説明

ラパマイシンコンジュゲートおよび抗体のための前駆体である、ジカルボン酸とのラパマイシン42−エステルおよびジカルボン酸とのFK−50632−エステルの調製プロセス

ジカルボン酸との位置特異的ラパマイシン42−ヘミエステルおよびジカルボン酸との位置特異的FK506 32−エステルの合成方法を記載する。本方法は、ラパマイシンまたはFK−506と無水ジカルボン酸またはジカルボン酸の二官能性活性化エステルとの反応をリパーゼで触媒することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラパマイシンは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって生産される大環状トリエン抗生物質であり、インビトロでも、インビボでも、抗真菌活性、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する抗真菌活性を有することが判明した。ラパマイシンは、Rapamune(登録商標)(Wyeth)として市販されている。ラパマイシンは、抗腫瘍組成物において免疫抑制剤として有用であり、関節リウマチの治療に有用であり、全身性エリテマトーデス[米国特許第5,078,999号]、肺の炎症[米国特許第5,080,899号]、インスリン依存性糖尿病[Fifth Int. Conf. Inflamm. Res. Assoc. 121 (Abstract), (1990)]、成人T細胞白血病/リンパ腫[欧州特許出願第525,960号A1]ならびに血管損傷後の平滑筋細胞の増殖および内膜肥厚[R. Morris, J. Heart Lung Transplant 11 (pt. 2) : 197 (1992)]の予防または治療に有用であることも証明されている。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンおよびその調製は、1975年12月30日発行の米国特許第3,929,992号に記載されている。3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)は、インビトロ法においても、インビボ法においても、腫瘍成長に対して有意な阻害効果を実証したラパマイシンのエステルである。CCI−779をはじめとするラパマイシンのヒドロキシエステルの調製および使用は、米国特許第5,362,718号および同第6,277,983号、ならびに米国特許公開第2005−0033046号A1(米国特許出願番号10/903,062)に開示されている。
【0003】
42−OH位置でのラパマイシンの誘導体は合成されており、数ある中でも移植拒絶反応、自己免疫疾患、固形腫瘍、成人T細胞白血病/リンパ腫、高増殖性血管疾患の治療において、免疫抑制の誘導に有用であることが判明した。幾つかの誘導体は、以下の一般式(I)のラパマイシンコンジュゲートを合成するための前駆体として役立ち、それらのコンジュゲートは、ラパマイシンに特異的な抗体を作製するための免疫原性分子として有用であり、ならびにイムノアッセイのためのラパマイシン結合タンパク質の単離に、およびラパマイシンまたはその誘導体に特異的な抗体の検出に有用である。
【化3】

【0004】
式I中の担体は、免疫原性担体材料またはデテクター担体材料、例えばタンパク質またはポリペプチドであり、Lは、ラパマイシンを担体に取り付けることができるリンカーである。[米国特許公開第2004−0010920号]。
【0005】
コンジュゲートの調製のために連結基として使用することができる、多数のラパマイシンの42−誘導体が記載されている。例えば、ラパマイシンのフッ素化エステルの調製は、米国特許第5,100,883号に記載されており、アミドエステルの調製は、米国特許第5,118,667号に記載されており、アミノエステルの調製は、米国特許第5,130,307号に記載されており、ラパマイシンのカルバメートの調製は、米国特許第5,118,678号に記載されており、スルホネートおよびスルファメートの調製は、米国特許第5,177,203号に記載されており、ラパマイシンの42位でのコハク酸および他のジカルボン酸(アジピン酸、グルタル酸、ジグリコール酸など)とのエステルの調製は、米国特許公開第2001−0010920号A1、米国特許第5,378,696号、ならびに国際特許公開パンフレット第98/45333号、同第94/25072号、同第94/25022号および同第92/05179号に記載されている。1つの実施形態において、42位でのジカルボン酸とのエステル、例えば42−ヘミスクシネート、42−ヘミグルタレートおよび42−ヘミアジペート(式II)が、式Iのラパマイシンコンジュゲートの合成に使用される。
【化4】

【0006】
弱塩基の存在下、対応する無水物での42−OHの直接エステル化によって行われるような式(II)の化合物の合成が記載されている。塩基条件に対するラパマイシンの感度に加えてその低い位置選択性により、所望の42−ヘミエステルは、HPLC精製後、低い収率(典型的には20%未満)で生成され、この粗生成物は、31,42−ジエステル、31−エステルおよび他の副生成物が混入している。
【化5】

