説明

ラジアルシールおよび製作方法

【課題】シール設計の限界を克服するPTFE封止要素を有するラジアルシャフトシールを開発する。
【解決手段】ばね部材のシール取付部分は、シャフトの対になる表面で係合されると、その封止表面の全体に沿ってフッ素共重合体シールの封止接触を与えるよう動作可能である。フッ素共重合体シールはPTFEから形成されてもよく、シールの封止性を増強するために封止表面に形成される溝を含んでもよい。エラストマケーシングはさらに、工程間試験または汚れ排除を容易にするために静的シールまたは一時的な動的シール、および、シールの使用中に環境汚染物によって引起される損傷からフッ素共重合体シールを保護するための1つ以上の追加の汚れ排除機構を組込んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
この発明は、概してラジアルシールに関する。より特定的には、この発明は、ラジアルシャフトシールなどの、エラストマケーシング層に直接接着される、向上したフッ素共重合体のラジアルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
車両エアコン用コンプレッサ、過給機、パワーステアリングポンプおよびエンジンクランクシャフトの主回転軸を封止する際に用いられるよう設計されるラジアルシャフトシールは、封止すべき流体または気体に面する第1の封止要素が天然または合成のゴムなどのエラストマであるよう設計された、複数の封止要素を利用することができる。エラストマは、一般に、シャフトに対するシールを与えるのに十分な可撓性および弾性を有する。一般に、より堅く、摩擦がより小さく、かつ化学的耐性のある第2の封止要素がエラストマシールの後ろかつエラストマシールと並行して位置決めされ、より堅い耐摩耗性シールの封止縁部と後ろのより弾性のエラストマ封止要素の封止縁部との間に軸方向のギャップが与えられる。第2の封止要素は、一般には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素共重合体、または、PTFEの機械特性、摩擦特性もしくは他の特性を制御するための1つ以上の公知の充填材を組込んだ充填PTFE材料から作られる。
【0003】
一般に当該技術では、このようなシール構造の要素が典型的には一緒に組立てられ、次にクリンプ加工プロセスを用いて単一のユニットとして合わせてクランプ締めされる。このようなプロセスでは、ゴム要素およびPTFE構成要素が2つの剛性ケーシング間でクリンプ加工されてシールを形成する。PTFE構成要素も典型的には、ゴム要素と剛性ケーシングの1つとの間でクリンプ加工される。シール全体を形成するために、接着されたりクランプ締めされたりする平らなPTFE座金または予備成形された円錐形の構造体を利用することが当該技術で公知である。
【0004】
他のラジアルシャフトシール設計も提案されており、これらはエラストマおよびPTFE構成要素を剛性ケーシングに対してクリンプ加工またはクランプ締めすることを利用せず、エラストマ部材をPTFE封止要素および金属ケーシングの両方に成型することによってPTFE封止要素が取付けられる、金属ケーシングを利用するものである。このような設計ではPTFE要素は、エラストマ封止要素の負荷を支持し制御するための軸受部材としてのみ用いられてもよく、その結果、封止機能はエラストマ封止要素によってのみ実行される。このようなシール構成の例は、キャサー(Cather)への米国特許番号第4,274,641号に示される。この構成では、PTFE軸受部材およびエラストマシールリップは並行して接着され、両方ともシャフト表面に接している。同様に、ジョンストン(Johnston)らへの米国特許番号第6,428,013号では、PTFE封止要素およびエラストマ要素の両方が封止がもたらされるシャフト表面に接しているような、いくつかのシール設計が開示される。
【0005】
エラストマ封止要素を組込まず、PTFE封止要素のみに依存して流体シールを与えるさらに他のシール設計も提案されてきた。1つのこのようなラジアルシャフトシール設計は、ブッシャー(Bucher)らへの米国特許番号第4,650,196号に記載される。ブッシャーらの特許では、PTFE要素は、その長さの一部にわたってエラストマケーシングに接着され、それが次に剛性ケーシングに接着される。同様に、ジョンストンらの特許
では、PTFE封止要素を主要な封止要素として組込んだいくつかのシール設計が開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような関連技術のラジアルシールシャフト設計の1つの制限は、PTFE封止要素がその全長にわたって封止しないことである。たとえば、ジョンストンらの設計では、PTFE封止要素はその全長に沿ってシャフトに接していない。これはブッシャーらのPTFE部材にもあてはまり、利用可能なPTFEシール材を最適使用しないこととなる。さらに、これらのラジアルシール設計は、PTFEの接触域が限られているので、PTFE封止要素自体によってシャフトもしくは他の封止表面に対して、またはエラストマケーシングおよびPTFE封止要素の組合せによってシャフトもしくは他の封止表面に対して加えられる、封止圧力に対する制御が限定される。上述の制限に加えて、関連技術のラジアルシャフトシール設計では、シールをシャフトまたは封止すべき他の部材に設置することに関してさらに制限があることがわかっている。PTFEリップが主要なシールリップである公知の設計の多くは、ラジアルシールリップの自由端を封止領域の流体側、通常は油側に有する。これらの構成は、PTFE材料の表面を傷つけたりそうでなければ破損したりしてシールの機能を破壊することを回避するために、このようなシールをシャフトに組立てるための特殊な取付具および設置工具と特殊な組立て上の注意または方法とを必要とし、環状シャフトなどに設置するのが困難であることが知られている。PTFEなどのフッ素共重合体シール材は、封止表面への傷や他の表面損傷に非常に弱いことが知られており、有効に封止する能力を弱めかねない。このようなシールを設置する能力を増強し、設置中の傷、逆向きへの折曲げ、または湾曲に対する弱さを減じるために、封止要素の自由端が設置の油側の反対を向いた、PTFE封止要素の逆レイダウン構成がジョンストンらの特許などにおいて提案されてきた。しかしながら、このようなシール構成は依然として上述のものなどの他の制限を受ける考えられている。
【0007】
したがって、関連技術のシール設計の限界を克服するPTFE封止要素を有するラジアルシャフトシールを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
この発明は、ラジアルシャフトシールなどのラジアルシールであって、フッ素共重合体封止要素を有し、フッ素共重合体封止要素はエラストマケーシングに接着され、それが次に剛性の金属ケーシングなどの剛性ケーシングに接着されている。この発明のラジアルシールはさらに、シールの設置、試験(すなわち空気漏れ試験)または動作をさらに増強し得る、汚れ排除リップおよび静的な空気シールなどエラストマケーシングに成型された付加的な機構を組込んでいてもよい。
【0009】
