説明

ラクトン系ポリエステルポリオールおよびその製造方法

本発明の目的は、低分子量化合物の含有量の少ないラクトン系ポリエステルポリオールおよび品質の良いポリウレタン系樹脂を提供することにある。本発明は、環状ラクトン化合物の含有量が0.05重量%以下であるラクトン系ポリエステルポリオール、および環状ラクトン化合物、低分子量ポリオールおよび/またはポリカルボン酸、及び、エステル化触媒を反応系に添加し、所定の反応率に達するまで環状ラクトン化合物の開環ラクトン付加反応あるいはエステル化反応を進行させる第1工程、次いで、薄膜蒸発器に反応液を連続的に供給して薄膜状として低分子量化合物を蒸発させて系外に除く第2工程からなるラクトン系ポリエステルポリオールの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリウレタン系樹脂の原料として用いられる精製されたラクトン系ポリエステルポリオールおよびその製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、低分子量化合物の含有量の少ないラクトン系ポリエステルポリオール、および所定の反応率に達するまで環状ラクトン化合物の開環ラクトン付加反応あるいはエステル化反応を進行させた後、残存する低分子量化合物や生成した低分子量化合物を除去することにより製造されるラクトン系ポリエステルポリオールおよびその製造方法に関する。
ちなみに、下記従来の製造方法により得られるラクトン系ポリエステルポリオールは低分子量化合物、例えば、残存する未反応の環状ラクトン化合物、生成した環状ラクトン化合物の自己2量体、および生成した悪臭気物質等をかなりの量含んだままの状態でポリウレタン系樹脂の原料等として使用されていた。
【背景技術】
ポリウレタン系樹脂のポリオール成分として用いられるラクトン系ポリエステルポリオールは、100〜280℃という加熱条件で、各種触媒の存在下、環状ラクトン化合物と低分子量ポリオールおよび/またはポリカルボン酸を使用し、環状ラクトン化合物の開環ラクトン付加および/またはエステル化付加反応をさせ、所定の酸価及び/または水酸基価(分子量)に達するところまで反応させ、必要に応じてエステル交換反応させるという製造方法にて得られる。代表的な触媒としては、例えば、無機酸(特公昭35−497号公報)、アルカリ金属系化合物(特公昭40−26557号公報、米国特許3021314)、アルカリ土類金属化合物(米国特許3021310、3021311)、チタン系化合物およびスズ系化合物(特公昭41−19559号公報、特公昭64−1491号公報)、アルミニウム系化合物(特公昭43−2473号公報)、水酸基、アルコキシド基またはハロゲンを有する有機スズ化合物(特開平6−192410号公報)、金属化合物と配位子よりなる複合触媒(特開平6−248060号公報)、ハロゲンまたは有機酸根を含有する金属化合物(特開平6−345858号公報)等が挙げられる。
上記のような従来の製造方法では、エステル交換反応等の副反応により、得られるラクトン系ポリエステルポリオール中に残存する低分子量化合物としては、例えば、未反応の環状ラクトン化合物、環状ラクトン化合物の2量化反応によって生成する環状ラクトン化合物の自己2量体、実際には分析が難しく物質の特定が難しい高温下での副反応による臭気に悪影響を与える各種アルデヒド成分、あるいは各種カルボン酸成分のような低分子量化合物が挙げられ、その中でも、環状ラクトン化合物の自己2量体などは、昇華性もある結晶化合物に変化することもあり、ポリウレタン系樹脂に応用した場合には当該環状ラクトン化合物の自己2量体が反応性に乏しい化合物であることから粉吹き等のブリードアウトを起こす原因であることが分かっている。
また、臭気等に悪影響を与える化合物が残存していると、ラクトン系ポリエステルポリオールを使用してポリウレタン系樹脂を合成する際の環境を悪化させるだけでなく、最終的に得られるポリウレタン系樹脂の色相を悪化させる原因になることも危惧される。
当業界では、ポリウレタン系樹脂等において粉吹き等のブリードアウトを起こす原因物質となる環状ラクトン化合物の自己2量体等を低減させるべく、反応条件を種々変えてラクトン系ポリエステルポリオールを製造すること等が従来からしばしば試みられてきたが、満足できる結果は得られていなかった。
【発明の開示】
