説明

ラテックスアレルギーの診断及び治療のための試薬、及びその調製方法

本発明は、ラテックスアレルギー又はフルーツアレルギーを診断及び/又は治療するための試薬、及び該試薬を調製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックスアレルギー又はフルーツアレルギーの診断及び/又は治療のための試薬、及び該試薬の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムラテックス(NRL)に対する1型アレルギーは、20世紀の最後の20年間に増大する健康問題として新たに発生し、その職業環境及び医療の安全性の双方に関して患者にとって甚大な結果をもたらしている。ラテックスの「感作」又は「感受性」とは、個体の血清中にラテックスアレルゲンに対する特異的IgE抗体が存在することと定義される。ラテックス「アレルギー」とは、ラテックス又はラテックス製品と接触することによって、感作された個体内で即時型アレルギー症候群が惹起されることを意味する。
【0003】
世界中の天然ゴムの大半は、ゴムの木であるHevea brasiliensisのラテックスから得られる。天然ゴムラテックスの組成は、かなり複雑であり、水、ゴム(シス-1,4-ポリイソプレン)、タンパク質、樹脂、糖類、灰分、及びステロール配糖体などの種々の物質を含む。工業ゴム製品として、新鮮なラテックスは、凝固を回避するため、最終濃度が200mmol/Lになるようにアンモニアと混合されるのであって、そのためにアンモニア処理ラテックス(AN)と称される。一方、非アンモニア処理ラテックス(NAL)を高速遠心分離することによって、三つの異なるフラクションが得られる;即ち、(i)上部における白色クリーム状層、(ii)主として液胞様ルトイド(vacuolo−like lutoids)から成る下部分画(B−漿液)、及び(iii)ラテックス導管の細胞に由来する細胞質ゾルを含む、中間の黄色味がかったC−漿液である。
【0004】
NRLに対する1型アレルギーの診断における第一段階は、NRLに対するアレルギー症状の広範な病歴を記録することである。第二段階においては、必要な種々の確認試験を行って感作状態を同定・確認する。最も一般的に用いられる確認試験は、皮膚プリック試験(skin prick test)(SPT)およびラテックス特異的IgE抗体ための血清試験である。従って標準化されたSPT抽出物及びIgE測定・定量のための充分に特性化されたアレルゲン混合物とが、ラテックスアレルギーを診断するための重要な必要条件となる。
【0005】
皮膚でのアレルゲン特異的IgE抗体の検出は、迅速であり且つ感度が高いため魅力的な方法であって、皮膚内部又は個体体内において臨床上観察可能で且つ生物学的な関連応答を含む。1995年及び1996年に、カナダで製造された未加工AL製品を使用したBencardラテックス試薬を用いて皮膚プリック試験が行われた。研究者らは、喘息及びアレルギー診療科の入院患者においてラテックス皮膚試験陽性応答の内有病率が4.2%であること、及びSPT応答の大きさとラテックス誘発症状の重篤度との間に正の相関関係が成り立つことを報告している(参考文献2)。第I/II相初期臨床試験において、三種のラテックス源候補物質―即ち、AN、NAL及び粉末散布ラテックス手袋の抽出物―について、相対的な安全性及び診断の正確さが測定・決定された。その結果、NALが、その安定性と品質管理の容易さの故に、更なる開発のための最も魅力的な候補ラテックスと報告された(参考文献3)。Eboらは(J Allergy Clim Immunol. 1997 Nov;100(5):618−23)、SPTを含む、IgE抗体検出方法について比較検討を行った。 彼らは、NAL抽出物(Diagnostic Products Corp社製)を用いたが、その感受性は68%でありまた特異性は100%であった。フィンランドにおける研究では、スタレルジーン(Stallergenes,Fresnnes,France)社のNALのラテックスC−漿液を使用したSPT試薬の診断性能が検討、調査された(参考文献4)。診断感受性は93%であり、特異性は100%であると報告された。これが、今日ヨーロッパにおいて入手可能である唯一規格化・標準化された市販天然ゴムラテックス抽出物である。多施設第III相臨床試験が、治験用Greer試薬(Greer Laboratories, Lenoir,NC)とNALを用いた抽出物について実施された (参考文献5)。この試験において、診断感受性は95%であり、特異性は100%であった。データの再分析を行った結果、Greer NAL SPT試薬の総合的な感受性は70%乃至75%に変わった(参考文献6)。
【0006】
更には、利用可能なNALのC−漿液を使用したまた別のSPT抽出物が、ALK−Abello(Hoersholm、デンマーク)から入手可能である。市販されている製品のほかに、皮膚診断試験を行うことを希望するアレルギー専門医は、手袋から独自の自家製ラテックス抽出物を調製することが可能であって、特に対応する医薬品承認機関(例えばFDA)によって承認された、規格・標準化されたラテックス皮膚試験試薬が全くない各国、例えば米国においてはそうである。
【0007】
血清中の天然のラテックス特異的IgEのin vitro測定法を行うため最も頻繁に用いられる方法は、放射標識アレルギー吸着定量測定法(Radioallergosorbent assay (RAST))及びエリザ法(ELISA;酵素結合免疫吸着定量測定法)である。いくつかの放射標識アレルギー吸着試験薬が市販されている。天然ゴムラテックス特異的IgE抗体の検出について、三種類のin vitro定量測定法(DPC Microplate Alastat、Pharmacia CAP system FEIA、及びHycor HYTECH)を比較検討した(参考文献7)。Pharmacia CAP System及びDPC’s Alastatのラテックス皮膚試験は、Greer実験用ラテックス試薬を用いたラテックス皮膚試験と比較した場合、それぞれ診断特異性は97%であり又診断感受性は76と73%であった。これら定量測定法のいずれも、ラテックス感作症例の内のほぼ25%をラテックス特異的IgE抗体について擬陰性であると誤って分類した。性能に関するまた別の研究において、双方の定量測定法が示した診断感受性及び特異性は、上記の研究におけるものと同等であった(参考文献8)。第一の研究において、HYTECHアッセイは特異性73%を示したが、このことが、皮膚試験と比較したときに27%の擬陽性という結果を生み出したことを示している (参考文献7)。これまでに推測されてきたことは、CAP及びAlaSTAT定量測定法において診断感受性が低い理由は、これらの定量測定法で用いられたアレルゲン含有試薬においてアレルゲンが不十分に代表されたこと及び/又は変性を受けたことに関連づけられ得るとするものであった (参照非特許文献6)。天然ゴムラテックス全体に由来する試薬を用いた定量測定法の正確さと信頼性は、アレルゲンの利用可能性とアレルゲンがIgE抗体を基準として過剰モルで存在することに依存して異なる旨結論づけられている。
