ユーザ体感品質推定システムおよび方法、ユーザ体感品質推定装置、受信状況情報送信装置、送信端末、受信端末
【課題】リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できるようにする。
【解決手段】メディア通信システムの送信端末1側にユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信端末2側に受信状況情報送信装置20を設け、インサービスで送信端末1からパケット網3を介して受信端末2へ送信したメディア信号に関する受信状況を受信状況情報送信装置20で取得してパケット網3を介してユーザ体感品質推定装置10へ通知し、この受信状況情報に基づきユーザ体感品質推定装置10によりメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定する。
【解決手段】メディア通信システムの送信端末1側にユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信端末2側に受信状況情報送信装置20を設け、インサービスで送信端末1からパケット網3を介して受信端末2へ送信したメディア信号に関する受信状況を受信状況情報送信装置20で取得してパケット網3を介してユーザ体感品質推定装置10へ通知し、この受信状況情報に基づきユーザ体感品質推定装置10によりメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質評価技術に関し、特にVoIP(Voice over IP)やストリーミングなどの通信技術を利用して音声や映像などのメディアをリアルタイムで通信するリアルタイム系アプリケーション通信について、そのユーザ体感品質(主観品質)を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パケット網上でIP電話や映像配信などのリアルタイム系のメディア情報を取り扱うサービスでは、メディア情報の転送に用いる例えばIP網などの中継網自体で通信品質が保証されていない。このため、このようなサービスを利用する際に用いられるリアルタイム系アプリケーションの通信品質を精度よく評価して、パケット網の品質設計や品質管理を行う技術が必要とされている。
【0003】
従来、このようなリアルタイム系アプリケーションの品質を評価する技術として、メディア情報に関する例えばパケット損失率などの通信状況を示すネットワーク品質に代えて、実際にリアルタイム系アプリケーションを利用するユーザレベルでの主観的な品質すなわちユーザ体感品質を推定する技術が提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。
また、例えば音声や動画などのデータストリームをリアルタイムに転送するのに用いられるRTP(Real time Transport Protocol:IETF RFC1889)などのデータ転送プロトコルを利用したリアルタイム系アプリケーションのインサービスにおいて、パケットの挙動や端末の受信状態などの管理情報を通信相手に送るのに用いられるRTCP(RTP Control Protocol:IETF RFC3611)などのプロトコルを利用して得られる品質レポート情報から、主観品質を推定する技術も提案されている(例えば、非特許文献2〜4など参照)。
【0004】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【非特許文献1】「基礎から理解するVoIP技術」、OPEN DESIGN、March 2003、CQ出版、pp.59-60
【非特許文献2】R.Caceres and A.Clark,"RTP Control Protocol Extended Reports(RTCP XR)",IETF RFC3611,May.2003
【非特許文献3】ETSI TIPHON TS101 329-5 Annex E, "Method for determining an equipment impairement factor using passive monitoring,", Nov.2000
【非特許文献4】Telchemy Inc., "Vqmon,", http://www.telchemy.com/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術は、ネットワークおよび端末の品質情報と、経験値または予測したある一定のアルゴリズムによって作成された品質推定モデルを用いて、メディアの品質情報(劣化に関する情報)、またはそれに対するユーザ体感品質(主観品質)を「推定」する技術であった。そのため、アプリケーションの実装特性や設定によっては推定誤差が生じるという問題点があった。
【0006】
本来、アプリケーションに対するユーザ体感品質を推定するには、音声や映像等のメディアを、直接、機械的に評価する客観評価法が有効であるとされてきた。IP電話等の狭帯域音声等では、ITU−T勧告 P.862 PESQ(Perceptual Evaluation of Speech Quality)など、送信側のリファレンス信号と受信側で得られたメディア信号との比較を行うフルリファレンス(Full reference)による評価技術が存在し、ユーザ体感品質の推定精度も非常に高く、十分に主観評価の代用となりうることが示されている。
【0007】
近年、上記PESQと同様に、音声メディアを直接評価するITU−T勧告 P.563 SEAM(Single-ended method for objective speech quality assessment in narrow-band telephony applications)といったリファレンス信号との比較を行わないノンリファレンス(Non reference)による評価技術も提案されている。メディアを直接評価する方法は、ユーザ体感品質の推定精度が高い。しかしながら、この方法によれば、サービス提供中すなわちインサービスでの品質評価に適用する場合、全ユーザ対象とする常時監視を実施する必要がある。このため、メディア信号の収録装置(音声/映像の録音/録画装置)を各対置(ユーザ通信端末)に設置していなければならず、現実問題として実現不可能である。現在、これらの技術は、上記理由からインサービスでの品質評価ではなく、サンプリング測定など限定的な利用にとどまっている。
【0008】
このように、従来技術としては、ネットワーク/端末の情報をネットワーク品質測定によって取得し、アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するスケーラビリティの高い手法と、メディアを直接客観的に評価する高い推定精度の品質評価技術の2つが存在している。しかし、インサービスでの常時監視も可能とし、スケーラビリティが高く、ユーザ体感品質を高い精度で推定できる技術はなかった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、各対地(通信端末)に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できるユーザ体感品質推定システムおよび方法、ユーザ体感品質推定装置、受信状況情報送信装置、送信端末、受信端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるユーザ体感品質推定システムは、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムであって、受信端末側に設けられ、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部とを有する受信状況情報送信装置と、送信端末側に設けられ、パケット網を介して受信した受信状況情報送信装置からの制御用パケットから受信状況情報を取得する受信状況取得部と、この受信状況情報に基づきリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部とを有するユーザ体感品質推定装置とを備えている。
【0011】
この際、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、ユーザ体感品質推定装置に、受信状況取得部により受信状況情報として得られた劣化情報に基づいて送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに設け、ユーザ体感品質推定部で、劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0012】
さらに、ユーザ体感品質推定部で、送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号と劣化メディア信号とを比較することによりユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0013】
また、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、ユーザ体感品質推定部で、受信状況取得部により受信状況情報として得られた特徴量情報に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0014】
さらに、ユーザ体感品質推定装置に、送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得する特徴量抽出部をさらに設け、ユーザ体感品質推定部は、特徴量抽出部で取得された特徴量情報と受信状況取得部で取得された特徴量情報とを比較することによりユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0015】
また、ユーザ体感品質推定装置に、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶部と、送信端末から送信するメディアデータとして評価用メディアデータを送信端末へ出力するメディアデータ出力部とをさらに設けてもよい。
【0016】
また、本発明にかかるユーザ体感品質推定方法は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定方法であって、受信端末側に設けられた受信状況情報送信装置により、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析ステップと、受信状況情報送信装置により、受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信ステップと、送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置により、パケット網を介して受信した受信状況情報送信装置からの制御用パケットから受信状況情報を取得する受信状況取得ステップと、ユーザ体感品質推定装置により、この受信状況情報に基づきリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定ステップとを備えている。
【0017】
この際、受信状況解析ステップで、受信状況情報として受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、ユーザ体感品質推定装置により、受信状況情報に含まれる劣化情報に基づいて送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成ステップをさらに設け、ユーザ体感品質推定ステップで、劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0018】
さらに、受信状況解析ステップで、受信状況情報として受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、ユーザ体感品質推定ステップで、受信状況情報に含まれる特徴量情報に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0019】
また、ユーザ体感品質推定装置により、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶ステップと、ユーザ体感品質推定装置により、送信端末側から送信するメディアデータとして評価用メディアデータを送信端末へ出力するメディアデータ出力ステップとをさらに設けてもよい。
【0020】
また、本発明にかかるユーザ体感品質推定装置は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、送信端末側に設けられるユーザ体感品質推定装置であって、受信端末側に設けられた受信端末状況情報送信装置から送信された、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を含む制御用パケットをパケット網を介して受信して、その制御用パケットから受信状況情報を取得する受信状況取得部と、この受信状況情報に基づきリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部とを備えている。
【0021】
この際、受信状況取得部により得られた受信状況情報である、受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報に基づいて、送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに設け、ユーザ体感品質推定部は、劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0022】
あるいは、ユーザ体感品質推定部で、受信状況取得部により得られた受信状況情報である、受信端末で得られたメディア信号の特徴量を示す特徴量情報に基づき、ユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0023】
また、本発明にかかる受信状況情報送信装置は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、受信端末側に設けられる受信状況情報送信装置であって、送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置でリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定する際に用いられ、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部とを備えている。
【0024】
この際、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得するようにしてもよい。
【0025】
あるいは、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得するようにしてもよい。
【0026】
また、本発明にかかる送信端末は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの送信端末であって、前述したユーザ体感品質推定装置を備えている。
【0027】
また、本発明にかかる受信端末は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの受信端末であって、前述した受信状況情報送信装置を備えている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、送信端末からパケット網を介して受信端末へ送信されたメディア信号に関する受信状況が受信状況情報送信装置で取得されてパケット網を介してユーザ体感品質推定装置へ通知され、この受信状況情報に基づきユーザ体感品質推定装置によりリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質が推定されるため、各対地(ユーザ通信端末)に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや推定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[各実施の形態の概要]
まず、図1〜図3を参照して、本発明の各実施の形態の概要について説明する。図1は、リアルタイム系アプリケーションに関するインサービスでのユーザ体感品質推定方法の分類を示す説明図である。図2は、本発明におけるアプリケーション組込型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。図3は、本発明における測定器型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。
【0030】
一般に、リアルタイム系アプリケーションに関するインサービスでのユーザ体感品質の測定方法には、図1に示すように、ネットワーク品質を測定した結果からメディアの品質を推定するネットワーク品質測定方法9Aと、メディアの品質を直接測定し評価するメディア品質測定方法9Bがある。
【0031】
前者のネットワーク品質測定方法9Aは、パケット網3およびリアルタイム系アプリケーション端末1,2などのハードウェアの振る舞いを示す客観的な通信品質情報に基づき、リアルタイム系アプリケーション通信を利用するユーザが感じる主観的なユーザ体感品質(主観品質)を推定する方法である。この方法は、パケット網3およびリアルタイム系アプリケーション端末1,2で得られた通信品質情報を、例えばRTCP XRなどの制御用パケットによって転送することで、第三者がその通信品質情報を用いて品質管理を実施することも可能となり、スケーラビリティや測定容易性は非常に高い。ただし、メディア信号を直接評価する方法ではないため、ユーザ体感品質推定精度はメディア品質測定方法に比べて低い。
【0032】
一方、後者のメディア品質測定方法9Bは、リアルタイム系アプリケーション端末1,2間でやり取りするメディア信号を直接評価する技術であり、ユーザ体感品質の推定精度は非常に高い。しかし、前述のように、この方法を適用するには各ユーザの端末にメディア信号を収録(録音/録画)するメディア信号収録装置8を設置する必要がある。したがって、各ユーザに対して常時品質監視を行う場合、全ユーザに収録装置を設置することは実質的に不可能であることから、スケーラビリティや測定容易性が低い。