1つの局面では、この発明は剛性ケーシングを含むラジアルシールである。シールはさらに、剛性ケーシング内部に位置決めされて剛性ケーシングに接着されたエラストマケーシングを含む。エラストマケーシングは、剛性ケーシングから内径方向に延在し、かつ剛性ケーシングに沿って軸方向に延在する軸方向のばね部材を有する。軸方向のばね部材は、エラストマケーシングから延在するネック部分、およびネック部分に取付けられて接着表面を有するシール取付部分を含む。シールはさらに、接着表面および封止表面を有する予圧されたフッ素共重合体シールを含む。接着剤は、予圧されたフッ素共重合体シールの接着表面をシール取付部分の接着表面に接合する。ばね部材のシール取付部分は、シャフトの対になる表面で係合されると、その封止表面全体に沿ったフッ素共重合体シールの接触封止を与えるように動作可能である。
【0010】
この発明の第2の局面では、ネック部分は、ほぼ線形のプロファイル、曲線から成るプロファイル、ベローズ状プロファイル、またはいくつかの他の公知の形状またはプロファイルのいずれかを含む、いくつかの形状またはプロファイルのうちのいずれを有していてもよい。これにより、エラストマケーシングのネック部および取付部分を含む軸方向のばね部材のばね特性および他の特性(すなわち、力、可撓性および従動性)を調整できるという利点がもたらされる。
【0011】
この発明の第3の局面では、軸方向のばね部材の取付部分の厚さは、フッ素共重合体シール要素に概して一定の封止圧力を加えるために概して軸方向および径方向に一定であってもよく、または、フッ素共重合体シール要素の軸長に沿った変動する封止圧力を与えるために軸方向に可変であってもよい。
【0012】
この発明の第4の局面では、フッ素共重合体封止要素は、フッ素共重合体要素の接着表面に、ねじ切られたもしくは他の連続した溝パターン、または外周溝もしくはチャネルもしくは他の不連続なパターン、または上記の組合せの1つ以上のさまざまな封止機構を任意に組込んでもよい。これらの溝パターンは、フッ素共重合体要素の長さに沿って一定の深さを有しても可変深さを有してもよい。溝はさらに、突起したリブを交互に構成してもよい。これらの溝は、たとえば封止表面の回転と連動して流体の流体力学的なポンプ作用を与えることなどのラジアルシールの作用によって封止すべき、油などの流体の保持を増強する利点を備える。
【0013】
この発明の第5の局面では、ラジアルシールは、任意に、ラジアルシールの空気側のエラストマケーシングに空気リップまたはシールを含んでもよい。このシールは好ましくは静的シールであるが、ラジアルシールを組込んだ装置の製造中および/または使用中の初期試験もしくは工程間試験などの限られた期間の過渡的な、もしくは一時的な動的シールのコンテキストでも用いられ得る。内燃機関のコンテキストでは、エンジン製造および組立工程中のエンジンの工程間圧力試験を容易にするためにラジアルシールによって封止すべきシャフト表面にも一時的シールまたは工程間シールを与える必要なしに、この工程間圧力試験の利点をもたらし、エンジンの受入れまたは拒絶を容易にする。
【0014】
この発明の第6の局面では、ラジアルシールは、フッ素共重合体封止要素が設置される装置の使用中にフッ素共重合体封止要素から汚れおよび他の汚染物質を除去することを有利に促進するために、シールの空気側のエラストマケーシングに1つ以上の組込型の汚れ排除リップを任意に組込んでもいてもよい。
【0015】
この発明の第7の局面では、予圧されたフッ素共重合体要素は、一般に、フッ素共重合体要素の長さに沿って長手方向に大きさが異なる応力プロファイルを有する。有利には、この応力プロファイルは、PTFE要素を鋳型におけるその最終位置まで引伸ばした後にこの要素が受ける予圧の量と合わせて、要素の厚さおよび/または厚さプロファイルを制御することにより調整され得る。さらに、フッ素共重合体要素を引伸ばす方法により、伸ばされたシールがラジアルシールの他の要素とともにどのように鋳型に搭載されるかに基いて、要素が、一方が他方の逆である2つの配向のうちの1つに応力プロファイルで配向されることが可能になる。
【0016】
この発明の第8の局面では、この発明のラジアルシールは、標準的構成または逆レイダウン構成のいずれかに構成され得る。いずれの構成においても、この発明のラジアルシールは、封止すべきシャフトまたは他の表面にシールを設置することに関連付けられる潜在的なシール損傷問題によっては、より影響を受けにくいと考えられる。実際、この発明のラジアルシールの構成は、基本的に2つの自由端を有するので、関連技術のシール設計に比べて、シールがまず自由端から設置されるか否かが特徴とはならないという理由で、従
来の設置構成シールと逆レイダウン設置構成シールとの相違を減じる。この発明のラジアルシールの構成はむしろ双方向レイダウン構成を示す。さらに、この特徴は、シールの設置端部に近い方であっても遠い方であっても、最高レベルの予圧と、したがって最大封止力とが封止すべき表面に加えられるように、フッ素共重合体要素において予圧レベルを配向する能力と組合わせることができる。たとえば、フッ素共重合体要素は、シールの設置を促進するために、封止表面に加えられる封止力が設置端部に近付くとより小さくなるように予圧レベルのプロファイルが配向されて、シールに位置してもよい。
【0017】
この発明の第9の局面では、ラジアルシャフトシールを製作する新しい方法であって、内径および外径を有する予圧されたフッ素共重合体シールを形成するために、心棒装置を利用して、少なくとも内径について、内径および外径を有するフッ素共重合体シールプリフォームを引伸ばすステップと、接着表面および封止表面を有する予圧されたフッ素共重合体シールを鋳型キャビティを有する鋳型に配置するステップとを含み、接着表面は鋳型キャビティに露出され、さらに、剛性ケーシングを鋳型キャビティ内で予圧されたフッ素共重合体シールに近接して配置するステップと、前記剛性ケーシングの内部に位置決めされて剛性ケーシングに接着される、剛性ケーシングから内径方向に延在し、かつ剛性ケーシングに沿って軸方向に延在する軸方向のばね部材を有するエラストマケーシングを成型するために、エラストマ材料を鋳型キャビティに導入するステップとを含み、軸方向のばね部材は、エラストマケーシングから延在するネック部分と、ネック部分に取付けられて接着表面を有するシール取付部分とを含み、ネック部分は予圧されたフッ素共重合体シールの接着表面をシール取付部分の接着表面に接合する接着剤を有し、シール取付部分は、シャフトの対になる表面で係合されると封止表面全体に沿ってフッ素共重合体シールの封止接触を与えるよう動作可能である。
【0018】
この発明のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付された図面に関して考慮されると、より容易に認識されるようになる。同様の要素は同様の名称を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のラジアルシャフトシールの第1の実施例の断面図である。
【図2】この発明のラジアルシャフトシールの第2の実施例の断面図である。
【図3】この発明のラジアルシャフトシールの第3の実施例の断面図である。
【図4】この発明のラジアルシャフトシールの第4の実施例の断面図である。
【図5】この発明のラジアルシャフトシールの第5の実施例の断面図である。
【図6】この発明のラジアルシャフトシールの第6の実施例の断面図である。
