説明

ヤニ入り帯板ハンダ

【課題】ハンダ処理において、フラックスの塗布工程の不要なヤニ入り帯板ハンダを提供すること。
【解決手段】所要偏平幅、所要厚、所要長のハンダ材から成る帯板本体1において、偏平面の少なくとも一面で長手方向に沿って、断続的にヤニ融出部2を配列する。
このほか、前記ヤニ融出部2を帯板本体1の幅方向の少なくとも一端縁で長手方向に沿って、断続的に配列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電気製品の開閉機構部における基板相互の端子接続に用いるハンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から携帯電話機やデジタルカメラ、パーソナルコンピュータなどの開閉機構部での接続端子の配設された基板相互を接続するために使用されるハンダは、偏平状のものであるが、フラックスを塗布する塗布工程や前処理が要されるため、ハンダ処理コストがかさむものであった。
そこで、本出願人に関わる先の発明(特許文献1)を鋭意工夫することにより、ヤニを噴出させることがなく酸化させることもない偏平化したハンダを完成したものである。
すなわち、芯部にヤニ層を形成した線状のヤニ入りハンダに、凹溝状のヤニ溜りを形成しないで偏平に成形したヤニ入り帯板ハンダでは、ハンダ処理時の破裂現象によりハンダボールが飛散し、周辺に悪影響を与えることになる。これに対してヤニ溜りを形成した線状のヤニ入りハンダを偏平状に成形した場合には、ハンダ処理時にヤニ溜りが変形したヤニ融出部の薄いハンダ被膜の融解で破裂現象が発現せず、ハンダボールを飛散させないものである。
【特許文献1】特許第2706712号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、フラックスの塗布工程の不要なハンダ処理に用いるヤニ入り帯板ハンダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に記載したヤニ入り帯板ハンダは、所要偏平幅、所要厚、所要長のハンダ材から成る帯板本体において、
偏平面の少なくとも一面で長手方向に沿って、断続的にヤニ融出部を配列して成る。
請求項2に記載したヤニ入り帯板ハンダは、請求項1に記載したヤニ入り帯板ハンダにおいて、前記ヤニ融出部が、帯板本体の幅方向の少なくとも一端縁で長手方向に沿って、断続的に配列されて成る。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、各種電気製品の開閉機構部における基板相互の端子接続において、溶着部へのフラックスの塗布工程が不要となってハンダ処理コストの大幅な削減が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ヤニ入り帯板ハンダにおけるヤニ融出部の配列に関しては、偏平面の一面や両面、或いは幅方向の一端縁や両端縁などであり、また、偏平処理前のヤニ溜りを形成する凹溝は、直線と円弧による側面視四半円分のものから、二等辺のV形形状のものなどである。
【実施例】
【0007】
本発明を実施例により説明すると、図1に示すように、所要偏平幅、所要厚、所要長の非鉛系ハンダ材(Sn、Ag、Cu配合)から成る帯板本体1の偏平面の一面中央(中央に限定するものではない)に、長手方向に沿って断続的にヤニ融出部2が配列されて成る。
このヤニ融出部2は図2(a)に示すように、芯材としてのヤニ層3に薄いハンダ被膜4を介して連通される。このほか、ヤニ融出部2は図2(b)に示すように、偏平面の両面に設けられたり、幅方向の一端縁や両端縁(図外)にも設けられる。
【0008】
このようにして成るヤニ入り帯板ハンダAは、図3に示すように、長尺、所要線径のヤニ入りハンダワイヤ5に、回転刃の刃先の押込み(図外)により、直線と円弧による側面視四半円分の凹溝から成るヤニ溜り6を形成し、この状態のヤニ入りハンダワイヤ5を上下から圧延ローラー7、7で圧延して成形される。帯板成形の偏平処理に関しては、ヤニ層が噴出しないように圧力と回転速度、温度等が制御される圧延ローラー7によるほか、プレスによって成形することもできる。
したがって、図4に示すように、各種電気製品の開閉機構部の基板実装においては、上基板8と下基板9の端子接合部にヤニ入り帯板ハンダAが挟持され、加熱溶融によって両基板8、9は極めて簡単に、かつ、ハンダボールなどの発生もなくハンダ付けされる。
携帯電話機やデジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータなどの開閉機構部は膨大な数にのぼり、ハンダ処理におけるフラックスの塗布工程の解消によるコスト削減は、甚大な経済効果をもたらすこととなる。
なお、ヤニ入りハンダワイヤ5に形成されるヤニ溜り6としての凹溝は、前記の側面視四半円分の形状によるもののほか、図5に示すように、二等辺のV形形状でも形成される。そして、これらの凹溝は回転刃の刃先の押込み(図外)によって形成されるが、その際の押込みによって溢れるハンダ材は凹溝の周縁に盛り上がり10となって突出するが、線形の状態ではその盛り上がり10によって巻取り径が増径となるが、偏平処理によってその盛り上がり10が偏平化され巻取り径に影響を与えることがない。
このほか、ヤニ融出部2が帯板本体1の偏平面の一端縁に設けられたヤニ入り帯板ハンダAでは、基板実装時には二本のヤニ入り帯板ハンダA、Aを相互にヤニ融出部2が千鳥状に対向するように溶着部に設置して溶着に供されることも可とする。この例(図外)では、二本合わせの中央からそれぞれ左右にヤニが融出して良好な溶着が得られるのである。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明のヤニ入り帯板ハンダは、電気製品製造業において、ハンダ処理コストの大幅な削減を図り、量産コストの低減に大いに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わるヤニ入り帯板ハンダAの拡大部分斜視図。
【図2】図1の幅方向の断面を示す説明図で、(a)は偏平面の一面にヤニ融出部2を設けた拡大断面図であり、(b)は偏平面の両面にヤニ融出部2を設けた拡大断面図である。
【図3】ヤニ入りハンダワイヤ5からヤニ入り帯板ハンダAを成形する説明図。
【図4】開閉機構部での基板実装の説明図。
【図5】ヤニ入りハンダワイヤ5におけるヤニ溜り6の他の形状を示す説明図。
【符号の説明】
【0011】
1:帯板本体
2:ヤニ融出部
3:ヤニ層
4:ハンダ被膜
5:ヤニ入りハンダワイヤ
6:ヤニ溜り
7:圧延ローラー
8:上基板
9:下基板
10:盛り上がり
A:ヤニ入り帯板ハンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要偏平幅、所要厚、所要長のハンダ材から成る帯板本体において、
偏平面の少なくとも一面で長手方向に沿って、断続的にヤニ融出部を配列して成るヤニ入り帯板ハンダ。
【請求項2】
前記ヤニ融出部が、帯板本体の幅方向の少なくとも一端縁で長手方向に沿って、断続的に配列されて成る請求項1記載のヤニ入り帯板ハンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−302381(P2008−302381A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151107(P2007−151107)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507187846)
【Fターム(参考)】