説明

モールド内溶鋼湯面レベル制御方法

【課題】1つのレベル計を用い、それから1次、2次及び3次の定在波成分を抽出、除去することによって本来制御すべきバルジング性湯面変動だけを抽出し、それを湯面レベル制御に用いることによって高精度の湯面レベル制御を実現する。
【解決手段】モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動のモデル12、14を2次振動系で表し、湯面レベル計で測定したレベル測定値とモデル12、14の出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方をモデル12、14の入力に帰還することによってモデル12、14を励振し、得られたモデル12、14の出力によって定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、湯面レベル計で測定したレベル測定値とモデル12、14の出力の偏差をもって定在波成分を除去したレベル信号とし、該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機において、モールド内の溶融金属(溶鋼)の湯面レベルの変動を抑止して、湯面レベルが一定になるように制御することは、操業の安定上のみならず、鋳片の品質管理上からも極めて重要である。
【0003】
通常、このモールド内溶鋼湯面レベル制御方法としては、モールド内の溶鋼の湯面レベルを湯面レベル計によって計測し、この測定値に基づいて溶鋼流量調整装置としてのスライディングノズルの開度を調節して、モールドから引き抜かれていく溶鋼とタンディッシュから注入される溶鋼のマスバランスを釣り合わせるという方法がとられている。
【0004】
図8に、スラブ連続鋳造機のモールド周辺部及び湯面レベル制御系の代表例を示す。スラブ連続鋳造機のモールド1の上方所定位置にはタンディッシュ2が配置され、このタンディッシュ2の底部には、スライディングノズル3及び浸漬ノズル4が配置されている。これにより、タンディッシュ2に一旦滞留した溶鋼5は、スライディングノズル3及び浸漬ノズル4を介してモールド1へ注入されるようになっている。スライディングノズル3は固定板と摺動板からなり、摺動板の位置を油圧サーボ系などのアクチュエータ6で操作することで、スライディングノズル3の開度が増減し、タンディッシュ2からモールド1に流入する溶鋼1の流量が制御されるようになっている。一方、モールド1内の溶鋼湯面の上方には、湯面レベル計(例えば、渦流センサ)7が配置されている。湯面レベル計7はモールド1における溶鋼湯面のレベル(高さ位置)を計測する装置であり、湯面レベル計7の計測信号(湯面レベル信号)は湯面レベル制御装置8に入力されている。
【0005】
取鍋(図示せず)からタンディッシュ2に注入された溶鋼5は、スライディングノズル3の開度に応じて、浸漬ノズル4を経てモールド1へ注入される。注入された溶鋼5はモールド1により冷却されてモールド1との接触面で凝固して凝固シェルを形成し、内部に液相部を有する鋳片はガイドロール及びピンチロール9に支持されながら、ピンチロール9によってモールド1の下方へ引き抜かれる。その際に、湯面レベル制御装置8は、湯面レベル計7から得られる湯面レベル信号と、予め設定されている湯面レベル設定値との偏差にPI制御やPID制御などの演算を施してスライディングノズル開度操作量を求め、アクチュエータ6に出力することによってスライディングノズル開度を操作することによりタンディッシュ2からモールド1に流入する溶鋼流量を調整する。
【0006】
これにより、モールド内の溶鋼の湯面レベルに関するフィードバックループが構成されるので、モールドに流入する溶鋼5の流量、あるいはモールドから流出する溶鋼5の流量が何らかの要因によって変動しても、モールド内の溶鋼の湯面レベルが一定値(設定値)となるように制御することができる。
【0007】
従来からモールド内の溶鋼湯面レベル制御の大きな課題となっていたものとして、ガイドロールやピンチロールなどの鋳片支持ロールの間で生じる鋳片の厚み方向への膨らみ(バルジング)によってモールドから流出する溶鋼流量が周期的に変動することによる湯面レベル変動(バルジング性湯面レベル変動)がある。
【0008】
モールド内溶鋼湯面レベル制御で抑制すべきものは、上述したようなバルジングなど、実質的なマスフロー変動をもたらす外乱による湯面レベルの変動であり、湯面の波立ちのような局所的な湯面の変動は湯面レベル制御においては測定ノイズとして作用するものであり、それに反応してスライディングノズル開度操作を行ってはならない。
【0009】
特にモールド幅が大きくなると,モールド幅に応じた固有振動数で湯面が揺動する定在波が問題になる。特に問題となるのが、図9(a)に示すような、振動の節が1個であって、その節がモールド幅中央(モールド幅1/2位置)にある1次定在波と、図9(b)に示すような、振動の節が2個であって、その節がモールド幅中央とモールド幅端の中間(モールド幅1/4位置)にある2次定在波である。特に、モールド幅が広くなるとその振動周波数は低くなり(2m幅の場合、1次モードの振動数が約0.6Hz)、バルジング周波数(0.1〜0.2Hz)と近接してくる。
【0010】
一般に、フィードバック制御系では、除去すべき外乱の周波数ではゲインを上げることによって外乱の影響を抑圧し、測定ノイズの周波数ではゲインを下げることによって測定ノイズに反応しないようにする必要がある。すなわち、フィードバック制御系の周波数特性を外乱と測定ノイズを考慮して設計する必要がある。しかしながら、本ケースでは、本来除去すべき外乱による湯面レベル変動と、測定ノイズによる湯面変動の周波数が近接しているので、湯面レベル制御装置8における制御パラメータ(PI制御のゲインなど)の調整は難しくなる。すなわち、ゲインを上げると湯面レベル制御装置8は測定ノイズを拾って不要なスライディングノズル開度操作量を出力することになり、それによって湯面レベルが変動し、それをレベル計7が測定して湯面レベル制御装置8に出力するというループが生じてしまう。これによってかえって湯面レベル変動を拡大してしまったり、極端な場合には制御系が安定せずに発散してしまうことがある。反対に、湯面レベル制御装置8のゲインを下げると、バルジング性湯面変動に対する制御性能が劣化し、周期的な湯面変動を低減できない。
