説明

ライナーおよびその使用

【課題】剥離紙の湿度が変化しても寸法が安定し、打ち抜きプロセス後、紙の繊維が切断端部に付着せず、又ポリエステルフィルムのものは有色で入手出来る、ライナーを提供する。
【解決手段】少なくとも1400、好ましくは少なくとも2000MPaの曲げ弾性率を有する延伸ポリプロピレンを含有するフィルムから製造されるライナーであって、外側にあるフィルムの両面の少なくとも1つに剥離被覆層が塗布されているライナーにより長手方向で高い引張弾性率を有し、また着色して製造可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナーおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
片面又は両面が接着剤で被覆されている接着テープは、製造プロセスの終わりに、通常、アルキメデスの螺旋の形態のロールを形成するように巻き取られる。両面接着性の接着テープの場合、接着剤が互いに接触することを防止するために、又は、片面接着性の接着テープの場合、接着剤が支持体に付着することを防止するために、接着テープは、巻き取る前にライナー材料に貼付され、該ライナー材料は接着テープと一緒に巻き取られる。当業者には、このようなライナー材料はライナーの名称で既知である。ライナーは、片面又は両面接着性の接着テープを覆う他に、ラベルの被覆にも使用される。
【0003】
一般に、ライナーは剥離紙(片面又は両面シリコーン被覆を有する紙)である。少ないが、シリコーン被覆を有するポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリエチレンフィルムも使用されている。フィルムをベースにするライナーは、感圧接着製品業者に剥離フィルムと称されている。
【0004】
ポリオレフィン製のこのようなライナーのためのフィルムは、インフレーション又は平坦フィルム押出成形で製造される。ライナーは製造プロセス(粘着剤での被覆、乾燥、乾燥した接着剤の基体への移動、およびライナーの取り外し)に役立つ。ライナーは、貯蔵(例えば、両面接着テープの場合)又は後加工(例えば、ラベルの場合)にも役立つ。ライナーは、感圧接着剤層を被覆し、適用時、貼り付ける前に取り外される。
【0005】
他の加工分野における沢山の用途(いわゆる変換用途)、例えば打ち抜き物の製造のためには、湿気に弱い場合には寸法安定性がなくそして更に厚み誤差がしばしば大き過ぎるので、剥離紙を使用することができない。さらに、打ち抜きプロセス後、剥離紙に由来する紙の繊維が接着テープの切断端縁部に付着する。これは、打ち抜き物を衛生用品や電子製品に使用するのに、例えば、打ち抜き物を薄型画面又は携帯電話の組み立てに使用するのに許容できない。このために、ライナーが高い剛性を有することが有利である。細い両面接着性の接着テープ(例えば、5mmの幅のもの)では、貼り付けられた状態の接着テープが収縮して元に戻ることにより剥がれることがないように、ライナーは、適用時に延伸し過ぎないようにするための防止材としても役立つ。剥離紙は、これに関して優れた特性を有するが、但し、湿度が変化すると、寸法が安定しない。さらに、打ち抜きプロセス後、剥離紙に由来する紙の繊維が接着テープの切断端縁部に付着する。これは、打ち抜き物を衛生用品や電子製品に使用するのに、例えば、打ち抜き物を薄型画面又は携帯電話の組み立てに使用するのに許容できない。
【0006】
ポリエステルフィルムは、実際、無色でしか入手可能できず、そのため最終使用者はライナーを認識し難い。押出成形されたポリオレフィンフィルムから製造されたライナーは柔軟で可撓性があり、従って、それらは感圧接着製品を平坦でない表面に貼付するのに使用される。不都合には、それらは低い引張弾性率を有し、従って接着剤を直接的に被覆するのにも、細い接着テープの裏張りにも使用できない。
【0007】
ライナーは、使用時に付着するまで感圧接着剤層を覆うのに役立つ、すなわち、ライナーは、感圧接着剤層から取り外された後に処分されなければならない補助手段である。同様のことが、ライナーの特殊ケースである剥離フィルムにも当てはまる(フィルムに剥離剤が塗布されている場合)。支持体は接着テープ又はラベルの永久的構成要素であるため、該支持体は基本的にライナーと区別される。支持体は、常に、感圧接着剤層と(直接、又は、プライマーとも称される接着促進剤により)しっかりと固着されている。同様のことが、剥離フィルムとフィルム接着テープ支持体の区別にも言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/195300A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0378420A1号明細書
