説明

ラックを移送するためのリニア移送機構を備えた試料スライドの処理装置

【課題】簡単でコンパクトに構造されている試料スライドの処理装置を提供する。
【解決手段】試料スライドの収容されたラック16を搬入するための搬入区画14と、試料スライドを封入処理するための封入モジュール30、32とを含んで構成される、試料スライドの処理装置に関する。更に該処理装置は、ラック16を搬出するための搬出区画22と、ラック16を移送するための移送ユニット20と、該移送ユニット20を制御するための制御ユニット52とを含んで構成される。該移送ユニット20は、該移送ユニット20を用い、ラック16が前記搬入区画14と前記封入モジュール30、32と前記搬出区画22との間において移送可能であるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の記載)
本出願は、2011年5月13日出願のドイツ特許出願第 10 2011 050 343.9 号の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【0002】
本発明は、試料スライド(試料支持体)の収容されたラックを搬入するための搬入区画(インプットコンパートメント;搬入部)と、試料スライド上に配置された薄切片を封入剤とカバーガラスを用いて封入処理するための封入モジュール(Eindeckmodul)とを含んで構成される、試料スライドの処理装置(取扱装置)に関する。更に該処理装置は、ラックを搬出するための搬出区画(アウトプットコンパートメント;搬出部)と、ラックを移送するための移送ユニットと、該移送ユニットを制御するための制御ユニットとを含んで構成される。
【背景技術】
【0003】
組織学において、組織試料(組織検体)から生成される薄切片は試料スライド(所謂スライド)上に載置される。薄切片を顕微鏡検査用に準備するために、試料スライド上に載置された薄切片は、通常は(薬品などで)処理され、特に脱水又は染色される。薄切片を保護するために薄切片上にはカバーガラスが載置されるが、カバーガラスを載置する前に、先ずはカバーガラスを試料スライド上に付着させる封入剤が塗布される。封入品質の検査後に、薄切片の封入処理された試料スライドは、薄切片の更なる検査のために顕微鏡へ導かれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の封入モジュールには、搬入区画を介して搬入されたラックをこの搬入区画から封入モジュールへ移送する第1移送ユニットが設けられている。試料スライドが封入処理された後には、第1移送ユニットとは異なる第2移送ユニットが、封入品質を検査する品質監視モジュールへ試料スライドを更に移送する。引き続き、試料スライドは、第3移送ユニットを介して品質監視モジュールから搬出区画へ移送される。そのような既知の自動封入装置における問題点は、自動封入装置内において各々につき唯一の移送経路(Transport)のためだけに設けられている複数の移送ユニットにより、該自動封入装置が複雑で大がかりであり従って高価な構造をもつということにある。更に移送ユニットの数の増加と共に故障(エラー)の発生率も増加することになる。
【0005】
従って本発明の課題は、簡単でコンパクトに構造されている試料スライドの処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一視点によれば、試料スライドの処理装置であって、試料スライドの収容されたラックを搬入するための搬入区画と、試料スライド上に配置された薄切片を封入剤とカバーガラスを用いて封入処理するための封入モジュールと、ラックを搬出するための搬出区画と、ラックを移送するための移送ユニットと、該移送ユニットを制御するための制御ユニットとを含んで構成される処理装置が提供される。本処理装置において、該移送ユニットは、該移送ユニットを用い、ラックが前記搬入区画と前記封入モジュールと前記搬出区画との間において移送可能であるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記一視点によれば、本発明の課題に対応する効果、即ち簡単でコンパクトに構造されている試料スライドの処理装置が提供される。
【0008】
本発明に従い、移送ユニットは、該移送ユニットを用い、ラックが搬入区画と封入モジュールと搬出区画との間において移送可能であるように構成されている。従って、本処理装置内におけるラックの全ての(任意の)移送経路の移送を処理することのできる唯一の移送ユニットを設けることで十分である。従って特に低コストで簡単な構造が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態の概要について説明する。
【0010】
本処理装置は、好ましくは乾燥ユニットを有し、該乾燥ユニットを用い、封入処理された試料スライドから封入剤の湿分が除去可能である。(即ち封入剤から溶剤を除去することができる。)そのような乾燥ユニットを介して封入剤はより迅速に乾き、従ってカバーガラスが滑って位置をずらしてしまうことはなく、それにより薄切片の損傷やオペレータの怪我を防止することができる。移送ユニットは、該移送ユニットを用い、乾燥ユニットへラックを供給可能であり及び/又は該乾燥ユニットからラックを取り出し可能であるように構成されている。従って、乾燥ユニットへの移送と、該乾燥ユニットから搬出区画への移送とのために別個の移送ユニットを設ける必要はない。
【0011】
特に本処理装置は、試料スライドを処理するためのモジュールを取り付ける(受容する)ための第1モジュール取付(受容)領域、及び/又は、試料スライドを処理するための他のモジュールを取り付ける(受容する)ための少なくとも1つの第2モジュール取付(受容)領域を有する。第1モジュール取付領域内には、試料スライドを処理するためのモジュールとして、特に封入モジュールが配設されている。移送ユニットは、該移送ユニットを用い、第1モジュール取付領域内に配設されているモジュール及び/又は第2モジュール取付領域内に配設されているモジュールへラックを供給可能であり及び/又は該モジュールからラックを取り出し可能であるように構成されている。試料スライドを処理するためのモジュールが配設可能である2つのモジュール取付領域を設けることにより、本処理装置の装置構成(コンフィグレーション)を簡単に個々の顧客要求にマッチングさせることができる。ラックが両方のモジュール取付領域へ移送ユニットを介して供給可能であり且つ該モジュール取付領域から移送ユニットを介して取り出し可能であるので、本処理装置の装置構成が大きな柔軟性(フレキシビリティ)を有するにもかかわらず、1つの移送ユニットだけが必要であり、従ってモジュールを用いたモジュール取付領域の装備を任意に行うことができ、必要不可欠な全ての移送プロセス(Transportvorgaenge)を簡単に1つの移送ユニットだけを用いて行うことができる。
