説明

ラテックスおよびフィルム

【課題】種々の基材に対して良好な付着性を有し、しかもフィルム化した際に高い耐水性や、光沢性を有するラテックスを提供すること。
【解決手段】アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られるラテックスであって、前記アルカリ可溶性共重合体が、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物を含み、前記ラテックスを構成するラテックス粒子のゲル分の含有量が、ラテックス粒子全体100重量%に対して、50重量%以上であることを特徴とするラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られるラテックスに関し、種々の基材に対して良好な付着性を有し、フィルム化した際に高い耐水性および光沢性を有するラテックスに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ラテックスは、乳化剤の存在下、水媒体中で単量体を重合して得られている。しかしながら、このようにして得られるラテックスをフィルム化すると、耐水性に劣るという問題がある。この問題を解決するために、分散安定化剤として、乳化剤に代えてアルカリ可溶性共重合体の中和物を使用することが提案されている。
【0003】
アルカリ可溶性共重合体は、アルカリの作用により水媒体に可溶となる共重合体であり、通常、塩基性物質で中和することにより、水溶液として使用される。このようなアルカリ可溶性共重合体としては、低級アルコールやケトン類等の有機溶媒中あるいはグリコール類と水との混合溶媒中で重合して得られる共重合体(たとえば、特許文献1)、ラウリル硫酸ナトリウム等の非重合性乳化剤を溶解した水媒体中で乳化重合して得られる共重合体(たとえば、特許文献2)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム等の重合性乳化剤を溶解した水媒体中で乳化重合して得られる共重合体(たとえば、特許文献3)等が知られている。
【0004】
しかし、特許文献1では、アルカリ可溶性共重合体を得る際に有機溶媒を使用しているため、次のような問題があった。すなわち、このような共重合体を分散安定化剤として用いると、脱有機溶媒が不十分となり重合時の分散安定性が低下して凝固物が発生するという問題や、さらには、有機溶媒が連鎖移動効果を示して重合を阻害してしまうという問題があった。
【0005】
また、特許文献2,3のように、非重合性乳化剤または重合性乳化剤を用いて製造したアルカリ可溶性共重合体を、分散安定化剤として用いた場合には、得られるフィルムの耐水性は、ある程度改善されるものの、未だ不十分であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭57−108103号公報
【特許文献2】特開平4−7309号公報
【特許文献3】特開平6−271779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、種々の基材に対して良好な付着性を有し、しかもフィルム化した際に高い耐水性や、光沢性を有するラテックス、およびこのラテックスを塗布して得られるフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られるラテックスにおいて、前記アルカリ可溶性共重合体中に、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物を含有させ、しかも、ラテックスを構成するラテックス粒子中のゲル分の含有量を所定の範囲に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係るラテックスは、アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られるラテックスであって、
前記アルカリ可溶性共重合体が、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物を含み、
前記ラテックスを構成するラテックス粒子のゲル分の含有量が、ラテックス粒子全体100重量%に対して、50重量%以上であることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記単量体100重量部に対する、前記アルカリ可溶性共重合体の中和物の比率が、10〜40重量部である。
好ましくは、前記単量体が、架橋性単量体を含有する。
好ましくは、前記アルカリ可溶性共重合体中に含有される前記水溶性高分子化合物の比率が、重量比で、前記架橋性単量体の2〜20倍である。
好ましくは、前記ラテックスは、無機顔料をさらに含有する。
【0011】
本発明に係るフィルムは、上記いずれかのラテックスを塗布してなるフィルムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、種々の基材に対して良好な付着性を有し、しかもフィルム化した際に高い耐水性および光沢性を有するラテックスを提供することができる。さらに本発明によれば、このラテックスを塗布することにより得られ、上記特性を有するフィルムを提供することもできる。
なお、本発明において、ラテックスとは、ラテックスを構成するラテックス粒子や水以外の材料(たとえば、無機顔料等)を含有するラテックス組成物や水性塗料をも含む概念である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るラテックス、および本発明のラテックスを塗布することにより得られるフィルムについて、詳細に説明する。