【0011】
そこで、バルジング性湯面変動に対する制御性能を向上させる方法として、特許文献1には、湯面レベル計からの湯面レベル信号を周波数解析し、バルジングの周波数が検出された場合、その周波数近傍だけの成分の微分値に基づいて湯面レベル制御を行う方法が記載されている。しかしながら、この方法においては、上記のような定在波を測定ノイズとして処理することは考慮されていないので、定在波の影響を除去することはできない。
【0012】
このような課題に対し、特許文献2では、湯面レベル変動の定在波変動分の定在波周波数を鋳型幅から算出し、定在波をその周波数のsin関数とcos関数で記述して、それらの係数をオンライン推定することにより、定在波変動分を求めるようにした鋳型内の湯面定在波変動検出方法が開示されている。
【0013】
また、特許文献3では、湯面レベル計をモールドの中心位置に設置することにより1次定在波成分を除去した湯面レベルを計測し、その湯面レベル信号から、周波数フィルターを用いて2次定在波の周波数成分を除去した補正湯面レベル信号を求め、その求めた補正湯面レベル信号が一定になるように、スライディングノズルの開度を調節するようにした連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベル制御方法が開示されている。
【0014】
また、特許文献4では、溶融金属の連続鋳造設備において、鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心として2つの湯面レベル計を鋳型幅方向の対称位置を測定するように設置し、それらの測定値の加算平均値を求めることによって定在波の成分を除去する湯面レベル検出装置が開示されている。
【0015】
また、特許文献5及び6では、安定化制御器のパラメトリゼーションの考え方に基づいた制御系の構造(湯面レベル偏差補正値演算部、開度指令補正値演算部、開度変更補正値演算部)を規定し、それをロバスト制御理論に基づいて設計することにより、感度関数をノッチフィルタ状に周波数整形することによって定在波成分の影響を受けないようにした連続鋳造機の湯面レベル制御方法が開示されている。
【0016】
また、特許文献7では、湯面レベル信号に含まれる周期性レベル変動の周波数を検知し、検知した周波数の成分を減衰させた信号と目標レベルの偏差に基づいてモールドへの入口の開度変更量を演算するとともに、周期性レベル変動を相殺するような位相と振幅を有する、検知した周波数と同じ周波数の信号を生成し、その信号を開度変更量に加算して補正する湯面レベル制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007−260693号公報
【特許文献2】特開2009−241150号公報
【特許文献3】特開2010−69513号公報
【特許文献4】特開2005−28381号公報
【特許文献5】特開2001−129647号公報
【特許文献6】特開2002−248555号公報
【特許文献7】特開2002−59249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
モールド湯面に現れる定在波の振幅は時々刻々変化する。これに対し、特許文献2の方法では、推定する定在波に関しては、所定時間の間は振幅が一定であるとの仮定を設けている。これは最小二乗法を適用しているためであるが、そのために推定の応答が遅れ、定在波の振幅変化に追従できないという問題がある。
【0019】
また、特許文献3の方法では、湯面レベル計をモールドの中心位置に設置することにより1次定在波成分の除去を図ったものであるが、モールド上面の開口部付近にはモールドパウダー投入装置があり、中心部にレベル計を設置することが困難な場合があるため、1次定在波についても信号処理によって除去するのが望ましい。
【0020】
また、特許文献4の方法では、2つのレベル計を設置しなければならないため、1つのレベル計を設置するのに比べて設置コスト、保守費用が2倍となる。また、高温で厳しい環境で使用するため、2つのレベル計に機差が生じ、本来同一レベルのものが異なる値で出る問題があり、性能維持のためのキャリブレーションの精度が今まで以上に要求される。
【0021】
また、特許文献5及び6の方法では、安定化制御器のパラメトリゼーションの考え方に基づいた制御系の構造を規定し、ロバスト制御理論を用いて鋳造プロセスを含む制御系全体の特性(感度関数)をノッチフィルタ状に整形するものであるため、構造が複雑、定在波が除去された湯面レベル信号を観測することができない、という理由により、制御系のパラメータ調整が難しいという問題がある。
【0022】
また、特許文献7の方法の対象となっている湯面レベル信号中の周期性変動はバルジング性湯面変動であり、定在波が対象ではない。そのため、特定の周波数成分を減衰させた湯面レベル信号を湯面レベル制御に用いることと、その周波数成分を相殺するような信号を生成して湯面レベル制御に用いることが同時に行われる。すなわち、湯面レベル制御に用いる湯面レベル信号に周期性変動が含まれるとPID制御などの演算が不安定となり、湯面レベル変動がかえって増幅されるので、その周波数成分を減衰させた湯面レベル信号を湯面レベル制御に用いるようにしている。そうすると、湯面レベル制御では周期性変動の抑制が行えなくなってしまうので、その周波数成分の信号を発生させ、位相と振幅を調整して湯面レベル制御の出力に加算することにより、周期性レベル変動の成分を相殺するようにしている。定在波のようなマスフロー変動ではない周期性レベル変動に対しては、モールドへの溶鋼流量を制御によって操作してはならないが、本手法を適用すると、その周波数でモールドへの溶鋼流量が操作され、モールド内の溶鋼の揺動を励起し、定在波を強めてしまい、制御的には逆効果となってしまう。
