説明

ラジアントチューブの製造方法及びラジアントチューブバーナ

【課題】セラミックス製でW字状などの複曲形状のラジアントチューブの製造方法及びそのラジアントチューブを備えたラジアントチューブバーナにおいて、セラミックス製の管部材どうしの接合部及び当該管部材の種類をできるだけ少なくして、低コストで製造可能且つ高強度なラジアントチューブを実現する点を目的とする。
【解決手段】曲管領域に配置される曲管部11bと当該曲管領域に接続される直管領域に配置される直管部11aとを一体成形してなるセラミックス製のU字状管部材11の複数を、交互に反転させながら順に接合して、複曲形状を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる複曲形状を有するセラミックス製のラジアントチューブの製造方法、及び、そのラジアントチューブを備えたラジアントチューブバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ラジアントチューブバーナが備えるラジアントチューブは、炉内に露出される状態で、その両端部が炉壁に取り付けられる。そして、そのラジアントチューブの内部に燃焼ガスが流通され、その燃焼ガスの熱がラジアントチューブの外壁を介して外部に放射され、炉内が間接加熱される。
このようなラジアントチューブとして、耐熱性の向上などの目的で、SiC(炭化珪素)やSi(窒化珪素)等の耐熱性の高いセラミックス製の管部材で構成されたものがあり、更に、伝熱面積の拡大などの目的で、互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる形状(本願では、この形状を「複曲形状」と呼ぶ。)、特に、互いに平行に配置された4つの直管領域と当該4つの直管領域の隣接間を接続する3つの曲管領域とからなるW字状に構成されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
従来のセラミックス製で複曲形状のラジアントチューブの製造方法では、一般的に、両端部の直管領域に配置される一対の炉壁取付用直管部材を除いて、一の曲管領域を構成する曲管部材と、一の直管領域を構成する直管部材との、2種類の形状のセラミックス製の管部材を、反応焼結法や常圧焼結法等の公知の成形法により別々に製作し、これら曲管部材と直管部材とを交互に接合することで、このような複数回に渡って往復する形状の複曲形状を実現している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−65503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のセラミックス製で複曲形状のラジアントチューブは、上述したように、曲管部材と直管部材とを交互に接合して複曲形状を構成しているので、互いに隣接する二つの曲管領域の間の管領域には、直管部材の両端側において夫々の曲管部材と接合される2箇所の接合部が存在することになる。そして、このような接合部の増加は、強度低下やコスト高の要因となるので、接合部の数はできるだけ少ないことが望まれる。
【0006】
更に、上記従来のラジアントチューブでは、炉壁取付用直管部材を除いて、曲管部材と直管部材との2種類の形状のセラミックス製の管部材を製作する必要があるが、このようなセラミックス製の管部材の種類の増加は、製造工程の煩雑化及び金型種類が増えることに伴う製造コスト高の要因となるので、当該管部材の種類はできるだけ少ないことが望まれる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、セラミックス製で複曲形状のラジアントチューブの製造方法及びそのラジアントチューブを備えたラジアントチューブバーナにおいて、セラミックス製の管部材どうしの接合部及び当該管部材の種類をできるだけ少なくして、低コストで製造可能且つ高強度なラジアントチューブを実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るラジアントチューブの製造方法は、互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる複曲形状を有するセラミックス製のラジアントチューブの製造方法であって、その第1特徴構成は、前記曲管領域に配置される曲管部と当該曲管領域に接続される前記直管領域に配置される直管部とを一体成形してなるセラミックス製のU字状管部材の複数を、交互に反転させながら順に接合して、前記複曲形状を構成する点にある。