【0007】
このプロセスの収率を改善するための取り組みにおいて、ラパマイシンの42−ヘミスクシネートの対応するベンジルおよびメチルエステルが、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)からのリパーゼを使用して加水分解される、二段階リパーゼ触媒加水分解法が用いられた[M. Adamczykら, Tetrahedron Letters, 35(7) : 1019 - 1022 (1994)]。僅かに改善された収率が得られた(ベンジルエステルから29%およびメチルエステルから50%)。しかし、従来どおりの化学によるラパマイシン42−ヘミコハク酸ベンジルおよびメチルエステルの合成は、低い位置選択性、低い収率および時間のかかる精製段階という欠点を有する。
【化6】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、改善された収率でのヘミエステルの効率的合成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加水分解酵素であるリパーゼの存在下でラパマイシンから式(II)のラパマイシン42−ヘミエステルを合成するためのプロセスを記載する。もう1つの態様において、本発明のプロセスは、リパーゼの存在下でのFK−506からのFK−506 32−ヘミエステルの位置特異的製造を提供する。本発明の方法は、優れた収率でこれらの化合物を合成するための位置選択的方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、本発明に従って製造された中間化合物を抗体およびコンジュゲートの作製に使用する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法により、ラパマイシンコンジュゲートを調製するための前駆体である、ラパマイシン42−ヘミエステル(II)またはFK−506ヘミエステルが製造される。
【0012】
本明細書で用いる場合、「ラパマイシン」は、基本ラパマイシン核(以下に示す)を含有する免疫抑制化合物の一類と定義する。
【化7】

本発明に記載のラパマイシンは、ラパマイシン核の誘導体として化学的または生物学的に変性されていることもあるが、免疫抑制特性を未だ保持している化合物を包含する。従って、用語「ラパマイシン」は、ラパマイシンのエステル、エーテル、オキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミン、ならびに核上の官能基が、例えば還元もしくは酸化によって変性されているラパマイシン、ラパマイシンの代謝産物、または開環型ラパマイシン(米国特許第5,252,579号に記載されているseco−ラパマイシンなど)を包含する。用語「ラパマイシン」は、ラパマイシンの薬学的に許容される塩も包含し、酸性部分または塩基性部分のいずれかを含有することにより、そうした塩を形成することができる。
【0013】
しかし、こうした化合物は、本発明の位置特異的42−ヘミエステルの製造を可能ならしめるために、42位にヒドロキシル基を保持する。
【0014】
1つの実施形態において、本発明において有用なラパマイシンのエステルおよびエーテルは、ラパマイシン核の31位におけるヒドロキシル基のエステルおよびエーテル、(27−ケトンの化学的還元後の)27位におけるヒドロキシル基のエステルおよびエーテル、ならびにオキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミンがラパマイシン核のケトンのものであるエステルおよびエーテルである。
【0015】
他の実施形態において、本発明において有用なラパマイシンの31−エステルおよびエーテルは、以下の特許に記載されている:アルキルエステル(米国特許第4,316,885号);アミノアルキルエステル(米国特許第4,650,803号);フッ素化エステル(米国特許第5,100,883号);アミドエステル(米国特許第5,118,667号);カルバミン酸エステル(米国特許第5,118,678号);シリルエーテル(米国特許第5,120,842号);アミノエステル(米国特許第5,130,307号);アセタール(米国特許第5,51,413号);アミノジエステル(米国特許第5,162,333号);スルホネートおよびスルフェートエステル(米国特許第5,177,203号);エステル(米国特許第5,221,670号);アルコキシエステル(米国特許第5,233,036号);O−アリール、−アルキル、−アルケニルおよび−アルキニルエーテル(米国特許第5,258,389号);炭酸エステル(米国特許第5,260,300号);アリールカルボニルおよびアルコキシカルボニルカルバメート(米国特許第5,262,423号);カルバメート(米国特許第5,302,584号);ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号);ヒンダードエステル(米国特許第5,385,908号);複素環式エステル(米国特許第5,385,909号);gem−二置換エステル(米国特許第5,385,910号);アミノアルカン酸エステル(米国特許第5,389,639号);ホスホリルカルバミン酸エステル(米国特許第5,391,730号);カルバミン酸エステル(米国特許第5,411,967号);カルバミン酸エステル(米国特許第5,434,260号);アミジノカルバミン酸エステル(米国特許第5,463,048号);カルバミン酸エステル(米国特許第5,480,998号);カルバミン酸エステル(米国特許第5,480,989号);カルバミン酸エステル(米国特許第5,489,680号);ヒンダードN−オキシドエステル(米国特許第5,491,231号);ビオチンエステル(米国特許第5,504,091号);O−アルキルエーテル(米国特許第5,665,772号);およびラパマイシンのPEGエステル(米国特許第5,780,462号)。これらのエステルおよびエーテルの調製は、上に挙げた特許に記載されている。
【0016】
さらに他の実施形態において、本発明において有用なラパマイシンの27−エステルおよびエーテルは、米国特許第5,256,790号に開示されている。これらのエステルおよびエーテルの調製は、上に挙げた特許に記載されている。
【0017】
他の実施形態において、本発明において有用なラパマイシンのオキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミンは、米国特許第5,373,014号、同第5,378,836号、同第5,023,264号および同第5,563,145号に開示されている。これらのオキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミンの調製は、上に挙げた特許に開示されている。
【0018】
追加の実施形態において、本発明において有用なラパマイシンとしては、ラパマイシン[米国特許第3,929,992号]、プロリン−ラパマイシン、7−デスメチルラパマイシン、32−デスメチルラパマイシン、32−デスメトキシラパマイシンおよび上に記載したようなそれらの誘導体が挙げられる。
【0019】
さらに他の実施形態において、本発明の方法は、以下に図示する構造を有するFK−506化合物からのFK−506の32−エステル(式III)を調製するために使用することができる。
【化8】

