説明

ラインヘッド型インクジェット装置

【課題】印刷対象大型化に伴い、塗布ヘッドを複数組み合わせて印刷する方式が用いられているが、各塗布ヘッドの調整を簡単に行え、高精度の印刷ができる印刷機が望まれている。
【解決手段】ラインヘッド上に配置するヘッドは2個以上を一組として、これらを印刷走査方向に各ヘッドのノズル列が平行に並ぶように配置する。さらに、この組を印刷副走査方向に複数組配置する。また、ラインヘッドのヘッド固定部とラインヘッド全体に、ノズル列方向にのみ移動する機構とその移動量を調整する機構を装備する。ヘッド制御部は印刷する画像の各画素と組をなすヘッドの各ノズルに順に振り分け、ダウンロードする。
ヘッドの位置を合せる場合、ヘッドの全射出ノズルに対応する縦線を含む網目状の画像を印刷し、印刷された網目パターンの縦線や横線の位置が元の画像と同じになるように、印刷位置のずれを目視確認し、移動機構を用いヘッド位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドを射出ノズル列方向に複数配置することにより構成されたラインヘッドを搭載したインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを複数個配置して構成した従来のラインヘッド、およびそれを搭載した印刷装置の例として、特許文献1に記載のものがある。この文献では、インクジェットヘッドの射出ノズル列を印刷走査方向に対し傾けた向きで配置されたラインヘッドであって、その傾斜によりヘッドのノズルピッチよりも印刷時の打点ピッチを縮め、高密度な印刷を実現している。
【0003】
また、各ヘッドの位置合せにはノズルの位置に基準マークが形成された透明なプレートを用い、ラインヘッドのノズル面側に前記プレートを対向配置させ、カメラでプレート側からノズルを透かして見ることによりヘッドの位置合せを行う方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−322606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラインヘッド型インクジェット印刷装置においては、ラインヘッドを構成するインクジェットヘッドの位置合せ方法により、印刷精度が左右される。従来はその位置合せのために、専用の治具や調整装置を使用していた。印刷装置を使い続けると、いずれはヘッドに目詰まりが発生したり、ヘッドの損傷や寿命などでヘッドを交換せざるを得なくなる。しかしその際、ラインヘッド全体で見れば交換が必要になるヘッドは装着されたヘッドの一部であることが一般的で、全てのヘッドを一度に交換することはまず有り得ない。
【0006】
しかしながら、従来のヘッドの位置合せ方法では、交換ヘッドが例え1個であっても、交換したヘッドの位置合せの為にヘッドユニット全体を装置から外し、専用の調整装置に固定して位置合せを行う必要があった。このため、ヘッド交換から復旧までにかなりの時間を要し、この間装置は稼働出来なくなる。また、装置休止を避けるならば、常にバックアップとして高価なラインヘッドを別に備えておく必要があった。
【0007】
そこで,本発明では、ヘッドのノズルピッチより高密度な印刷を可能なラインヘッドを提供し、ヘッドを交換する場合、装置からラインヘッド全体を外さずに、交換の必要なヘッドのみ取外して交換し、交換後の位置合も特別な調整装置を使わずに、印刷装置自体に調整機能を備え、試験印刷を行うことにより、比較的短時間で十分な精度が得られるようなラインヘッドとその位置合せ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ラインヘッド上に配置するヘッドは2個以上を一組として、これらを印刷走査方向に各ヘッドのノズル列が平行に並ぶように配置する。さらに、この組を印刷副走査方向に複数組配置することにより所望の印刷領域を得る。
【0009】
また、ラインヘッドのヘッド固定部にはノズル列方向にのみ移動する機構とその移動量を調整する機構を装備する。
【0010】
さらにラインヘッド全体に対しても同様にノズル列方向にのみ移動する機構とその移動量を調整する機構を装備する。
【0011】
このラインヘッドで印刷する為のヘッド制御部は印刷する画像の各画素の組をなすヘッドの各ノズルに順に振り分け、ダウンロードする。