【0008】
最も汎用されているRASTキットは、恐らくPharmacia Diagnostics社製のラテックスRAST k82及びその酵素結合免疫吸着定量測定法(Pharmacia CAP system)であろう。さらに新しいPhamacia Diagnostics社製のラテックスRASTは、k82を使用したものであるが、組換え型Hev b 5(rHev b 5)分子とスパイクする。さらに、組換え型ラテックスアレルゲンを用いたRASTが入手可能である。組換え型 Hev b 1、2、3、6.01、6.02、8、9、及び11は、マルトース結合タンパク質(MBP)との融合タンパク質、又はMBPを含まないr(組換え型)Hev b 5との融合タンパク質として入手可能である。
【0009】
2000年にYipらは、組換え型ラテックスアレルゲンは臨床上反応性があり、標準化された方法で製造することが出来、潜在的にラテックスアレルギーの診断に感受性と特異性を有する試薬となり得ることを示した(参考文献9)。にもかかわらず、組換え型タンパク質の診断能力は、天然タンパク質との等価性に依存して決まるのである。天然型Hev b 2を用いたSPTの結果、このアレルゲンは主要なラテックスアレルゲン一つであることが判明した(参考文献10)。Raulf Heimsothらは、rHev b 2と天然型Hev 2のIgE反応性との間には相関関係が低いことを報告している(参考文献11)。彼らは、自ら作成したrHev b 2に対してはIgE反応性がほとんどないことを観察している。かかる知見は、大腸菌(E.coli)産生物の誤った折り畳みに因るのであるか又はIgE結合性エピトープ(参考文献12)となるものの、大腸菌内で発現される組換え型タンパク質上には存在しないHev b 2の炭水化物残基に基因する可能性がある。
【0010】
今日までに、十三(13)のラテックスアレルゲンが、国際免疫学会連合(International Union of Immunological Societies)によって承認されている。Hevea brasiliensisの木由来の天然ゴムラテックスは、250以上のポリペプチドを含み、その内の少なくとも60は、IgE結合特性を明確に示す旨報告されている(参考文献13)。従って、13の組換え型の又は精製されたアレルゲンを用いたラテックスアレルギーの診断は、充分でないように思われる。加えて主要なラテックスアレルゲンの内いくつかは、B−漿液に由来するもである。しかしながら、NAL由来の市販されているラテックス抽出物の全ては、専らラテックスC−漿液から派生するものである。
【0011】
EP704457は、Hev b IV、Hev b II又はHev b IIIと称されるアレルギー誘発性タンパク質を記載している。WO 01/61305は、ゴム伸長因子(rubber elongation factor;REF又は Hev b 1)、ゴム粒子関連タンパク質(Hev b 3)、酸性16KDタンパク質(Hev b 5)およびヘベイン(hevein)(Hev b 6.02)から選択されるラテックスアレルゲンを記載している。
【0012】
新鮮なラテックスは、約1〜2%のタンパク質を含み、高速遠心分離によって次の三つの主な画分に分離することが出来る。即ち、(i)ゴム粒子の白色の上層、(ii)ラテックス導管の細胞由来の原形質を含む水性層(C−漿液)、及び(iii)主として液胞様ルトイドから成る下部画分(B−漿液)である。
【0013】
更には、市販されているラテックスアレルギー試験手順の比較を行ったところ、得られた結果に広汎なバラツキがあることが明らかとなり、評価対象とした如何なる方法も、報告された1型ラテックスアレルギー症状と相関関係づけることが出来なかった (参考文献18参照)。現在用いられている試験法の主な欠点は、現時点ではin vitro方法の数種類が、ラテックスに対するIgE感作を検出するのに必要であるということである(参考文献19)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の根底となっている技術上の問題・課題は、ラテックスとこれに関連するアレルギーの診断及び治療のための改良された試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の技術上の問題・課題の解決法は、請求項において特徴づけられる実施態様によって提供される。
【0016】
具体的には本発明は、NRL由来の一種以上のタンパク質画分又は一種以上のその抽出物を分画沈殿及び/又はクロマトグラフィー分離によって調製する工程を含んで成る、天然ゴムラテックス(NRL)の事実上全ての天然ヒトIgE結合性タンパク質を含む組成物の調製方法を提供する。
【0017】
本明細書において使用する「組成物」なる用語は、一般的にはNRLに由来する一種以上のタンパク質画分(又はいずれの抽出物又はその画分)を包含する。
【0018】
「天然ゴムラテックス」なる用語は、あらゆる天然の供給源から入手可能である全てのゴムラテックスを意味する。生ラテックスにおいては、タンパク質量とその分子量の分布が、異なる原材料の供給採取源如何で大幅に変動するが、その原因は、種々の要因、例えば採取源、生育や成熟・成長の諸条件(気候、季節、土壌)によることが知見されている(参考文献14,15)。しかしながら、NRLが、特定のHevea brasiliensisの木のクローン(例えば、Hevea brasiliensis Rubber Research Institute of Malaysia clone RRIM 600)ら採集される場合、標準化された製造手順によって、タンパク質含有量と特異性は均一で再現性がよくなるのである(参考文献16)。従って、H.brasiliensis由来のNRLが好ましい。NRLは、非アンモニア処理ラテックス(NAL)であるのが好ましい。
【0019】