【0012】
特に第2モジュール取付領域内には、試料スライドを処理するためのモジュールとして、試料スライド上に載置された薄切片の品質を監視する及び/又は封入品質を監視するための品質監視モジュールが取り付けられている。この場合、移送ユニットはラックを特に搬入区画から、先ずは第1モジュール取付領域内に配設されている封入モジュールへ移送し、そしてラック内の試料スライドの封入処理後に該封入モジュールから、第2モジュール取付領域内に取り付けられている品質監視モジュールへ移送する。引き続き、ラックは該品質監視モジュールから乾燥ユニットへ供給され、該乾燥ユニットにおける乾燥処理後に更に搬出区画へ供給される。
【0013】
本発明の特に有利な一実施形態では、両方のモジュール取付領域内に、試料スライドを封入処理するための各々1つの封入モジュールが設けられており、従ってスループット、即ち時間単位あたりに封入処理可能な試料スライドの数が増加される。特に(第1、第2の)両方の封入モジュールには、異なる封入剤を使用することができ、従って、異なる封入剤を用いた試料スライドの封入処理が可能であり、そのために本処理装置の装備を変える必要はなく、特にそのために本処理装置を洗浄する必要もない。移送ユニットを用いてラックは本処理装置の個々のユニットの間において任意に移送可能であるので、この唯一の移送ユニットは、ラックを第1モジュール取付領域にも第2モジュール取付領域にも供給することができ、再び該モジュール取付領域から取り出すことができる。
【0014】
品質監視モジュールは、特にカメラを含んで構成され、該カメラは、薄切片が配置されている試料スライドの少なくとも1つの部分領域の結像画像を有する少なくとも1つの画像を記録する。所定の制御ユニットが、該制御ユニット内に保存されている少なくとも1つの画像処理アルゴリズムを処理し、この際、該制御ユニットは、記録された画像に依存し、薄切片の染色品質、薄切片及び/又はカバーガラスの機械的な損傷の有無、試料スライド上の薄切片の相対位置、及び/又は、試料スライドとカバーガラスとの間の封入空気の有無を検出する。
【0015】
更にラックが、搬入区画と、封入モジュールと、第1モジュール取付領域と、第2モジュール取付領域と、乾燥ユニットと、搬出区画との間において、予め他のユニット或いは領域の1つへ供給されることなく、各々ダイレクト(直接的)に移送可能であると有利である。従って、ラックを個々の区画(ユニット)或いは領域の間において任意に移送することができ、従って高い柔軟性(フレキシビリティ)が可能である。特にそれにより、並行に動作するユニットにおいてこれらのユニットを互いに同期させる必要はない。
【0016】
本処理装置は、搬入区画において、搬入されたラックに装着されている情報担体(情報キャリア Informationstraeger)から情報を読み出すための読取ユニットを含んで構成される。制御ユニットが移送ユニットをそれらの情報に依存して駆動制御する。特に制御ユニットは、読み出された情報に依存し、モジュール取付領域内に配設されているモジュールのどのモジュール(1つ或いは複数)へラックを移送するのかを決定し、場合により、異なるモジュール取付領域にどの順番でラックを相前後して供給すべきなのかを決定する。読み出された情報は、特にどの封入剤が使用されなくてはならないかに関する情報を含んでいる。使用すべき封入剤に依存し、制御ユニットは、正しい封入剤を使用している封入モジュールへ移送ユニットがラックを供給するように該移送ユニットを駆動制御する。情報坦体(情報キャリア)は、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)チップ及び/又はバーコードである。
【0017】
本処理装置は、特に二レベル(階層)構造であり、この際、搬入区画、読取ユニット、乾燥ユニット、及び/又は搬出区画が第1階層(第1レベル)内に配設されており、複数のモジュール取付領域が第2階層(第2レベル)内に配設されている。本処理装置の稼動時に必要な配向構成において第2レベルは特に第1レベルの上方に配設されている。移送ユニットは、該移送ユニットを用い、ラックがこれらの両方のレベルの間において移送可能であるように構成されている。
【0018】
本発明の特に有利な一実施形態では、移送ユニットが、第1方向へ配向された直線状(リニア)の第1ガイド要素と、第1方向へ及び第1方向の反対方向へ移動可能に該第1ガイド要素において支持されている第1キャリッジ(第1スライダ)とを含んで構成される。第1キャリッジには、該第1キャリッジと固定結合されており且つ第1方向に対して直角に延在する第2方向へ配向された直線状(リニア)の第2ガイド要素が配設されている。従って第2ガイド要素は、第1方向へ又は第1方向の反対方向へ第1キャリッジが移動する場合にはそれに対応して同時に移動することになる。第2ガイド要素には第2キャリッジ(第2スライダ)が支持されており、該第2キャリッジは、第2方向へ及び第2方向の反対方向へ移動可能である。更に移送ユニットは、少なくとも1つのラックを該ラックの移送中に保持するためのグリップ部材を含んで構成され、該グリップ部材は、第1キャリッジを用い、第1方向へ及び第1方向の反対方向へ移動可能であり、第2キャリッジを用い、第2方向へ及び第2方向の反対方向へ移動可能である。従って、ガイド要素及びキャリッジにより構成されている両方のリニアガイドを介し、両方の直線状のガイド要素により規定された平面内でのラックの任意の移送経路が実現される。従って(構造的に定められた)移送経路に沿うかたちでのみラックを移送させることのできる具体的な移送経路が規定されているのではなく、移送はそれらの移送平面内において任意に選択可能な経路に沿って行うことができ、従って、本処理装置の全てのユニット或いは領域へラックをダイレクトに供給でき、該ユニット或いは領域からラックをダイレクトに取り出すことのできる(唯一の)移送ユニットが簡単に構成されている。
【0019】
更に本処理装置は、第1キャリッジと固定結合された第1ベルトを駆動する第1駆動ユニットを含んで構成される。第1ベルトを介して第1キャリッジは第1ガイド要素に沿って移動される。同様に本処理装置は、第2キャリッジを該第2キャリッジと固定結合された第2ベルトを用いて第2ガイド要素上で移動させる第2駆動ユニットを含んで構成することができる。両方の駆動ユニットは、特に各々につき電気モータとして構成されている。代替的な一実施形態では、両方のキャリッジを適切に両方のガイド要素上において移動可能とする唯一の駆動ユニットを設けることもできる。