【0012】
ヘッドの位置を合せる場合、ヘッドの全射出ノズルに対応する縦線を含む網目状の画像を用意し、位置合せを行うヘッドで印刷し、印刷された網目パターンの縦線や横線の位置が元の画像と同じになるように、印刷位置のずれを目視確認し、移動機構を用いヘッドを移動させ、この作業を繰り返し行う。
【0013】
カラー印刷機のように複数のラインヘッドを装備する装置の場合、上記作業の後に、さらにラインヘッド相互の位置合せを同様の方法で行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来のラインヘッド型印刷装置のように、構成されるヘッドのノズルピッチより高密度な打点密度の印刷が可能でありながら、ヘッド交換のときなど、交換したヘッドの位置調整に、装置以外に特別な治具や調整装置を必要とせず、その場で試験印刷とヘッド移動機構により調整作業が容易に、短時間で行え、かつ実用的に十分な精度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の印刷装置の一例を図1に示す。本装置は大きく6つの部分からなる。すなわち被印刷物1を搬入するローダ機構部2と、搬送されてくる被印刷物面上に複数の異なる色のインクで印刷を施すために、複数のインク吐出ヘッドからなる印刷ユニット部6と、印刷ヘッドの保守点検を行うヘッド保守機構部5と、ローダ機構部2に接続され被印刷物1を搬送する搬送機構部4と、印刷を施された被印刷物を装置外に搬出するアンローダ機構部11と、装置の各部駆動機構等を制御する主制御機構13から構成されている。
【0017】
ローダ機構部2内には位置決め機構3が設けてあり、ローダ機構部2の搬送方向(X1方向)に対して直角方向の両端部側に設けてある。なお、位置決め機構を設置する位置は、ローダ機構部2から搬送機構部4の印刷ユニット部6より上流であれば、いずれの場所でも良い。
【0018】
なお、本実施例ではローダ機構部2、搬送機構部4、及びアンローダ機構部11は被印刷物1を搬送するために、それぞれ無端状ベルトと、そのベルトを駆動する支持ローラと駆動ローラとを備えている。すなわち、ローダ機構部2の搬送機構部4側端部には搬入ベルトを駆動するための駆動モータ17aが設けてある。また搬送機構部4のアンローダ機構部11側の端部には駆動ローラを駆動する駆動モータ17bが、アンローダ機構部11の被印刷物排出側端部には駆動モータ17cが駆動ローラに取付けてある。
【0019】
図2に2重ヘッドを取付けた状態の斜視図と、ヘッドを取外したときの斜視図を示す。印刷ユニット部6に装着されたイエロー用ヘッド7y、マゼンタ用ヘッド7m、シアン用ヘッド7c、ブラック用ヘッド7kは夫々二重のヘッド配列になっている。図2(a)に示すように2つのヘッドが対になっている。図6に示すように、搬送の上流側を奇数ヘッド(Oヘッド)とし、下流側を偶数ヘッド(Eヘッド)とする。
【0020】
なお、以後、Oヘッド、Eヘッドには、それぞれ左側隅から1…nの番号を付けて表す。夫々のヘッドは取付けネジ8aを緩めると図2(b)に示す様に取付けネジ部穴8bが長穴にしてある。このため、二個の位置決めピン32により基板搬送方向X1に対し、直角水平の方向であるY1−Y2方向に多少移動できる。さらに、ヘッド移動機構であるマイクロメータヘッド30によりY1−Y2方向の位置を調整できる。
【0021】
すなわち、このマイクロメータヘッド30によって、隣接して設けられたヘッドのノズル位置が所定位置(例えば隣接するヘッドの1方のヘッドのノズル位置を他方のヘッドのノズル位置に対して1/2ピッチずらした位置)になるように調整できる。なおマイクロメータヘッドに代えて送りねじを用いて移動するように構成してもよい。
【0022】
従来のヘッド取付け方法によるヘッドユニットでは、図3に示すように、ヘッドユニットを構成するユニット基板40に設けた位置決めピン32a、32b用の穴とネジ穴によりX1、Y1方向は一意に決定され調整できない。
【0023】
