説明

ラック搬送装置

【課題】ラックを搬送するラック搬送装置において、補助搬送路上においてラックを横送りする場合にラックの姿勢を安定化させる。
【解決手段】補助搬送路には下方から上方に浮上する複数のローラー46が設けられる。それらが上方に浮上した状態では、ローラー46とレール44との間にラック14の脚部14Aが挟まれた状態となる。これによって補助搬送路上においてラック14を安定して搬送することができる。ローラー46は可動部56に設けられており、その可動部56は回転軸62を中心として回転運動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラック搬送装置に関し、特にラックをその長手方向に横送りする機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ラック搬送装置は、複数の容器を保持したラックを搬送する装置である。各容器には処理対象となる試料、試薬等が収容されている。かかるラック搬送装置は、サンプル測定装置、分注装置、その他の装置に組み込まれる。サンプル測定装置は、各サンプルに対して放射線測定を行う装置である。分注装置は、各サンプルを吸引してそれを分注する装置である。
【0003】
ラック搬送装置は、一般に、搬送テーブル上において、設定された搬送経路に従ってラックを搬送する。特許文献1に記載された装置では、最初に、ラックがラック短手方向に(テーブル奥側へ)段階的に搬送され(第1搬送)、次に、ラックがラック長手方向へ(テーブル左方向へ)段階的に搬送され(第2搬送)、更に、ラックがラック短手方向へ(テーブル手前側へ)段階的に搬送される(第3搬送)。テーブル奥側の中央部には測定ユニットが設けられ、測定ユニットの直下に位置決めされた容器が測定ユニット内に取り込まれ、その状態で容器内のサンプルに含まれる放射性物質が測定される。上記の第2搬送を行うため、搬送テーブルの奥側には第2搬送経路が設定される。第1搬送によってテーブル奥側へ搬送されたラックは、第2搬送経路の向こう側に存在して第2搬送経路を規定するレール部材(の垂直壁面)に当接し、その前進が規定される。その後に上記の第2搬送が行われる。通常、第1搬送経路と第3搬送経路との間には仕切壁が設定され、第2搬送経路上においては、仕切壁におけるテーブル奥側の端部と上記レール部材との隙間を通ってラックが搬送される。その場合には、下方側からあるいはフレーム側から第2搬送経路へ突き出た爪部材によって、ラックが段階的に移送される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−311678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、第2搬送経路上においてラックを搬送する場合にラックの姿勢を必ずしも安定化できないという問題がある。例えば、上記の爪部材による搬送時において、ラックの姿勢が不安定となって、第2搬送経路方向から外れて水平回転したり、ぐらついたりする問題が指摘されている。そのような場合、ラック搬送エラーとなり、あるいは、ラック位置決め誤差が生じる。
【0006】
本発明は、ラックをラック長手方向に横送りする場合にラックを適正に搬送できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の容器を保持したラックを搬送する搬送テーブルを有するラック搬送装置において、前記搬送テーブル上において、第1経路に沿ってラックをその短手方向に搬送する第1搬送機構と、前記第1搬送機構によって搬送されたラックの側面が当接するレール部材を備え、そのレール部材によって規定される第2経路に沿ってラックをその長手方向に搬送する第2搬送機構と、前記第2搬送機構によって搬送されたラックを、第3経路に沿ってその短手方向に搬送する第3搬送機構と、を含み、前記第2搬送機構は、前記第2経路上において搬送されるラックの脚部の進行を案内するローラーと、ラック案内時に前記ローラーを前記第2経路の搬送面上に浮上させる昇降機構と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第2搬送機構によって第2経路に沿ってラックを搬送する場合に、そのラックの脚部が、下方から浮上したローラーによって案内されるので、ラックの姿勢を安定化させて、その搬送を適正に行える。望ましくは、第2経路には複数のローラーがラック進行方向に並んで設けられる。それらは1又は複数の昇降機構によって昇降駆動される。ローラーはそれ自身が回転自在なものとして構成されるのが望ましい。望ましくは、搬送テーブルの一方側に第2経路が設定される場合に、搬送テーブルの他方側に第4経路が設定され、当該第4経路についても上記第2搬送機構と同様の構成をもった第4搬送機構が設けられる。
【0009】
望ましくは、前記ローラーと前記レール部材との間に前記ラックのレール部材側の脚部を通過させる通過路が形成される。ローラーとレール部材との間にラック脚部をある程度の力で挟み込むようにしてもよいし、ローラーとレール部材との間にラック脚部の厚みと同じかそれよりもやや大きい通過路を形成するようにしてもよい。
【0010】
望ましくは、前記昇降機構は、前記第1経路から前記第2経路へ前記ラックが渡される時及び前記第2経路から前記第3経路へ前記ラックが渡される時には、前記ローラーを前記第2経路の搬送面よりも下方側に沈み込ませた状態にする。この構成によれば、第2経路へのラック投入時及び第2経路からのラック排出時に、ローラーが沈んだ状態となるので、ラックの運動を妨げることはない。
【0011】