本発明はこれらの問題点を解決すべく、低分子量化合物を除去したラクトン系ポリエステルポリオールおよびその製造方法の提供を目的としたものである。本発明で提供される「ラクトン系ポリエステルポリオール」は、同一組成で同程度の数平均分子量をもつ従来法でのラクトン系ポリエステルポリオールと比較して、低分子量化合物が少ない。なお「低分子量化合物」とは、未反応の環状ラクトン化合物や環状ラクトン化合物の自己2量体、あるいは化合物を特定することが難しい、臭気成分となる低分子(副)生成物などを指す。
すなわち、本発明の第1は、環状ラクトン化合物の含有量が0.05重量%以下であることを特徴とするラクトン系ポリエステルポリオールを提供する。
また、本発明の第2は、環状ラクトン化合物の自己2量体の含有量が0.05重量%以下である本発明1のラクトン系ポリエステルポリオールを提供する。
また、本発明の第3は、環状ラクトン化合物の自己2量体の含有量が0.01重量%以下である本発明1のラクトン系ポリエステルポリオールを提供する。
また、本発明の第4は、環状ラクトン化合物、低分子量ポリオールおよび/またはポリカルボン酸、及び、エステル化触媒を反応系に添加し、所定の反応率に達するまで環状ラクトン化合物の開環ラクトン付加反応あるいはエステル化反応を進行させる第1工程、次いで、薄膜蒸発器に反応液を連続的に供給して薄膜状として低分子量化合物を蒸発させて系外に除く第2工程からなることを特徴とする上記本発明1〜3のいずれかに記載のラクトン系ポリエステルポリオールの製造方法を提供する。
さらに、本発明の第5は、該低分子量化合物が主として環状ラクトン化合物、該環状ラクトン化合物の自己2量体、および臭気物質のいずれかである本発明4のラクトン系ポリエステルポリオールの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の第一工程において用いられる各原料について説明する。
本発明の第一工程において用いられる環状ラクトン化合物としてはε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられ、これらは単独で使用することもできるし併用してもよい。本発明の第一工程において用いられる低分子量ポリオールは、分子量が数十〜数百程度であり、かつ、水酸基を1分子中に2個以上有するものである。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトールのような低分子量化合物、およびビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のようなオリゴマー等が挙げられ、これらは単独で使用することもできるし、又は併用してもよい。
なお、低分子量ポリオール等の一部として、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等のジアミン又はアミノアルコール等の1種以上を併用してもよい。また、水酸基を1分子中に2個以上有する化合物と共に水(出発原料中に含まれている水も含む)を併用することもできる。
本発明の第一工程において用いることのできるポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸、等が挙げられ、これ等の酸エステル、又は酸無水物として使用されてもよい。これらは単独で使用してもよいし、併用してもよい。
本発明に用いられるエステル化触媒としては、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタン系化合物類、オクチル酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、ジブチルチンジクロライド、ブチルチントリクロライド、ジブチルチンオキサイド等の錫系化合物類、パラトルエンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸金属塩類、メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸類、水酸化コバルト、酢酸マンガン、酸化亜鉛、オクチル酸コバルト等が挙げられる。本発明で好ましいエステル化触媒は、錫系化合物類である。
なお、本発明のラクトン系ポリエステルポリオールには、必要に応じて添加剤及び助剤を混合してポリウレタン樹脂のポリオール成分として使用できる。例えば、顔料、染料、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材等が挙げられる。
