説明

ラクトビオン酸を含んでなる肉に基づく食品

ラクトビオン酸を含んでなる肉に基づく食品は、ラクトビオン酸を含まない同様な食品に比較して、凍結および引き続く融解時および/または料理時の水の損失を減少させることを、本発明者らは発見した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトビオン酸を含んでなる肉に基づく食品および食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肉製品を凍結し、融解するとき、ならびに肉製品を料理するとき、水が失われ、肉製品の収量は低下し、水分は減少する傾向がある。肉製品はしばしばマリネードまたは漬け汁に漬けた後、料理または凍結して味および柔らかさを改良し、そして、例えば、澱粉または乳タンパク質をマリネードに添加すると、料理時の損失を減少できることが知られている。EP 0354262には、変性された澱粉を含有するマリネードまたは漬け汁で処理して料理時の水の損失を減少させることを含んでなる、肉製品をマリネードまたは漬け汁に漬ける方法が開示されている。
【0003】
本発明の目的は、凍結後の融解時および/または料理時における水の損失が減少された、肉に基づく食品を提供することである。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約
ラクトビオン酸を肉に基づく食品に添加したとき、ラクトビオン酸を含まない肉に基づく食品に比較して、凍結および引き続く融解時および/または料理時の水の損失が減少することを、本発明者らは発見した。
【0005】
こうして、第1の面において、本発明は、下記の工程を含んでなる食品を製造する方法に関する: a) 肉をラクトビオン酸と接触させ、そしてb) ラクトビオン酸と接触させた肉から食品を製造する。第2の面において、本発明は、肉に基づく食品に関し、そしてそれ以上の面において、本発明は、肉に基づく食品を製造するためのラクトビオン酸の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
本発明による食品は、人間および動物のための食物として適当な任意の製品である。本発明の1つの態様において、食品は動物に給餌するためのペット食品または飼料製品である。他の態様において、食品はスナック製品である。
【0007】
ラクトビオン酸(Lactobionic acid)
本発明によるラクトビオン酸 (4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルコン酸) は、この分野において知られている任意の源からのものであることができる。ラクトビオン酸は、例えば、ラクトースの酸化により製造することができる。ラクトースの酸化は、例えば、ラクトースをラクトビオン酸に酸化することができる酵素により酵素的に達成することができ、このような酵素の例はWO 9931990に開示されている炭水化物オキシダーゼである。ラクトビオン酸に酸化すべきラクトースは、例えば、乳、乳漿に由来するか、あるいは、例えば、乳、乳漿の限外濾過からの透過物であることができる。ラクトースが乳、乳漿、または透過物に由来するかする場合、ラクトースをさらに精製するか、あるいは乳、乳漿、または透過物中で直接酸化することができる。
【0008】
ラクトースを乳、乳漿、または透過物中で直接酸化する場合、生ずるラクトビオン酸を含む乳、乳漿、または透過物を肉に基づく食品の製造にそのまま使用できるか、あるいはラクトビオン酸を使用前に精製することができる。ラクトビオン酸はその遊離酸として直接使用できるか、あるいはラクトビオン酸を、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カリウムで中和して、ラクトビオン酸調製物のpHを必要な値にすることができる。また、ラクトビオン酸は塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩として使用することができる。ラクトビオン酸またはラクトビオン酸塩は純粋な形態で使用するか、あるいは使用前に水溶液中に溶解することができる。
【0009】
最終の肉に基づく食品中のラクトビオン酸の量は、凍結および引き続く融解時および/または料理時における水の損失に対して必要な効果を達成するために適当な任意の量である。本発明の1つの態様において、ラクトビオン酸の量は、ラクトビオン酸を含まない同様な食品の水の損失に比較して、肉に基づく食品の凍結および引き続く融解時における水の損失を減少させるために十分である。
