説明

ラインヘッドとその製造方法、及び画像形成装置

【課題】 SLアレイの周期的な光量ムラをうち消す技術を提供するとともに、このラインヘッドを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 レンズ素子を配列してなるレンズアレイを介して被露光部に光を照射し、露光するようにしたラインヘッドである。発光をなす機能層を有し、機能層からレンズアレイに向けて光を出射するようにしたEL素子3を、基板2上に複数配列して発光素子列3Aを形成してなる。ラインヘッドにおけるEL素子3の光出射側に、レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層9を一体に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置において露光手段として用いられるラインヘッドとその製造方法、及びこのラインヘッドを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンタとして、ラインプリンタ(画像形成装置)が知られている。このラインプリンタは、被露光部となる感光体ドラムの周面上に、帯電器、ライン状のプリンタヘッド(ラインヘッド)、現像器、転写器などの装置を近接配置したものである。すなわち、帯電器によって帯電された感光体ドラムの周面上に、プリンタヘッドに設けられた発光素子の選択的な発光動作で露光を行なうことにより、静電潜像を形成し、この潜像を現像器から供給されるトナーで現像して、そのトナー像を転写器で用紙に転写するようにしたものである。
【0003】
ところで、前記のようなプリンタヘッドの発光素子としては、一般に発光ダイオードなどが用いられている。しかし、これは数千個の発光点を精度良く配列することが極めて困難であるという課題がある。そこで、近年では、発光点を精度良く作り込める有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)を発光素子とする発光素子アレイを、露光手段として備えた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、前述したような電子写真方式のラインプリンタでは、通常、プリンタヘッド(ラインヘッド)からの放射光を、セルフォック(登録商標)レンズアレイ(日本板硝子社の商品名;以下、セルフォック(登録商標)レンズをSL、セルフォック(登録商標)レンズアレイをSLアレイと記す)を通過させることで感光体ドラム上に結像し、露光する方式が採られている。SLアレイは、円柱状のレンズ素子であり、正立等倍像させるSL素子を多数配列したことにより、広範囲の画像の結像を可能にしたものである。
【0005】
ところで、SLアレイの作る像は、1本1本のSL素子の作る像が重なりあってできており、SL素子は、フットボールを半分にしたような光量分布を有している。したがって、SLアレイでは、各SL素子の配列ピッチに伴ない、周期的な光量むらが生じてしまっている。
しかし、このような周期的な光量むらがあると、前記のプリンタヘッド(ラインヘッド)とSLアレイとを組合わせた場合に、SLアレイの光量むらに起因して主走査方向の光強度の均一性が悪化し、露光精度が低下して得られるプリントの品質が損なわれてしまう。
【0006】
このような背景のもとに、従来、特に端面発光素子とSLアレイとを組み合わせた場合に、SLアレイの光量周期ムラをうち消すように、端面発光素子の発光層の厚みを変える技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−198433号公報
【特許文献2】特開平5−330135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、端面発光ではなく、ボトムエミッションタイプやトップエミッションタイプなどの、基板面から発光する一般的なEL素子を備えたプリンタヘッド(ラインヘッド)については、SLアレイの周期的な光量ムラをうち消すような技術が確立されておらず、したがってその提供が望まれている。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、一般的なEL素子を備えたラインヘッドにおいて、SLアレイの周期的な光量ムラをうち消す技術を提供するとともに、このラインヘッドを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のラインヘッドは、レンズ素子を配列してなるレンズアレイを介して被露光部に光を照射し、露光するようにしたラインヘッドであって、
発光をなす機能層を有し、該機能層から前記レンズアレイに向けて光を出射するようにしたEL素子を、基板上に複数配列して発光素子列を形成してなり、
該ラインヘッドにおける前記EL素子の光出射側に、前記レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を一体に形成したことを特徴としている。
【0010】
このラインヘッドによれば、レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を形成してなるので、レンズアレイの周期的な光量むらをうち消してこれを補正することが可能になり、したがって光量むらに起因する露光むら、さらに印刷むらを防止することが可能になる。また、特に光量補正層を一体に形成してなるので、これを形成する際に発光素子列との間のアライメントをとっておくことにより、発光素子列に対する光量補正層の位置精度を良好にしておくことができ、したがってレンズアレイの周期的な光量むらの補正を良好な精度で行うことが可能になる。