【特許文献3】欧州特許第0168713B1号明細書
【特許文献4】独国特許発明第3820294C1号明細書
【特許文献5】米国特許第4,725,630A1号明細書
【特許文献6】独国特許発明第3316166C1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開10145229A1号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ウルマンの工業化学百科事典の「9.1章、成核剤」(2002年版、ウィリー−VCH出版、記事オンライン掲載日2000年6月15日)(Kapitel “9.1. Nucleating Agents” in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(Auflage 2002 vom Wiley−VCH Verlag, Article Online Posting Date June 15, 2000))
【非特許文献2】D.サタス、感圧接着剤技術のハンドブック(バン・ノストランド・ラインホルド)(D.Satas, Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology (Van Nostrand Reinhold))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、剥離紙の前述の欠点を有しておらず、長手方向で高い引張弾性率を有し、また着色して製造することも可能であるライナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項中により詳細に特徴が記載されているようなライナーによって解決される。従属請求項中に、本発明の有利な実施形態が記載されている。更に、本発明のライナーの使用が本発明の概念に包含されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従って、本発明は、少なくとも1400、好ましくは少なくとも2000MPaの曲げ弾性率を有する延伸ポリプロピレンを含有するフィルムから製造されたライナーに関し、ここで、フィルムの外側両面の少なくとも1つに剥離被覆層が塗布されている。
【0013】
高い引張強度、1%と10%の延伸時の高い応力、および高い引裂伝播抵抗を達成するため、延伸比がフィルムに対してそれぞれ技術的に実施可能な最大となるように延伸加工条件を選択しなければならない。本発明によれば、長手方向の延伸比は少なくとも1:8、好ましくは少なくとも1:9.5である。
【0014】
例えば、1:6の延伸比は、長さ1mの最初のフィルム片から、長さ6mの延伸フィルム片が得られることを示す。延伸比は、延伸前の線速度と延伸後の線速度(linear speed)と延伸後の線速度の商とも称される。
【0015】
更に、1%と10%の延伸時の応力、引張強度、および引裂伝播抵抗の値をできるだけ高くするために、成核剤の使用が有利である。ポリプロピレンに適した全ての成核剤(α晶又はβ晶)が考慮に入る。
【0016】
これには、例えば、ベンゾエート、ホスフェート、又はソルビトール誘導体のような有機成核剤がある。このような成核剤は、例えば、非特許文献1、又は特許文献1の実施例に記載されている。他の特に適した方法は、特許文献1に記載されているような、半結晶性の分岐又は結合ポリマー成核剤、例えば、4,4’−オキシジベンゼンスルホニルアジドで変性されたポリプロピレンの使用である。
【0017】
1100〜1300MPaの曲げ弾性率を有するPP共重合体から製造された、又はPP単独重合体とポリエチレンの混合物から製造された一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、光沢がなく曇っている。確かに当業者には成核剤がポリプロピレン製の非延伸物品の透明性を向上させ得ることは既知であるが、驚いたことに、本発明によるポリプロピレンから製造された延伸フィルムは、成核剤を均質に分散させたとき、ガラスのように透明であり、不均質に分散させたとき、真珠層のような白色である。後者は、成核剤を添加していないポリプロピレンのペレットと均質に成核剤を添加したポリプロピレンの混合物を押出成形することによって最も簡単に実現でき、そのとき、効果を達成するために延伸は必要不可欠である。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態では、ライナーは、長手方向(機械方向)で1%の延伸時に少なくとも20、好ましくは少なくとも40N/mmの応力、および/又は、10%の延伸時に少なくとも250、好ましくは少なくとも300N/mmの応力を有する。引張強度は、別の好ましい実施形態によれば、少なくとも300、好ましくは少なくとも330N/mmであり、および/又は横方向の引裂伝播抵抗は少なくとも80、特に少なくとも220N/mmである。