【図7】ラジアルシャフトと封止接触する、この発明のラジアルシャフトシールの断面図である。
【図8】フッ素共重合体シールをエラストマケーシングに接着する前にフッ素共重合体シールを予圧するために用いられる鋳型核に搭載された心棒と、フッ素共重合体シールを心棒の上、次いで鋳型核に対して引伸ばすための設置工具との断面図である。
【図9A】設置工具の動作によってフッ素共重合体シールを心棒の上に引伸ばす際の図8の心棒の領域9の拡大した断面図であって、鋳型内の第1のシール配向を例示する図である。
【図9B】設置工具の動作によってフッ素共重合体シールを心棒の上に引伸ばす際の図8の心棒の領域9の拡大した断面図であって、鋳型内の第2のシール配向を例示する図である。
【図10】この発明のラジアルシャフトシールを形成し成型するために利用される鋳型内で、鋳型核において剛性ケーシングに隣接して位置決めされたフッ素共重合体シールの断面図である。
【図11】鋳型をエラストマ材料で満たす前の図10の領域11の拡大した断面図である。
【図12】鋳型をエラストマ材料で満たした後の図10の鋳型の領域11の拡大した断面図である。
【図13】成型されたシールのトリミング前(想像線)および後のこの発明の成型されたシールの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましい実施例の詳細な説明
この発明は、回転するラジアルシールシャフトについて流体の通過を封止するためのラジアルシャフトシールである。このラジアルシャフトシールは、主要な封止部材として、エラストマケーシングに接着され、それが次に剛性ケーシングに接着される、予圧されたフッ素共重合体シールを有する。使用において、予圧されたフッ素共重合体シールは、ラジアルシールシャフトの封止表面と流体気密で封止接触する。ラジアルシャフトシールは、流体の通過を封止するための多くのラジアル回転シャフトのシール用途、特にクランクシャフトシールを含むいくつかの自動車用途に適する。示されないが、この発明は、ユニット化する摩耗スリーブ要素が環状シャフトに配置される、摩耗スリーブ要素を備えたシールにも等しく適用されることも理解される。
【0021】
図1−図6は、この発明に従って成型されトリミングされる、ラジアルシャフトシール10のさまざまな実施例を示す。すなわち、シール10が、射出成形プレスなどの適切な装置において形成され、完成または部分的に完成したシールをもたらすように、成形プレスから取除かれてトリミングされる。シール10は、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、もしくはこれらのプロセスの組合せ、または、予圧されたフッ素共重合体シールを中間エラストマ部材もしくはケーシングを用いて剛性のキャリアに接着する、シール10を形成するための同様のプロセスを含む、いくつかの公知の方法のうちいずれで作られてもよい。
【0022】
図1−図6では、ラジアルシャフトシール10は、外表面14と内表面16とを有する
剛性ケーシング12を含む。シール10はまた、好ましくは少なくとも部分的に内表面16内で剛性ケーシングに位置決めされ、好ましくは少なくとも部分的に内表面16で剛性ケーシング12に接着される、エラストマケーシング18を含む。エラストマケーシング18はまた、外表面14上に部分的に配置され、外表面14に接着されてもよい。エラストマケーシング18はさらに、本願明細書にさらに記載されるように、フッ素共重合体シール要素が動的な封止要素として働くシャフトを収容する装置に対し、封止すべき流体に静的シールを与えるために利用されてもよい。エラストマケーシング18は、ばね部材20を有する。ばね部材20は剛性ケーシング12からから軸方向に延在しており、そして内径方向に延在している。ばね部材20は、概して、剛性ケーシング12の内表面16に沿って軸方向に延在しており、そして内表面16から離れるように内径方向に延在している。しかしながら、剛性ケーシング12の形状および軸方向のばね部材20の配向および形状に依存して、たとえば、剛性ケーシング12が内径方向に湾曲するJ形状を有する場合などは、軸方向のばね部材20は、外表面14から外径方向に延在し、かつ軸方向に沿って延在してもよい。軸方向のばね部材20は、一方端24および対向端26においてエラストマケーシング18から接着表面30を有するシール取付部分28まで延在するネック部分22を有する。シール取付部分28は、概して軸方向のばね部材20のネック部分22以外の残部を含む。シール10はさらに、外部すなわち接着表面34および内部すなわち封止表面36を有する、予圧された、滑らかで摩擦係数が低いフッ素共重合体シール32をも含む。軸方向のばね部材20は、ラジアルシール10の長手軸40に沿って軸方向に延在し、封止される表面に対してばね部材20およびフッ素共重合体シールを付勢しようとするばね力を概して及ぼす。径方向のネック部分22は、いくつかのネック部形状および断面プロファイル、たとえば円錐台形の径方向要素を形成する概して線形または曲線から成るプロファイル(図1および図2)、回旋状の円錐台形の径方向要素を形成する回旋状のプロファイル(図3および図4)、収束するベローズ形状の径方向要素を形成する起伏のあるまたは波状のプロファイル(図4および図5)など、ならびに他の多くのネック部形状および断面プロファイルのいずれを有していてもよい。ネック部分22により、ラジアルシール10が、シールの長手軸およびシャフトの長手軸に対する、またはシャフトの回転時のシャフトの動的な偏心もしくは振れについての、僅かな誤整列に対応することが可能になる。これは、先行技術のシール設計に対してこの発明の著しい利点である。軸方向のばね部材20には、ネック部分22の対向端26において、軸方向に延在する取付部分28が取付けられる。取付部分28は、フッ素共重合体シール32の全長に沿って延在する。図3および図4において、取付部分28の断面厚さ(t)は、ネック部に接合するところ以外は、その長さに沿って概して一定として示される。これは、ラジアルシールがシャフトに設置されるとき、取付部分28がフッ素共重合体シール32に概して一定の封止圧力を与えることを可能にする。シール取付部分28の厚さが、予圧されたフッ素共重合体シール32の厚さの2分の1を越えることが好ましい。ラジアルシール10の多くの用途について、約0.010−0.060インチの範囲の厚さが取付部分28に好適であると考えられる。しかしながら、図2、図5および図6に示されるように、取付部分28の厚さはその長さに沿って変動してもよく、その結果、ばね部材20の一部として取付部分28が与える封止圧力は、プロファイル厚さに従ってその長さに沿って同様に変動する。厚さはいかなる好適なプロファイルに従って変動してもよい。図2、図5および図6では、プロファイル厚さは、最大厚さt2から最小厚さtlまで直線的に変動する。厚さプロファイルは、示されるように直線的に変動してもよく、またはインボリュート状でも、回旋状でも、他の曲線から成るプロファイルであってもよい。断面厚さプロファイルは、当然、ばね部材20のばね特性を変え、シール10および予圧されたフッ素共重合体シール32となるばね圧縮力が、本願明細書にさらに記載されるように、干渉状態でシャフト38にわたって設置される。
【0023】