【0011】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記基板上に前記EL素子を駆動する駆動素子が形成され、前記光量補正層は、前記駆動素子の下地側に形成されているのが好ましい。
このようにすれば、このラインヘッドを、特に駆動素子を形成するプロセス上の基板側から、EL素子で発光した光を出射するいわゆるボトムエミッション型とした場合に有効となる。また、駆動素子の下地側に形成されているので、駆動素子の形成による凹凸の影響を受けることがなく、平坦な基板面上に光量補正層を形成することが可能となることから、この光量補正層を所望するパターンに精度良く形成することが可能になる。
【0012】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記光量補正層は、前記EL素子においてその機能層の一方の側に設けられた透明電極の外側に、形成されているのが好ましい。また、その場合に、前記透明電極の外側にこれを覆って透明封止基板が設けられ、前記光量補正層は、前記透明封止基板に形成されているのが好ましい。
このようにすれば、このラインヘッドを、例えば透明電極を覆う透明封止基板側、EL素子で発光した光を出射するいわゆるトップエミッション型とした場合に有効となる。
また、特に光量補正層が透明封止基板に形成されていれば、発光素子列を構成するEL素子の製造工程とは別に、平坦な透明封止基板上に光量補正層を形成することが可能となることから、この光量補正層を所望するパターンに精度良く、しかも条件的に制限をうけることなく自由に形成することが可能になる。なお、ここでいう透明電極とは、陽極であっても良い。この場合は、素子基板側にまず駆動素子まで形成した後に、光量補正層を形成して、その上にITOなどの透明陽極を形成することが好ましい。
【0013】
本発明のラインヘッドの製造方法は、発光をなす機能層を有し、該機能層から正立等倍結像させるレンズ素子を配列してなるレンズアレイに向けて光を出射するようにしたEL素子を、基板上に複数配列して発光素子列を形成し、ラインヘッドを製造する方法であって、
該ラインヘッドにおける前記EL素子の光出射側に、前記レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を形成する工程を有し、
前記光量補正層を形成する工程では、前記レンズアレイの光量むらの周期に対応して開口パターンが形成されたフィジカルマスクを、光量補正層の形成面から所定距離離し、その状態で非透光性材料を気相成膜法によって成膜することにより、前記光量補正層の形成面に前記レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を形成することを特徴としている。
【0014】
このラインヘッドの製造方法によれば、レンズアレイの光量むらの周期に対応して開口パターンが形成されたフィジカルマスクを、光量補正層の形成面から所定距離離し、その状態で非透光性材料を気相成膜法によって成膜することにより、前記光量補正層の形成面に前記レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を形成するようにしているので、得られたラインヘッドは、光量補正層を有することによって前述したように光量むらに起因する露光むら、さらに印刷むらを防止するものとなる。また、特に光量補正層を一体に形成するので、発光素子列との間のアライメントをとっておくことにより、発光素子列に対する光量補正層の位置精度を良好にしておくことができる。
【0015】
また、前記ラインヘッドの製造方法においては、非透光性材料が金属であるのが好ましい。
このようにすれば、比較的薄い膜厚で光量補正層を形成することが可能になる。
また、前記ラインヘッドの製造方法においては、非透光性材料が絶縁材料であるのが好ましい。
このようにすれば、例えばこの光量補正層を駆動素子の下地側に形成する場合に、光量補正層が絶縁材料からなることにより、この光量補正層上に直接駆動素子を形成することが可能になる。
【0016】
本発明の画像形成装置は、露光手段として、前記のラインヘッドか、あるいは前記の製造方法によって得られたラインヘッドを備えたことを特徴としている。
この画像形成装置によれば、前述したようにラインヘッドが、レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を形成してなるので、レンズアレイの周期的な光量むらをうち消してこれを補正することが可能になり、したがって光量むらに起因する露光むら、さらに印刷むらを防止することが可能になる。また、ラインヘッドが光量補正層を一体に形成してなるので、これらの間のアライメントが予めなされていることにより、レンズアレイの周期的な光量むらの補正を良好な精度で行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明のラインヘッドについて説明する。図1は、本発明のラインヘッドの一実施形態を模式的に示す図であり、図1中符号1はラインヘッドである。このラインヘッド1は、後述する画像形成装置の露光手段として用いられるもので、図1に示すように長細い矩形の素子基板2上に、複数の有機EL(エレクトロルミネセンス)素子3を配列してなる発光素子列3Aと、前記有機EL素子3を駆動させる駆動素子4からなる駆動素子群と、これら駆動素子4(駆動素子群)の駆動を制御する制御回路群5とを一体形成したものである。また、前記素子基板2上には、前記有機EL素子3を封止した状態で、接着剤によって封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0018】
