説明

モールドカップ用基材

【課題】変色熱耐久性に優れ、且つ洗濯耐久性、反撥弾性、触感にも優れたモールドカップ用基材を得る。
【解決手段】 このモールドカップ用基材は、ポリエステル系繊維を主体とする繊維ウェブの構成繊維同士を、熱変色性の少ないアクリルバインダとシリコンアクリルバインダとを混合してなるアクリル系バインダにより接着して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラジャー、スリップ、ボディースーツ等の婦人用ファンデーションのカップ部に使用するモールドカップ用基材であって、特に例えば、変色熱耐久性に優れ、且つ洗濯耐久性、反撥弾性、触感も優れたモールドカップ用基材である。
【背景技術】
【0002】
モールド成型加工が可能なタイプの基材としては、高捲縮繊維を用いた嵩高い繊維ウェブの繊維同士を熱融着繊維で結合したマット状の不織布が知られていた。そして、この不織布に必要に応じてトリコットなどと貼りあわせた後、ブラジャーカップの形状をした型によってカップ形状にした成型体とした後、更にブラジャーカップに縫製されていた。そして、この成型体には、保形性と共に、反撥弾性とソフト性及び洗濯耐久性などの耐久性が求められていた。このような基材としては、例えば特許文献1に熱接着性繊維を含む中間繊維層と、該熱接着性繊維が融点より融点が高く、かつブラジャーカップの成型温度で20〜70山/25mmの捲縮が発現する高潜在捲縮繊維を20〜100重量%含む上下繊維層からなる成型ブラジャーカップ用基材が開示されている。また、特許文献2には、ポリエステルエラストマーを構成成分とする熱接着性繊維10〜50重量%と、概熱接着性繊維の融点よりも高い融点を有する潜在捲縮性繊維20〜90重量%と、それ以外の繊維であって前記熱接着性繊維の融点よりも高い融点を有する繊維0〜70重量%とからなる繊維ウェブがニードルパンチによって絡合されているブラジャーカップ用基材が記載されている。
【特許文献1】特開平63−42903号公報
【特許文献2】特開2004−300592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の基材を用いた場合には、複合繊維の一部分が熱融着し繊維構造が残った熱融着繊維によって、捲縮発現した繊維が接着されていたので、この成型体は伸縮性に劣り、反撥性ソフト性及び洗濯耐久性についても高品質の要求を満たすことが出来なかった。また、特許文献2に記載の基材は、成型加工時に熱接着性繊維の溶融と潜在捲縮繊維の発現をさせているが、加熱、加圧された空間内で均一に捲縮発現させ、繊維同士の接触点を点状に接着させる事が難しく、成型後一部分のみが収縮しシワが発生したり、部分的に風合いが硬くなったりするなど成型加工後の製品として高品質を満たすことが出来なかった。このように従来の成型加工用の不織布としては熱接着性繊維を含む繊維集合体であり、成型加工後に反撥は得られるものの、ペーパーライクになりやすくソフト性を出すのは困難であった。また洗濯耐久性においても熱接着性繊維によって繊維間を接着しただけのため洗濯耐久性についても高品質な性能を満たすことが出来なかった。そこでソフト性の付与、洗濯耐久性の向上させるため、繊維集合体をアクリル系バインダにて固着することを試みたが、成型加工時に加えられる熱によりアクリル系バインダが変色し製品として十分な品質を満足させることが出来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、ポリエステル系繊維を主体とする繊維ウェブの構成繊維同士を、熱変色性の少ないアクリルバインダとシリコンアクリルバインダとを混合してなるアクリル系バインダにより接着してなる、モールドカップ用基材である。
請求項2に記載の発明は、熱変色性の少ないアクリルバインダは、カルボキシル基と熱反応し得る官能基を有する合成樹脂水性エマルジョンとポリカルボン酸とを含有してなる熱反応型合成樹脂エマルジョン組成分である、請求項1に記載のモールドカップ用基材である。
請求項3に記載の発明は、熱変色性の少ないアクリルバインダと熱変色性の少ないシリコンアクリルバインダとの配合比率が、全体を100重量部として90:10〜50:50の範囲内である、請求項1または請求項2に記載のモールドカップ用基材である。
請求項4に記載の発明は、繊維ウェブは、ニードルパンチ加工により交絡されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のモールドカップ用基材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明にかかるモールドカップ用基材は、繊維ウェブを構成する繊維にポリエステル繊維を使用することが好ましい。ポリエステル繊維の種類としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)など各種のポリエステル系繊維を単独または2種以上組み合わせて使用することができる。また、繊維ウェブを構成する繊維の形状としては、中空繊維、サイドバイサイド、芯鞘などコンジュケート繊維を使用することができる。そして、目的に応じ50%以下の割合でポリエステル系繊維以外の繊維を配合することが可能である。かかる他の繊維として、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル等の合成繊維、綿、羊毛、麻、パルプなどの天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテートなどの再生繊維、半合成繊維などが上げられる。
【0006】