【0014】
本発明のラテックスは、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の存在下で、単量体(B)を重合することにより製造されるものである。
【0015】
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物
本発明で用いられるアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物は、アルカリ可溶性共重合体を、塩基性物質で中和することによって得られるものである。
本発明に係るアルカリ可溶性共重合体(A)は、少なくともアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)を含み、好ましくは、このアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)の存在下で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、これと共重合可能なその他の単量体と、からなるアルカリ可溶性共重合体用の単量体混合物(a2)を重合して得られものである。
【0016】
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)は、水溶性高分子化合物のうち、分子量1,000当りにアルコール性水酸基を5〜25個含有しているものを意味する。アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)としては、たとえば、ポリビニルアルコールや、その各種変性物などのビニルアルコール系重合体;酢酸ビニルと、アクリル酸、メタクリル酸または無水マレイン酸との共重合体のけん化物;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシルメチル澱粉、酸化澱粉などの澱粉誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム;ポリアルキレングリコール;などが挙げられる。
【0017】
これらのなかでも、工業的に品質が安定したものを入手しやすい点から、ビニルアルコール系重合体が好ましく、特に、4級アンモニウム塩などのカチオン基を側鎖に有するカチオン変性ビニルアルコール系重合体が好ましい。アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)の分子量は、特に限定されないが、10,000〜500,000、好ましくは20,000〜150,000である。分子量が小さすぎると、分散安定効果が低くなる場合がある。一方、分子量が大きすぎると、重合時の粘度が高くなり、重合が困難となる場合がある。
【0018】
アルコール性水酸基含有水溶性高分子(a1)の比率は、後述するアルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で重合する単量体(B)中に含有される架橋性単量体の添加量との関係で決定することが好ましい。具体的には、上記架橋性単量体(B)に対して、重量比で、好ましくは2〜20倍、より好ましくは3〜15倍とする。アルコール性水酸基含有水溶性高分子(a1)の量が少なすぎると、分散安定効果が低くなり、重合時に凝集物が発生し、得られるフィルムの付着性や光沢性、耐水性が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、重合時の粘度が高くなり、重合が困難となり、得られるフィルムの付着性や光沢性、耐水性が悪化する傾向にある。
【0019】
なお、アルカリ可溶性共重合体用の単量体混合物(a2)に対する、アルコール性水酸基含有水溶性高分子(a1)の比率は、特に限定されないが、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.2〜15重量部、より好ましくは0.8〜5重量部である。
【0020】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されず、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の多価カルボン酸無水物;などを挙げることができる。これらの単量体は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
これらのエチレン性不飽和酸単量体のうち、(メタ)アクリル酸〔メタクリル酸および/またはアクリル酸の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕等のエチレン性不飽和モノカルボン酸が好適である。
【0021】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、単量体混合物(a2)全体100重量%に対して、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体が少なすぎると、得られる共重合体がアルカリに可溶とならない場合がある。一方、多すぎると、分散安定効果が低下する場合がある。
【0022】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アリルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和グリシジルエーテル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、 N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;等が挙げられる。これらの単量体は単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0023】
