説明

ライトガイドおよびキーユニット、ならびに当該キーユニットを備える電子機器

【課題】
プッシャーを有するライトガイドを使用した際に、キートップの表示部をより均一に照光する。
【解決手段】
本発明は、1以上のキートップ、または1以上のキートップ20を連接したキーシート10と、各キートップ20の裏方向にスイッチ71を備えるスイッチ基板70との間に配置され、光源からの光を各キートップ20側に照光するライトガイド60であって、その面内におけるスイッチ71の位置に形成され、押圧を伝達するプッシャー62bを備えるプッシャー層62と、プッシャー62bと反対側の面に形成されるシート層61とを備え、プッシャー層62あるいはシート層61の内、少なくともシート層61は、その面内におけるキートップ20の少なくとも1つの位置に、そのキートップ20を照光するための反射層63を有し、シート層61の屈折率が、シート層61のプッシャー62b側に接する層の屈折率より大きいライトガイド60に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトガイドおよびキーユニット、ならびに当該キーユニットを備える電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機器、携帯情報端末(PDA)、オーディオ機器等の電子機器において、操作面に設けられるキートップの所定部分を、内部に組み込んだLED等により照光して、暗所でも容易に操作できるようにした機器が多くなってきている。
【0003】
操作面を構成するキートップあるいは2以上のキートップを連接したキーシートを照光する方法として、例えば、PETあるいはポリウレタン製の透明フィルムの表方向にキートップやキーシートを配置し、当該透明フィルムの側面からLED等の光を導き、その光をキートップの裏側に形成した反射層にて反射させてキートップの抜き文字部分から出射する方法が知られている。このような照光式のキーユニットの場合、透明フィルムは、ライトガイドとして機能すると同時に、各キートップからの押圧を、透明フィルムを挟んで裏側に配置されるスイッチに伝える押圧伝達媒体としても機能する必要がある。このため、透明フィルムの片面に、各キートップ裏方向(スイッチ側、キートップ側のいずれか)にプッシャー(押し子)を備えたプッシャー層を形成したライトガイドも知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−300153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術には、次のような問題がある。ライトガイドにプッシャーを形成すると、ライトガイドの内部を導光する光がプッシャーの側面で反射する。プッシャーの側面で反射した光(エッジライトという)は、ライドガイドの比較的広い面積を有する反射層からの光より高輝度に視認されやすい。この結果、キートップの表示部が所々高輝度に光るという現象が生じ、キートップの表示部が均一に照光されないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであって、プッシャーを有するライトガイドを使用しても、キートップの表示部をより均一に照光することのできるライトガイド、それを組み込んだキーユニット、ならびに該キーユニットを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、1若しくは2以上のキートップ、または2以上のキートップを連接したキーシートと、各キートップの裏方向にスイッチを備えるスイッチ基板との間に配置され、側面に配置される光源からの光を各キートップ側に照光するライトガイドであって、その面内におけるスイッチの位置に形成され、それぞれのキートップからの押圧を伝達するプッシャーを備えるプッシャー層と、そのプッシャー層の上記プッシャーと反対側の面に形成されるシート層とを備え、プッシャー層あるいはシート層の内、少なくともシート層において、その面内におけるキートップの少なくとも1つの位置に、そのキートップを照光するための反射層を有し、シート層の屈折率を、シート層のプッシャー側に接する層の屈折率より大きくしたライトガイドである。
【0008】
本発明の別の形態は、プッシャー層とシート層との間に、両層を接着するための接着層をさらに備え、シート層の屈折率を、シート層のプッシャー側に接する接着層の屈折率より大きくしたライトガイドである。
