説明

ライニング・ブロック間のブレーキ・ライニング摩耗センサ

【課題】低コストで簡単に取り付けることができる、電気的ブレーキ・ライニング摩耗センサを提供する。
【解決手段】ブレーキ・ライニング摩耗センサ30は、隣り合ったブレーキ・ライニング・ブロック18a、18b間で支持プレート16に固定される。支持プレートは、隣り合うライニング・ブロックの間の間隙内に形成された開口を含む。熱可塑性の本体が、この開口内に収納され、且つ第1本体端部から第2本体端部まで延伸する中心孔を含む。センサ線が、その孔内に収納され、第2本体端部の端面から外に向かって延伸する一重ループ部を含む。一重ループ部は、所定のライニング最大摩耗限界の位置へ配置される。一重ループ部が回転ブレーキ部品14に接触することによって破壊されると、運転者へ警報信号が伝達され、所定のブレーキ・ライニング最大摩耗限界に達したことを知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合うライニング・ブロック間に配置されたセンサ線を支持する本体を含むブレーキ・ライニング摩耗センサに関するもので、ブレーキ・ライニング摩耗センサは、警報信号を発生して、車両のブレーキ・ライニングを取り換えるべき時期を知らせる。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ・ライニング摩耗センサは、ブレーキ・ライニングを取り換えなければならないレベルまで、ブレーキ・ライニングが磨耗してしまったことを知らせるのに用いられる。電気的なセンサや純粋に機械的なセンサを含む、多くの異なった種類のブレーキ・ライニング摩耗センサが存在する。あるタイプの機械的センサは、ライニングを取り換えなければならないことを知らせる、キーキーいう可聴音を発生する。これらのタイプのセンサは、可聴音を車両の運転時に聞き取るのが困難なので、大型の車両への適用に対しては不利である。もう一つのタイプの機械的センサは、各パッド位置において常に目視による確認を必要とする。これは退屈で且つ時間の掛かることである。
【0003】
これらのタイプの機械的センサは、運転者が目視検査をタイミングよく実施しないかもしれないので、好ましくない。これにより、結果としてブレーキ・ライニングが過度に摩耗し、もしかするとブレーキ・ライニングを保持しているリベットをそれと関連する支持プレートに至るまで露出することがあり得る。リベットが露出すると、回転ブレーキドラムに接触し損傷する可能性がある。
【0004】
電気的センサもブレーキ・ライニング摩耗センサに用いられて来た。これらのタイプのセンサは、多くは複雑であり、ブレーキ・ライニング材料の摩耗を複数の異なる摩耗レベルにおいて連続的に監視し、計算するのに用いられる。これらのタイプのセンサは、多くはブレーキ・ライニング材料の中に埋め込まれ、コスト及び関連するブレーキシュー組立体の組立時間を増大させる。
【0005】
従って、低コストで簡単に取り付けることができる上に、その他確認されている先行技術の欠点を克服する、簡単な電気的ブレーキ・ライニング摩耗センサに対する必要性がある。
【発明の開示】
【0006】
ブレーキ・ライニング摩耗センサは、隣り合うブレーキ・ライニング・ブロックの間で支持プレートに固定された本体を含む。本体は、第1端部から第2端部まで延伸していて、且つセンサ線を収納する孔を含む。センサ線は、第2端部の端面から外に向かって延伸しており、且つ所定のライニング最大摩耗限界へ配置されている、一重ループ部を含む。一重ループ部が回転ブレーキ部品に接触することによって破壊された時に、運転者へ警報信号が伝達され、所定のブレーキ・ライニング最大摩耗限界に達したことを知らせる。一重ループ部が破壊されてしまった後でも、ブレーキ・ライニング摩耗センサと回転ブレーキ部品との更なる接触が回転ブレーキ部品を損傷しないように、本体は熱可塑性材料から形成されていることが好ましい。
【0007】
支持プレートは、隣り合ったライニング・ブロック間の間隙内に形成された開口を含む。熱可塑性の本体は、開口内に収納され、第1端部が支持プレートの一方の側面から外に向かって延伸し、第2端部が支持プレートの反対側の側面から外に向かって延伸するようになっている。第2端部は細溝(スロット)を含んでいる拡大頭部を含み、拡大頭部が第1及び第2頭部に分割されるように、細溝は中心孔の内側に向かって延伸している。第1端部は、ナットと係合して支持プレートを拡大頭部とナットの間に締め付ける、ねじ山の付いた部分を含む。更に、ナットを第1端部へねじ締めするとき、センサ線を第1と第2頭部の間の細溝内に締め付けて、一重ループ部を所定のライニング最大摩耗限界へ配置する。