【0010】
ラクトビオン酸を使用して調製した肉に基づく食品の凍結および引き続く融解時の水の損失は、ラクトビオン酸を使用しないで調製した同様な食品の水の損失に比較して、例えば、2%以上、例えば、5%以上、10%以上、または15%以上減少させることができる。他の態様において、ラクトビオン酸の量は、ラクトビオン酸を使用しないで調製した同様な食品の水の損失に比較して、肉に基づく食品の料理時における水の損失を減少させるために十分である。ラクトビオン酸の量は、仕上げられた肉に基づく食品の通常0.1〜20% (重量/重量) の範囲、例えば、0.2〜10%または0.5〜5%である。
【0011】

本発明による肉は、任意の種類の動物に由来する任意の種類の組織である。本発明による肉は、動物に由来する筋肉繊維を含んでなる組織であることができる。肉は動物の筋肉、例えば、全動物筋肉または動物筋肉から切断した肉片であることができる。さらに、本発明による肉は、動物の内部器官、例えば、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺および脳であることができる。肉は粉砕または細かく切るか、あるいはこの分野において知られている任意の他の適当な方法で小片に切断することができる。
【0012】
本発明による肉は、任意の種類の動物、例えば、雌牛、ブタ、子ヒツジ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、雌鶏、シチメンチョウ、ダチョウ、キジ、シカ、ヘラジカ、トナカイ、スイギュウ、バイソン、アンテロープ、ラクダ、カンガルー; 任意の種類の魚、例えば、イワシ、タラ、ハドック、マグロ、ウナギ (sea eel) 、サケ、ニシン、マイワシ、タイセイヨウサバ、ニシマアジ、サンマ、ウルメイワシ、ポラック、カレイ、カタクシイワシ、ピルチャード、ニベ (blue whiting) 、キス (pacific whiting) 、マス、ナマズ、バス、カラフトシシャモ、カジキ、フエダイ、ノールウェータラ (Norway pout) および/またはメルルーサ; 任意の種類の貝・甲殻類の動物、例えば、二枚貝、ムラサキガイ、ホタテガイ、ザルガイ、ヨーロッパタマキビガイ、カタツムリ、カキ、シュリンプ、ロブスター、ヨーロッパアカザエビ、カニ、ザリガニ、コウイカ、イカおよび/またはタコに由来することができる。本発明の1つの態様において、肉は牛肉、豚肉、ニワトリおよび/またはシチメンチョウである。他の態様において、肉は魚肉である。
【0013】
本発明による肉に基づく食品は、肉に基づく任意の食品である。肉に基づく食品は、肉以外の成分、例えば、水、塩、穀粉、乳タンパク質、植物性タンパク質、澱粉、タンパク質加水分解物、リン酸塩、酸および/またはスパイスを含んでなることができる。肉は肉に基づく食品の、例えば、30〜100% (重量/重量) 、例えば、50〜100%、60〜100%または70〜100%の割合を占める。
【0014】
1つの態様において、肉に基づく食品は加工肉製品、例えば、ソーセージ、ミートローフ、粉砕肉製品、粉砕肉、ベーコン、ポロニー、サラミまたはパテである。加工肉製品は、例えば、塩、スパイス、乳タンパク質、植物性成分、着色剤および/またはテキスチャーライザーをさらに含んでなることができる。加工肉製品は、例えば、肉に基づく乳濁液から製造された、乳化肉製品であることができる。
【0015】
肉に基づく乳濁液は、例えば、ベーキング形態で、または、例えば、プラスチック、コラーゲンのケーシング、または天然のケーシングの中に充填された後、料理またはベーキングすることができる。また、加工肉製品は、構造転換肉製品、例えば、構造転換ハムであることができる。本発明の肉製品は、加工工程、例えば、塩漬け、例えば、乾式塩漬け; 硬化、例えば、ブライン硬化; 乾燥; 燻製; 発酵; 料理; スライス; および/または細断に付すことができる。
【0016】
肉に基づく食品を製造する方法
ラクトビオン酸を含んでなる肉に基づく食品は、肉をラクトビオン酸と接触させ、そして処理された肉から肉に基づく食品を製造することによって、製造することができる。肉はラクトビオン酸と接触させるとき通常生であるが、また、ラクトビオン酸との接触前に、例えば、熱処理、前料理または照射することができる。また、肉は、ラクトビオン酸との接触前に、凍結されていることができる。肉とラクトビオン酸との接触は、ラクトビオン酸を肉に添加することによって実施できる。
【0017】