【0019】
強度の値を計算するため、幅に関する力の値を厚さで割る。フィルムの厚さは好ましくは25〜200μm、特に好ましくは40〜140μm、特に非常に好ましくは50〜90μmである。
【0020】
本発明によるライナー用のフィルムは、一軸延伸ポリプロピレンフィルムのための比較的簡単な押出方法と同様に製造できる。このようなフィルムは、開封ストリップ又は荷造テープ用の支持材料として使用される。それらは、支持体フィルムに高い長手方向強度と高い靭性を付与するために、1100〜1300MPaの曲げ弾性率を有するPP共重合体から、又はPP単独重合体とポリエチレンの混合物から製造される。延伸比は、通常、1:6である。これらの支持体フィルムは片面が感圧接着剤で、好ましくはプライマーを使用してコーティングされる。
【0021】
ライナーは、それに対して、接着テープ又はラベルの構成要素ではなく、それを製造、貯蔵、又は打ち抜きにより後加工するための補助手段に過ぎない。更に、ライナーは、支持体とは対照的に、接着剤層としっかりと結合しない。本発明によるライナーは、使用目的だけでなく、ポリプロピレン原料の硬さ(曲げ弾性率として表される)でも、一軸延伸ポリプロピレン支持体フィルムと区別される。本発明によるフィルムは、少なくとも1400、好ましくは少なくとも2000MPaの曲げ弾性率を有するポリプロピレンから製造され、更に、より高度に延伸される。
【0022】
別の有利な実施形態によれば、フィルムの外側両面にそれぞれ剥離被覆層が塗布されており、ここで、剥離被覆層は好ましくは接着剤層に対して異なる剥離力を有する。
【0023】
本発明によるライナーのフィルムに適したPPフィルム原料は、市販のポリプロピレン単独重合体又はポリプロピレン共重合体である。好ましくは、本発明の対象にはポリプロピレン単独重合体が使用される。
【0024】
前述のポリマーのメルトインデックスは、フラットフィルム押出に適した範囲になければならない。この範囲は、0.3〜15g/10分、好ましくは0.8〜5g/10分の範囲(230℃/2.16kgで測定)でなければならない。ポリプロピレンは、好ましくは主にアイソタクチック構造である。
【0025】
フィルムは、他のポリマー、例えば、EVA若しくはLLDPEのようなエチレン共重合体も含めたポリエチレン、又は、エチレン若しくはブチレンを有するポリプロピレン共重合体も含めた本発明によらないポリプロピレンを含有してもよい。
【0026】
ポリマーは、添加剤なしの純粋な形態で、又は、シリコーン層の硬化に悪影響を及ぼさない限り、酸化防止剤、光安定剤、アンチブロックキング剤、潤滑剤および加工助剤、充填材、着色剤、顔料、発泡剤又は成核剤のような添加剤と混合して、市販形態又はバッチ形態で含有できる。
【0027】
フィルムは好ましくは有色である。
【0028】
溶媒含有剥離剤で被覆するとき、フィルムは脆くなる可能性がある。摩擦によって表面から繊維が解れ出る可能性がある。従って、本発明の別の有利な実施形態によれば、フィルムは、外側両面の少なくとも1つに、150℃未満、好ましくは140℃未満の結晶子融点を有するポリプロピレンポリマー又はエチレン含有ポリマーから製造された同時押出成形層を有し、ここで、場合によっては、同時押出成形層はフィルムと剥離被覆層との間に配置されている。
【0029】
比較的低い結晶度を(一般にそれに伴って比較的低い結晶子融点も)有するこのようなポリマーの割合は、好ましくは少なくとも約50重量%である。例としては、PPランダム共重合体、PP三元共重合体、PPプラストマー(例えば、ビスタマックス(Vistamaxx)(登録商標)又はバーシファイ(Versify)(登録商標))、PEプラストマー(例えば、イグザクト(Exact)(登録商標)又はタフマー(Tafmer)(登録商標))、EPM、EPDM、LDPE、VLDPE又はLLDPEがある。
【0030】
同時押出成形層のポリマーがプロピレンを全く含有しないか又は少量含有する場合、それは、フィルムと同時押出成形層との間の粘着性を改善のために、好ましくはポリプロピレン含有ポリマー、特にフィルムの主成分と混合され、好ましくはその割合は少なくとも約20重量%である。
【0031】
本発明の別の有利な形態によれば、フィルムは、外側両面の少なくとも1つに、オレフィン性コモノマーの含有量が2.5重量%未満、好ましくは0重量%のポリプロピレンポリマーから製造された同時押出成形層を有し、ここで、好ましくは同時押出成形層は成核剤を含まず、場合によってはフィルムと剥離被覆層との間に同時押出成形層が配置されている。