共重合可能なその他の単量体の使用量は、単量体混合物(a2)全体100重量%に対して、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%である。
【0024】
なお、アルカリ可溶性共重合体の製造に用いる単量体混合物(a2)のうち、水への溶解度が比較的低い単量体、すなわち、20℃における水100gへの溶解度が0.2gより低い単量体の使用量は、30重量%以下とすることが好ましい。この量が多すぎると、得られる共重合体がアルカリに可溶とならなくなる場合がある。
【0025】
アルカリ可溶性共重合体(A)は、上記したアルコール性水酸基含有水溶性高分子(a1)の存在下で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、これと共重合可能なその他の単量体とからなる単量体混合物(a2)を、水媒体中で重合することによって得ることができる。この際、アルコール性水酸基含有水溶性高分子と、単量体混合物とを、重合開始前に反応器に一括して添加し、その後重合させる方法を採用しても良いし、あるいは、重合開始前には一部だけ添加しておき、重合開始後に分割添加または連続添加していく方法を採用しても良い。なお、分割添加あるいは連続添加する場合においては、添加量および添加時期は適宜調整すれば良く、たとえば添加量を均等にしたり、また、添加時期を一定としたり、あるいは、添加量や添加時期を重合の進行段階に応じて変えることもできる。
【0026】
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)と単量体混合物(a2)とは、それぞれ別々に反応器に添加しても良いし、あるいは、これらを予め水に分散させ、分散体として、反応器に添加しても良い。これらの添加方法のうちでは、予め水に分散させ、分散体として、反応器に分割添加または連続添加する方法が好ましい。このような方法を採用することにより、得られるアルカリ可溶性共重合体における、高分子鎖中のエチレン性不飽和酸単量体の連鎖分布の均一化を図ることができる。
【0027】
あるいは、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)と単量体混合物(a2)とを別々に添加する場合は、両者の添加をほぼ同時に開始するのが望ましい。単量体混合物のみを、先に多量に添加すると、凝集物が発生し易くなる。一方、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物のみを、先に多量に添加すると、重合系が増粘したり、凝集物が発生し易くなる。両者の添加終了は、必ずしも同時である必要はないが、ほぼ同時とすることが望ましい。
【0028】
アルカリ可溶性共重合体用の単量体混合物(a2)を重合するための重合開始剤としては、特に限定されず、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、その種類によって異なるが、アルカリ可溶性共重合体用の単量体混合物全体100重量部に対して、0.2〜15重量部、好ましくは0.8〜5重量部である。
【0029】
また、これらの重合開始剤は還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。この場合に用いる還元剤としては、特に限定されず、たとえば、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、その種類によって異なるが、重合開始剤1重量部に対して、好ましくは0.03〜10重量部である。
【0030】
アルカリ可溶性共重合体の製造に際しては、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、連鎖移動の効率という観点より、メルカプト基を有する化合物が好ましい。その中でも、炭素数20以下の化合物であるn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸等が特に好ましい。
【0031】
連鎖移動剤を使用する場合、その添加量は、アルカリ可溶性共重合体用の単量体混合物(a2)全体100重量部に対して、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは5〜12重量部である。連鎖移動剤の添加量が少なすぎると、中和後の粘度が高くなり、取扱いが困難となる傾向にある。一方、多すぎると、得られる重合体の分子量が著しく低下し、分散安定化剤として機能しなくなる。連鎖移動剤を重合系に添加する方法は、特に限定されず、一括添加する方法を採用しても良いし、あるいは、断続的にまたは連続的に添加する方法を採用しても良い。
【0032】
アルカリ可溶性共重合体を製造する時の重合温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃である。
【0033】
そして、上記のようにして製造されるアルカリ可溶性共重合体(A)を、塩基性物質で中和することにより、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物を得ることができる。
アルカリ可溶性共重合体(A)を中和するために用いる塩基性物質としては、特に限定されないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;等や、これらの混合物が用いられる。これらのうち、アンモニアが好適である。