【0033】
本発明の各実施の形態では、受信側のリアルタイム系アプリケーション端末(以下、受信端末という)2側に設けた受信状況情報送信装置20で、受信メディア信号に関する受信状況を示す物理量を取得して受信状況情報として送信側のリアルタイム系アプリケーション端末(以下、送信端末という)1へ通知し、送信端末1側に設けたユーザ体感品質推定装置10において、受信状況情報送信装置20からの受信状況情報に基づきユーザ体感品質を推定することにより、前述したネットワーク品質測定方法9Aやメディア品質測定方法9Bの問題点を解決し、各対地に別途メディア信号収録装置8を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで呼毎(Call-by-Call)に常時監視でき、スケーラビリティが高く、ユーザ体感品質を高い精度で推定できるようにしたものである。
【0034】
また、本発明において、インサービスでユーザ体感品質の測定方法を実現する構成としては、ユーザ体感品質を推定する手段を送信端末のアプリケーションに組み込む構成と、送信端末に外付けされる測定器型の装置に組み込む構成がある。
前者のアプリケーション組込型は、図2に示すように、送信端末1のアプリケーションに、受信状況取得機能、客観品質評価機能、品質評価保存機能など、ユーザ体感品質推定に要する手段が組み込まれる。
【0035】
後者の測定器型は、図3に示すように、送信端末1にユーザ体感品質推定装置10を外付けで設置し、このユーザ体感品質推定装置10に、受信状況取得機能、客観品質評価機能、品質評価保存機能など、ユーザ体感品質推定に要する手段を実装したものである。受信端末2から送信端末1へ通知される受信状況情報を、ハブやスイッチなどの中継装置6を介してユーザ体感品質推定装置10で取得(キャプチャ)し、このユーザ体感品質推定装置10によりユーザ体感品質値が推定される。
【0036】
また、本発明の各実施の形態では、それぞれのユーザ体感品質推定方法において、リファレンス評価方法とノンリファレンス評価方法について説明する。
フルリファレンス評価法は、リファレンス信号(原信号)と、評価対象とするメディア信号すなわちネットワークを介して受信端末で収録されたメディア信号との2つを比較することによってユーザ体感品質値を推定する方法である。一方、ノンリファレンス評価法は、リファレンス信号との比較を行わず、評価対象とするメディア信号すなわちネットワークを介して受信端末側で収録された信号のみでユーザ体感品質値を推定する方法である。
【0037】
本発明の第1および第2の実施の形態では、受信端末2で受信したメディア情報をデコード(復号処理)する前のパケット形態におけるメディア情報(以下、メディアデータという)に関する劣化を示す劣化情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定装置について説明する。
一方、第3および第4の実施の形態では、受信端末2で受信したメディア情報をデコード(復号処理)した後のメディア情報(以下、メディア信号という)に関する特徴量を示す特徴量情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定装置について説明する。
【0038】
また、これら各実施の形態のうち、第1および第3の実施の形態では、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を送信端末1のアプリケーションに組み込んだ構成について説明し、第2および第4の実施の形態では、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を送信端末1に外付けしたユーザ体感品質推定装置10で実現する構成について説明する。
さらに、各実施の形態では、それぞれの実施の形態におけるノンリファレンス評価方法とフルリファレンス評価方法についても説明する。
【0039】
[第1の実施の形態]
まず、図4を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
図4において、送信端末1と受信端末2はメディア通信システムを構成するリアルタイム系アプリケーション端末である。
【0040】
送信端末1は、パケット網3を介して各種パケットをやり取りする通信端末装置からなり、主な構成として、所望のメディア信号をエンコードしてメディアデータを出力するメディア信号エンコード部1Aと、このメディアデータをパケット化して送信するメディアデータ送信処理部1Bとを有している。
受信端末2は、パケット網3を介して各種パケットをやり取りする通信端末装置からなり、主な構成として、パケット網3を介して受信したメディアパケットからメディアデータを生成するメディアデータ受信処理部2Aと、このメディアデータをデコードして元のメディア信号を再生出力するメディアデータデコード部2Bとを有している。
【0041】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、このようなメディア通信システムの受信端末2で受信したメディアデータの劣化を示す劣化情報からなる受信状況情報を用いて、送信端末1で当該リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図2に示したように、送信端末1内にユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0042】
[ユーザ体感品質推定装置]
次に、図1を参照して、ユーザ体感品質推定装置10の構成について詳細に説明する。ユーザ体感品質推定装置10は、主な機能部として、メディアデータ取得部11、メディアデータ記憶部12、受信状況取得部14、劣化メディア信号生成部15、劣化メディア信号記憶部16、ユーザ体感品質推定部17、推定ユーザ体感品質加工部18、および推定ユーザ体感品質データ記憶部19を備えている。
【0043】
これら機能部のうち、メディアデータ取得部11、受信状況取得部14、劣化メディア信号生成部15、ユーザ体感品質推定部17、および推定ユーザ体感品質加工部18は、各種信号処理回路やCPUなどの情報処理回路から構成されており、メディアデータ記憶部12、劣化メディア信号記憶部16、および推定ユーザ体感品質データ記憶部19は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置から構成されている。これら構成は、送信端末1の持つハードウェアあるいは新たなハードウェアと、新たなプログラムとを協動させることにより実現できる。
【0044】
メディアデータ取得部11は、送信端末1のメディア信号エンコード部1Aで生成されたメディアデータを取得してメディアデータ記憶部12に格納する機能を有している。受信状況取得部14は、パケット網3を介して受信端末2からの制御用パケットを取り込む制御用パケット取り込み手段14Aと、この制御用パケットを解析して受信端末2からの受信状況情報を抽出する制御用パケット解析手段14Bとを有している。劣化メディア信号生成部15は、受信状況取得部14で得られた受信状況情報に基づきメディアデータ記憶部12内のメディアデータを加工して劣化メディアデータを生成するメディアデータ加工手段15Aと、この劣化メディアデータをデコードすることにより受信端末2で得られたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元して劣化メディア信号記憶部16へ格納する劣化メディアデータデコード手段15Bとを有している。
【0045】
ユーザ体感品質推定部17は、公知のメディア品質客観評価技術に基づいて、劣化メディア信号記憶部16内の劣化メディアデータから、送信端末1と受信端末2とのリアルタイム系アプリケーションにおける所望のユーザ体感品質値を推定する機能を有している。推定ユーザ体感品質加工部18は、ユーザ体感品質推定部17で得られたユーザ体感品質値を統計処理して、例えばネットワーク管理プロトコルSNMP(Simple Network Management Protocol)で用いるデータベースMIB(Management Information Base)など第三者が取得できる形式に加工し、推定ユーザ体感品質データ記憶部19へ格納する機能を有している。
【0046】
[受信状況情報送信装置]
次に、図1を参照して、受信状況情報送信装置20の構成について詳細に説明する。受信状況情報送信装置20は、主な機能部として、受信状況解析部21、制御用パケット生成部22、および制御用パケット送信部23とを備えている。
これら機能部は、各種信号処理回路やCPUなどの情報処理回路から構成されている。これら構成は、受信端末2の持つハードウェアあるいは新たなハードウェアと、新たなプログラムとを協動させることにより実現できる。
【0047】
受信状況解析部21は、受信端末2のメディアデータ受信処理部2Aで受信メディアパケットから生成されたメディアデータについて劣化状況を解析しその内容を劣化情報として出力する劣化状況解析手段21Aと、受信端末2のメディアデータデコード部2Bでのデコード処理に関するコーデック情報を取得するコーデック情報取得手段21Bとを有している。制御用パケット生成部22は、受信状況解析部21で生成された劣化情報とコーデック情報とからなる受信状況情報を含む制御用パケット、例えばRTP(Real-time Transport Protocol:IETF RFC1889)で用いられるRTCP XR(RTP Control Protocol Extended Reports:IETF RFC3611)の制御用パケットを生成する機能を有している。制御用パケット送信部23は、この制御用パケットをパケット網3を介して送信端末1へ通知する機能を有している。
【0048】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図である。
【0049】
メディア通信システムでは、インサービスにおいて、送信端末1へ入力された所定のメディア信号4をメディア信号エンコード部1Aでデコードし(ステップ100)、得られたメディアデータをメディアデータ送信処理部1Bでパケット化し、パケット網3を介して受信端末2へ送信する(ステップ101)。
この際、ユーザ体感品質推定装置10は、メディアデータ取得部11により、メディア信号エンコード部1Aで生成されたメディアデータを取得(コピー)し(ステップ102)、メディアデータ記憶部12へ格納する(ステップ103)。
【0050】
一方、受信端末2は、メディアデータ受信処理部2Aにより送信端末1からのメディアパケットを受信してメディアデータを生成し、このメディアデータをメディアデータデコード部2Bでデコードしメディア信号5として再生出力する(ステップ110)。これにより、所望のメディア信号5が受信端末2の画面表示部(図示せず)や音声処理部(図示せず)で再生され、ユーザへ提供される。
この際、受信状況情報送信装置20は、受信状況解析部21の劣化状況解析手段21Aにより、メディアデータ受信処理部2Aで受信されたメディアデータ、ここでは揺らぎ吸収バッファを通過した後でデコードされる前のデータについて、その劣化状況を解析して劣化情報を得る(ステップ111)。
【0051】
例えば、メディアデータが音声/映像であれば、次のような欠落情報が生成される。まず、音声については、受信したメディアパケットのID番号順に損失の有無を0/1で記録し、損失の処理が無音挿入であったか詰めたかの情報を加え、無音挿入の場合、何ms挿入したかの情報も記録する。また、映像については、例えばIP網上で発生するパケット損失への対策として前方誤り訂正符号FEC(Forward Error Correction)機能を付加した動画圧縮技術であるMPEG2TS(Moving Picture Experts Group 2 Transport Stream)が用いられている場合、何番目のTS(Transport Stream)パケットが欠落したかの情報を記録する。
また、受信状況解析部21のコーデック情報取得手段21Bにより、受信端末2のメディアデータデコード部2Bでのデコード処理に関するコーデック情報を取得する(ステップ112)。
【0052】
次に、受信状況解析部21は、制御用パケット生成部22により、受信状況解析部21で得られた劣化情報およびコーデック情報を含む制御用パケットを生成し(ステップ113)、この制御用パケットを制御用パケット送信部23によりパケット網3を介して送信端末1へ送信する(ステップ114)。
【0053】
一方、送信端末1のユーザ体感品質推定装置10は、受信状況取得部14の制御用パケット取り込み手段14Aにより、受信端末2から送信端末1宛の制御用パケットを取り込み(キャプチャし)、この制御用パケットを制御用パケット解析手段14Bにより解析して受信端末2からの受信状況情報、ここでは劣化情報とコーデック情報とを抽出する(ステップ120)。
【0054】
続いて、劣化メディア信号生成部15のメディアデータ加工手段15Aにより、受信状況取得部14で得られた劣化情報に基づきメディアデータ記憶部12内のメディアデータを加工して劣化メディアデータを生成し(ステップ121)、劣化メディアデータデコード手段15Bにより、この劣化メディアデータを受信状況取得部14で得られたコーデック情報に基づきデコードして劣化メディア信号を生成し(ステップ122)、劣化メディア信号記憶部16へ格納する(ステップ123)。これにより、受信端末2で得られた劣化を含むメディア信号に対応する劣化メディア信号がユーザ体感品質推定装置10で復元されたことになる。
【0055】
次に、ユーザ体感品質推定装置10は、ユーザ体感品質推定部17により、公知のメディア品質客観評価技術に基づいて、劣化メディア信号記憶部16内の劣化メディア信号から、送信端末1と受信端末2とのリアルタイム系アプリケーション通信における所望のユーザ体感品質値を推定する(ステップ124)。
【0056】
このようにして、順次通知される受信状況情報に応じてユーザ体感品質値をそれぞれ推定し、メディア通信システムでの当該リアルタイム系アプリケーション通信が終了した後、推定ユーザ体感品質加工部18により、ユーザ体感品質推定部17で得られたユーザ体感品質推定値を統計処理して例えば時系列順に並び替え、MIBなど第三者が取得できる形式に加工する(ステップ125)。そして、推定ユーザ体感品質データ記憶部19へ格納し(ステップ126)、一連のユーザ体感品質推定動作を終了する。
【0057】
このように、本発明は、メディア通信システムの送信端末1側にユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信側に受信状況情報送信装置20を設け、インサービスで送信端末1からパケット網3を介して受信端末2へ送信したメディア信号に関する受信状況を受信状況情報送信装置20で取得してパケット網3を介してユーザ体感品質推定装置10へ通知し、この受信状況情報に基づきユーザ体感品質推定装置10によりメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
【0058】
したがって、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや推定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0059】
また、本発明のユーザ体感品質推定装置10や受信状況情報送信装置20の構成は、送信端末1や受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の送信端末1や受信端末2へ容易に実装することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、受信状況情報としてメディアデータの劣化の状況を示す劣化情報を通知し、ユーザ体感品質推定装置10により、この劣化情報に基づいて送信した元のメディアデータを加工して、受信端末2で得られたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元し、この劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質を推定するようにしたので、受信側で収録したメディア信号からユーザ体感品質を推定するメディア品質推定方法と同様に、ユーザ体感品質値について高い推定精度が得られる。
【0061】
この際、受信状況情報として劣化情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
また、受信端末2のメディアデータ受信処理部2Aで受信され、揺らぎ吸収バッファを通過した後でデコードされる前のメディアデータから劣化情報を取得するようにしたので、例えばメディア信号が音声などのアナログ形式からなる場合には、デコード後のアナログ形式のメディア信号から劣化情報を取得する場合と比較して、デジタル形式のメディアデータからリアルタイム系アプリケーション通知の振る舞いを示す的確な劣化情報を容易に取得でき、また受信状況情報送信装置20の構成を簡素化できる。
【0062】
また、本実施の形態では、インサービスで送信端末1から受信端末2へ送信されるメディア信号を利用してユーザ体感品質を推定するようにしたので、別個に評価用メディアデータを用意する必要がない。また、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間に評価用メディアデータを送信したり、ユーザ体感品質推定専用の評価用メディアデータを送信するためにユーザが所望するメディアデータの送信を中断させる必要もない。したがって、ユーザ体感品質の推定動作を行う負担を軽減でき、ユーザ体感品質を極めて容易に推定できる。