【0032】
驚いたことに、結晶度が高いにも関わらず、オレフィン性コモノマーの含有量2.5重量%未満、好ましくは0重量%のポリプロピレンポリマー(後者はポリプロピレン単独重合体が存在することを意味する)もこのような同時押出成形層に、特に同時押出成形層が成核剤を含まない場合に、適している。
【0033】
(1つ以上の)同時押出成形層の厚さは、フィルムの全厚の最大20%、好ましくは最大10%である。
【0034】
本発明によるライナーは、同時押出成形層の外側面に、剥離被覆層(付着防止被覆層)が設けられている。
【0035】
本発明の別の有利な実施形態によれば、支持体の外側両面にそれぞれ剥離被覆層が塗布されていてもよい。
剥離被覆層は、シリコーン、アクリレート(例えば、プリマール(Primal)(登録商標)205)、ポリビニルステアリルカルバメート又はクロムステアレート錯体(例えば、キロン(Quilon)(登録商標)C)の如きステアリル化合物、無水マレイン酸共重合体とステアリルアミンの反応生成物、又はポリビニルアルコールとステアリルイソシアネートの反応生成物のようなステアリル化合物から構成されていてもよい。
【0036】
好ましくは、剥離被覆層はシリコーンベースである。シリコーンは、溶媒を含まずに(100%濃度で若しくは分散物として)、又は溶媒を含有して塗布されてもよく、放射線により、熱的に、例えば、縮合反応、付加反応、若しくはラジカル反応で、又は、物理的に(例えば、ブロック構造で)架橋されていてもよい。
【0037】
場合によっては、剥離被覆層は、同時押出成形により塗布されていてもよい(例えば、ポリビニルステアリルカルバメート又はシリコーングラフトポリエチレンを含有する外側層が塗布されていてもよい)。
【0038】
好ましくは、ライナーのフィルムの両面にシリコーン層が塗布されており、それは、特に好ましくは接着剤層に対して異なる剥離力を有する。
【0039】
剥離被覆層がフィルムの機械的特性に悪影響を及ぼすことを回避するため、熱的に又は放射線誘導により架橋された溶媒不含有シリコーンが特に好ましく、とりわけビニルポリジメチルシロキサンが好ましい。これらは、好ましくは、メチル水素シロキサンで、白金触媒若しくはロジウム触媒の存在下で、又は電子線/紫外線によって架橋される。
【0040】
そのために、例えば、市販の付加架橋性シリコーン剥離剤系である、ワッカー・ヘミー(Wacker−Chemie)の「デヘーシブ(Dehesive)940A」とそれに付属する触媒系が使用可能であり、これは非架橋状態で塗布された後、その塗布された状態で後で架橋される。
【0041】
架橋性シリコーンとして、剥離被覆層に通常使用されるシリコーン系を使用することができる。それらには、架橋触媒と、いわゆる熱硬化性の縮合架橋性又は付加架橋性シロキサンとの混合物が挙げられる。更に、光活性触媒、いわゆる光開始剤を、エポキシドおよび/又はビニルエーテルをベースにする紫外線硬化性カチオン架橋性シロキサン、例えば例えばアクリレート変性シロキサンのような紫外線硬化性ラジカル架橋性シロキサンと組み合わせて使用することもできる。同様に、電子線硬化性シリコーンアクリレートの使用も可能である。それに対応する系は、使用目的に応じて、安定剤又は加工助剤のような他の添加剤も含有していてもよい。
【0042】
更に、加熱又は照射によって架橋する様々な種類のオルガノポリシロキサン組成物が知られている。例えば、特許文献2に記載されているような、付加反応で架橋する、すなわち、直接ケイ素原子に結合している水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、直接ケイ素原子に結合しているビニル基を有するオルガノポリシロキサンとの混合物をヒドロシリル化触媒の存在下で熱処理することによって架橋する組成物が挙げられる。
【0043】
光重合性オルガノポリシロキサン組成物も使用できる。例えば、(メタ)アクリレート基で置換された炭化水素基が直接ケイ素原子に結合しているオリガノポリシロキサン相互間の反応によって、感光剤の存在下で架橋される組成物が挙げられる。(特許文献3、特許文献4を参照されたい)。同様に、メルカプト基で置換された炭化水素が直接ケイ素原子に結合しているオルガノポリシロキサンと、直接ケイ素原子に結合しているビニル基を有するオルガノポリシロキサンとの架橋反応が感光剤の存在下で起こる組成物も使用可能である。このような組成物は、例えば、特許文献5に記載されている。
【0044】