「天然ゴムラテックスの天然ヒトIgE結合性タンパク質」なる用語は、ヒト体内でアレルゲンとして作用・機能し、従ってラテックスアレルギー又は少なくとも感作の原因となる、ラテックス中に存在する全てのタンパク質を意味する。本明細書において記載する方法によって得られる組成物には、天然ゴムラテックスに存在し得る全ての天然のアレルゲンを包含することは、本発明の重要な一つの局面である。従って、該組成物は、単独のアレルゲンのみならず天然ラテックスゴム中に存在する全てのアレルゲンを包含する。
【0020】
「NRLの抽出物」なる表現は、該抽出物が上記の定義に従った全ての天然ラテックスアレルゲンを含有する限り、NRLに由来する如何なる画分、又は変性液又は懸濁液若しくは乳化液をも含む。
【0021】
特に好ましいNRLの抽出物は、特にNALは、遠心分離、好ましくは高速遠心分離して上記の画分(i)ゴム粒子の白いクリーム状の層(ii)B−漿液(下部)(iii)(i)と(ii)の間のC−漿液を生成させることよって得られる。本発明の目的のために好ましいNAL抽出物は、B−漿液とC−漿液である。
【0022】
本発明の実施態様の一つにおいては、標準化された製造操作により採取されたNRLの異なる幾つかのバッチを分画化することによって、組成が極めて類似したタンパク質抽出物が得られるのである。
【0023】
即ち、本発明の方法は好ましくは、下記する工程を含んで成る。
(a)NRLの一以上のタンパク質又はその抽出物の画分を分画沈殿によって調製する工程、及び、
(b)工程(a)で得られたタンパク質画分をクロマトグラフィー分離に供する工程。
【0024】
「分画沈殿(fractionated precipitation)」なる用語は、タンパク質が溶媒の中でpH、イオン強度、及び温度に関して摂動を起こすことによって沈殿させることが出来ることを意味する。沈殿物は、好ましくは通常用いられる遠心分離工程で回収される。溶媒の性質はまた、高濃度の幾つかの塩又は混和可能な有機溶媒を添加することによって変性させることが出来る。生理食塩水を基準としてイオン強度が低い溶液状の塩類は、幾つかのタンパク質を溶媒から沈殿させる摂動となり得る可能性がある。一方、塩類は、生体組織媒体よりもはるかに強いイオン強度を有する、極めて高濃度状態においては、多くのタンパク質の沈殿を引き起こすことになろう。沈殿は、かかる塩の表面電荷を中和することによって、またタンパク質の化学的活性を低下させることによってまた水の有効濃度を減少させることによって生起する。このことは、タンパク質の「塩析」と称される。どんな塩でも特定のタンパク質の沈殿を引き起こすのに必要な濃度は、タンパク質表面の電荷及び非イオン性極性基の数及び分布とに関連づけられ、また電荷が中和されるに応じて曝露され且つ数的に優位になる疎水性残基の数及び分布にも関連づけられる。かかるタンパク質の大きさ及び形状もまた、沈殿可能性の相対的容易さの原因となる。硫酸アンモニウムは、タンパク質の塩析に最も頻繁に使われる沈殿剤である。その主要な利点は、(1)飽和状態で、大半のタンパク質の沈殿を引き起こすに十分に高いモル濃度を有すること、(2)溶解熱が大きくないこと、(3)飽和溶液であっても、遠心分離によって沈殿したタンパク質のほとんどの沈殿に干渉するほど密度が高くないこと、(4)高濃度液でも、大半の細菌の増殖を防止又は制約すること、及び(5)液状にあって、大半のタンパク質を変性から保護すること、である。
【0025】
従って、第一工程において、ラテックスC−漿液及びB−漿液のタンパク質が、異なる濃度の硫酸アンモニウムで分画されることも本発明の一部である。
本発明の好ましい実施態様においては、第二工程として、画分のタンパク質が、更にイオン交換クロマトグラフィーで分離されるのである。
【0026】
従って、本発明の方法は好ましくは、下記する工程を含んで成る:
(i)NALのC−漿液の一種以上のタンパク質画分を分画沈殿により調製する工程、
(ii)工程(a)で得られた一種以上のタンパク質画分をクロマトグラフィー分離に付する工程、及び
(iii)NAL B−漿液をクロマトグラフィー分離に付する工程。
【0027】
クロマトグラフィー分離としては、好ましくはラテックスアレルゲン特異的免疫グロブリンを用いる、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、及び/又はアフィニティークロマトグラフィーがあげられる。
【0028】
イオン交換クロマトグラフィー(IEC)は、本発明の好ましいクロマトグラフィー技法である。IECは、特にイオン性の又はイオン化可能の組成物を分離出来る。IECは、固定相が、イオン化可能の官能基を運び、固定相に化学結合で固定する点において他の型式の液体クロマトグラフィーとは異なる。電気的中性となるための必要条件を満たすために、これら固定された電荷は、反対符号の対イオンを帯びる。この対イオンは、固定されることはなく、置換される。IECには、2つの別個の事象が含まれる。まず第一は、固定された電荷にタンパク質が結合すること、第二は、該タンパク質よりも固定電荷に対するアフィニティーが大きい新しい対イオンによって、タンパク質が固定された電荷から溶出すること又は置換することである。好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィーは、NRL抽出物又はそのタンパク質画分、例えば好ましくはNRL(例えば、NAL)、NAL B−漿液又はNAL C−漿液を分別沈殿すること、好ましくは硫酸アンモニウムを用いて塩析することによって得られるNAL、NAL B−漿液又はNAL C−漿液をクロマトグフィーにより分離するのに用いられる。
【0029】
好ましい一つの実施態様において、MonoBeads(Pharmacia、Uppsala, スウェーデン)が、イオン媒体として用いられるが、これは10μmのビーズ状の疎水性ポリスチレン/ジビニルベンゼン樹脂を使用したものである。ビーズは好ましくは、第4級アミンで置換されて、強いイオン交換体であるMonoQとする。MonoBeadsマトリックスは安定性が高いため、制御合成とカラム充填手順と併せて、長期にわたり且つ異なるカラム間での再現性の高い分離が確保される。
【0030】
もちろん、他のクロマトグラフィー用樹脂、特にイオン交換樹脂も同様に適している。例えば、アガロース、セファロース、セファデックス、セファクリル、セファセル(Sephacel)が挙げられる。
【0031】