駆動素子4には電源線7、8が接続されており、これら電源線7、8を介して電源(図示せず)から駆動素子4に電圧が印加されるようになっている。そして、これら駆動素子4(駆動素子群)、制御回路群5、電源線7、8により、駆動制御手段が構成されている。このような構成のもとに有機EL素子3は、駆動制御手段によってその発光動作が制御されるようになっている。
ここで、本実施形態のラインヘッド1は、有機EL素子3で発光した光を素子基板2側から出射する、いわゆるボトムエミッション型のもので、この素子基板2に、光量補正層を形成したものである。
【0019】
ラインヘッド1における有機EL素子3や駆動素子4等の構成について、図2(a)、(b)を参照して詳述する。
素子基板2としては、図2(a)に示すように、発光層60で発光した光を画素電極23側から出射するボトムエミッション型である場合、素子基板2側から発光光を取り出す構成であるので、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。
【0020】
なお、発光層60で発光した光を陰極(対向電極)50側から出射する、いわゆるトップエミッション型である場合には、この素子基板2の対向側である封止基板側から発光光を取り出す構成となるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
本実施形態では、前述したようにボトムエミッション型が採用され、したがって素子基板2には透明なガラスが用いられるものとする。
【0021】
素子基板2上には、後述するSLアレイ(レンズアレイ)の光量むらを補正する光量補正層9が一体に形成されている。この光量補正層9は、Ti、Cr、Ni、Mo、W等の耐熱性が高い金属や、窒化珪素(SiN)等の有色の絶縁材料などからなる非透光性材料によって形成されたもので、具体的には、図3(a)に示すようにフィジカルマスク35を介して前記非透光性材料が素子基板2上に成膜されたことにより、形成されたものである。
【0022】
フィジカルマスク35は、後述するSLアレイ(レンズアレイ)の光量むらの周期に対応した開口パターン36、すなわち、所定の幅のスリット(開口)36aを所定間隔に配置した開口パターン36を有するものである。ここで、所定間隔とは、対象となるSLアレイ(レンズアレイ)の光量むらの周期にほぼ一致する間隔である。
そして、このフィジカルマスク35を素子基板2の光量補正層の形成面から所定距離離して配置し、その状態で非透光性材料をスパッタ法や蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の気相成膜法によって成膜することにより、図3(b)に示すような光量補正層9を形成する。このようにして得られた光量補正層9は、図1に示した有機EL素子3からなる発光素子列3Aの配列方向に沿って、非透光性材料からなる膜が厚い部分9aと薄い部分(ほとんど無い部分)9bとが周期的に、しかもその厚さが厚い部分9aから薄い部分(無い部分)9bへ、また薄い部分(無い部分)9bから厚い部分9aへと連続的に変化したものとなる。
【0023】
したがって、このように非透光性材料からなる膜の厚い部分9aと薄い部分9bとからなる光量補正層9により、素子基板2は、光量補正層9における膜が厚い部分9aでは光をあまり透過せず、よって透過率が低くなり、薄い部分9bでは光を多く透過し、よって透過率が高くなる。なお、厚い部分9aと薄い部分9bとの間隔、すなわち透過率むらの周期は、フィジカルマスク35におけるスリット36a、36a間の間隔にほぼ一致し、この透過率むらがそのまま前記SLアレイ(レンズアレイ)の光量むらの周期に一致するようになる。ただし、その位相については、後述するように前記光量むらとは逆転したものとなる。また、この光量補正層9における各部の透過率の程度については、スリット36aの幅や非透光性材料の種類、さらには成膜時の条件などによって調整可能である。したがって、予め実験やシミュレーションによって適宜に条件を決定しておくことにより、光量補正層9を、SLアレイ(レンズアレイ)の光量むらをうち消してこれを良好に補正するように形成することができる。
【0024】
例えば、SLアレイの光量むらが平均値に対して±5%となっている場合には、光量補正層9を出射する光の強度(発光量)が平均値に対して±5%となるように、膜が厚い部分9aや薄い部分9bを形成しておくことにより、SLアレイ(レンズアレイ)の光量むらをうち消してこれを良好に補正する光量補正層9を得ることができる。
【0025】
このような光量補正層9を形成した素子基板2上には、該光量補正層9上に、画素電極23に接続する駆動用TFT123(駆動素子4)などを含む回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。なお、本実施形態では、正孔輸送層70と発光層60とにより、本発明の機能層が形成されている。
【0026】
ここで、有機EL素子3および駆動用TFT123(駆動素子4)を図1(a)に対応した模式図で示すと、図2(b)に示すようになる。図2(b)において、電源線7は駆動素子4のソース/ドレイン電極に接続し、電源線8は有機EL素子3の陰極50に接続している。
そして、このような構成のもとに有機EL素子3は、図2(a)に示すように、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが発光層60で結合することにより、発光をなすようになっている。
【0027】
陽極として機能する画素電極23は、ボトムエミッション型である本実施形態では、透明導電材料によって形成され、具体的にはITOが好適に用いられている。なお、本実施形態の光量補正層は、駆動素子の下地では無く、駆動素子上の層間絶縁膜とITO陽極間に配置しても同様の効果を生むことができる。この場合、光量補正層を画素内部にのみ形成することにより、光量補正層として導電性部材を用いることができる。