【0009】
上記第1特徴構成によれば、上記のような1種類のセラミックス製のU字状管部材の複数を交互に反転させながら連結することで、互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなり、複数回に渡って往復する形状の複曲形状を構成することができる。
よって、互いに隣接する二つの曲管領域の間の管領域に存在する管部材どうしの接合部が、互いに隣接するU字状管部材を接合するための1箇所のみとなり、従来のラジアントチューブでは上述したように直管部材の両端側において夫々の曲管部材に接合するための2箇所の接合部が存在するのと比較して、接合部の数を少なくして、強度低下やコスト高を抑制することができる。
更には、1種類のU字状管部材により上記複曲形状を構成することができるので、管部材の種類を少なくして、製造工程の煩雑化及び金型種類が増えることに伴う製造コスト高を抑制することができる。
従って、本発明により、セラミックス製で複曲形状のラジアントチューブを製造するにあたり、管部材どうしの接合部及び管部材の種類をできるだけ少なくして、低コストで製造可能且つ高強度なラジアントチューブを製造することができる。
【0010】
本発明に係るラジアントチューブの製造方法の第2特徴構成は、前記U字状管部材を、前記曲管部の両端側から、同じ長さの前記直管部が延出するように形成する点にある。
【0011】
上記第2特徴構成によれば、U字状管部材において曲管部の両端側から延出形成された夫々の直管部の長さが同じであるので、U字状管部材の形状を簡略化し、U字状管部材を製作するための製造コストを低く抑えることができる。
更に、ラジアントチューブの両端部の直管領域に配置される一対の炉壁取付用直管部材を、互いに同じ長さとすることができるので、セラミックス製の管部材の種類を更に少なくして、製造コストの低減を図ることができる。
更に、互いに接合される二つのU字状管部材の夫々の直管部の長さが同じことから、その接合部の位置が、互いに隣接する曲管領域に挟まれた管領域における中心に配置されることになるので、各U字状管部材の方向などをあまり気にすることなく、当該U字状管部材の複数を交互に反転させながら順に接合する作業を簡単且つ短時間に行うことができる。
【0012】
本発明に係るラジアントチューブの製造方法の第3特徴構成は、3つの前記U字状管部材を交互に反転させながら順に接合して、前記複曲形状としてのW字状を構成する点にある。
【0013】
上記第3特徴構成によれば、3つのU字型管部材を交互に反転させながら順に接合することで、互いに平行に配置された4つの直管領域と当該4つの直管領域の隣接間を接続する3つの曲管領域とからなるW字状を有するラジアントチューブを構成することができる。
【0014】
上記目的を達成する本発明に係るラジアントチューブバーナは、互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる複曲形状を有するセラミックス製のラジアントチューブを、両端部を炉壁に取り付けた状態で炉内に配置し、
前記ラジアントチューブの内部に燃焼ガスを流通させて、当該燃焼ガスの熱を前記ラジアントチューブの外部に放射するラジアントチューブバーナであって、その特徴構成は、前記ラジアントチューブの前記複曲形状が、前記曲管領域に配置される曲管部と当該曲管領域に接続される前記直管領域に配置される直管部とを一体成形してなるセラミックス製のU字状管部材の複数を、交互に反転させながら順に接合して構成されている点にある。
【0015】
即ち、本発明のラジアントチューブバーナは、これまで説明してきた本発明に係るラジアントチューブの製造方法により製造されたラジアントチューブを備えることから、当該ラジアントチューブの製造方法と同様の作用効果を発揮し、ラジアントチューブにおいて、管部材どうしの接合部及び管部材の種類が少なく、低コストで製造可能且つ高強度を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示す工業炉では、ラジアントチューブバーナ100が設けられており、このラジアントチューブバーナ100は、SiC等のセラミックス製のラジアントチューブ10を、両端部10a,10bを炉壁2に取り付けた状態で炉内1に配置し、ラジアントチューブ10の内部に燃焼ガスを流通させて、当該燃焼ガスの熱をラジアントチューブの外部に放射することで、炉内1を加熱するように構成されている。