【0020】
第1ガイド要素は、特に本処理装置のハウジングのハウジング壁部に配設されている。従って特に省スペースの構造が達成されており、それにもかかわらずラックは本処理装置内において任意に移送可能である。ハウジング壁部は特に後方壁部であり、即ちオペレータが本処理装置を操作する操作側とは反対側に位置する壁部である。従って各々のモジュールはオペレータにとって簡単にアクセス可能(手が届くこと)であるが、その理由は、移送ユニットがラックをオペレータから見て後方から各々のモジュールへ供給するためであり、従って移送ユニットは、各々のモジュールへのアクセスに対して邪魔になるものではない。
【0021】
第1ガイド要素は、特に本処理装置のハウジングの幅の0.8倍から0.9倍までの間の値に対応する長さを有する。従ってラックは、ハウジングのほぼ全幅にわたり移送ユニットを用いて移送可能である。また第2ガイド要素の長さは、特に本処理装置のハウジングの高さの0.5倍から0.95倍までの間の値、好ましくは0.6倍から0.7倍までの間の値を有する。従ってラックは、本処理装置内においてほぼ全高さにわたり移送可能であり、それにより全体として、ラックが移送ユニットを介して移動可能である極めて大きな移送領域が提供されている。
【0022】
本処理装置或いは本処理装置のハウジングの高さとしては、特に本処理装置の稼動時に必要な配向構成においてハウジングの鉛直方向のサイズとして理解される。またハウジングの幅は、特にオペレータの目から見て、高さに対して直角に配向されたハウジングの水平方向のサイズを意味している。またハウジングの深さは、幅と高さに対して直角であり且つオペレータから遠ざかる方向へ配向されたハウジングのサイズを意味している。
【0023】
本発明の特に有利な一実施形態では、第2キャリッジと固定結合されている直線状(リニア)の第3ガイド要素が設けられている。この第3ガイド要素は、第1方向に対して直角に延在し且つ第2方向に対しても直角に延在する第3方向へ配向されている(即ちxyz直交座標系において、例えば第1、第2方向をx、y方向とすると第3方向はz方向)。グリップ部材は、該グリップ部材が第3方向へ又は第3方向の反対方向へ移動可能であるように第3ガイド要素において支持されている。特に、第3ガイド要素において第3方向へ及び第3方向の反対方向へ移動可能に支持されており且つグリップ部材が固定されている第3キャリッジが設けられている。従って、ラックを3つのガイド要素により決定される移送空間内で3次元的に移送可能となっている。互いに直交して配向された3つのリニアガイドを用いて移送ユニットを構成することにより、ラックを任意の移送経路に沿って移送空間内において自由に選択可能に移送できることが達成され、従ってラックを本処理装置の個々のユニット及びモジュールの間において任意に移送させることができる。これらの3つのガイド要素は、特にデカルト座標系(直交座標系)と同じように互いに配向されている。
【0024】
更に本処理装置は、特に第3駆動ユニットを有し、該第3駆動ユニットは、グリップ部材を第3ガイド要素に沿って移動させるために、該グリップ部材と固定結合されている第3ベルトを駆動する。この第3駆動ユニットも、特に電気モータとして構成されている。
【0025】
第1ガイド要素、第2ガイド要素、及び/又は第3ガイド要素は、各々シャフトとして又はレールとして構成することができる。シャフトとして構成することによっては、特に簡単で低コストの製造が達成され、それに対し、レールの構成は、キャリッジの必要な支持部を伴うことなく確実で目的に合わせたガイドを可能とする。レールは、特にプロフィールレール(形材レール)として形成されている。本発明の特に有利な一実施形態では、第1ガイド要素がシャフトとして形成されており、第2ガイド要素及び第3ガイド要素が各々レールとして形成されている。
【0026】
特にグリップ部材は、移送すべきラックを保持するための第1保持要素と第2保持要素との対を含んで構成される。これらの両方の保持要素の対は、互いに対し、第1ポジションにおいては予設定された第1間隔を有し、第2ポジションにおいては予設定された第2間隔を有する。第1間隔においてこれらの保持要素の対は、これらの保持要素の対の間に配置されたラックを保持し、それに対し、第2間隔においてこれらの保持要素の対の間に配置されたラックはもはやこれらの保持要素の対により固定保持されていない。更にグリップ部材は、両方の保持要素の対を第1ポジションに保持する少なくとも1つの弾性要素、例えば少なくとも1つのバネと、両方の保持要素を該弾性要素の復元力に抗して第1ポジションから第2ポジションへ移動させる位置調節要素とを有している。この位置調節ユニットは、特に別の駆動ユニットとして構成されている。第1ポジションにおける予付勢(Vorspannen)により、停電の場合にもラックは確実に保持されており、意図しないでグリップ部材から脱落してしまうようなことはない。本発明の代替的な一実施形態では、両方の保持要素は、第2ポジションにおいても予付勢をかけることができる。
【0027】
グリップ部材は、特に少なくとも1つの係合要素を含んで構成され、該係合要素は、ラックを保持するために該ラックの相補的な係合要素へ係合する。特に各保持要素には、各々1つの係合要素が配設されており、該係合要素は、両方の保持要素が第1ポジションに配置されている場合に、ラックの係合要素へ係合する。それにより移送中のラックの確実な保持が達成される。
【0028】
本発明の更なる特徴及び長所は、添付の図面に図示した本発明の具体的な実施例を説明する後続段落の記載内容から明らかである。
【0029】
上記のごとく本発明において下記形態が可能である。下記各形態は、本願の特許請求の範囲(当初)の各請求項に記載した各々の構成要件に対応している。尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
(形態1)上記一視点のとおり、試料スライドの処理装置であって、試料スライドの収容されたラックを搬入するための搬入区画と、試料スライド上に配置された薄切片を封入剤とカバーガラスを用いて封入処理するための封入モジュールと、ラックを搬出するための搬出区画と、ラックを移送するための移送ユニットと、該移送ユニットを制御するための制御ユニットとを含んで構成され、該移送ユニットは、該移送ユニットを用い、ラックが前記搬入区画と前記封入モジュールと前記搬出区画との間において移送可能であるように構成されている。