正孔輸送層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。
なお、正孔輸送層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0028】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。なお、本実施形態では、例えば発光波長帯域が赤色に対応した発光層が採用されるが、もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層を採用するようにしてもよい。この場合、用いる感光体は、その発光領域に感度を持つものを採用する。
【0029】
発光層60の形成材料として具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0030】
陰極50は、前記発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。
また、この陰極50上には接着層を介して封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0031】
また、このような有機EL素子3の下方には、前述したように回路部11が設けられている。この回路部11は前記光量補正層9上に形成されたものである。すなわち、光量補正層9の表面にはSiO等の絶縁材料からなる下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0032】
また、前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiOを主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0033】
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0034】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化膜284が形成されている。この平坦化膜284は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、駆動用TFT123(駆動素子4)やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0035】
そして、ITO等からなる画素電極23が、この平坦化膜284の表面上に形成されるとともに、該平坦化膜284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0036】
画素電極23が形成された平坦化膜284の表面には、画素電極23と、前述した無機隔壁25とが形成されており、さらに無機隔壁25上には、有機隔壁221が形成されている。そして、画素電極23上には、無機隔壁25に形成された前記開口25aと、有機隔壁221に形成された開口221aとの内部、すなわち画素領域に、前記の正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層され、これによって機能層が形成されている。
【0037】
このような構成のラインヘッド1を製造するには、まず、図3(a)に示したように素子基板2の内面側に、光量補正層9から所定距離離した状態でフィジカルマスク35を配置し、その状態で非透光性材料、例えば前記の金属や絶縁材料をスパッタ法等の気相成膜法によって成膜する。すると、素子基板2側に飛散した非透光性材料は、特にスリット36aの位置に飛散したものはこれを通過して素子基板2上に堆積し、一方、スリット36a、36a間の位置に飛散したものはフィジカルマスク35に遮断され、そのままこのフィジカルマスク35上に堆積する。ここで、特にフィジカルマスク35を光量補正層9から所定距離離しているので、スリット36aを通過した材料は素子基板2に堆積するまでの間で拡散し、そのまま素子基板2上に堆積する。
【0038】
したがって、素子基板2上に堆積する非透光性材料は、特にスリット36aの配列方向に拡散することで、この配列方向においてスリット36aの中心部分では非透光性材料の濃度が高く、スリット36aの中心部分から離れるに連れて非透光性材料の濃度が低くなる。このようにして非透光性材料が堆積し、成膜されることにより、光量補正層9は図3(b)に示したように、非透光性材料からなる膜が厚い部分9aと薄い部分(ほとんど無い部分)9bとが周期的に、しかもその厚さが厚い部分から薄い部分(無い部分)へ、またはその逆へと連続的に変化したものとなる。よって、この光量補正層9は、後述するSLアレイ(レンズアレイ)の光量むらをうち消し、これを補正するものとなる。
【0039】
このようにして光量補正層9を形成したら、この光量補正層9上に下地保護層281を形成し、さらにこの下地保護層281上にポリシリコン層等を形成して、このポリシリコン層等から回路部11を形成する。
そして、この回路部11上に、画素電極23、機能層としての正孔輸送層70及び発光層60、陰極50をこの順に形成し、さらに封止基板(図示せず)を用いて封止を行うことにより、ボトムエミッション型のラインヘッド1を得る。
【0040】
次に、このようにして得られたラインヘッド1の使用形態について説明する。