例えばMonoQでの陰イオン交換クロマトグラフィーの好ましい態様は、10乃至50mMの緩衝液において、好ましくはpH7乃至7.8,好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5であり、15乃至30mM、特に20mMのトリスーHClにおいて0乃至1MのNaClの直線溶出勾配として実行される。もちろん、他の型式の勾配(例えば、段階的勾配)又は直線勾配及び段階的勾配の組み合わせ、他の緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)及び溶出塩(例えば、KCl)を用いることも可能である。
【0032】
上記にて既述したように、分画沈殿は、NRL又はその抽出物のpH及び/又はイオン強度を変化させることによって、及び/又は変性剤及び/又は塩を導入することによって実行される。分画沈殿を行うためには、塩の添加が最も好ましい。適当な塩としては、硫酸アンモニウム、NaCl、及び/又はNaSOが挙げられる。又はその代わりに、エタノールやアセトンといった有機溶媒を(塩の代わりに)用いてもよい。上記のタンパク質沈殿の議論について言及すると、硫酸アンモニウムが、本発明において使用可能な最も好ましい塩である。
【0033】
本発明の方法としてさらに好ましい態様については、
分画沈殿は、以下によって行われる:即ち、
(1)NRL又はその抽出物に硫酸アンモニウムを添加して、飽和率として15乃至35%、好ましくは20乃至30%、より好ましくは22乃至28%、特に25%の濃度にすること、
(2)第一の沈殿及び第一の上澄み液を遠心分離によって回収すること、
(3)第一の上澄み液に硫酸アンモニウムを添加して、飽和率として40乃至60%、好ましくは45乃至55%、より好ましくは47乃至53%、特に50%の濃度にすること、
(4)第二の沈殿及び第二の上澄み液を遠心分離によって回収すること、
(5)第二の上澄み液に硫酸アンモニウムを添加して、飽和率として65乃至85%、好ましくは70乃至80%、より好ましくは72乃至78%、特に75%の濃度にすること、及び
(6)第三の沈殿と第三の上澄み液を遠心分離によって回収すること。
【0034】
この場合NRLの好ましい抽出物は、NAL C−漿液である。しかし、上記の分画沈殿は、如何なるNRL(例えばNAL)又はNRLに由来する如何なる他の抽出物にも適用することが出来る。
【0035】
天然ゴムラテックス(NRL)の、実質的に全ての天然ヒトIgE結合性タンパク質を含む組成物が、関連する全てのアレルゲンを含むことは、重要である。従って、これらの精製法によって得られる異なる画分は、好ましくはラテックスに対してアレルギー反応を示す患者から得られた血清について試験され、アレルゲンの存在が確認される。
【0036】
本発明の一つの好ましい態様において、分画沈殿及び/又はクロマトグラフィー分離によって得られる単一画分は、ラテックスアレルギー被験者の血清と反応させる。該単一画分は、例えばSDS−PAGEによって分離され得るが、ニトロセルロースでブロットされた画分は、ラテックスアレルギー被験者から得られた血清プール又はラテックスアレルギー被験者の個々の血清と共にインキュベートされる。IgE抗体は、当業者に公知である放射性成分、酵素又は色素で標識された抗IgE抗体(好ましくは動物より得られた)で同定される。更に、対照レーンが分離ゲル上に設けられる。この方法により、ヒトIgE抗体が結合する可能性がある天然ゴムラテックス中に自然に存在するタンパク質を含むこれら全ての画分を同定することが出来る。IgE抗体を含む血清は、ラテックスに対するアレルギー患者又は実験動物から得られる。
【0037】
ラテックスに対するアレルギー患者から得られる幾つかの個々の血清を用いることによって、アレルギー患者のIgE抗体が最もよく結合するタンパク質を最も高い含有量で含む画分が全て、同定される。適切な画分を選択することによっては、アレルギー患者のIgE抗体が最もよく結合するタンパク質とIgE抗体が結合しないタンパク質との最適比を選択することが出来る。
【0038】
種々の精製方法、特に分画沈殿及び/又はクロマトグラフィー分離とこのような精製法で得られる画分のモニタリングとを組み合わせることによって、ヒトIgE抗体が結合する、天然ゴムラテックス中の全てのタンパク質を含む組成物が得られる。
【0039】
最終工程として、分画沈殿及び/又はクロマトグラフィー分離によって得られる異なるタンパク質画分を組み合わせて、アレルゲン特異的IgE抗体を検出するのに十分な濃度で全てのラテックスアレルゲンを含有する単一の組成物を得るのである。
【0040】
上記で定義された方法により得られる組成物は特に、NRLのアレルギータンパク質を原料物質(NRLそれ自身又は例えばNAL B−漿液やNAL C−漿液など、その抽出物)としてより高い濃度で含む。
【0041】
本発明の方法は好ましくは、ラテックス感作又はアレルギーのin vitro診断及び/又は治療(又は診断薬及び/又は医薬化合物(薬剤)の調剤)に成功裏に使用されるタンパク質組成物を提供する。
【0042】
このように、本発明の更なる一つの態様は、上記で定義された方法により得られる天然ゴムラテックス中の実質的に全ての天然ヒトIgE結合性タンパク質を含む組成物に関する。
【0043】
該組成物は好ましくは、以下によって調製されるタンパク質画分を含む:
(A)NAL C−漿液のタンパク質画分を分画沈殿により調製すること、
(B)工程(A)で得られたタンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィーに付すること、及び
(C)NAL B−漿液を陰イオン交換クロマトグラフィーに付すこと。
【0044】
これに関連して、本発明の方法について上記にて詳記された説明及び好ましい態様を具体的に述べる。
【0045】
より好ましくは、分画沈殿は、下記する工程を含んで成る:
(1)NAL C−漿液に硫酸アンモニウムを添加して、飽和率として15乃至35%、好ましくは20乃至30%、より好ましくは22乃至28%特に25%の濃度にすること、
(2)第一の沈殿物及び第一の上澄み液を遠心分離によって回収すること、
(3)第一の上澄み液に硫酸アンモニウムを添加して、飽和率として40乃至60%、好ましくは45乃至55%、より好ましくは47乃至53%特に50%の濃度にすること、
(4)第二の沈殿物及び第二の上澄み液を遠心分離によって回収すること、
(5)第二の上澄み液を硫酸アンモニウムに添加して、飽和率として65乃至85%、好ましくは70乃至80%、より好ましくは72乃至78%、特に75%の濃度にすること、及び
(6)第三の沈殿物及び第三の上澄み液を遠心分離によって回収すること。
【0046】