本発明のモールドカップ用基材は不織布の繊維間を固着するアクリル系バインダとして熱変色性の少ないアクリルバインダとシリコンアクリルバインダとを混合して使用している。熱変色性の少ないアクリルバインダとしてカルボキシル基と熱反応し得る官能基を有する合成樹脂水性エマルジョンとポリカルボン酸とを含有してなる熱反応型合成樹脂エマルジョン組成分を用いる。熱反応型合成樹脂エマルジョン組成分は、カルボキシル基と熱架橋反応し得る官能基を有する合成樹脂エマルジョンを用いるが、この合成樹脂エマルジョンはカルボキシル基と熱架橋反応し得る官能基を有する不飽和単量体(A)を単独、または該不飽和単量体(A)と共重合可能な不飽和単量体(B)と共に、界面活性剤の存在下に乳化重合させた重合エマルジョンであることが好ましい。
【0007】
ここでカルボキシル基と熱架橋反応し得る官能基としては、エポキシ基、水酸基、カルボジイミド基、アジリジン基、オキザゾリン基、シクロカーボネート基が挙げられる。好ましくはエポキシ基あるいは水酸基である。カルボキシル基と熱架橋反応し得る官能基を有する不飽和単量体(A)は、これらの基を1分子中に少なくとも1個有する不飽和単量体である。
1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する不飽和単量体として、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられる。好ましくはグリシジルメタクリレートである。
【0008】
また、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する不飽和単量体として、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプルピレングリコールモノアクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0009】
これらのカルボキシル基と熱架橋反応し得る官能基を有する不飽和単量体(A)は単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
(A)成分と共重合可能な不飽和単量体(B)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等を使用することができる。
【0010】
カルボキシル基と熱架橋反応し得る官能基を含有する不飽和単量体(A)の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量中0.1〜100重量%が好ましく、特に0.5〜50重量%の範囲が好ましい。配合量が0.1重量%未満の場合は熱架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物の架橋反応が低下して、繊維集合体の耐水性が不十分になるおそれがある。
【0011】
本発明の熱架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物において使用されるポリカルボン酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機化合物である。そのようなカルボン酸としては、例えば各種の直鎖状脂肪族ポリカルボン酸、分岐状脂肪族ポリカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸などが使用できる。それらのポリカルボン酸は水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合等を有していてもよく、またアミノ酸であってもよい。
なお、ポリカルボン酸に代えて、1分子中に1個のカルボキシル基を有する不飽和単量体のホモポリマー、例えば(メタ)アクリル酸ホモポリマー等を使用し、繊維処理材に用いた場合、得られた繊維は非常に硬くなり、風合いに不具合が発生する為、使用できない。即ち、このようなポリマーは本発明でいうポリカルボン酸に該当しないのである。
【0012】
ポリカルボン酸の例としては、具体的には、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の直鎖状脂肪族ポリカルボン酸、これらの酸の分岐状脂肪族ポリカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ニ塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ナジック酸等の脂肪族ニ塩基酸;トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸等の酸塩基酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、全シス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸の塩付加物等の四塩基酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ脂肪酸、o−、m−またはp−フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸等が例示できる。これらのうち好ましいカルボン酸は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、イタコン酸である。
【0013】
本発明の熱架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物中のポリカルボン酸の含有量としては、合成樹脂水性エマルジョン中の合成樹脂成分、例えば、前記(A)成分と(B)成分から得られた合成樹脂水性エマルジョンである場合は(A)成分(B)成分との合計量、100重量部に対し、1〜100重量部の範囲が好ましい。含有量が1重量部未満の場合は熱架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物の架橋反応性が低下し、十分な耐久性が得られなくなるおそれがある。一方100重量部を越える場合は、ポリマーエマルジョンの貯蔵安定性が悪くなり短期間で硬化が進み使用風可能になる恐れがある。
