部(係合部)19bを上側に突出するように一体形成してある。そして、ギヤケースカバー19の周壁19aがギヤケース13の周壁13aの下面及びギヤカバー18の外面18eに当接して該ギヤケース13の開口部13b及びギヤカバー18を覆った状態で各矩形枠状の係合凹部19bがギヤケースの周壁13aに一体形成された各係止突起(係止部)13hに係止されるようになっている。この係止状態は、ギヤケースカバー19をギヤケース13に締結固定するビス12Bにより固定されるようになっている。
【0020】
また、図4及び図6に示すように、ギヤケースカバー19の周壁19aと内面19c及び後述する円環状のリブ19fとで凹状のグリス溜まり部19dを形成してある。また、ギヤケースカバー19の出力軸16の下端部16bに臨む位置には円形で小径の開口部19eを形成してあると共に、該小径の開口部19eの周りには上側(出力軸16の下端部16b側)に突出する円環状のリブ19fを一体形成してある。この円環状のリブ19fは出力軸16の下端部16bに近接して配置されている。さらに、ギヤケースカバー19の内面19cには、ギヤカバー18の外面18eの内周側に当接する円環状の突起19gを一体形成すると共に、該ギヤケースカバー19の内面19cの円環状の突起19gの外側にはギヤカバー18の外面18eの外周側に当接する円弧状の突起19hを一体形成してある。
【0021】
図4に示すように、ギヤケース13の開口部13bと仕切壁13cとギヤカバー18及びギヤケースカバー19の円環状の突起19gとの間に回路基板20を収納する基板収納部Xを形成してある。この回路基板20には、電子部品22の雄端子部23に圧接する圧接端子21等を取り付けある。
【0022】
以上実施形態のサンルーフ用モータ10によれば、アーマチュアのアーマチュア軸14を正逆回転させることによってサンルーフを開閉することができる。また、何らかの原因によりサンルーフが開状態のままで閉まらなくなった場合には、ギヤケースカバー19の小径の開口部19eからレンチ等の工具を用いて出力軸16を強制的に回転させることにより、手動でサンルーフを閉鎖させることができる。
【0023】
また、ギヤケース13の円筒状の軸受部13fと出力軸16及びウォーム14aとウォームホイール15等には摺動抵抗を削減するためにグリスが塗布されているが、これらから流れ落ちたグリスは、ギヤカバー18の内面18d側に形成された凹状のグリス溜まり部18fに溜まる。さらに、ギヤカバー18の大径の開口部18aから外に漏れたグリスは、ギヤカバー18を覆うギヤケースカバー19の内面19c側に形成された凹状のグリス溜まり部19dに溜まる。
【0024】
このように、ギヤカバー18の内面18d側に凹状のグリス溜まり部18fを形成すると共に、該ギヤカバー18を覆うギヤケースカバー19の内面19c側に凹状のグリス溜まり部19dを形成したことにより、ギヤケースカバー19の凹状のグリス溜まり部19dに溜まるグリス量を少なくすることができる。これにより、ギヤケースカバー19から外へのグリスの漏れを確実に防止することができる。
【0025】
また、ギヤカバー18のウォームホイール15の中央に臨む位置に大径の開口部18aを形成すると共に、該大径の開口部18aの周りに該ウォームホイール15側に突出する円環状のリブ18bを一体形成し、かつ、ギヤケースカバー19のウォームホイール15の中央に固定された出力軸16の下端部16bに臨む位置に小径の開口部19eを形成すると共に、該小径の開口部19eの周りに該出力軸16の下端部16b側に突出する円環状のリブ19fを一体形成したことにより、ギヤカバー18の凹状のグリス溜まり部18fに溜まったグリスが大径の開口部18aから漏れたとしても、この漏れたグリスをギヤケースカバー19の凹状のグリス溜まり部19dに溜めことができると共に小径の開口部19eの周りの円環状のリブ19fで確実に堰き止めることができる。その結果、ギヤケースカバー19の小径の開口部19eから外へのグリスの漏れをより確実に防止することができる。
【0026】
尚、前記実施形態によれば、サンルーフ用モータについて説明した、パワーウインドモータ等の他のモータに前記実施形態を適用しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態のモータを示す平面図である。
【図2】上記モータの底面図である。
【図3】上記モータの側面図である。
【図4】上記モータの要部の断面図である。
【図5】上記モータに用いられるギヤカバーの斜視図である。
【図6】上記モータに用いられるギヤケースカバーの斜視図である。
【図7】従来のモータの断面図である。
【図8】上記従来のモータの要部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 サンルーフ用モータ(モータ)
11 ヨーク(モータケース)
13 ギヤケース
13b 開口部
13e 減速機構収納部
14 アーマチュア軸(モータ軸)
14a ウォーム
15 ウォームホイール
16 出力軸
16b 下端部
18 ギヤカバー
18a 大径の開口部
18b 円環状のリブ
18d 内面
18f 凹状のグリス溜まり部
19 ギヤケースカバー
19c 内面
19d 凹状のグリス溜まり部
19e 小径の開口部
19f 円環状のリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開口した有底で筒状のモータケースと、このモータケースの開口端に結合され、内部にモータ軸のウォーム及び該ウォームに噛合したウォームホイールを収納する減速機構収納部を形成したギヤケースと、前記減速機構収納部を覆うギヤカバーと、前記ギヤケースの開口部及び前記ギヤカバーを覆うギヤケースカバーとを備えたモータにおいて、
前記ギヤカバーの内面側に凹状のグリス溜まり部を形成すると共に、前記ギヤケースカバーの内面側に凹状のグリス溜まり部を形成したことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1記載のモータであって、
前記ギヤカバーの前記ウォームホイールの中央に臨む位置に大径の開口部を形成すると共に、該大径の開口部の周りに該ウォームホイール側に突出する円環状のリブを形成し、かつ、前記ギヤケースカバーの前記ウォームホイールの中央に固定された出力軸の下端部に臨む位置に小径の開口部を形成すると共に、該小径の開口部の周りに該出力軸の下端部側に突出する円環状のリブを形成したことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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