【0008】
本発明は、容易に制動アセンブリへ取り付けることができる、簡単で低価格のブレーキ・ライニング摩耗センサを提供し、それは現存する車両用電子制御装置へ簡単に組み込むことが出来る。本発明のこれら又はその他の特徴は、以下の明細書と図面から最もよく理解できる。以下は、図面の簡単な説明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ドラムブレーキ10は、制動の要求に応じて選択的に回転ブレーキドラム14と係合する、ブレーキシュー12を含む。各ブレーキシュー12は、ブレーキ・ライニング18を支持するプレート16を含む。ブレーキ・ライニング18は、プレート16に沿って互いに間隔を空けて配置されている、複数のブレーキ・ライニング・ブロック18a、18bとして形成するのが好ましい。
【0010】
ブレーキ・ライニング18は、制動の各作動時にブレーキドラム14の内面22と係合する、ライニング面20を含む。アクチュエーターAは、ブレーキシュー12を動かしてブレーキドラム14と係合させるのに用いられる。あらゆるタイプのアクチュエーターA、例えばカム、油圧シリンダーなど、がブレーキシュー12を作動させるのに使用できる。ブレーキ・ライニング18とブレーキドラム14との接触は、結果としてブレーキ・ライニング18の摩耗をもたらす。ブレーキ・ライニング18が摩耗するにつれて、ブレーキ・ライニング材料の厚さが減少する。
【0011】
ブレーキシュー12はブレーキキ・ライニング18が摩滅する前に取り換える必要がある。一般的には、各ブレーキ・ライニング・ブロック18a、18bは複数のリベット24をもちいてプレート16に取付けられる(図1に概略を示す)。ブレーキ・ライニング材料がリベット24の高さより下まで摩耗すると、リベット24は、ブレーキを掛けている時にブレーキドラム14の内面22と接触する可能性がある。これは、ブレーキドラム14に対する損傷の原因となる。
【0012】
ブレーキドラム14に損傷を与えることを防止し、且つブレーキ・ライニング18が所定のブレーキ・ライニング最大摩耗レベル限界まで摩耗してしまったことを運転者に知らせるために、ドラムブレーキ10は、各ブレーキシュー12のプレート16に取付けられた、ブレーキ・ライニング摩耗センサ30を含む。
【0013】
ブレーキ・ライニング18が所定のブレーキ・ライニング最大摩耗レベルまで摩耗してしまった時、ブレーキ・ライニング摩耗センサ30は、電子制御装置(ECU)34へ伝達される又は通信される信号32を発生する。ECU34は、次いで、ランプ、表示スクリーン、警笛音などの警報指示器38によって運転者に送られる、警報信号36を発生する。
【0014】
ブレーキ・ライニング摩耗センサ30は、図2〜6に更に詳細に示されている。ブレーキ・ライニング摩耗センサ30は、本体40と、ECU34へ電気的に接続されている電気コネクタ44に連結されたセンサ線42とを含む。本体40は、ねじ山の付いた外表面48を有する第1部分46と、拡大頭部52を有する第2部分50とを含む。
【0015】
ナット54が、ねじ山の付いた外表面48にねじ締めされて、ブレーキ・ライニング摩耗センサ30をプレート16へ取付ける。ばね座金56が、プレート16とナット54の間に配置される(図5及び6参照)。ばね座金56は、本体40が正しい位置にしっかりと保持されるように、取付け界面に対して予荷重を与えるために用いられる。
【0016】
センサ線42は、本体40内に形成されている孔60を貫通して挿入される。センサ線42は、図3に示すように、拡大頭部52の端面64を越えて外側に向かって延伸する、一重ループ部62を含む。ブレーキ・ライニング摩耗センサ30をプレート16に取付けると、一重ループ部62は、所定のブレーキ・ライニング最大摩耗レベルの位置に配置される。ブレーキ・ライニング材料がこのブレーキ・ライニング最大摩耗レベルまで摩耗すると、ブレーキドラム14の内面22は、一重ループ部62と接触することになる。この接触は、一重ループ部62を破損させ、結果として警報信号36が運転者に送られる。当業者は、この機能を達成するための適切な回路を提供する方法を理解しているであろう。