肉とラクトビオン酸との接触は、肉、例えば、肉片、こまぎれ肉、または肉に基づく乳濁液をラクトビオン酸および、適用可能ならば、肉に基づく食品の形成使用される他の成分と、この分野において知られている任意の方法により、混合することによって達成することができる。肉との接触前に、ラクトビオン酸を他の成分、例えば、水、塩、穀粉、乳タンパク質、植物性タンパク質、澱粉、タンパク質加水分解物、リン酸塩、酸および/またはスパイスと混合して、例えば、マリネードまたは漬け汁を形成することができる。肉に基づく食品中のラクトビオン酸の必要な最終量を達成するように、マリネード中のラクトビオン酸の量を調節することができる。
【0018】
肉、例えば、全動物筋肉または動物筋肉片とラクトビオン酸との接触は、ラクトビオン酸を含んでなるマリネードに肉を漬けるか、あるいは前記マリネードと肉をタンブルすることによって、達成することができる。肉製品が加工肉製品、例えば、乳化肉製品である場合、ラクトビオン酸は、例えば、肉に基づく乳濁液の中に、または加工肉製品の形成に使用される任意の他の形態の肉に基づく混合物の中に混合することができる。本発明の1つの態様において、ラクトビオン酸をマリネードまたは漬け汁に添加する。ラクトビオン酸は、この分野において知られている任意の方法により、ラクトビオン酸を含んでなる液体を肉の中に注入および/または送入することによって、肉に添加することができる。本発明の肉に基づく食品は、ラクトビオン酸と接触させ、包装された肉片であることができる。
【0019】
本発明の1つの態様において、肉に基づく食品は、ラクトビオン酸との接触後、凍結される。肉製品は0℃以下、例えば、-1〜-80℃、-5℃〜-50℃、または-10〜-35℃の温度において凍結することができる。
【0020】
本発明による肉に基づく食品は、ラクトビオン酸との接触後、料理することができる。料理は、この分野において知られている任意の方法により、例えば、沸騰水中で、炉中で、マイクロ波加熱により、焼くことにより、加圧料理により、カン中の殺菌包装により、および/またはフライにすることによって実施することができる。本発明の1つの態様において、肉に基づく食品は、例えば、50〜140℃、例えば、60〜120℃、60〜100℃、または70〜100℃に加熱される。
【0021】
本発明の1つの態様において、肉に基づく食品は加工魚製品である。加工魚製品は、例えば、ラクトビオン酸の水溶液と接触させ、包装された魚骨なしの切り身または貝・甲殻類の動物であることができる。貝・甲殻類の動物は、しばしば、ラクトビオン酸との接触前後に、包装前に、料理されるであろう。加工魚製品は、しばしば、ラクトビオン酸との接触後に凍結される。また、加工魚製品は燻製された魚であることができる。
【0022】
本発明の1つの態様において、加工魚製品はすり身である。すり身は、魚肉の可溶性成分を洗浄除去し、そして安定化成分を添加することによって、魚肉から製造された食品である。すり身は、例えば、フィッシュケーキ、魚プディング、フィッシュボール、および貝・甲殻類の動物類似物、例えば、カニスティックを製造するために使用できる。すり身は、通常、脂肪のない白色の新鮮な魚、例えば、キス、ポラック、ベニ、エソ、カワマス、アナゴ、またはニュージーランドホキを洗浄し、頭を取り、内臓を抜き、骨なしの切り身にし、そして細かく切って製造される。細かく切った肉を新鮮な水で反復して洗浄し、例えば、スクリュープレスを使用して、脱水工程にかけることができる。添加剤を安定化、香味、および肉質調節のための添加する。
【0023】
添加剤の例は、砂糖、ソルビトール、澱粉、ポリデキシトロース、卵白、乳漿タンパク質、大豆タンパク質、植物油、貝・甲殻類の動物の抽出物、貝・甲殻類の動物の香辛料、リン酸塩、塩、調味料、水、および/またはプロテアーゼインヒビターである。ラクトビオン酸は通常安定剤と同一方法でかつ同一プロセス工程で添加し、そして他の添加物を通常慣用プロセスにおいてすり身に添加する。製品は必要に応じて成形して、例えば、カニ、シュリンプ、またはロブスターに類似させる。さらに、加熱工程を加えて、ゼラチン化を促進することができる。着色剤、例えば、カーマイン、カラメル、パプリカ、またはベニノキ抽出物を添加して、製品に必要な外観をつくることができる。
【0024】
本発明の肉に基づく食品は直接消費のために使用できるか、あるいは消費前にさらに加工することができる。本発明の肉に基づく食品は、他の食品の製造に原料または成分として使用することができる。
【実施例】
【0025】
実施例1.凍結および融解時における肉製品のドリップ損失
原料:
細かく切った赤みの豚肉。
WPC: Lacprodan 80、乾燥物質中に80%のタンパク質を含む乳漿タンパク質濃縮物 (Arla Foods、デンマーク国) 。