(形態2)乾燥ユニットが設けられており、該乾燥ユニットを用い、封入処理された試料スライドから前記封入剤の湿分が除去可能であること、及び、前記移送ユニットは、前記移送ユニットを用い、該乾燥ユニットへラックを供給可能であり及び/又は該乾燥ユニットからラックを取り出し可能であるように構成されていることが好ましい。
(形態3)試料スライドを処理するためのモジュールを取り付けるための第1モジュール取付領域、及び/又は、試料スライドを処理するための他のモジュールを取り付けるための少なくとも1つの第2モジュール取付領域が設けられていること、及び、前記移送ユニットは、前記移送ユニットを用い、前記第1モジュール取付領域内に配設されているモジュール及び/又は前記第2モジュール取付領域内に配設されているモジュールへラックを供給可能であり及び/又は該モジュールからラックを取り出し可能であるように構成されていることが好ましい。
(形態4)前記第1モジュール取付領域内及び/又は前記第2モジュール取付領域内には、試料スライドを処理するためのモジュールとして、試料スライド上に配置された薄切片を封入剤とカバーガラスを用いて封入処理するための封入モジュール、及び/又は、試料スライド上に載置された薄切片の品質を監視する及び/又は封入品質を監視するための品質監視モジュールが取り付けられていることが好ましい。
(形態5)前記移送ユニットは、ラックが、前記搬入区画と、前記封入モジュールと、前記第1モジュール取付領域と、前記第2モジュール取付領域と、前記乾燥ユニットと、前記搬出区画との間において、予め他のユニット或いは領域の1つへ供給されることなく、各々ダイレクトに移送可能であるように構成されていることが好ましい。
(形態6)当該処理装置は、二レベル構造であり、前記搬入区画、前記乾燥ユニット、及び/又は前記搬出区画は第1レベルに配設されており、前記モジュール取付領域は第2レベルに配設されていること、及び、前記移送ユニットは、前記移送ユニットを用い、ラックがこれらの第1、第2のレベルの間において移送可能であるように構成されていることが好ましい。
(形態7)前記移送ユニットは、第1方向へ配向された直線状の第1ガイド要素と、前記第1方向へ及びその反対方向へ移動可能に該第1ガイド要素において支持されている第1キャリッジとを含んで構成されること、該第1キャリッジには、該第1キャリッジと固定結合されており且つ前記第1方向に対して直角に延在する第2方向へ配向された直線状の第2ガイド要素が配設されていること、該第2ガイド要素には、第2キャリッジが前記第2方向へ及びその反対方向へ移動可能に支持されていること、及び、前記第1キャリッジを用い、前記第1方向へ及びその反対方向へ移動可能であり、前記第2キャリッジを用い、前記第2方向へ及びその反対方向へ移動可能であり、少なくとも1つのラックを該ラックの移送中に保持するためのグリップ部材が設けられていることが好ましい。
(形態8)前記第1ガイド要素に沿って前記第1キャリッジを移動させるために、前記第1キャリッジと結合された第1ベルトを動かすための第1駆動ユニット(特に第1電気モータ)と、前記第2ガイド要素に沿って前記第2キャリッジを移動させるために、前記第2キャリッジと結合された第2ベルトを動かすための第2駆動ユニット(特に第2電気モータ)とが設けられていることが好ましい。
(形態9)前記第1ガイド要素の長さは、当該処理装置のハウジングの幅の0.8倍から0.95倍までの間の値を有すること、及び/又は、前記第2ガイド要素の長さは、前記ハウジングの高さの0.5倍から0.95倍までの間の値(特に0.6倍から0.7倍までの間の値)を有することが好ましい。
(形態10)前記第1ガイド要素は、当該処理装置のハウジングのハウジング壁部に配設されていることが好ましい。
(形態11)前記第2キャリッジには直線状の第3ガイド要素が固定結合されており、該第3ガイド要素は、前記第1方向に対して直角に延在し且つ前記第2方向に対しても直角に延在する第3方向へ配向されていること、及び、前記グリップ部材は、該グリップ部材が前記第3方向へ又はその反対方向へ移動可能であるように前記第3ガイド要素において支持されていることが好ましい。
(形態12)前記第3ガイド要素に沿って前記グリップ部材を移動させるために、前記グリップ部材と結合された第3ベルトを動かすための第3駆動ユニット(特に第3電気モータ)が設けられていることが好ましい。
(形態13)前記第1ガイド要素、前記第2ガイド要素、及び/又は前記第3ガイド要素は、シャフトとして又はレール(特にプロフィールレール(形材レール))として構成されていることが好ましい。
(形態14)前記グリップ部材は、移送すべきラックを保持するための第1保持要素と第2保持要素との対を含んで構成されること、前記保持要素の対は、第1ポジションにおいて、互いに対し、予設定された第1間隔を有し、該第1間隔において前記保持要素の対は、前記保持要素の対の間に配置されたラックを固定保持すること、前記保持要素の対は、第2ポジションにおいて、互いに対し、予設定された第2間隔を有し、該第2間隔において前記保持要素の対は、前記保持要素の対の間に配置されたラックを固定保持しないこと、及び、少なくとも1つの弾性要素(特に少なくとも1つのバネ)が、前記保持要素の対を第1ポジションにおいて保持することが好ましい。
(形態15)前記グリップ部材は、少なくとも1つの係合要素を含んで構成され、該係合要素は、ラックを保持するために該ラックの相補的な係合要素へ係合することが好ましい。
【0030】
次に、本発明の具体的な実施例について図面を参照して説明する。
【0031】
本明細書に添付の図面の簡単な説明は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の具体的な第1実施例に従う自動封入装置を示す概要斜視図である。
【図2】図1による自動封入装置の一部分を(他の部分を省いて)示す図である。
【図3】図1、2による自動封入装置の移送ユニットを示す概要斜視図である。
【図4】図3による移送ユニットの一部分を示す概要斜視図である。
【図5】図4に示した移送ユニットの一部分を側面から見た側面図である。
【図6】図4、5に示した移送ユニットの一部分を正面から見た正面図である。
【図7】本発明の具体的な第2実施例に従う自動封入装置の一部分を(他の部分を省いて)示す概要斜視図である。
【実施例1】
【0033】
図1には、本発明の第1実施例として、自動封入装置(自動カバーガラススリッピング装置 Eindeckautomat)10として構成されている試料スライドの処理装置(取扱装置)の概要斜視図が示されている。自動封入装置10はハウジング12を含んで構成され、図1において該ハウジング12は部分的に一点鎖線で示唆されており、従って該ハウジング12により保護され且つ内部に位置する構成部材が見える状態で図示されている。
