説明

ユニットドーズ型製剤収納容器

【課題】ユニットドーズ型製剤を個別包装可能な容器としつつも、その取り出しを容易に行えるようにする。
【解決手段】透光性を有する樹脂で形成された、ユニットドーズ型製剤10を収納するよう開口された中空状の収納部22を複数、碁盤目状に配列した樹脂部20と、樹脂部20の収納部22の開口部分を閉塞するシート部30とを備える。このユニットドーズ型製剤収納容器はさらに、収納部22に収納されるユニットドーズ型製剤10の外形が非対称であり、該外形に応じた適切な取り出し方向を示す取出方向指示手段40を備えることができる。これにより、外形が非対称で取り出し方向が規定されたユニットドーズ型製剤10であっても、取出方向指示手段40によりユーザに対して正しい取り出し方向を誘導することができ、スムーズな製剤取り出しが実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や化粧品成分等を充填したユニットドーズ型製剤を収納する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品等に見られる液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ローションなどは、錠剤等と異なり一定の形態を有さないため、一回の使用量を制限することが容易でない。そこでこれらの形態でも使用量を制限するために、滴下式容器や定量ポンプ付き容器、あるいはスポイトやシリンジで採取するタイプの容器など、様々な製品が開発されている。しかしながらこれらの容器では、一旦開封すると開口部や注入口などが汚染される問題がある。このため衛生面や品質を保証するために、防腐剤や酸化防止剤などを添加することが不可欠となる。
【0003】
これに対し、製剤を一回で使い切るように投与量一回分の製剤を収納した1回投与型、いわゆるユニットドーズ型の製品は、衛生面や品質の面で優れており、事実、ポリプロピレン(PP)などの化学樹脂を使った一体成型品として、注射剤や点眼剤、あるいは内服液剤などが製品化されている。
【0004】
しかしながら、このような一体成型品は、耐薬品性に優れた堅牢な容器である反面、嵩張り、携行性が悪く、不燃材として廃棄の問題がある。また、誤飲した場合には、生体適合性材料ではないために、健康上の大きな問題があった。
【0005】
これに対し、ゼラチンや寒天、デンプン、セルロースなどの水溶性高分子材料を使ったいわゆるセルフカット式のソフトカプセルが開発されている。このセルフカットカプセルは、製剤を取り出す口部分をツイストして切り裂くことによって開栓する。このタイプは、水溶液の充填ができないという使用上の制限があることを除けば、容器としての堅牢性や耐久性は、化成品に劣るものの、小さく携行性に優れている。また、上記使用上の制限が、むしろ水に溶解するという特性のため、廃棄性に優れるという利点ともなる。
【0006】
しかしながら、この優れた特徴は、逆に吸湿性があるという問題ともなる。このため湿度を遮断できる容器に収納する必要があり、まとまった数量のカプセルを、アルミ袋や硝子容器、あるいはPPなど樹脂容器で包装して製品化されているのが現状である。また、吸湿によってカプセルが劣化し、ツイストオフ口の切り裂き性が低下するという問題もあった。
【0007】
このような包装は携行性の問題以外にも、一旦開封すると、一つのカプセルを取り出す都度に全てのカプセルが露出するので、衛生面での問題もある。また、度々の開封による吸湿を避けることはできず、これによりツイストオフ口部の切り裂き性が悪くなるという問題もあった。
【0008】
そこで、PTP(Press Through Pack)包装やイージーピールのブリスター包装により各製剤を個別包装することが考えられる(特許文献1参照)。従来、PTPやブリスター型容器に収納される製剤はカプセル状、錠剤など、外形が対称であるものが多く、背面シートを押し込むことで特に問題なく製剤を取り出すことができた。このため、製剤を容器に収納する際には、方向性を問題にすることはなかった。
【0009】
しかしながら、ユニットドーズ型製剤をツイストオフ口を有するソフトカプセル状とする場合は、その形状がどうしても非対称となる。非対称な製剤カプセルをPTPに収納する場合は、薬剤収納部分であるカプセル主部の側を押し出すことで容易に製剤を薬剤収納部から取り出すことができる。ただし、逆にねじ切り部分であるネック部の側を押しても、薬剤収納部とネック部との空間が大きいため、塩化ビニル製の薬剤収納部を相当強く押し出して大きく変形させないと製剤を取り出すことができず、極めて取り出しにくいという問題があった。製剤は様々な使用者(ユーザ)に利用されるため、特に老人や高齢者、弱視者においては、押し出し位置によって製剤が取り出し辛くなることが健常者には理解され難く、利便性に問題があった。また、ネック部の側から薬剤を押し出そうとすると、ネック部に過度の圧力が印加される結果、取り出しの際に薬剤を破損するおそれもある。特にネック部はねじ切りで開封できるように、他の部分よりも強度が弱く形成されているため、破損しやすく、この部分に過度の圧力が加わると薬剤収納部内部で薬剤が漏れ出すおそれもある。
【特許文献1】特開2000−281130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、ユニットドーズ型製剤を個別包装可能な容器としつつも、その取り出しを容易として高齢者でも利用できるようにしたユニットドーズ型製剤収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
上記課題を解決するために、第1発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、透光性を有する樹脂で形成された、ユニットドーズ型製剤を収納するよう開口された中空状の収納部を複数、碁盤目状に配列した樹脂部と、前記樹脂部の収納部の開口部分を閉塞するシート部と、を備えるユニットドーズ型製剤収納容器であって、さらに、前記収納部に収納される製剤の外形が非対称であり、該外形に応じた適切な取り出し方向を示す取出方向指示手段を備えることができる。これにより、外形が非対称で取り出し方向が規定された製剤であっても、取出方向指示手段によりユーザに対して正しい取り出し方向を誘導することができ、スムーズな製剤取り出しが実現できる。特に、従来の製剤は対称形であったため、どの方向からでも取り出し可能であり、また天地無用で収納されていたが、外形が非対称なユニットドーズ型製剤では方向性を有する。そこで取出方向指示手段で一定方向から確実に取り出せるように案内することで、スムーズな取り出しが図られ、特に高齢者や弱視者に適した製剤収納容器を実現できる。
【0012】
また第2発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記取出方向指示手段が、各収納部に収納されるユニットドーズ型製剤を各々同一の姿勢となるように配置した配列構造とできる。これにより、ユニットドーズ型製剤が同一姿勢で並んでいるため、ユーザは取り出し方向を一定方向として容易に認識できる。
【0013】
さらに第3発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記取出方向指示手段が、各収納部の表面に形成された、製剤を押し出す位置を示す押出突起とできる。これにより、ユーザは指で押出突起を確認できるため、弱視者を含め誰でも容易に取り出し位置を把握できる。
【0014】
さらにまた第4発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記取出方向指示手段が、各収納部の表面に形成された、ユニットドーズ型製剤を押し出す位置を示す凹凸面とできる。これにより、ユーザは指で凹凸面を確認できるため、弱視者を含め誰でも容易に取り出し位置を把握できる。
【0015】
さらにまた第5発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記取出方向指示手段が、各収納部の表面に表示された、ユニットドーズ型製剤を押し出す位置を示す押出表示とできる。これにより、ユーザは目で押し出し位置や方向を確認できるため、指が不自由な者でも容易に取り出し位置を把握できる。
【0016】
さらにまた第6発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記取出方向指示手段が、前記シート部が前記収納部の開口部分を閉塞する部分と、前記収納部の開口部分周辺の高低差を、0.1mm〜2mmの範囲に調整できる。これにより、シート部に遊び巾が設けられるため、ユーザは指でシート部の外部表面から指でなぞることで、内部に収納されるユニットドーズ型製剤の方向性を確認でき、弱視者を含めユーザは一々外観を確認せずとも指で容易に取り出し位置を把握できる。