図4は、後述する画像形成装置における、ラインヘッド1の使用形態を示す図である。図4に示すようにラインヘッド1は、本発明におけるレンズアレイとしてのSLアレイ31を介して、本発明における被露光部となる感光体ドラム32に光を照射し結像して、露光するようにしたものである。ここで、ラインヘッド1とSLアレイ31とについては、これらをヘッドケース(図示せず)に組み付けて一体にしておく。その際、これらの間をアライメントしておき、後述するようにラインヘッド1によってSLアレイ31の周期的な光量むらをうち消してこれを補正するようにしておく。
【0041】
SLアレイ31は、図5(a)に示すような円柱状のレンズ素子(SL素子)31aを、図5(b)に示すように多数配列したもので、前述したように周期的な光量むらを生じるようになっている。すなわち、1本1本のSL素子(結像素子)31aは、図5(a)に示したようにフットボールを半分にしたような光量分布を有していることから、これを多数配列したSLアレイ31は、図5(b)に示したように、SL素子(結像素子)31aの配列ピッチに伴う周期的な光量むらを生じているのである。ここで、SLアレイ31の光量むらΔEは、以下の式で表される。
ΔE={(imax−imin)/imin}×100(%)
(imax、iminは図5(b)参照)
【0042】
この光量むらΔEは、隣り合うSL31a、31a間での像の重なり度、およびSLアレイ31が何列構成になっているかで異なるが、図5(a)中に示した数式により、その構成から光量むらのピッチを表わすことができる。また、図的には、SLアレイ31の列方向の位置に対してその透過光量は、図6(a)に示すような分布(むら)を有することになる。
なお、例えばSLアレイ31として、日本板硝子製のSLアレイ20を用いるとすれば、このSLアレイ31のレンズ周期、すなわち光量むらの周期は0.56mmとなる。また、SLアレイ31が、千鳥状に2列構成として配置されている場合には、レンズ周期(光量むらの周期)は半分、すなわち0.28mmとなる。
【0043】
したがって、このようなSLアレイ31に光を照射するラインヘッド1としては、前記のレンズ周期(光量むらの周期)をうち消してこれを補正するように、前記光量補正層9における膜の厚い部分9a(あるいは膜の薄い部分9b)の周期を、前記光量むらの周期に一致させ、かつ、その位相については前記光量むらと逆転したものとする。すなわち、図6(b)に示すように、SLアレイ31が透過する(導く)光量が少ない部位に対応するヘッド位置、つまり光量補正層9の位置については、非透過性材料からなる膜厚が薄く、よって透過光量(透過率)が高くなるようにし、逆にSLアレイ31が透過する(導く)光量が多い部位に対応するヘッド位置(光量補正層9の位置)については、非透過性材料からなる膜厚が厚く、よって透過光量(透過率)が低くなるようにする。これにより、ラインヘッド1からSLアレイ31に向けて照射される光の強度(発光量)は、図6(c)に示すように図6(b)と同じ曲線となる。
【0044】
そして、このようにラインヘッド1から照射される光の強度(発光量)が、SLアレイ31が透過する(導く)光量のむら(光量むら)をうち消すように周期的に変化させられているので、このラインヘッド1から照射され、さらに前記SLアレイ31を透過した光は、図6(d)に示すように全ての結像位置において均一な光量(結像光量)となる。したがって、前記感光体ドラム32上にてむらなく良好に結像するようになる。
【0045】
なお、SLアレイ31として前記の日本板硝子製のSLアレイ20を用い、ラインヘッド1についてはこのSLアレイ31のレンズ周期(光量むらの周期)である0.56mmを補正するようにその補正周期を0.56mmとし、さらに出射する光の強度(発光量)が平均値に対し±5%となるように調整した光量補正層9を用いて、感光体ドラム32上に露光を行い、印刷を行ったところ、その濃度ばらつきは±1%以下であった。また、比較のため、光量補正層9を形成しないラインヘッドを用いて同様に印刷を行ったところ、濃度ばらつきが±5%程度であった。したがって、本実施形態のラインヘッド1は、SLアレイ31の光量むらに起因する露光むら、さらに印刷むらを良好に防止し、得られるプリントの品質を向上できることが分かった。
【0046】
このように、本実施形態のラインヘッド1にあっては、SLアレイ31の光量むらを補正する光量補正層9を形成してなるので、SLアレイ31の周期的な光量むらをうち消してこれを補正することができ、これにより光量むらに起因する露光むら、さらに印刷むらを防止し、得られるプリントの品質向上を図ることができる。
また、特に光量補正層9を素子基板2に直接作り込むことで、これを発光素子列3A(有機EL素子3)と一体にしているので、光量補正層9を形成する際に発光素子列3Aとの間のアライメントをとっておくことにより、発光素子列3Aに対する光量補正層9の位置精度を良好にしておくことができる。したがって、SLアレイ31の周期的な光量むらの補正を、単にこのSLアレイ31とラインヘッド1との間をアライメントしておくことだけで、良好な精度で行うことができる。
【0047】
なお、前記実施形態では、光量補正層9上に下地保護層281を形成し、これの上に駆動用TFT123(駆動素子4)を形成するようにしたが、特に光量補正層9を絶縁材料で形成した場合には、この光量補正層9自体が絶縁層となるので、下地保護層281の形成を省略して、光量補正層9上に駆動用TFT123(駆動素子4)を直接形成するようにしてもよい。
【0048】
図7は本発明のラインヘッドの他の実施形態を模式的に示す図であり、図7中符号20はラインヘッドである。このラインヘッド20が前記ラインヘッド1と異なるところは、発光した光の出射方式、すなわち、前記ラインヘッド1ではボトムエミッション型であったのに対し、このラインヘッド20ではトップエミッション型を採用している点と、この出射方式(トップエミッション型)を採用したことに伴い、光量補正層9の形成位置を変えた点である。