【0034】
自動封入装置10は搬入区画(受入れコンパートメント;搬入部)14を含んで構成され、該搬入区画14を介し、複数のラック16を自動封入装置10へ供給することができる。ラック16内には、薄切片の載置された複数の試料スライドが配置されており、これらの試料スライドが自動封入装置10を用いて封入処理される。
【0035】
試料スライドの供給は、機械式でも手動式でも行うことができる。従って、自動封入装置10が別の処理装置とは連結されていないスタンドアローン稼動も、ワークステーション稼動も可能である。ワークステーション稼動において自動封入装置10は、特に自動染色装置に隣接して配置され、この際、試料スライドは、これらの試料スライド上に配置された薄切片が染色された後に、自動でラック16内に収容されて自動染色装置から自動封入装置10へ移行される。搬入区画14を介して搬入されたラック16は、これらのラック16の処理に至るまで、キシレン(Xylol)で満たされたキシレン容器内に収容され、これらのキシレン容器の1つが例として符号18で示されている。
【0036】
更に自動封入装置10は、以下において図2〜6に関連して説明する唯一の移送ユニット20を有し、該移送ユニット20を用い、ラック16は自動封入装置10内において移送可能である。この移送ユニット20は、該移送ユニット20を用い、試料スライドの封入処理時に必要である自動封入装置10内のラック16の全ての移送プロセス(Transportvorgaenge)が実行可能であるように構成されている。特に唯一の移送ユニット20だけを用い、搬入区画14の搬入(インプット)から搬出区画(排出コンパートメント;搬出部)22を介した搬出(アウトプット)に至るまでのラック16の移送プロセスを実行することが可能である。従って特に簡単で低コストの構造が達成される。更に故障の発生率が減少される。
【0037】
自動封入装置10は、試料スライドを処理するための各々のモジュールを取り付ける(受容する)ために3つのモジュール取付(受容)領域24、26、28を有する。第1モジュール取付領域24内と第2モジュール取付領域26内には、図1に示された実施例では、試料スライド上に載置された薄切片を封入処理するための各々の封入モジュール30、32が取り付けられている。第3モジュール取付領域28内には品質監視モジュール34が配設されている。或いは、モジュール取付領域24、26、28のうちの2つに品質監視モジュールを配置し、モジュール取付領域24、26、28のうちの1つだけに封入モジュールを配置することも可能である。或いはまた、1つだけの封入モジュールと1つだけの品質監視モジュールを設けることも同様に可能である。また同様に1つだけの封入モジュールを設け、他の両方のモジュール取付領域内にはモジュールを装備しないことも可能である。
【0038】
更に自動封入装置10は、図1では非図示であるが2つの封入剤貯蔵容器を含んで構成され、この際、これらの封入剤貯蔵容器のうちの第1封入剤貯蔵容器は第1封入モジュール30と接続され、第2封入剤貯蔵容器は第2封入モジュール32と接続されている。両方の充填接続管38、40を介して互いに依存しないで両方の封入剤貯蔵容器に封入剤を充填することができる。第1封入剤貯蔵容器内に貯蔵されている第1封入剤は、特に非図示の第1ポンプを介して第1封入モジュール30へポンプ輸送される。それに対応し、第2封入剤貯蔵容器内に貯蔵されている第2封入剤は、第2ポンプを介して第2封入モジュール32へポンプ輸送される。
【0039】
図1に示されている実施例において両方の封入モジュール30、32は同じ構造であり、従って以下において例として第1封入モジュール30のために説明する内容は、対応して第2封入モジュール32にも当てはまるものとする。代替的な一実施形態では、両方の封入モジュール30、32を構造的に異なって構成することも可能である。
【0040】
第1封入モジュール30は取出ユニット42を含んで構成され、該取出ユニット42を用い、第1封入モジュール30に提供されたラック16内に収容されている試料スライドの1つが相前後してこのラック16から取り出される。引き続き、中空針44を用い、予設定された量の第1封入剤が試料スライド上において薄切片の範囲に塗布される。引き続き、吸盤ユニット46がカバーガラス貯蔵容器50からカバーガラス48を取り出し、このカバーガラス48を用いて薄切片をカバーする。その後、封入処理された試料スライドは取出ユニット42を介して再びラック16内へ戻され、この際、試料スライドは、以前に収容されていた収容棚と同じ収容棚へ運ばれる。引き続き、ラック16は、該ラック16から次の試料スライドが取出ユニット42を用いて封入処理のために取り出すことのできる範囲へ移動される。
【0041】
2つの封入剤貯蔵容器を設けることにより、両方の封入モジュール30、32を互いに依存しないで稼動させることができる。即ち一方の封入モジュールは他方の封入モジュールと同時に試料スライドを封入処理することができる。特にそれにより、2種類の異なる封入剤を各々の封入剤貯蔵容器内に貯蔵させることができ、従ってもしも薄切片に応じて異なる封入剤が必要とされる場合には、1つだけの封入モジュールを含んでいる既知の自動封入装置のように封入剤を交換することは必要ではない。
【0042】
搬入区画14は読取ユニットを含んで構成され、該読取ユニットを用い、ラック16に装着されている情報坦体(例えばバーコードやRFIDなど)の情報を読み出すことができる。これらの情報は、特にラック16の一義的な識別(特定 Identifizierung)のための情報を含んでいる。情報坦体から読み出された情報に依存し、自動封入装置10の制御ユニット52が、どの封入剤を用い、該当ラック16内に収容されている試料スライドを封入処理すべきかを検出する。それに対応し、制御ユニット52は、移送ユニット20が該当する正しい封入剤を使用している封入モジュールへラック16を移送するように該移送ユニット20を駆動制御する。従って、互いに並行して作動する両方の封入モジュール30、32に対するラック16の割り当てを、手動選択の必要性を伴うことなく自動的に行うことができる。制御ユニット52内には特にデータベースが保存されており、該データベース内には、各ラック16のために、どの封入剤が使用されなくてはならないかに関する情報(データ)が各ラック16に対して一義的に割り当てられて保存されている。読み出された情報を介し、制御ユニット52はラック16を一義的に識別することができ、従って、どの封入剤が使用されなくてはならないかに関する情報(データ)をデータベースから読み出すことができる。
