説明

モール取付用クリップ

【課題】車体窓枠に加工誤差による位置ずれがあっても、それに追従して窓枠の構成部材に確実に係合可能なように構成されたモール取付用クリップを提供する。
【解決手段】支柱7と、支柱の外端に設けられたモール結合部8と、支柱の内端に設けられたガラス結合部9とを有し、ガラス(フロントガラス3)と窓枠(フロントピラーP)との間にモール2を固定するために用いるモール取付用クリップ1において、窓枠の端縁に係合する弾性変形可能な係合片15を設けるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスと窓枠との間にモールを固定するために用いるモール取付用クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロントガラスの側端とフロントピラーとの間の隙間を埋めるモールの端末の浮き上がりを防止するために、合成樹脂製のクリップをモールに結合させ、クリップに形成された押圧翼片とモールのシールリップとの間にフロントガラスの側端を挟持させることでフロントガラスにモールを結合させるようにした構造が知られている(特許文献1を参照されたい)。
【特許文献1】実開平5−69409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、文献1に開示された技術においては、フロントピラーの付け根との連続性を高めるためには、フロントピラーを構成する板金部材にクリップを結合させることが好ましい。ところが、フロントピラーの曲げ加工には誤差の介入が不可避的であるので、モール取付用クリップのフロントピラー結合部には、このような誤差に追従し得る機能が要求される。
【0004】
本発明は、このような観点に立脚して案出されたものであり、その主な目的は、フロントピラーに加工誤差による位置ずれがあっても、それに追従してフロントピラーの構成部材に確実に係合可能なように構成されたモール取付用クリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するため、本発明の請求項1は、支柱7と、支柱の外端に設けられたモール結合部8と、支柱の内端に設けられたガラス結合部9とを有し、ガラス(フロントガラス3)と窓枠(フロントピラーP)との間にモール2を固定するために用いるモール取付用クリップ1において、窓枠の端縁に係合する弾性変形可能な係合片15を設けるものとした。特に、支柱から斜め外向きに係合片を延出するもの(請求項2)としたり、ガラス結合部を、支柱からガラスの端縁に沿って互いに反対方向へ延出した一対の弾性片(ガラス受片13)からなるものとし、一対の弾性片のガラス受部14の位置を、ガラスの厚さ方向について互いにずらすもの(請求項3)としたりすると良い。
【発明の効果】
【0006】
このような本発明の請求項1によれば、係合片が弾性変形するので、窓枠の端縁に加工誤差に起因する位置ずれがあっても、窓枠の端縁との係合に支障を生ぜずに済む。また係合片を斜め外向きに延出させる(請求項2の構成)ことにより、ガラス端縁と窓枠との隙間に車体外側からクリップを押し込む際に係合片が容易に撓むので、高い取付作業性が得られる。さらに、一対の弾性片のガラス受部の位置を互いにずらす(請求項3の構成)ことにより、ガラス面と窓枠の端縁との相対的な位置ずれにも追従し得る。即ち、本発明により、加工誤差が含まれる窓枠に対するモール取付用クリップの結合を確実化する上に多大な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0008】
図1は、本発明に基づき構成されたモール取付用クリップの装着状態を示す図2のI−I線に沿う断面図である。このモール取付用クリップ1は、自動車のフロントフェンダFから上向きに延出されたフロントピラーP(窓枠)の付け根部分にモール2の端部を止め付けるために用いるものであり、弾性に富む硬質な合成樹脂材(例えばポリアセタール)にて射出成形されている。
【0009】
本発明に係るモール取付用クリップ1を介して車体に取り付けられるモール2は、フロントガラス3の外側縁とフロントピラーPの内側面との隙間に固定される。このモール2は、その開放面がガラス側を向くように配置された断面形状が概ねC字形をなす芯金4と、その外面を覆う比較的軟質な合成樹脂材からなる被覆部5とからなっており、その外側縁に連続的に形成されたシールリップ6が、フロントピラーPの内側面に弾発的に密接するようになっている。
【0010】
モール取付用クリップ1は、図3〜6に併せて示すように、フロントガラス3の厚さ方向、換言すると車室の内外方向に延在する支柱7と、支柱7の車外側の端部に一体形成されたモール結合部8と、支柱7の車内側の端部に一体形成されたガラス結合部9とからなっている。
【0011】
モール結合部8は、支柱7の外端に形成された平板状の頭部10と、頭部10のガラス側の端縁に突設された一対の角状突起11と、頭部10のピラー側端縁に突設された一対の爪状突起12とからなっている。一対の角状突起11は、その遊端間を拡開させており、材料自体の弾性により、主に拡開方向へ変形し得るようになっている。