これに対し、本発明におけるヘッドユニットは、図4に示すように2個で1組のヘッド7が多数配列され、夫々のヘッド7が幅方向(Y1,Y2方向)の微調整を可能にしている。図1の印刷ユニット部6の詳細を図5に示す。ヘッドユニット取付けベース42に取付けられたイエロー用ヘッドユニット41y、マゼンタ用ヘッドユニット41m、シアン用ヘッドユニット41c、ブラック用ヘッドユニット41kもまた、各色毎のヘッドユニットを夫々に対応して設けた位置微調整用のマイクロメータヘッド30bにより、ヘッドユニット全体の位置がY1、Y2方向に微調整可能となっている。
【0024】
図4に示すユニット基板41に装着されたヘッドおよびノズルの相互の位置関係を図6、図7に示す。インク射出ノズルの位置に着目しながら説明する。図6(a)、図7(a)にすべてのヘッドの位置関係を示す。図6(b)、図7(b)ノズル部の拡大図を示す。既に述べたように、本実施例では実線表記のヘッドと破線表記のヘッドが対をなし、印刷時には2つがあたかも1つの倍密度印刷ヘッドとして機能する。このヘッドユニットに対し図のY方向に印刷ワークが移動し、印刷が行なわれる。
【0025】
ヘッドにはインク射出ノズルがピッチaでX方向に並んでおり、その並びの長さはLであり、ヘッド単体の最大印刷幅になる。一方、ヘッドユニット全体の最大印刷幅はWであるが、図6(b)に示すように、ヘッドの繋ぎ部分はノズルが14本重ねる配置にしているため、L×12>Wである。また、対をなす2つのヘッドの配置は図7(b)のようになっており、実線表記のO1ヘッドのノズル列と破線表記のE1ヘッドのノズル列はノズルピッチaの1/2だけずらした配置にする。これにより、2つのヘッドの組み合わせであたかも1つの倍密度の印刷ヘッドとし機能する。
【0026】
この配置が正確な場合、2つのヘッドでヘッド単体の2倍の印刷解像度を実現することが出来る。しかし、E1ヘッドのノズル列の配置がO1ヘッドのノズルの中間に来ないと、E1ヘッドとO1ヘッドの打点位置が近づき、インクの滲みや濁りを生じ、かえって画質が低下する。
【0027】
このヘッドユニットで4色インクのカラー印刷を行う場合、ヘッドユニットも4台用い、印刷方向に並べ、重ね描きする。図8にその場合のヘッドユニットの位置関係を示す。イエロー用ヘッドユニット41y、マゼンタ用ヘッドユニット41m、シアン用ヘッドユニット41c、ブラック用ヘッドユニット41kが順に配置されている。このとき、各ヘッドユニットに設けてある各ヘッドの射出ノズルの位置が合っていないと色ずれを生じる。図8(b)には、ヘッドユニット41yとヘッドユニット41mに取付けて有る、左上側のO1ヘッドのノズルの位置関係を示している。すなわち、ノズル位置が同じ位置になるように配置してある。
【0028】
ヘッドユニットのヘッド固定部は図2(b)に示すようにマイクロメータヘッド30による位置調整機能を備えている。ヘッドユニットにヘッドを装着した直後は、一般にヘッドやユニットそれぞれの加工精度や取付け精度により、各ヘッドの射出ノズルの位置関係は正確には図6又は図7のような配置になっていない。
【0029】
そこで、装着直後に各々のヘッドの位置を、一定の手順に従い微調整を行い、最終的に各ヘッドを図6、又は図7に示すような位置関係に合せる必要がある。
【0030】
本発明ではヘッドの位置関係を知り、調整する方法として、ヘッドの射出ノズルの位置を直接測定する代わりに、ノズルの位置を測定するための位置調製用(校正用)画像を印刷し、その印刷結果からノズルの位置を判定する。図16〜図19にその位置調整用画像の例を示す。図16は縦線にずれのある状態を印刷した結果で、ヘッドのノズル位置がX方向にずれている状態の1例である。図17はヘッド同士が縦方向及び横方向にずれている状態のものである。図18はヘッド同士が横方向にずれている状態の画像を示している。
【0031】
図16の位置調整用画像80aについて説明する。網目状の画像であり、この画像を位置調整するヘッドで描画する。描画された網目パターンの位置からヘッドの位置を間接的に判定する。Y方向の印刷位置ずれは横線81で判断する。X方向の印刷位置ずれは縦線82で判断する。縦線の幅は1画素であり、縦線1本1本がヘッドの射出ノズルのそれぞれに対応する。画像左上の縦線(ライン1)がノズルの1番に対応し、続く縦線は10番目(ライン10)まで順に下向きに並び、11番目で折返し、縦線が画像の上に戻る配置となっている。この画像をヘッドユニットに固定されたヘッドそれぞれで印刷することにより、それぞれのヘッドが描いた横線や縦線の位置関係や距離から、間接的にヘッドの位置関係を知ることが出来る。