【0043】
代替的な一実施形態では、ラック16の情報坦体上に記憶された情報が、どの封入剤が使用されなくてはならないかに関する情報(データ)をも既に含んでいる。この場合、対応するデータベースを制御ユニット52内に設ける必要はない。
【0044】
封入モジュール30、32のうちの1つに取り入れられているラック16の全ての試料スライドの封入処理が終了した後に、移送ユニット20は、このラック16を再び封入モジュールから取り出し、そしてこのラック16を、図1では非図示の乾燥ユニットへ供給する。乾燥ユニットを介し、封入剤から湿分(即ち溶剤)が除去され、従って封入剤はより迅速に乾き、カバーガラスが信頼性をもって試料スライドに付着し、試料スライドの更なる処理(取り扱い)においてカバーガラスが滑って位置をずらしてしまうことはない。乾燥ユニットは、特に乾燥室(乾燥チャンバ)を含んで構成され、該乾燥室内には複数のラック16を同時に収容することができ、またヒータ要素を用いて予設定された温度へ加熱された空気流が該乾燥室を通って案内されており、従って、該空気流内に配置された試料スライドは、信頼性をもって迅速に且つ適切に(処理対象に悪影響を及ぼさないようにそっと schonend)乾燥される。
【0045】
乾燥処理後に移送ユニット20はラック16を乾燥ユニットから取り出し、該ラック16を、第3モジュール取付領域28内に取り付けられている品質監視モジュール34へ供給する。この品質監視モジュール34はカメラを含んで構成され、該カメラは、各試料スライドの封入処理済みの少なくとも1つの薄切片の結像画像を有する少なくとも1つの画像を記録する。この結像画像に依存して封入品質が検出される。特に制御ユニット52内には該制御ユニット52により処理される画像処理アルゴリズムが保存されており、該画像処理アルゴリズムを用い、薄切片、カバーガラス、及び/又は試料スライドにおける損傷や、カバーガラスと試料スライドとの間の封入空気や、薄切片の間違った染色などが検出可能である。試料スライドの封入品質が予設定された最低条件に対応しないことを品質監視モジュール34が検出した場合には、特にこのことに関した情報を有するデータが自動封入装置10のオペレータに対して出力(通知)される。
【0046】
ラック16内に収容されている全ての試料スライドが品質監視モジュール34によりその封入品質に関して検査された後に、移送ユニット20は該ラック16を、再び該ラック16内に収容された試料スライドと共に搬出区画22へ移送し、従ってオペレータが該ラック16を取り出すことができる。或いはラックの取り出しを自動で行うこともできる。搬出区画22は、特に引き出し状に構成されており、従ってラック16の簡単な取り出しが可能である。
【0047】
モジュール30、32、34を用いて個々のモジュール取付領域24、26、28を異なって装備する場合にラック16をそれらのモジュール取付領域24、26、28と自動封入装置10の他のユニットとの間で任意に移送可能とするために、移送ユニット20は、該移送ユニット20がラック16を自動封入装置10の個々のユニットとモジュール30、32、34との間において任意に移送できるように構成されており、従って移送ユニット20がラック16をそれらのユニットとモジュール30、32、34との間において強制的に所定の順番をもって移送する必要はない。そのために移送ユニット20は、以下に説明するように、各々互いに直交(orthogonal)に配向された3つのリニアガイド(直線状案内部)を備えたリニア移送機構として構成されており、従って予設定された移送空間内においてラック16を自由に選択可能な(3次元的)移送経路に沿って移送させることができる。そのために移送ユニット20は特に制御ユニット52により制御される。
【0048】
図2には、図1による自動封入装置10の一部分が(他の部分を省いて)概要斜視図として示されており、図2では、ハウジング12の一部分と、ラック16を保持している移送ユニット20とだけが示されている。また図3は、移送ユニット20の概要斜視図を示している。
【0049】
移送ユニット20は、各々互いに直角に配向されている3つのリニアガイド60、62、64を含んで構成され、従って、図3に示すように移送方向P1、P2、P3が各々互いに直角に位置している。それにより自動封入装置10内の3次元空間が簡単に移送ユニット20により到達可能である。
【0050】
第1リニアガイド60は、第1レール68と、該第1レール68において支持されている第1キャリッジ70とを含んで構成され、該第1キャリッジ70は、第1電気モータ72を介して双方向矢印P1の方向において第1レール68上を移動可能である。そのために第1キャリッジ70は、特に第1電気モータ72を介して駆動可能なベルトと固定結合されている。或いは、ベルトの代わりにチェーンを使用することもできる。ベルトは、該ベルトが第1レール68或いは第1レール68が固定されている支持ユニット91により覆われているため、非図示となっている。
【0051】
第2リニアガイド62は、第1キャリッジ70と固定結合されている第2レール74を含んで構成され、従って、該第2レールと、該第2レールにおいて支持されている全ての構成部材とは、第1キャリッジ70が矢印P1の方向に動く場合にはそれと同時に動くことになる。第2レール74には第2キャリッジ76が双方向矢印P2の方向に移動可能に配設されている。そのために第2キャリッジ76は、第2電気モータ78を介して駆動可能な(図3では非図示の)ベルトと固定結合されている。
【0052】
第2キャリッジ76には、第3リニアガイド64の第3レール80が固定配設されており、従って第3レール80は、第2キャリッジ76が移動する場合にはそれと同時に動くことになる。第3レール80には、第3電気モータ84を用いて双方向矢印P3の方向に移動可能に支持されている第3キャリッジ82が設けられている。第3キャリッジ82の移動は、ここでも特に第3電気モータ84により駆動されるベルトを介して行うことができる。
【0053】
第3キャリッジ82にはグリップ部材86が配設されており、該グリップ部材86を介して移送すべきラック16が保持される。図4には、移送ユニット20の一部分の概要斜視図が示されており、図4ではグリップ部材86がよく見てとれる。図5は、当該一部分の側面図を示し、図6は、当該一部分の前面図を示している。
【0054】