次に各反応工程について説明する。第1工程は開環ラクトン付加(エステル化)反応であり、公知の方法を適用できる。すなわち、通常、原料を反応器に仕込んだ後、加熱、攪拌する。その後、常圧下で280℃、好ましくは200℃まで徐々に加熱する。このようにして、所定の反応率に達するまで環状ラクトン化合物の開環付加反応あるいはエステル化反応を進行させる。仕込み時における環状ラクトン化合物と低分子ポリオールおよび/またはポリカルボン酸の仕込み比は、目標とするポリエステルポリオールの数平均分子量によって決定される。具体的には、通常、(環状ラクトン化合物)/(低分子量ポリオールおよび/またはポリカルボン酸)の反応モル比は1/1〜100/1である。この比率が大きい条件で反応させれば、得られるラクトン系ポリエステルポリオールの分子量は高くなる。分子量が高すぎると粘度が高くなり、後述する第2工程における薄膜蒸発器での処理が困難になるので、通常は、数平均分子量200〜100000程度(すなわち、温度200℃程度での粘度が1mPa・s〜100万mPa・s)になるように上記の範囲内で反応モル比が選ばれる。
また、エステル化触媒の添加量は、使用する触媒の種類に依存するが、仕込みの環状ラクトン化合物と低分子ポリオールおよび/またはポリカルボン酸の合計重量に対して1〜1,000ppm、好ましくは、5〜500ppmである。エステル化触媒の使用量が1ppm未満では、反応速度が極めて遅く、生産性の点で問題となるので、好ましくない。逆に、1,000ppmを超えて使用すると反応速度は速くなるが、副生物の生成量が多くなったり、生成物が着色することがあるので、好ましくない。
なお、第1工程における「所定の反応率に達する」というのは生成したラクトン系ポリエステルポリオール中に残存する低分子化合物や生成した低分子化合物の含有量がそれぞれ下記の数値に到達した時点のことを言う。
すなわち、第1工程終了後の環状ラクトン化合物の自己2量体の生成量は1重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。環状ラクトン化合物の自己2量体の生成量が1重量%を超えたポリエステルポリオールは、その後の第2工程での除去工程で期待する環状ラクトン2量体の削減が出来ないからである。
一方、第一工程終了後の未反応環状ラクトン化合物の残存量は少ないほど良いが、一般に、上記環状ラクトン化合物の自己2量体の生成は、環状ラクトン化合物が開環付加したポリマーのバックバイティングによる副反応で生成しているとも考えられ、実際には、残存する環状ラクトン化合物が数%以下になった時点から環状ラクトン化合物の自己2量体が徐々にラクトン系ポリエステルポリオール中に生成(増加)してくることを確認しており、現実の反応系では、残存する環状ラクトン化合物の減少と系中に生成してくる環状ラクトン化合物の自己2量体の増加を温度条件、触媒条件、仕込条件等で検証していく必要がある。本発明における環状ラクトン化合物等の含有量は後述するガスクロマトグラフィー(GC)による方法で分析した数値である。
上記のごとく、環状ラクトン化合物を出来る限り開環付加反応させ、所定の反応率に達したら、すなわち所定の環状ラクトン化合物の自己2量体の生成量に到達したら、低分子化合物除去工程である第2工程に入る。第2工程の具体的な手順は、第1工程に引き続き第2工程に入る場合は反応液の温度を低下させ、次いで薄膜蒸発器に反応液を連続的に供給して薄膜状として低分子化合物を蒸発させて系外に除き、目的のラクトン系ポリエステルポリオールを得ることである。本発明は、従来の方法でラクトン系ポリエステルポリオールを合成した後、この第2工程で薄膜蒸発器を用いて低分子化合物を除去することを特徴としている。このように、薄膜蒸発器を用いて低分子化合物、特に環状ラクトン化合物の自己2量体を除去する試みは従来なされたことはなかった。
本発明で用いる薄膜蒸発器は、機械的攪拌または自然流下により液を薄膜状にして、伝熱係数を向上させて効率的に低分子化合物を蒸発させるもので、通常の縦型または横型のものが使用可能である。薄膜蒸発器の方式としては、比較的粘度の高い液体に対しても伝熱効率の低下しにくい機械的攪拌式薄膜蒸発器を使用するのが好ましい。また、熱媒としてはスチーム、オイル等を用いる。薄膜蒸発器の外筒内温度は、好ましくは80〜250℃、さらに好ましくは100〜245℃がよい。薄膜蒸発器の外筒内温度が80℃より低いと、ラクトン系ポリエステルポリオールの粘度が高くなり、安定した液膜が形成されにくくなるので、好ましくない。また、逆に250℃より高いと、得られるラクトン系ポリエステルポリオールが着色したり、熱分解が起こるので、好ましくない。