【0032】
本実施例のヘッドユニット41は、図4に示すようにヘッド2個で対を為す配置となっている。先に説明したように、射出ノズルの並び順から、1対のヘッドのうち左側のヘッドをOヘッド(奇数ヘッド)、右側のヘッドをEヘッド(偶数ヘッド)と呼び、ユニットの左上隅に配置されたヘッドをO1ヘッド(奇数第一ヘッド)、E1ヘッド(偶数第一ヘッド)とし、以下、O2ヘッド、E2ヘッド…と呼ぶ。
【0033】
各ヘッドの位置関係は、図4〜図6に示すように、印刷可能幅Lのヘッドを複数並べることにより印刷幅を拡げ、実質的に印刷可能幅Wのラインヘッドを構成するように配置されている。ここで奇数ヘッドのみに着目すると、隣接するヘッド(例えばO1ヘッドとO2ヘッド)は、図6(b)に示すようにノズル列のうち14個のノズルが重なるような配置になっている。
【0034】
偶数ヘッドについても同様の配置になっている。また、対を為す奇数ヘッドと偶数ヘッド(例えばO1ヘッドとE1ヘッド)の位置関係は図7(b)のように奇数ヘッドO1のノズル列と偶数ヘッドE1のノズル列がノズル間隔の1/2だけずれた配置になっている。すなわち、この配置によりヘッド2個で1/2のノズルピッチ、2倍のノズル数を有するヘッド1個に相当し、ヘッド単体の2倍の印刷密度を実現している。
【0035】
図4のヘッドユニット41を制御する、インクジェット印刷システムの主制御機構13の構成は図25のように構成されている。表示・操作部92からの操作データ等や印刷画像を蓄積し、画像データをダウンロードする役割を担うのが画像データ処理装置91である。画像データ処理装置91の下流にヘッド制御部89が接続され、さらにヘッド駆動部87を経てヘッド7が接続されている。
【0036】
ヘッド制御部89、ヘッド駆動部87は共に6台の装置からなり、ヘッド制御部89とヘッド駆動部87の1組で4つのヘッドに対し、個別に印刷制御することが出来る。6台のヘッド制御部89は相互接続され、連動して動作する。使用するヘッドの個数に応じてそれぞれがヘッド制御部89には印刷画像蓄積メモリ88がヘッド別に4つ内蔵されており、ここに印刷する画像をダウンロードする。この印刷画像蓄積メモリ88に記憶されたデータに従い、ヘッドがインクを射出することにより、印刷を行う。
【0037】
印刷対象ワーク85が搬送され、ヘッドユニットに近づくと、ワーク先端をワーク検出センサ86が検知し、検出信号が主制御部90を経由してヘッド制御部89に入力される。その検出信号が印刷開始トリガになり、印刷が開始され、ヘッドがインクを射出する。なお、図示していないが主制御部90は装置を稼働する為のモータ、電磁弁等にも接続されている。
【0038】
ここで図4のヘッドユニット41を例に、装着されたインクジェットヘッド7の印刷位置を合せる方法について図9を用いて述べる。
【0039】
位置合せ手順の概略を示すフローチャートを図9に示す。ここで、図4に示すヘッドユニットにおいて、左上隅のヘッドをO1ヘッドと称する。O1ヘッドを基準位置とし、他のヘッドの位置を決める。まず、全ての奇数ヘッドの取付け位置を、O1ヘッドを基準としてY方向の位置を合せる(ステップ100)。次に、O1ヘッドを基準としてX方向の位置を合せる(ステップ101)。
【0040】
次に偶数ヘッドの取付け位置について、それと対を為す奇数ヘッドの位置を基準にY方向位置を合せ(ステップ102)、続いてX方向位置を合せる(ステップ103)。印刷位置はX(横)とY(縦)の2方向についてそれぞれ調整する必要がある。X方向はマイクロメータヘッドによりヘッドの取付け位置を調整、Y方向はそのヘッドの射出タイミングにより調整し、印刷位置を合せる。順番としては、合せやすいY方向の印刷位置を先に、次にX方向を合せる。
【0041】
以下、位置合せの詳細を説明する。図9に示したフローチャートの始めのステップである、ステップ100とステップ101の位置合せの詳細を図10のフローチャートに示す。図10では、Y方向とX方向をそれぞれ(a)と(b)に分けて示しているが、両者とも略同じ工程であるのでY方向の位置合せステップを例に説明する。
【0042】