【0023】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、1つのレベル計を用い、それから1次、2次及び3次の定在波成分を抽出、除去することによって本来制御すべきバルジング性湯面変動だけを抽出し、それを湯面レベル制御に用いることによって高精度の湯面レベル制御を実現するモールド内溶鋼湯面レベル制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動のモデルを2次振動系で表し、湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記モデルの入力に帰還することによって該モデルを励振し、得られた該モデルの出力によって前記定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差をもって前記定在波成分を除去したレベル信号とし、該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とする。
【0025】
また、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、上記発明において、前記湯面レベル計は、モールド幅中央とモールド幅端の中間となるモールド幅1/4の位置に配置されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル及び2次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記1次定在波モデルの入力に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記2次定在波モデルの入力に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とする。
【0027】
また、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、上記発明において、前記湯面レベル計は、モールド幅中央とモールド幅端の中間となるモールド幅1/4の位置よりもモールド幅端寄りで定在波成分がとれる位置に配置されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル、2次定在波モデル及び3次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記1次定在波モデルの入力に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記2次定在波モデルの入力に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記3次定在波モデルの入力に帰還することによって該3次定在波モデルを励振し、得られた該3次定在波モデルの出力によって3次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分及び前記2次定在波を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分,前記2次定在波成分及び前記3次定在波成分を除去したレベル信号とし、該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とする。
【0029】
また、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動のモデルを2次振動系で表し、湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差を前記モデルの状態変数に帰還することによって該モデルを励振し、得られた該モデルの出力によって前記定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差をもって前記定在波成分を除去したレベル信号とし、該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とする。
【0030】
また、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル及び2次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差を前記1次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差を前記2次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とする。
【0031】
また、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル,2次定在波モデル及び3次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差を前記1次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差を前記2次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差を前記3次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該3次定在波モデルを励振し、得られた該3次定在波モデルの出力によって3次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分及び前記2次定在波を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分,前記2次定在波成分及び前記3次定在波成分を除去したレベル信号とし、該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法は、1次、2次及び3次の定在波のモデルをそれぞれの周波数を固有周波数とする2次振動系で表し、それらの出力と、それぞれに対比すべき実プロセスの出力(1次定在波モデルではレベル測定値,2次定在波モデルではレベル測定値から1次定在波成分を除去したレベル信号、3次定在波モデルではレベル測定値から1次定在波成分及び2次定在波成分を除去したレベル信号)との偏差に比例微分演算を施してそれぞれのモデルに入力してモデルを励振することによりモデルの出力から定在波成分を推定している。