例えば、エポキシ基で置換された炭化水素基が直接ケイ素原子に結合している特許文献6に記載のオルガノポリシロキサン組成物を使用するとき、架橋反応は、添加されたオニウム塩触媒の光分解によって得られる触媒量の酸の遊離により誘発される。カチオン機構によって硬化可能な別のオルガノポリシロキサン組成物は、例えば、プロペニルオキシシロキサン末端基を有する物質である。
【0045】
熱硬化性剥離被覆層は、典型的には次の成分からなる多成分系であることが多い:
a)約80〜200個のジメチルポリシロキサン単位からなり、鎖末端がビニルジメチルシロキシ単位で終わっている直鎖又は分岐鎖のジメチルポリシロキサン。典型的な代表例には、例えば、共にワッカー・ヘミー社(Wacker−Chemie GmbH)から市販されているデへーシブ(DEHESIVE)(登録商標)921又は610のような、溶媒不含有で末端にビニル基を有する付加架橋性シリコーン油がある。
【0046】
b)通常、メチル水素シロキシ単位とジメチルシロキシ単位から構成されている直鎖状又は分岐鎖状の架橋剤であって、鎖末端がトリメチルシロキシ基又はジメチル水素シロキシ基で飽和されている架橋剤。この種類の製品の典型的な代表例には、例えば、ワッカー・ヘミー社(Wacker−Chemie GmbH)から市販されている架橋剤V24、V90又はV06のような反応性Si−Hの含有量が高い水素ポリシロキサンがある。
【0047】
c)M単位として、通常使用されるトリメチルシロキシ単位の他にビニルジメチルシロキシ単位も有するシリコーン−MQ−樹脂。この群の典型的な代表例には、例えば、ワッカー・ヘミー社(Wacker−Chemie GmbH)から市販されている剥離力調整剤、CRA(登録商標)17又はCRA(登録商標)42がある。
【0048】
d)例えば、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のようなシリコーン可溶性白金触媒であって、通常、カルステッド(Karstedt)錯体と称され、例えば、触媒(Katalysator)OLの名称でワッカー・ヘミー社(Wacker−Chemie GmbH)から市販されているもの。
【0049】
本発明に従って使用されるシリコーン、好ましくはシリコーン油は、様々な長さと様々な置換基を有する直鎖状又は環状シロキサン鎖の多分散性混合物である。この混合物は触媒を用いる合成法で得られる。ポリシロキサンは、交互に結合しているケイ素原子と酸素原子からなっており、そのため、その特徴は、分子構造ではSi−O−Si−(=シロキサン−)結合にある。ケイ素の両方の結合していない原子価に様々な置換が可能である。
【0050】
当該シリコーン油は、化学的に正しくはポリジメチルシロキサンと称され、これは一般にPDMSと略される。それらは次式で特徴付けられる:
直鎖状(左)および環状(右)のポリジメチルシロキサンの構造
【0051】
【化1】

【0052】
ケイ素に結合している基は、また、他のシロキサン結合で飽和されていてもよい;このようにして、分岐したシリコーンと架橋されたシリコーンが得られる。前者はシリコーン樹脂、後者はシリコーンエラストマーを形成する。
【0053】
ケイ素基の官能性(一官能性、二官能性、三官能性又は四官能性)に応じて、記号表記M、D、TおよびQを導入した:
・[M]=RSiO1/2
・[D]=RSiO2/2
・[T]=RSiO3/2
・[Q]=SiO4/2
次の群を区別することができる:
・直鎖状ポリシロキサン:二官能性シロキサン単位で鎖状に構成されており、一官能性末端基を有する;構造タイプ[MDM]又はRSiO[RSiO]SiR
[式中、R=CH]。
・分岐状ポリシロキサン:二官能性、三官能性又は四官能性シロキサン単位で環状又は鎖状に構成されている;構造タイプ[M]。
・環状ポリシロキサン:二官能性シロキサン単位で環状に構成されている;構造タイプ[D]。
・架橋ポリマー:T単位およびQ単位によって二次元又は三次元網目構造を形成するように結合している鎖状又は環状の分子である。
【0054】
剥離被覆層が塗布されるフィルム面は、剥離被覆層を付着し易くするため、好ましくは表面を前処理する。これは、化学的コーティング又は気相(例えば、フッ素含有ガス)での処理、又は、フッ素処理、火炎処理、若しくはプラズマ処理、特にコロナ処理のような物理的方法であってもよく、場合によっては機械的前処理(エンボス加工)も可能である。
【0055】
本発明のライナーの卓越した特性のため、片面又は両面接着性の接着テープ、接着テープ打ち抜き物又はラベルの接着剤層を被うのに、特に接着被覆層がアクリレートベースであるときに、有利に使用できる。
【0056】