隣接するO1ヘッドとO2ヘッドに対し、まず、図19に示す位置調整用画像を左右2分割する(ステップ200)。この画像の幅はO1ヘッドとO2ヘッドで印刷する幅に等しい。ここで、1つのヘッドのノズル数を256とすると、図19の画像の左端から256画素の幅だけ読み出し、O1ヘッドにダウンロードする(ステップ201)。O2ヘッドは図6(b)に示すように、O1ヘッドとノズル14口分重なった配置となっている。そこで、O2ヘッドには元の画像の左端から256−14=242画素目から右に256画素読み出し、ダウンロードする(ステップ202)。
【0043】
ダウンロードしたらO1ヘッドとO2ヘッドを用いて画像を紙などに印刷する(ステップ203)。位置調整前はO1ヘッドとO2ヘッドの位置関係が正しくないので、X方向・Y方向共にずれており、印刷結果は例えば図21、図22のようになる。図21は印刷結果がX,Y両方向にずれている場合の図であり、図22はその部分拡大図である。O1ヘッドとO2ヘッドのノズル重なり部分が位置ずれのため二重線になって現れる。この二重になった横線と縦線の間隔が、それぞれY方向とX方向のずれの大きさに相当する。このずれの状態を判定する(ステップ204)。
【0044】
Y方向は印刷走査方向でもあるため、ヘッドの取付け位置は変えずに、ヘッドの印刷開始タイミングを変更することによりY方向の印刷位置を調整する(ステップ205)。すなわち、図21又は図22において、タイミングを早めればYの正方向に、遅くすればYの負の方向に印刷位置が移動する。調整後再度ステップ203に戻る。図21、図22の横線の間隔を顕微鏡やルーペなどの測定器で測定し、その間隔分、タイミングを変更して印刷位置を合せていく。ステップ204でY方向の位置がOKになると調整完了となる。
【0045】
Y方向の印刷位置を合せた後、再度印刷すると、図23、図24のような印刷結果が得られる。図23は印刷画像の全体を、図24にはその部分拡大図を示してある。図のように、横線が一本になり、縦線のみ二本線に見える。
【0046】
X方向は印刷走査方向ではないので、印刷タイミングでは印刷位置を調整できない。そのため、X方向の位置調整はヘッドユニットに装備されたマイクロメータヘッド30を使い、ヘッドの取付け位置を調整する。図23、図24の縦線の間隔を顕微鏡やルーペなどの測定器で測定し、その間隔分マイクロメータヘッドの目盛りを回し、ヘッドを移動させる。
【0047】
また、適当な測定器がなくても、目分量でマイクロメータヘッド30を回した後、印刷結果を目視で確認し、縦線が1本に見えるようになるまでこれを何度か繰返せば位置を合せることが可能である。X方向の工程(ステップ210〜ステップ215)はY方向の工程と同じであり、調整方法が異なるのみなのでここでの詳細説明は省略する。最終的にY方向とX方向の両方の位置が合えば、印刷結果は図19の調整用画像と等しくなる。
【0048】
図10はO1ヘッドとO2ヘッドについての調整手順であるが、O2ヘッドとO3ヘッド、O3ヘッドとO4ヘッド…以下同様に繰返し、ヘッドユニットの全ヘッドについて調整すれば、奇数ヘッド相互の位置合せが完了する。
【0049】
次に残った偶数ヘッドであるEヘッドの位置合せを行う。図11にその詳細フローチャートを示す。既に位置決めされた奇数ヘッドの位置を基準に偶数ヘッドの位置を決めていく。図7に示すように偶数ヘッドに隣接する奇数ヘッドが位置基準ヘッドとなる。
【0050】
図7(b)のように、偶数ヘッドは対になる奇数ヘッドに対しノズル列の位置がX方向にノズル間隔の1/2だけずれた位置に配置されている。言い換えると奇数ヘッドの2つのノズルの中間に偶数ヘッドのノズルが位置するように配置してある。
【0051】
この位置調整には図21、図22の印刷画像を使用する。図22に示すように印刷画像は縦線の密度が図19の2倍になっている。画像の横幅はヘッド1個分で、そこに縦線が512本ある。縦線の一本一本がヘッドの射出ノズル一本一本に対応する。画像左上の縦線がヘッドの左端のノズルに対応する。印刷後識別し易いように、左から数えて奇数の縦線は実践に、偶数の縦線は破線にしてある。
【0052】
まず、図25の画像データ処理装置91にこの画像が記憶されており、画像データ処理装置は画像データを奇数画素からなる奇数画素画像Oと偶数画素からなる偶数画素画像Eに分解する(ステップ230)。分解する手段としてはハードウェア回路かまたはソフトウェアかいずれでもよい。画像データ処理装置は分解したOヘッド及びEヘッドの印刷画像をヘッド制御部にある、印刷画像蓄積メモリにダウンロードする(ステップ231、232)。