【0063】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)との比較を行わず、劣化メディア信号のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0064】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号については、メディアデータ記憶部12に格納されているメディアデータをデコードして送信端末1から送信したメディア信号4を生成し、そのメディア信号と劣化メディア信号記憶部16の劣化メディア信号とを比較してユーザ体感品質を推定すればよい。また、送信端末1から送信したメディア信号4をメディアデータ取得部11により取得してメディアデータ記憶部12に格納しておき、このメディア信号をユーザ体感品質推定に用いてもよい。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図であり、前述した図4と同じまたは同等部分には同一符号をしてある。
【0066】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、前述した第1の実施の形態(図4参照)と同様に、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディアデータの劣化を示す劣化情報からなる受信状況情報を用いて、送信端末1でユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図3に示したように、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を、送信端末1に外付けして設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0067】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置10は、前述の図4と比較して、メディアデータ記憶部12に代えて評価用メディアデータを予め記憶する評価用メディアデータ記憶部12Aを備えている。また、メディアデータ取得部11に代えて、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出して送信端末1へ出力するメディアデータ出力部11Aを備えている。なお、ユーザ体感品質推定装置10および受信状況情報送信装置20における他の構成については、前述の第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0068】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図であり、前述した図5と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0069】
まず、ユーザ体感品質推定装置10は、メディアデータ出力部11Aにより、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出し(ステップ130)、送信端末1へ出力する(ステップ131)。
これにより、送信端末1は、通常のメディア信号4をエンコードして得られたメディアデータと同様にして、メディアデータ送信処理部1Bから評価用メディアデータを送信する(ステップ132)。
【0070】
この後、通常のメディアデータが評価用メディアデータに置き換えられたものの、受信端末2、受信状況情報送信装置20、およびユーザ体感品質推定装置10で、前述の図5と同様の処理が行われる。
したがって、受信状況情報送信装置20により、受信端末2で受信された評価用メディアデータから劣化情報が取得され、制御用パケットによりパケット網3を介して送信端末1へ送信される(ステップ110〜114)。
【0071】
また、ユーザ体感品質推定装置10により、受信状況情報送信装置20からの劣化情報に基づき、受信端末2で得られた劣化を含む評価用メディア信号に対応する劣化評価用メディア信号が復元され、この劣化評価用メディア信号に基づいてメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質が推定される。
【0072】
このように、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置により、所定の評価用メディアデータを記憶しておき、送信端末から送信するメディアデータとして評価用メディアデータを送信端末へ出力するようにしたので、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
【0073】
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや測定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0074】
また、本発明のユーザ体感品質推定装置10や受信状況情報送信装置20の構成は、送信端末1や受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の送信端末1や受信端末2へ容易に実装することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、受信状況情報としてメディアデータの劣化の状況を示す劣化情報を通知し、ユーザ体感品質推定装置10により、この劣化情報に基づいて送信した元のメディアデータを加工して、受信端末2で得られたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元し、この劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質を推定するようにしたので、受信側で収録したメディア信号からユーザ体感品質を推定するメディア品質推定方法と同様に、ユーザ体感品質値について高い推定精度が得られる。
【0076】
この際、受信状況情報として劣化情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
また、受信端末2のメディアデータ受信処理部2Aで受信され、揺らぎ吸収バッファを通過した後でデコードされる前のメディアデータから劣化情報を取得するようにしたので、例えばメディア信号が音声などのアナログ形式からなる場合には、デコード後のアナログ形式のメディア信号から劣化情報を取得する場合と比較して、デジタル形式のメディアデータからリアルタイム系アプリケーション通知の振る舞いを示す的確な劣化情報を容易に取得でき、また受信状況情報送信装置20の構成を簡素化できる。
【0077】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質の推定専用の評価用メディアデータを用いるようにしたので、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間や当該メディアデータの送信を一時中断して評価用メディアデータを送信する必要があるものの、利用者が所望するメディアデータとは異なり、例えばメディアデータの内容に偏りのない、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するのに適したメディアデータを用いることができ、より正確なユーザ体感品質値を推定できる。
【0078】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)との比較を行わず、劣化メディア信号のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0079】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号については、評価メディアデータ記憶部12Aに格納されている評価メディアデータをデコードして送信端末1から送信した評価用メディア信号を生成し、その評価用メディア信号と劣化メディア信号記憶部16の劣化評価用メディア信号とを比較してユーザ体感品質を推定すればよい。
【0080】
[第3の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図8は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図であり、前述した図4と同じまたは同等部分には同一符号をしてある。
【0081】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、前述した第1の実施の形態(図4参照)とは異なり、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図2に示したように、送信端末1内にユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0082】
本実施の形態にかかる受信状況情報送信装置20は、前述の図4と比較して、受信状況解析部21に、劣化状況解析手段21Aおよびコーデック情報取得手段21Bに代えて、受信端末2のメディアデータデコード部2Bで受信メディアデータがデコードされて得られたメディア信号5からその特徴量を抽出し、特徴量情報として出力する特徴量抽出手段21Cを備えている。
【0083】
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置10は、前述の図4と比較して、メディアデータ取得部11に代えて、送信端末1のメディア信号エンコード部1Aに入力されたメディア信号4を取得するメディア信号取得部11Bを備えている。また、メディアデータ記憶部12に代えて、メディア信号取得部11Bで取得したメディア信号を記憶するメディア信号記憶部12Bを備え、さらにこのメディア信号記憶部12Bのメディア信号から特徴量を抽出する特徴量抽出部13を備えている。
【0084】
なお、メディア信号取得部11B、メディア信号記憶部12B、および特徴量抽出部13については、フルリファレンス評価法を用いる場合にのみ必要となる構成であり、ノンリファレンス評価方法を用いる場合、これら構成は不要となる。
ユーザ体感品質推定装置10および受信状況情報送信装置20における他の構成については、前述の第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0085】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図9を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図9は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図である。
【0086】
メディア通信システムでは、インサービスにおいて、送信端末1へ入力された所定のメディア信号をメディア信号エンコード部1Aでデコードし(ステップ200)、得られたメディアデータをメディアデータ送信処理部1Bでパケット化し、パケット網3を介して受信端末2へ送信する(ステップ201)。
【0087】
一方、受信端末2は、メディアデータ受信処理部2Aにより送信端末1からのメディアパケットを受信してメディアデータを生成し、このメディアデータをメディアデータデコード部2Bでデコードしメディア信号5として再生出力する(ステップ210)。これにより、所望のメディア信号5が受信端末2の画面表示部(図示せず)や音声処理部(図示せず)で再生され、ユーザへ提供される。
この際、受信状況情報送信装置20は、受信状況解析部21の特徴量抽出手段21Cにより、メディアデータデコード部2Bでデコードされたメディア信号から、例えばITU−T勧告P.862 PESQなどで利用される音声メディア信号のスペクトル量やパワー、あるいはリデュースドリファレンス(擬似二重刺激)法などで利用されるPSNRなどの特徴量を抽出して特徴量情報を得る(ステップ211)。
【0088】
次に、受信状況解析部21は、制御用パケット生成部22により、受信状況解析部21で得られた特徴量情報を含む制御用パケットを生成し(ステップ212)、この制御用パケットを制御用パケット送信部23によりパケット網3を介して送信端末1へ送信する(ステップ213)。
【0089】
一方、送信端末1のユーザ体感品質推定装置10は、受信状況取得部14の制御用パケット取り込み手段14Aにより、受信端末2からの制御用パケットを取り込み、この制御用パケットを制御用パケット解析手段14Bにより解析して受信端末2からの受信状況情報、ここでは特徴量情報を抽出する(ステップ220)。
【0090】
次に、ユーザ体感品質推定部17により、公知のメディア品質客観評価技術に基づいて、受信状況取得部14で得られた特徴量情報から、送信端末1と受信端末2とのリアルタイム系アプリケーション通信における所望のユーザ体感品質値を推定する(ステップ221)。
【0091】
このようにして、順次通知される受信状況情報に応じてユーザ体感品質値をそれぞれ推定し、メディア通信システムでの当該リアルタイム系アプリケーション通信が終了した後、推定ユーザ体感品質加工部18により、ユーザ体感品質推定部17で得られたユーザ体感品質推定値を統計処理して例えば時系列順に並び替え、MIBなど第三者が取得できる形式に加工する(ステップ222)。そして、推定ユーザ体感品質データ記憶部19へ格納し(ステップ223)、一連のユーザ体感品質推定動作を終了する。
【0092】
このように、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報を抽出してこれを受信状況情報として送信し、この特徴量情報に基づいてユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質を推定するようにしたので、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
【0093】
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや測定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0094】
また、本発明の受信状況情報送信装置20の構成は、受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の受信端末2へ容易に実装することができる。
【0095】
また、本実施の形態では、受信状況情報として特徴量情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
さらに、その特徴量から所望のユーザ体感品質値を直接推定でき、第1および第2の実施の形態のように劣化情報を通知する場合と比較して、劣化メディア信号を生成する必要がなくなり、ユーザ体感品質推定装置の構成を簡略化できる。
【0096】
また、本実施の形態では、インサービスで送信端末1から受信端末2へ送信されるメディア信号を利用してユーザ体感品質を推定するようにしたので、別個に評価用メディアデータを用意する必要がない。また、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間に評価用メディアデータを送信したり、ユーザ体感品質推定専用の評価用メディアデータを送信するためにユーザが所望するメディアデータの送信を中断させる必要もない。したがって、ユーザ体感品質の推定動作を行う負担を軽減でき、ユーザ体感品質を極めて容易に推定できる。
【0097】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)の特徴量との比較を行わず、受信端末2で得られたメディア信号の特徴量のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号の特徴量との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0098】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号の特徴量については、メディア信号取得部11Bによりメディア信号記憶部12Bに格納されているメディア信号から、特徴量抽出部13により特徴量を抽出し、この特徴量と受信状況取得部14からの特徴量とを比較してユーザ体感品質を推定すればよい。また、前述した第1の実施の形態と同様に、送信端末1から送信したメディアデータをメディアデータ取得部11により取得してメディアデータ記憶部12に格納しておき、このメディアデータを特徴量抽出部13によりデコードして元のメディア信号を生成し、このメディア信号から特徴量を抽出するようにしてもよい。
【0099】
[第4の実施の形態]
次に、図10を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図10は、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図であり、前述した図8と同じまたは同等部分には同一符号をしてある。
【0100】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、前述した第1の実施の形態(図4参照)とは異なり、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図3に示したように、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を、送信端末1に外付けして設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0101】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置10は、前述の図8と比較して、メディア信号記憶部12Bに代えて評価用メディアデータを予め記憶する評価用メディアデータ記憶部12Aを備え、さらにメディア信号取得部11Bに代えて、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出して送信端末1へ出力するメディアデータ出力部11Aを備えている。また、評価用メディアデータ記憶部12Aの評価用メディアデータから特徴量を抽出する特徴量抽出部13を備えている。
【0102】
なお、特徴量抽出部13については、フルリファレンス評価法を用いる場合にのみ必要となる構成であり、ノンリファレンス評価方法を用いる場合、これら構成は不要となる。