【0034】
なお、本発明で用いられるアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の中和度は、特に限定されず、通常、その中和度(エチレン性不飽和酸単量体のモル当量に対する塩基性物質のモル当量)が70%以上、好ましくは95%以上である。
【0035】
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物存在下における、単量体(B)の重合
次いで、上記にて得られたアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の存在下で、単量体(B)を重合することにより、本発明のラテックスを得る。
アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で重合させるための単量体(B)としては、特に限定されないが、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリルニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アリルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和グリシジルエーテル単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチル等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の架橋性単量体等が挙げられる。これらの単量体は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明においては、上記各単量体のなかでも、特に、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の架橋性単量体を含むことが好ましい。これら架橋性単量体を含有させることにより、ラテックス中のゲル分を所望の範囲とすることができ、その結果、フィルム化した際における付着性や耐水性を向上させることができる。架橋性単量体の含有量は、単量体全体100重量部に対して、好ましくは0.05〜1.0重量部、より好ましくは0.1〜0.8重量部である。架橋性単量体の含有量が少なすぎると、上記効果が得られなくなる傾向にある。一方、多すぎると成膜しにくくなる。
【0037】
また、架橋性単量体の含有量は、上記したアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物(a1)の含有量との関係で、以下の範囲とすることが好ましい。すなわち、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の比率が、架橋性単量体に対して、重量比で、好ましくは2〜20倍、より好ましくは3〜15倍とする。
【0038】
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物と、この中和物の存在下で重合する単量体(B)との比率は、次のような範囲とすることが好ましい。すなわち、単量体100重量部に対して、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の比率を、好ましくは10〜40重量部、より好ましくは20〜35重量部とする。アルカリ可溶性共重合体の中和物が少なすぎると、単量体の分散安定効果が低くなり、凝集物が発生し、ラテックスが安定的に得られなくなる場合がある。一方、多すぎると、得られるラテックスの粘度が高くなり、取扱いが困難となったり、得られるフィルムの耐水性が悪化してしまう場合がある。
【0039】
本発明のラテックスは、上記した単量体(B)を水媒体中で、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の存在下に重合することによって得ることができる。この際、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物と、単量体(B)とを、重合開始前に反応器に一括して添加し、その後重合させる方法を採用しても良いし、重合開始前に前記中和物及び単量体を一部だけ添加しておき、重合開始後に分割添加または連続添加していく方法を採用しても良い。なお、分割添加あるいは連続添加する場合においては、添加量および添加時期は適宜調整すれば良く、たとえば添加量を均等にしたり、また、添加時期を一定としたり、あるいは、これらを重合の進行段階に応じて変えることもできる。
【0040】
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物と単量体(B)とは、それぞれ別々に反応器に添加しても良いし、あるいは、これらを予め水に分散させ、分散体として、反応器に添加しても良い。アルカリ可溶性共重合体の中和物と単量体とを別々に添加する場合は、両者の添加をほぼ同時に開始するのが望ましい。単量体のみを、先に多量に添加すると、凝集物が発生し易くなる。一方、アルカリ可溶性共重合体の中和物のみを、先に多量に添加すると、重合系が増粘したり、凝集物が発生し易くなる。両者の添加終了は、必ずしも同時である必要はないが、ほぼ同時とすることが望ましい。
【0041】
単量体(B)を重合する際の温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃である。
【0042】