片面又は両面接着性の接着テープ、接着テープ打ち抜き物又はラベルは、更に支持体、例えば、ティシュ、フィルム、織布、ポリオレフィンフォーム又はフリースを追加的に含有することができる。好ましくは、接着テープは両面接着性であり、好ましくは薄い紙(ティシュ)、フリース、フォーム、又はフィルムよりなる支持体を含有している。フィルムは、例えば、二軸延伸ポリエステル又はポリプロピレンフィルムであってもよい。
【0057】
ライナーの別の有利な使用では、ライナーは、打ち抜き法で打抜き物に加工される両面接着性の接着テープを被覆する。
【0058】
一般的な表現「接着テープ」は、本発明の意味では、二次元に広がるフィルム又はフィルム片、長く伸びる狭い幅を有するテープ、テープ片等、最後にまた打ち抜き物又はラベルのようなあらゆる平面状構造物を包含する。
【0059】
更に、ライナーは、両面にそれぞれ同じ又は異なる組成の接着剤被覆層が設けられていてもよい。
【0060】
接着剤のコーティング量は各面で好ましくは18〜200g/m、特に40〜120g/mの範囲である。
【0061】
適した感圧接着剤は、非特許文献1に記載されている。特に、アクリレート、天然ゴム、熱可塑性スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン又はシリコーンをベースにする感圧接着剤が適している。アクリレート感圧接着剤が好ましく、それは分散物、ホットメルト、又は溶液として塗布されていてもよい。性質を最適にするため、使用される感圧接着剤組成物に、粘着付与剤(樹脂)、可塑剤、充填材、顔料、紫外線吸収材、光安定剤、老化防止剤、架橋剤、架橋促進剤、又はエラストマーの如き1種類以上の添加剤が混入されていてもよい。接着剤層は、熱又は高エネルギー放射線によって架橋され得る。
【0062】
本発明によるライナーは、長手方向で高い引張弾性率を有し、そのため、細い接着テープは適用時に延伸し過ぎる可能性がない。更に、それは着色して製造することもできる。ライナーは、それに塗布される接着剤被覆層を乾燥させることができるのに十分な耐熱性を有する。ライナーは、横方向で高い引裂伝播抵抗を有し、そのため、それは、例えばポリプロピレン又はポリエステル製の普通の延伸フィルムの場合のように、縁部を損傷しても容易に断裂しない。
【0063】
前述のパラメータは全て、次の試験方法に従って決定される:
厚さ:DIN53370
引張強度:DIN53455−7−5(長手方向)
1%又は10%の伸び率での応力:DIN53455−7−5(長手方向)
破断点伸び率:DIN53455−7−5(長手方向)
メルトインデックス:DIN53735
・メルトインデックス「溶融流量」(MFR)は、DIN53735に従って測定される。ポリエチレンでは、メルトインデックスは、通常、190℃、2.16kgの重量でのg/10分で示され、ポリプロピレンでもそれに対応するが、但し温度は230℃である。
曲げ弾性率(曲げ弾性:Flexural Modulus)):ASTM D 790A
密度:ASTM D 792
結晶子融点:DSCでISO 3146又はMTM 15902(バゼル(Basell)法)に従って測定する。
【0064】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、それは本発明を限定するものではない。
【0065】
[実施例]
原料
ダウ(Dow)7C06:
PP−BC、MFI 1.5g/10分、成核剤非添加、曲げ弾性率1280MPa、結晶子融点164℃(ダウケミカル(Dow Chemical))
ダウ・インスパイア(Dow Inspire)404.01:
ポリプロピレン、MFI 3g/10分、曲げ弾性率2068MPa、成核剤添加(特許文献1に対応するポリマー成核剤を用いる)、結晶子融点164℃(ダウケミカル(Dow Chemical))
ダウレックス(Dowlex)2032:
LLDPE、MFI 2.0g/10分、密度0.9260g/cm、結晶子融点124℃(ダウケミカル(Dow Chemical))
レマフィンゲルプ(Remafingelb)HG AE30
半透明顔料を有するPP−カラーマスターバッチ(クラリアント・マスターバッチズ(Clariant Masterbatches))
デヒーシブ(Dehesive)914:
ビニルポリジメチルシロキサン(ワッカー・シリコーンズ(Wacker Silicones))
架橋剤(Crosslonker)V24:
メチル水素ポリシロキサン(ワッカー・シリコーンズ(Wacker Silicones))
触媒(Catalyst)OL:
ポリジメチルシロキサン中の白金−触媒(ワッカー・シリコーンズ(Wacker Silicones))
SL6670:
白金触媒を有するビニルポリジメチルシロキサン(GEシリコーンズ(GE Silicones))