このとき、前記のモデルと実プロセスの偏差は、該当する定在波成分が除去されたレベル信号になる。このように、本発明では、定在波成分を抽出することと、それを除去したレベル信号を得ることが並行して行われる。これにより、定在波成分の抽出状況を目視で確認しながら本発明における調整パラメータである2次振動系の減衰定数と前記の偏差に施す比例微分演算のゲインを調整することができるので、定在波抽出を適正に行うことができる。また、前記の調整パラメータは、定在波抽出における選択特性(帯域通過フィルタにおけるバンド幅)に相当するものであるが、各パラメータと特性との関係が明確であるため、調整が容易に行えるという利点も有する。
【0033】
また、抽出、除去する定在波の次数は、湯面レベル測定値に含まれている実際の定在波成分によって選択すればよい。定在波成分の確認は、湯面レベル測定値を周波数解析することによって容易に行うことができる。
【0034】
また、本発明の定在波成分除去は、特許文献5,6とは異なり、どのような湯面レベル制御系に対しても付加することができるので、既設の制御系を変更する必要はない。例えば、湯面レベル制御系がPI制御であれば、PI制御に用いる湯面レベル信号を本発明によって定在波成分を除去した湯面レベル信号とするだけでよい。また、PI制御に限らず、公知のさまざまな湯面レベル制御系に付加することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明を連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベル制御系に適用した実施の形態の構成例を示す説明図である。
【図2】図2は、本実施の形態の定在波成分除去装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本実施の形態によって定在波の抽出と除去を行った例を示す線図である。
【図4】図4は、本実施の形態による湯面レベル制御を行ったときの湯面レベル変動の例を示す線図である。
【図5】図5は、本発明を連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベル制御系に適用した実施の形態の構成例を示す説明図である。
【図6】図6は、1次定在波モデルの伝達関数を示すブロック図である。
【図7】図7は、図6の表現を用いて1次定在波除去を行う場合の構成例を示すブロック図である。
【図8】図8は、従来の連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベル制御系の例の構成を示す説明図である。
【図9】図9は、定在波を示す説明図である。
【図10】図10は、従来の湯面レベル制御を行ったときの湯面レベル変動の例を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明にかかるモールド内溶鋼湯面レベル制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0037】
まず、本発明の概要について説明する。本発明では、1次、2次の定在波モデルをそれぞれの周波数を固有周波数とする2次振動系で表し、その出力によって時々刻々変化する定在波を推定する。まず、1次定在波については、レベル計によるレベル測定値と1次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方にゲインを乗じて1次定在波モデルの入力にフィードバックする。これにより、1次定在波モデルの出力は、1次定在波成分の時々刻々の推定値となるので、前記偏差は、レベル測定値から1次定在波成分を除去したものとなる。このとき、前記偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方に乗じるゲインを調整することにより、定在波近傍の周波数をどれだけ含めて推定するかを設定することができる。
【0038】
次に、2次定在波については、レベル計によるレベル測定値と1次定在波モデルの出力の偏差、すなわち1次定在波成分を除去したレベル測定値と2次定在波モデルの偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方にゲインを乗じて2次定在波モデルの入力にフィードバックする。これにより、2次定在波モデルの出力は、2次定在波成分の時々刻々の推定値となるので、前記偏差は、1次定在波成分を除去したレベル測定値から2次定在波成分を除去したものとなる。すなわち、レベル計の測定値から1次、2次の定在波成分を除去したレベル信号を得ることができる。このとき、前記偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方に乗じるゲインを調整することにより、定在波近傍の周波数をどれだけ含めて推定するかを設定することができる。
【0039】
上記で得られた1次、2次の定在波成分を除去したレベル信号を用いて湯面レベル制御を行うと、制御系が定在波に反応することがなくなるので、ゲインを上げることができるようになり、バルジング性湯面変動を抑圧することができる。また、レベル計は1つだけでよいので、設置や保守のコストを抑えることができる。
【0040】