このようにして得られる本発明のラテックスは、それを構成するラテックス粒子のゲル分の含有量が、ラテックス粒子全体100重量%に対して、50重量%以上であり、好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上に制御されている。ラテックス粒子のゲル分を上記範囲とすることにより、フィルム化した場合に、各種基材との付着性を高めることがでるとともに、得られるフィルムの光沢性、耐水性を向上させることができる。なお、ラテックス粒子のゲル分の含有量は、たとえば、次の方法により求めることができる。すなわち、まず、ラテックスをフィルム化し、次いで得られたフィルムを温度20℃としたメチルエチルケトン(MEK)に48時間浸漬する。そして、MEKに浸漬する前のフィルム重量と、浸漬した後のフィルム重量から、ゲル分の含有量を求めることができる。
【0043】
また、本発明のラテックスは、予め調製したアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物を得て、さらに、この中和物の存在下で、単量体(B)を重合させるという工程を経て得られるものである。そのため、本発明のラテックスは、アルカリ可溶性共重合体(A)を主として含有する部分と、単量体(B)の重合物を主として含有する部分と、を有するような構成となり、これらの各部分が存在するため、通常、2つのガラス転移温度を有することとなる。なお、これら各部分は、単量体(B)の重合物を主として含有する部分がコアとなり、アルカリ可溶性共重合体(A)を主として含有する部分がシェルとなるコア−シェル構造を形成していても良いし、あるいは、単量体(B)の重合物を主として含有する部分中に、アルカリ可溶性共重合体(A)を主として含有する部分が、均一に分散しているような構造となっていても良い。
【0044】
なお、本発明のラテックスには、必要に応じて、各種無機顔料を含有させて水性塗料としても良い。このような無機顔料としては特に限定されないが、たとえば、クレイ、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、シリカ、雲母などが挙げられる。無機顔料の含有量は、特に限定されないが、ラテックス中に含有される固形分100重量部に対して、好ましくは100〜400重量部、より好ましくは150〜300重量部である。本発明のラテックスによれば、無機顔料を含有させて水性塗料とした場合においても、分散性、貯蔵安定性、さらには抑泡性に優れた塗料を得ることができる。
【0045】
このようにして得られる本発明のラテックスは、刷毛塗り法、浸漬法、スプレー法、ロールコータ法、ドクターブレード法などにより、各種基材(たとえば、紙、プラスチックフィルム、無機基材、金属基材等)上に塗布し、その後、室温下または温風で乾燥させることにより、フィルム化することができる。このようにして得られるフィルムは、各種基材との付着性が高く、光沢性および耐水性に優れているため、このような性能が要求される各種用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕および〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、ラテックス、無機顔料を含有する水性塗料、およびこれらを用いて得られたフィルムの評価は下記の方法により行った。
【0047】
ラテックス中のゲル分含有量
まず、固形分濃度を30%に調整したラテックスを枠付きガラス板に流延し、その後、25℃で4日間静置してフィルムとした。次いで、得られたフィルムから、一定量を精秤して(重量W)、80メッシュの金網のカゴに入れて、温度20℃としたメチルエチルケトン(MEK)に48時間浸漬した。そして、浸漬させたカゴを引き上げ、25℃、2日間の条件で真空乾燥した後、MEKに溶解せずにカゴ内に残存しているラテックスのフィルムの量を精秤した(重量W)。最後に、得られた重量W、Wから、下記式(1)に従い、ゲル分を求めた。
ゲル分(重量%)=(W/W)×100 (1)
【0048】
付着性
まず、固形分濃度を30%に調整したラテックスを、モルタル板、PVC板、PET板、ABS板およびアルミ板上に、100g/mの量で塗布し、室温で24時間放置することにより乾燥し、フィルム化した。次いで、得られたフィルムについて、JIS K5600に準拠したクロスカット法により付着性を評価した。具体的には、まず、得られたフィルムに、カッターナイフにより塗装膜上に1mm×1mmの大きさの方眼を合計100個刻み付けた。次いで、得られた碁盤目に25mm巾のセロハンテープを十分圧着して貼り付け、その後、セロハンテープを引き剥がした。その結果、欠落せずに残存する目の数を計測し、以下の基準で評価した。
◎:100個
○:99〜90個
△:89〜80個
×:79個以下
【0049】
光沢性
まず、固形分濃度を30%に調整したラテックスを、市販の塗工紙(坪量86g/m、白紙光沢20%)上に5g/mの量で塗布し、乾燥することにより、フィルム化し、その後、23℃、湿度50%、24時間の条件で調湿した。次いで、得られたフィルムについて、グロスメーター(GM−26D、村上色彩社製)を用いて、入射角75°、反射角75°の条件で、塗被紙表面の光の反射率(%)を測定した。反射率が大きい程、光沢に優れている。
【0050】
ラテックスフィルムの耐水性
固形分を30%に調整したラテックスを、ガラス板上に100g/mの量で塗布し、乾燥することによりフィルム化し、その後、23℃、湿度50%、24時間の条件で調湿した。次いで、得られたフィルム(10cm×10cm)について、水道水に23℃、10日間浸し、ラテックスフィルムの耐水性試験を行った。ブリスター(水ぶくれ)の数に基づいて、以下の通りに評価した。ブリスターの数が少ない程、耐水性に優れている。