【0053】
印刷画像蓄積メモリのデータバスはヘッド駆動部を経てインクジェットヘッドに繋がっている。図25において奇数ヘッドOと偶数ヘッドEはそれぞれ独立した画像蓄積メモリからの画像データに従いインク射出を行う。奇数画素画像Oは奇数ヘッドに繋がった画像蓄積メモリにダウンロードされ、偶数画素画像Eは偶数ヘッドに繋がった画像蓄積メモリにダウンロードされる。
【0054】
図19の位置調整画像を奇数画像と偶数画像に分解すると、奇数画像の縦線は実線部分のみ、偶数画像は破線部分のみとなる。横線は1画素おきの点線になる。
【0055】
ダウンロード後、対になるヘッドOとヘッドEで印刷する(ステップ233)。そして、印刷結果から印刷ヘッドのY方向の位置を判定する(ステップ234)その結果、例えば図21、図22のような結果になる。即ち位置ずれが図22のようにあると判定されるとEヘッドのプリン開始タイミング位置の調整を行う(ステップ235)。図22では、破線の縦線が右下、Xは正方向、Yは負方向にずれている。つまり奇数ヘッドの印刷位置に対し、偶数ヘッドの印刷位置が本来の位置から右下にずれていることになる。
【0056】
まず、Y方向から調整する。Y方向は奇数ヘッド同士の場合と同様に、偶数ヘッドの印刷タイミングを変更して印刷位置を合せる。図24のY方向の印刷位置が合うと、図23、24のようになる。図23の左上部分を拡大したのが図24である。
【0057】
奇数ヘッドが描いた縦の実線に対し、偶数ヘッドが描いた縦の破線は本来の位置より右、Xの正方向に5画素ほどずれているのが分かる。偶数ヘッドのマイクロメータヘッドを回し、X方向に5画素相当の距離を移動させることにより位置を合せる。位置が正確に合うと、上下の縦の実線のちょうど中間に縦の破線が位置する。このとき元の画像である図19と同じ印刷結果になる。このX方向の位置合せ工程は、Y方向と略同じであるためここでの説明は省略する。
【0058】
以上の調整を実施することにより、図4のヘッドユニットに装着された全てのインクジェットヘッドの位置を正確に合せることが出来る。
【0059】
ヘッドユニット1台では単色印刷となるので,カラー印刷には複数のヘッドユニットが必要になる。例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色カラー印刷を行う場合、図5や図8(a)に示すように、ヘッドユニット4台を印刷走査方向に並べ、各ヘッドユニットが異なる色のインクを射出して重ね描きする。その場合、個々のヘッドユニットの配置が図8(b)のように,X方向に正確に合っていないと色ずれが発生する。そこで、さらに図12に示すフローチャートに示すように、ヘッドユニット同士の位置合せを行う。
【0060】
ここでは主に、Y方向について説明する。まず、ヘッドユニット1とヘッドユニット2に同一の位置調整用画像をダウンロードする(ステップ250,251)。各ヘッドユニットにおいて装着ヘッドの位置調整が完了しているならば、ヘッドユニット1と2のすべての装着ヘッドの位置関係を調べる必要はないので,位置調整用画像は例えば奇数ヘッド位置合せに用いた図19の画像でもよい。
【0061】
ダウンロード後は、ヘッドユニット1,2で画像を印刷し(ステップ252)、その結果から印刷位置のずれを判断する(ステップ253)。一般にヘッドユニットによりインクの色が違うので、位置ずれの判別は比較的容易である。Y方向のずれの場合は、ヘッドユニット2のプリント開始タイミングを調整する(ステップ254)。そして、位置が合うまでステップ252からステップ254を繰り返す。また、X方向の位置合せステップ260から264も略同じで工程である。違いは位置合せの調整にマイクロネジでヘッドユニット2の位置調整を行う点である。
【0062】
以上のように、本発明によれば、ヘッドの走査方向に、応じてずれの調整を吐出開始位置を調整するか、ヘッド、又はヘッドユニットベースを移動して調整るかの使い分けで精度の良い塗布を行えるものである。
【実施例2】
【0063】