次に、本発明を連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベル制御に適用した場合の構成例を図1に示す。図8に示した部分と同一部分は同一符号を用いて示し、説明も省略する。図1において、定在波成分除去装置11は、レベル計7で測定した湯面レベル測定値から1次及び2次定在波成分を除去したレベル信号を算出し、湯面レベル制御装置8に出力する。図8の従来技術との違いは、本実施の形態では、湯面レベル制御装置8がレベル計7で測定した湯面レベル測定値をそのまま使うのではなく、定在波成分除去装置11によって定在波成分が除去されたレベル信号を使うことである。また、レベル計7は、1次定在波のみを対象とする場合であれば、2次定在波の節の位置(モールド幅中央とモールド幅端の中間となるモールド幅1/4の位置)に配置すればよいが、1次及び2次定在波を対象とする場合であれば、これよりもモールド幅端寄りで定在波成分がとれる位置(例えば、モールド幅1/8の位置)に配置するのがよい。
【0041】
定在波成分除去装置11は、図2のように構成されている。すなわち、定在波成分除去装置11は、1次定在波モデル12とPD演算器13と2次定在波モデル14とPD演算器15と加算器16、17とを備える。1次定在波モデル12は、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動について1次のモードのモデルを2次振動系で表したものである。1次定在波の周波数fは、(1)式で表される。
【0042】
=√(G/4πL) ・・・・・・・・・・・・(1)
ここで、Gは重力加速度、Lはモールド幅である。
【0043】
1次定在波モデル12の伝達関数Gは、1次定在波の周波数fを固有周波数とする2次振動系であり、(2)式のように表される。
【0044】
=ω/(s+2ζωs+ω)・・・・・・(2)
ここで、ω=2πfであり、ζは減衰係数である。
【0045】
PD演算器13は、1次定在波モデル12の出力とレベル計7の測定値とから加算器16により演算された偏差に比例微分演算を施して1次定在波モデル12に入力する。これにより、1次定在波モデル12は励振され、1次定在波成分推定値を出力する。このとき、1次定在波モデル12とレベル計7の測定値との偏差(加算器16の出力)は、1次定在波成分が除去されたレベル信号になる。
【0046】
また、2次定在波モデル14は、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動について2次のモードのモデルを2次振動系で表したものである。2次定在波の周波数fは、(3)式で表される。
【0047】
= √(G/2πL) ・・・・・・・・・・・・(3)
【0048】
2次定在波モデル14の伝達関数Gは、2次定在波の周波数fを固有周波数とする2次振動系であり、(4)式のように表される。
【0049】
=ω/(s+2ζωs+ω)・・・・・・(4)
ここで、ω=2πfであり、ζは減衰係数である。
【0050】
PD演算器15は、1次定在波モデル12の出力とレベル計7の測定値とから加算器16により演算された偏差(加算器16の出力)と2次定在波モデル14の出力とから加算器17により演算された偏差に比例微分演算を施して2次定在波モデル14に入力する。これにより、2次定在波モデル14は励振され、2次定在波成分推定値を出力する。このとき、1次定在波モデル12の出力とレベル計7の測定値との偏差(加算器16の出力)と2次定在波モデル14の出力の偏差(加算器17の出力)は、1次及び2次定在波成分が除去されたレベル信号になる。
【0051】
このように、本実施の形態では、定在波成分を抽出することと、それを除去したレベル信号を得ることが並行して行われる。これにより、定在波成分の抽出状況を目視で確認しながら本実施の形態における調整パラメータである1次及び2次定在波モデル12、14における減衰定数ζ、ζとPD演算器13、15における比例微分演算のゲインを調整することができるので、定在波抽出を適正に行うことができる。また、前記の調整パラメータは、定在波抽出における選択特性(帯域通過フィルタにおけるバンド幅)に相当するものであるが、各パラメータと特性との関係が明確であるため、調整が容易に行える。
【0052】
図3に本実施の形態によって定在波成分を含む湯面レベルから、1次及び2次定在波成分を抽出、除去した例を示す。定在波による測定ノイズを含む湯面レベル測定値から定在波成分が除去され、バルジングに起因する湯面レベル変動が明瞭に抽出されている。
【0053】
次に、本発明による湯面レベル制御方法を従来技術と比較した例を図4及び図10に示す。まず、図10は、図8に示す制御系を用いて制御を行った場合であり、湯面レベル制御装置8にはPI制御を用いた。図10に示されているように、スライディングノズル(S/N)3の開度には、湯面レベル計7の測定値に含まれる定在波に起因する変動成分が多く含まれており、湯面レベルにはその定在波成分とバルジング性湯面レベル変動がともに現れている。バルジング性湯面レベル変動を抑制するにはPI制御のゲインを上げる必要があるが、そうするとスライディングノズル(S/N)3の開度に益々定在波成分が大きく現れ、それが湯面レベル変動を助長してしまうため、ゲインを上げることはできない。
【0054】
一方、図4は、図2に示した本実施の形態を適用した場合であり、定在波成分を除去したレベル信号を用いているため、スライディングノズル(S/N)3の開度にはそれが大きく現れることがないので、PI制御器のゲインを上げることができる。ここでは、比例ゲインを図10の場合の2.5倍としている。そのため、バルジング性湯面レベル変動に対応してスライディングノズル(S/N)3の開度を適切に操作できるようになり、湯面レベル変動は図10の場合の約1/3に低減させることができたものである。
【0055】
なお、本実施の形態では、1次、2次の順に処理するようにしたが、1次定在波モデル12、PD演算器13、加算器16と、2次定在波モデル14、PD演算器14、加算器17とを前後入れ替えて、2次、1次の順に処理するようにしてもよい。
【0056】
また、定在波は、通常1次、2次の成分が強く、本実施の形態のように1次、2次の定在波成分を除去したレベル信号を用いて湯面レベル制御を行うことで十分な制御効果が得られるが、3次の定在波成分が含まれている場合には、1次、2次の成分に対する場合と同様の構成で推定と除去を行うことができる。