【0020】
1つの実施形態において、リパーゼ触媒エステル化による式(II)またはFK−506 32−エステル(式III)の調製は、対応する無水カルボン酸をアシル化剤として使用することにより行われる。この一段階法は、式(II)または式(III)のための確固たるプロセスをもたらす。もう1つの態様において、本発明のヘミエステルの調製は、リパーゼの存在下、ジカルボン酸のジ(ビニル)、ジ(イソプロペニル)、ジ(N−スクシンイミジル)エステルをはじめとする対応するジカルボン酸の二官能性活性化エステルをアシル化供与体として使用して行われる。得られたエステル中間体を、その後、他のリパーゼにより触媒される水での加水分解に付して、ヘミエステルを生じさせる。
【0021】
I.アシル化剤としての無水ジカルボン酸の使用
以下の図式は、適する溶媒中、リパーゼの存在下でのラパマイシンおよび無水ジカルボン酸からのラパマイシン42−ヘミエステル(II)の調製を図示するものである。
【化9】

同様に、FK−506 32−ヘミエステルは、FK−506を出発原料として使用して、FK−506および無水ジカルボン酸から調製することができる。
【化10】

【0022】
便宜上、以下の論考は、ラパマイシンおよびラパマイシン42−エステルに言及することにする。しかし、明細書を通して、ラパマイシンおよびラパマイシン42−ヘミエステルの代わりにFK−506およびFK−506 32−エステルを容易に用いることができることは理解されるはずである。
【0023】
上の図式に関して、Lは連結基である。この実施形態において、適する連結基は、1から6個の炭素原子または2から4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖から容易に選択される。適する連結基であるLの例としては、直鎖または分枝鎖アルキレン、例えばジメチレン、トリメチレン、テトラメチレンおよび2−メチル−トリメチレンが挙げられるが、これらに限定されない。さらに他の適する連結基は、当業者には容易に明らかとなることだろう。
【0024】
上の図式における無水ジカルボン酸は、次の構造:
【化11】