即ち、ラジアントチューブ10の一方側の端部10a内には、バーナ先端部14が挿入されており、炉壁2に対して炉内1の反対側(炉外側)に設けられたバーナ本体(図示せず)から、バーナ先端部14内に燃料を供給すると共に、バーナ先端部14とラジアントチューブ10との間に燃焼用空気を供給して、ラジアントチューブ10内で燃料を燃焼させることで、ラジアントチューブ10の内部に燃焼ガスを流通させ、ラジアントチューブ10自身を加熱する。
【0017】
よって、このラジアントチューブバーナ100を備えた工業炉では、ラジアントチューブ10の内部に流通する燃焼ガスの熱がラジアントチューブ10の外部に放射されて、炉内1に設けられた加熱対象物(図示せず)を間接的に加熱することができる。
また、ラジアントチューブ10の内部を流通した後の燃焼排ガスは、ラジアントチューブ10のバーナ先端部14が挿入される端部10aとは反対側の端部10bから排出されて、バーナ本体において熱交換器を通じて燃焼用空気の予熱に利用される。
【0018】
上記ラジアントチューブ10の両端側には、炉壁2に取り付けられる一対の炉壁取付用直管部材12が配置されており、その一対の炉壁取付用直管部材12のそれぞれの開放端部が、上記ラジアントチューブ10の両端部10a,10bとして炉壁2に取り付けられる。
即ち、炉壁2の炉内1とは反対側の面に、ラジアントチューブ10の両端部10a、10bを夫々保持するための金属製の一対のフランジ部材20が複数のボルトにより固定されおり、更に、夫々のフランジ部材20には、炉壁2に形成された開口に挿入されるスリーブ部20aが延出形成されている。
そして、ラジアントチューブ10の両端部10a,10bは、炉内1側から一対のスリーブ部20a内に挿入され、更には、それら端部10a,10bとスリーブ部20aとの間に接着剤7が充填されて、当該両端部10a,10bが炉壁10に取り付けられる。
【0019】
上記ラジアントチューブ10は、伝熱面積の拡大などの目的で、互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる複曲形状に構成されており、本実施形態において具体的には、互いに平行に配置された4つの直管領域と当該4つの直管領域の隣接間を接続する3つの曲管領域とからなるW字状に構成されている。
【0020】
更には、このラジアントチューブ10の上記複曲形状は、U字状に一体成形されたセラミックス製のU字状管部材11(図2参照)の複数を、交互に反転させながら順に接合して構成されており、これら互いに接合された複数のU字状管部材11の両端部に、上述した一対の炉壁取付用直管部材12が接合されている。
以下、このような複曲形状のラジアントチューブ10の製造方法について詳細に説明する。
【0021】
ラジアントチューブ10の製造方法において、先ず、ラジアントチューブ10を構成するのに必要なセラミックス製の管部材、即ちU字状管部材11と炉壁取付用管部材12との2種類の管部材を、公知の成形法により製作する。尚、これら管部材11,12は、同一肉厚で同一管径に形成されている。
【0022】
上記U字状管部材11は、図2に示すように、U字状に一体成形されたものであり、例えば反応焼結法等の公知の成形法により製作することができる。また、具体的に、このU字状管部材11は、半円状に屈曲した曲管部11bの両端側から、同じ長さの直線状の直管部11aが延出するように形成されており、U字状管部材11の形状が簡略化され、かかるU字状管部材11を製作するための製造コストが低く抑えられる。
【0023】
一方、上記炉壁取付用直管部材12は、図3に示すように単純な直線状の直管部材であり、例えば常圧焼結法や反応焼結法等の公知の成形法により、比較的簡単且つ低コストで製作することができる。
【0024】
次に、上記のように製作した複数のU字状管部材11を、図1に示すように、交互に反転させながら順に配置し、互いの端面を当接した状態で、又は、一方側の端面の外面と他方側の端面の内面とに段部を形成して互いの端面を嵌合させた状態で、耐熱接着材等にて接合することで、上述した複曲形状の管領域が構成される。
更に、このように構成した複曲形状の管領域の両端側の夫々に、上記炉壁取付用直管部材12を上記と同じように接合することで、ラジアントチューブ10が完成される。
【0025】
このように製造したラジアントチューブ10は、互いに隣接する二つの曲管領域の間の一の管領域には、U字状管部材11どうしの接合部13が、その中心部に1箇所存在することになり、接合部13の数が少なく、強度低下やコスト高が抑制されている。
【0026】