◎:ブリスター0個(変化なし)
○:ブリスター1〜5個
△:ブリスター6〜15個
×:ブリスター16〜20個
××:ブリスター21個以上
【0051】
水性塗料の保存安定性
まず、無機顔料を含有する水性塗料について、23℃における粘度をB型粘度計を用いて測定した。次いで、この塗料を50℃、30日間の条件で保存した後、再び23℃まで冷却して塗料粘度を測定した。保存前後の塗料粘度の差を絶対値で求め、保存前の塗料粘度に対する、保存前後の塗料粘度の差の比率を、下記式(2)に従って求めた。そして、得られた結果を、以下のような基準で評価した。
粘度変化率(%)=(|保存後の粘度−保存前の粘度|/保存前の粘度)×100 (2)
○:粘度変化率10%未満
△:粘度変化率10%以上20%未満
×:粘度変化率20%以上
【0052】
水性塗料の耐水性
まず、無機顔料を含有する水性塗料を、アプリケータを用いて、厚さ250μmの条件でガラス板上に塗布し、その後、23℃、湿度50%、72時間の条件で乾燥して、フィルム化することにより、ガラス板とフィルムとからなる測定用サンプルを得た。次いで、このサンプルを水に24時間浸漬し、その後、サンプルを水から取り出して塗膜表面の状態を観察し、以下の基準で判定することにより、耐水性を評価した。
○:塗膜表面の状態が、水に浸漬する前と比べ変化がない。
△:塗膜が水で膨らみ、ガラス板と塗膜とが剥離している箇所が、部分的に存在する。
×:ほぼ全面にわたり、塗膜がガラス板から剥離している。
【0053】
水性塗料の顔料分散度(線条法)
無機顔料を含有する水性塗料について、JIS K5400 4.7.2(線条法)に基づき、つぶゲージを用いて塗料分散度を測定し、本実施例では30μm未満を良好とした。
【0054】
実施例1
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の調製
メタクリル酸メチル:22.5部、メタクリル酸:6.5部、スチレンスルホン酸ナトリウム:1部、チオグリコール酸オクチル:2.35部、ポリビニルアルコール(重合度500、けん化度88モル%、クラレ社製):3部およびイオン交換水:30部を撹拌、混合して分散物を調製した。一方、内部を窒素置換した攪拌機付き反応器に、イオン交換水:85部を仕込み、その後、80℃に加熱し、5%過硫酸カリウム水溶液:40部を反応器に添加した。そして、80℃に保持された反応器に、上記にて調製した分散物を2時間かけて連続添加することにより、単量体を重合させた。分散物の添加を終了した後、さらに30分間80℃に保持して、アルカリ可溶性共重合体の水分散液を得た。次いで、得られたアルカリ可溶性共重合体の水分散液に、共重合体を構成するメタクリル酸と当モル量となるように28%のアンモニア水を添加後、固形分濃度を調整して、25%のアルカリ可溶性共重合体の中和物水溶液を得た。
【0055】
ラテックスの製造
次いで、上記にて得られたアルカリ可溶性共重合体の中和物水溶液を、固形分換算で30部反応器に仕込み、その後、80℃に加熱し、5%過硫酸カリウム水溶液:12.6部を反応器に添加した。80℃に保持された反応器に、メタクリル酸メチル:55部、アクリル酸ブチル45部、および架橋性単量体であるテトラエチレングリコールジメタクリレート:0.3部を混合することにより得られた単量体(B)の混合物を、2時間かけて連続添加することにより、単量体を重合させた。単量体(B)の混合物の添加を終了した後、さらに3時間重合させて、最後に30℃に冷却して、固形分濃度35%、pH7.2のラテックスを得た。
得られたラテックスについて、ラテックス中のゲル分を上記方法により測定するとともに、上記各方法により、ラテックスをフィルム化し、耐水性、付着性および光沢性を評価した。結果を表1に示す。
【0056】
無機顔料を含有する水性塗料の調製
まず、スチレン−無水マレイン酸オリゴマーSMA3000(Tg125℃、酸価285KOHmg/g、重量平均分子量9,500、スチレン:マレイン酸=3:1、Sartomer社製)を28%アンモニア水溶液で完全中和することにより、固形分濃度が50%であるスチレン−無水マレイン酸オリゴマー溶液を調製した。次いで、上記にて得られたラテックスの固形分100部に対して、スチレン−無水マレイン酸オリゴマーの添加量が1.5部となるように、上記にて調製した溶液を添加して、混合溶液を得た。
【0057】
次いで、この混合溶液を撹拌しながら、ラテックス固形分100部に対して、消泡剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 SM5515):2部、炭酸カルシウム:240部、および酸化チタン:60部を添加し、引き続き、メタノール10部および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(チッソ(株)製 CS−12):17部を添加して、無機顔料を含有する水性塗料を得た。本実施例では、28%アンモニア水溶液を用いて、得られた水性塗料のpHを10.5に調整した。
得られた水性塗料について、上記各方法により、顔料の分散度、保存安定性、および耐水性を評価した。結果を表2に示す。
【0058】
実施例2,3
各成分の比率を、表1に示す比率とした以外は、実施例1と同様にしてラテックスを製造し、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0059】
そして、上記にて得られたラテックスを用い、さらに、各成分の比率を表2に示す比率とした以外は、実施例1と同様にして無機顔料を含有する水性塗料を調製し、実施例1と評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0060】