によって図示される。当業者は、適切な無水ジカルボン酸(連結基の定義は上で示した)を容易に選択することができる。適する無水ジカルボン酸の例としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水3−メチルグルタル酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
1つの実施形態において、本発明において有用なリパーゼは、「細菌リパーゼ」と呼ばれる細菌起源のリパーゼから選択される。細菌リパーゼとしては、例えば、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、リゾープス・デレマ(Rhizopus delemar)およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が挙げられる。もう1つの実施形態において、B型カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica, type B)からのリパーゼが、本発明の実施において使用される。C.アンタルクチカリパーゼは、例えば、Novo Nordiskから製品名 NOVO SP435もしくはNOVOZYM 435で、またはRoche Molecular Biochemicals and BioCatalyticsから製品名CHIRAZYME L−2で市販されている。さらにもう1つの実施形態において、リパーゼは、本明細書に記載の、Amano Enzyme(天野エンザイム株式会社)からのリパーゼPS−C「Amano」IIである。本発明において有用なリパーゼは、異なる細菌起源からの、および様々な供給業者による異なる商品名での、粗製、不完全精製、精製または固定化形態で、使用することができる。
【0026】
リパーゼは、有効な触媒量、すなわち、アシル化反応を妥当な反応速度で有効に触媒する量で使用される。この酵素を(ラパマイシンの量を基準にして)約100から約800重量%の量で使用できることは、当業者には理解されるであろう。1つの実施形態において、この酵素は、約200から約700重量%、約250から約600重量%、または約300から約500重量%の量で使用される。
【0027】
本発明の反応は、典型的には適する溶媒中で行われる。溶媒は、開始時に出発ラパマイシン[またはFK−506]のすべてまたは一部を有効に溶解することができならびに妥当な速度で反応を進行させることができる量で、使用される。本発明において有用な溶媒の代表例としては、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、1,4−ジオキサン、CH2Cl2、CHCl3、エチルエーテル、ヘキサン、アセトニトリル(CH3CN)、ジメチルスルホン(DMSO)およびこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態において、トルエン−CH3CNの混合物が使用される。さらなる実施形態において、トルエン−CH3CNは、約1:1から約10:1(v/v)、または約3:1から7:1(v/v)の比率で存在する。さらにもう1つの実施形態では、トルエンが溶媒として使用される。さらにもう1つの実施形態では、トルエン−CH3CN(5:1v/v)が使用される。
【0028】
本発明の反応は、望ましくない副生成物の形成を低減するために十分低いが、過度に長い反応時間を必要とするほど低くはない温度で行われる。この酵素的プロセスに適する温度は、約20℃から約75℃、約25から27℃から75℃、約30℃から40℃から約70℃、約32℃から37℃から約65℃の範囲内であり得る。1つの実施形態において、温度は、約30℃から約65℃、または約40℃から55℃である。
【0029】
1つの実施形態において、本発明の方法は、次の手順に従って行われる。ラパマイシン[またはFK−506]、無水物およびリパーゼを溶媒中で混合する。その後、その混合物をアルゴン(Ar2)または窒素(N2)雰囲気下、40℃から60℃で1から7日間加熱する。その後、酵素を濾過により反応混合物から分離する。その後、その生成物を再結晶またはシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0030】
この反応は、様々な技法、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニターすることができる。あるいは、当業者は、他のモニター法を用いることができる。反応が完了したら、酵素(リパーゼ)を濾過して除去し、適する溶媒で洗浄する。この溶媒は、反応での使用に選択したものと同じであってもよいし、または反応における溶媒と異なっていてもよい。溶媒が異なる場合、それは、上で定義した溶媒、または他の一般に使用されている溶媒、例えば数ある中でもアセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、の中から選択することができる。その後、溶媒は、適する条件下、例えば減圧下で蒸発除去することができる。
【0031】
1つの実施形態において、溶媒は、反応における含水率を最小にするように選択される。加えて、または代替として、モレキュラーシーブをその反応に適用することができ、および/または乾燥剤を反応に加えることができる。しかし、反応の含水率の制限は、本発明のこの態様には重要ではない。
【0032】
その後、残留物を、適する手段によって、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィー、適する溶媒での溶離、または適する溶媒(例えば、数ある中でもヘキサン−アセトン、ヘキサン−酢酸エチル、エチルエーテル)での再結晶によって、精製する。他の精製手段は、当業者には公知であり、また、本発明により考えられる。
【0033】
1つの実施形態において、反応が、上で述べたのように一定時間たっても完了しない場合、追加の酵素を添加してもよいし、TLCまたはHPLCによって判定して反応が完了するまで、さらなる時間にわたってその混合物を攪拌してもよい。
【0034】
以下の実施例1は、ラパマイシン42−ヘミスクシネートの合成を通して、この1段階の、位置選択性の高いプロセスを説明するものである。
【0035】
II.アシル化剤としての二官能性活性化ジカルボン酸エステルの使用
以下の図式は、ラパマイシンおよび二官能性ジカルボン酸エステルからのラパマイシン42−ヘミエステル(II)の調製を図示するものである。また、この方法を用いて、FK−506および二官能性カルボン酸エステルからFK−506ヘミエステルを調製することができる。以下の明細書がラパマイシンを指す場合、FK−506 32−エステルを製造するために、FK−506を代用できることは、容易に理解されるであろう。
【0036】
本発明の方法は、2つの段階を含む。第一の段階は、ラパマイシン(またはFK−506)および二官能性ジカルボン酸を、上で定義したような細菌起源のリパーゼと共に、上で定義したような適する溶媒中で混合することによって行われる。第二の段階は、式(II)の所望の化合物(またはFK−506 32−エステル)を生じさせるための、リパーゼを使用する、得られたエステル中間体の加水分解である。
【化12】

【0037】
二官能性ジカルボン酸エステル、
【化13】

に関して、Rは、アシル基を活性化するであろう任意の適する基である。例えば、数ある中でもビニル、イソプロペニル、N−スクシンイミジル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチルおよびオキシムエステルをはじめとする、広範なR基を利用できることは、当業者には容易に理解されることであろう。活性化基の選択は、本発明での制限事項ではない。Lは、上で定義したように連結基である。適するL基の例としては、上で特定したもの、ならびに1個もしくはそれ以上の酸素原子を含む鎖、またはアルキレン、例えばジメチレン(CH2CH2)、トリメチレン(CH2CH2CH2)、CH2OCH2、テトラメチレン(CH2CH2CH2CH2)、2−メチル−トリメチレン[CH2CH(CH3)CH2]、ペンタメチレン(CH2CH2CH2CH2CH2)、ヘキサメチレン(CH2CH2CH2CH2CH2CH2)が挙げられる。これらの試薬は、市販されており、または文献に記載されている方法によって調製することができる。
【0038】
同様に、FK−506 32−ヘミエステルは、FK−506および二官能性ジカルボン酸エステルから同じ方法を用いて調製することができる。以下の明細書がラパマイシンを指す場合、FK−506 32−ヘミエステルを製造するために、FK−506を代用できることは、容易に理解されるであろう。
【0039】
第一段階での反応は、二官能性ジカルボン酸エステルを無水カルボン酸の代わりに利用すること以外はパートIに記載したとおり行う。これら以外は、リパーゼおよび反応条件は、上のパートIに記載したとおりである。
【0040】
上のパートIにおいて特定したものの中から溶媒を選択することができる。1つの実施形態において、溶媒は、上で定義したものの中から、またはトルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ヘキサンまたはそれらの混合物から選択することができる。もう1つの実施形態では、TBMEが使用される。1つの実施形態では、TBMEは、少なくとも4重量容量(wt volume)(すなわち、ラパマイシンの量の4倍(4X)より過剰である容量)から約15wt容量、または約5から10重量容量の量で使用することができる。
【0041】
残留水は、ラパマイシンをいわゆるseco−ラパマイシン誘導体に分解して、マクロラクトン環開環産物を形成させ得る。この副反応を最小限にするために、反応系において低水分量を維持する。1つの実施形態では、無水溶媒がリパーゼ触媒の標準的な市販製剤と共に使用される。もう1つの実施形態では、リパーゼ溶液中に存在する水の量を、乾燥剤、例えば数ある中でもMgSO4、Na2SO4、の添加によって調整することにより、水分量を制御することができる。さらにもう1つの実施形態では、モレキュラーシーブを使用して、水分を制御することができる。数ある中でも5Å、4Åおよび3Åをはじめとする種々の大きさの細孔を有する多種類のシーブを容易に利用することができる。適するモレキュラーシーブは、様々な商業的供給源から入手することができる。
【0042】
本発明の酵素的プロセスは、約20℃から約50℃、または約25℃から約45℃の範囲内の温度で行うことができる。1つの実施形態において、反応は、12時間から48時間、ラパマイシンの分解を最小限にするために、N2下で行われる。この反応は、様々な技法、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニターすることができる。反応完了後、酵素(リパーゼ)を濾過して除去し、ヘキサンまたはヘプタンの添加によって、その粗製エステル生成物をその濾液に沈殿させる。
【0043】
得られたエステル中間体を、その後、リパーゼ触媒加水分解に付して、所望のラパマイシン42−ヘミアジペートを回収する。
【0044】
第二段階は、湿式溶媒中、リパーゼの存在下での、第一段階からの粗製エステル中間体の加水分解を含む。このリパーゼは、第一段階において使用したものと同じであってもよいし、または本明細書において特定している適するリパーゼの中から独自に選択してもよい。1つの実施形態において、このリパーゼは、Amano EnzymeからのリパーゼPS−C「Amano」IIであり、これは、メチルアクリル基で化学変性されたセラミック粒子上に固定化されている。
【0045】
この加水分解段階に使用される媒体は、上で定義した溶媒の中から、または水混和性溶媒から選択することができる。水混和性溶媒の場合、その溶媒は、水で飽和されている。さらに好ましくは、例えば、MeCN、THF、ジオキサン、t−アミルアルコール、アセトンまたはこれらの混合物および適量の水、例えば0.5%v/vから10%v/v、または1%v/vから5%v/vの水を含む水混和性溶媒が、選択される。
【0046】
1つの実施形態において、この反応の温度は、約20℃から約50℃、またはほぼ室温(例えば約25℃)から35℃の範囲内である。もう1つの実施形態において、約2% 水を含有するMeCNが反応媒体として、約20重量% NOVOZYM SP 435リパーゼと共に、室温で使用され;その反応は、数時間で完了する。
【0047】
1つの実施形態において、本発明のこの方法の加水分解段階は、次の手順に従って行われる。第一段階からの粗生成物を湿式溶媒に溶解する。十分な量のリパーゼを添加し、その後、その混合物を室温から40℃、アルゴン(Ar2)または窒素(N2)雰囲気下で、1から24時間、またはすべての出発原料が式(II)のヘミエステル生成物に転化されるまで攪拌する。これは、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)をはじめとする、従来どおりの方法によってチェックすることができる。酵素を反応混合物から、例えば濾過によって分離する。その後、従来どおりの方法、例えばシリカゲルクロマトグラフィーまたは再結晶を用いて、その粗生成物を優れた収率で精製する。
【0048】
もう1つの実施形態において、この二段階プロセスは、ワンポット式で行うことができる。すなわち、第一段階からの中間体を単離せずに第二加水分解段階を行う。このワンポットプロセスにおいて、第一酵素的段階は上に記載したとおりに行う。反応完了後、溶媒および水を添加する。1つの実施形態において、溶媒は、水混和性溶媒、例えばMeCN、THF、ジオキサン、t−アミルアルコール、アセトンまたはこれらの混合物である。さらにもう1つの実施形態において、水の量は、0.5%v/vから10%v/v、または1%v/vから5%v/vである。その後、その混合物を一定の時間にわたって攪拌し、酵素を濾過して除去し、その後、シリカゲルクロマトグラフィーによってその粗生成物を精製する。1つの実施形態では、5% 水を含有するMeCNがその反応混合物に添加され、反応は1時間以内に完了する。
【0049】
式(II)のラパマイシン42−ヘミエステルのこの二段階酵素的プロセスは、実施例2に示すような二段階手順(方法1)またはワンポット手順(方法2)によるラパマイシン42−ヘミアジペートの合成によって、さらに例証される。42−ヘミスベレートの合成は、実施例3に示す。
【0050】
III.組成物および使用
本発明に従って製造されるジカルボン酸とのラパマイシン42−ヘミエステルおよびジカルボン酸とのFK−506 32−エステルは、免疫原、デテクター、および/またはマトリックス結合コンジュゲートを調製する際に有用な前駆体である。これらの免疫原、デテクターおよびコンジュゲートは、出発原料(例えば、ラパマイシンもしくはFK−506)またはそれらの誘導体に特異的な抗体の作製および検出に、生体液または検査液中の出発原料またはその誘導体のレベルの測定に、ならびに出発原料またはその誘導体に結合しているタンパク質の単離に、有用である。
【0051】
ラパマイシンコンジュゲートを調製するための前駆体として、本発明に従って調製した式(II)の化合物中のカルボン酸は、ペプチドに関する文献に記載されている標準的な方法論を用いて活性化する。典型的に、これは、本発明の化合物とN−ヒドロキシスクシンイミドを反応させて、活性化N−スクシンイミジルエステルを形成することを含む。この活性化エステルを、その後、免疫原性担体分子の求核末端と反応させて、ラパマイシンコンジュゲートを形成することができる。次の図式は、この技法を例示するものである。
【化14】

しかし、本発明は、そのように限定されない。本発明の化合物を使用して製造されるこれらおよび他のラパマイシン誘導体の使用が考えられる。
【0052】
本発明のラパマイシン免疫原性コンジュゲートを使用して、当該技術分野において公知である標準的な技法により、ラパマイシンまたはその誘導体に特異的な抗体を作製することができる。1つの実施形態では、本発明の精製された位置特異的ラパマイシン42−エステルが単独で、またはアジュバントと併用で、宿主動物の1箇所またはそれ以上の部位に接種される。本発明のラパマイシン免疫原性コンジュゲートから作製された抗体は、ラパマイシンレベルの判定のために、非常に多数のイムノアッセイにおいて使用することができ、ELISA、ラジオイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイおよび蛍光イムノアッセイにおいて使用することができる。
【0053】
もう1つの実施形態において、本発明のラパマイシン42−誘導体またはそれらの使用により作製されたコンジュゲートもしくは抗体は、当該技術分野において説明されている任意の適する方法によって配合することができる。
【0054】
同様に、本発明のFK−506ヘミエステルからのFK−506免疫原、抗体およびコンジュゲートの作製方法は、当業者には容易に明らかとなるだろう。
【0055】
さらに、本発明は、本発明に従って製造され、その所望の使用、例えば抗体産生のために配合された、位置特異的ラパマイシン42−ヘミエステルおよび/またはFK−506 32−ヘミエステルを収容しているパッケージングおよびキットを提供する。もう1つの実施形態において、本発明の組成物を使用して作製された抗体またはラパマイシンコンジュゲートは、様々な適する担体、保存薬などを使用して配合することができる。ビン、バイアル、ブリスターパックなどをはじめとする適する容器は、当業者には公知である。こうしたパッケージングおよびキットは、例えば使用説明書、注射器、アプリケータ、標準的な濃度のラパマイシン(標準曲線を作成するためのもの)、容器、マイクロタイタープレート、固体支持体、試験管、トレーなどをはじめとする他の構成要素をさらに収容し得る。用いられるアッセイのタイプに依存して、多くの種類の試薬をキットに含めることができる。
【0056】
以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、特許請求の範囲に記載する本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例1】
【0057】