更に、両端に配置された一対のU字状管部材11の直管部11aが夫々同じ長さであるので、その両端に接合される夫々の炉壁取付用直管部材12の長さが同じものとなり、一対の炉壁取付直管部材12についても同じ長さの二つの直管部材で構成することができ、管部材の種類の増加が抑制されている。
【0027】
〔別実施形態〕
(1)上記実施の形態では、ラジアントチューブ10の複曲形状を、互いに平行に配置された4つの直管領域と当該4つの直管領域の隣接間を接続する3つの曲管領域とからなるW字状としたが、別に、かかる複曲形状は、互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる形状であればよく、このような複曲形状を、1種類のU字状管部材の複数を適切に接合して構成することができる。
尚、一般的には、炉壁に取り付けられる両端部を、互いに同方向に開口したものとして、同じ炉壁に取り付けるので、上記直管領域が偶数個となるが、例えば、図4(a)に示すように、炉壁2に取り付けられる両端部10a,10bを、互いに逆方向に開口したものとして炉内1を挟んで平行に配置された一対の炉壁2の夫々に取り付ける場合には、上記直管領域を奇数とする、即ち、偶数個(例えば2つ)のU字状管部材11を交互に反転させて接続して、互いに平行に配置された奇数個(例えば3つ)の直管領域と当該奇数個の直管領域の隣接間を接続する偶数個(例えば2つ)の曲管領域とからなる復管形状を形成しても構わない。
【0028】
(2)上記実施の形態では、U字状管部材を、曲管部の両端側から同じ長さの直管部が延出する形状としたが、別に、図4(b)に示すように両直管部11aの長さを異ならせた形状や、曲管部の一方端側から直管部が延出する形状としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、セラミックス製で複曲形状のラジアントチューブの製造方法及びそのラジアントチューブを備えたラジアントチューブバーナにおいて、セラミックス製の管部材どうしの接合部及び当該管部材の種類をできるだけ少なくして、低コストで製造可能且つ高強度なラジアントチューブを実現するものとして有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ラジアントチューブバーナの概略断面図
【図2】U字状管部材の斜視図
【図3】取付用直管部材の斜視図
【図4】別実施形態のラジアントチューブバーナの概略構成図
【符号の説明】
【0031】
1:炉内
2:炉壁
10a,10b:端部
10:ラジアントチューブ
11:U字状管部材
11b:曲管部
11a:直管部
13:接合部
100:ラジアントチューブバーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる複曲形状を有するセラミックス製のラジアントチューブの製造方法であって、
前記曲管領域に配置される曲管部と当該曲管領域に接続される前記直管領域に配置される直管部とを一体成形してなるセラミックス製のU字状管部材の複数を、交互に反転させながら順に接合して、前記複曲形状を構成するラジアントチューブの製造方法。
【請求項2】
前記U字状管部材を、前記曲管部の両端側から、同じ長さの前記直管部が延出するように形成する請求項1に記載のラジアントチューブの製造方法。
【請求項3】
3つの前記U字状管部材を交互に反転させながら順に接合して、前記複曲形状としてのW字状を構成する請求項1又は2に記載のラジアントチューブの製造方法。
【請求項4】
互いに平行に配置された3つ以上の直管領域と当該3つ以上の直管領域の隣接間を接続する複数の曲管領域とからなる複曲形状を有するセラミックス製のラジアントチューブを、両端部を炉壁に取り付けた状態で炉内に配置し、
前記ラジアントチューブの内部に燃焼ガスを流通させて、当該燃焼ガスの熱を前記ラジアントチューブの外部に放射するラジアントチューブバーナであって、
前記ラジアントチューブの前記複曲形状が、前記曲管領域に配置される曲管部と当該曲管領域に接続される前記直管領域に配置される直管部とを一体成形してなるセラミックス製のU字状管部材の複数を、交互に反転させながら順に接合して構成されているラジアントチューブバーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−240060(P2007−240060A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62736(P2006−62736)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】