【0014】
本発明に使用する熱変色性の少ないアクリルバインダとシリコンアクリルバインダとの配合比率は、全体を100重量部として90:10〜50:50の範囲内が好ましい。熱変色性の少ないアクリルバインダが50重量部未満しか配合しない場合には成型加工時にはバインダが変色し製品に不具合が発生する。シリコンアクリルバインダが10重量部未満の時も成型加工後の風合いにおいてソフト性が失われ満足な製品が得られない。また、シリコンアクリルバインダを50重量部以上配合するとソフトな風合いは出せるものの、成型加工後に変色を起こし、コスト面でも高価になってしまい実用性に乏しくなる。
【0015】
本発明で使用している熱変色性の少ないアクリルバインダとシリコンアクリルバインダを配合物の加工方法としては、スプレー法、パディング法、フォームコーティング法、含浸法など特に制限されるものは無いが、ソフト性を考慮するとスプレー法、フォームコーティング法が好ましい。
【0016】
本発明の不織布を構成する繊維ウェブはニードルパンチによって繊維ウェブの構成繊維同士を絡合しているが、このニードルパンチによる絡合により繊維同士の交絡点を増やし、バインダによる固着時の交点結合の増加を促している。交点の増加により洗濯耐久性の向上が可能となる。
【実施例1】
【0017】
単糸繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリエステル中空コンジュケート繊維(ユニチカファイバー社製 H38F)70重量%と、単糸繊度3.3dtex繊維長51mmポリエステル増白繊維(ユニチカファイバー社製34W)30重量%とを配合し、カーディングにより目付け100g/mの繊維ウェブを作成し、ニードルパンチ加工を施して構成繊維同士を交絡した繊維ウェブを作成した。次に、この繊維ウェブに熱変色性の少ないアクリルバインダ(昭和高分子社製 ポリゾールATF−732)70重量部、熱変色性の少ないアクリルバインダの架橋剤(昭和高分子社製 ミルベンフィクサーFP−10)0.7重量部、シリコンアクリルバインダ(ガンツ化成社製 ウルトラゾールAS−2)30重量部の割合で混合した水溶液を、固形分濃度が20重量%になろよう調整し、固形分付着量が40g/m(20+20g/m)になるようにスプレー加工した後、130〜150°Cで5分間乾燥処理を施しして、目付け140g/m、厚み5.0mmのモールドカップ用基材を作成した。
【実施例2】
【0018】
単糸繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリエステル中空コンジュケート繊維(ユニチカファイバー社製 H38F)50重量%と、単糸繊度3.3dtex繊維長51mmポリエステル増白繊維(ユニチカファイバー社製34W)25重量%と、単糸繊度5.5dtex、繊維長51mmの全溶融型熱接着性ポリエステル繊維(ユニチカファイバー社製 8000)25重量%と配合し、カーディングにより目付け100g/mの繊維ウェブを作成し、ニードルパンチ加工により繊維を交絡した繊維ウェブを作成した。ニードルパンチ加工を施した繊維ウェブを185〜190°Cの温度下で5分間加熱処理し、全溶融型熱接着性ポリエステル繊維が繊維の形状を残さないように溶融させ、ポリエステル繊維間を接着させた。次に、この繊維ウェブに熱変色性の少ないアクリルバインダ(昭和高分子製 ポリゾールATF−732)70重量部、熱変色性の少ないアクリルバインダの架橋剤(昭和高分子社製 ミルベンフィクサーFP−10)0.7重量部、シリコンアクリルバインダ(ガンツ化成社製 ウルトラゾールAS−2)30重量部の割合で混合した水溶液を、固形分濃度が20重量%になるよう調整し、固形分付着量が40g/m(20+20g/m)になるようにスプレー加工した後、130〜150°Cで5分間乾燥処理を施して、目付け140g/m、厚み5.0mmのモールドカップ用基材を作成した。
【0019】
(比較例1)
単糸繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリエステル中空コンジュケート繊維(ユニチカファイバー社製 H38F)70重量%と単糸繊度3.3dtex繊維長51mmポリエステル増白繊維(ユニチカファイバー社製34W)30重量%を配合し、カーディングにより目付け100g/mの繊維ウェブを作成し、さらにニードルパンチ加工により繊維を交絡した繊維ウェブを作成した。次に、この繊維ウェブに通常使用しているアクリルバインダ(ガンツ化成社製 ウルトラゾールN−38k)70重量部と、シリコンアクリルバインダ(ガンツ化成社製 ウルトラゾールAS−2)30重量部の割合で混合した水溶液を、固形分濃度が20重量%になるよう調整し、固形分付着量が40g/m(20+20g/m)になるようにスプレー加工した後、130〜150°Cで5分間乾燥処理を施しして、目付け140g/m、厚み5.0mmの成型加工可能なカップ基材を作成した。
【0020】
(比較例2)
単糸繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリエステル中空コンジュケート繊維(ユニチカファイバー社製 H38F)50重量%と単糸繊度3.3dtex繊維長51mmポリエステル増白繊維(ユニチカファイバー社製34W)25重量%と、単糸繊度5.5dtex、繊維長51mmの全溶融型熱接着性ポリエステル繊維(ユニチカファイバー社製 8000)25重量%と配合し、を配合し、カーディングにより目付け100g/mの繊維ウェブを作成し、ニードルパンチ加工により繊維を交絡した繊維ウェブを作成した。ニードルパンチを施した繊維ウェブを185〜190°Cの温度下で5分間加熱処理し、全溶融型接着性繊維が繊維の形状を残さないように溶融させ、ポリエステル繊維間を接着させたアクリルバインダを使用していない目付け100g/m、厚み5.0mmのモールドカップ用基材を作成した。