さらに好ましい一つの態様において、該組成物は、下記するタンパク質画分を含む(又は該組成物の単一又は複数は、以下のタンパク質画分によって代表される)。
・ 第二の沈殿物をpH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸中で120mM乃至230mM、好ましくは140乃至210mM、特に150乃至200mMのNaClで溶出する、陰イオン交換クロマトグラフィーによって得られるタンパク質画分;
・ 第二の沈殿物をpH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸中で270mM乃至530mM、好ましくは290乃至510mM、特に300乃至500mMのNaClで溶出する、陰イオン交換クロマトグラフィーによって得られるタンパク質画分;
・ 第三の沈殿物をpH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸中で270乃至480mM、好ましくは290乃至460mM、特に300乃至450mMのNaClで溶出する、陰イオン交換クロマトグラフィーによって得られるタンパク質画分;
・ 第三の沈殿物をpH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸中で420乃至580mM、好ましくは440乃至560mM、特に450乃至550mMのNaClで溶出する、陰イオン交換クロマトグラフィーによって得られるタンパク質画分;
・ NAL B−漿液をpH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸中で120乃至280mM、好ましくは140乃至260mM、特に150乃至250mMのNaClで溶出する、陰イオン交換クロマトグラフィーによって得られるタンパク質画分;及び
・ NAL B−漿液をpH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸中で非吸着流出分として溶出する、陰イオン交換クロマトグラフィーによって得られるタンパク質画分。
【0047】
本発明の更なる実施態様に従えば、組成物又はタンパク質画分は、固体担体上に固定され、相当する担体タンパク質複合体が得られる。
【0048】
当該組成物は、本発明の担体タンパク質複合体中の担体上に被覆されるか又は結合されることが好ましい。担体はビーズ、膜、計深棒及びガラスチップからなる群から選択すればよい。本発明の複合体は、ヒトのラテックスアレルギーや感作の検出といった診断用途に特に有用である。
【0049】
従って、本発明はまた、該組成物及び/又は上記で定義された複合体を、ヒトIgE抗体の検出のために通常使用される試薬又は手段と組み合わせて含んで成る診断キットに係る。
【0050】
本発明の診断キットは、ヒトIgE抗体の検出のための全ての公知の形態であり得る。その例としては、患者の断片に存在するタンパク質に対するアレルギー反応を測定する皮膚プリック試験(Skin Prick Test))などのin vivo試験又は、免疫CAP定量測定法(Immuno CAP assay)、ラスト定量測定法(RAST assays)、エリザ法(ELISA)、ヒスタミン放出試験法など被験患者の血清中の抗ラテックスタンパク質IgE抗体の存在を測定するin vitro試験が挙げられるが、これらに制限されることはない。
【0051】
該診断用キットは特に、(ラテックス)アレルゲン特異的IgE(特にヒトにおける)の検出に有用である。
【0052】
従って、本発明は更には、本発明の該組成物及び/又は該複合体を体液(例えば、血液又は血清などその画分)と接触させる工程を含んで成る、(ラテックス)アレルゲン特異的IgE(例えばヒトにおける)の検出のための診断方法を提供する。体液との接触はまた、例えば皮膚プリック試験(SPT)によって本発明の組成物を皮下又は皮内に注射することを含む。本発明による診断方法はまた、免疫CAP定量測定法、ラスト法、エリザ法などとして行われることが出来る。
【0053】
本発明の方法により提供される試薬、特に該組成物はまた、医薬として有用である(又はその製造に有用である)。好ましくは、該発明の組成物は、ラテックスアレルギー又はラテックスフルーツ症候群の予防又は治療に用い得る。該医薬又は医薬組成物は、通常用いられる又は製薬学的に許容される一つ又はそれ以上の担体、基材、及び/又は希釈剤を含んでもよい。
【0054】
本発明はまた、本発明の組成物又は薬剤をヒト患者、特にラテックスアレルギー若しくは感作及び/又はフルーツアレルギーに罹患しているヒト患者に投与する段階を含んで成る、上記の徴候を予防又は治療する方法に係る。好ましい投与方法としては、筋肉内経路を介した注射又は例えば舌下経路を介した粘膜適用が挙げられる。本発明の予防/治療法は、脱感作療法のプロトコールの形式で実行されるのが好ましい。該プロトコールとしては、アレルゲン抽出物の濃度を一定期間増加させて投与することが挙げられる。
【0055】
本発明の利点は、Heveaラテックスからの少数の画分を用いて広範な診断がなされ得ることである。本特許出願においては、これらの画分の調製法を詳細に説明する。なお本発明とは対照的に、ラテックスアレルギーのために実用化されている診断法は、目下のところ全抽出物を用いて行われている。
【0056】
本発明を下記する制限的ではない実施例によって更に説明する。
【実施例】
【0057】
実施例1:ラテックス画分の生成・調製
ラテックスB−漿液及びC−漿液
【0058】
新鮮なHeveaラテックスをゴムの木(H. brasiliensis, clone RRIM 600)から採集した。このラテックスは、44000gにて4℃で1時間遠心分離し、三つの主要画分に分離した。即ち、ゴム粒子を含む上部画分、水相、即ちC−漿液、及びルトイド(lutoids)を含む「重い」下部画分である。水相を集め、次いで遠心分離を繰り返した。得られた透明な水性のC−漿液を凍結乾燥し、−20℃で保存した。ルトイドを含む下部画分は、0.4mol/Lのマンニトール中に再懸濁させ、再沈殿させて、交互に凍結と解凍を反復繰り返しして、ルトイドを破壊した。ルトイドの液体、即ちB−漿液は、次に遠心分離によって回収した(参考文献17)。
【0059】
硫酸アンモニウムによるラテックスC−漿液の分画