【0049】
図7に示したようにこのラインヘッド20では、透明導電材料、例えばITOによって陰極50を形成し、この陰極50上に封止樹脂層40を形成し、さらに必要に応じてパッシベーション膜(図示せず)を形成する。次いで、この封止樹脂層40あるいはパッシベーション膜上に、図3(a)に示した方法で前記光量補正層9を形成する。このとき、封止樹脂層40やその下地である陰極50にダメージが与えられないよう、光量補正層9形成のための成膜法としては、特に低ダメージのイオンプレーティング法を用いるのが好ましい。その後、この光量補正層9を覆ってガラス等からなる透明の封止基板30を貼設する。
【0050】
このようにして得られたラインヘッド20にあっても、使用に際しては、封止基板30側をSLアレイ31に向けてアライメントし、その状態でヘッドケース(図示せず)に組み付けてSLアレイ31と一体にしておく。なお、SLアレイ31に対するラインヘッド20のアライメントについては、前記ラインヘッド1の場合と同様に、SLアレイ31の周期的な光量むらを光量補正層9によってうち消し、これを補正できる位置に合わせすることで行う。
そして、図4に示したようにラインヘッド20から光を照射し、SLアレイ31を介して感光体ドラム32上に光を結像させ、露光する。
【0051】
このように、本実施形態のラインヘッド20にあっても、光量補正層9によってSLアレイ31の周期的な光量むらをうち消し、これを補正することができ、したがって光量むらに起因する露光むら、さらに印刷むらを防止し、得られるプリントの品質向上を図ることができる。
また、特に光量補正層9を素子基板2に直接作り込むことで、これを発光素子列3A(有機EL素子3)と一体にしているので、前記ラインヘッド1と同様に、SLアレイ31の周期的な光量むらの補正を、単にこのSLアレイ31とラインヘッド20との間をアライメントしておくことだけで、良好な精度で行うことができる。
【0052】
なお、前記の実施形態では、封止樹脂層40あるいはパッシベーション膜上に光量補正層9を形成し、トップエミッション型の出射方式を実現しているが、特にトップエミッション型とする場合には、この構造に限定されることなく、例えば透明な封止基板30の内面側に、光量補正層9を形成するようにしてもよい。
このようにすれば、発光素子列3Aを構成するEL素子3の製造工程とは別に、平坦な透明封止基板30上に光量補正層9を形成するので、この光量補正層9を所望するパターンに精度良く、しかもEL素子3等の存在による条件的な制限をうけることなく、自由に形成することができる。
【0053】
なお、前記実施形態のラインヘッド1、20では、発光素子列3Aを1列の有機EL素子3で形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば有機EL素子3を2列にしてこれらを千鳥状に配し、発光素子列3Aを形成するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、本発明のラインヘッド1に形成されるEL素子として、有機EL素子を用いた例を示したが、これに代えて無機EL素子を用いてもよいのはもちろんである。
さらに、実施形態の中では、EL素子を駆動する素子として、素子基板2上にTFTなどの駆動素子4を作り込んだ例を挙げたが、駆動素子4を素子基板2上に作り込まず、駆動素子4を外付けにする、具体的にはEL素子基板の端子領域にドライバICをCOG実装する、またはドライバICを実装したフレキシブル回路基板をEL素子基板に実装するようにしても良い。
【0054】
次に、本発明のラインヘッド1が設けられる画像形成装置について説明する。図8は、本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す図であり、図8中符号80は画像形成装置である。この画像形成装置80は、本発明のラインヘッドの一例となる有機ELアレイラインヘッド101K、101C、101M、101Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)41K、41C、41M、41Yの露光装置にそれぞれ配置したもので、タンデム方式のものとして構成されたものである。
【0055】
この画像形成装置80は、駆動ローラ91と従動ローラ92とテンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、図8中矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっている。
【0056】
ここで、前記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。なお、これら符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図8中矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
【0057】
各感光体ドラム41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体ドラム41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体ドラム41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明の有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)とが設けられている。