SS4300C:
メチル水素ポリシロキサン(GEシリコーンズ(GE Silicones))
【実施例1】
【0066】
3層のフィルム支持体を、軟質のダイリップを有するフラットダイを有する一軸スクリュー同時押出成形装置で同時押出成形された後、チルロールステーションと、ロールギャップが小さい1段階の延伸装置(Kurzspaltreckanlage)で処理される。(コア)フィルムは、インスパイア(Inspire)D404.01、99重量%とレマフィンゲルプ(Remafingelb)HG AE 30、1重量%からなり、外側の両方の同時押出成形層は、70重量%がダウレックス(Dowlex)2032から、および30重量%がダウ(Dow)7C06からなる。ダイ温度は235℃である。チルロール温度および延伸ロール温度は、フィルム支持体の結晶度が延伸プロセスの前後でできるだけ高くなるように調整される。延伸比は1:10である。
【0067】
フィルムの特性:
延伸後の支持体の厚さ 80μm
ベース層の厚さ 70μm
各同時押出成形層厚さ 5μm
1%延伸時の応力 65N/mm
引張強度 305N/mm
破断点伸び率 8%
引裂伝播抵抗 410N/mm
フィルム支持体の両面を予めコロナで処理し、マルチロールコーターを用いて、デヒーシブ(Dehesive)914、96.5重量部、架橋剤(Crosslinker)V24、2.5重量部、および触媒(Catalyst)OL、1重量部からなる混合物を塗布し、続いて、それは加熱トンネル(Waermekanal)内で硬化させる。得られるライナーは、透明性が高く、黄色である。
【0068】
接着剤は、SISエラストマー42重量%、水添ロジンのペンタエリトリトールエステル20重量%、R&B値が85℃のC炭化水素樹脂37重量%、および1重量%の酸化防止剤イルガノックス(登録商標)1010を溶融混合して調製され、150℃でダイを用いて剥離紙上に50g/mで塗布した後、ラミネーションによりライナー上に移される。続いて、接着テープは親ロールを形成するように巻き取られ、切断される。
【実施例2】
【0069】
フィルム支持体を、軟質のダイリップを有するフラットダイを有する一軸スクリュー押出装置で一層状態で製造した後、チルロールステーションと、ロールギャップが小さい1段階の延伸装置(Kurzspaltreckanlage)で処理する。
【0070】
インスパイア(Inspire)D404.01とダウ(Dow)7C06を1:1の比で混合し、押出成形する。ダイ温度は235℃である。チルロール温度および延伸ロール温度は、フィルムの結晶度が延伸プロセスの前後でできるだけ高くなるように調整される。延伸比は1:10である。
【0071】
フィルムの特性:
延伸後の支持体の厚さ 80μm
1%延伸時の応力 43
10%延伸時の応力 340
引張強度 373N/mm
破断点伸び率 22%
引裂伝播抵抗 520N/mm
フィルム支持体の両面を予めコロナで処理し、マルチロールコーターを用いて、SL 6670、96.8重量部と、SS 4300C、3.2重量部からなる混合物を塗布し、続いて、それを加熱トンネル内で硬化させる。得られるライナーは、真珠層のような白色である。
【0072】
ライナーを、特許文献7の実施例6によるアクリレートホットメルト接着剤で塗布し、その塗布量は100g/mであり、続いて、予めコロナで処理された厚さ10μmのポリエステルフィルムがラミネートされ、ロールを形成するように巻き取られる。第2の加工段階で、この半製品を巻き解き、同様に新たに被覆するが、しかし今度は、ポリエステルの未被覆の側に被覆し、その後、親ロールを形成するように巻き取り、切断する。
【比較例1】
【0073】
フィルム支持体の製造を、実施例1に従って、しかし厚さ35μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシリコーン処理することによって実施する。機械方向の延伸比は1:5であり、機械方向に対して横方向の延伸比は1:9である。
【0074】
フィルムの特性:
支持体の厚さ 35μm
1%延伸時の応力 24N/mm
引張強度 115N/mm
破断点伸び率 215%
引裂伝播抵抗 90N/mm
実施例1と類似の接着テープは無色であり、従って、接着剤層上のライナーは認識できない。ポリエチレン袋の密閉として5mm幅に貼り付けるとき、貼り付け速度が速いと延伸し過ぎてしまう。このため、貼り付け領域が収縮して元に戻ることによって袋に皺が寄る。塗布時に破断が生じることがある。
【0075】
実施例1および実施例2では、これらの問題は起こらない。
【比較例2】
【0076】