【0009】
本発明の一形態は、1若しくは2以上のキートップ、または2以上の上記キートップを連接したキーシートと、各キートップの裏方向にスイッチを備えるスイッチ基板と、キートップまたはキーシートとの間に配置され、側面に配置される光源からの光をキートップ側に照光するライトガイドとを備えるキーユニットであって、ライトガイドに、その面内におけるスイッチの位置に形成され、それぞれのキートップからの押圧を伝達するプッシャーを備えるプッシャー層と、そのプッシャー層のプッシャーと反対側の面に形成されるシート層とを備え、プッシャー層あるいはシート層の内、少なくともシート層において、その面内における各キートップの少なくとも1つの位置に、そのキートップを照光するための反射層を形成し、シート層の屈折率を、シート層のプッシャー側に接する層の屈折率より大きくしたキーユニットである。
【0010】
本発明の別の形態は、プッシャー層とシート層との間に、両層を接着するための接着層をさらに備え、シート層の屈折率を、シート層のプッシャー側に接する接着層の屈折率より大きくしたキーユニットである。
【0011】
本発明の別の形態は、ライトガイドを、プッシャーがキートップ側に突出するように配置し、反射層を、プッシャー層側に開口してシート層側に窪む複数の凹部から構成したキーユニットである。
【0012】
本発明の別の形態は、ライトガイドを、プッシャーがスイッチ側に突出するように配置し、反射層を、シート層のキートップに対向する面に開口しそこから内方に窪む複数の凹部から構成したキーユニットである。
【0013】
本発明の一形態は、上述のいずれかのキーユニットを備える電子機器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プッシャーを有するライトガイドを使用した際に、キートップの表示部をより均一に照光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子機器に備えられるキーユニットの平面図である。
【図3】図3は、図2に示すキーユニットのA−A線断面図である。
【図4】図4は、図3に示すライトガイドを拡大して示す拡大断面図およびその一部のさらなる拡大断面図である。
【図5】図5は、図2に示すキーユニットのキーシートの裏側から照光したときの状況を示す平面図である。
【図6】図6は、第二の実施の形態に係るライトガイドの図4と同視の拡大断面図およびその一部のさらなる拡大断面図である。
【図7】図7は、第三の実施の形態に係るキーユニットの図3と同視の断面図である。
【図8】図8は、図7に示すライトガイドを拡大して示す拡大断面図およびその一部のさらなる拡大断面図である。
【図9】図9は、実施例1にて製造したキーユニットを用いて、LEDを点灯したときのキーシート側からみた各キートップの照光状況を示す写真である。
【図10】図10は、比較例にて製造したキーユニットを用いて、LEDを点灯したときのキーシート側からみた各キートップの照光状況を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係るライトガイド、キーユニットおよびそのキーユニットを備える電子機器の各実施の形態について説明する。
【0017】
<第一の実施の形態>
【0018】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の斜視図である。図2は、図1に示す電子機器に備えられるキーユニットの平面図である。
【0019】
第一の実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電話機器1は、開閉可能な折りたたみ式の構成を有し、開いた面の片側にキーユニット2を備える。図2に示すように、キーユニット2は、その最表面に、平面視にて略長方形の平面を有する板状のキーシート10を備える。キーシート10は、その表側の面に、表側に突出する合計19個のキートップ20を連接状態で備える。また、キーシート10は、平面視にて上方の左右略中央に、キーシート10と別体にて、四角枠状の多方向キー30と、当該多方向キー30の内側に略四角形の中央キー31とを備える。多方向キー30および中央キー31は、その外周に沿って隙間32を有しており、それらを裏側に向かって押圧したときでもキーシート10にその押圧動作を伝達しにくい構造である。キーシート10は、キートップ20同士の周囲に、キートップ20の天面より窪む溝22を備えている。溝22の裏側残部の厚さは非常に薄いので、各キートップ20をその表側から押圧しても、隣接するキートップ20にその力を伝達しにくい。なお、図2以降の図において、キートップ20や溝22のように、同じ符号を付す箇所が多数存在する場合に、一部の構成要素にのみ符号を付している図もあるが、図の見やすさを考慮して符号を省略している。