ユーザ体感品質推定装置10および受信状況情報送信装置20における他の構成については、前述の第3の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0103】
[第4の実施の形態の動作]
次に、図11を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図11は、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図であり、前述した図9と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0104】
まず、ユーザ体感品質推定装置10は、メディアデータ出力部11Aより、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出し(ステップ230)、送信端末1へ出力する(ステップ231)。
これにより、送信端末1は、通常のメディア信号4をエンコードして得られたメディアデータと同様にして、メディアデータ送信処理部1Bから評価用メディアデータを送信する(ステップ232)。
【0105】
この後、通常のメディアデータが評価用メディアデータに置き換えられるものの、受信端末2、受信状況情報送信装置20、およびユーザ体感品質推定装置10で、前述の図9と同様の処理が行われる。
したがって、受信状況情報送信装置20により、受信端末2で受信された評価用メディア信号から特徴量情報が取得され、制御用パケットによりパケット網3を介して送信端末1へ送信される(ステップ210〜213)。
また、ユーザ体感品質推定装置10により、受信状況情報送信装置20からの特徴量情報に基づいてメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質が推定される。
【0106】
このように、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報を抽出してこれを受信状況情報として送信し、この特徴量情報に基づいてユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質を推定するようにしたので、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
【0107】
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや測定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0108】
また、本発明の受信状況情報送信装置20の構成は、受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の受信端末2へ容易に実装することができる。
【0109】
また、本実施の形態では、受信状況情報として特徴量情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
さらに、その特徴量から所望のユーザ体感品質値を直接推定でき、第1および第2の実施の形態のように劣化情報を通知する場合と比較して、劣化メディア信号を生成する必要がなくなり、ユーザ体感品質推定装置の構成を簡略化できる。
【0110】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質の推定専用の評価用メディアデータを用いるようにしたので、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間や当該メディアデータの送信を一時中断して評価用メディアデータを送信する必要があるものの、利用者が所望するメディアデータとは異なり、例えばメディアデータの内容に偏りのない、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するのに適したメディアデータを用いることができ、より正確なユーザ体感品質値を推定できる。
【0111】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)の特徴量との比較を行わず、受信端末2で得られたメディア信号の特徴量のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号の特徴量との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0112】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号の特徴量については、評価メディアデータ記憶部12Aに格納されている評価メディアデータを特徴量抽出部13によりデコードして評価メディア信号を生成し、この評価メディア信号から特徴量を抽出するようにしてもよい。
なお、評価メディアデータ記憶部12Aに、評価メディアデータに対応する評価メディア信号を予め格納しておき、特徴量抽出部13によりこの評価メディア信号から特徴量を抽出するようにしてもよい。
【0113】
[実施の形態の拡張]
以上の各実施の形態において、各ユーザ体感品質値を推定する推定処理間隔としては、例えば15秒間隔など、メディア品質客観評価技術でユーザ体感品質の推定精度が高いとされている間隔、もしくは主観品質評価法(ITU-T勧告P.800,P.830)で示される間隔で行うようにしてもよい。
さらに、ユーザ体感品質推定値の統計処理では、上記推定処理間隔で推定した各ユーザ体感品質値の平均値や標準偏差を算出するようにしてもよい。
【0114】
なお、第1および第3の実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1に外付けで設置した場合を例として説明したが、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1内に実装してもよい。同様に、第2および第4の実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1内に実装した場合を例として説明したが、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1に外付けで設置してもよい。
また、各実施の形態では、受信状況情報送信装置20を受信端末2内に実装した場合を例として説明したが、受信状況情報送信装置20を受信端末2に外付けで設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】リアルタイム系アプリケーションに関するインサービスでのユーザ体感品質推定方法の分類を示す説明図である。
【図2】本発明におけるアプリケーション組込型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。
【図3】本発明における測定器型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0116】
1…送信端末、1A…メディア信号エンコード部、1B…メディアデータ送信処理部、2…受信端末、2A…メディアデータ受信処理部、2B…メディアデータデコード部、3…パケット網、4…メディア信号(送信側)、5…メディア信号(受信側)、6…中継装置、10…ユーザ体感品質推定装置、11…メディアデータ取得部、11A…メディアデータ出力部、11B…メディア信号取得部、12…メディアデータ記憶部、12A…評価用メディアデータ記憶部、12B…メディア信号記憶部、13…特徴量抽出部、14…受信状況取得部、14A…制御用パケット取り込み手段、14B…制御用パケット解析手段、15…劣化メディア信号生成部、15A…メディアデータ加工手段、15B…劣化メディアデータデコード手段、16…劣化メディア信号記憶部、17…ユーザ体感品質推定部、18…推定ユーザ体感品質加工部、19…推定ユーザ体感品質データ記憶部、20…受信状況情報送信装置、21…受信状況解析部、21A…劣化状況解析手段、21B…コーデック情報取得手段、21C…特徴量抽出手段、22…制御用パケット生成部、23…制御用パケット送信部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質評価技術に関し、特にVoIP(Voice over IP)やストリーミングなどの通信技術を利用して音声や映像などのメディアをリアルタイムで通信するリアルタイム系アプリケーション通信について、そのユーザ体感品質(主観品質)を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パケット網上でIP電話や映像配信などのリアルタイム系のメディア情報を取り扱うサービスでは、メディア情報の転送に用いる例えばIP網などの中継網自体で通信品質が保証されていない。このため、このようなサービスを利用する際に用いられるリアルタイム系アプリケーションの通信品質を精度よく評価して、パケット網の品質設計や品質管理を行う技術が必要とされている。
【0003】
従来、このようなリアルタイム系アプリケーションの品質を評価する技術として、メディア情報に関する例えばパケット損失率などの通信状況を示すネットワーク品質に代えて、実際にリアルタイム系アプリケーションを利用するユーザレベルでの主観的な品質すなわちユーザ体感品質を推定する技術が提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。
また、例えば音声や動画などのデータストリームをリアルタイムに転送するのに用いられるRTP(Real time Transport Protocol:IETF RFC1889)などのデータ転送プロトコルを利用したリアルタイム系アプリケーションのインサービスにおいて、パケットの挙動や端末の受信状態などの管理情報を通信相手に送るのに用いられるRTCP(RTP Control Protocol:IETF RFC3611)などのプロトコルを利用して得られる品質レポート情報から、主観品質を推定する技術も提案されている(例えば、非特許文献2〜4など参照)。
【0004】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【非特許文献1】「基礎から理解するVoIP技術」、OPEN DESIGN、March 2003、CQ出版、pp.59-60
【非特許文献2】R.Caceres and A.Clark,"RTP Control Protocol Extended Reports(RTCP XR)",IETF RFC3611,May.2003
【非特許文献3】ETSI TIPHON TS101 329-5 Annex E, "Method for determining an equipment impairement factor using passive monitoring,", Nov.2000
【非特許文献4】Telchemy Inc., "Vqmon,", http://www.telchemy.com/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術は、ネットワークおよび端末の品質情報と、経験値または予測したある一定のアルゴリズムによって作成された品質推定モデルを用いて、メディアの品質情報(劣化に関する情報)、またはそれに対するユーザ体感品質(主観品質)を「推定」する技術であった。そのため、アプリケーションの実装特性や設定によっては推定誤差が生じるという問題点があった。
【0006】
本来、アプリケーションに対するユーザ体感品質を推定するには、音声や映像等のメディアを、直接、機械的に評価する客観評価法が有効であるとされてきた。IP電話等の狭帯域音声等では、ITU−T勧告 P.862 PESQ(Perceptual Evaluation of Speech Quality)など、送信側のリファレンス信号と受信側で得られたメディア信号との比較を行うフルリファレンス(Full reference)による評価技術が存在し、ユーザ体感品質の推定精度も非常に高く、十分に主観評価の代用となりうることが示されている。
【0007】
近年、上記PESQと同様に、音声メディアを直接評価するITU−T勧告 P.563 SEAM(Single-ended method for objective speech quality assessment in narrow-band telephony applications)といったリファレンス信号との比較を行わないノンリファレンス(Non reference)による評価技術も提案されている。メディアを直接評価する方法は、ユーザ体感品質の推定精度が高い。しかしながら、この方法によれば、サービス提供中すなわちインサービスでの品質評価に適用する場合、全ユーザ対象とする常時監視を実施する必要がある。このため、メディア信号の収録装置(音声/映像の録音/録画装置)を各対置(ユーザ通信端末)に設置していなければならず、現実問題として実現不可能である。現在、これらの技術は、上記理由からインサービスでの品質評価ではなく、サンプリング測定など限定的な利用にとどまっている。
【0008】
このように、従来技術としては、ネットワーク/端末の情報をネットワーク品質測定によって取得し、アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するスケーラビリティの高い手法と、メディアを直接客観的に評価する高い推定精度の品質評価技術の2つが存在している。しかし、インサービスでの常時監視も可能とし、スケーラビリティが高く、ユーザ体感品質を高い精度で推定できる技術はなかった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、各対地(通信端末)に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できるユーザ体感品質推定システムおよび方法、ユーザ体感品質推定装置、受信状況情報送信装置、送信端末、受信端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるユーザ体感品質推定システムは、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムであって、受信端末側に設けられ、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部とを有する受信状況情報送信装置と、送信端末側に設けられ、パケット網を介して受信した受信状況情報送信装置からの制御用パケットから受信状況情報を取得する受信状況取得部と、この受信状況情報に基づきリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部とを有するユーザ体感品質推定装置とを備えている。
【0011】
この際、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、ユーザ体感品質推定装置に、受信状況取得部により受信状況情報として得られた劣化情報に基づいて送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに設け、ユーザ体感品質推定部で、劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0012】
さらに、ユーザ体感品質推定部で、送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号と劣化メディア信号とを比較することによりユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0013】
また、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、ユーザ体感品質推定部で、受信状況取得部により受信状況情報として得られた特徴量情報に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0014】
さらに、ユーザ体感品質推定装置に、送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得する特徴量抽出部をさらに設け、ユーザ体感品質推定部は、特徴量抽出部で取得された特徴量情報と受信状況取得部で取得された特徴量情報とを比較することによりユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0015】
また、ユーザ体感品質推定装置に、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶部と、送信端末から送信するメディアデータとして評価用メディアデータを送信端末へ出力するメディアデータ出力部とをさらに設けてもよい。
【0016】
また、本発明にかかるユーザ体感品質推定方法は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定方法であって、受信端末側に設けられた受信状況情報送信装置により、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析ステップと、受信状況情報送信装置により、受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信ステップと、送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置により、パケット網を介して受信した受信状況情報送信装置からの制御用パケットから受信状況情報を取得する受信状況取得ステップと、ユーザ体感品質推定装置により、この受信状況情報に基づきリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定ステップとを備えている。
【0017】
この際、受信状況解析ステップで、受信状況情報として受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、ユーザ体感品質推定装置により、受信状況情報に含まれる劣化情報に基づいて送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成ステップをさらに設け、ユーザ体感品質推定ステップで、劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0018】