ポリエチレンをベースにする剥離フィルム(フータマキ(Huhtamaki)製の76677イージータイト、色94333(76677 easy tight Farbe 94333)。
【0077】
フィルムの特性:
支持体の厚さ 100μm
1%延伸時の応力 12N/mm
10%延伸時の応力 29N/mm
引張強度 51N/mm
破断点伸び率 800%
引裂伝播抵抗 1200N/mm
接着テープの製造を、実施例2に従って実施するが、剥離フィルムは溶融によって変形し、機械の停止時にフィルムの溶融によりダイのところで破断する。
【比較例3】
【0078】
フィルムを、実施例2と同様に製造されるが、原料としてダウ(Dow)7C06のみを使用し、延伸比が1:6.1に減少した。このフィルムは通常の荷造用接着テープの支持体に適する。
【0079】
フィルムの特性:
延伸後の支持体の厚さ 80μm
引張強度 247N/mm
1%延伸時の応力 19N/mm
10%延伸時の応力 142N/mm
破断点伸び率 27%
引裂伝播抵抗 170N/mm
色 無色、少し曇りがある

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1400、好ましくは少なくとも2000MPaの曲げ弾性率を有する延伸ポリプロピレンを含有するフィルムから製造されるライナーであって、前記フィルムの外側両面の少なくとも1つに剥離被覆層が塗布されているライナー。
【請求項2】
前記フィルムが、
・少なくとも1:8、好ましくは少なくとも1:9.5の延伸比、
・長手方向で少なくとも300、好ましくは少なくとも350N/mmの引張強度、
・長手方向で、1%の延伸時に少なくとも20、好ましくは少なくとも40N/mmの応力、および/又は10%の延伸時に少なくとも250、好ましくは少なくとも300N/mmの応力、
を有することを特徴とする、請求項1に記載のライナー。
【請求項3】
前記フィルムが成核剤を添加されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のライナー。
【請求項4】
前記フィルムが、25〜200μm、好ましくは40〜140μm、特に好ましくは50〜90μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のライナー。
【請求項5】
前記フィルムの外側両面にそれぞれ剥離被覆層が塗布されており、前記剥離被覆層は、好ましくは接着剤層に対して異なる剥離力を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のライナー。
【請求項6】
前記フィルムは、前記外側にある両面の少なくとも1つに、150℃未満、好ましくは140℃未満の結晶子融点を有するポリプロピレンポリマー又はエチレン含有ポリマーから製造される同時押出成形層を有し、場合によっては、前記同時押出成形層が前記フィルムと前記剥離被覆層との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のライナー。
【請求項7】
前記フィルムが、前記外側両面の少なくとも1つに、2.5重量%未満、好ましくは0重量%のオレフィン性コモノマー含有量を有するポリプロピレンポリマーから製造される同時押出成形層を有し、好ましくは前記同時押出成形層が成核剤を含有せず、場合によっては前記同時押出成形層が前記フィルムと前記剥離被覆層との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のライナー。
【請求項8】
前記フィルムが有色であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のライナー。
【請求項9】
前記剥離被覆層がシリコーン層であり、前記シリコーン層が好ましくはビニルポリジメチルシロキサンを含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のライナー。
【請求項10】
片面又は両面接着性の接着テープ、接着テープ打抜き物、又はラベルの接着剤層を被覆するための請求項1〜9のいずれか一項に記載のライナーの使用。
【請求項11】
前記接着剤被覆層がアクリレートをベースにすることを特徴とする、請求項10に記載のライナーの使用。

【公開番号】特開2009−173035(P2009−173035A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11062(P2009−11062)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(507249591)テーザ・アクチエンゲゼルシャフト (52)
【Fターム(参考)】