【0020】
キーシート10は、透光性に優れる樹脂、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂(好ましくは、アクリルウレタン系の樹脂)から、好適に構成される。キーシート10は、その裏側に、遮光フィルムあるいは遮光塗料(この実施の形態では、代表して、「遮光フィルム」)50(図3を参照)を備える。遮光フィルム50は、キーシート10と同様の透光性に優れる樹脂から好適に構成されるが、これに限定されず、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱硬化性ポリウレタンエラストマー(TSU)等の透光性と柔軟性の両方に優れるエラストマーから構成されても良い。遮光フィルム50の好適な厚さは、30〜200μmである。遮光フィルム50は、各キートップ20の位置に、キートップ20の裏側から表側に向けて透光するための文字、絵、記号等の抜き文字状の表示部21を有する。表示部21は印刷されていない部分である。これに対して、遮光フィルム50の表示部21以外の領域は、黒、銀等の遮光性のインク(顔料系、染料系のいずれでも良い)にて印刷されている。
【0021】
なお、キーシート10は、キートップ20も含めて、アルミニウムあるいはステンレススチールにて形成しても良い。その場合、表示部21をキートップ20の表裏方向に貫通する貫通孔にて形成し、その貫通孔に透明な樹脂を埋設するのが好ましい。このように表示部21を構成すると、遮光フィルム50を用いなくても、キーシート10の裏側からの光は、表示部21の領域からのみ表方向に出射可能になる。
【0022】
多方向キー30および中央キー31は、キーシート10と同様、透光性に優れる樹脂から構成しても良いが、この実施の形態では、多方向キー30および中央キー31自体から照光する必要が無くそれらの外周の隙間32から照光するので、金属から構成されている。金属には、例えば、アルミニウム、ステンレススチール等を用いることができる。多方向キー30および中央キー31を、キーシート10と同様の樹脂にて形成する場合には、隙間32の部分を薄肉の溝にてキーシート10と一体化しても良い。
【0023】
キーシート10の裏方向に配置されるスイッチ基板(後述する)には、光源の一例であるLED40が配置されている。LED40は、ライトガイド(後述する)の側面からライトガイド内に光を入射し、キートップ20の表示部21を照光するために用いられる。図2では、2個のLED40を表示しているが、1個あるいは3個以上のLED40を配置しても良い。さらには、LED40以外の光源を用いても良い。
【0024】
図3は、図2に示すキーユニットのA−A線断面図である。図4は、図3に示すライトガイドを拡大して示す拡大断面図およびその一部のさらなる拡大断面図である。
【0025】
図3に示すように、キーユニット2は、その表側から順に、キーシート10、遮光フィルム50、ライトガイド60、スイッチ基板70の順に積層配置した構成を有する。ライトガイド60は、シート層61と、その片面に積層されるプッシャー層62とを備える。シート層61は、略平板状のシートである。プッシャー層62は、略平板状の被覆層62a上に、その面内におけるスイッチ(スイッチ基板70上に配置される、後述のドームスイッチ71)の位置に形成され、それぞれのキートップ20からの押圧を伝達するプッシャー62bを配置する。ライトガイド60は、プッシャー層62をキーシート10側に、シート層61をスイッチ基板70側にそれぞれ向けて配置される。プッシャー層62およびシート層61は、その面内における各キートップ20の位置に、各キートップ20を照光するための反射層63を有する。反射層63は、プッシャー層62側に開口してシート層61側に窪む複数の凹部63aから構成され、プッシャー層62およびシート層61の両層にまたがって形成されている。反射層63は、この実施の形態では、プッシャー62bに形成されず、被覆層62aにのみ形成されているが、プッシャー62bにも形成することができる。プッシャー62bに反射層63を形成すると、プッシャー62bの天面および内部における集光によってキートップ20をより明るく照光することができる。