【0017】
一旦一重ループ部62が破損すると、ブレーキドラム14はブレーキ・ライニング摩耗センサ30と接触し続ける。本体40は、本体40とブレーキドラム14の内面22との接触が結果としてブレーキドラム14に損傷を与えないように、熱可塑性材料から形成されるのが好ましい。好ましくは、本体40は、成型工程によって一体物として形成される。
【0018】
図4に示すように、拡大頭部52は、拡大頭部52の一端から拡大頭部52の反対側の端まで軸に沿って延伸する、スリット又は細溝(スロット)66を含む。細溝66はこのようにして拡大頭部52を第1頭部70及び第2頭部72に分割する。
【0019】
図2と3に示すように、センサ線42は、本体40の第1部分46で始まる孔60を貫通して挿入される。孔60は、細溝66へと移行している(図4)。図5と6に示すように、センサ線42は孔60と細溝66の中に配置されて、一重ループ部62が拡大頭部52の端面64をちょうど越える所まで外に向かって延伸するようになっている。ナット54が本体40のねじ山の付いた外表面48に締め付けられると、センサ線42は第1頭部70及び第2頭部72の間に締め付けられて、センサ線42が正しい位置にしっかりと保持される。
【0020】
図6に示すように、プレート16は、ブレーキ・ライニング摩耗センサ30の本体40を収納する開口80を含む。この開口80は、例えばファスナー用の、プレート16に予め設けられた開口であってもよい。開口80は、互いに間隙82によって分離された、隣り合うブレーキ・ライニング・ブロック18a、18bの間に配置される(図5参照)。従って、ブレーキ・ライニング摩耗センサ30は、ブレーキ・ライニング材料内に埋め込まれていない。このことは、組立を簡単にし且つ費用を低下させる。
【0021】
ブレーキ・ライニング摩耗センサ30が開口80を貫通して挿入されると、本体40の第1部分46が、プレート16の一方の側面84から外に向かって延伸し、第2部分50が、プレートの反対側の側面86から外に向かって延伸する。本体部分は、第1部分46から拡大頭部52へと移行する、フランジ付領域88を含んでいる。フランジ付領域88は、概ねプレート16の開口80内に収納され、拡大頭部52の底端面90がプレート16に直接突き当てられるようになっている。ナット54がねじの切られた外表面48に締め付けられると、拡大頭部52はプレート16に対して正しい位置にしっかりと保持される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者はある種の修正物が本発明の範囲内にあることを認識しているであろう。それ故、本発明の真の範囲と内容を決定するために、特許請求の範囲が精査されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明を取り入れているブレーキ・ライニング摩耗センサを備えたドラムブレーキの概略図である。
【図2】図2は、本発明を取り入れているブレーキ・ライニング摩耗センサの分解図である。
【図3】図3は、図2のブレーキ・ライニング摩耗センサの組立図である。
【図4】図4は、ブレーキシューに取り付けられた図2のブレーキ・ライニング摩耗センサの平面図である。
【図5】図5は、図4のブレーキ・ライニング摩耗センサの側面図である。
【図6】図6は、図5のブレーキ・ライニング・センサの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ・ライニング摩耗センサ・アセンブリであって、
ブレーキ・ライニング支持プレートに取付けるように適合させられた第1端部、及び所定のブレーキ・ライニング摩耗レベル限界に位置決めされる端面を画定する第2端部を有する本体と、
前記端面を越えて外に向かって延伸する一重ループ部を含むセンサ線と、
前記一重ループ部が回転ブレーキ部品に接触することにより破壊されたとき警報信号を発生し、前記所定のブレーキ・ライニング摩耗レベル限界に達したことを知らせる制御装置と、
を含むブレーキ・ライニング摩耗センサ・アセンブリ。
【請求項2】
前記本体が熱可塑性材料から構成されている、請求項1に記載のブレーキ・ライニング摩耗センサ・アセンブリ。
【請求項3】
前記本体が、前記第1端部から前記第2端部へ向かって延伸する中心孔を含み、前記センサ線が前記中心孔内に収納される、請求項1に記載のブレーキ・ライニング摩耗センサ・アセンブリ。