予圧されたフッ素共重合体シール32は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から好ましくは形成される。当該技術において周知のように、フッ素共重合体シール32に
用いられるPTFEなどのフッ素共重合体は、フッ素共重合体の機械特性、摩擦特性または他の特性を修正するため用いられるさらにいくつかの充填材または他の材料のうちいずれかを組込んでいてもよい。フッ素共重合体シール32の予圧された状態は、好ましくはPTFE座金または中空円板であるフッ素共重合体プリフォーム72を塑性変形し、その結果の残余の内部応力レベルをフッ素共重合体シール32における予圧として生成するのに十分に、プリフォーム72を引伸ばすことによって生成される(図8を参照)。シールの長さに沿った予圧および予圧プロファイルの大きさは、本願明細書にさらに記載されるように影響を受けて変動してもよい。シール10はさらに、予圧された、摩擦係数の低いフッ素共重合体シール32の外部表面すなわち接着表面34をシール取付部分28の接着表面30に接合する接着インターフェース33を含む。シール取付部分28は、対になるシャフト38または他のシールがもたらされる表面で係合されると、予圧されたポリテトラフルオロエチレンシールなどの、予圧された、滑らかで、摩擦係数が低いフッ素共重合体シール32の封止表面36の全体に沿って封止接触を与えるように動作可能である。フッ素共重合体シール32は、連続的なスパイラル、螺旋形、またはねじ切られた溝などの溝60を封止表面36に組込んでもよく、溝はシールの流体または油側に向って傾いているのが好ましい。このような溝または溝パターンは周知であり、ラジアルシール10および封止表面の相対的な回転に応じて流体力学的なポンプ作用をもたらす。溝60(または複数の溝60)の深さはその長さに沿って一定でも、またはフッ素共重合体シールの一方端から他方端に向かって深さが変動してもよい。連続的な溝60はさらに、封止すべき流体を止めるか蓄積するためにラジアルシール10の動作中に用いられる、周知の1つ以上の不連続な外周溝またはチャネル(示されない)を単独で、または連続的な溝とともに含んでもよい。溝60は、連続的でも不連続でもその組合せでも、コイニングまたは機械加工などの周知の成形加工方法を用いて形成され得る。溝60は、封止表面36上に形成される突起したリブを交互に構成してもよい。フッ素共重合体シール32は、予圧されたフッ素共重合体シール32の外表面上にエラストマの射出成形によってもたらされる接着などの従来の手段によって、接着インターフェース33において、エラストマケーシング18の取付部分28の接着表面30に化学的に直接に接着されるのが好ましい。エラストマケーシングを成型し、フッ素共重合体シール32と取付部分28との化学的接着をもたらすために用いられる方法は周知である。
【0024】
剛性ケーシング12、エラストマケーシング18および予圧されたフッ素共重合体シール32は、ラジアルシール10の他の要素と同様に、シール10の長手軸40のまわりに径方向に配向される。ラジアルシール10がシャフト38に設置されるとき、ラジアルシール10の長手軸40はシャフト38の長手軸とも一致する。しかしながら、製造許容誤差により、僅かな誤整列、軸のずれ、非平行またはその各々の組合せのいずれかが生じることが知られている。したがって、ラジアルシール10は、封止表面36の全長に沿った締りばめがシャフト38のシャフト封止表面46と予圧されたフッ素共重合体シール32の封止表面36との間に存在するように、シャフト38に対して選択され、寸法決めされるのが望ましい。これを達成するために、シャフト38は、典型的には面取り42または斜面もしくは同様の導入端部48を自由端または設置端部に組込み、シャフト38へのラジアルシール10の係合および設置を促進する。面取り42の段階的な半径は一般に、導入縁部48およびシャフト38の自由端または設置端部の面取り42の部分がラジアルシール10の設置端部44の半径に対して干渉しないように選択される一方で、面取り42の対向端50での半径はシャフト38およびラジアルシール10に対して上述の干渉を呈するように選択される。面取り44の長さに沿ったどこかに干渉が生じるように一般に設計される。干渉の程度は、PTFEなどのフッ素共重合体シール要素を組込んだシールのシール設計の技術において周知であるように、フッ素共重合体シール32が封止表面36においてシャフト38の封止表面46に対して所望の封止圧力を加えるように選択される。図1−図6に示されるように、ラジアルシール10は、ラジアルシール10の矢印52の方向への動きか、または逆にシャフト38の反対方向への動きによって、接着表面36
全体が封止表面46と封止接触するようにシャフト38に設置される。フッ素共重合体封止要素32の封止表面36全体がシャフト38の封止表面46に沿って全面接触していることはこの発明の重要な特徴であり、関連技術のシール設計に対する著しく有利な向上を表す。図1に示されたこの発明の実施例は従来のラジアルシール10の配向を表し、シールの自由端および設置端部44は、シールの大気側から反対向きであって、シールの油側、またはより一般的には流体側200に最も接近して配向される。ラジアルシール10がシャフト38に組立てられると、200として示される領域は、囲まれた領域または封止された領域であって油側と呼ばれる一方、100として示される領域は、封止された領域の外部にあって空気側と呼ばれる。
【0025】
剛性ケーシング12は、ラジアルシール10についての全体的な用途要件および他のシール要素の所望の構成に依存して、いかなる好適な形状であってもよく、そのいくつかが図1−図6に示される。剛性ケーシング12はいかなる適切な剛性の構造材料からであってもよい。剛性ケーシング12は好ましくは金属ケーシングで、鋼などのいかなる適切な金属から形成されていてもよい。剛性ケーシング12は、適切に剛性のエンジニアリングプラスティックまたはプラスチック複合物から形成されていてもよい。剛性ケース12は一般に軸方向ケース部分13および径方向ケース部分15を有する。エラストマケーシングは、軸方向のケーシング部分13および径方向のケーシング部分15のいずれかまたは両方に接着されてもよい。
【0026】
エラストマケーシング18は、事実上、フルオロエラストマ、ポリアクリレート、ニトリル、水素化ニトリルもしくはシリコーンなどの熱硬化性ポリマエラストマ、または同様の熱硬化性エラストマ、または好適な熱可塑性エラストマを含むいかなるエラストマであってもよい。エラストマケーシング18のエラストマ材料は、シールの動作温度、封止すべき流体に対する耐化学性または適合性、剛性ケーシング18およびフッ素共重合体シール要素32の材料との接着性および他の適合性などの用途要件、ならびに他の要因に関連して一般に選択される。エラストマケーシング18はケーシングの外表面14または内表面16の少なくとも1つに接着され、取付けられてもよく、シールの設計に依存して両方に接着されてもよい。エラストマケーシング18の剛性ケーシング12における位置も、上述のように、および当該技術において一般に周知のように、エラストマケーシング18に関連付けられた静的な封止要件に関連して決定される。図1−図6では、ラジアルシール10の静的な封止部分54は、エラストマケーシング18の一部分を剛性ケーシング12の外表面14で接着することにより形成される。