【0026】
プッシャー層62は、シート層61より屈折率の低い材料から成り、その条件を満たす透光性を有する材料である限り、特に制限は無いが、好ましくは、ポリ−4−メチルペンテン−1、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン/ポリフッ化ビニリデン共重合体やフルオロアルキルタククリレート系のフッ素系ポリマー重合体、ウレタン樹脂等から構成される。シート層61は、当該シート層61のプッシャー62b側に接する層であるプッシャー層62より屈折率が高い材料から成り、その条件を満たす透光性を有する材料である限り、特に制限は無いが、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、マレイミド系ポリマー、環状オレフィン系樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルナフタレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリジアリルフタレート樹脂、ポリフェニレンメタクリレート樹脂、ポリベンジルメタクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレンアクリロニトリル共重合体等から構成される。
【0027】
シート層61を、プッシャー層62よりも高屈折率の材料で構成することにより、臨界角以下でシート層61を通過する光が全反射し、プッシャー62bに入射する光量を少なくすることができる。この結果、プッシャー62bの側面で光るエッジライトを効果的に低減できる。
【0028】
シート層61の好適の厚さの範囲は、0.05〜0.20mm(50〜200μm)、より好ましくは0.10〜0.16mm(100〜160μm)の範囲である。プッシャー層62の被覆層62aの好適な厚さの範囲は、0.001〜0.03mm(1〜30μm)。プッシャー62bの好適な外径は1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。プッシャー62bの好適な高さは、0.03〜0.40mm(30〜400μm)の範囲、より好ましくは0.15〜0.25mm(150〜250μm)の範囲である。
【0029】
凹部63aは、好ましくは、レーザ加工(例えば、炭酸ガスレーザを用いた加工)によって形成される。凹部63aの深さ(L)は、被覆層62a(厚さ: T1)を貫通してシート層61の内部に到達する長さであり(図4のX部の拡大図を参照)、好ましくは、0.003〜0.015mm(3〜15μm)である。シート層61内を伝搬する光を反射させてキートップ20を照光する必要からである。また、凹部63aの好ましい開口径は、0.1〜0.3mmである。通常、LED40からの距離が長いほど、光量が少なくなる。そこで、複数の表示部21を均一に照光するため、LED40から遠いキートップ20の裏側ほど反射率を高める必要が有る。かかる必要から、凹部63aは、LED40からの距離が長くなるほど、高密度にあるいは深く形成するのが好ましい。この実施の形態では、凹部63aをプッシャー層62とシート層61の両層にまたがって形成しているが、後述する第三の実施の形態に示すように、シート層61にのみ形成しても良い。すなわち、凹部63aは、シート層61の内部を伝搬する光を反射させる必要から、少なくともシート層61に存在するように形成する必要がある。
【0030】
プッシャー層62の反射層(凹部63aを集積させた領域)63以外の表側の面は、平均表面粗さ(Ra)にて1.5μm以下の鏡面とするのが好ましい。当該鏡面は、プッシャー層62の成形時に使用する金型の内面を鏡面仕上げにし、あるいはライトガイド60の成形後の鏡面研磨により実現可能であるが、成形後の後工程のない前者の方法による方が好ましい。また、鏡面に成形されたプラスチックフィルム面を成形時に転写しても良い。
【0031】