ここで、有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)と感光体ドラム41(K、C、M、Y)との間にはSLアレイ(図示せず)が配設されている。有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)は、前述したようにこのSLアレイの光量むらをうち消してこれを補正するよう、光量補正層9を一体に形成したものである。
【0058】
また、この有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体ドラム41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0059】
ここで、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)は、それぞれのアレイ方向が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置されている。そして、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とが略一致するように設定されている。
【0060】
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0061】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0062】
なお、図8中の符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
【0063】
次に、本発明に係る画像形成装置の第2の実施の形態について説明する。図9は4サイクル方式の画像形成装置の縦断側面図である。図9において、画像形成装置160には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、前記SLアレイ及びラインヘッド(有機ELアレイラインヘッド)が設けられてなる像書込手段(露光手段)167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。
【0064】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として矢印A方向に回転するよう構成されたものである。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。162a〜162dは、前記4色の各像形成ユニットに配置されており、矢印B方向に回転する現像ローラ、163a〜163dは、矢印C方向に回転するトナ−供給ローラである。また、164a〜164dはトナーを所定の厚さに規制する規制ブレードである。
【0065】
図9中符号165は、前記のように像担持体として機能する感光体ドラム、166は一次転写部材、168は帯電器である。また、167は本発明における露光手段となる像書込手段であり、本発明のラインヘッドとSLアレイとを備えてなるものである。感光体ドラム165は、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより、現像ローラ162aとは逆の方向となる矢印D方向に回転駆動されるようになっている。なお、像書込手段167を構成するラインヘッドは、これとレンズ素子(図示せず)や感光ドラム165との間で位置合わせ(光軸合わせ)がなされた状態に配設されている。
【0066】
中間転写ベルト169は、駆動ローラ170aと従動ローラ170bとの間に張架されたものである。駆動ローラ170aは、前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されたもので、中間転写ベルト169に動力を伝達するようになっている。すなわち、該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆の方向となる矢印E方向に回動するようになっている。
【0067】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙が搬送されるようになっている。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写されるようになっている。二次転写ローラ171は、クラッチによって中間転写ベルト169に離当接されるようになっており、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接され、用紙に画像が転写されるようになっている。
【0068】
前記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータHを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢印G方向に進行する。177は電装品ボックス、178は用紙を収納する給紙トレイ、179は給紙トレイ178の出口に設けられているピックアップローラである。
【0069】
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータとしては、例えば低速のブラシレスモータが用いられている。また、中間転写ベルト169については、色ずれ補正などが必要となるためステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略した制御手段からの信号によって制御されるようになっている。
【0070】
図9に示した状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ162aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが矢印A方向に90度回転する。