図2を参照して、エラストマケーシング18は、フッ素共重合体シール32に関連付けられる領域から汚れまたは他の汚染物を排除するための1つ以上のエラストマ性排除リップ58、および1つ以上のエラストマ静的シールリップ56を含む、ラジアルシール10の他の機構をも任意に組込んでもよい。エラストマシールリップ56は、ラジアルシール10および予圧されたフッ素共重合体シール32の空気側100に位置し、シャフト38に対して封止圧力を与えないか最小限の封止圧力を与えるよう、予圧されたフッ素共重合体の動的な封止作用に干渉しないように、特に設計されて寸法決めされるのが好ましい。シールリップ56は、ラジアルシール10を組込んだ内燃機関などの装置の組立て中に、プロセス中の加圧および空気漏れ(すなわち油側200からの空気漏れ)試験を容易にするための静的シールとして一般に利用される。シールリップ56は、シャフトに接しているので一時的な動的シールとしても作用し得るが、シールの空気側に位置しており油などの潤滑用流体に典型的にはさらされないので、装置の使用中にシャフトの回転によって早くすり減ってしまう。シールリップ56はまた、予圧されたシール32に近接するシャフト38の部分から外部源からの汚れを排除するよう動作可能な、一次汚れ排除リップ58としても機能する。シールリップ56は、ラジアルシールが空気側100から加圧される場合などの、装置に関連付けられた圧力試験に対する応答を除いては、シャフトに封止圧力をかけないように設計されることもできる。排除リップ58は、予圧されたフッ素共重合体シール32から汚れなどの汚染物質
を排除するよう動作可能であるような形状で位置決めされる。図2および図13に示されるように、付加的な排除リップが組込まれてもよい。予圧されたフッ素共重合体シール32の動的な封止特性に有害な影響を及ぼすことなくシールリップ56および排除リップ58を組込む能力は、この発明の別の重要な利点である。
【0027】
図3は、この発明の別の実施例を示す。図3を参照して、ラジアルシール10は、回旋状のネック部22を備え、フッ素共重合体シール32の自由端がラジアルシール10の空気側100により接近し、面していることにおいて、逆レイダウン構成である。
【0028】
図4は、この発明のさらに別の実施例を示す。図4のラジアルシールは、図4のラジアルシール10が、上述のようにシール10の空気側100に静的な空気シールを与えるためのエラストマシールリップ56をも含む以外は、図3のラジアルシールと同一である。静的シール56は汚れ排除リップ58としても機能する。図4のシールは、取付部分28の自由端に取付けられる1つまたはそれ以上の(示されない)追加の排除リップ58をも任意に含んでもよい。シールリップ56および付加的な排除リップ58は、個別にまたは互いに組合わせて用いられてもよい。
【0029】
図5は、この発明のさらに別の実施例を示す。図5を参照して、ラジアルシール10は、ベローズ形のネック部22を備え、フッ素共重合体シール32の自由端がラジアルシール10の油側により接近し、面していることにおいて、従来のレイダウン構成である。この実施例はさらに、取付部分28の長さに沿った可変厚さをも示す。
【0030】
図6は、この発明のさらに別の実施例を示す。図6のラジアルシールは、図6のラジアルシール10が、上述のようなシールの空気側に静的シールを与えるためのエラストマシールリップ56をも含む以外は、図5のラジアルシールと同一である。静的シール56は汚れ排除リップ58としても機能する。このシール構成はさらに上述のような1つ以上の追加の排除リップ58(示されない)を組込んでもよい。
【0031】
図7は、ラジアルシャフト38上に設置されたこの発明のラジアルシール10を示す。封止表面36の全長は、油側200の油と封止接触し、油側200の油が空気側100へと漏れることを封止するよう動作可能である。スパイラル溝60は、ラジアルシール10およびシャフト38の相対的な回転に応答して自由端44および空気側100に向かって移動し、また油側100に向かって戻りかねない油を、ポンプ送りするよう動作可能である。
【0032】
図8−図12にも、ラジアルシャフトシール10の製作または製造方法300がこの発明の局面として開示され、この方法は、内径および外径を有する予圧されたフッ素共重合体シール32を形成するために、心棒装置64を利用して、内径62および外径74を有するフッ素共重合体シールプリフォーム72を少なくとも内径62について引伸ばすステップ310と、接着表面34および封止表面36を有する予圧されたフッ素共重合体シール32を鋳型キャビティ70を有する鋳型66に配置するステップ320とを含み、接着表面34は鋳型キャビティ70に露出され、さらに、剛性ケーシング12を鋳型キャビティ70内の予圧されたフッ素共重合体シール32に近接して配置するステップ330と、前記剛性ケーシング12内部に位置決めされ、前記剛性ケーシング12に接着され、かつ剛性ケーシング12から内径方向に延在し、かつ剛性ケーシング12に沿って軸方向に延在する軸方向のばね部材20を有するエラストマケーシング18を成型するために、エラストマ材料を鋳型キャビティ70へ導入するステップ340とを含み、軸方向のばね部材20は、エラストマケーシング18から延在するネック部と、ネック部に取付けられて接着表面30を有するシール取付部28とを含み、予圧されたフッ素共重合体シール32の接着表面34をシール取付部28の接着表面30に接合する接着剤33を有し、シール取
付部分28は、シャフト38の対になる表面46で係合されると、封止表面36の全体に沿って、予圧されたフッ素共重合体シール32の封止接触を与えるよう動作可能である。この方法300は、2003年2月13日付けの同時係属する米国特許出願連続番号第10/366,253号(事件整理番号71024−211)に記載されるような予圧されたフッ素共重合体シール32の形成方法と同様の方法を用い、引用によってその全体が本願明細書に援用される。この係属中の出願のシールは、これらのシールのエラストマ要素が動的ラジアルシールの一部を含むことと、フッ素共重合体封止要素はフッ素共重合体要素の全長に沿っては封止しないこととにおいてこの発明のシールとは異なるが、フッ素共重合体要素を引伸ばし、予圧する方法は、方法300の局面との類似点を有する。
【0033】