なお、実施例2においては、アルカリ可溶性共重合体に含有させるアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物として、実施例1で使用した重合度500のポリビニルアルコールとともに、カチオン基(4級アンモニウム塩)を側鎖に有するカチオン変性ポリビニルアルコール(粘度18.0〜22.0mPa・s、けん化度85.5〜88.0モル%、日本合成化学社製)を併用した。さらに、実施例2においては、水性塗料を調製する際のスチレン−無水マレイン酸オリゴマーとして、SMA2625(Tg110℃、酸価220KOHmg/g、重量平均分子量9,000、スチレン:マレイン酸=2:1、Sartomer社製)を使用した。
【0061】
また、実施例3においては、アルカリ可溶性共重合体に含有させるアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物として、ポリビニルアルコール(重合度1700、けん化度98〜99.5モル%、クラレ社製)を使用した。さらに、実施例3においては、水性塗料を調製する際のスチレン−無水マレイン酸オリゴマーとして、SMA2000(Tg135℃、酸価355KOHmg/g、重量平均分子量7,500、スチレン:マレイン酸=2:1、Sartomer社製)を使用した。
【0062】
比較例1〜5
各成分の比率を、表1に示す比率とした以外は、実施例1と同様にしてラテックスを製造し、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0063】
そして、上記にて得られたラテックスを用い、さらに、各成分の比率を表2に示す比率とした以外は、実施例1と同様にして無機顔料を含有する水性塗料を調製し、実施例1と評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0064】
なお、比較例1においては、水性塗料を調製する際のスチレン−無水マレイン酸オリゴマーとして、SMA1000(Tg155℃、酸価480KOHmg/g、重量平均分子量5,500、スチレン:マレイン酸=1:1、Sartomer社製)を使用した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
表1,2より、以下のことが確認できる。
すなわち、ラテックス粒子中におけるゲル分が50重量%未満であった比較例1〜5においては、それぞれ以下の点で劣る結果となった。
比較例1〜3においては、モルタル板、PVC板、PET板、ABS板およびアルミ板の全ての基材に対して付着性に劣り、また、光沢性も悪化する結果となり、さらには、無機顔料を含有させ水性塗料とした場合にも、耐水性に劣る結果となった。
比較例4においては、モルタル板およびABS板に対して、付着性に劣る結果となり、さらに、無機顔料を含有させ水性塗料とした場合にも、耐水性に劣る結果となった。
比較例5においては、モルタル板およびABS板に対して、付着性に劣り、また、光沢性も悪化する結果となり、さらには、無機顔料を含有させ水性塗料とした場合には、無機顔料の分散度、貯蔵安定性および耐水性の全てに劣る結果となった。
【0068】
なお、比較例1〜3,5においては、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物と、架橋性単量体であるテトラエチレングリコールジメタクリレートと、の比率が、本発明の好ましい範囲外であったため、ラテックス粒子中におけるゲル分の含有量が低くなる結果となった。また、比較例4においては、アルカリ可溶性共重合体(A)と、単量体(B)と、の比率が、本発明の好ましい範囲外であったため、ラテックス粒子中におけるゲル分の含有量が低くなる結果となった。
【0069】
これに対して、本発明所定の範囲内とした実施例1〜3においては、モルタル板、PVC板、PET板、ABS板およびアルミ板の全ての基材に対して、極めて良好な付着性を示し、さらには、無機顔料を含有させ水性塗料とした場合にも、良好な結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られるラテックスであって、
前記アルカリ可溶性共重合体が、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物を含み、
前記ラテックスを構成するラテックス粒子のゲル分の含有量が、ラテックス粒子全体100重量%に対して、50重量%以上であることを特徴とするラテックス。
【請求項2】
前記単量体100重量部に対する、前記アルカリ可溶性共重合体の中和物の比率が、10〜40重量部である請求項1に記載のラテックス。
【請求項3】
前記単量体が、架橋性単量体を含有する請求項1または2に記載のラテックス。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性共重合体中に含有される前記水溶性高分子化合物の比率が、重量比で、前記架橋性単量体の2〜20倍である請求項3に記載のラテックス。
【請求項5】
無機顔料をさらに含有する請求項1〜4のいずれかに記載のラテックス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のラテックスを塗布してなるフィルム。

【公開番号】特開2007−145990(P2007−145990A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342368(P2005−342368)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】