【請求項4】
前記第2端部が細溝を有する拡大頭部を含み、前記細溝が、前記拡大頭部を第1頭部と第2頭部とに分割するように前記端面から前記第1端部に向かって延伸し、且つ前記中心孔へと移行している、請求項3に記載のブレーキ・ライニング摩耗センサ・アセンブリ。
【請求項5】
前記センサ線が前記第1頭部と前記第2頭部の間に締付けられている、請求項4に記載のブレーキ・ライニング摩耗センサ・アセンブリ。
【請求項6】
前記第1端部が、ねじ山の付いた外表面を含み、前記ねじ山の付いた外表面がナットとねじで係合して、ブレーキ・ライニング支持プレートを前記ナットと前記拡大頭部の間に締め付ける、請求項4に記載のブレーキ・ライニング摩耗センサ・アセンブリ。
【請求項7】
ブレーキシューアセンブリであって、
バッキングプレートと、
前記バッキングプレートに固定された少なくとも1つのブレーキ・ライニング・ブロックであって、回転ブレーキ部品に接する外表面を有する前記少なくとも1つのブレーキ・ライニング・ブロックと、
前記バッキングプレートを貫通して延伸する第1部分、及び前記少なくとも1つのブレーキ・ライニング・ブロックに隣接する、所定のブレーキ・ライニング摩耗レベル限界へ位置決めされる端面を画定する第2部分を有する本体を含み、且つ前記端面を越え外に向かって延伸する一重ループ部を有するセンサ線を含むブレーキ・ライニング摩耗センサと、
前記一重ループ部が回転ブレーキ部品に接触することによって破壊された時に警報信号を発生し、前記所定のブレーキ・ライニング摩耗レベル限界に達したことを知らせる制御装置と、
を含むブレーキシューアセンブリ。
【請求項8】
前記本体が、前記第1部分から前記第2部分へ延伸する中心孔を含み、前記センサ線が前記中心孔内に収納される、請求項7に記載のブレーキシューアセンブリ。
【請求項9】
前記第2部分が、前記拡大頭部を第1頭部と第2頭部に分割するように、前記端面から前記第1部分に向かって延伸している細溝を有する拡大頭部を含み、前記細溝が前記中心孔へと移行して、前記一重ループ部が前記第1頭部と前記第2頭部の間で前記細溝内に押し込まれている前記第1部分から、前記センサ線が前記中心孔を貫通して延伸するようになっている、請求項8に記載のブレーキシューアセンブリ。
【請求項10】
前記バッキングプレートが開口を含んでおり、前記本体が前記開口を貫通して挿入されて、前記第1部分が前記バッキングプレートの第1側面から外に向かって延伸し、更に前記第2部分が前記バッキングプレートの前記第1側面に対向する第2側面から外に向かって延伸しており、且つ前記第2部分がナットと係合するためのねじ山の付いた外表面を含み、前記バッキングプレートが前記拡大頭部と前記ナットの間に締め付けられるようになっている、請求項9に記載のブレーキシューアセンブリ。
【請求項11】
前記ナットと前記バッキングプレートの前記第1側面の間に直接配置されたばね座金を含む、請求項10に記載のブレーキシューアセンブリ。
【請求項12】
前記少なくとも1つのブレーキ・ライニング・ブロックが、前記バッキングプレートに沿った間隙によって互いに間隔を置いて配置された少なくとも第1及び第2のブレーキ・ライニング・ブロックを含み、且つ前記ブレーキ・ライニング摩耗センサが、前記第1及び第2ブレーキ・ライニング・ブロック間の前記間隙内において前記バッキングプレートに固定されており、前記ブレーキ・ライニング摩耗センサがブレーキ・ライニング材料内に埋め込まれないようになっている、請求項7に記載のブレーキシューアセンブリ。
【請求項13】
前記本体が熱可塑性材料から構成されている、請求項7に記載のブレーキシューアセンブリ。
【請求項14】
前記本体の前記端面が回転ブレーキ部品に接触するのに先立って、前記一重ループ部が回転ブレーキ接点と接触する、請求項7に記載のブレーキシューアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−187311(P2007−187311A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−329194(P2006−329194)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(501050690)アーヴィンメリター テクノロジー エルエルスィー (29)
【Fターム(参考)】