100ミリグラムの凍結乾燥ラテックスC−漿液を20mM トリス塩酸(pH7.5)に溶解した。(NH)SOを25%の飽和率にまで添加して、30分間4℃で攪拌した。沈殿物質は、12000gにて4℃で20分間遠心分離した。次に上澄み液中のタンパク質を、(NH)SOを50%飽和率まで添加することによって沈殿させた。沈殿したタンパク質は、遠心分離と(NH)SOを上澄み液に75%飽和率にまで添加することによって回収した。溶液を再度遠心分離し、三回の沈殿工程を経て得たタンパク質を−20℃で保存した。
【0060】
陰イオン交換クロマトグラフィー
硫酸アンモニウム分画を行って得た沈殿物を20mMのトリス塩酸(pH7.5)に溶解し、PD−10カラム(Pharmacia、Uppsala、スウェーデン)を通過させることによって脱塩処理した。それぞれの画分を、MonoQ HR5/5カラム(Pharmacia)にかけた。同様に、100ミリグラムの凍結乾燥ラテックスB−漿液をpH7.5の20mMトリス塩酸に溶解し、MonoQ HR5/5カラムにかけた。非吸着タンパク質は、カラムから同じ緩衝液で溶出し、吸着タンパク質は、pH7.5の20mMトリス塩酸中において0乃至1MのNaClの直線勾配を用いて溶出した。
【0061】
異なるNaCl濃度で溶出させた幾つかのピーク群を集めて、C1乃至C4画分とした。C1画分は、150乃至200mM NaClで溶出されたタンパク質を含み、C2画分は、300乃至500mM NaClで溶出されたタンパク質を含むが、両者はいずれも、75% (NH)SO沈殿物に由来するものであった。かかる操作全体は、異なる二つのバッチのラテックスC−漿液について行った。それぞれの画分の5μgを12%のPAGEで分離し、クーマッシーブリリアントブルー(Coomassie brilliant blu)で染色した(図1を参照)。タンパク質のパターンは、極めて類似しているように見えたが、幾つかのタンパク質の濃度は若干の差異があった(図1、レーン1及びレーン2参照)。
【0062】
ラテックスB−漿液を直接陰イオン交換クロマトグラフィーにかけて、二つの画分を得た。B1画分は、非吸着タンパク質を含み、B2画分タンパク質は、150乃至250mM NaClで溶出した。
【0063】
実施例2:ラテックスC−漿液及びB−漿液に対するIgEの反応性
レーン当たり10マイクログラムのタンパク質抽出物又は1マイクログラムの遺伝子組換え型タンパク質を12% SDS/PAGEゲルで分離し、ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、Dassel、ドイツ)でブロットした。膜を切断してストリップ片にし、ブロッキング溶液 (40mM NaHPO、 7mM NaHPO、0.5%BSA、0.05%w/v アジ化ナトリウム、0.5%w/v トウエーン−20、pH7.5)で30分間処理した。このストリップ片は、次いでブロッキング溶液の中で患者の血清で1:5に希釈し、4℃で一晩インキュベートした。三つの洗浄工程を経た後で、ブロットを125I標識―抗(ヒトIgE)Ig(IBL、Hamburg、ドイツ)で一晩インキュベートした。患者のIgEがタンパク質に結合する様子は、BiomaxTM MSフィルム(Kodak、New York、アメリカ)にて可視化した。家屋塵ダニ類に対するIgE濃度が高いが、皮膚プリック試験には陰性で、ラテックスに対するCAPの結果が陰性である7人の健康なアトピー罹患個人から採取した血清プールをネガティブコントロールとして用いた。
【0064】
ラテックスC−漿液中のタンパク質に対するIgE反応性が、プール1、2、及び4について観察された(図2a、ブロットC−漿液参照)。これら血清プールのIgE反応は、ラテックスC−漿液画分において、特に40乃至80kDaの範囲のたんぱく質に対して増加した(図2a、ブロットC1乃至C4、レーン1、2、及び4を参照)。血清プール3は、ラテックスC−漿液中の唯一つのタンパク質のみに対して弱いIgE反応性を示し(図2a、ブロットC−漿液、レーン3参照)、少なくとも六種類の異なるタンパク質に対するIgE反応が、ラテック漿液中で測定可能となった。ラテックスC−漿液中のタンパク質に対するIgE反応は、血清プール5では全く測定出来なかったが、少なくとも四種類のタンパク質が、ラテックスC−漿液中において血清プール5によって認識された(図2a、ブロットC1乃至C4、レーン5を参照)。七人の家屋塵ダニ類アレルギー被験者の血清プール及び緩衝液対照者は、ラテックスC−漿液及び何れのその画分においてもIgE反応性を全く示さなかった(図2a、ブロットC−漿液及びC1乃至C4、レーンN及びPを参照)。
【0065】
ラテックスB−漿液中のタンパク質に対するIgE反応は、漿液プール1、2、3、及び4について測定可能であった(図2b、ブロットB−漿液、レーン1乃至4を参照)。ラテックスB−漿液画分においては、IgE反応性タンパク質の全数が明確に増加することは、これらの血清プールについては全く検出不能であったが、特に33乃至35kDaの範囲におけるいくつかのタンパク質の濃度が高くなったことが、測定可能であった(図2b、ブロットB1及びB2、レーン1乃至4を参照)。血清プール5は、ラテックスB−漿液に対して全くIgE反応性を示さなかったが、B1画分においては、およそ33kDaのタンパク質バンドが検出可能であった(図2b、ブロットB−漿液、B1、及びB2、レーン5を参照)。7人の家屋塵ダニ類アレルギー被験者及び緩衝液対照者は、ラテックスB−漿液及びその何れの画分においても全くIgE反応性を示さなかった(図2b、ブロットB−漿液、B1、及びB2、レーンN及びPを参照)。
【0066】
実施例3:重要なラテックスアレルゲンの存在
本発明のラテックス画分は、重要なラテックスアレルゲンであるHev b 5、Hev b 6、及びHev b 8を含む。組換え型Hev b 5、rHev b 6、及びrHev b 8を12%PAGEによって分離し、ニトロセルロース上でブロットした。膜切片は、試験してそれぞれのアレルゲンに対するIgEの存在を示す三つの血清からそれぞれ成る血清プールと共にインキュベートした。阻害試験として、これらの血清を50μgのタンパク質抽出物と共にプレインキュベートした。阻害するために、Hev b 5血清プールはC3画分と共に、Hev b 6血清プールはB2と共に、またHev b 8血清プールはC1と共に、それぞれプレインキュベートした。血清プールをこれらの画分と共にプレインキュベーションした結果、IgEの組換え型アレルゲンとの結合が減少するか又は完全に消滅した(図3)。
【0067】
[参考文献]
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19. Nielson et al. Ann. Allergy Asthma & Immunol. 2000, 85:489-494.