予圧されたフッ素共重合体シール32は、平らな円筒状フッ素共重合体座金72などのフッ素共重合体シールプリフォーム72として、当初は応力を受けず、引伸ばされない状態である。座金は、好ましくは約0.010から0.060インチの範囲の厚さを有する。外径74および内径62は、その差異の半分がラジアルシール10の第2の表面または封止表面36の長さを決定するように選択される。第2の表面36はいかなる適切な長さであってもよいが、典型的には約0.15から0.25インチの範囲である。図8、図9Aおよび図9Bを参照して、平らなフッ素共重合体座金72が心棒の上端部76上に配置される。心棒64の上端部76の直径は、フッ素共重合体座金72の内径62よりも小さい。拡張可能なプッシャまたは設置工具78は、複数の個別の拡張可能なフィンガ80などの拡張可能な下部を有するプランジャの形をしている。拡張可能なフィンガ80は、各々、設置工具が平座金72および心棒64と接触するように矢印84が示す方向に動かされると平座金72を係合するために用いられる、接触面82を有する。図9Aおよび図9Bに示されるように、拡張可能なプッシャまたは設置工具78のフィンガ80が心棒64のテーパ状の外表面86に沿って動くと、拡張可能なフィンガ80の接触面82はフッ素共重合体座金72の上部表面88を係合し、それが心棒64の外表面86を滑り落ちるようにする。心棒64は1つ以上のテーパを有してもよく、心棒64の下部表面87の直径が少なくともフッ素共重合体座金の内径62よりも大きいように構築される。テーパは線形のプロファイルを有するように示されるが、回旋状もしくはインボリュート状のプロファイルまたは他の、プリフォーム72を予圧するのに適したテーパ状プロファイルであってもよい。プリフォーム72の大きさは、心棒64および鋳型66のポスト表面など関連付けられた部分の大きさと合わせて、フッ素共重合体シールプリフォーム72に行われる引伸ばしの量および予圧されたフッ素共重合体シール32に与えられる予圧の量を決定する。座金72と心棒64は、心棒64の下部表面87の直径がフッ素共重合体シールプリフォーム72の外径よりも大きいように選択される。したがって、座金72は、内径62および外径74の両方で予圧されることが確実になる。座金72が心棒64の外表面86を滑り落ちるので、塑性的に引伸ばされるか変形され、それによって、座金が予圧されるようになる。フッ素共重合体座金72の内径62に隣接する座金72の部分が、外径74に隣接する部分よりも引伸ばされる程度が大きいので、予圧されたフッ素共重合体シール32の長さに沿って応力レベルが変動する。座金72の内径62は、好ましくはフッ素共重合体シール32の内径62を拡張して第1の端部90を予圧するよう心棒64に沿ってプランジャ78を下げることにより、図9Aまたは図9Bに示される円錐形状に引伸ばされるのが好ましい。外径74も心棒に沿って下方に滑るにつれて拡張し、それによりフッ素共重合体シール32の第2の端部92を予圧する。図9Aに示される例において、第1の端部90の内部応力量は、より多くの変形を経るので、第2の端部92の内部応力量よりも大きい。引伸ばすステップ310において、フッ素共重合体座金72は予圧されたシール32を形成するよう引伸ばされる。座金72は、シール32において所望の予圧量を生じるために、内径の本来の大きさの約5%から180%で、より好ましくは内径の本来の大きさの約5%から120%の範囲で引伸ばされる。予圧されたフッ素共重合体シール32は、エラストマ材料で成型する以前に引伸ばされ、予圧された状態で維持され、概して、さまざまな形式のアニールまたは他の応力除去方法などの内部応力を除去するいかな
る工程も受けない。
【0034】
次いで、方法300は、予圧されたフッ素共重合体シール32を鋳型66のポスト表面68を係合するように鋳型66に配置するステップ320に進む。図9Aにおいて、予圧されたフッ素共重合体シール32の第2の端部92は、第1の端部90および予圧されたシール32が示された配向に納まる前に、第1のショルダ94を通過する。代替的に、図9Bでは、第1の端部90が第1のショルダ94の上に押出されている間に第1のショルダをフィンガの方へ上向きに巻き上げることによって第2の端部92が第1のショルダ94を通過するのを妨げるなど、シールが第1のショルダ94を滑る間に注意深くシールを操作することにより、すでに予圧されたフッ素共重合体シール32の第1の端部90は、第2の端部92および予圧されたフッ素共重合体シール32が示された交互の配向になる前に、第1のショルダ94を通過する。心棒64および第1のショルダ94は、第1の端部90および第2の端部92の配向を容易にするよう構成され得る。この配向変更能力は、予圧されたシールがより高いレベルの予圧で同じ鋳型を用いて反対の配向に配向されることが可能になるので特に有利であり、その結果、予圧されたフッ素共重合体シール32の少なくとも2つの実施例または構成が、鋳型を変えることなく成型されることが可能となる。
【0035】
予圧されたフッ素共重合体シールを配置するステップ320に続いて、シール32は鋳型66に位置し、ポスト表面68に対して係合され、かつ好ましくは第2のショルダ96に置かれる。心棒64は鋳型66の中央要素98の部分(示されない)、または図8に示されるような個別の(かつ取外し可能な)要素を含んでもよいことに注意されたい。ポスト表面68は、僅かに下向きに広がるテーパ部を有するよう図8、図9Aおよび図9Bに示され、その結果、ポスト表面は第1の端部直径69および第2の端部直径71を有し、第2の端部直径は第1の端部直径より大きい。代替的に、ポスト表面は上向きに広がるテーパ(示されない)を有することができ、その結果、第1の端部直径69は第2の端部直径71の下に位置し、そこで第2の端部直径は依然第1の端部直径よりも大きい。予圧されたシール32は上述の構成のいずれかのこのようなポスト表面に配置され得る。テーパ状の場合、ポスト表面68は図9Aおよび図9Bに示される線形のテーパを有することができ、またはインボリュートもしくは回旋状のテーパを有し得ると考えられる。代替的に、ポスト表面は、鋳型66の長手軸67におよそ平行な直線のプロファイル(示されない)、または、凹面、凸面もしくは他の湾曲したプロファイル、またはベローズ形状もしくは類似の複雑なプロファイルなどの他の複雑なプロファイルを有し得る。
【0036】
方法300は、引伸ばされたフッ素共重合体シールが鋳型内に配置される前後いずれかに、鋳型66内に剛性ケーシング12を配置するステップ330を含む。対になる鋳型要素(たとえば要素98、102、104、106、108など)の1つ以上は、好ましくは、特に鋳型要素98、102、104、106および108が鋳型キャビティ70を形成する位置に動かされる間に剛性ケーシング12を鋳型66に配置する、ショルダ110などの1つ以上の配置機構を有する。
【0037】
図12に示されるように、方法300は、剛性ケーシング12が鋳型66内に配置された後、次にいくつかの公知の成形技術のうちの1つを用いて、エラストマ材料を鋳型キャビティ70へ導入するステップ340に進む。エラストマ材料は、剛性ケーシング、予圧されたフッ素共重合体シール32、およびラジアルシール10の意図される用途環境との適合性についての公知の基準を用いて選択される。適切なエラストマ材料が鋳型のキャビティ70に導入され、高温および/または高圧で典型的には硬化されることができ、この発明のエラストマケーシング18および一体型ラジアルシール10を形成する。成型後のさらなる硬化後動作は任意である。
【0038】
フッ素共重合体シール32を、予圧され、または引伸ばされた状態に維持することによって、典型的にはクリンプ加工されたシール設計に用いられる第2の剛性ケーシングの必要性と同様、先行技術の設計よりも少ないフッ素共重合体を利用するラジアルシャフトシールを与えることとなり、より著しい節約ができる。
【0039】
図13を参照して、この発明のラジアルシール10’が成型されたままの状態で現れ得るような想像線で示される。典型的には鋳型66からの抽出に続いて、ラジアルシールは、鋳型のばりを取除き、かつ図13に例として示されるような完成したラジアルシール10の形状を形成するために、トリミングされる。トリミングは、成型されたままのシール10’からばりを削除したりトリミングしたりするための工具を用いて、シールをばりから切断、切削または他の方法で削除することによって実行され得る。代替的に、成型されたままのシール10’は、切断用または他の削除用工具を必要とすることなくばりを引きはがしたり破ったりすることによりばりを除去するよう動作可能な薄くなった部分(示されない)を位置120などにおいて与えるよう適合されてもよい。