スイッチ基板70は、キートップ20の裏側の位置に、スイッチの一例であるドームスイッチ71を備える。スイッチ基板70としては、好適には、ガラス繊維で編んだクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ製の基板である。ただし、スイッチ基板70として、ガラスコンポジット基板、アルミナ等から成るセラミックス基板を用いても良い。ドームスイッチ71は、キートップ20からの押圧を、ライトガイド60を介して受けることによって、ドームがつぶれ、その際にスイッチが入る構造を有する。ドームには、好適には、メタルドームを用いる。スイッチ基板70は、ドームスイッチ71を覆うように、ドーム被覆シート72を備える。
【0032】
図5は、図2に示すキーユニットのキーシートの裏側から照光したときの状況を示す平面図である。黒塗り部分は遮光領域を、白抜き部分は照光領域を、それぞれ示す。
【0033】
図5に示すように、照光領域は、多方向キー30と中央キー31の両外周にある隙間32および各キートップ20の領域にある表示部21である。シート層61を、プッシャー層62よりも高屈折率の材料で構成しているので、臨界角以下でシート層61を通過する光が全反射し、プッシャー62bに入射する光量が少なくなる。このため、プッシャー62bの側面で光るエッジライトを効果的に低減できる。この結果、複数の表示部21間での輝度ムラあるいは1つの表示部21内での輝度ムラは生じにくい。
【0034】
<第二の実施の形態>
【0035】
第二の実施の形態に係るライトガイドおよびキーユニット、ならびに当該キーユニットを備える電子機器は、第一の実施の形態に係るそれらと異なり、ライトガイドを構成するプッシャー層とシート層との間に両層を接着する接着層を備える。これ以外の構成は、先に説明した第一の実施の形態と共通する。したがって、共通する構成には同じ符号を付し、かつ共通する構成の重複説明を省略する。
【0036】
図6は、第二の実施の形態に係るライトガイドの図4と同視の拡大断面図およびその一部のさらなる拡大断面図である。
【0037】
ライトガイド60を構成するシート層61とプッシャー層62とは、接着層80を介在させて接着されている。シート層61の屈折率は、シート層61のプッシャー62b側に接する接着層80の屈折率より大きい。接着層80は、上記条件を満たす透光性を有する材料である限り、特に制限は無いが、好ましくは、シリコーン樹脂系、変性シリコーン樹脂系、エポキシ変性シリコーン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系の各種接着剤にて形成される。具体的には、KE-1800、セメダイン(登録商標)PMシリーズやスーパーXを用いて、接着層80を形成するのが好ましい。接着層80を有する場合、当該接着層80よりもプッシャー62b側に配置されるプッシャー層62は、必ずしも、シート層61より屈折率が小さいことを要しない。プッシャー層62の材料としては、特に、アクリル樹脂、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどが好ましい。
【0038】
凹部63aは、好ましくは、レーザ加工(例えば、炭酸ガスレーザを用いた加工)によって形成される。凹部63aの深さ(L)は、被覆層62a(厚さ: T1)と接着層80(厚さ:T2)とを貫通してシート層61の内部に到達する長さであり(図6のY部の拡大図を参照)、好ましくは、0.003〜0.015mm(3〜15μm)である。シート層61内を伝搬する光を反射させてキートップ20を照光する必要からである。
【0039】
<第三の実施の形態>
【0040】
第三の実施の形態に係るライトガイドおよびキーユニット、ならびに当該キーユニットを備える電子機器は、第一の実施の形態に係るそれらと異なり、ライトガイドを、プッシャーがスイッチ側を向くように配置し、反射層をシート層にのみ形成している。これ以外の構成は、先に説明した第一の実施の形態と共通する。したがって、共通する構成には同じ符号を付し、かつ共通する構成の重複説明を省略する。
【0041】
図7は、第三の実施の形態に係るキーユニットの図3と同視の断面図である。図8は、図7に示すライトガイドを拡大して示す拡大断面図およびその一部のさらなる拡大断面図である。
【0042】
ライトガイド60は、シート層61と、そのシート層61のプッシャー62b側に接する層としてプッシャー層62とを備え、プッシャー62bをドームスイッチ71の真上に位置するように、配置される。シート層61は、その面内における各キートップ20の位置に、各キートップ20を照光するための反射層63を有する。反射層63は、シート層61側に開口してシート層61内にて閉塞する複数の凹部63aから構成される。したがって、凹部63aは、プッシャー層62に到達しておらず、凹部63aの深さLは、シート層61の厚さ(T3)よりも短くなるように形成されている(図8のZ部の拡大図を参照)。反射層63は、この実施の形態では、プッシャー62bの表方向の位置にも形成されている。プッシャー62bの表方向の位置に反射層63を形成すると、キートップ20をより明るく照光することができるからである。ただし、プッシャー62bの表方向の位置を避けて、反射層63を形成することも可能である。