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ラテックスC−漿液から得られた四つの画分のSDS−PAGEを示す。ラテックスC−漿液の二つの異なるバッチを使用し、タンパク質含有量を比較した。
【図2】それぞれa)ラテックスC−漿液と四つのラテックスC画分及びb)ラテックスC−漿液と二つのラテックスB画分に対するラテックスアレルギー被験者の五つの血清から成る五種類の血清プールのIgE反応性を示す。ニトロセルロースでブロットされた画分を、これらの血清プールとともにインキュベートし、結合したIgEを125Iで標識した抗ヒトIgE抗体で検出した(レーン1から5)。レーンP及びNは、緩衝液対照者及び対照血清プールを示す。分子量マーカーは、表示した通りである。
【図3】Hev b 5、Hev b 6、及びHev b 8がラテックス抽出物中に存在することを示している。ニトロセルロースでブロットされたrHev b 5、rHev b 6及びrHev b 8は、各アレルゲンに対してアレルギーを持つ被験者の三つの血清から成る血清プールと共にインキュベートした。Hev b 5に対する血清プールは、C3の画分と共に、Hev b 6血清プールは、B2の画分と共に、またHev b 8血清プールはC1と共にプレインキュベートした。結合したIgEは、125Iで標識された抗ヒトIgE抗体で検出した(レーン1から5)。レーンP及びNは、緩衝液対照者及び対照血清プールを示す。分子量マーカーは、表示した通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックス(NRL)由来の一種以上のタンパク質画分又は一種以上のその抽出物を分画沈殿及び/又はクロマトグラフィー分離によって調製する工程を含んで成る、NRLの天然ヒトIgE結合性タンパク質を実質的に全て含む組成物を製造する方法。
【請求項2】
下記工程を含んで成る、請求項1に記載の方法:
(a)NRLの一種以上のタンパク質画分又はその抽出物を分画沈殿によって調製する工程、及び
(b)工程(a)で得られたタンパク質画分をクロマトグラフィー分離に付する工程。
【請求項3】
分画沈殿及び/又はクロマトグラフィー分離によって得られたNRLの少なくとも一つの画分が、天然ゴムラテックスのタンパク質に結合するIgE抗体を含む少なくとも一種の漿液を用いて試験され、IgE抗体が結合するタンパク質の有無を確認する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
分画沈殿及び/又はクロマトグラフィー分離により得られたNRLの一つの画分が、分析方法、具体的にはSDS−PAGEによって更に分離され、次いで分析によって分離されたタンパク質が、ラテックスアレルギー患者から得られた少なくとも一つの血清との反応に供され、次いで結合したIgE抗体が、検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
NRLが、Hevea brasiliensisに由来する、請求項1乃至4に記載の方法。
【請求項6】
NRLが、非アンモニア処理ラテックス(NAL)である、請求項1乃至5の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
NALの抽出物が、遠心分離によって得られるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
NALの該抽出物が、C-漿液及び/又はBー漿液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
下記する工程を含んで成る、請求項8記載の方法:
(i)NALのCー漿液の一種以上のタンパク質画分を分画沈殿により調製する工程、
(ii)工程(a)において得られた一種以上のタンパク質画分をクロマトグラフィー分離に付する工程、及び
(iii)NALのB−漿液をクロマトグラフィー分離に付す工程。
【請求項10】
分画沈殿が、NRL又はその抽出物のpH及び/又はイオン強度を変化させること及び/又は一種の変性剤及び/又は塩を導入・混入することによって行われる、請求項1乃至9の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分画沈殿が、塩又は有機溶媒を添加することによって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該塩が、硫酸アンモニウム、NaCl及びNaSOからなる群から選ばれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該分画沈殿法が、下記によって行われる、請求項12に記載の方法。
(1)NRL又はその抽出物に飽和率として15乃至35%、好ましくは20乃至30%、より好ましくは22乃至28%、特に25%の濃度になるように硫酸アンモニウムを添加すること、
(2)第一の沈殿及び第一の上澄み液を遠心分離によって回収すること、
(3)第一の上澄み液に、飽和率として40乃至60%、好ましくは45乃至55%、より好ましくは47乃至53%、特に50%の濃度になるように硫酸アンモニウムを添加すること、
(4)第二の沈殿及び第二の上澄み液を遠心分離によって回収すること、
(5)第二の上澄み液に飽和率として65乃至85%、好ましくは70乃至80%、より好ましくは72乃至78%、特に75%の濃度になるように硫酸アンモニウムを添加すること、並びに
(6)第三の沈殿及び第三の上澄み液を遠心分離によって回収すること
【請求項14】
該抽出物が、NALのCー漿液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
クロマトグラフィー分離が、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー及び/又はラテックスアレルゲン特異的免疫グロブリンとのアフィニティークロマトグラフィーである、請求項1乃至14の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
イオン交換クロマトグラフィーが、陰イオン交換クロマトグラフィーである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
陰イオン交換クロマトグラフィーが、MonoQ及びDEAEからなる群から選択される樹脂を用いて行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
