説明

モール

【課題】先細の装飾条片を容易かつ確実にモール本体に取り付けることができ、かつ装飾条片における先細端部の浮き上がりを防ぐことができるモールの提供を目的とする。
【解決手段】モール本体11の長さ方向と直交する幅方向Wの端部に長さ方向に沿って装飾条片取付部15を設け、装飾条片31には先細の端部32に装飾条片取付部側へ突出した係止爪33を形成し、前記装飾条片取付部15は、モール本体11の裏側方向へ屈曲した屈曲面17と、前記屈曲面17の縁からモール本体11の幅方向外方へ突出した取付壁面19とで構成し、装飾条片31の先細の一端側と対応する装飾条片取付部15の先端側では、取付壁面が存在せず、前記屈曲面17に係止孔21を設け、前記取付壁面19に装飾条片31を接着テープで固定し、係止孔21に装飾条片31の係止爪33を挿入係止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モール本体に装飾条片が取り付けられたモールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のボディの側面や、ドア下などにはモールが取り付けられることがある。また、前記モールには、装飾性を高めるために、モール本体の表面の一部に装飾条片を取り付けたものがある。
【0003】
モール本体に装飾条片を取り付けたモールとして、(1)装飾条片の全長に渡って所定間隔で形成した複数の係止爪を、モール本体に形成した複数の係止孔に挿入係止したもの、(2)装飾条片を接着テープのみでモール本体に固定したもの、(3)装飾条片に形成したボスをモール本体に形成したボス孔に挿入してボスの頭部を溶着したものなどがある。
【0004】
しかし、(1)のモールは、装飾条片に成形等に起因する反りを生じた場合、係止爪と係止孔の位置関係が狂い、一部の係止爪が係止孔に挿入できなくなることがある。特に装飾条片が樹脂の表面に金属メッキが施されたものからなる場合、メッキ処理時の加熱及びその後の冷却によって装飾条片に反りを生じやすいため、係止爪を係止孔に挿入できないことが起きやすい。
【0005】
(2)のモールは、装飾条片を接着テープのみでモール本体に固定するため、装飾条片の位置決めが難しい問題がある。さらに、装飾条片が先細の場合、先細の端部には接着テープを設けることが難しく、あるいは接着テープの接着面積が小になって十分な接着強度が得られず、装飾条片が先細の端部で浮き上がり易い問題がある。
また、(3)のモールは、ボスを溶着するための装置及び作業にコストが嵩む問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−99672号公報
【特許文献2】特開2002−178844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、先細の装飾条片を容易かつ確実にモール本体に取り付けることができ、かつ装飾条片における先細端部の浮き上がりを防ぐことができるモールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、モール本体の長さ方向と直交する幅方向の端部に前記長さ方向に沿って装飾条片取付部が設けられ、前記装飾条片取付部に長さ方向一端側が先細とされた装飾条片が取り付けられたモールにおいて、前記装飾条片は、先細の端部に前記装飾条片取付部側へ突出した係止爪が形成され、前記モール本体の装飾条片取付部は、前記モール本体の表面側から該モール本体の裏側方向へ屈曲した屈曲面と、前記屈曲面における前記モール本体の表面側から離間した部位から前記モール本体の幅方向外方へ突出した取付壁面とよりなると共に、前記装飾条片の先細の一端側と対応する前記装飾条片取付部の先端側で前記取付壁面の幅が、対応する前記装飾条片の部位の幅より小にされ、かつ前記装飾条片取付部の先端側における前記屈曲面に係止孔が形成され、前記係止孔に前記装飾条片の係止爪が挿入係止されて前記取付壁面に前記装飾条片が接着されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記装飾条片が、樹脂の表面に金属メッキが施されたものからなることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記装飾条片取付部における前記係止孔が形成されている部位では、前記屈曲面に前記取付壁面が存在せず、前記取付壁面の存在しない前記屈曲面の縁で前記係止孔の周縁が開口し、前記モール本体の裏側から前記係止孔の開口を利用して前記係止孔内に前記係止爪が挿入可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装飾条片は先細の端部に形成された係止爪がモール本体の係止孔に挿入されてモール本体に係止されるため、装飾条片をモール本体に接着固定する際に装飾条片の位置決めを正確に行うことができ、接着面の少ない先細の装飾条片をモール本体の幅方向における端部にきれいに取り付けることができると共に、モールの品質を一定にすることができる。しかも、装飾条片は接着テープなどによる十分な接着力が期待できない先細の端部が、係止爪によってモール本体に係止されているため、先細の端部が確実にモール本体に固定されて浮き上がるおそれがなくなり、長期に亘って良好な品質を維持することができる。また、係止爪が装飾条片の一端部のみに存在するため、装飾条片に金属メッキ処理等による反りを生じても、装飾条片の全長に渡って複数箇所に係止爪を設けた場合のように、係止爪と係止孔の位置関係が一部で狂うことがなく、係止爪を係止孔に挿入できなくなるおそれがない。しかも、本発明のモールは、装飾条片を係止爪による係止と接着でモール本体に固定するため、固定作業が容易であり、固定のための作業や装置にコストが嵩むこともない。