【0043】
<ライトガイドの製造例>
【0044】
プッシャー62bを形成可能な凹部を備えるクロムメッキを施した金型内に、プッシャー層62を形成するための未硬化エラストマー組成物をコーティングし、その上にシート層61をラミネート後、熱プレスを行い、シート層61とプッシャー層とから成るライトガイド60を成形する。金型から硬化体を離型し、シート層61に対して、炭酸ガスを用いたレーザ加工により、キートップ20の裏側の位置であってキートップ20の天面と同一の面積を持つ領域に複数の凹部63aから成る反射層63を形成する。ただし、プッシャー62bの真裏の位置には、反射層63を形成しない。また、LED40から遠い場所にある反射層63ほど、凹部63aの間隔(ピッチ)を狭く、かつ凹部63aの径を大きくして、少ない光量でも反射率を高めて、各反射層63の表側に位置する各表示部21間の輝度の差を低減するようにしている。具体的には、ピッチを0.5〜1.0mmの範囲で変化させ、凹部63aの径を0.1〜0.3mmの範囲で変化させる。
【0045】
シート層61とプッシャー層62との間に接着層80を介在させる場合の製造例は、次のとおりである。プッシャー62bを形成可能な凹部を備えるクロムメッキを施した金型内に、プッシャー層62を形成するための未硬化状態の紫外線硬化性樹脂をコーティングし、PETフィルムをラミネートしてから、UVランプをPETフィルム上から照射して、金型内の紫外線硬化樹脂を硬化する。その後、PETフィルムを硬化体から分離し、その面に接着層80となる接着剤を印刷等の手法で塗布し、その上にシート層61をラミネートする。これによって、紫外線硬化樹脂から成るプッシャー層62と、シート層61との間に接着層80を介在させた状態のライトガイド60が得られる。その後の反射層63の形成は、先に述べた方法と同一である。
【0046】
次に、ドーム被覆シート72にて覆った複数のドームスイッチ71の真上にプッシャー62bを配置するように、スイッチ基板70上に2種類のライトガイド60をそれぞれ配置する。スイッチ基板70は、図2に示すように、2箇所にLED40を備える。続いて、複数のキートップ20を連接した形状のPC製のキーシート10、アルミニウム製の多方向キー30およびアルミニウム製の中央キー31を、表示部21を除き遮光インクで遮光印刷した遮光フィルム50に貼り、遮光フィルム50側をライトガイド60に対向させて、キーシート10、多方向キー30および中央キー31をセットする。以上の工程にて、2種類のキーユニット2が完成する。
【0047】
上記2種類のキーユニット2は、LED40を点灯すると、各キートップ20の各表示部21において輝度ムラがほとんどなく、かつ1つの表示部21内での輝度ムラもないものとなる。
【0048】
<その他の実施の形態>
【0049】
以上、本発明のライトガイドおよびキーユニット、ならびに当該キーユニットを備える電子機器の各実施の形態を説明してきたが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。例えば、ライトガイド60の表側に、複数のキートップ20を連接したキーシート10ではなく、個別独立したキートップ20を複数配置しても良い。また、表示部21,21間の輝度を異なるようにするために、各表示部21の裏側に配置される複数の凹部63aの密度、深さ等を変えても良い。
【0050】
また、1枚のライトガイド60中において、複数のプッシャー62bの一部をキートップ20側に、他のプッシャー62bをドームスイッチ71側に向けて形成しても良い。また、その場合、複数の凹部63aを、すべて、キートップ20側の面から内方に形成し、あるいはドームスイッチ71側の面から内方に形成しても良い。また、キートップ20に透光性の表示部21を備えるために、キートップ20の表側の面に、遮光フィルム50を配置しあるいは遮光印刷を施しても良い。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の実施例について、比較例と共に説明する。