【0071】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次に、シアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0072】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後さらに回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレー178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
【0073】
このような図8、図9に示した画像形成装置80、160においては、図1に示したような本発明のラインヘッド(有機ELアレイラインヘッド)が露光手段として備えられている。
したがって、これら画像形成装置80、160にあっては、前述したようにSLアレイの光量むらに起因する露光むら、さらに印刷むらを防止し、得られるプリントの品質を向上することができる。
なお、本発明のラインヘッドを備えた画像形成装置は前記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のラインヘッドの一実施形態を示す模式図。
【図2】(a)はラインヘッドの要部側断面図、(b)は模式図。
【図3】(a)は光量補正層の形成方法説明図、(b)は光量補正層の要部平面図。
【図4】ラインヘッドの使用形態を説明するための模式図。
【図5】(a)、(b)はSLアレイとその光量むらの説明図。
【図6】(a)〜(d)は本発明のラインヘッドの作用を説明するためのグラフ。
【図7】本発明のラインヘッドの他の実施形態を示す要部側断面図。
【図8】本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0075】
1、20…ラインヘッド、2…素子基板(基板)、3…有機EL素子(EL素子)、
3A…発光素子列、4…駆動素子(123…駆動用TFT)、9…光量補正層、
30…封止基板、31…SLアレイ(レンズアレイ)、31a…レンズ素子(SL)、
32…感光体ドラム(被露光部)、60…発光層、70…正孔輸送層、
80、160…画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ素子を配列してなるレンズアレイを介して被露光部に光を照射し、露光するようにしたラインヘッドであって、
発光をなす機能層を有し、該機能層から前記レンズアレイに向けて光を出射するようにしたEL素子を、基板上に複数配列して発光素子列を形成してなり、
該ラインヘッドにおける前記EL素子の光出射側に、前記レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を一体に形成したことを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記基板上に前記EL素子を駆動する駆動素子が形成され、
前記光量補正層は、前記駆動素子の下地側に形成されていることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記光量補正層は、前記EL素子においてその機能層の一方の側に設けられた透明電極の外側に、形成されていることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記透明電極の外側にこれを覆って透明封止基板が設けられ、前記光量補正層は、前記透明封止基板に形成されていることを特徴とする請求項3記載のラインヘッド。
【請求項5】
発光をなす機能層を有し、該機能層からレンズ素子を配列してなるレンズアレイに向けて光を出射するようにしたEL素子を、基板上に複数配列して発光素子列を形成し、ラインヘッドを製造する方法であって、
該ラインヘッドにおける前記EL素子の光出射側に、前記レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を形成する工程を有し、
前記光量補正層を形成する工程では、前記レンズアレイの光量むらの周期に対応して開口パターンが形成されたフィジカルマスクを、光量補正層の形成面から所定距離離し、その状態で非透光性材料を気相成膜法によって成膜することにより、前記光量補正層の形成面に前記レンズアレイの光量むらを補正する光量補正層を形成することを特徴とするラインヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記非透光性材料が金属であることを特徴とする請求項5記載のラインヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記非透光性材料が絶縁材料であることを特徴とする請求項5記載のラインヘッドの製造方法。
【請求項8】
露光手段として、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラインヘッドか、あるいは請求項5〜7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたラインヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−51622(P2006−51622A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233068(P2004−233068)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】