【0017】
さらにまた第7発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、各収納部に収納されるユニットドーズ型製剤が、液状又はゲル状のユニットドーズ薬剤成分を内部に収納した中空状のカプセル主部と、前記カプセル主部と連なる、前記カプセル主部よりも外径を小さく括れさせた管状部分を形成するネック部と、を備えており、前記ネック部をねじ切ることで前記カプセル主部を開口してユニットドーズ薬剤成分を取り出し可能に構成しており、前記収納部に収納されるユニットドーズ型製剤を、前記カプセル主部側から取り出すように前記取出方向指示手段で指示できる。これにより、カプセル主部とネック部とで非対称な形状を有するユニットドーズ型製剤を、正しく取り出せるように取出方向指示手段で案内できる。
【0018】
さらにまた第8発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、透光性を有する樹脂で形成された、ユニットドーズ型製剤を収納するよう開口された中空状の収納部を複数、碁盤目状に配列した樹脂部と、前記樹脂部の収納部の開口部分を閉塞するシート部と、各収納部に収納されるユニットドーズ型製剤と、を備えるユニットドーズ型製剤を収納した収納容器であって、前記ユニットドーズ型製剤が、液状又はゲル状のユニットドーズ薬剤成分を内部に収納した中空状のカプセル主部と、前記カプセル主部と連なる、前記カプセル主部よりも外径を小さく括れさせた管状部分を形成するネック部と、を備えており、前記ネック部をねじ切ることで前記カプセル主部を開口してユニットドーズ薬剤成分を取り出し可能に構成しており、各ユニットドーズ型製剤が、薬剤収納部とねじ切り部とが同じ方向に並ぶよう、同一の姿勢で各収納部において収納できる。これにより、カプセル主部とネック部とで非対称な形状を有するユニットドーズ型製剤が同一姿勢で並んでいるため、各収納部からの製剤取り出しを容易に行うことができる。
【0019】
さらにまた第9発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記収納部に前記ユニットドーズ型製剤を収納した状態で、静置された前記ユニットドーズ型製剤のカプセル主部が、前記収納部の内面と最も近接する距離が、0.1mm〜2mmの範囲に調整することができる。これにより、ユーザは前記収納部を樹脂部から指でなぞることで、内部に収納されるユニットドーズ型製剤の方向性を確認でき、弱視者を含めユーザは一々外観を確認せずとも指で容易に取り出し位置を把握できる。
【0020】
さらにまた第10発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記収納部がユニットドーズ型製剤の外形に沿った非対称な外形に形成できる。これにより、ユーザは収納部に手で触れることでユニットドーズ型製剤の姿勢を把握できるので、該姿勢に沿って押し出し位置を的確に判別できる利点が得られる。
【0021】
さらにまた第11発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記収納容器を、ユニットドーズ型製剤をブリスター包装するブリスターパック包装容器とできる。
【0022】
さらにまた第12発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記ブリスターパック包装容器を、PTP包装とできる。
【0023】
さらにまた第13発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記ブリスターパック包装容器を、イージーピール式包装とできる。
【0024】
さらにまた第14発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、ユニットドーズ型製剤を水溶性のセルフカット式ソフトカプセルとできる。
【0025】
さらにまた第15発明に係るユニットドーズ型製剤収納容器は、前記セルフカット式ソフトカプセルを、魚を含む動物性タンパク質及びデンプン、水溶性高分子の1種以上からなるよう構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、ユニットドーズ型製剤収納容器を例示するものであって、本発明は、ユニットドーズ型製剤収納容器を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0027】
図1にユニットドーズ型製剤の外観図、図2にこのユニットドーズ型製剤を収納容器に収納する状態、図3にこの収納容器からユニットドーズ型製剤を取り出す様子を示す概略図を、それぞれ示す。
(ユニットドーズ型製剤)
【0028】
図1(a)の平面図及び(b)の側面図に示すユニットドーズ型製剤10は、セルフカット式のソフトカプセルである。このユニットドーズ型製剤10は、薬剤収納部分を構成するカプセル主部1と、ねじ切り(ツイストオフ)部分を構成するツイスト口部2とを有する。ツイスト口部2はさらに、ネック部3と頭部4で構成される。ツイスト口部2の頭部4を指で摘んで捻ることにより、ネック部3部分をねじ切り、カプセル主部1を開封して内部に収納されるユニットドーズ薬剤成分を取り出せる。
【0029】
カプセルは、カプセル主部1と頭部4とをネック部3で連結している。これらカプセル主部1とツイスト口部2とは一体に形成できる。このようにカプセルとは、必ずしも複数部材で閉塞する構成のみならず、一体の袋状のものも含む。
【0030】
ツイスト口部2は、ネック部3を管状としており、ネック部3の外形をカプセル主部1及び頭部4よりも小さく形成することで、ネック部3の破断を容易にしている。またネック部3を絞り込むことで、ツイストオフした際にカプセル主部1内のユニットドーズ薬剤成分が一度に溢れ出さないようする効果も得られる。
【0031】
一方ツイスト口部2の先端側の頭部4は、指で摘みやすいようにネック部3よりも大きく形成する。これによって、指で確実に頭部4を摘んで捻ることができ、一方でネック部3を小さく括れさせて破断すべき面積を小さくし、弱い力でも容易に開封できる。
【0032】
このような構成を実現するためカプセルの外形は、ネック部3で括れた瓢箪型とする。また、カプセル主部1はユニットドーズ型製剤10を収納する内部空間を確保するために大きくし、一方頭部4はツイストオフのための摘みが確保できれば足りるため小さくする。よってカプセル外形は図1(a)の平面図に示すように、カプセル主部1が大きく頭部4が小さい、左右非対称な形状となる。カプセル主部1と頭部4の比率は、例えば平面視100:3〜100:50程度とする。さらに厚さについても、図1(b)の側面図に示すように、カプセル主部1は内部空間を確保するために厚く、一方頭部4は、指で摘みやすいように薄く形成することが好ましい。このように頭部4は、好ましくは平板状として、親指と人差し指など2本指で摘み、かつ捻り易くできる。ただカプセルの形状は上記に限定されるものでなく、内部にユニットドーズ型製剤10を収納できる空間を確保しつつ、開封可能な形状であれば、どのような形状も利用できる。
【0033】
カプセルは、好ましくは水溶性のソフトカプセルとする。これにより、使用後のカプセルの破棄を容易にできる。カプセル主部1は中空状で、内部にユニットドーズ薬剤成分を保持する。ユニットドーズとは一回分の服用量あるいは投与量であり、使い切るように予め分量を設定することで、正確な分量を投与できる。
【0034】
ユニットドーズ薬剤成分は液状又はゲル状のものが利用できる。このような薬剤成分としては、植物油脂、合成油脂など医薬品、化粧品で使用可能な油性(脂溶性)、或いは乳剤性や水溶性分散媒に、薬物、化粧品成分、及びこれらの添加物を分散した液状、ゲル状物質である。このように本明細書においてユニットドーズ型製剤には、医薬品等の薬剤の他、健康補助食品や化粧品等も含む意味で使用する。
【0035】
疎水性薬物及び化粧品成分は、そのまま溶解し、親水性薬物や化粧品成分は、そのまま微分散する、あるいはSolid-in-Oil(以下「S/O」という)法により疎水性に物性を変えて、分散して調製する。S/Oの調製法は、親水性薬物あるいは化粧品成分(以下「薬物」という)を精製水に溶解した溶解液aと、疎水性界面活性剤を疎水性溶媒に溶解した溶解液bを混和し、乳化した上で、減圧乾燥や凍結乾燥により脱溶媒、脱水を行い、薬物−界面活性剤複合体(以下「S」という)を作製することで脂溶化(以下「LipoS」という)を図り、それを脂溶性分散媒に分散する。
【0036】