【0057】
図5は、1次、2次、3次の定在波成分を3次定在波モデル18は、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動について3次のモードのモデルを2次振動系で表したものである。3次定在波の周波数fは、(5)式で表される。
= √(3G/4πL) ・・・・・・・・・・・・(5)
【0058】
3次定在波モデル18の伝達関数Gは、3次定在波の周波数fを固有周波数とする2次振動系であり、(6)式のように表される。
=ω/(s+2ζωs+ω)・・・・・・(6)
ここで、ω=2πfであり、ζは減衰係数である。
【0059】
PD演算器19は、加算器17から出力される1次及び2次定在波成分が除去されたレベル信号と3次定在波モデル18の出力とから加算器20により演算された偏差に比例微分演算を施して3次定在波モデル18に入力する。これにより、3次定在波モデル18は励振され、3次定在波成分推定値を出力する。このとき、加算器17の出力と3次定在波モデル18の出力の偏差(加算器20の出力)は、1次、2次及び3次定在波成分が除去されたレベル信号になる。
【0060】
抽出、除去する定在波の次数は、湯面レベル測定値に含まれている実際の定在波成分によって事前に選択すればよい。定在波成分の確認は、湯面レベル測定値を周波数解析することによって容易に行うことができる。また、このように高次までの定在波を除去する構成とした場合に、操業条件変動などによってある次数の定在波成分が減少したとしても、それに対応して除去される定在波成分が減少するだけのことであり、そのために構成を変更する必要はない。
【0061】
また、本発明を実施するにあたり、PD演算器における微分演算は、入力される信号中の高周波成分を強調し、演算誤差増大を招く可能性がある。これを防止するには、請求項5〜8に記述したように、PD演算器を用いず、定在波モデルの状態変数に湯面レベル信号と定在波モデルの偏差を帰還する(ゲインを乗じて加算する)構成を用いることが有効である。
【0062】
図6に、(2)式の1次定在波モデルの伝達関数のブロック図による表現を示す。1次定在波モデル12は、2つの積分器21、22、2つの状態フィードバックゲイン23、24、2つの加算器25、26からなるブロック図で表され、積分器21、22の入力(加算器25、26の出力)がモデルの状態変数となる。図7に、図6の表現を用いて1次定在波除去を行う場合の構成を示す。PD演算器13の機能は、2つのゲイン27、28によって実現される。すなわち、1次定在波モデル12の出力とレベル計7の測定値とから加算器16により演算された偏差にゲイン27を乗じたものを加算器25を経由して積分器21の入力にフィードバックする一方、前記偏差にゲイン28を乗じたものを加算器29、26を経由して積分器22の入力にフィードバックすることにより、比例微分演算と等価な演算処理が行える。ゲイン27、28がそれぞれ比例項、微分項に相当し、それらの値a、bが比例ゲイン、微分ゲインに相当する。これにより、1次定在波モデル12は励振され、1次定在波成分推定値を出力する。このとき、1次定在波モデル12とレベル計7の測定値との偏差(加算器16の出力)は、1次定在波成分が除去されたレベル信号になる。
【0063】
2次、3次定在波除去についても同様に、図2、図5における2次、3次定在波推定を図7の1次定在波の推定と同様に構成すればよい。
【符号の説明】
【0064】
1 モールド
5 溶鋼
6 アクチュエータ
7 レベル計
12 1次定在波モデル
14 2次定在波モデル
18 3次定在波モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動のモデルを2次振動系で表し、
湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記モデルの入力に帰還することによって該モデルを励振し、得られた該モデルの出力によって前記定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差をもって前記定在波成分を除去したレベル信号とし、
該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とするモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項2】
前記湯面レベル計は、モールド幅中央とモールド幅端の中間となるモールド幅1/4の位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項3】
連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル及び2次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、
湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記1次定在波モデルの入力に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、
前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記2次定在波モデルの入力に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、
該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とするモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項4】
前記湯面レベル計は、モールド幅中央とモールド幅端の中間となるモールド幅1/4の位置よりもモールド幅端寄りで定在波成分がとれる位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項5】