【0012】
他方、断面形状が扁平なC字形をなすモール2の芯金4は、ガラス側が深溝とされ、且つフロントピラー側が浅溝とされている。そして深溝内に角状突起11を差し込むと共に、浅溝側の端縁に爪状突起12を引っ掛けることにより、クリップ1のモール結合部8がモール2に結合するようになっている。
【0013】
ここで自然状態時の角状突起11の先端から爪状突起12の外側縁までの寸法は、モール2の芯金4の内幅寸法よりも大きく設定されており、モール結合部8にモール2を結合させた際に、拡開変形した角状突起11が発生する弾発的復元力による強固な結合力が芯金4に作用するようにしてある。
【0014】
ガラス結合部9は、支柱7の車内側の端部からフロントガラス3の端縁に沿って互いに反対方向へ延出された片持ち板ばね状をなす一対のガラス受片13(弾性片)からなっている。これら一対のガラス受片13は、支柱7の内端の前後面からその遊端間を拡開させる向きに斜めに延出されており、各遊端のガラス受部14の位置が、フロントガラス3の厚さ方向について互いにずらされている。
【0015】
支柱7の内端側の外側面からは、片持ち板ばね状をなすピラー係合片15が、斜め外向きに延出されている。このピラー係合片15は、材料自体の弾性によって撓曲可能であり、断面形状が概ねL字形なすように曲折されたフロントピラーPの内端縁に係合するように、その遊端に段部16が形成されており、その遊端が内向きに変位し、加工誤差によるフロントピラーPの内端縁の位置ずれに追従し得るようになっている。
【0016】
このように構成されたクリップ1のモール結合部8をモール2に予め結合させておき、フロントガラス3の外側縁とフロントピラーPの内側面との隙間に車体外側からガラス結合部9を押し込むと、一対のガラス受片13がその遊端間を拡開する向きに変形すると共に、ピラー係合片15がその遊端を支柱7に近接する向きに変形する。これにより、フロントガラス3の外側縁とフロントピラーPの内側面との隙間に比較的容易にクリップ1を装着することができる。
【0017】
そしてガラス受片13の遊端のガラス受部14がフロントガラス3の室内側のエッジに係合すると共に、ピラー係合片15の段部16がフロントピラーPの内端縁に係合すると、ガラス受片14とピラー係合片15とが共に弾発的な復元力をフロントガラス3の外側縁とフロントピラーPの内側縁とに作用させ、モール取付用クリップ1が確実にフロントガラス3及びフロントピラーPに結合する。
【0018】
この際、ピラー係合片15の弾性変形により、加工誤差に起因するフロントピラーPの端縁の位置ずれに追従し、フロントピラーPの端縁と確実に係合し得る。また一対のガラス受片13のガラス受部14の位置が互いにずれているので、フロントガラス3の外面とフロントピラーPの端縁との相対的な位置ずれにも追従し、フロントガラス3とも確実に係合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用されたクリップの装着状態を示す要部断面図である。
【図2】本発明の適用部位を示す車両の要部斜視図である。
【図3】本発明に係るクリップの平面図である。
【図4】本発明に係るクリップの正面図である。
【図5】本発明に係るクリップの側面図である。
【図6】本発明に係るクリップの側断面図である。
【符号の説明】
【0020】
P フロントピラー
1 モール取付用クリップ
2 モール
3 フロントガラス
7 支柱
8 モール結合部
9 ガラス結合部
13 ガラス受片
14 ガラス受部
15 係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、該支柱の外端に設けられたモール結合部と、前記支柱の内端に設けられたガラス結合部とを備え、ガラスと窓枠との間にモールを固定するために用いるモール取付用クリップであって、
前記窓枠の端縁に係合すべく弾性変形可能な係合片を有することを特徴とするモール取付用クリップ。
【請求項2】
前記係合片は、前記支柱から斜め外向きに延出することを特徴とする請求項1に記載のモール取付用クリップ。
【請求項3】
前記ガラス結合部は、前記支柱から前記ガラスの端縁に沿って互いに反対方向へ延出した一対の弾性片を備え、
前記一対の弾性片のガラス受部の位置が、前記ガラスの厚さ方向について互いにずれていることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のモール取付用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−30645(P2007−30645A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215232(P2005−215232)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】