これらの薬物が親水性薬物の場合、S/O化に使用する疎水性の界面活性剤としては、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレートなどのグリセリン脂肪酸エステル類、テトライソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル類、などが挙げられるが、これらは、2種類以上であってもよい。
【0037】
さらに本実施の形態に使用される有機溶剤として、医薬用、食用、化粧品用として用い得る油成分や有機溶媒であれば特に制限はなく、例えば植物油、動物油、中性脂質(モノ置換、ジ置換、又はトリ置換のグリセライド)、合成油脂、及び/又はステロール誘導体を挙げることができる。具体的には、植物油として、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、落花生油、サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油、又はシソ油等を、動物油として牛脂、豚油、魚油等を、中性脂質として、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチン、トリステアリン、トリミリスチン、又はトリアラキドニン等を、合成脂質としてアゾン等を、ステロール誘導体としてコレステリルオレエート、コレステリルリノレート、コレステリルミリステート、コレステリルパルミテート、又はコレスレリルアラキデート等を挙げることができる。これらは、2種以上であってもよい。
【0038】
また好ましい油成分としては、トリグリセライドやこれを主成分とする植物油や動物油を挙げることができる。実用的には、大豆油、ゴマ油、スクワランやスクワレンが好ましく、特に高純度に精製されたオリーブ油が好ましい。
【0039】
医薬品としては、例えば内服剤、外用剤、点眼剤、点鼻剤、歯科用剤が挙げられるが、液剤、ゼリー剤などの内服剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、液剤などの外用剤や点鼻剤、あるいは歯科用剤なども利用できる。これらの剤型の製造は既知の方法が利用できる。また化粧品としては、例えばクリーム、乳液、化粧液、美容液、クレンジングなどが挙げられる。
【0040】
さらにユニットドーズ薬剤成分を収納するユニットドーズ型製剤10の外形すなわちカプセルには、ゼラチンからなるゼラチンカプセルや、ゼラチンを使用しないノンゼラチンカプセルが利用できる。ゼラチンカプセルの製造は、ウシ、豚などの動物性、あるいは魚類などのゼラチンを1種あるいはそれ以上を組み合わせたものに、ヒドロキシプロピル化デンプンやタピオカデンプンなどに、グリセロール、精製水を添加し加温混和しスラリー化した後、ロータリーダイカプセル化機を使って製造する。例えば、30重量%の魚類ゼラチンに34重量%グリセリン及び12重量%加工デンプンに、24重量%の精製水を加えたゼラチンカプセル原料を55℃に加温しながら、溶解する。その後、真空ポンプで脱気しながら液が透明になるまで十分攪拌し、保温ジャケット付きの容器に移す。そして製品の温度50〜55℃に維持しながら、ブレンダーを使用して、パール色素を添加し練合したものを、スプレッダーボックスを38℃〜45℃に維持した状態で、キャスティングドラムを8℃〜12℃に冷却しながら、注入ウエッジを28℃〜35℃の温度に維持してゼラチン塊を製造する。さらにロータリーダイカプセル化機を使ってカプセル充填し、回転乾燥機で乾燥し、ツイストオフ口付きゼラチンカプセルとする。
【0041】
一方、ノンゼラチンカプセルの製造方法の一例を挙げると、水を容易に吸収できる親水性コロイド物質(以下「ヒドロコロイド」という)が植物抽出液、海藻抽出物、植物種子ゴム質又は粘質物、穀物ゴム、修飾セルロース及び加工デンプンであり、好ましくは、カラギーナン、アルギン酸塩類、寒天、グアール、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、未加工デンプン、加工デンプン、ジェランガムから成る群から1種あるいはそれ以上から成る、また可塑剤がソルビトール、マルチトール及びグリセロールから成る群から1種あるいはそれ以上から成る混合物を、スラリー状にした後、ロータリーダイカプセル化機を使った製造したノンゼラチンカプセルとする。
【0042】
例えば、特開2005−112849号公報に開示される方法により、グリセリン及びデンプン、更に微量のパール色素を加えた精製水を加えたノンゼラチンカプセル原料を、真空ポンプで脱気しながら液が透明になるまで十分攪拌し、保温ジャケット付きの容器に移し、ロータリーダイカプセル化機を用いて充填する。この製造方法は、原料と溶解条件が異なる以外、上述のゼラチンカプセルとほぼ同様である。このようにして形成されたカプセルを、回転乾燥機で乾燥して、ツイストオフ口付きノンゼラチンセルフカットカプセルを得る。また、これらのノンゼラチンカプセルの基剤に、上述の動物性、あるいは魚類のゼラチンを一部添加することも可能である。
(ユニットドーズ型製剤収納容器)
【0043】
上記のような外形を非対称とするユニットドーズ型製剤10のカプセルは、専用のユニットドーズ型製剤収納容器に収納される。図2に、実施の形態1に係るユニットドーズ型製剤収納容器を示す。このユニットドーズ型製剤収納容器100は、ユニットドーズ型製剤10を個別に収納する収納部22を複数配置した樹脂部20と、樹脂部20の一面に貼付されて収納部22を閉塞するシート部30とで構成される。
【0044】
この例では、ユニットドーズ型製剤収納容器100を、ユニットドーズ型製剤10をブリスター包装するブリスターパック包装容器としている。またユニットドーズ型製剤10の取り出しに際して、収納部22を指で押し潰すことで、裏面のシート部30を破断して内部のユニットドーズ型製剤10を押し出す、いわゆるPTP式包装としている。PTP式包装は、押し出し式ブリスター包装とも呼ばれる。
(樹脂部20)
【0045】
樹脂部20は、透光性を有する樹脂で形成され、収納部22に収納されるユニットドーズ型製剤10が外部から視認できるようにする。樹脂部20は、ユニットドーズ型製剤10を外力から十分に保護しつつ、取り出しの際には指で押して変形できる強度とする。また、湿度と乾燥から内部のユニットドーズ型製剤10を保護するために、通気性を抑えてバリア機能を備えることが好ましい。このような材質としては、ポリエステルやポリエチレンなどの樹脂、具体的にはポリプロピレン(PP)やポリ塩化ビニル(PVC)が利用できる。また必要に応じて透光性を維持しつつ着色し、内部のユニットドーズ型製剤10を紫外線などから保護することもできる。
(収納部22)
【0046】
収納部22は、ユニットドーズ型製剤10を収納するポケット状のカプセル収容室である。収納部22は樹脂部20上に複数、ほぼ一定間隔で碁盤目状に配置される。各収納部22は、ユニットドーズ型製剤10が1個収納できる大きさに形成される。一般にはユニットドーズ型製剤10よりも一回り大きなサイズに設計される。具体的には、これによってシート部30を溶着する際の熱の影響を回避しつつ、収納部22を押し潰して内部に収納されるユニットドーズ型製剤10を押し出しできる程度のマージンに設計される。このような収納部22は、樹脂シートをプレス加工することで簡単に形成できる。なお碁盤目状とは、隣接する収納部22をオフセット状に配置する、いわゆる千鳥状の配列も含む意味で使用する。
(シート部30)
【0047】
樹脂部20の裏面側にはシート部30がほぼ全面に貼付される。これにより各収納部22の開口は、閉塞される。シート部30は、樹脂部20と同様に外部から保護するための強度とバリア性が求められる。一方で、収納部22を潰して押し出されるユニットドーズ型製剤10で破断できるよう、適度な破断性も必要となる。このような特性を備えるシート部30の材質としては、好ましくはアルミニウム箔やポリ塩化ビニルなどが利用できる。シート部30は多層構造とでき、例えば外部側から順にオーバーコート/インキ/アルミニウム箔/インキ/ヒートシール材コート層が積層される。シート部30と樹脂部20の接合は、熱溶着や接着剤が利用できる。これによってシート部30と樹脂部20とは気密に接合される。このようにしてシート部30と樹脂部20とが接合された後、必要に応じて切り取り線が形成される。
【0048】
PTP包装は、ユニットドーズ型製剤10を1個のみ収納する容器とすることもできるが、多くの場合は多数の収納部22を備えるシート状としている。例えば縦2個x横5個からなる一シート10個のPTP容器や、縦3個x横7個からなる21個のPTP容器等とする。一シート中の包装数量は、用途や目的に応じて設定される。
【0049】
このようなPTP包装からユニットドーズ型製剤10を取り出す様子を、図3に示す。この図に示すように、収納部22を樹脂部20側から指で潰して内部のユニットドーズ型製剤10を押し出す。この際、ユニットドーズ型製剤10の形状が非対称であるため、より大きいカプセル主部側を押し潰すことで、外力がユニットドーズ型製剤10に伝わりやすく容易にユニットドーズ型製剤10を外部に押し出せる。逆に頭部側を押し潰そうとすると、頭部4は薄いため収納部22の壁面との隙間が相当大きく、樹脂部20の変形がユニットドーズ型製剤10に伝達されにくくなり、かなり深く押し潰さないとユニットドーズ型製剤10を押し出すことができなくなる。特に高齢者になると、この作業が困難となる。そこで、このような非対称のユニットドーズ型製剤10においては、収納部22の押し出し位置をカプセル主部側に規定する必要がある。このため、ユニットドーズ型製剤収納容器100は、収納されるユニットドーズ型製剤10の適切な取り出し方向を示す取出方向指示手段40を備えている。
(取出方向指示手段40)
【0050】
取出方向指示手段40は、ユーザに対して収納容器の押し出し位置又は方向を指定する。すなわち具体的な位置をピンポイントで指定する他、図3に示すように収納部22の長手方向の中心からどちら側に押圧するかを示すだけでも、十分な取り出しの容易化が図られる。このような取出方向指示手段40として、図4の例では、ユニットドーズ型製剤10を押し出す位置を示す押出突起41を、各収納部22の表面に形成している。これにより、ユーザに対して最適な押し出し位置を示すことができ、ユーザは視認によるのみならず、指で収納部22を触って押出突起41の位置を触感でも確認できるため、老眼や弱視者でも容易に取り出し位置を把握できる。このような押出突起41は、プレス加工により収納部22の成形と同時に容易に成形できる。また、押出突起41を樹脂部20と別部材とすることもできる。例えば、シール状の突起を収納部22の表面に貼付することで、既存のPTPシートに取出方向指示手段を付加できる。加えて、この方法であれば図2に示すようにユニットドーズ型製剤10が各収納部22に収納される姿勢を一定方向に揃える場合に限られず、ランダムな姿勢であっても個別に押出突起41を付加して、押し出し位置をユーザに指示でき、正に既存のPTPシートに容易に付加できるという利点が得られる。
【0051】
また取出方向指示手段40を、ユニットドーズ型製剤10を押し出す位置を表示する押出表示42とすることもできる。このような例を図5に示す。ここでは各収納部22の表面にユニットドーズ型製剤10を押し出す位置を矢印で表示している。これにより、ユーザは押し出し方向がいずれの側であるかを視認して容易に把握できる。また、矢印をより正確に、押し出し位置を示すように設けることもできる。例えば矢尻の位置を押し出し位置と規定すれば、方向のみならず正確な押し出し位置も告知できる。また矢印に限られず、○や△などの記号や文字、模様などで押し出し位置又は方向を指示することもできる。
【0052】
さらに、これらの表示を刻印により設けることで、上記図4と同様に視覚のみならず触覚でも把握でき、一層確実にユーザに対して告知が図られる。加えて、図5の例では押出表示42を収納部22側に設けているが、シート部30側に設けても良いし、あるいは収納部側とシート部側の両方に設けることもできる。シート部側に押出表示を設ける際は、印刷により簡単に実現できる。また既存の印刷文字の位置を、押し出し位置となるように調整することで、既存の構成のまま取出方向指示手段を実現できる。例えば容器に収納される薬剤名や製造メーカ名、あるいは材質を示す「プラ」やリサイクルのマークなどが、押し出し位置に位置するように、印字の間隔及び位置を調整する。これにより文字情報や記号情報を、押し出し位置を示す指標として兼用できる。
【0053】
あるいは他の取出方向指示手段40の例として、押し出し位置又は方向に、他の部分と区別できるような加工を施してもよい。例えば図6に示すように、押し出し位置の側の収納部22の樹脂表面に、凹凸面43として梨地処理を施すことで、外観上透明度が変化し、ユーザに対して視覚的に方向を告知できる。加えて、ユーザが手で収納部22を触ることでも、梨地の質感の変化によって指示領域を把握できるので、上記と同様の効果が得られる。このような加工処理は梨地処理に限られず、例えば樹脂部を透光性の塗料で着色したり、透明度の異なるシールを貼付したり、網掛けや斜線、ハッチング等のパターンを施すなど、他の部分と異なる外観及び/又は触感を表現できるあらゆる手段が利用できる。
【0054】
さらに同様の加工は収納部側のみならず、シート部側に設けることもできることは言うまでもない。例えば図7(a)の断面図及び(b)の底面図に示すように、シート部30の取り出し位置を示す側に凹凸面44を設ける。これによって上記と同様、ユーザは触覚もしくは視覚によって取り出し位置又は方向を把握できる。さらにこのような凹凸面は、収納部やその開口部分を閉塞するシート部30の領域のみならず、その周囲に設けることもできる。例えば、シート部や樹脂部の、押し出し位置に隣接する平板部分24の領域に、取出方向指示手段40として凹凸パターンを設ける。図8に示す変形例では、収納部22の開口端縁の外側の平板部分24に、取出方向指示手段40として半円状の凹凸パターン44Bを設けている。この例では裏面のシート部側に凹凸パターン44Bを設けているが、表面の樹脂部側に凹凸パターン44Bを設けることもできる。これによりユーザは指で凹凸パターンをなぞりながら、あるいは目視により凹凸パターンを探して、該凹凸パターンに沿って指を押し当ててユニットドーズ型製剤を押し出すことができる。またシート部の破断部分や収納部の押し出し部分に取出方向指示手段を設けると、使用後は破断や変形によって方向の確認が困難となるが、平板部分24の領域であればその心配が少ない。特に近年は、PTPシートの誤飲防止のため薬剤単位でのPTPシートの個別切り離しを避ける傾向にあり、全数を使用するまで捨てられずに残ることも多くなっている。使用後の収納部周辺に施された取出方向指示手段によっても押し出しの方向が確認できれば、より便利にかつ確実に取り出し方向を把握できる。
【0055】
さらに、正確な押し出し位置でなく方向のみを告知するのであれば、より簡便な方法としてPTPシートに設けられた切り取り線も利用できる。例えば図9に示すように、切り取り線45を構成する各打ち抜き形状を非対称として、方向を区別できるようにすれば、ユーザは切り取り線45部分を見て、あるいは触って、取り出し方向を確認できる。また図10に示すように、切り取り線46の打ち抜き形状を位置に応じて変更することでも、同様に方向を区別できる。
【0056】
さらに、収納部の形状自体で押し出し方向を指示することもできる。図11に示すように、収納部22Bの形状を左右非対称とすることで、ユーザは容易に押し出し方向を確認できる。特に収納部22Bのポケットに収納されるユニットドーズ型製剤10は非対称であるため、収納部22Bの形状もこれに応じて非対称とすることがスペース効率や外形保護の面からも好ましい。このような外形の変化を、押し出し方向あるいは位置の指示にも併用することで、ユニットドーズ型製剤10の一層の利用促進が期待できる。
【0057】
さらにまた、他の取出方向指示手段40の例として、シート部30で収納部22の開口を閉塞する部分に遊び巾dを持たせることでも、ユニットドーズ型製剤10の姿勢を把握できる。すなわち、図12に示すように、シート部30を樹脂部20に貼付する際の引張力を調整し、若干の弛みを持たせることにより、図12(c)に示すようにシート部30の裏面からユーザが指でユニットドーズ型製剤10を探ることができる。これによりユニットドーズ型製剤10の姿勢が、収納部22の長手方向にいずれの向きで配置されているか、言い換えると頭部4がどこに位置しているかを手で判別でき、確実にこの部分を押し出すことができる。例えば、シート部30が収納部22の開口部分を閉塞する部分と、収納部22の開口部分周辺すなわち平板部分24との高低差を、0.1mm〜2mmの範囲に、より好ましくは0.5〜1.0mm、さらに好ましくは0.6〜0.8mmに調整する。このような高低差を設けること、すなわちシート部30に遊び巾dを設定することで、ユーザは遊び巾dの弛みを利用して指で収納部22内のユニットドーズ型製剤10の表面をなぞることができ、ユニットドーズ型製剤10の姿勢を把握しやすくできる。特に、後述する図15のようにユニットドーズ型製剤10自体に取出方向指示手段47として凹凸模様を設けておき、この凹凸面がシート部30側に面する姿勢で収納しておけば、ユーザはこの凹凸を手がかりとしてユニットドーズ型製剤10の姿勢を一層容易に把握できる。
【0058】
さらに、収納部22とユニットドーズ型製剤10の間隙の量を調整すれば、上記図12と逆に収納部22の外部からユニットドーズ型製剤10を指でなぞることで方向性を把握できる。図13(a)に示す変形例では、収納部22にユニットドーズ型製剤10を収納して静置した姿勢で、ユニットドーズ型製剤10のカプセル主部1が、収納部22の内面と最も近接する距離d2を、指で収納部22を変形させてカプセル主部1に触れることができるように調整している。これにより、ユニットドーズ型製剤10の主部1が収納部22内のどのあたり、例えば左右どちら側に位置しているかを手で触って判別でき、確実にこの部分を押し出すことが可能となる。
【0059】
距離d2、すなわちカプセル主部1と収納部22の内面との隙間は、好ましくは0.1mm〜2mmの範囲に調整する。これにより、シート部30を樹脂部20に接着する際の熱によって、収納部22に収納されるユニットドーズ型製剤10が変形しない程度に離間できる隙間を設けつつ、一方で指で収納部22を変形させてユニットドーズ型製剤10をなぞることができる程度に近接させた状態を維持できる。
【0060】
さらにまた、図14に示すように収納部側とシート部側の両方から指で摘むようにして、ユニットドーズ型製剤10を探ることができる。この方法であれば2本の指の触覚を使って、ユニットドーズ型製剤10の姿勢を一層確実に把握できるので好ましい。
【0061】
遊び巾dは、収納されるユニットドーズ型製剤10の外形やサイズ、また収納部の形状などに応じて、最適に調整される。すなわち、遊び巾が小さすぎるとシート部底面からの応力を内部のユニットドーズ型製剤が受けやすくなり、物理的な損傷の可能性が生じ、一方で遊び巾が大きすぎると、指でユニットドーズ型製剤の外形をなぞることができなくなる。そこで、このようなユニットドーズ型製剤の保護とユーザの把握しやすさのバランスを考慮して最適な遊び巾に設定される。
【0062】
なお、上記の例ではいずれも、押し出し位置又は方向に取出方向指示手段を設けた例を示したが、逆に反対側に取出方向指示手段を設けても、そのような指示をユーザに行う限り同様の告知効果が得られることは言うまでもない。例えば、図5の例では、図において収納部の右側に矢印を表示しても、矢印の向きで反対側の左側を押し出すことをユーザに対して表示できる。また図6の例でも、押し出し面を平滑面として、押し出し面でない領域に梨地処理を施せば、ユーザは平滑あるいは透明な領域を押し出すことを容易に認識できる。要するに、押し出し位置又は方向をユーザに告知できれば足りるため、取出方向指示手段を設ける位置によって左右されるものではない。
【0063】
さらに、容器側でなく収納されるユニットドーズ型製剤自体に取出方向指示手段を設けることもできる。例えば図15に示すように、ユニットドーズ型製剤10のカプセル主部1に押出表示47として矢印を表示或いは刻印することで、図5と同様、視認による方向性又は押し出し位置の確認が行える。この方法であれば、従来の容器をそのまま利用できる利点が得られる。
【0064】
さらにまた、個別の取出方向指示手段を設けずとも、ユニットドーズ型製剤10の配列自体で取り出し方向を指示することもできる。すなわち、図2に示すように、収納されるユニットドーズ型製剤10の姿勢をすべて一定方向に統一することで、ユーザはPTPシートを一瞥しただけで取り出し方向を視覚的に把握できる。この方法であれば、既存の容器を何ら変更することなく、安価に且つ容易にユニットドーズ型製剤の取り出しをユーザに指示できる。また、この方法であればユニットドーズ型製剤を収納したPTPシートが見た目にも美しいという利点が得られる。すなわち、従来のPTP容器では、外形が対象なカプセルや錠剤を収納していたため、方向が一定でなかった。例えば赤と白の2色に中央で塗り分けられたカプセルの場合、PTPシートに収納されるユニットドーズ型製剤10の向きがばらばらであり、見た目にも美しくなかった。これに対して図2に示すような一定方向の配列に規定することで、取り出し方向を指示できることに加えて、見栄えも改善できるという意匠的な効果も得られる。
【0065】
さらに、上記の取出方向指示手段の例は、単独のみならず複数を組み合わせることもできることは言うまでもない。これによって、一層確実に押し出し位置又は方向をユーザに告知できる。例えば切り取り線で告知する場合は、一旦PTPシートが切断された後では、方向を区別し難いことがあるが、図5の矢印を併用すれば、切り離し後も方向を確認できる。
【0066】
また取出方向指示手段を各収納部に個別に設けることで、仮にユニットドーズ型製剤収納容器を収納部毎にミシン目や鋏などで分離されても、各収納容器の取り出し方向を正確に把握できることは、ユニットドーズ型製剤の利用促進に大きく貢献できる。あるいは、上述の通り近年ユーザがPTP容器ごと誤飲する事故を防止する観点から、ミシン目によるPTPシートの個別切り離しをできなくする傾向にあるが、この場合はすべての収納部に個別に取出方向指示手段を設けずとも、他の収納部に設けられた、あるいは複数の収納部に対して纏めて設けられた取出方向指示手段を利用して、取り出し方向を把握できる。
(イージーピール式包装)
【0067】
上記の例では、PTP包装について説明した。ただ本発明はPTP包装に限られず、他の包装形式、例えばイージーピール式包装を利用することもできる。図16に実施の形態2として、イージーピール式包装を採用したユニットドーズ型製剤収納容器200の外観を示す。特にユニットドーズ型製剤10のカプセルの柔軟性や強度の面で、PTP包装から押し出した際に、カプセルが破壊されて、薬剤成分が吐出されるような場合には、押し破って取り出す構成よりも、図17に示すようにシート部30を収納部22毎に剥離して開封し、個別に取り出す構成が好ましい。イージーピール式包装は図17に示すように、ユニットドーズ型製剤収納容器200の裏面から、シート部30を手で剥離(ピール)することによって開口し、収納部22のユニットドーズ型製剤10を取り出す。このためシート部30の一部に、樹脂部20との接着を行わないピール部分を設け、剥離用のタブ32を構成する。またタブ32でシート部30を剥がす際に、隣接する収納部22のシート部30を剥がさないようにするために、収納部22同士の間でシート部30と樹脂部20の接着面にミシン目やハーフカットのカット目(切り取り線)を形成する。これにより、所望の収納部22のシート部30のタブ32のみを剥離し、隣接する収納部のタブに影響を与えることなく、1回分のユニットドーズ型製剤10のカプセルを容易に取り出すことができる。またシート部30と樹脂部20の接着強度は、剥離可能な強度とする。さらにシート部30は破断の必要はないものの、剥離し易いように柔軟性を備えることが望ましい。
【0068】
このようなイージーピール式包装でも、取り出し方向を取出方向指示手段で規定することで、取り出し作業を容易にできる。ただ、イージーピール式包装の場合はPTPとは反対の、頭部側から取り出すことが好ましい。頭部4は平板状で摘みやすく、逆にカプセル主部1は大きいため収納部22との隙間が小さく、摘みにくいからである。よって、上記のPTPとは逆に頭部4の方向を示すように、取出方向指示手段を設けることが好ましい。例えば、頭部側の、剥離用のタブに取出方向指示手段として矢印や凹凸を設ける。
【0069】
またイージーピール式包装とPTP包装を組み合わせたハイブリッド型とすることもできる。すなわち、収納部22の表面を指で押し潰す方法、又は裏面のシート部30を剥離する方法のいずれもを利用できるように構成することもできる。この場合は取出方向指示手段40として、例えば表面側には収納部22の押し潰し位置(カプセル主部側)を表示し、裏面側にはシート部30の剥離用タブ32の位置(頭部側)を表示する。
【0070】
以上の例ではツイストオフ型のユニットドーズ型製剤を収納する例について説明したが、本発明は収納されるユニットドーズ型製剤を上記に限定するものでなく、形状が非対称で取り出し方向が規定される他の固形薬剤、例えば経口用の錠剤やカプセル剤にも好適に利用できることは言うまでもない。
【0071】
以下、実施例として種々のユニットドーズ型製剤を調製し、ユニットドーズ型製剤容器に収納する例を説明する。
【実施例1】
【0072】
(ビタミンE含有精製オリーブ油/ゼラチンカプセルのPTP包装製品の製造)
ビタミンE0.5gを溶解した精製オリーブ油999.5gに分散した油性成分を、魚ゼラチンを使って、富士カプセル株式会社(静岡県富士宮市)においてビタミンE含有精製オリーブ油/セルフカット口付きゼラチンカプセル(容量250mg)を製造した。このカプセルを、ブリスターパッキングマシンPF−D1型PTP包装機(マルホ発條工業株式会社製)を使って、PTP包装を行い、実施例1に係るユニットドーズ型製剤を作製した。
【0073】
PTP包装の蓋材を構成するシート部30と、底材を構成する樹脂部20の全体構成については、図2に示す通りである。なお図2においては、取出方向指示手段の図示を省略している。樹脂部20として、ポリ塩化ビニルシート(住友ベークライト株式会社製、長さ70mm、巾140mm)を用い、専用型を用いて凹状の収納部22を形成した。さらに収納部22及びその周囲の平板部分24を扁平に形成したシート部30に、アルミニウム箔とポリエチレンフィルム(以下「PE」という)から成る積層フィルム(昭北ラミネート工業株式会社製、長さ70mm、巾135mm)を使用した。このシート部30を樹脂部20の上面に対してヒートシールする。ここで遊び幅dは0.7mmとした。また包装されたPTP包装は、1シート縦2列x横5行の計10個のカプセルに調製されたものである。このPTP包装でセルフカット口付きゼラチンカプセルを包装することにより、ゼラチンカプセルの十分な保護が図られると共に、上述した取出方向指示手段を設けることで、取り出し性の向上が図られた。
【実施例2】
【0074】
(VC−LipoSとVEを含有した精製オリーブ油から成るセルフカット口付きゼラチンカプセルPTP包装製品の製造)
また実施例2として、VC−LipoSとVEを含有した精製オリーブ油から成るセルフカット口付きゼラチンカプセルPTP包装製品を作製した。まずショ糖脂肪酸エステル(ER−290)8gをヘキサン75gに完全に溶解させる。別に、精製水50gにクエン酸0.1g、リン酸アスコルビルMg(VCPMg:以下「VC」と略す)1gを加え、完全に溶解させる。この水溶液を、前記ショ糖脂肪酸エステル(ER−290)を溶解したヘキサン溶液に加え、ホモジナイザーで20000rpm、5分間乳化を行う。乳化後、エバポレータでヘキサン相を除去する。溶媒除去後、−45℃で凍結させ凍結乾燥処理を行い、完全に溶媒を除去することでVC−界面活性剤複合体(VC−LipoS)を調製した。このVC−LipoSを、富士カプセル株式会社(静岡県富士宮市)において、ビタミンEを溶解した精製オリーブ油995gに分散し、VC−LipoS−ビタミンE/精製オリーブ油分散液を調製した上で、専用型を使って魚ゼラチンを用いたセルフカット口付きゼラチンカプセルに250mg/個充填した。このカプセルを、ブリスターパッキングマシンPF−D1型PTP包装機(マルホ発條工業株式会社製)で、実施例1と同様の方法で、専用型に形成された縦2列x横5行からなるカプセル10個入りのシートにPTP包装した。この実施例2も上記実施例1と同様、PTP包装に上述した取出方向指示手段を設けることで、取り出し性の向上が図られることが確認できた。
【実施例3】
【0075】
(VC−LipoS−VE含有精製オリーブ油/ノンゼラチンカプセルPTP包装製品の製造)
さらに実施例3として、実施例2で製造したVC−LipoS−ビタミンE/精製オリーブ油分散液を、富士カプセル株式会社(静岡県富士宮市)に委託し、同社の開発したセルフカット口付きのノンゼラチンカプセルに360mg/個充填した後、実施例1に従いPTP包装した。本カプセルに360mg中に充填された精製オリーブ油中に、0.05%VC、0.05%VEを含有するものである。この実施例3も上記実施例1等と同様、PTP包装に上述した取出方向指示手段を設けることで、取り出し性の向上が図られることが確認できた。
【実施例4】
【0076】
(VC−LipoS−VE含有精製オリーブ油/ノンゼラチンカプセルのイージーピール可能なブリスター包装製品の製造)
さらに実施例4として、実施例3で製造したカプセルを、ブリスターパッキングマシンPF−D1型PTP包装機(マルホ発條工業株式会社製)で、イージーピール専用成形型を使って、ブリスター包装した。ここでは図16(a)及び(b)に示すように、PVCシート(住友ベークライト株式会社製)に凹状に、カプセル収容室として収納部22を形成する。収納部22の周囲及び平面部に貼付されるシート部30は、イージーピールフィルムを貼り合わせたシート(昭北ラミネート工業株式会社製、PVC用イージーピールアルミニウム箔)である。このシート部30は、イージーピール方式で剥離されるシール部となり、収納部22の周囲及び平面部にイージーピールが可能なようにシールする。なお、イージーピール式ブリスター包装は、図16(a)及び(b)に示すように各収納部22の2つ毎に、未シール部分であるタブ32が形成されている。タブ32や未シール部分の形状、大きさ、位置は、収納されるユニットドーズ型製剤10の形状、サイズなどに応じて適宜設定される。この実施例4も上記実施例1等と同様、イージーピール包装容器に上述した取出方向指示手段を設けることで、取り出し性の向上が図られることが確認できた。
【実施例5】
【0077】
(VE含有精製オリーブ油/ゼラチンカプセルのイージーピール式ブリスター包装)
さらに実施例5として、実施例1で調製したカプセルを、ブリスターパッキングマシンPF−D1型PTP包装機(マルホ発條工業株式会社製)にイージーピール専用型を使って包装し製造した。この実施例5も上記実施例4等と同様、イージーピール包装容器に上述した取出方向指示手段を設けることで、取り出し性の向上が図られることが確認できた。
【実施例6】
【0078】
(ゼラチンカプセルのセルフカットのツイストオフ性とPTP包装の影響)
次に実施例6として、上記実施例2で製造したVC−LipoSとVEを含有した精製オリーブ油から成るセルフカット口付きゼラチンカプセル(ユニットドーズ型製剤10)とそれをPTP包装した製品を高温、高湿度下に放置した際の、セルフカットのツイストオフ(切り裂き)性について、比較検討した。
【0079】
ここでは図18に示すように、上記ゼラチンカプセル製品を硝子シャーレSC(φ90mm)に1個づつ入れたものを合計10皿用意した。一方で、同ゼラチンカプセルをPTP包装した製品(ユニットドーズ型製剤収納容器100)を、同じく硝子シャーレSCに1個づつ入れて、合計10皿用意した。次に、PP製角形ジャー(13.5×19.7×9.5[cm])の底辺に、精製水で濡らした濾紙を敷き、この上に上述の硝子シャーレSCを1群5皿ずつ積み重ねるよう静置させ、30℃で1週間放置した。
【0080】
一方で比較例1として、これらのゼラチンカプセルを内蓋付きで気密性の高い専用の硝子容器に5個入れ、密栓して、同じくPP容器に入れて、30℃で1週間放置した。
【0081】
1週間後、恒温器からPP容器を取り出し、それぞれのシャーレSCあるいは硝子容器からカプセルを採取し、ツイストオフ性に及ぼす湿度の影響を調べた。ツイストオフ性の評価は、同一人よりツイスト口の捻り回数(360度で1回転)が何回で、開口するかで評価した。この結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
上記結果から、ゼラチンカプセルは、そのままの状態では吸湿しやすいことが確認できた。ゼラチンカプセルは、吸湿することでツイストオフ性が悪くなり、セルフカットに手間取ることとなる。これに対してPTP包装することによって、安定なツイストオフ性と、カプセルの劣化を防止することができることが判明した。
【実施例7】
【0084】
(ノンゼラチンカプセルのセルフカットのツイストオフ性とPTP包装の影響)
次に実施例7として、実施例3で製造したVC−LipoSとVEを含有した精製オリーブ油から成るセルフカット口付きノンゼラチンカプセルPTP包装製品を高温、高湿度下に放置した際の、セルフカットのツイストオフ性について、比較検討した。
【0085】
ここでも図18に示すように、上記ノンゼラチンカプセル製品を硝子シャーレSC(φ90mm)に1個づつ入れたものを合計10皿用意した。一方で、PP製角形ジャー(13.5×19.7×9.5[cm])の底辺に、精製水で濡らした濾紙を敷き、この上に上述の硝子シャーレSCを1群5皿ずつ積み重ねるよう静置させ、30℃で1週間放置した。
【0086】
一方で比較例2として、これらのゼラチンカプセルを内蓋付きで気密性の高い専用の硝子容器に5個入れ、密栓して、同じくPP容器に入れて、30℃で1週間放置した。
【0087】
1週間後、恒温器からPP容器を取り出し、それぞれのシャーレSCあるいは硝子容器からカプセルを採取し、ツイストオフ性に及ぼす湿度の影響を調べた。ツイストオフ性の評価は、同一人よりツイスト口の捻り回数(360度で1回転)が何回で、開口するかで評価した。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
上記結果から、ノンゼラチンカプセルは、ツイストオフ性に勝るが、ゼラチンカプセルと同様、そのままの状態では吸湿しやすい。従って、ノンゼラチンカプセルは、吸湿することで、ツイストオフ性が悪くなり、セルフカットに手間取ることとなる。PTP包装することによって、安定なツイストオフ性と、カプセルの劣化を防止することが判った。
【実施例8】
【0090】
(ノンゼラチンカプセルセルフカットのツイストオフ性とイージーピール包装の影響)
実施例4で製造したVC−LipoSとVEを含有した精製オリーブ油から成るセルフカット口付きノンゼラチンカプセルを、イージーピールを用いたブリスターパック包装製品を高温、高湿度下に放置した際の、セルフカットのツイストオフ性について、比較検討した。
【0091】
上記同様図18に示すように、上記ノンゼラチンカプセル製品を硝子シャーレSC(φ90mm)に1個ずつ入れて、合計10皿用意した。次に、PP製角形ジャー(13.5×19.7×9.5[cm]の底辺に、精製水で濡らした濾紙を敷き、この上に上述の硝子シャーレSCを1群5皿ずつ積み重ねるよう静置させ、30℃で1週間放置した。
【0092】
一方で比較例3として、これらのノンゼラチンカプセルを内蓋付きで気密性の高い専用の硝子容器に5個入れ、密栓して、同じくPP容器に入れて、30℃で1週間放置した。
【0093】
1週間後、恒温器からPP容器を取り出し、それぞれのシャーレSCあるいは硝子容器からカプセルを採取し、ツイストオフ性に及ぼす湿度の影響を調べた。ツイストオフ性の評価は、同一人よりツイスト口の捻り回数(360度で1回転)が何回で、開口するかで評価した。結果を表3に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
上記結果から、実施例2の結果と同様、ノンゼラチンカプセルは、ゼラチンカプセルと同様、そのままの状態では吸湿しやすい。従って、ノンゼラチンカプセルは、吸湿することで、ツイストオフ性が悪くなり、セルフカットに手間取ることとなる。イージーピールを用いたブリスターパック包装においても、平板部分24の上にある樹脂部20のミシン目なども、湿度に影響することもなく、PTP包装のものと同じく品質の維持に有効であることが判った。イージーピールを用いたブリスターパック包装においても、安定なツイストオフ性と、カプセルの劣化を防止することが判明した。
【実施例9】
【0096】
次に、実施例9〜12及び比較例1で、取出方向指示手段を設けることで使用者による薬剤の取り出しやすさが改善されるかどうかを検証した。この結果を表4に示す。
【0097】
【表4】

【0098】
まず、収納部の表面に凸部を設けた例を実施例9として説明する。実施例1でPTP包装したシート(2x5列;10個/シート)の収納部表面を形成する塩化ビニル製フィルムの表面に、図19に示すようにカプセル主部の方向を示す突起として凸部41Bを形成した。ここでは、エポキシ系接着剤を用いて高さ1mm程度の突起を形成して、風乾した。この突起を付けた1枚のシートと、一つずつ切り取り線に従って、切り離し、合計10個にしたシートをそれぞれ黒色の袋に入れ、シートが外部から全く見えない状態にした上で、任意に選ばれた26才から30才の女性A、B、C3名が、それぞれの袋を抱え込むように左右両手を入れて、シートフィルムからカプセル全数の取り出しに要する時間を計測した。
【実施例10】
【0099】
さらに、底部(収納部)表面の位置に凹面を形成した例を実施例10として説明する。ここでは、実施例1でPTP包装したシート(2x5列;10個/シート)の収納部22の底部表面を形成する塩ビフィルム表面に、カプセル主部の方向を示す取出方向指示手段として凹部41Cを設けている。図20の例では、加熱した半田ごての先端を水につけて温度を下げたものを押し当てることで凹面を作り、直ぐに放冷して凹部41Cを形成した。
【0100】
この凹面を作った1枚のシートと、一つずつ切り取り線に従って、切り離し、合計10個にしたシートをそれぞれ黒色の袋に入れ、シートが外部から全く見えない状態にした上で、任意に選ばれた26才から30才の女性A、B、C3名が、それぞれの袋を抱え込むように左右両手を入れて、シートフィルムからカプセル全数の取り出しに要する時間を計測した。
【実施例11】
【0101】
さらにまた、蓋フィルムに主部の方向性を触知できるようマーキングした例を実施例11として説明する。実施例1でPTP包装したシート(2x5列;10個/シート)の収納部の蓋フィルム部表面に、カプセル主部の方向性を特定する取出方向指示手段として、マーク41Dを設けている。図21の例では、エポキシ系塗料で矢印状の表示を描き、風乾後、同じ塗料で上書きし、再度風乾し、更に上書き塗料を重層することで、高さ1mm程度の厚みを持った触知可能なマーク41Dのマーキングを行った。このマーキングによって、シートを裏返した状態(蓋面を上にした状態)であっても、上部から目視で押し出し位置を容易に見いだせることを確認した。
【0102】
このマーキングを行った1枚のシートと、一つずつ切り取り線に従って、切り離し、合計10個にしたシートをそれぞれ黒色の袋に入れ、シートが外部から全く見えない状態にした上で、任意に選ばれた26才から30才の女性A、B、C3名が、それぞれの袋を抱え込むように左右両手を入れて、シートフィルムからカプセル全数の取り出しに要する時間を計測した。
【実施例12】
【0103】
さらにまた、蓋フィルムの周辺部の主部側に凹凸を設けることで方向性を示すようにした例を、実施例12として説明する。ここでは実施例1でPTP包装したシート(2x5列;10個/シート)の収納部の蓋フィルム周辺部(フランジ部)に、取出方向指示手段として凹凸部41Eを設けている。この例では図22に示すように包装されたカプセル主部側を、120番のサンドペーパーでサンディングし、蓋フィルムが剥離しないよう軽く凹凸部41Eを設けた。このマーキング作業により、指先で蓋フィルムのフランジ(周辺部)の一方が触知できるので、包装されたカプセルの方向性がよく判った。
【0104】
このサンディングを行った1枚のシートと、一つずつ切り取り線に従って、切り離し、合計10個にしたシートをそれぞれ黒色の袋に入れ、シートが外部から全く見えない状態にした上で、任意に選ばれた26才から30才の女性A、B、C3名が、それぞれの袋を抱え込むように左右両手を入れて、シートフィルムからカプセル全数の取り出しに要する時間を計測した。
【0105】
最後に比較例4として、取出方向指示手段を設けない点以外は、実施例1と同様の方法で製造した1枚のシートと、該シートを一つずつ切り取り線に従って10個に分離した個別シートとをそれぞれ黒色の袋に入れ、シートが外部から全く見えない状態にした上で、任意に選ばれた26才から30才の女性A、B、C3名が、それぞれの袋を抱え込むように左右両手を入れて、シートフィルムからカプセル全数の取り出しに要する時間を計測した。
【0106】
実施例9〜12及び比較例4の結果より、いずれの場合も取出方向指示手段を備える収納容器は、通常の収納容器よりも短時間で薬剤を取り出せることが確認できた。また、取り出しの際に薬剤が破損することもなかった。特に薬剤を目視できない状態でも、確実に正しく取り出せることが確認できた。このように、ユニットドーズ型製剤の外形が非対称である製剤を収納容器に収納するに際して、収納部の高さと製剤主部の厚みに遊び巾を持たせ、かつ押出し突起や凹凸、あるいは表示などの取出方向指示手段を備えることで、ブリスター包装で複数の収納容器が1シート連結包装された場合でも、個別包装に切り離された状態でも、使用者による取り出しやすさを改善できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のユニットドーズ型製剤収納容器は、医薬品及び化粧品をツイストオフ口付き水溶性セルフカット式ソフトカプセルに充填し、PTP包装やイージーピールのブリスター包装したユニットドーズ型製品に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ユニットドーズ型製剤の外観を示す(a)平面図及び(b)側面図である。
【図2】実施の形態1に係るユニットドーズ型製剤収納容器を示す(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
【図3】図2の収納容器からユニットドーズ型製剤を取り出す様子を示す概略断面図である。
【図4】取出方向指示手段の一形態である押出突起を示す概略断面図である。
【図5】取出方向指示手段の一形態である押出表示を示す(a)概略側面図及び(b)平面図である。
【図6】取出方向指示手段の一形態である凹凸面を樹脂部に設けた例を示す概略側面図である。
【図7】取出方向指示手段の一形態である凹凸面をシート部に設けた例を示す(a)概略断面図、及び(b)底面図である。
【図8】取出方向指示手段の一形態である凹凸面をシート部に設けた変形例に係る底面図である。
【図9】取出方向指示手段の一形態である切り取り線を示す平面図である。
【図10】取出方向指示手段の一形態である切り取り線の他のパターンを示す平面図である。
【図11】取出方向指示手段の一形態である収納部の形状変化を示す概略断面図である。
【図12】取出方向指示手段の一形態である収納部内の遊び巾を示す(a)概略断面図、(b)底面図、及び(c)指による方向判別の様子を示す概略断面図である。