望ましくは、前記第2搬送機構における前記昇降機構は、複数のローラーを上昇駆動する複数の駆動源を有し、前記複数の駆動源は非同時的に通電動作する。この構成によれば、瞬時電力レベルを抑制して、つまり分散して、電源への負担を軽減できる。あるいは、小規模の電源を利用することが可能となる。
【0012】
望ましくは、前記昇降機構は、所定の回転軸を中心として回転可能に設けられ、前記ローラーを保持する可動部と、前記可動部に連結され、前記可動部を回転駆動するアクチュエータと、を含み、前記可動部の回転運動により前記ローラーが昇降運動する。この構成によれば、可動部の回転運動を利用しているので、その運動に要するスペースを小さくでき、また、可動部の端部にローラーを取り付けておけば必要な昇降ストロークを容易に確保できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、ラックをラック長手方向に横送りする場合にラックを適正に搬送できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1には、本発明に係るラック搬送装置の好適な実施形態が示されている。図1はラック搬送装置における要部構成を示す概略的な斜視図である。このラック搬送装置は、例えば分注装置やサンプル測定装置などに組み込まれるものである。
【0016】
図1において、ラック搬送装置10は、複数のラック14を搬送する台座としての搬送テーブル12を有している。搬送テーブル12は、4つの側壁18,20,22,24によって囲まれている。
【0017】
搬送テーブル12上には、図1において符号100方向にラックを搬送する主搬送路30及び符号104の方向にラックを搬送する主搬送路32が設定されている。主搬送路30から主搬送路32へのラックの送り込みは補助搬送路(横送り搬送路)上において行われ、その補助搬送路上におけるラック搬送方向が符号102によって示されている。また、主搬送路32から主搬送路30へのラックの搬送は上記同様の補助搬送路において行われており、そこにおけるラックの搬送方向が符号106によって示されている。
【0018】
例えば、符号100で示すように、主搬送路30上においてラックが前方に搬送されると、そのラックは側壁22に突き当たり、その後、そのラックは符号102で示される方向に横送りされる。そして、仕切り壁28を越えてラックの全部が主搬送路32側へ到達すると、当該ラックが符号104で示される方向へ搬送されることになる。そして、このような搬送過程がもう1つの補助搬送経路上においても実行されている。ちなみに、側壁22,26の下方には補助搬送路を規定するレール44が設けられている。ラック14の下部には一対の脚部14Aが形成されており、それらの内で一方側の脚部の外面(側面)がレール44に当接する。
【0019】
本実施形態においては、各補助搬送路に補助搬送機構が設けられている。補助搬送機構は爪部材によってラックを横送りする機構を含み、更に、本実施形態においては横送り搬送されるラックの姿勢を安定化するために複数のローラー46を有する補助案内機構が設けられている。図1においては、補助案内機構に含まれる2つの昇降機構40,42が概略的に示されている。
【0020】
なお、主搬送路30,32においては、主搬送機構としての複数のベルト部材34,36によってラックの搬送が行われている。ちなみに、符号100,104で示される搬送方向はラックの短手方向に相当しており、符号102,106で示される搬送方向はラックの長手方向に相当している。
【0021】
図2には、サンプル搬送装置の上面図が示されている。上述したように、搬送テーブル上には主搬送路30,32が設定されており、それらを連絡する搬送路として2つの補助搬送路50,52が設定されている。それらは互いに同一の構成を有する。
【0022】
補助搬送路50,52においては上述したレール44が設けられている。補助搬送路50,52におけるラック搬送面にはラック進行方向に沿って複数の開口54が形成されている。それらの複数の開口54に対応して、複数のローラー46が上下動自在かつ回転自在に設けられている。1つの開口54内には1つのローラー46が設けられており、そのローラー46はラックを横送りする場合に、その搬送を円滑にするためにラック搬送面上から上方へ浮上する。一方、主搬送路30から補助搬送路50へのラック投入時、補助搬送路50から主搬送路32へのラック排出時、主搬送路32から補助搬送路52へのラック投入時、及び、補助搬送路52から主搬送路30へのラック排出時にはそれぞれのローラーがラック搬送面より下に沈み込んだ状態となる。すなわち、各ローラー46は必要に応じてラック搬送面の下方から上方へ突き出て案内動作するものである。複数のローラー46の昇降は後に詳述する複数の昇降機構40,42によって行われている。
【0023】
ちなみに、図2において符号110は、補助搬送路50においてラック搬送方向に運動する爪部材を模式的に表している。また、符号112はその爪部材110を前後動する機構を模式的に表している。爪部材110によってラックを横送り搬送する場合には符号114で示される方向に爪部材110が運動する。
【0024】
図3には、図2においてA−A’で示されるライン上の断面図あるいは構造が示されている。図3を用いて昇降機構42について具体的に説明する。
【0025】
昇降機構42は、ベース60に設けられた回転軸62を中心として回転運動を行う可動部56を有する。可動部56には、アクチュエータ66の軸66Aにおける一端部が連結されており、符号68はその一端部の連結部材を表している。可動部56における第1フレーム64には第2フレーム70が連結されており、その第2フレーム70の端部にローラー軸46Aを介してローラー46が設けられている。アクチュエータ66はベース60上に固定されており、アクチュエータ66を通電駆動することにより軸66Aが符号120の方向に運動し、これによって回転軸62を中心として可動部56が反時計回り方向に運動する。すると、ローラー46がラック搬送面58より上方に浮上する。