さらに、受信状況解析ステップで、受信状況情報として受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、ユーザ体感品質推定ステップで、受信状況情報に含まれる特徴量情報に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0019】
また、ユーザ体感品質推定装置により、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶ステップと、ユーザ体感品質推定装置により、送信端末側から送信するメディアデータとして評価用メディアデータを送信端末へ出力するメディアデータ出力ステップとをさらに設けてもよい。
【0020】
また、本発明にかかるユーザ体感品質推定装置は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、送信端末側に設けられるユーザ体感品質推定装置であって、受信端末側に設けられた受信端末状況情報送信装置から送信された、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を含む制御用パケットをパケット網を介して受信して、その制御用パケットから受信状況情報を取得する受信状況取得部と、この受信状況情報に基づきリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部とを備えている。
【0021】
この際、受信状況取得部により得られた受信状況情報である、受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報に基づいて、送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに設け、ユーザ体感品質推定部は、劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0022】
あるいは、ユーザ体感品質推定部で、受信状況取得部により得られた受信状況情報である、受信端末で得られたメディア信号の特徴量を示す特徴量情報に基づき、ユーザ体感品質値を推定するようにしてもよい。
【0023】
また、本発明にかかる受信状況情報送信装置は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、受信端末側に設けられる受信状況情報送信装置であって、送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置でリアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定する際に用いられ、受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部とを備えている。
【0024】
この際、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得するようにしてもよい。
【0025】
あるいは、受信状況解析部で、受信状況情報として受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得するようにしてもよい。
【0026】
また、本発明にかかる送信端末は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの送信端末であって、前述したユーザ体感品質推定装置を備えている。
【0027】
また、本発明にかかる受信端末は、所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの受信端末であって、前述した受信状況情報送信装置を備えている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、送信端末からパケット網を介して受信端末へ送信されたメディア信号に関する受信状況が受信状況情報送信装置で取得されてパケット網を介してユーザ体感品質推定装置へ通知され、この受信状況情報に基づきユーザ体感品質推定装置によりリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質が推定されるため、各対地(ユーザ通信端末)に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや推定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[各実施の形態の概要]
まず、図1〜図3を参照して、本発明の各実施の形態の概要について説明する。図1は、リアルタイム系アプリケーションに関するインサービスでのユーザ体感品質推定方法の分類を示す説明図である。図2は、本発明におけるアプリケーション組込型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。図3は、本発明における測定器型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。
【0030】
一般に、リアルタイム系アプリケーションに関するインサービスでのユーザ体感品質の測定方法には、図1に示すように、ネットワーク品質を測定した結果からメディアの品質を推定するネットワーク品質測定方法9Aと、メディアの品質を直接測定し評価するメディア品質測定方法9Bがある。
【0031】
前者のネットワーク品質測定方法9Aは、パケット網3およびリアルタイム系アプリケーション端末1,2などのハードウェアの振る舞いを示す客観的な通信品質情報に基づき、リアルタイム系アプリケーション通信を利用するユーザが感じる主観的なユーザ体感品質(主観品質)を推定する方法である。この方法は、パケット網3およびリアルタイム系アプリケーション端末1,2で得られた通信品質情報を、例えばRTCP XRなどの制御用パケットによって転送することで、第三者がその通信品質情報を用いて品質管理を実施することも可能となり、スケーラビリティや測定容易性は非常に高い。ただし、メディア信号を直接評価する方法ではないため、ユーザ体感品質推定精度はメディア品質測定方法に比べて低い。
【0032】
一方、後者のメディア品質測定方法9Bは、リアルタイム系アプリケーション端末1,2間でやり取りするメディア信号を直接評価する技術であり、ユーザ体感品質の推定精度は非常に高い。しかし、前述のように、この方法を適用するには各ユーザの端末にメディア信号を収録(録音/録画)するメディア信号収録装置8を設置する必要がある。したがって、各ユーザに対して常時品質監視を行う場合、全ユーザに収録装置を設置することは実質的に不可能であることから、スケーラビリティや測定容易性が低い。
【0033】
本発明の各実施の形態では、受信側のリアルタイム系アプリケーション端末(以下、受信端末という)2側に設けた受信状況情報送信装置20で、受信メディア信号に関する受信状況を示す物理量を取得して受信状況情報として送信側のリアルタイム系アプリケーション端末(以下、送信端末という)1へ通知し、送信端末1側に設けたユーザ体感品質推定装置10において、受信状況情報送信装置20からの受信状況情報に基づきユーザ体感品質を推定することにより、前述したネットワーク品質測定方法9Aやメディア品質測定方法9Bの問題点を解決し、各対地に別途メディア信号収録装置8を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで呼毎(Call-by-Call)に常時監視でき、スケーラビリティが高く、ユーザ体感品質を高い精度で推定できるようにしたものである。
【0034】
また、本発明において、インサービスでユーザ体感品質の測定方法を実現する構成としては、ユーザ体感品質を推定する手段を送信端末のアプリケーションに組み込む構成と、送信端末に外付けされる測定器型の装置に組み込む構成がある。
前者のアプリケーション組込型は、図2に示すように、送信端末1のアプリケーションに、受信状況取得機能、客観品質評価機能、品質評価保存機能など、ユーザ体感品質推定に要する手段が組み込まれる。
【0035】
後者の測定器型は、図3に示すように、送信端末1にユーザ体感品質推定装置10を外付けで設置し、このユーザ体感品質推定装置10に、受信状況取得機能、客観品質評価機能、品質評価保存機能など、ユーザ体感品質推定に要する手段を実装したものである。受信端末2から送信端末1へ通知される受信状況情報を、ハブやスイッチなどの中継装置6を介してユーザ体感品質推定装置10で取得(キャプチャ)し、このユーザ体感品質推定装置10によりユーザ体感品質値が推定される。
【0036】
また、本発明の各実施の形態では、それぞれのユーザ体感品質推定方法において、リファレンス評価方法とノンリファレンス評価方法について説明する。
フルリファレンス評価法は、リファレンス信号(原信号)と、評価対象とするメディア信号すなわちネットワークを介して受信端末で収録されたメディア信号との2つを比較することによってユーザ体感品質値を推定する方法である。一方、ノンリファレンス評価法は、リファレンス信号との比較を行わず、評価対象とするメディア信号すなわちネットワークを介して受信端末側で収録された信号のみでユーザ体感品質値を推定する方法である。
【0037】
本発明の第1および第2の実施の形態では、受信端末2で受信したメディア情報をデコード(復号処理)する前のパケット形態におけるメディア情報(以下、メディアデータという)に関する劣化を示す劣化情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定装置について説明する。
一方、第3および第4の実施の形態では、受信端末2で受信したメディア情報をデコード(復号処理)した後のメディア情報(以下、メディア信号という)に関する特徴量を示す特徴量情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定装置について説明する。
【0038】
また、これら各実施の形態のうち、第1および第3の実施の形態では、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を送信端末1のアプリケーションに組み込んだ構成について説明し、第2および第4の実施の形態では、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を送信端末1に外付けしたユーザ体感品質推定装置10で実現する構成について説明する。
さらに、各実施の形態では、それぞれの実施の形態におけるノンリファレンス評価方法とフルリファレンス評価方法についても説明する。
【0039】
[第1の実施の形態]
まず、図4を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
図4において、送信端末1と受信端末2はメディア通信システムを構成するリアルタイム系アプリケーション端末である。
【0040】
送信端末1は、パケット網3を介して各種パケットをやり取りする通信端末装置からなり、主な構成として、所望のメディア信号をエンコードしてメディアデータを出力するメディア信号エンコード部1Aと、このメディアデータをパケット化して送信するメディアデータ送信処理部1Bとを有している。
受信端末2は、パケット網3を介して各種パケットをやり取りする通信端末装置からなり、主な構成として、パケット網3を介して受信したメディアパケットからメディアデータを生成するメディアデータ受信処理部2Aと、このメディアデータをデコードして元のメディア信号を再生出力するメディアデータデコード部2Bとを有している。
【0041】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、このようなメディア通信システムの受信端末2で受信したメディアデータの劣化を示す劣化情報からなる受信状況情報を用いて、送信端末1で当該リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図2に示したように、送信端末1内にユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0042】
[ユーザ体感品質推定装置]
次に、図1を参照して、ユーザ体感品質推定装置10の構成について詳細に説明する。ユーザ体感品質推定装置10は、主な機能部として、メディアデータ取得部11、メディアデータ記憶部12、受信状況取得部14、劣化メディア信号生成部15、劣化メディア信号記憶部16、ユーザ体感品質推定部17、推定ユーザ体感品質加工部18、および推定ユーザ体感品質データ記憶部19を備えている。
【0043】
これら機能部のうち、メディアデータ取得部11、受信状況取得部14、劣化メディア信号生成部15、ユーザ体感品質推定部17、および推定ユーザ体感品質加工部18は、各種信号処理回路やCPUなどの情報処理回路から構成されており、メディアデータ記憶部12、劣化メディア信号記憶部16、および推定ユーザ体感品質データ記憶部19は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置から構成されている。これら構成は、送信端末1の持つハードウェアあるいは新たなハードウェアと、新たなプログラムとを協動させることにより実現できる。
【0044】
メディアデータ取得部11は、送信端末1のメディア信号エンコード部1Aで生成されたメディアデータを取得してメディアデータ記憶部12に格納する機能を有している。受信状況取得部14は、パケット網3を介して受信端末2からの制御用パケットを取り込む制御用パケット取り込み手段14Aと、この制御用パケットを解析して受信端末2からの受信状況情報を抽出する制御用パケット解析手段14Bとを有している。劣化メディア信号生成部15は、受信状況取得部14で得られた受信状況情報に基づきメディアデータ記憶部12内のメディアデータを加工して劣化メディアデータを生成するメディアデータ加工手段15Aと、この劣化メディアデータをデコードすることにより受信端末2で得られたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元して劣化メディア信号記憶部16へ格納する劣化メディアデータデコード手段15Bとを有している。
【0045】
ユーザ体感品質推定部17は、公知のメディア品質客観評価技術に基づいて、劣化メディア信号記憶部16内の劣化メディアデータから、送信端末1と受信端末2とのリアルタイム系アプリケーションにおける所望のユーザ体感品質値を推定する機能を有している。推定ユーザ体感品質加工部18は、ユーザ体感品質推定部17で得られたユーザ体感品質値を統計処理して、例えばネットワーク管理プロトコルSNMP(Simple Network Management Protocol)で用いるデータベースMIB(Management Information Base)など第三者が取得できる形式に加工し、推定ユーザ体感品質データ記憶部19へ格納する機能を有している。
【0046】
[受信状況情報送信装置]
次に、図1を参照して、受信状況情報送信装置20の構成について詳細に説明する。受信状況情報送信装置20は、主な機能部として、受信状況解析部21、制御用パケット生成部22、および制御用パケット送信部23とを備えている。
これら機能部は、各種信号処理回路やCPUなどの情報処理回路から構成されている。これら構成は、受信端末2の持つハードウェアあるいは新たなハードウェアと、新たなプログラムとを協動させることにより実現できる。
【0047】
受信状況解析部21は、受信端末2のメディアデータ受信処理部2Aで受信メディアパケットから生成されたメディアデータについて劣化状況を解析しその内容を劣化情報として出力する劣化状況解析手段21Aと、受信端末2のメディアデータデコード部2Bでのデコード処理に関するコーデック情報を取得するコーデック情報取得手段21Bとを有している。制御用パケット生成部22は、受信状況解析部21で生成された劣化情報とコーデック情報とからなる受信状況情報を含む制御用パケット、例えばRTP(Real-time Transport Protocol:IETF RFC1889)で用いられるRTCP XR(RTP Control Protocol Extended Reports:IETF RFC3611)の制御用パケットを生成する機能を有している。制御用パケット送信部23は、この制御用パケットをパケット網3を介して送信端末1へ通知する機能を有している。
【0048】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図である。
【0049】
メディア通信システムでは、インサービスにおいて、送信端末1へ入力された所定のメディア信号4をメディア信号エンコード部1Aでデコードし(ステップ100)、得られたメディアデータをメディアデータ送信処理部1Bでパケット化し、パケット網3を介して受信端末2へ送信する(ステップ101)。
この際、ユーザ体感品質推定装置10は、メディアデータ取得部11により、メディア信号エンコード部1Aで生成されたメディアデータを取得(コピー)し(ステップ102)、メディアデータ記憶部12へ格納する(ステップ103)。
【0050】
一方、受信端末2は、メディアデータ受信処理部2Aにより送信端末1からのメディアパケットを受信してメディアデータを生成し、このメディアデータをメディアデータデコード部2Bでデコードしメディア信号5として再生出力する(ステップ110)。これにより、所望のメディア信号5が受信端末2の画面表示部(図示せず)や音声処理部(図示せず)で再生され、ユーザへ提供される。
この際、受信状況情報送信装置20は、受信状況解析部21の劣化状況解析手段21Aにより、メディアデータ受信処理部2Aで受信されたメディアデータ、ここでは揺らぎ吸収バッファを通過した後でデコードされる前のデータについて、その劣化状況を解析して劣化情報を得る(ステップ111)。
【0051】