連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル、2次定在波モデル及び3次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、
湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記1次定在波モデルの入力に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、
前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記2次定在波モデルの入力に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、
前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差及びその微分値のうちの少なくとも一方を前記3次定在波モデルの入力に帰還することによって該3次定在波モデルを励振し、得られた該3次定在波モデルの出力によって3次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分及び前記2次定在波を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分,前記2次定在波成分及び前記3次定在波成分を除去したレベル信号とし、
該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とするモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項6】
連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動のモデルを2次振動系で表し、
湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差を前記モデルの状態変数に帰還することによって該モデルを励振し、得られた該モデルの出力によって前記定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記モデルの出力の偏差をもって前記定在波成分を除去したレベル信号とし、
該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とするモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項7】
連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル及び2次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、
湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差を前記1次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、
前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差を前記2次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、
該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とするモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項8】
連続鋳造機のモールド内溶鋼湯面レベルを制御するに際し、モールド幅に対応した固有の周期で揺動する定在波による湯面レベル変動の1次定在波モデル,2次定在波モデル及び3次定在波モデルをそれぞれ2次振動系で表し、
湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差を前記1次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該1次定在波モデルを励振し、得られた該1次定在波モデルの出力によって1次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記湯面レベル計で測定したレベル測定値と前記1次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分を除去したレベル信号とし、
前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差を前記2次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該2次定在波モデルを励振し、得られた該2次定在波モデルの出力によって2次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分を除去したレベル信号と前記2次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号とし、
前記1次定在波成分及び前記2次定在波成分を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差を前記3次定在波モデルの状態変数に帰還することによって該3次定在波モデルを励振し、得られた該3次定在波モデルの出力によって3次定在波による湯面レベル変動成分を推定するとともに、前記1次定在波成分及び前記2次定在波を除去したレベル信号と前記3次定在波モデルの出力の偏差をもって前記1次定在波成分、前記2次定在波成分及び前記3次定在波成分を除去したレベル信号とし、
該レベル信号を用いたフィードバック制御によってモールドに流入する溶鋼流量を調節するアクチュエータを操作することを特徴とするモールド内溶鋼湯面レベル制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate