説明

ラニチジン含有医薬固形製剤及びラニチジン担持粒子の製造方法

【課題】ラニチジンの変色が抑制されたラニチジン含有医薬固形製剤、及び製剤に配合するラニチジン担持粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】第十五改正日本薬局方の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mLを超え、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上であるマグネシウム及び/又はカルシウム含有無機化合物に、ラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を含有することを特徴とするラニチジン含有医薬固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を含有するラニチジン含有医薬固形製剤及びラニチジン担持粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラニチジンはH2ブロッカーであり、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃炎、上部消化管出血等の治療に有効である。しかしながら、ラニチジン又はその塩は光と温度、特に水分により徐々に分解するため、長期保存により変色する。従来、ラニチジン含有製剤は、糖衣や顔料含有コーティングにより、変色を隠蔽していた(特許文献1:特開2001−342185号公報、特許文献2:特開2003−128535号公報参照)。しかしながら、コーティングしても、完全には水分や光を遮断できないので、変色自体は抑制できなかった。さらに、コーティングを施すことで有効成分の溶出速度が遅延するという問題があり、細粒剤においては、隠蔽に十分なコーティング厚とすることが困難であった。以上のことから、上記を克服したラニチジンの変色を抑制する技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−342185号公報
【特許文献2】特開2003−128535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ラニチジンの変色が抑制されたラニチジン含有医薬固形製剤、及びこの製剤に配合するラニチジン担持粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のマグネシウム及び/又はカルシウム含有無機化合物に、ラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子とすることで、長期保存によるラニチジンの変色を抑制できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記ラニチジン含有医薬固形製剤及びラニチジン担持粒子の製造方法を提供する。
[1].第十五改正日本薬局方の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上で、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上である無機化合物に、ラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を含有することを特徴とするラニチジン含有医薬固形製剤。
[2].無機化合物が、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムから選ばれる1種又は2種以上である[1]記載のラニチジン含有医薬固形製剤。
[3].ラニチジン担持粒子中において、マグネシウム及びカルシウム/ラニチジンで表される、含有モル比が10以上である[1]又は[2]記載のラニチジン含有医薬固形製剤。
[4].第十五改正日本薬局方の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上で、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上である無機化合物に、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を含浸させ、乾燥することを特徴とする前記無機化合物にラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長期保存によるラニチジンの変色が抑制されたラニチジン含有医薬固形製剤、及びこの製剤に配合するラニチジン担持粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の近赤外イメージング測定によるラニチジン塩酸塩の分散状態を示す画像である。
【図2】実施例1の近赤外イメージング測定による担体粒子の分散状態を示す画像である。
【図3】比較例8の近赤外イメージング測定によるラニチジン塩酸塩の分散状態を示す画像である。
【図4】比較例8の近赤外イメージング測定による担体粒子の分散状態を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のラニチジン含有医薬固形製剤は、日本薬局方(第15局)の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上で、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上である無機化合物に、ラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を含有することを特徴とするラニチジン含有医薬固形製剤である。
【0010】
[ラニチジン]
本発明のラニチジン担持粒子に使用されるラニチジンとしては、ラニチジン及びその薬学的に許容される塩が利用できる。具体的にはラニチジン塩酸塩が好ましく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ラニチジン含有医薬固形製剤に対するラニチジンの含有量は、ラニチジン塩酸塩として通常治療で用いられる範囲となるように適宜選定される。例えば、1日量50〜300mg程度、好ましくは150〜300mgとなるように適宜選定される。
【0011】
[無機化合物]
本発明のラニチジン担持粒子に使用されるマグネシウム及び/又はカルシウムを含有する無機化合物は、第十五改正日本薬局方(以下第15局)の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上であり、好適には200mLを超え、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上のものである。第15局の制酸力試験法によって求められる制酸力とは、1g当たりの0.1mol/L塩酸の消費量(mL)で示され、本発明においては200mL以上、好ましくは260mL以上、より好ましくは290mL以上のものである。上限は特に限定されないが、700mL以下が好ましく、より好ましくは600mL以下である。具体的な例としては水酸化マグネシウム(340mL)、酸化マグネシウム(480mL)、水酸化アルミナマグネシウム(300mL)、合成ヒドロタルサイト(290mL)、炭酸マグネシウム(210mL)、炭酸カルシウム(200mL)、水酸化カルシウム(260mL)が挙げられる。マグネシウム及び/又はカルシウム含有量は、無機化合物中20質量%以上であり、好ましくは23質量%以上、より好ましくは24質量%以上である。上限は、マグネシウム又はカルシウム含有無機化合物であれば特に限定されない。具体的には水酸化マグネシウム(42質量%)、酸化マグネシウム(60質量%)、水酸化アルミナマグネシウム(21質量%)、合成ヒドロタルサイト(24質量%)、炭酸マグネシウム(28質量%)、炭酸カルシウム(40質量%)、水酸化カルシウム(54質量%)等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムが好ましく、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト及び水酸化カルシウムがより好ましい。上記第15局制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上で、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上である無機化合物を用いることで、目的とするラニチジンの変色抑制効果が得られる。
【0012】
ラニチジン含有医薬固形製剤に対する上記マグネシウム及び/又はカルシウム含有無機化合物の含有量は、40〜99質量%が好ましく、60〜96質量%がより好ましく、60〜95質量%がさらに好ましい。
【0013】
ラニチジン担持粒子中における、マグネシウム及び/又はカルシウム/ラニチジンで表されるモル比は、ラニチジンの変色抑制効果の点から、10以上が好ましい。本発明の効果である変色の点においては特に限定されず、錠剤の大きさや制酸剤の薬事上の配合制限により決まるが、9000程度である。ただし、含有量は無機化合物の通常治療で用いられる量として5000mg(1日量)まで使用できる。
【0014】
ラニチジン担持粒子には、上記の他、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の添加物を配合することができる。例えば、結晶セルロース、乳糖、デンプン、マルトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、硬化ヒマシ油、タルク、マクロゴール等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動促進剤等が挙げられ、その他、必要に応じて崩壊補助剤、緩衝剤、保存剤、香料、色素、矯味剤等を使用することができる。
【0015】
[ラニチジン担持粒子]
本発明のラニチジン担持粒子は、上記マグネシウム及び/又はカルシウムを含有する無機化合物に、ラニチジンを担持させたものである。これは、第15局の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上で、かつ化合物中のマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上である無機化合物に、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を含浸させ、乾燥することにより得ることができる。含浸の方法としては、マグネシウム及び/又はカルシウム含有無機化合物に、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を噴霧し、乾燥する方法が挙げられ、噴霧後に乾燥してもよく、噴霧と同時に乾燥してもよい。ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液に用いる溶媒としては、水、エタノール、水−エタノール混合溶液等が挙げられる。また、上記ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液中には、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルファ化でんぷん又はゼラチン等を配合し、造粒してもよい。ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液中のラニチジン又はその塩の濃度は、10〜75質量%が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルファ化でんぷん又はゼラチン等の結合剤濃度は1〜20質量%が好ましい。なお、上記結合剤を用いる場合は、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液と、結合剤の溶液又は分散液(この場合の結合剤濃度は1〜20質量%が好ましい)とを別々に調製し、無機化合物にラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を噴霧して、必要に応じ乾燥した後、結合剤の溶液又は分散液を噴霧すると、変色を抑制する効果がより向上する。
【0016】
さらに、上記ラニチジン担持粒子(造粒物を含む)に、上記他の任意の添加物を流動層造粒、攪拌造粒、押出造粒、転動造粒、乾式造粒又はこれらを組み合わせた方法により造粒してもよい。乾燥は流動層乾燥、ドライオーブン、又はフリーズドライ等が挙げられる。造粒及び乾燥まで一貫して行なえ、効率的であることから、流動層造粒が好ましい。乾燥温度(給気温度)時間は特に限定されず、40〜60℃で、5〜30分程度行う。
【0017】
担体粒子となる上記無機化合物の粒径は0.5〜500μmが好ましく、ラニチジン担持粒子の粒径は0.5〜850μmが好ましく、75〜400μmがより好ましい。なお、粒径はレーザー回析散乱法を用い測定を行い、体積基準百分率(%)を積算体積基準分布に変換し中位径(D50)を求める。
【0018】
ラニチジン担持粒子のラニチジン含有医薬固形製剤中における含有量は、上記ラニチジン量が上記範囲となるように1〜100質量%の範囲で適宜選定される。
【0019】
[ラニチジン含有医薬固形製剤]
ラニチジン含有医薬固形製剤は、前記ラニチジン担持粒子を含有するものであり、この粒子を配合することにより得ることができ、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎又は胃炎治療剤として好適である。剤型は特に限定されないが、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、チュアブル剤、発泡剤、口腔内崩壊剤等の経口投与形態の製剤に調製することができる。そのうち、錠剤、粒状剤(顆粒剤、細粒剤、散剤)又はカプセル剤に調製するのが好ましく、錠剤、顆粒剤、細粒剤がより好ましい。錠剤の場合は、ラニチジン担持粒子をそのままあるいは他の錠剤成分と造粒して配合し、圧縮成型することにより得ることができる。圧縮成型の方法は常法であれば特に限定されず、例えば、ロータリー式打錠機、単発打錠機での圧縮成型が使用可能である。また、粒状剤(顆粒剤、細粒剤、散剤)に関しては、ラニチジン担持粒子をそのまま他の成分と混合して得ることが出来る。または、ラニチジン担持粒子と他の成分の一部または全部とを、公知の造粒法を用いて造粒し、得ることができる。造粒は、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法、転動造粒法、乾式造粒法又はこれらを組み合わせた方法が使用可能である。本発明のラニチジン含有医薬固形製剤は、長期保存によるラニチジンの変色を抑制できることから、糖衣や顔料含有コーティングを有しない構造とすることも可能である。ラニチジン担持粒子以外の、ラニチジン含有医薬固形製剤に配合される成分としては、胃腸薬に使用される各種有効成分、添加物が挙げられる。有効成分としては、粘膜修復剤を配合することが好ましい。
【0020】
本発明に使用される粘膜修復剤としては、例えば、アズレンスルホン酸ナトリウム、アルジオキサ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、グリチルリチン酸又はその塩、甘草又はその抽出物、L−グルタミン、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、塩酸ヒスチジン、メチルメチオニンスルホニウムクロライド、赤芽柏、延胡索、ショ糖オクタ硫酸エステルアルミニウム塩(スクラルファート)、塩酸セトラキサート、ソファルコン、オルノプロスチル、スルピリド、ゲファルナート、テプレノン、プラウノトール、アセグルタミドアルミニウム等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でもスクラルファートが好ましい。スクラルファートはそのまま配合することができるが、造粒した粒子を使用してもよい。造粒は、流動層造粒、転動造粒又は混練造粒等の公知の造粒方法であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール等のバインダーとスラリー化して噴霧乾燥したもの等を用いることができる。このような市販品としては、「ストマクシン:富士化学工業(株)製」等が挙げられる。粒度は特に限定されないが、目開き1000μm及び850μmの篩を用いて、1000μmオンが0質量%、850μmオンが3質量%以下であることが好ましい。
【0021】
ラニチジン含有医薬固形製剤には、必要に応じてその他の原料、例えば結合剤、崩壊剤等の賦形剤、滑沢剤、界面活性剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料等)、着色剤等の添加物を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量を配合することができる。
【0022】
結合剤としては、例えば、デンプン、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、タルク、結晶セルロース、粉糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、L−システイン等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、特に明記がある場合を除き、表中の量は成分純分量である。
【0024】
[実施例1〜15,比較例1〜7]
表1〜3に示す組成の錠剤(成人1日服用量)を下記方法で得た。
流動層造粒機MP−01(パウレック製)に担体粒子を入れ、各担体粒子に所定量となるように50質量%ラニチジン塩酸塩水溶液を噴霧して含浸させ、造粒・乾燥し造粒粒子を得た。造粒条件としては、給気温度:80℃、アトマイズエアー量:50.0L/min.[20℃、1atm]、噴霧液速:20g/min.とし、乾燥工程は排風温度が50℃に至るまでとした。造粒粒子の平均粒径は100〜300μmであった。
次に、得られた造粒粒子とステアリン酸マグネシウムを除くその他成分とを、ボーレコンテナミキサー(24rpm 寿工業(株)製20型)を用いて充分に混合した。得られた混合粉体にステアリン酸マグネシウムを加え、ボーレコンテナミキサー(24rpm 寿工業(株)製20型)を用いて5分間混合した後、φ8mm、2段R(R=9.5mm、3.2mm)の杵と臼を備えたロータリー打錠機(リブラ打錠機:菊水製作所製)を用いて、打錠圧力1000kgfで打錠し、1錠310mgの錠剤を得た。なお、表1の「*」は、ストマクシン1180mg中:スクラルファート1000mg、ポリエチレングリコール6000を40mg、水分を140mg含むことを示し、表2,3のストマクシンも組成自体は同じである。
【0025】
実施例1で得られた錠剤中のラニチジン塩酸塩の分散状態を、近赤外イメージング装置「シナジー(マルベルン株式会社製)」により確認した(図1)。ラニチジンの存在を示す濃度が濃い黄〜赤の斑点が細かくほぼ均一に分散している(なお、図面上は黒に見える)。また、ラニチジン塩酸塩(図1)と担体粒子(図2)の分散状態を比較し、それぞれの存在位置を示す濃度が濃い黄〜赤の斑点が重なることで担持、含浸されたことを確認できた。なお、図1のカラー画像、図2のカラー画像をそれぞれ参考写真1,2として提出します。
【0026】
得られた錠剤をPTP(株式会社カナエ製ポリプロピレンPTP成形品 R−1T−2)にて包装し、アルミガセットに入れた。これを50℃・75%RHの恒温層に2週間保存した。保存後の錠剤の色差を色差計(MINOLTA(株)製,分光測色計CM−2022型)で測定し、以下の評価基準に従って変色抑制評価を行った。結果を表中に併記する。
<評価基準>
50℃・75%RHを5℃に変更した以外は上記と同様に保存したサンプルと、上記サンプルとの色差(b*)を比較し、その差が2以下のものは「◎」、2を超えて3以下のものは「○」、3を超えて5以下のものは「△」、5を超えるものは「×」とした。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
[比較例8]
実施例1において、造粒粒子を作製せず、ラニチジン塩酸塩の粉末を合成ヒドロタルサイトと粉体混合したものを用いる以外は、実施例1と同様に錠剤を製造した。比較例8で得られた錠剤中のラニチジン塩酸塩の分散状態を、近赤外イメージング装置「シナジー(マルベルン株式会社製)」により確認した(図3)。塊が点在し、実施例1(図1)と比較すると、濃度が濃い黄〜赤の斑点が大きく、また局在化しており、分散度合いに差が見られる。また、ラニチジン塩酸塩(図3)と担体粒子(図4)の分散状態を比較し、それぞれの存在位置を示す濃度が濃い黄〜赤の斑点が重ならないことで担持、含浸されていないことが確認できた。なお、図3のカラー画像、図4のカラー画像をそれぞれ参考写真3,4として提出する。実施例1と同様に変色抑制評価を行ったところ、結果は「×」であった。
【0031】
[実施例16〜19]
表4に示す組成の細粒剤(成人1日服用量)を下記方法で得た。
流動層造粒機MP−01(パウレック製)に粉体Aを入れ、各粉体に所定量になるように30質量%ラニチジン塩酸塩水溶液を噴霧して含浸させ、その後ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)濃度が7質量%になるように調製した分散液Bを噴霧し、造粒した。得られた造粒物に、必要に応じてアルパルテームを手で十分に混合し、粉体(1)を得た。さらに、流動層造粒機MP−01(パウレック製)にスクラルファート、マンニトールを入れ、所定量になるように7質量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧して造粒し、粉体(2)を得た。粉体(1)及び(2)の造粒条件としては、給気温度:80℃、アトマイズエアー量:50.0L/min.[20℃、1atm]、噴霧液速:20g/min.とし、乾燥工程は排風温度が50℃に至るまでとした。粉体(1)及び(2)を、ボーレコンテナミキサー(24rpm 寿工業(株)製20型)を用いて充分に混合し、細粒剤を得た。
【0032】
得られた細粒剤10gをアルミスティックに入れヒートシールした。これを50℃・75%RHの恒温層に2週間保存した。保存後の錠剤の色差を色差計(MINOLTA(株)製,分光測色計CM−2022型)で測定し、以下の評価基準に従って変色抑制評価を行った。結果を表中に併記する。
<評価基準>
50℃・75%RHを5℃に変更した以外は上記と同様に保存したサンプルと、上記サンプルとの色差(b*)を比較し、その差が2以下のものは「◎」、2を超えて3以下のものは「○」、3を超えて5以下のものは「△」、5を超えるものは「×」とした。
【0033】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第十五改正日本薬局方の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上で、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上である無機化合物に、ラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を含有することを特徴とするラニチジン含有医薬固形製剤。
【請求項2】
無機化合物が、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載のラニチジン含有医薬固形製剤。
【請求項3】
ラニチジン担持粒子中において、マグネシウム及びカルシウム/ラニチジンで表される、含有モル比が10以上である請求項1又は2記載のラニチジン含有医薬固形製剤。
【請求項4】
第十五改正日本薬局方の制酸力試験法によって求められる制酸力が200mL以上で、かつマグネシウム及び/又はカルシウム含有量が20質量%以上である無機化合物に、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を含浸させ、乾燥することを特徴とする前記無機化合物にラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−168371(P2010−168371A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292765(P2009−292765)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】