反応液は、機械的攪拌または自然流下により加熱面に押し広げられ薄い液膜となり、速やかに低分子化合物が蒸発することが好ましいので、液膜の厚みは薄い方が有利である。しかし、液膜が途切れると伝熱面に乾き面が露出し、部分加熱による副反応が生じるので、液膜の厚みは10mm以下が好ましく、0.1mm〜2mmの範囲がより好ましい。液の平均滞留時間は、短ければ短いほど熱履歴を受けにくいので好ましい。液の滞留量がわかれば、滞留時間は計算可能であるが、液膜の厚みを正確に把握することが困難であるので、実際の滞留時間を正確に把握することは難しい。そこで、伝熱面積当たりの流量で表現して、1×10−4〜6×10−4g/秒/cmの範囲がよい。圧力は、低ければ低いほど低分子化合物が蒸発しやすいので好ましいが、技術的に難しくなり、通常10−3〜10mmHg(0.133〜1330Pa)がよい。薄膜蒸発器に供給する反応液の温度は、20〜200℃、好ましくは40〜160℃である。
なお、前述の添加剤の添加時期は特に制限はなく、適当な段階を選択して用いることができる。
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りのない限り、実施例中の「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【実施例1】
攪拌機、温度計、窒素導入管およびコンデンサーを取り付けたフラスコにトリメチロールプロパン134g、ε−カプロラクトン1865g、および触媒としてオクチル酸第一錫20mgを仕込み、反応温度150℃で約7時間反応させた。得られたラクトン系ポリエステルジオールの性状は環状ラクトン化合物の自己2量体が0.2%、環状ラクトン化合物0.8%、OH価56.2KOHmg/g、酸価0.2KOHmg/g、融点46〜49℃のワックス状であった。その後、反応器の温度を100℃まで低下させ、薄膜蒸発器に供給した。用いた薄膜蒸発器は、柴田科学製の、内径50mm、長さ200mmの外筒を有する回転薄膜式分子蒸留装置(MS−300)で、蒸発器内圧力を0.25mmHg(33.3Pa)とし、蒸留装置の外筒温度を240℃、ワイパー回転数200rpmにして運転した。反応液を1時間当たり300gで連続的に供給した。この供給速度は、2.7×10−4g/秒/cmである。得られたラクトン系ポリエステルポリオールは環状ラクトン化合物の自己2量体が0.01%、環状ラクトン化合物0.01%、OH価56.2KOHmg/g、酸価0.2KOHmg/g、融点46〜49℃のワックス状であった。
環状ラクトン化合物(ε−カプロラクトン)および環状ラクトン化合物の自己2量体(ε−カプロラクトンダイマー)の含有量はShimadzu GC−9A(島津製作所製)を用いて絶対検量線法により求めた。
下記の測定条件下で得られるGCチャートにおいて、環状ラクトン化合物(ε−カプロラクトン)のピークはRETENSION TIME1.463(min)付近に、環状ラクトン化合物の自己2量体(ε−カプロラクトンダイマー)のピークは7.013(min)付近に観察される。
以下に、GCによる分析方法を記す。
分析操作
(1)サンプル約2gを精秤する。
(2)アセトンに溶解する。メスフラスコで全量を50mlとする。
(3)GCで分析する(絶対検量線法)。
GC分析条件:
GC MODEL Shimadzu GC−9A
Packing 5%Thermon−3000/Chromosorb−W(AW−DMCS)
Column 2.6mm I.D.×2.1m Length
Column Temp 210℃
Carrier Gas N
Column Flow 50ml/min
Injection Temp 230℃
Detector Temp 230℃
Sample amount 1.0μl
Detector FID(H=1.0kg/cm,Air 1.0kg/cm
Sensitivity RANGE=2
【実施例2】
環状ラクトン化合物の自己2量体が0.2%、環状ラクトン化合物が0.5%存在するダイセル化学工業(株)製のプラクセル220AL(水酸基価56mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリネオペンチルアジペートを開始剤とするラクトン系ポリオール)を100℃まで加熱して、下記薄膜蒸発機に連続的に供給した。この蒸発機は、新神製作所(株)製のスミス式薄膜蒸発機で、伝熱面積3.1m、凝縮器面積4.7mである。蒸発機内圧を1mmHg(133Pa)、温度220℃、ワイパーの回転数を100rpmとして、100℃に保温したプラクセル220ALを1時間に20kgの速度で供給した。これは1.8×10−4g/秒/cmに相当する。得られたラクトン系ポリエステルポリオールは、無色の液状であり、環状ラクトン化合物の自己2量体が0.01%、環状ラクトン化合物0.01%、水酸基価56mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/gであった。