グリップ部材86は、第1保持要素88と第2保持要素90とを含んで構成され、これらの保持要素は、第1ポジションにおいて、これらの保持要素がこれらの保持要素の間に配置されたラック16を挟持し、従って固定保持するように配置されている。そのためにこれらの保持要素は、第1ポジションにおいて、互いに対して予設定された第1間隔を置いて配置されている。第2ポジションにおいて第1保持要素88と第2保持要素90とは、これらの保持要素の間の間隔が第1ポジションの場合よりも大きく設定されたポジションに配置されており、従ってこれらの保持要素はラック16をもはや保持することはできない。それにより簡単にラック16を掴み、そして再び放すことができる。
【0055】
支持ユニット91と共に第1レール68は、特に自動封入装置10の後方壁部96に配設されており、従って移送ユニット20のコンパクトな構造が達成されており、それにもかかわらず大きな移送空間が移送ユニット20を介して到達可能である。また特に移送ユニット20は、モジュール取付領域24、26、28へのアクセス(手が届くこと)を妨害することはなく、従ってモジュール30、32、34を容易に交換することができる。
【0056】
この際、第1レール68は、自動封入装置10のほぼ全幅B(図2)にわたって延在し、従って移送ユニット20は、自動封入装置10のほぼ全幅Bにわたってラック16を移送することができる。第2レール74の長さは、好ましくは自動封入装置10の高さH(図2)の0.5倍から0.7倍までの間の値に対応する。
【実施例2】
【0057】
図7には、本発明の第2実施例に従う自動封入装置100の一部分が(他の部分を省いて)概要斜視図として示されている。この第2実施例において、第1リニアガイド60は、第1レール68の代わりにシャフト102を含んで構成され、該シャフト102において第1キャリッジ70が案内されている。第1キャリッジ70の傾き運動(verkippen)を回避するために、第1キャリッジ70と固定結合されている第2レール74は、ローラ104を介してレール106において支持されている。このようなシャフト102を備えた第1リニアガイド60は、第1実施例で示したような第1レール68を備えた第1リニアガイド60よりも低コストである。
【0058】
更に図7では、各々のキャリッジ70、76、82を移動させるベルト108、110、112が、本発明の第2実施例において(遮蔽物を伴わない)前側に配設されており、従ってこれらのベルトを見ることができる。これらのベルトは歯車を介して案内されており、これらの歯車のうちの1つが例として符号114を用いて示されている。
【0059】
それに加え、図7に示されている第2実施例では、モジュール取付領域24、26内にモジュールは配置されてなく、従って支持プレート36とその切欠き部をよく見ることができる。
【0060】
本発明の代替的な一実施形態では、第2リニアガイド62及び第3リニアガイド64が又はこれらのリニアガイドのうちの1つが、第2レール74及び第3レール80の代わりにシャフトを含んで構成することもできる。
【0061】
尚、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づき、実施形態ないし実施例の変更、調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。即ち本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想に従い、当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 自動封入装置
12 ハウジング
14 搬入区画(受入れコンパートメント;搬入部 Eingabefach)
16 ラック
18 キシレン容器
20 移送ユニット
22 搬出区画(排出コンパートメント;搬出部 Ausgabefach)
24、26、28 モジュール取付領域
30、32 封入モジュール
34 品質監視モジュール
36 支持プレート
38、40 充填接続管
42 取出ユニット
44 中空針
46 吸盤ユニット
48 カバーガラス
50 カバーガラス貯蔵容器
52 制御ユニット
60、62、64 リニアガイド
68、74、80 レール
70、76、82 キャリッジ(スライダ)
72、78、84 電気モータ
86 グリップ部材
88、90 保持要素
91 支持ユニット
96 ハウジング壁部(後方壁部)

100 自動封入装置
102 シャフト
104 ローラ
106 レール
108、110、112 ベルト
114 歯車

P1、P2、P3 移送方向
B ハウジングの幅
H ハウジングの高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料スライドの処理装置であって、
試料スライドの収容されたラック(16)を搬入するための搬入区画(14)と、
試料スライド上に配置された薄切片を封入剤とカバーガラス(48)を用いて封入処理するための封入モジュール(30、32)と、
ラック(16)を搬出するための搬出区画(22)と、
ラック(16)を移送するための移送ユニット(20)と、
該移送ユニット(20)を制御するための制御ユニット(52)とを含んで構成され、
該移送ユニット(20)は、該移送ユニット(20)を用い、ラック(16)が前記搬入区画(14)と前記封入モジュール(30、32)と前記搬出区画(22)との間において移送可能であるように構成されていること
を特徴とする処理装置。
【請求項2】
乾燥ユニットが設けられており、該乾燥ユニットを用い、封入処理された試料スライドから前記封入剤の湿分が除去可能であること、及び、
前記移送ユニット(20)は、前記移送ユニット(20)を用い、該乾燥ユニットへラック(16)を供給可能であり及び/又は該乾燥ユニットからラック(16)を取り出し可能であるように構成されていること
を特徴とする、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
試料スライドを処理するためのモジュールを取り付けるための第1モジュール取付領域、及び/又は、試料スライドを処理するための他のモジュールを取り付けるための少なくとも1つの第2モジュール取付領域が設けられていること、及び、
前記移送ユニット(20)は、前記移送ユニット(20)を用い、前記第1モジュール取付領域内に配設されているモジュール及び/又は前記第2モジュール取付領域内に配設されているモジュールへラック(16)を供給可能であり及び/又は該モジュールからラック(16)を取り出し可能であるように構成されていること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記第1モジュール取付領域内及び/又は前記第2モジュール取付領域内には、試料スライドを処理するためのモジュールとして、試料スライド上に配置された薄切片を封入剤とカバーガラス(48)を用いて封入処理するための封入モジュール(30、32)、及び/又は、試料スライド上に載置された薄切片の品質を監視する及び/又は封入品質を監視するための品質監視モジュール(34)が取り付けられていること