【0021】
(比較例3)
単糸繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリエステル中空コンジュケート繊維(ユニチカファイバー社製 H38F)50重量%と単糸繊度3.3dtex繊維長51mmポリエステル増白繊維(ユニチカファイバー社製34W)25重量%と、単糸繊度5.5dtex、繊維長51mmの全溶融型熱接着性ポリエステル繊維(ユニチカファイバー社製 8000)25重量%と配合し、を配合し、カーディングにより目付け100g/mの繊維ウェブを作成し、ニードルパンチ加工により繊維を交絡した繊維ウェブを作成した。ニードルパンチを施した繊維集合体を185〜190°Cの温度下で5分間加熱処理し、全融繊維が繊維の形状を残さないように溶融させ、ポリエステル繊維間を接着させた。次に、この繊維ウェブに通常使用しているアクリルバインダ(ガンツ化成社製 ウルトラゾールN−38k)70重量部と、シリコンアクリルバインダ(ガンツ化成製 ウルトラゾールAS−2)30重量部の割合で混合した水溶液を、固形分濃度が20重量%になるよう調整し、固形分付着量が40g/m(20+20g/m)になるようにスプレー加工した後、130〜150°Cで5分間乾燥処理を施しして、目付け140g/m、厚み5.0mmのモールドカップ用基材を作成した。
【0022】
実施例1、2及び比較例1〜3の成型加工可能なカップ基材をカップ形状型と取り付けた熱プレス加工機にて熱成型加工をおこなった。成型条件として180°C×2分成型加工を行った。また変色状態の確認の為190°C×2分、200°C×2分の2水準の条件を追加し変色耐久性の確認もおこなった。
【0023】
【表1】

【0024】
次に実施例1,2と比較例1〜3の成型カップ材を用いて洗濯耐久性、反撥弾性及び触感、変色熱耐久性の評価を行った。
A.洗濯試験:JIS−L−0217「繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその標記方法」の別表記号の試験方法(1)洗い方(水洗い)番号103に規定の試験方法を10回繰り返し行った。そして、試験前後の寸法変化率と厚み保持率を算出した。
また、洗濯試験後のサンプルについて外観の変化度合いを判定基準として下記のように評価した。
外観の変化が非常に少ない・・・◎
外観の変化が少ない ・・・○
外観の変化がやや多い ・・・△
外観の変化が多い ・・・×
B.反撥弾性試験:ハンディ圧縮試験機(商品名:KES−G5 カトーテック社製)を用いて、試験片に100gf/cmの荷重を加え、圧縮回復率、圧縮率ついて測定を行った。
また、成型サンプルの触感を手で触ってソフトかどうかの判断基準を下記のように評価する。
非常にソフトである…◎
ソフトである…○
ややハードである…△
C.変色熱耐久性:実施例1,2と比較例1〜3の成型カップ材を成型条件180°C×2分、190°C×2分、200°C×2分の条件で加工したときの加工前後の色差をミノルタ社製色彩色差計CR−200を用いて明度L、彩度a、bを測定し熱変色度合いを測定した。なお、明度L、彩度a、bの値の意味については、図1に図示する。
【0025】
また初期状態とプレス加工条件200°C×2分後のサンプルを目視で比較し、変色しているかどうかの判断基準として下記のように評価を行った。
変色していない…○
やや変色している…△
変色している…×
【0026】
【表2】

【0027】
表2に示すように、本発明にかかるモールドカップ用基材は、比較例に比べ、洗濯耐久性、反撥弾性及び触感、変色熱耐久性に優れた物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
変色熱耐久性に優れモールド成型加工が可能であり、且つ反撥弾性、触感、洗濯耐久性にも優れていることから、モールドカップ用基材を用いる衣類等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】明度、彩度の値の意味を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系繊維を主体とする繊維ウェブの構成繊維同士を、熱変色性の少ないアクリルバインダとシリコンアクリルバインダとを混合してなるアクリル系バインダにより接着してなる、モールドカップ用基材。
【請求項2】
前記熱変色性の少ないアクリルバインダは、カルボキシル基と熱反応し得る官能基を有する合成樹脂水性エマルジョンとポリカルボン酸とを含有してなる熱反応型合成樹脂エマルジョン組成分である請求項1に記載のモールドカップ用基材。
【請求項3】
前記熱変色性の少ないアクリルバインダと前記シリコンアクリルバインダとの配合比率が、全体を100重量部として90:10〜50:50の範囲内である、請求項1または請求項2に記載のモールドカップ用基材。
【請求項4】
前記繊維ウェブは、ニードルパンチ加工により交絡されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のモールドカップ用基材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−163532(P2008−163532A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357576(P2006−357576)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(000163774)金井重要工業株式会社 (12)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】