【0052】
<実施例1>
プッシャーを形成可能な凹部を備えるクロムメッキを施した金型内に、シリコーンゴムコンパウンド(品番:KE−2030−70A/B,信越化学工業株式会社製)を、スクレバーを用いて厚さ0.01mmにコーティングした。次に、そのコーティングした面に、厚さ0.1mmのウレタン樹脂製のシート(品番:MF100T−NYP4,日清紡ケミカル株式会社製)をラミネート後、温度:130℃、成形時間:2分 圧力:20Kg/cm という成形条件にて熱プレスを行った。次に、金型から硬化体を離型し、硬化体のシート層側の面におけるキートップの裏側の位置であってキートップの天面と同一の面積を持つ領域に、炭酸ガスを用いたレーザ加工により、複数の凹部から成る反射層を形成した。反射層は、プッシャーの真裏の位置を除いて形成した。LEDから遠い場所にある反射層ほど、凹部の間隔(ピッチ)を狭く、かつ凹部の径を大きくするように、凹部を形成した。具体的には、ピッチを0.5〜1.0mmの範囲で変化させ、凹部の径を0.1〜0.3mmの範囲で変化させた。以上の工程により、シート層の屈折率(1.49)がプッシャー層の屈折率(1.42)より大きなライトガイドを完成した。
【0053】
次に、ドーム被覆シートにて覆った複数のドームスイッチの真上にプッシャーを配置するように、スイッチ基板上にライトガイドを配置した。スイッチ基板上の2個のLEDは、ライトガイドの側面から光を入射可能な位置に調整した。続いて、複数のキートップを連接した形状のPC製のキーシート、アルミニウム製の多方向キーおよびアルミニウム製の中央キーを、ライトガイドに対向させて、キーシート、多方向キーおよび中央キーをセットした。以上の工程にて、キーユニットが完成した。
【0054】
<実施例2>
プッシャーを形成可能な凹部を備えるクロムメッキを施した金型内に、プッシャー層を形成するための未硬化状態のUVアクリル樹脂(品番:SP−17,大日精化工業株式会社製)を、スクレバーを用いて厚さ0.03mmにコーティングした。そのコーティング面にPETフィルムをラミネートしてから、積算光量500mJ/mになる条件下で、UVランプをPETフィルム上から照射して、金型内のUVアクリル樹脂を硬化した。その後、PETフィルムを硬化体から分離し、その面にシリコーンゴム(品番:KE−1800、信越化学工業株式会社製)をスクリーン印刷し、その上に厚さ0.1mmのウレタン樹脂製のシート(品番:MF100T−NYP4,日清紡ケミカル株式会社製)をラミネートした。以上の工程により、シート層の屈折率(1.49)が接着層(シリコーンゴム層)の屈折率(1.42)よりも大きいライトガイドを完成した。反射層の形成以後の工程は、実施例1と同様の手法にて行い、キーユニットを完成した。
【0055】
<比較例>
プッシャーを形成可能な凹部を備えるクロムメッキを施した金型内に、未硬化状態のUVアクリル樹脂(品番:SP−17,大日精化工業株式会社製)を、スクレバーを用いて厚さ0.125mmにコーティングした。そのコーティング面にPETフィルムをラミネートしてから、UVランプをPETフィルム上から照射して、金型内のUVアクリル樹脂を硬化した。硬化体を金型およびPETフィルムから分離してUVアクリル樹脂のみから成るライトガイド(屈折率:1.50)を完成した。反射層の形成以後の工程は、実施例1と同様の手法にて行い、キーユニットを完成した。
【0056】
<評価>
図9は、実施例1にて製造したキーユニットを用いて、LEDを点灯したときのキーシート側からみた各キートップの照光状況を示す写真である。図10は、比較例にて製造したキーユニットを用いて、LEDを点灯したときのキーシート側からみた各キートップの照光状況を示す写真である。なお、この評価では、キーシートの裏面に遮光フィルムを貼付せず、遮光領域を形成することなく、キーシートの表側からライトガイド側からの照光状況を観察した。
【0057】
図9および図10に示す両写真を比較して明らかなように、実施例1で製造したキーユニットでは、各キートップの領域内にプッシャーがほとんど視認できないが、比較例で製造したキーユニットでは、各キートップの領域内に明確にプッシャーを視認できる。この結果より、実施例で用いたライトガイドは、屈折率の異なる2種類の材料から構成され、光を伝搬するシート層を、プッシャー層よりも高屈折率材料で形成しているため、プッシャーの側面で光るエッジライトが生成しにくかったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ライトガイドを少なくとも備えるキーユニットを組み込んだ電子機器に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 携帯電話機器(電子機器)