ラパマイシン42−ヘミスクシネートの合成
【化15】

リパーゼを含む溶媒中でラパマイシンと無水コハク酸を混合することにより、リパーゼ触媒アシル化を容易に行う。
【0058】
方法1:
トルエン(20mL)中のラパマイシン(2.0g、2.2mmol)、無水コハク酸(1.0g、10mmol)およびNOVOZYM SP435(4.5g)の混合物を45℃、N2雰囲気下で40時間(40h)攪拌した。酵素を濾過して除去し、トルエンで洗浄し、併せた有機溶媒を減圧下で濃縮した。残留物を、CH2Cl2−MeOH(12:1)で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色の固体として生じさせた(2.02g、収率91%)。
【0059】
方法2:
トルエン−CH3CN(3mL、5:1v/v)中のラパマイシン(91.4mg、0.1mmol)、無水コハク酸(120mg、1.2mmol)およびNOVOZYM SP435(400mg)の混合物を45℃、N2雰囲気下で144時間攪拌した。酵素を濾過して除去し、トルエンで洗浄し、併せた有機溶媒を減圧下で濃縮した。残留物を、CH2Cl2−MeOH(12:1)で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色の固体(87mg)として生じさせ、同時にラパマイシン(10mg)を回収した。42−ヘミスクシネートの収率は、回収したラパマイシンに基づき96%である(ラパマイシンの出発原料に基づき86%)。MS:1013(M-)。
【実施例2】
【0060】
ラパマイシン42−ヘミアジペートの合成
【化16】

方法1:
t−ブチルメチルエーテル(TBME)(4mL)中のラパマイシン(457mg、0.5mmol)、ジビニルアジペート(250mg、1.25mmol)、4Åモレキュラーシーブ(80mg)およびNOVOZYM SP435(300mg)の混合物を45℃で16時間攪拌した。酵素を濾過によって除去し、2x1mL TBMEで洗浄する。その後、濾液を氷冷ヘプタン(30mL)に添加する。ブーフナー漏斗により固体を回収し、その白色の粉末を真空下で2時間乾燥させる。
【0061】
その白色の粉末を4mL CH3CN[2%(v/v)水を含有する]に溶解する。NOVOZYM SP435(80mg)を添加し、その混合物を室温で1〜2時間攪拌する。酵素を濾過によって除去し、2x1mL MeCNで洗浄する。濾液を濃縮し、残留物を、CH2Cl2:MeOH(15:1)で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色の固体として生じさせる(470mg、二段階終了して収率90%)。MS:1041(M-)。
【0062】
方法2:
無水t−ブチルメチルエーテル(TBME)(18mL)中のラパマイシン(3.0g、3.28mmol)、ジビニルアジペート(2.0g、10mmol)およびNOVOZYM SP435(3.0g)の混合物を40℃で36時間攪拌した。MeCN(10mL、5% H2Oを含有するもの)を添加した。15分(15min.)後、酵素を濾過によって除去し、TBME/MeCN(2:1)で洗浄する。濃縮、およびヘキサン−アセトン(5:4)で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、表題化合物を白色の固体として生じさせる(3.05g、収率89%)。
【実施例3】
【0063】
ラパマイシン42−スベレートの合成
【化17】

【0064】
無水t−ブチルメチルエーテル(TBME)(18mL)中のラパマイシン(3.0g、3.28mmol)、ジビニルスベレート(2.26g、10mmol)およびNOVOZYM SP435(3.0g)の混合物を40℃で48時間攪拌した。MeCN(10mL、5% H2Oを含有するもの)を添加した。15分後、酵素を濾過によって除去し、TBME/MeCN(2:1)で洗浄する。濃縮、およびヘキサン−アセトン(5:4)で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、表題化合物を白色のフォームとして生じさせる(2.88g、収率82%)。
【0065】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によって範囲が限定されることはない。実際、上述の説明および付随する図から、当業者には、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な変形が明らかとなろう。そうした変形は、添付の特許請求の範囲の中に入ると解釈される。
【0066】
さらに、値は近似値であり、説明のために提供していることは、理解されるはずである。
【0067】
特許、特許出願、出版物、手順などがこの出願のいたるところで引用されているが、これらの開示は、それら全体が、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書と参考文献の間に矛盾が存在し得る程に、本明細書においてその開示の言語は管理されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラパマイシンまたはFK−506と無水ジカルボン酸をリパーゼの存在下で反応させる段階を含む、ジカルボン酸とのラパマイシン42−ヘミエステルまたはジカルボン酸とのFK−506 32−ヘミエステルの位置特異的合成方法。
【請求項2】
ラパマイシンと無水ジカルボン酸をリパーゼの存在下で反応させる段階を含む、ジカルボン酸とのラパマイシン42−ヘミエステルの位置特異的合成のための、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FK−506と無水ジカルボン酸をリパーゼの存在下で反応させる段階を含む、ジカルボン酸とのFK−506 32−ヘミエステルの位置特異的合成のための、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無水ジカルボン酸が、構造:
【化1】