【0026】
ラック14には上述したように一対の脚部14Aが設けられており、ローラー46は一対の脚部14Aの間にある空間14Bに進入する。そして、ローラー46とレール44との間に一方の脚部14Aを通過させる隙間が形成される。その隙間を通って当該一方の脚部14Aを所定方向に運動させることができる。この場合において、ローラー46によってその脚部14Aをレール44側へ押しつけるようにしてもよい。いずれにしても、ローラー46を上方に浮上させてそれによって脚部14Aの運動を案内することにより、ラック14が不必要に搬送テーブル上において回転したりあるいはその姿勢が不必要に変化してしまったりする問題を未然に防止することが可能である。
【0027】
図4には、ローラー46がラック搬送面58より下方に沈み込んだ状態が示されている。すなわち、アクチュエータ66の作用によって、具体的にはアクチュエータ66への通電を停止させることにより、軸66Aが符号122の方向へ運動し、これによって回転軸62を中心として可動部56が時計回り方向に運動する。これによってローラー46は上述したようにラック搬送面58より下方に沈み込むことになる。
【0028】
上記のような昇降機構42によれば、可動部56の回転運動によってローラー46を昇降運動、すなわち、浮上あるいは沈み込み運動させることが可能であるので、簡易な機構によってローラーの動作を実現することが可能である。
【0029】
本実施形態においては、図2に示したように、補助搬送路50,52において、それぞれ4つのローラー46が設けられており、それに対して2つの昇降機構40,42が設けられている。すなわち各昇降機構40,42は2つのローラー46の駆動を行っている。複数の昇降機構40,42はそれぞれ時間的にシフトしたタイミングで通電されている。すなわち、全ての昇降機構40,42に対して同時に通電を行って複数のアクチュエータを同時に動作させると、瞬時電力が増大して電源への負担が高まる。あるいは大きな電源を用意しておく必要がある。これに対し、本実施形態のように、複数の昇降機構を順番に動作させることにより、瞬時的に要する電力を抑圧してすなわち電源に対する負担を分散化して、合理的な通電制御を行えるという利点がある。ちなみに、4つの昇降機構の内で2つずつ昇降機構を同時動作させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るラック搬送装置の概略的な斜視図である。
【図2】本発明に係るラック搬送装置の上面図である。
【図3】ローラーが浮上した状態を示す図である。
【図4】ローラーが沈み込んだ状態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 ラック搬送装置、12 搬送テーブル、14 ラック、16 容器(試験管)、30,32 主搬送路、40,42 昇降機構、44 レール、46 ローラー、50,52 補助搬送路(副搬送路)、54 開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器を保持したラックを搬送する搬送テーブルを有するラック搬送装置において、
前記搬送テーブル上において、第1経路に沿ってラックをその短手方向に搬送する第1搬送機構と、
前記第1搬送機構によって搬送されたラックの側面が当接するレール部材を備え、そのレール部材によって規定される第2経路に沿ってラックをその長手方向に搬送する第2搬送機構と、
前記第2搬送機構によって搬送されたラックを、第3経路に沿ってその短手方向に搬送する第3搬送機構と、
を含み、
前記第2搬送機構は、
前記第2経路上において搬送されるラックの脚部の進行を案内するローラーと、
ラック案内時に前記ローラーを前記第2経路の搬送面上に浮上させる昇降機構と、
を有することを特徴とするラック搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記ローラーと前記レール部材との間に前記ラックのレール部材側の脚部を通過させる通過路が形成されることを特徴とするラック搬送装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記昇降機構は、前記第1経路から前記第2経路へ前記ラックが渡される時及び前記第2経路から前記第3経路へ前記ラックが渡される時には、前記ローラーを前記第2経路の搬送面よりも下方側に沈み込ませた状態にすることを特徴とするラック搬送装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記第2搬送機構における前記昇降機構は、複数のローラーを上昇駆動する複数の駆動源を有し、
前記複数の駆動源は非同時的に通電動作することを特徴とするラック搬送装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
前記昇降機構は、
所定の回転軸を中心として回転可能に設けられ、前記ローラーを保持する可動部と、
前記可動部に連結され、前記可動部を回転駆動するアクチュエータと、
を含み、
前記可動部の回転運動により前記ローラーが昇降運動することを特徴とするラック搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−176665(P2007−176665A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378674(P2005−378674)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】