2 キーユニット
10 キーシート
20 キートップ
40 LED(光源)
60 ライトガイド
61 シート層
62 プッシャー層(接着層が無い場合には、シート層のプッシャー側に接する層)
62b プッシャー
63 反射層
63a 凹部
70 スイッチ基板
71 ドームスイッチ(スイッチ)
80 接着層(シート層のプッシャー側に接する層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1若しくは2以上のキートップ、または2以上の上記キートップを連接したキーシートと、各キートップの裏方向にスイッチを備えるスイッチ基板との間に配置され、側面に配置される光源からの光を上記各キートップ側に照光するライトガイドであって、
その面内における上記スイッチの位置に形成され、それぞれの上記キートップからの押圧を伝達するプッシャーを備えるプッシャー層と、
そのプッシャー層の上記プッシャーと反対側の面に形成されるシート層と、
を備え、
上記プッシャー層あるいは上記シート層の内、少なくとも上記シート層は、その面内における上記キートップの少なくとも1つの位置に、そのキートップを照光するための反射層を有し、
上記シート層の屈折率は、上記シート層の上記プッシャー側に接する層の屈折率より大きいことを特徴とするライトガイド。
【請求項2】
前記プッシャー層と前記シート層との間に、両層を接着するための接着層をさらに備え、
前記シート層の屈折率は、前記シート層の前記プッシャー側に接する上記接着層の屈折率より大きいことを特徴とする請求項1に記載のライトガイド。
【請求項3】
1若しくは2以上のキートップ、または2以上の上記キートップを連接したキーシートと、
上記各キートップの裏方向にスイッチを備えるスイッチ基板と、
上記キートップまたは上記キーシートとの間に配置され、側面に配置される光源からの光を上記キートップ側に照光するライトガイドと、
を備えるキーユニットであって、
上記ライトガイドは、
その面内における上記スイッチの位置に形成され、それぞれの上記キートップからの押圧を伝達するプッシャーを備えるプッシャー層と、
そのプッシャー層の上記プッシャーと反対側の面に形成されるシート層と、
を備え、
上記プッシャー層あるいは上記シート層の内、少なくとも上記シート層は、その面内における上記各キートップの少なくとも1つの位置に、そのキートップを照光するための反射層を有し、
上記シート層の屈折率は、上記シート層の上記プッシャー側に接する層の屈折率より大きいことを特徴とするキーユニット。
【請求項4】
前記プッシャー層と前記シート層との間に、両層を接着するための接着層をさらに備え、
前記シート層の屈折率は、前記シート層の前記プッシャー側に接する上記接着層の屈折率より大きいことを特徴とする請求項3に記載のキーユニット。
【請求項5】
前記ライトガイドは、前記プッシャーを前記キートップ側に突出するように配置され、
前記反射層は、前記プッシャー層側に開口して前記シート層側に窪む複数の凹部から構成されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のキーユニット。
【請求項6】
前記ライトガイドは、前記プッシャーを前記スイッチ側に突出するように配置され、
前記反射層は、前記シート層の前記キートップに対向する面に開口しそこから内方に窪む複数の凹部から構成されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のキーユニット。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のキーユニットを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79570(P2012−79570A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224522(P2010−224522)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】