図13に本発明の第2の実施例のヘッドユニットを示す。本実施例は実施例1の方式に対し、図5の印刷ユニット部の各色のヘッドユニットを微調整するマイクロヘッド30bを用いる代わりに、幅方向のスライドは4個のガイドレール50で行い、幅方向の微小移動及び固定はモータ駆動位置決めユニット51で調整するようにしたものである。各ヘッドの調整は、ヘッド数が多く自動化した場合装置が複雑になるため実施例1と同様にマイクロヘッドによる調整としている。このように、ヘッドユニット部だけでも自動調整できるように構成することで、調整に要する手間を省くことができ、作業時間の短縮を図ることができる。
【実施例3】
【0064】
図14に本発明の第3の実施例の全体概略図構成を示す。本実施例は実施例1の方式(図1の構成)に対し、幅広の被印刷物に対応するためヘッド保守機構部、印刷ユニット部を色毎に分割し、各単色の印刷ユニット部6の下流に乾燥装置60を設けたものである。被印刷物が幅広になった場合、その幅寸法だけのヘッド数を必要とし装置が巨大になるため、ヘッド保守機構部、印刷ユニット部6を4ヶ所(各色7y、7m、7c、7k毎)に分割して配置する構成とし、印刷ユニット部をコンパクトにしたものである。乾燥装置60は各印刷ユニット部6の下流側に設けた。このように、乾燥装置も各印刷ユニット部6の下流側に設けることが出来るため、乾燥が遅いインクに対して有効である。
【0065】
それにより、各色のインクを印刷した直後に乾燥するため色同士の混じり合いを少なくし印刷画像の仕上がりを改善出来る。また、制御方式も幅広被印刷物の場合図柄データが膨大になるため、各色毎に制御する。インクジェット印刷制御については、マスタパソコン62と各色の印刷ユニット部6を制御するスレーブパソコン61を各色毎に設け、膨大なデータを色毎に分散し、各スレーブパソコン61に割り当てることで高速に制御できる。インクジェット印刷制御以外の制御も、プログラマブルコントローラ63を各色毎に設け制御する。これにより、複雑な印刷が可能となり、印刷のスループットを向上でき、かつ、印刷精度を向上することができる。
【実施例4】
【0066】
図15に本発明の第4の実施例の全体概略図構成を示す。本実施例は実施例3の方式に対し、ヘッド保守機構部5の位置を印刷ユニット部6の手前(Y2方向)から左側面の搬送機構部上部に配置し、印刷ユニット部6の手前(Y2方向)は保守スペース又は通路として利用できるようにしたもので、レイアウトのフレキシビリティを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1の全体概略構成を示す図である。
【図2】本発明の奇数側ヘッド一個と偶数側ヘッド一個の一組の取付け状態を示す斜視図である。
【図3】従来のヘッド取付け方法のヘッドユニットを示す平面図である。
【図4】本発明のヘッド取付け方法のヘッドユニットを示す平面図である。
【図5】本発明の実施例1の印刷ユニット部を示す斜視図である。
【図6】本発明の奇数・偶数ヘッドの倍密度ノズル位置調整前のノズル配置を示す模式図である。
【図7】本発明の奇数・偶数ヘッドの倍密度ノズル位置調整後のノズル配置を示す模式図である。
【図8】本発明のヘッドユニットの位置調整後のノズル位置を示す模式図である。
【図9】本発明のヘッドユニット搭載のインクジェットヘッドの位置調整手順を示す概略フロー図である。
【図10】概略フロー図10において,隣り合う奇数ヘッドO1、ヘッド○2の位置調整手順を示す詳細フロー図である。
【図11】概略フロー図10において,対をなす奇数ヘッド○と偶数ヘッドEの位置調整手順を示す詳細フロー図である。
【図12】本発明のヘッドユニット相互の位置調整手順を示すフロー図である。
【図13】本発明の他の実施例のヘッドユニットを示す斜視図である。
【図14】本発明の印刷装置の他の実施例を示す図である。
【図15】本発明のさらに他の印刷装置の実施例を示す図である。
【図16】印刷画像の1例を示した図である。
【図17】ヘッドの繋ぎ合せ部分がX方向,Y方向ともにずれた状態での印刷画像例である。
【図18】ヘッドの繋ぎ合せ部分のY方向のみずれた状態の印刷画像である。
【図19】正常に印刷された場合の印刷画像である。
【図20】図19の画像の左上部分を拡大した図である。
【図21】対を為す奇数ヘッドと偶数ヘッドの位置がX方向,Y方向ともにずれた状態の印刷画像である。