(式中、Lは、1から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖を伴う連結基である)
を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無水ジカルボン酸が、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水3−メチルグルタル酸およびこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リパーゼが、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、リゾープス・デレマ(Rhizopus delemar)およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から成る群より選択される微生物からのリパーゼである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用されるリパーゼが、カンジダ・アンタルクチカからの固定化リパーゼである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応が、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、1,4−ジオキサン、CH2Cl2、CHCl3、エチルエーテル、ヘキサンおよびこれらの混合物から成る群より選択される溶媒中で行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、20℃から75℃の範囲内で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応が、35℃から60℃の範囲内で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リパーゼが、NOVOZYM SP435リパーゼであり、前記溶媒が、トルエン−アセトニトリルの5:1 v/vの比率での混合物であり、および前記反応が、約45℃の温度で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(a)ラパマイシンまたはFK−506とジカルボン酸の二官能性活性化エステルとをリパーゼの存在下で反応させて、エステル中間体を形成する段階、および
(b)そのエステル中間体をリパーゼで加水分解する段階
を含む、ジカルボン酸とのラパマイシン42−ヘミエステルまたはジカルボン酸とのFK−506 32−ヘミエステルの位置特異的合成方法。
【請求項13】
(a)ラパマイシンとジカルボン酸の二官能性活性化エステルとをリパーゼの存在下で反応させて、エステル中間体を形成する段階、および
(b)そのエステル中間体をリパーゼで加水分解する段階
を含む、ジカルボン酸とのラパマイシン42−ヘミエステルの位置特異的合成方法。
【請求項14】
(a)FK−506とジカルボン酸の二官能性活性化エステルとをリパーゼの存在下で反応させて、エステル中間体を形成する段階、および
(b)そのエステル中間体をリパーゼで加水分解する段階
を含む、ジカルボン酸とのFK−506 32−ヘミエステルの位置特異的合成方法。
【請求項15】
前記ジカルボン酸の二官能性エステルが、構造:
【化2】

(式中、Rは、ビニル、イソプロペニル、またはN−スクシンイミジルであり、ならびにLは、1から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖を伴う連結基である)
を有する、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Lが、1個またはそれ以上の酸素原子をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
段階(a)において使用されるリパーゼが、カンジダ・アンタルクチカ、カンジダ・ルゴサ、ムコール・ミーヘイ、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、リゾープス・デレマおよびアスペルギルス・ニガーから成る群より選択される微生物からのリパーゼである、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
段階(a)において使用されるリパーゼが、カンジダ・アンタルクチカからのNOVOZYM SP435、またはシュードモナス・セパシアからのリパーゼPS−C「Amano」IIである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
段階(a)における反応が、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、MeCN、1,4−ジオキサン、CH2Cl2、CHCl3、エチルエーテル、ヘキサンおよびこれらの混合物から成る群より選択される溶媒中で行われる、請求項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
モレキュラーシーブを反応に加えることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
段階(a)の反応が、20℃から75℃の範囲内で行われる、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
段階(a)において使用されるリパーゼが、NOVOZYM SP435またはリパーゼPS−C「Amano」IIであり、溶媒が、TBMEであり、および反応が、約45℃の温度で行われる、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
段階(b)において使用されるリパーゼが、カンジダ・アンタルクチカ、カンジダ・ルゴサ、ムコール・ミーヘイ、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、リゾープス・デレマおよびアスペルギルス・ニガーから成る群より選択される微生物からのリパーゼである、請求項12から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
段階(b)において使用されるリパーゼが、カンジダ・アンタルクチカからのまたはシュードモナス・セパシアからのものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
段階(b)の加水分解が、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、MeCN、1,4−ジオキサン、t−アミルアルコール、CH2Cl2、CHCl3、エチルエーテル、ヘキサンおよびこれらの混合物から成る群より選択される溶媒中で行われ、前記溶媒または溶媒混合物が、約0.5から10% 水を含有する、請求項12から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
段階(b)の加水分解が、室温から50℃の範囲内で行われる、請求項12から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
段階(b)において使用されるリパーゼが、NOVOZYM SP435またはリパーゼPS−C「Amano」IIであり、溶媒が、2% 水を含有するアセトニトリル(MeCN)であり、および反応が、室温で行われる、請求項12から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1、2、4から13および15から27のいずれか一項に記載の方法に従って製造された位置特異的ラパマイシン42−ヘミエステル。
【請求項29】
請求項28に記載の位置特異的ラパマイシン42−ヘミエステルを使用して製造されたラパマイシン抗体。
【請求項30】
請求項28に記載の位置特異的ラパマイシン42−ヘミエステルを使用して製造されたラパマイシンコンジュゲート。
【請求項31】
請求項29に記載のラパマイシン抗体または請求項30に記載のラパマイシンコンジュゲートを含む製品。
【請求項32】
請求項3から12および14から27のいずれか一項に記載の方法に従って製造された位置特異的FK506 32−ヘミエステル。

【公表番号】特表2007−532655(P2007−532655A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508443(P2007−508443)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012268
【国際公開番号】WO2005/105812
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】