例えば、メディアデータが音声/映像であれば、次のような欠落情報が生成される。まず、音声については、受信したメディアパケットのID番号順に損失の有無を0/1で記録し、損失の処理が無音挿入であったか詰めたかの情報を加え、無音挿入の場合、何ms挿入したかの情報も記録する。また、映像については、例えばIP網上で発生するパケット損失への対策として前方誤り訂正符号FEC(Forward Error Correction)機能を付加した動画圧縮技術であるMPEG2TS(Moving Picture Experts Group 2 Transport Stream)が用いられている場合、何番目のTS(Transport Stream)パケットが欠落したかの情報を記録する。
また、受信状況解析部21のコーデック情報取得手段21Bにより、受信端末2のメディアデータデコード部2Bでのデコード処理に関するコーデック情報を取得する(ステップ112)。
【0052】
次に、受信状況解析部21は、制御用パケット生成部22により、受信状況解析部21で得られた劣化情報およびコーデック情報を含む制御用パケットを生成し(ステップ113)、この制御用パケットを制御用パケット送信部23によりパケット網3を介して送信端末1へ送信する(ステップ114)。
【0053】
一方、送信端末1のユーザ体感品質推定装置10は、受信状況取得部14の制御用パケット取り込み手段14Aにより、受信端末2から送信端末1宛の制御用パケットを取り込み(キャプチャし)、この制御用パケットを制御用パケット解析手段14Bにより解析して受信端末2からの受信状況情報、ここでは劣化情報とコーデック情報とを抽出する(ステップ120)。
【0054】
続いて、劣化メディア信号生成部15のメディアデータ加工手段15Aにより、受信状況取得部14で得られた劣化情報に基づきメディアデータ記憶部12内のメディアデータを加工して劣化メディアデータを生成し(ステップ121)、劣化メディアデータデコード手段15Bにより、この劣化メディアデータを受信状況取得部14で得られたコーデック情報に基づきデコードして劣化メディア信号を生成し(ステップ122)、劣化メディア信号記憶部16へ格納する(ステップ123)。これにより、受信端末2で得られた劣化を含むメディア信号に対応する劣化メディア信号がユーザ体感品質推定装置10で復元されたことになる。
【0055】
次に、ユーザ体感品質推定装置10は、ユーザ体感品質推定部17により、公知のメディア品質客観評価技術に基づいて、劣化メディア信号記憶部16内の劣化メディア信号から、送信端末1と受信端末2とのリアルタイム系アプリケーション通信における所望のユーザ体感品質値を推定する(ステップ124)。
【0056】
このようにして、順次通知される受信状況情報に応じてユーザ体感品質値をそれぞれ推定し、メディア通信システムでの当該リアルタイム系アプリケーション通信が終了した後、推定ユーザ体感品質加工部18により、ユーザ体感品質推定部17で得られたユーザ体感品質推定値を統計処理して例えば時系列順に並び替え、MIBなど第三者が取得できる形式に加工する(ステップ125)。そして、推定ユーザ体感品質データ記憶部19へ格納し(ステップ126)、一連のユーザ体感品質推定動作を終了する。
【0057】
このように、本発明は、メディア通信システムの送信端末1側にユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信側に受信状況情報送信装置20を設け、インサービスで送信端末1からパケット網3を介して受信端末2へ送信したメディア信号に関する受信状況を受信状況情報送信装置20で取得してパケット網3を介してユーザ体感品質推定装置10へ通知し、この受信状況情報に基づきユーザ体感品質推定装置10によりメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
【0058】
したがって、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや推定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0059】
また、本発明のユーザ体感品質推定装置10や受信状況情報送信装置20の構成は、送信端末1や受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の送信端末1や受信端末2へ容易に実装することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、受信状況情報としてメディアデータの劣化の状況を示す劣化情報を通知し、ユーザ体感品質推定装置10により、この劣化情報に基づいて送信した元のメディアデータを加工して、受信端末2で得られたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元し、この劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質を推定するようにしたので、受信側で収録したメディア信号からユーザ体感品質を推定するメディア品質推定方法と同様に、ユーザ体感品質値について高い推定精度が得られる。
【0061】
この際、受信状況情報として劣化情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
また、受信端末2のメディアデータ受信処理部2Aで受信され、揺らぎ吸収バッファを通過した後でデコードされる前のメディアデータから劣化情報を取得するようにしたので、例えばメディア信号が音声などのアナログ形式からなる場合には、デコード後のアナログ形式のメディア信号から劣化情報を取得する場合と比較して、デジタル形式のメディアデータからリアルタイム系アプリケーション通知の振る舞いを示す的確な劣化情報を容易に取得でき、また受信状況情報送信装置20の構成を簡素化できる。
【0062】
また、本実施の形態では、インサービスで送信端末1から受信端末2へ送信されるメディア信号を利用してユーザ体感品質を推定するようにしたので、別個に評価用メディアデータを用意する必要がない。また、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間に評価用メディアデータを送信したり、ユーザ体感品質推定専用の評価用メディアデータを送信するためにユーザが所望するメディアデータの送信を中断させる必要もない。したがって、ユーザ体感品質の推定動作を行う負担を軽減でき、ユーザ体感品質を極めて容易に推定できる。
【0063】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)との比較を行わず、劣化メディア信号のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0064】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号については、メディアデータ記憶部12に格納されているメディアデータをデコードして送信端末1から送信したメディア信号4を生成し、そのメディア信号と劣化メディア信号記憶部16の劣化メディア信号とを比較してユーザ体感品質を推定すればよい。また、送信端末1から送信したメディア信号4をメディアデータ取得部11により取得してメディアデータ記憶部12に格納しておき、このメディア信号をユーザ体感品質推定に用いてもよい。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図であり、前述した図4と同じまたは同等部分には同一符号をしてある。
【0066】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、前述した第1の実施の形態(図4参照)と同様に、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディアデータの劣化を示す劣化情報からなる受信状況情報を用いて、送信端末1でユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図3に示したように、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を、送信端末1に外付けして設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0067】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置10は、前述の図4と比較して、メディアデータ記憶部12に代えて評価用メディアデータを予め記憶する評価用メディアデータ記憶部12Aを備えている。また、メディアデータ取得部11に代えて、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出して送信端末1へ出力するメディアデータ出力部11Aを備えている。なお、ユーザ体感品質推定装置10および受信状況情報送信装置20における他の構成については、前述の第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0068】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図であり、前述した図5と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0069】
まず、ユーザ体感品質推定装置10は、メディアデータ出力部11Aにより、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出し(ステップ130)、送信端末1へ出力する(ステップ131)。
これにより、送信端末1は、通常のメディア信号4をエンコードして得られたメディアデータと同様にして、メディアデータ送信処理部1Bから評価用メディアデータを送信する(ステップ132)。
【0070】
この後、通常のメディアデータが評価用メディアデータに置き換えられたものの、受信端末2、受信状況情報送信装置20、およびユーザ体感品質推定装置10で、前述の図5と同様の処理が行われる。
したがって、受信状況情報送信装置20により、受信端末2で受信された評価用メディアデータから劣化情報が取得され、制御用パケットによりパケット網3を介して送信端末1へ送信される(ステップ110〜114)。
【0071】
また、ユーザ体感品質推定装置10により、受信状況情報送信装置20からの劣化情報に基づき、受信端末2で得られた劣化を含む評価用メディア信号に対応する劣化評価用メディア信号が復元され、この劣化評価用メディア信号に基づいてメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質が推定される。
【0072】
このように、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置により、所定の評価用メディアデータを記憶しておき、送信端末から送信するメディアデータとして評価用メディアデータを送信端末へ出力するようにしたので、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
【0073】
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや測定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0074】
また、本発明のユーザ体感品質推定装置10や受信状況情報送信装置20の構成は、送信端末1や受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の送信端末1や受信端末2へ容易に実装することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、受信状況情報としてメディアデータの劣化の状況を示す劣化情報を通知し、ユーザ体感品質推定装置10により、この劣化情報に基づいて送信した元のメディアデータを加工して、受信端末2で得られたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元し、この劣化メディア信号に基づきユーザ体感品質を推定するようにしたので、受信側で収録したメディア信号からユーザ体感品質を推定するメディア品質推定方法と同様に、ユーザ体感品質値について高い推定精度が得られる。
【0076】
この際、受信状況情報として劣化情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
また、受信端末2のメディアデータ受信処理部2Aで受信され、揺らぎ吸収バッファを通過した後でデコードされる前のメディアデータから劣化情報を取得するようにしたので、例えばメディア信号が音声などのアナログ形式からなる場合には、デコード後のアナログ形式のメディア信号から劣化情報を取得する場合と比較して、デジタル形式のメディアデータからリアルタイム系アプリケーション通知の振る舞いを示す的確な劣化情報を容易に取得でき、また受信状況情報送信装置20の構成を簡素化できる。
【0077】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質の推定専用の評価用メディアデータを用いるようにしたので、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間や当該メディアデータの送信を一時中断して評価用メディアデータを送信する必要があるものの、利用者が所望するメディアデータとは異なり、例えばメディアデータの内容に偏りのない、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するのに適したメディアデータを用いることができ、より正確なユーザ体感品質値を推定できる。
【0078】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)との比較を行わず、劣化メディア信号のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0079】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号については、評価メディアデータ記憶部12Aに格納されている評価メディアデータをデコードして送信端末1から送信した評価用メディア信号を生成し、その評価用メディア信号と劣化メディア信号記憶部16の劣化評価用メディア信号とを比較してユーザ体感品質を推定すればよい。
【0080】
[第3の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図8は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図であり、前述した図4と同じまたは同等部分には同一符号をしてある。
【0081】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、前述した第1の実施の形態(図4参照)とは異なり、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図2に示したように、送信端末1内にユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0082】
本実施の形態にかかる受信状況情報送信装置20は、前述の図4と比較して、受信状況解析部21に、劣化状況解析手段21Aおよびコーデック情報取得手段21Bに代えて、受信端末2のメディアデータデコード部2Bで受信メディアデータがデコードされて得られたメディア信号5からその特徴量を抽出し、特徴量情報として出力する特徴量抽出手段21Cを備えている。
【0083】
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置10は、前述の図4と比較して、メディアデータ取得部11に代えて、送信端末1のメディア信号エンコード部1Aに入力されたメディア信号4を取得するメディア信号取得部11Bを備えている。また、メディアデータ記憶部12に代えて、メディア信号取得部11Bで取得したメディア信号を記憶するメディア信号記憶部12Bを備え、さらにこのメディア信号記憶部12Bのメディア信号から特徴量を抽出する特徴量抽出部13を備えている。
【0084】
なお、メディア信号取得部11B、メディア信号記憶部12B、および特徴量抽出部13については、フルリファレンス評価法を用いる場合にのみ必要となる構成であり、ノンリファレンス評価方法を用いる場合、これら構成は不要となる。
ユーザ体感品質推定装置10および受信状況情報送信装置20における他の構成については、前述の第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0085】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図9を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図9は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図である。
【0086】
メディア通信システムでは、インサービスにおいて、送信端末1へ入力された所定のメディア信号をメディア信号エンコード部1Aでデコードし(ステップ200)、得られたメディアデータをメディアデータ送信処理部1Bでパケット化し、パケット網3を介して受信端末2へ送信する(ステップ201)。
【0087】
一方、受信端末2は、メディアデータ受信処理部2Aにより送信端末1からのメディアパケットを受信してメディアデータを生成し、このメディアデータをメディアデータデコード部2Bでデコードしメディア信号5として再生出力する(ステップ210)。これにより、所望のメディア信号5が受信端末2の画面表示部(図示せず)や音声処理部(図示せず)で再生され、ユーザへ提供される。
この際、受信状況情報送信装置20は、受信状況解析部21の特徴量抽出手段21Cにより、メディアデータデコード部2Bでデコードされたメディア信号から、例えばITU−T勧告P.862 PESQなどで利用される音声メディア信号のスペクトル量やパワー、あるいはリデュースドリファレンス(擬似二重刺激)法などで利用されるPSNRなどの特徴量を抽出して特徴量情報を得る(ステップ211)。