【0040】
明らかに、この発明の多くの修正および変形が上記の教示に照らして可能である。したがって、この発明は、添付の請求項の範囲内で、特に記載された以外にも実行され得る。この発明は請求項によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性ケーシングと、
前記剛性ケーシング内部に位置決めされて前記剛性ケーシングに接着されたエラストマケーシングとを含み、前記エラストマケーシングは、前記剛性ケーシングから内径方向に延在し、かつ前記剛性ケーシングに沿って軸方向に延在する軸方向のばね部材を有し、前記軸方向のばね部材は、前記エラストマケーシングから延在するネック部分および前記ネック部分に取付けられて接着表面を有するシール取付部分を含み、さらに
接着表面および封止表面を有する予圧されたフッ素共重合体シールと、
予圧されたフッ素共重合体シールの前記接着表面を前記シール取付部分の前記接着表面に接合する接着剤とを含み、前記シール取付部分は、シャフトの対になる表面で係合されると前記封止表面全体に沿ってフッ素共重合体シールの封止接触を与えるよう動作可能である、ラジアルシール。
【請求項2】
前記剛性ケーシングは金属を含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項3】
前記金属は鋼を含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項4】
前記剛性ケーシングは剛性プラスチックまたは剛性プラスチック複合物を含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項5】
前記剛性ケーシングは径方向の部分および軸方向の部分を含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項6】
前記剛性ケーシングは、前記径方向の部分の少なくとも内部表面に沿って前記エラストマケーシングに接着される、請求項5に記載のラジアルシール。
【請求項7】
前記エラストマケーシングは前記径方向の部分の少なくとも外部表面に沿って前記剛性ケーシングに接着される、請求項5に記載のラジアルシール。
【請求項8】
前記予圧されたフッ素共重合体シールはポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項9】
前記予圧されたフッ素共重合体シールは前記封止表面に形成された封止溝を有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項10】
前記封止溝は、前記封止表面の径方向のまわりに延在し、前記封止表面の軸方向に沿って延在する連続的な溝であり、連続的な溝および/または外周溝の少なくとも1つである、請求項9に記載のラジアルシール。
【請求項11】
前記封止溝は前記封止表面に沿って軸方向に異なる深さを有する、請求項10に記載のラジアルシール。
【請求項12】
前記封止溝は外周溝である、請求項8に記載のラジアルシール。
【請求項13】
前記予圧されたフッ素共重合体シールは前記封止表面に形成された複数の封止溝を含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項14】
前記ネック部分は実質的に線形のプロファイルを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項15】
前記ネック部分は実質的に曲線から成るプロファイルを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項16】
前記ネック部分は実質的に回旋状のプロファイルを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項17】
前記ネック部分は実質的にベローズ形状のプロファイルを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項18】
前記予圧されたフッ素共重合体シールは、内径を有するフッ素共重合体座金を前記内径の約5%−180%の範囲で径方向に引伸ばすことにより予圧される、請求項1のラジアルシール。
【請求項19】
前記予圧されたフッ素共重合体シールは前記封止表面に沿って軸方向に異なる内部応力を有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項20】
前記シール取付部分および前記予圧されたフッ素共重合体シールは、対になるシャフト上の前記封止表面に締りばめを与えるよう動作可能であり、前記シール取付部分は、シャフトに径方向の圧縮力を加えることによって対になるシャフトで係合されると前記封止表面の全体に沿ってフッ素共重合体シールの封止接触を与えるよう動作可能である、請求項1のラジアルシール。
【請求項21】
前記予圧されたフッ素共重合体シールは厚さを有し、前記シール取付部分は厚さを有し、前記シール取付部分の前記厚さは前記予圧されたフッ素共重合体シールの前記厚さの4分の1を越える、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項22】
前記予圧されたフッ素共重合体シールは約0.010−0.060インチの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項23】
前記シール取付部分は、前記予圧されたフッ素共重合体シールの前記接着表面にわたって実質的に同じ厚さを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項24】
前記シール取付部分は、前記予圧されたフッ素共重合体シールの前記接着表面にわたって軸方向に異なる厚さを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項25】
前記シール取付部分は、前記予圧されたフッ素共重合体シールの前記接着表面のまわりで径方向に異なる厚さを有する、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項26】
前記エラストマケーシングは、前記シールリップに適用される軸方向力に応答してシャフトの対になる表面との静的な封止接触を与えるよう動作可能なシールリップをさらに含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項27】
前記エラストマケーシングは、前記予圧されたフッ素共重合体シールの前記封止表面および前記シャフトからの異物の排除をもたらすよう動作可能な、内径方向および軸方向に延在する排除部をさらに含む、請求項1に記載のラジアルシール。
【請求項28】
エラストマケーシングは、鋳型のばりの除去のための引裂き線を与えるよう動作可能な、少なくとも1つの薄くなった部分を含む、請求項1に記載のラジアル。
【請求項29】
ラジアルシャフトシールを製作する方法であって、