【0012】
さらに本発明では、前記装飾条片取付部において前記係止孔が形成されている部位では、前記屈曲面に取付壁面が存在せず、かつ前記係止孔の周縁を前記取付壁面の存在しない屈曲面の縁で開口し、前記モール本体の裏側から前記係止孔の開口を利用して前記係止孔内に前記装飾条片の係止爪が挿入可能な構成とすることによって、前記装飾条片を前記モール本体に取り付ける際に、前記装飾条片の係止爪をモール本体の裏側から前記係止孔に挿入係止し、その状態で装飾条片を前記装飾条片取付部の取付壁面に接着することができるため、モール本体の表面を係止爪との接触によって傷付けたりするおそれがなく、美観の良好なモールが得られると共に前記係止爪の係止作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係るモールの正面図と裏面図及び断面図である。
【図2】同実施例に係るモール本体と装飾条片の正面図及び裏面図である。
【図3】同実施例に係るモールの先端側の正面図とモール本体及び装飾条片の先端側の正面図である。
【図4】同実施例に係るモールの先端部の裏側斜視図である。
【図5】同実施例に係るモール本体部及び装飾条片の先端部の裏側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。図1ないし図5に示すモール10は、自動車のドア下モールとして用いられるものであって、モール本体11と、長さ方向L1の一端31a側が先細となった装飾条片31とで構成されている。なお、以下の説明においてL1,W1,T1は装飾条片の長さ方向、幅方向、厚み方向を示す。一方、L,W,Tはモール本体の長さ方向、幅方向、厚み方向を示す。
【0015】
前記モール本体11は、所要幅の長尺成形品からなり、長さ方向Lの一端11a側が先細になっている。前記モール本体11は、横断面形状が蒲鉾形状に湾曲した形状からなり、長さ方向Lと直交する幅方向Wの一端部に前記長さ方向Lに沿って装飾条片取付部15が設けられている。なお、前記モール本体11の幅方向Wは、厚み方向Tに対しても直交する方向である。符号25は、前記モール本体11の裏側13に形成されたクリップ取付座部であり、本実施例では、車体への取付用クリップが装着される。
【0016】
前記装飾条片取付部15は、前記モール本体11の表面側12から該モール本体11の裏側方向Eへ屈曲した屈曲面17と、前記屈曲面17における前記モール本体11の表面側12から離間した部位から前記モール本体11の幅方向Wの外方へ突出した取付壁面19とで構成されている。本実施例では前記屈曲面17におけるモール本体裏側方向Eの縁18から前記モール本体11の幅方向Wの外方へ前記取付壁面19が突出している。なお、前記屈曲面17と前記取付壁面19とはL字状の断面を形成している。前記屈曲面17の幅(奥行き)は、本実施例では、前記装飾条片取付部15に前記装飾条片31を取り付けた際に、前記モール本体11の表面側と前記装飾条片31の表面側がほぼ面一となる寸法とされている。
【0017】
前記装飾条片取付部15において、前記取付壁面19の幅(すなわち前記屈曲面17からの突出量)は、本実施例では前記装飾条片31の幅に対応させたものとなっており、前記装飾条片31の先細の一端31a側と対応する前記装飾条片取付部15の先端側16では、前記取付壁面19の幅が、対応する前記装飾条片31の部位の幅より小にされ、かつ前記装飾条片取付部15の先端側16における前記屈曲面17に係止孔21が形成されている。
【0018】
さらに本実施例では、前記装飾条片取付部15における前記係止孔21が形成されている部位では、前記屈曲面17の縁18aに前記取付壁面17が存在せず、前記取付壁面17の存在しない前記屈曲面の縁18aで前記係止孔21の周縁が開口し、前記モール本体の裏側から前記係止孔21の周縁の開口部分21aを利用して前記係止孔21内に後述の係止爪33が挿入可能となっている。本実施例では、前記係止孔21は、前記取付壁面19が存在しない前記屈曲面17の縁18aから凹状に切り欠かれた孔で構成されている。
【0019】
前記装飾条片31は、前記モール本体11よりも幅の狭い長尺品からなり、かつ、長さ方向L1の一端31a側が先細に形成されたものであり、前記モール本体部11における装飾条片取付部15に固定されている。本実施例では、前記装飾条片31は、樹脂の表面が金属メッキの施されたもので構成されている。なお、前記装飾条片31における先細は、前記装飾条片31の長さ方向L1と直交する幅方向W1の寸法が小さくなっている状態をいう。また、前記装飾条片31の幅方向W1は、前記装飾条片31の長さ方向L1と厚み方向T1(図5に示す)の両方に直交している。
【0020】
前記装飾条片31における先細の端部32には、前記装飾条片取付部15側へ突出した係止爪33が形成されている。前記係止爪33は、前記装飾条片31における先細の一端31a側へ向けて先端爪部35が屈曲したL字状のものからなる。前記係止爪33の基部34は、前記装飾条片取付部15の係止孔21に挿入可能なように、前記係止孔21よりも断面が小に形成され、また、屈曲した前記先端爪部35が係止孔21の裏側周縁に係止可能になっている。