陰イオン交換クロマトグラフィーが、pH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸の緩衝液において直線溶出勾配を0乃至1M NaClとして行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1乃至18の内のいずれか一項に記載の方法によって得られる、天然ゴムラテックス(NRL)の天然ヒトIgE結合性タンパク質の実質的に全てを含む組成物。
【請求項20】
下記によって調製されるタンパク質画分を含む、請求項19に記載の組成物。
(A)NAL C−漿液のタンパク質画分を分画沈殿により調製すること、
(B)工程(A)で得られたタンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィーに付すること、及び
(C)NALのB―漿液を陰イオン交換クロマトグラフィーに付すこと。
【請求項21】
分画沈殿が、下記する工程を含んで成る、請求項20に記載の組成物。
(1)NALのC―漿液に、飽和率として15乃至35%、好ましくは20乃至30%、より好ましくは22乃至28%特に25%の濃度になるように硫酸アンモニウムを添加する工程、
(2)第一の沈殿物及び第一の上澄み液を遠心分離によって回収する工程、
(3)第一の上澄み液に、飽和率として40乃至60%、好ましくは45乃至55%、より好ましくは47乃至53%特に50%の濃度になるように硫酸アンモニウムを添加する工程、
(4)第二の沈殿物及び第二の上澄み液を遠心分離によって回収する工程、
(5)第二の上澄み液に、飽和率として65乃至85%、好ましくは70乃至80%、より好ましくは72乃至78%、特に75%の濃度になるように硫酸アンモニウムを添加する工程、及び
(6)第三の沈殿物及び第三の上澄み液を遠心分離によって回収する工程。
【請求項22】
以下を含む、請求項21に記載の組成物。
― pH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸において第二の沈殿物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、次いで120mM乃至230mM、好ましくは140乃至210mM、特に150乃至200mMのNaClで溶出することによって得られるタンパク質画分;
― pH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸において第二の沈殿物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、270mM乃至530mM、好ましくは290乃至510mM、特に300乃至500mMのNaClで溶出することによって得られるタンパク質画分;
― pH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸において第三の沈殿物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、270乃至480mM、好ましくは290乃至460mM、特に300乃至450mMのNaClで溶出することよって得られるタンパク質画分;
― pH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸において第三の沈殿物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、420乃至580mM、好ましくは440乃至560mM、特に450乃至550mMのNaClで溶出することよって得られるタンパク質画分;
― pH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸においてNALのB−漿液を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、120乃至280mM、好ましくは140乃至260mM、特に150乃至250mMのNaClで溶出することによって得られるタンパク質画分;及び、
― pH7乃至7.8、好ましくは7.3乃至7.6、特に7.5である、10乃至50mM、好ましくは15乃至30mM、特に20mMのトリス塩酸においてNALのB−漿液を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、非吸着流出分として溶出することによって得られるタンパク質画分。
【請求項23】
陰イオン交換クロマトグラフィーが、MonoQ又はDEAEで行われる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項19乃至23の内のいずれか一項に記載の化合物が、固体担体上に固定される、担体―タンパク質複合体。
【請求項25】
担体が、該組成物で被覆されるか又は該組成物に結合される、請求項24に記載の複合体。
【請求項26】
担体がビーズ、膜、計深棒及びガラスチップからなる群から選択される、請求項24又は25に記載の複合体。
【請求項27】
請求項19乃至23のうちのいずれか一項に記載の組成物及び/又は請求項24乃至26のうちのいずれか一項に記載の複合体を、ヒトIgE抗体検出のために通常用いられる試薬と組み合わせて含んで成る診断キット。
【請求項28】
請求項19乃至23の内のいずれか一項に記載の組成物の、アレルゲン特異的IgE抗体のインビトロ検出のためへの使用。
【請求項29】
請求項19乃至23の内のいずれか一項に記載の組成物の、ラテックスアレルギー又はラテックスフルーツ症候群の予防又は治療用の薬剤を製造するためへの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−505954(P2008−505954A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520724(P2007−520724)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007405
【国際公開番号】WO2006/005535
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504446489)バイオメイ プロダクションズ−ウント ハンデルス−アクツェンゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】