内径および外径を有する予圧されたフッ素共重合体シールを形成するために、心棒装置を利用して、少なくとも内径について、内径および外径を有するフッ素共重合体シールプリフォームを引伸ばすステップと、
接着表面および封止表面を有する予圧されたフッ素共重合体シールを鋳型キャビティを有する鋳型に配置するステップとを含み、接着表面は鋳型キャビティに露出され、
剛性ケーシングを予圧されたフッ素共重合体シールに近接して鋳型キャビティ内に配置するステップと、
前記剛性ケーシングの内部に位置決めされて前記剛性ケーシングに接着され、剛性ケーシングから内径方向に延在しかつ剛性ケーシングに沿って軸方向に延在する軸方向のばね部材を有する、エラストマケーシングを成型するために、エラストマ材料を鋳型キャビティに導入するステップとを含み、軸方向のばね部材は、エラストマケーシングから延在するネック部分と、ネック部分に取付けられて接着表面を有するシール取付部分とを含み、ネック部分は予圧されたフッ素共重合体シールの接着表面をシール取付部分の接着表面に接合する接着剤を有し、シール取付部分は、シャフトの対になる表面で係合されると封止表面全体に沿ってフッ素共重合体シールの封止接触を与えるよう動作可能である、方法。
【請求項30】
フッ素共重合体シールプリフォームを少なくとも内径について引伸ばす前記ステップは、内径の約5%−180%の範囲でプリフォームを引伸ばすステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
フッ素共重合体シールプリフォームを引伸ばす前記ステップは外径についてプリフォームを引伸ばすステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
フッ素共重合体シールプリフォームを少なくとも内径について引伸ばす前記ステップは、心棒装置のテーパ状の外表面に沿ってフッ素共重合体シールプリフォームを滑らせるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
テーパ状の外表面に沿ってフッ素共重合体シールプリフォームを滑らせる前記ステップは、テーパ状の表面に沿って拡張し、かつフッ素共重合体シールプリフォームの接着表面および封止表面のうち1つとの接触を維持するよう適合された、拡張可能なプッシャ工具を用いて実行される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
心棒装置が鋳型に分離可能に取付けられる、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
鋳型は一体型心棒装置を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
接着表面および封止表面を有する予圧されたフッ素共重合体シールを鋳型に配置する前記ステップは、予圧されたフッ素共重合体シールを鋳型のポスト表面に配置するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
ポスト表面は、第1の端部直径および対向する第2の端部直径を有するテーパ状の円筒状表面であり、第2の端部直径は第1の端部直径よりも大きい、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
配置する前記ステップは、予圧されたフッ素共重合体シールを、内径は第1の端部直径に近接して、外径は第2の端部直径に近接してポスト表面に配置する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
第2の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの外径よりも大きい、請求項40
に記載の方法。
【請求項40】
第1の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの内径よりも大きい、請求項40に記載の方法。
【請求項41】
第2の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの外径よりも大きく、第1の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの内径よりも大きい、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
第2の端部直径および第1の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの外径よりも各々大きい、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
配置する前記ステップは、予圧されたフッ素共重合体シールを、内径は第2の端部直径に近接して、外径は第1の端部直径に近接してポスト表面に配置する、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
第2の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの外径よりも大きい、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
第1の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの内径よりも大きい、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
第2の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの外径よりも大きく、第1の端部直径はフッ素共重合体シールプリフォームの内径よりも大きい、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
第2の端部直径および第1の端部直径はそれぞれフッ素共重合体シールプリフォームの外径より大きい、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
鋳型キャビティにエラストマ材料を導入する前記ステップは射出成形を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項49】
エラストマの射出成形は周囲気温および圧力よりも高い圧力および圧力で実行される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
周囲気温および温度圧力よりも大きい温度および圧力の少なくとも1つにおいて硬化するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−211701(P2012−211701A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162525(P2012−162525)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2008−530016(P2008−530016)の分割
【原出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】