【0088】
次に、受信状況解析部21は、制御用パケット生成部22により、受信状況解析部21で得られた特徴量情報を含む制御用パケットを生成し(ステップ212)、この制御用パケットを制御用パケット送信部23によりパケット網3を介して送信端末1へ送信する(ステップ213)。
【0089】
一方、送信端末1のユーザ体感品質推定装置10は、受信状況取得部14の制御用パケット取り込み手段14Aにより、受信端末2からの制御用パケットを取り込み、この制御用パケットを制御用パケット解析手段14Bにより解析して受信端末2からの受信状況情報、ここでは特徴量情報を抽出する(ステップ220)。
【0090】
次に、ユーザ体感品質推定部17により、公知のメディア品質客観評価技術に基づいて、受信状況取得部14で得られた特徴量情報から、送信端末1と受信端末2とのリアルタイム系アプリケーション通信における所望のユーザ体感品質値を推定する(ステップ221)。
【0091】
このようにして、順次通知される受信状況情報に応じてユーザ体感品質値をそれぞれ推定し、メディア通信システムでの当該リアルタイム系アプリケーション通信が終了した後、推定ユーザ体感品質加工部18により、ユーザ体感品質推定部17で得られたユーザ体感品質推定値を統計処理して例えば時系列順に並び替え、MIBなど第三者が取得できる形式に加工する(ステップ222)。そして、推定ユーザ体感品質データ記憶部19へ格納し(ステップ223)、一連のユーザ体感品質推定動作を終了する。
【0092】
このように、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報を抽出してこれを受信状況情報として送信し、この特徴量情報に基づいてユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質を推定するようにしたので、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
【0093】
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや測定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0094】
また、本発明の受信状況情報送信装置20の構成は、受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の受信端末2へ容易に実装することができる。
【0095】
また、本実施の形態では、受信状況情報として特徴量情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
さらに、その特徴量から所望のユーザ体感品質値を直接推定でき、第1および第2の実施の形態のように劣化情報を通知する場合と比較して、劣化メディア信号を生成する必要がなくなり、ユーザ体感品質推定装置の構成を簡略化できる。
【0096】
また、本実施の形態では、インサービスで送信端末1から受信端末2へ送信されるメディア信号を利用してユーザ体感品質を推定するようにしたので、別個に評価用メディアデータを用意する必要がない。また、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間に評価用メディアデータを送信したり、ユーザ体感品質推定専用の評価用メディアデータを送信するためにユーザが所望するメディアデータの送信を中断させる必要もない。したがって、ユーザ体感品質の推定動作を行う負担を軽減でき、ユーザ体感品質を極めて容易に推定できる。
【0097】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)の特徴量との比較を行わず、受信端末2で得られたメディア信号の特徴量のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号の特徴量との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0098】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号の特徴量については、メディア信号取得部11Bによりメディア信号記憶部12Bに格納されているメディア信号から、特徴量抽出部13により特徴量を抽出し、この特徴量と受信状況取得部14からの特徴量とを比較してユーザ体感品質を推定すればよい。また、前述した第1の実施の形態と同様に、送信端末1から送信したメディアデータをメディアデータ取得部11により取得してメディアデータ記憶部12に格納しておき、このメディアデータを特徴量抽出部13によりデコードして元のメディア信号を生成し、このメディア信号から特徴量を抽出するようにしてもよい。
【0099】
[第4の実施の形態]
次に、図10を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムについて説明する。図10は、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図であり、前述した図8と同じまたは同等部分には同一符号をしてある。
【0100】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムは、前述した第1の実施の形態(図4参照)とは異なり、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報からなる受信状況情報を用いて、ユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質値を推定するようにしたものである。
また、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの実装形態としては、前述の図3に示したように、ユーザ体感品質推定に要する各種手段を持つユーザ体感品質推定装置10を、送信端末1に外付けして設けるとともに、受信端末2内に受信状況情報を送信端末1へ通知する受信状況情報送信装置20を設けたものである。
【0101】
本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置10は、前述の図8と比較して、メディア信号記憶部12Bに代えて評価用メディアデータを予め記憶する評価用メディアデータ記憶部12Aを備え、さらにメディア信号取得部11Bに代えて、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出して送信端末1へ出力するメディアデータ出力部11Aを備えている。また、評価用メディアデータ記憶部12Aの評価用メディアデータから特徴量を抽出する特徴量抽出部13を備えている。
【0102】
なお、特徴量抽出部13については、フルリファレンス評価法を用いる場合にのみ必要となる構成であり、ノンリファレンス評価方法を用いる場合、これら構成は不要となる。
ユーザ体感品質推定装置10および受信状況情報送信装置20における他の構成については、前述の第3の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0103】
[第4の実施の形態の動作]
次に、図11を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの動作について説明する。図11は、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの品質推定動作を示すシーケンス図であり、前述した図9と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0104】
まず、ユーザ体感品質推定装置10は、メディアデータ出力部11Aより、評価用メディアデータ記憶部12Aから評価用メディアデータを読み出し(ステップ230)、送信端末1へ出力する(ステップ231)。
これにより、送信端末1は、通常のメディア信号4をエンコードして得られたメディアデータと同様にして、メディアデータ送信処理部1Bから評価用メディアデータを送信する(ステップ232)。
【0105】
この後、通常のメディアデータが評価用メディアデータに置き換えられるものの、受信端末2、受信状況情報送信装置20、およびユーザ体感品質推定装置10で、前述の図9と同様の処理が行われる。
したがって、受信状況情報送信装置20により、受信端末2で受信された評価用メディア信号から特徴量情報が取得され、制御用パケットによりパケット網3を介して送信端末1へ送信される(ステップ210〜213)。
また、ユーザ体感品質推定装置10により、受信状況情報送信装置20からの特徴量情報に基づいてメディア通信システムで行われているリアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質が推定される。
【0106】
このように、本実施の形態では、受信状況情報送信装置20により、メディア通信システムの受信端末2で受信したメディア信号の特徴量を示す特徴量情報を抽出してこれを受信状況情報として送信し、この特徴量情報に基づいてユーザ体感品質推定装置10でユーザ体感品質を推定するようにしたので、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置することなく、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値をインサービスで推定できる。
【0107】
これにより、各対地に受信メディア信号の収録装置を設置する必要がある従来のユーザ体感品質推定方法と比較して、高いスケーラビリティや測定容易性が得られ、多くの通信端末あるいは広い範囲を対象として高精度のユーザ体感品質推定値を取得でき、パケット網の品質設計や品質管理を行う場合に極めて有用である。
【0108】
また、本発明の受信状況情報送信装置20の構成は、受信端末2が有するハードウェアを利用して、例えばリアルタイム系アプリケーション用プログラムに付属するソフトウェアにより実現できことから、任意の受信端末2へ容易に実装することができる。
【0109】
また、本実施の形態では、受信状況情報として特徴量情報を通知するようにしたので、受信側のメディア信号をユーザ体感品質推定装置10へ通知する場合と比較して、受信状況情報のデータ量を大幅に削減でき、ユーザ体感品質の推定動作に起因するネットワーク負荷を大場に削減できる。
さらに、その特徴量から所望のユーザ体感品質値を直接推定でき、第1および第2の実施の形態のように劣化情報を通知する場合と比較して、劣化メディア信号を生成する必要がなくなり、ユーザ体感品質推定装置の構成を簡略化できる。
【0110】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質の推定専用の評価用メディアデータを用いるようにしたので、ユーザが所望するメディアデータが送信されていない期間や当該メディアデータの送信を一時中断して評価用メディアデータを送信する必要があるものの、利用者が所望するメディアデータとは異なり、例えばメディアデータの内容に偏りのない、リアルタイム系アプリケーション通信のユーザ体感品質値を推定するのに適したメディアデータを用いることができ、より正確なユーザ体感品質値を推定できる。
【0111】
また、本実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10のユーザ体感品質推定部17により、リファレンス信号(原信号)の特徴量との比較を行わず、受信端末2で得られたメディア信号の特徴量のみを用いるノンリファレンス評価方法に基づきユーザ体感品質を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リファレンス信号の特徴量との比較を行うフルリファレンス評価方法を採用してもよい。
【0112】
この際、フルリファレンス評価方法で用いるリファレンス信号の特徴量については、評価メディアデータ記憶部12Aに格納されている評価メディアデータを特徴量抽出部13によりデコードして評価メディア信号を生成し、この評価メディア信号から特徴量を抽出するようにしてもよい。
なお、評価メディアデータ記憶部12Aに、評価メディアデータに対応する評価メディア信号を予め格納しておき、特徴量抽出部13によりこの評価メディア信号から特徴量を抽出するようにしてもよい。
【0113】
[実施の形態の拡張]
以上の各実施の形態において、各ユーザ体感品質値を推定する推定処理間隔としては、例えば15秒間隔など、メディア品質客観評価技術でユーザ体感品質の推定精度が高いとされている間隔、もしくは主観品質評価法(ITU-T勧告P.800,P.830)で示される間隔で行うようにしてもよい。
さらに、ユーザ体感品質推定値の統計処理では、上記推定処理間隔で推定した各ユーザ体感品質値の平均値や標準偏差を算出するようにしてもよい。
【0114】
なお、第1および第3の実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1に外付けで設置した場合を例として説明したが、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1内に実装してもよい。同様に、第2および第4の実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1内に実装した場合を例として説明したが、ユーザ体感品質推定装置10を送信端末1に外付けで設置してもよい。
また、各実施の形態では、受信状況情報送信装置20を受信端末2内に実装した場合を例として説明したが、受信状況情報送信装置20を受信端末2に外付けで設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】リアルタイム系アプリケーションに関するインサービスでのユーザ体感品質推定方法の分類を示す説明図である。
【図2】本発明におけるアプリケーション組込型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。
【図3】本発明における測定器型のユーザ体感品質推定方法を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定システムのユーザ体感品質推定動作を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0116】
1…送信端末、1A…メディア信号エンコード部、1B…メディアデータ送信処理部、2…受信端末、2A…メディアデータ受信処理部、2B…メディアデータデコード部、3…パケット網、4…メディア信号(送信側)、5…メディア信号(受信側)、6…中継装置、10…ユーザ体感品質推定装置、11…メディアデータ取得部、11A…メディアデータ出力部、11B…メディア信号取得部、12…メディアデータ記憶部、12A…評価用メディアデータ記憶部、12B…メディア信号記憶部、13…特徴量抽出部、14…受信状況取得部、14A…制御用パケット取り込み手段、14B…制御用パケット解析手段、15…劣化メディア信号生成部、15A…メディアデータ加工手段、15B…劣化メディアデータデコード手段、16…劣化メディア信号記憶部、17…ユーザ体感品質推定部、18…推定ユーザ体感品質加工部、19…推定ユーザ体感品質データ記憶部、20…受信状況情報送信装置、21…受信状況解析部、21A…劣化状況解析手段、21B…コーデック情報取得手段、21C…特徴量抽出手段、22…制御用パケット生成部、23…制御用パケット送信部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムであって、
前記受信端末側に設けられ、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部とを有する受信状況情報送信装置と、
前記送信端末側に設けられ、前記パケット網を介して受信した前記受信状況情報送信装置からの制御用パケットから前記受信状況情報を取得する受信状況取得部と、この受信状況情報に基づき前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部とを有するユーザ体感品質推定装置と
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定装置は、前記受信状況取得部により受信状況情報として得られた劣化情報に基づいて前記送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより前記受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに有し、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記劣化メディア信号に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項3】
請求項2に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号と前記劣化メディア信号とを比較することにより前記ユーザ体感品質値を推定することを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項4】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記受信状況取得部により受信状況情報として得られた特徴量情報に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項5】