を特徴とする、請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記移送ユニット(20)は、ラック(16)が、前記搬入区画(14)と、前記封入モジュール(30、32)と、前記第1モジュール取付領域と、前記第2モジュール取付領域と、前記乾燥ユニットと、前記搬出区画(22)との間において、予め他のユニット或いは領域の1つへ供給されることなく、各々ダイレクトに移送可能であるように構成されていること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
当該処理装置は、二レベル構造であり、前記搬入区画(14)、前記乾燥ユニット、及び/又は前記搬出区画(22)は第1レベルに配設されており、前記モジュール取付領域は第2レベルに配設されていること、及び、
前記移送ユニット(20)は、前記移送ユニット(20)を用い、ラック(16)がこれらの第1、第2のレベルの間において移送可能であるように構成されていること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記移送ユニット(20)は、第1方向(P1)へ配向された直線状の第1ガイド要素(68、102)と、前記第1方向(P1)へ及びその反対方向へ移動可能に該第1ガイド要素(68、102)において支持されている第1キャリッジ(70)とを含んで構成されること、
該第1キャリッジ(70)には、該第1キャリッジ(70)と固定結合されており且つ前記第1方向(P1)に対して直角に延在する第2方向(P2)へ配向された直線状の第2ガイド要素(74)が配設されていること、
該第2ガイド要素(74)には、第2キャリッジ(76)が前記第2方向(P2)へ及びその反対方向へ移動可能に支持されていること、及び、
前記第1キャリッジ(70)を用い、前記第1方向(P1)へ及びその反対方向へ移動可能であり、前記第2キャリッジ(76)を用い、前記第2方向(P2)へ及びその反対方向へ移動可能であり、少なくとも1つのラック(16)を該ラック(16)の移送中に保持するためのグリップ部材(86)が設けられていること
を特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記第1ガイド要素(68、102)に沿って前記第1キャリッジ(70)を移動させるために、前記第1キャリッジ(70)と結合された第1ベルト(108)を動かすための第1駆動ユニット(72)と、前記第2ガイド要素(74)に沿って前記第2キャリッジ(76)を移動させるために、前記第2キャリッジ(76)と結合された第2ベルト(110)を動かすための第2駆動ユニット(78)とが設けられていること
を特徴とする、請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記第1ガイド要素(68、102)の長さは、当該処理装置のハウジング(12)の幅(B)の0.8倍から0.95倍までの間の値を有すること、及び/又は、前記第2ガイド要素(74)の長さは、前記ハウジング(12)の高さ(H)の0.5倍から0.95倍までの間の値を有すること
を特徴とする、請求項7又は8に記載の処理装置。
【請求項10】
前記第1ガイド要素(68、102)は、当該処理装置のハウジング(12)のハウジング壁部(96)に配設されていること
を特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項11】
前記第2キャリッジ(76)には直線状の第3ガイド要素(80)が固定結合されており、該第3ガイド要素(80)は、前記第1方向(P1)に対して直角に延在し且つ前記第2方向(P2)に対しても直角に延在する第3方向(P3)へ配向されていること、及び、
前記グリップ部材(86)は、該グリップ部材(86)が前記第3方向(P3)へ又はその反対方向へ移動可能であるように前記第3ガイド要素(80)において支持されていること
を特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項12】
前記第3ガイド要素(80)に沿って前記グリップ部材(86)を移動させるために、前記グリップ部材(86)と結合された第3ベルト(112)を動かすための第3駆動ユニット(84)が設けられていること
を特徴とする、請求項11に記載の処理装置。
【請求項13】
前記第1ガイド要素(68、102)、前記第2ガイド要素(74)、及び/又は前記第3ガイド要素(80)は、シャフトとして又はレールとして構成されていること
を特徴とする、請求項7〜12のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項14】
前記グリップ部材(86)は、移送すべきラック(16)を保持するための第1保持要素(88)と第2保持要素(90)との対を含んで構成されること、
前記保持要素(88、90)の対は、第1ポジションにおいて、互いに対し、予設定された第1間隔を有し、該第1間隔において前記保持要素の対は、前記保持要素の対の間に配置されたラック(16)を固定保持すること、
前記保持要素(88、90)の対は、第2ポジションにおいて、互いに対し、予設定された第2間隔を有し、該第2間隔において前記保持要素の対は、前記保持要素の対の間に配置されたラック(16)を固定保持しないこと、及び、
少なくとも1つの弾性要素が、前記保持要素(88、90)の対を第1ポジションにおいて保持すること
を特徴とする、請求項7〜13のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項15】
前記グリップ部材(86)は、少なくとも1つの係合要素を含んで構成され、該係合要素は、ラック(16)を保持するために該ラック(16)の相補的な係合要素へ係合すること
を特徴とする、請求項7〜14のいずれか一項に記載の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−242384(P2012−242384A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109129(P2012−109129)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】