【実施例3】
実施例1と同様な反応器に、フラスコにトリメチロールプロパン134g、ε−カプロラクトン1865g、および触媒としてオクチル酸第一錫20mgを仕込み、反応温度150℃で約6時間反応させた。得られたラクトン系ポリエステルジオールの性状は環状ラクトン化合物の自己2量体が0.1%、環状ラクトン化合物2%、OH価56.2KOHmg/g、酸価0.2KOHmg/g、融点46〜49℃のワックス状であった。その後、反応器の温度を100℃まで低下させ、薄膜蒸発器に供給した。用いた薄膜蒸発器は、柴田科学製の、内径50mm、長さ200mmの外筒を有する機械攪拌式縦型薄膜蒸発器で、蒸発器内圧力を0.25mmHg(33.3Pa)とし、縦型攪拌薄膜蒸発器の外筒内温度を240℃、ワイパー回転数200rpmにして運転した。反応液を1時間当たり300gで供給した。この供給速度は、2.7×10−4g/秒/cmである。得られたラクトン系ポリエステルポリオールは環状ラクトン化合物の自己2量体が0.005%、環状ラクトン化合物0.01%、OH価56.2KOHmg/g、酸価0.2KOHmg/g、融点46〜49℃のワックス状であった。
【実施例4】
薄膜蒸発器に供給する速度を1時間あたり600gに変えた以外は実施例1と全く同様にしてポリエステルポリオールを得た。この速度は、5.3×10−4g/秒/cmである。このポリエステルポリオールは、無色ワックス状の常温固体であり、得られたラクトン系ポリエステルポリオールは環状ラクトン化合物の自己2量体が0.02%、環状ラクトン化合物0.02%、OH価56.2KOHmg/g、酸価0.2KOHmg/g、融点46〜49℃のワックス状であった。
比較例
実施例1、2及び3の第一反応工程で得られたラクトン系ポリエステルポリオールおよびその製造方法を比較例とする。なお、実施例2の場合は、原料自体が比較例に当たる。
【産業上の利用可能性】
本発明により、低分子量化合物の含有量の少ないラクトン系ポリエステルポリオールおよびその製造方法が提供され、これを使用することにより、品質の良いポリウレタン系樹脂を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ラクトン化合物の含有量が0.05重量%以下であることを特徴とするラクトン系ポリエステルポリオール。
【請求項2】
環状ラクトン化合物の自己2量体の含有量が0.05重量%以下であることを特徴とするラクトン系ポリエステルポリオール。
【請求項3】
環状ラクトン化合物の自己2量体の含有量が0.01重量%以下である請求項1記載のラクトン系ポリエステルポリオール。
【請求項4】
環状ラクトン化合物、低分子量ポリオールおよび/またはポリカルボン酸、及び、エステル化触媒を反応系に添加し、所定の反応率に達するまで環状ラクトン化合物の開環ラクトン付加反応あるいはエステル化反応を進行させる第1工程、次いで、薄膜蒸発器に反応液を連続的に供給して薄膜状として低分子量化合物を蒸発させて系外に除く第2工程からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラクトン系ポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項5】
該低分子量化合物が主として環状ラクトン化合物、該環状ラクトン化合物の自己2量体、および臭気物質のいずれかである請求項4に記載のラクトン系ポリエステルポリオールの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/087783
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504224(P2005−504224)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004436
【国際出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】