請求項4に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記ユーザ体感品質推定装置は、前記送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得する特徴量抽出部をさらに有し、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記特徴量抽出部で取得された特徴量情報と前記受信状況取得部で取得された特徴量情報とを比較することにより前記ユーザ体感品質値を推定することを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項6】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記ユーザ体感品質推定装置は、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶部と、前記送信端末から送信するメディアデータとして前記評価用メディアデータを前記送信端末へ出力するメディアデータ出力部とをさらに有することを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項7】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定方法であって、
前記受信端末側に設けられた受信状況情報送信装置により、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析ステップと、
前記受信状況情報送信装置により、前記受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信ステップと、
前記送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置により、前記パケット網を介して受信した前記受信状況情報送信装置からの制御用パケットから前記受信状況情報を取得する受信状況取得ステップと、
前記ユーザ体感品質推定装置により、この受信状況情報に基づき前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定ステップと
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項8】
請求項7に記載のユーザ体感品質推定方法において、
前記受信状況解析ステップは、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定装置により、前記受信状況情報に含まれる劣化情報に基づいて前記送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより前記受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成ステップをさらに備え、
前記ユーザ体感品質推定ステップは、前記劣化メディア信号に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項9】
請求項7に記載のユーザ体感品質推定方法において、
前記受信状況解析ステップは、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定ステップは、前記受信状況情報に含まれる特徴量情報に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項10】
請求項7に記載のユーザ体感品質推定方法において、
前記ユーザ体感品質推定装置により、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶ステップと、
前記ユーザ体感品質推定装置により、前記送信端末側から送信するメディアデータとして前記評価用メディアデータを前記送信端末へ出力するメディアデータ出力ステップと
をさらに備えることを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項11】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、前記送信端末側に設けられるユーザ体感品質推定装置であって、
前記受信端末側に設けられた受信端末状況情報送信装置から送信された、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を含む制御用パケットを前記パケット網を介して受信して、その制御用パケットから前記受信状況情報を取得する受信状況取得部と、
この受信状況情報に基づき前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部と
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項12】
請求項11に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記受信状況取得部により得られた前記受信状況情報である、前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報に基づいて、前記送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより前記受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに備え、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記劣化メディア信号に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項13】
請求項11に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記受信状況取得部により得られた受信状況情報である、前記受信端末で得られたメディア信号の特徴量を示す特徴量情報に基づき、前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項14】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、前記受信端末側に設けられる受信状況情報送信装置であって、
前記送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置で前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定する際に用いられ、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、
この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部と
を備えることを特徴とする受信状況情報送信装置。
【請求項15】
請求項14に記載の受信状況情報送信装置において、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得することを特徴とする受信状況情報送信装置。
【請求項16】
請求項14に記載の受信状況情報送信装置において、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得することを特徴とする受信状況情報送信装置。
【請求項17】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの送信端末であって、
請求項11に記載のユーザ体感品質推定装置を備えることを特徴とする送信端末。
【請求項18】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの受信端末であって、
請求項14に記載の受信状況情報送信装置を備えることを特徴とする受信端末。
【請求項1】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムであって、
前記受信端末側に設けられ、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部とを有する受信状況情報送信装置と、
前記送信端末側に設けられ、前記パケット網を介して受信した前記受信状況情報送信装置からの制御用パケットから前記受信状況情報を取得する受信状況取得部と、この受信状況情報に基づき前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部とを有するユーザ体感品質推定装置と
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定装置は、前記受信状況取得部により受信状況情報として得られた劣化情報に基づいて前記送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより前記受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに有し、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記劣化メディア信号に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項3】
請求項2に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号と前記劣化メディア信号とを比較することにより前記ユーザ体感品質値を推定することを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項4】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記受信状況取得部により受信状況情報として得られた特徴量情報に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項5】
請求項4に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記ユーザ体感品質推定装置は、前記送信端末から送信されたメディアデータのメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得する特徴量抽出部をさらに有し、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記特徴量抽出部で取得された特徴量情報と前記受信状況取得部で取得された特徴量情報とを比較することにより前記ユーザ体感品質値を推定することを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項6】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定システムにおいて、
前記ユーザ体感品質推定装置は、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶部と、前記送信端末から送信するメディアデータとして前記評価用メディアデータを前記送信端末へ出力するメディアデータ出力部とをさらに有することを特徴とするユーザ体感品質推定システム。
【請求項7】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定方法であって、
前記受信端末側に設けられた受信状況情報送信装置により、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析ステップと、
前記受信状況情報送信装置により、前記受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信ステップと、
前記送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置により、前記パケット網を介して受信した前記受信状況情報送信装置からの制御用パケットから前記受信状況情報を取得する受信状況取得ステップと、
前記ユーザ体感品質推定装置により、この受信状況情報に基づき前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定ステップと
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項8】
請求項7に記載のユーザ体感品質推定方法において、
前記受信状況解析ステップは、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定装置により、前記受信状況情報に含まれる劣化情報に基づいて前記送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより前記受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成ステップをさらに備え、
前記ユーザ体感品質推定ステップは、前記劣化メディア信号に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項9】
請求項7に記載のユーザ体感品質推定方法において、
前記受信状況解析ステップは、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得し、
前記ユーザ体感品質推定ステップは、前記受信状況情報に含まれる特徴量情報に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項10】
請求項7に記載のユーザ体感品質推定方法において、
前記ユーザ体感品質推定装置により、所定の評価用メディアデータを記憶する記憶ステップと、
前記ユーザ体感品質推定装置により、前記送信端末側から送信するメディアデータとして前記評価用メディアデータを前記送信端末へ出力するメディアデータ出力ステップと
をさらに備えることを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項11】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、前記送信端末側に設けられるユーザ体感品質推定装置であって、
前記受信端末側に設けられた受信端末状況情報送信装置から送信された、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を含む制御用パケットを前記パケット網を介して受信して、その制御用パケットから前記受信状況情報を取得する受信状況取得部と、
この受信状況情報に基づき前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定部と
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項12】
請求項11に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記受信状況取得部により得られた前記受信状況情報である、前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報に基づいて、前記送信端末から送信されたメディアデータを加工することにより前記受信端末で再生されたメディア信号に対応する劣化メディア信号を復元する劣化メディア信号生成部をさらに備え、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記劣化メディア信号に基づき前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項13】
請求項11に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記ユーザ体感品質推定部は、前記受信状況取得部により得られた受信状況情報である、前記受信端末で得られたメディア信号の特徴量を示す特徴量情報に基づき、前記ユーザ体感品質値を推定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項14】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末との間で行われるリアルタイム系アプリケーション通信について、当該通信を利用するユーザの主観的な品質評価を示すユーザ体感品質値を推定するユーザ体感品質推定システムで、前記受信端末側に設けられる受信状況情報送信装置であって、
前記送信端末側に設けられたユーザ体感品質推定装置で前記リアルタイム系アプリケーション通信に関するユーザ体感品質値を推定する際に用いられ、前記受信端末で得られたメディア信号に関する受信状況を示す受信状況情報を取得する受信状況解析部と、
この受信状況情報を含む制御用パケットを送信する制御用パケット送信部と
を備えることを特徴とする受信状況情報送信装置。
【請求項15】
請求項14に記載の受信状況情報送信装置において、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディアデータからその劣化状況を示す劣化情報を取得することを特徴とする受信状況情報送信装置。
【請求項16】
請求項14に記載の受信状況情報送信装置において、
前記受信状況解析部は、前記受信状況情報として前記受信端末で得られたメディア信号からその特徴量を示す特徴量情報を取得することを特徴とする受信状況情報送信装置。
【請求項17】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの送信端末であって、
請求項11に記載のユーザ体感品質推定装置を備えることを特徴とする送信端末。
【請求項18】
所望のメディア信号をエンコードして得たメディアデータを送信する送信端末と、パケット網を介して受信したメディアデータをデコードして所望のメディア信号を再生出力する受信端末とからなり、これら送信端末と受信端末との間でリアルタイム系アプリケーション通信を行うメディア通信システムの受信端末であって、
請求項14に記載の受信状況情報送信装置を備えることを特徴とする受信端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−157223(P2006−157223A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341929(P2004−341929)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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