WPP: 83%のラクトースを含有する乳漿透過物粉末 (EPI、フランス国) 。
Ca-LBA-WPP: Ca(OH)2でpH 6.52に調節したラクトースオキシダーゼ処理乳漿透過物粉末。
【0026】
乳漿透過物粉末を酵素触媒酸化により、生成物を製造した。乳漿透過物粉末を水中に6%の粉末として溶解し、そしてラクトースオキシダーゼを添加した。反応間の温度は49℃であり、そして混合物中の空気を保証するために吸入排出することによって、液体を再循環させた。pHは酵素添加前に6.5であり、そして85℃に加熱することによって反応を停止させたとき、3.7に低下した。液体を蒸発により濃縮し、そしてCa(OH)2の添加によりpHを6.52に調節した。このプロセスにおいて、ラクトースの41%はラクトビオン酸に転化された。
【0027】
【表1】

【0028】
すべてのマリネードをpH 6.05に調節した。
25 gのそれぞれのマリネードを75 gの肉に添加し、5分間混合した。試料をプラスチックバッグ中に充填し、同一に造形し、一夜凍結した。次の日に、すべての試料を冷蔵庫に一夜入れて融解させ、次の日にプラスチックバッグのかどを切断し、排出される液体を収集し、秤量した。
【0029】
【表2】

【0030】
ラクトビオン酸を含んでなるマリネード2および4を使用して形成した肉製品は、凍結および引き続く融解時に最低のドリップ減少を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含んでなる食品を製造する方法:
a) 肉をラクトビオン酸と接触させ、そして
b) ラクトビオン酸と接触させた肉から食品を製造する。
【請求項2】
こまぎれ肉をラクトビオン酸と混合することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
肉片をラクトビオン酸で処理することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
肉をラクトビオン酸とともにタンブルすることを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
肉をラクトビオン酸でマリネード処理することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
食品を凍結することを含んでなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
食品を加熱することを含んでなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記肉が魚肉である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記食品がすり身である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記食品が乳化肉製品である請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記肉が牛肉、豚肉、ニワトリおよび/またはシチメンチョウである請求項1〜7および10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ラクトビオン酸がラクトビオン酸ナトリウム、ラクトビオン酸カリウム、ラクトビオン酸マグネシウムまたはラクトビオン酸カルシウムの形態である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ラクトビオン酸がラクトースの酵素的酸化により製造される請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ラクトビオン酸を含んでなる肉に基づく食品。
【請求項15】
前記ラクトビオン酸の量が食品の0.1〜20% (重量/重量) である請求項14に記載の食品。
【請求項16】
肉に基づく食品を製造するためのラクトビオン酸の使用。

【公表番号】特表2007−522808(P2007−522808A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553437(P2006−553437)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000117
【国際公開番号】WO2005/079604
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】