【図13】変形例に係る取出方向指示手段として、カプセル主部と収納部の内面との隙間を示す(a)概略断面図及び(b)指による方向判別の様子を示す概略断面図である。
【図14】変形例に係る取出方向指示手段を利用した、2本の指による方向判別の様子を示す概略断面図である。
【図15】取出方向指示手段の一形態である押出表示をユニットドーズ型製剤に設けた例を示す(a)概略側面図及び(b)平面図である。
【図16】実施の形態2に係るユニットドーズ型製剤収納容器を示す(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
【図17】図16の収納容器からユニットドーズ型製剤を取り出す様子を示す概略図である。
【図18】ツイストオフ性と包装容器の影響試験を加湿状態で行う状態を示す模式断面図である。
【図19】実施例9に係るユニットドーズ型製剤収納容器を示す(a)概略側面図及び(b)平面図である。
【図20】実施例10に係るユニットドーズ型製剤収納容器を示す(a)概略側面図及び(b)平面図である。
【図21】実施例11に係るユニットドーズ型製剤収納容器を示す(a)概略側面図及び(b)底面図である。
【図22】実施例12に係るユニットドーズ型製剤収納容器を示す(a)概略側面図及び(b)底面図である。
【符号の説明】
【0109】
100、200…ユニットドーズ型製剤収納容器
1…カプセル主部;2…ツイスト口部
3…ネック部;4…頭部
10…ユニットドーズ型製剤
20…樹脂部
22、22B…収納部
24…平板部分
30…シート部
32…タブ
40…取出方向指示手段
41…押出突起;41B…凸部;41C…凹部;41D…マーク;41E…凹凸部
42…押出表示
43…凹凸面;44…凹凸面;44B…凹凸パターン
45…切り取り線;46…切り取り線
47…押出表示
d…遊び巾;d2…距離;SC…硝子シャーレ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する樹脂で形成された、ユニットドーズ型製剤を収納するよう開口された中空状の収納部を複数、碁盤目状に配列した樹脂部と、
前記樹脂部の収納部の開口部分を閉塞するシート部と、
を備えるユニットドーズ型製剤収納容器であって、
さらに、前記収納部に収納されるユニットドーズ型製剤の外形が非対称であり、当該外形に応じた適切な取り出し方向を示す取出方向指示手段を備えることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項2】
請求項1に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記取出方向指示手段が、
各収納部に収納されるユニットドーズ型製剤を各々同一の姿勢となるように配置した配列構造であることを特徴とするユニットドーズ型製剤を収納したユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項3】
請求項1に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記取出方向指示手段が、
各収納部の表面に形成された、ユニットドーズ型製剤を押し出す位置を示す押出突起であることを特徴とするユニットドーズ型製剤を収納したユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項4】
請求項1に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記取出方向指示手段が、
各収納部の表面に形成された、ユニットドーズ型製剤を押し出す位置を示す凹凸面であることを特徴とするユニットドーズ型製剤を収納したユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項5】
請求項1に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記取出方向指示手段が、
各収納部の表面に表示された、ユニットドーズ型製剤を押し出す位置を示す押出表示であることを特徴とするユニットドーズ型製剤を収納したユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項6】
請求項1に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記取出方向指示手段が、
前記シート部が前記収納部の開口部分を閉塞する部分と、前記収納部の開口部分周辺の高低差が、0.1mm〜2mmの範囲に調整されてなることを特徴とするユニットドーズ型製剤を収納したユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
各収納部に収納されるユニットドーズ型製剤が、
液状又はゲル状のユニットドーズ薬剤成分を内部に収納した中空状のカプセル主部と、
前記カプセル主部と連なる、前記カプセル主部よりも外径を小さく括れさせた管状部分を形成するネック部と、
を備えており、前記ネック部をねじ切ることで前記カプセル主部を開口してユニットドーズ薬剤成分を取り出し可能に構成しており、
前記収納部に収納されるユニットドーズ型製剤を、前記カプセル主部側から取り出すように前記取出方向指示手段で指示してなることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項8】
透光性を有する樹脂で形成された、ユニットドーズ型製剤を収納するよう開口された中空状の収納部を複数、碁盤目状に配列した樹脂部と、
前記樹脂部の収納部の開口部分を閉塞するシート部と、
各収納部に収納されるユニットドーズ型製剤と、
を備えるユニットドーズ型製剤を収納した収納容器であって、
前記ユニットドーズ型製剤が、
液状又はゲル状のユニットドーズ薬剤成分を内部に収納した中空状のカプセル主部と、
前記カプセル主部と連なる、前記カプセル主部よりも外径を小さく括れさせた管状部分を形成するネック部と、
を備えており、前記ネック部をねじ切ることで前記カプセル主部を開口してユニットドーズ薬剤成分を取り出し可能に構成しており、
各ユニットドーズ型製剤が、薬剤収納部とねじ切り部とが同じ方向に並ぶよう、同一の姿勢で各収納部において収納されてなることを特徴とするユニットドーズ型製剤を収納したユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記収納部に前記ユニットドーズ型製剤を収納した状態で、静置された前記ユニットドーズ型製剤のカプセル主部が、前記収納部の内面と最も近接する距離が、0.1mm〜2mmの範囲に調整されてなることを特徴とするユニットドーズ型製剤を収納したユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記収納部がユニットドーズ型製剤の外形に沿った非対称な外形に形成されてなることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記収納容器が、ユニットドーズ型製剤をブリスター包装するブリスターパック包装容器であることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項12】
請求項11に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記ブリスターパック包装容器が、PTP包装であることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項13】
請求項11に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記ブリスターパック包装容器が、イージーピール式包装であることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
ユニットドーズ型製剤が水溶性のセルフカット式ソフトカプセルであることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一に記載のユニットドーズ型製剤収納容器であって、
前記セルフカット式ソフトカプセルが、魚を含む動物性タンパク質及びデンプン、水溶性高分子の1種以上からなることを特徴とするユニットドーズ型製剤収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−280263(P2009−280263A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136124(P2008−136124)
【出願日】平成20年5月24日(2008.5.24)
【出願人】(504422737)ASPION株式会社 (5)
【Fターム(参考)】