【0021】
前記装飾条片31は、前記先細の端部32に形成された係止爪33の基部34が前記モール本体11の裏側から前記装飾条片取付部15の係止孔21に挿入され、前記先細の端部32以外の部分の裏面36が接着テープ39(図5に示す)によって前記装飾条片取付部15の取付壁面19に、前記モール本体11の表面側12から接着されている。なお、接着テープ39は、両面接着テープが好適であり、予め前記装飾条片31の裏面36あるいは前記装飾条片取付部15の取付壁面19に貼着しておく。また、接着テープに代えて他の接着剤を用いてもよい。
【0022】
前記装飾条片31の取り付けは次のように行われる。まず、前記装飾条片31又は前記取付壁面19に接着テープ等の接着剤を設けておく。そして前記装飾条片31の前記係止爪33を前記モール本体11の裏側から前記係止孔21に接近させて、前記係止爪33の基部34をモール本体11の裏側から前記係止孔21の開口部分21aを通して係止孔21内に挿入する。そして、前記係止爪33を支点として前記装飾条片31を回転させて前記取付壁19の表面側に接近させ、次に前記装飾条片31を前記モール本体11の先細側へスライドさせて前記係止爪33の基部34を前記係止孔21の縁に衝突させることにより前記装飾条片33の位置決めと係止孔21への係止爪33の係止を行い、その状態で前記装飾条片31を前記取付壁面19に重ねて接着する。
【0023】
前記構成からなるモール10は、前記装飾条片31において接着テープ等の接着剤を設けることができないあるいは接着剤の面積が小さくなって十分な接着力が得られない先細の端部32が、係止爪33によってモール本体11の装飾条片取付部15に係止されているため、前記装飾条片31の先細の端部32が浮き上がって見苦しくなることがなく、長期に亘って良好な品質を維持することができる。
【0024】
また、前記モール10は、前記装飾条片31をモール本体11の装飾条片取付部15に取り付ける際、前記装飾条片31の端部32の係止爪33を、前記装飾条片取付部15における係止孔21に係止して装飾条片31の位置決めを行った後に、前記装飾条片31を前記装飾条片取付部15の取付壁面19に接着固定することができるため、前記装飾条片31の位置決めを正確に行うことができ、前記装飾条片31の位置ズレがなく品質が一定のモールを得ることができる。
【0025】
さらに、前記モール10は、前記装飾条片31に金属メッキ処理等による反りが発生しても、前記係止爪33が装飾条片31の一端部のみに存在するため、装飾条片の全長に渡って複数箇所に係止爪を設けた場合とは異なり、前記係止爪33を係止孔21に挿入できなくなることがない。しかも、前記モール10は、前記装飾条片31を係止爪33の係止と接着テープ等による接着でモール本体11の装飾条片取付部15に固定するため、固定作業が容易であり、固定のための作業や装置にコストが嵩むこともない。
【符号の説明】
【0026】
10 モール
11 モール本体
15 装飾条片取付部
17 屈曲面
19 取付壁面
21 係止孔
31 装飾条片
33 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モール本体(11)の長さ方向と直交する幅方向の端部に前記長さ方向に沿って装飾条片取付部(15)が設けられ、前記装飾条片取付部(15)に長さ方向一端側が先細とされた装飾条片(31)が取り付けられたモール(10)において、
前記装飾条片(31)は、先細の端部(32)に前記装飾条片取付部(15)側へ突出した係止爪(33)が形成され、
前記モール本体(11)の装飾条片取付部(15)は、前記モール本体(11)の表面側から該モール本体(11)の裏側方向へ屈曲した屈曲面(17)と、前記屈曲面(17)における前記モール本体(11)の表面側から離間した部位から前記モール本体(11)の幅方向外方へ突出した取付壁面(19)とよりなると共に、前記装飾条片(31)の先細の一端側と対応する前記装飾条片取付部(15)の先端側で前記取付壁面(19)の幅が、対応する前記装飾条片(31)の部位の幅よりも小にされ、かつ前記装飾条片取付部(15)の先端側における前記屈曲面(17)に係止孔(21)が形成され、
前記係止孔(21)に前記装飾条片(31)の係止爪(33)が挿入係止されて前記取付壁面(19)に前記装飾条片(31)が接着されていることを特徴とするモール。
【請求項2】
前記装飾条片(31)は、樹脂の表面に金属メッキが施されたものからなることを特徴とする請求項1に記載のモール。
【請求項3】
前記装飾条片取付部(15)における前記係止孔(21)が形成されている部位では、前記屈曲面(17)に前記取付壁面(19)が存在せず、前記取付壁面(19)の存在しない前記屈曲面の縁(18a)で前記係止孔(21)の周縁が開口し、前記モール本体(11)の裏側から前記係止孔(21)の開口を利用して前記係止孔(21)内に前記係止爪(33)が挿入可能となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のモール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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