【図22】図21の画像の左上部分を拡大した図である。
【図23】対を為す奇数ヘッドと偶数ヘッドの位置がY方向にずれた状態の印刷画像である。
【図24】図21の印刷画像の左上部分を拡大した図である。
【図25】図5のヘッドユニットの印刷制御システムの構成図である。
【符号の説明】
【0068】
1…被印刷物、2…ローダ機構部、3…位置決め機構、4…搬送機構部、5…ヘッド保守機構部、6…印刷ユニット部、7…インクジェットヘッド、7y…イエロー用ヘッド、7m…マゼンタ用ヘッド、7c…シアン用ヘッド、7k…ブラック用ヘッド,7o…奇数側ヘッド、7e…偶数側ヘッド、11…アンローダ機構部、13…主制御機構、17a、17b、17c…駆動モータ、30,30b…マイクロメータヘッド、31,31b…マイクロメータヘッド取付ブラケット、32a、32b、32c…位置決めピン、40,41…ヘッドユニット、41y…イエロー用ヘッドユニット、41m…マゼンタ用ヘッドユニット、41c…シアン用ヘッドユニット、41k…ブラック用ヘッドユニット、42…ヘッドユニット取付けベース、50…ガイドレール、51…モータ駆動位置決めユニット、60…乾燥装置、61…スレーブパソコン、62…マスタパソコン、63…プログラマブルコントローラ、85…印刷ワーク、86…印刷ワーク検出センサ、87…ヘッド駆動部、88…印刷画像蓄積メモリ、89…ヘッド制御部、90…主制御部、91…画像データ処理装置、92…表示・操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドを複数個配置することにより構成されたラインヘッド型印刷装置において、
ラインヘッドを構成するインクジェットヘッドは2個以上を一組としてこれらを印刷走査方向に各ヘッドのノズル列が平行に並ぶように配置し、さらにこの組を印刷副走査方向に複数配置しており、
ヘッド固定部にはヘッドをノズル列方向にのみ移動できる構造を有し、予め設定した量だけヘッドを移動させる定量送り機構を備えており、
主制御機構では前記組をなすヘッドの各ノズルで印刷する画像の各画素を順に振り分ける機能を有していることを特徴とするラインヘッド型インクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1のラインヘッド型インクジェット印刷装置において、ヘッドの全ての射出ノズルそれぞれに対応する縦線を含む網目状の画像をN個の組をなすヘッドにより印刷し、その印刷結果の各縦線の配置状態から、組を構成しているヘッドそれぞれの位置を確認し、前記定量送り機構により、各ヘッドのノズル列方向の位置が全て一致する位置を基準として、ノズルピッチの1/Nずつ各ヘッドをそれぞれノズル列方向にずらした位置に移動してヘッド位置を調整するように構成したことを特徴とするラインヘッド型インクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項1記載のラインヘッド型インクジェット印刷装置において、
前記ヘッドの定量送り機構として、送りネジを用いた構成としたことを特徴とするラインヘッド型インクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載のラインヘッド型インクジェット印刷装置において、
板状の被印刷物面上に複数の異なる色のインクで絵柄を印刷するために前記複数のインク吐出ヘッドで構成した印刷ユニット部と、前記板状の被印刷物を搬入するローダ機構部と、被印刷物の搬送方向に対して水平直角方向の位置を合せる位置決め部と、前記印刷ユニット部の下方に位置し、被印刷物を搬送する搬送機構部と、印刷を施された被印刷物を装置外に搬出するアンローダ機構部と、前記各部を制御する主制御機構からなることを特徴とするラインヘッド型インクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−23292(P2009−23292A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190872(P2007−190872)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】