説明

ラベルスイッチングネットワーク及びそれに用いるラベルスイッチングパス設定方法

【課題】 ネットワークリソース及び運用コストを削減し、大規模ネットワークへのスケーラビリティ問題をも解決可能なラベルスイッチングネットワークを提供する。
【解決手段】 LSR−F3においてラベルスイッチングパスの障害a1を検出すると(a2)、LSR−F3は保持しているLSP障害通知検索テーブルを検索し、障害となったラベルスイッチングパスに対してどのプロテクションポイントにどんな内容のLSP障害を通知すればよいかを解決する。その解決後、LSR−F3はプロテクションポイントにLSP障害通知a3を通知する。LSR−P1ではLSP障害を検出したLSR−F3からのLSP障害通知パケットを受信すると(a4)、そのメッセージに含まれる情報から切替対象のラベルスイッチングパスを特定し、該当するラベルスイッチングパスの切替えを実施する(a5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラベルスイッチングネットワーク及びそれに用いるラベルスイッチングパス設定方法に関し、特にMPLS(Multi−Protocol Label Switching)ネットワークにおけるラベルスイッチングパス設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータによってMPLSネットワークを構成する各ラベルスイッチングルータ(LSR:Label Switching Router)に手動(コマンド)でラベル(Label)値を設定して確立するラベルスイッチングパス(LSP:Label Switched Path)(このようなLSPをStatic LSPとする)では、ラベルスイッチングルータ間でラベルスイッチングパスに関するシグナリングが存在しない。
【0003】
そのため、ラベルスイッチングパスの障害はローカルに存在する各ラベルスイッチングルータでしか検出することができず、LSP迂回(LSPプロテクション)機能を提供する場合、図7に示すように、各ラベルスイッチングルータ21〜26にプロテクション用のラベルスイッチングパス(図7において太い点線で示す)(LSR21→LSR24→LSR25→LSR26の迂回パスd1、LSR22→LSR24→LSR25→LSR26の迂回パスc1、LSR23→LSR25→LSR26の迂回パスb1)を確立する必要がある。
【0004】
例えば、LSR23がLSR26との間の回線bの障害を検出すると、LSR23→LSR25→LSR26の迂回パスb1が確立され、LSR22がLSR23との間の回線cの障害を検出すると、LSR22→LSR24→LSR25→LSR26の迂回パスc1が確立され、LSR21がLSR22との間の回線dの障害を検出すると、LSR21→LSR24→LSR25→LSR26の迂回パスd1が確立される。
【0005】
上記のMPLSネットワークにおいて障害が発生した時の動作については、以下の非特許文献に記載の技術がある。
【非特許文献1】Sharma et al.,Framework for MPLS−based Recovery,Internet−Draft,2001年7月,draft−ietf−mpls−recovery−frmwrk−03.txt
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のMPLSネットワークでは、規模が大きくなればなるほど、それを構成するラベルスイッチングルータ数も増えるので、それに対応してオペレータが手動(コマンド)でラベル(Label)値を設定し、プロテクション用のラベルスイッチングパスを一つ一つ確立しなければならない。
【0007】
また、MPLSネットワークの中には各ラベルスイッチングルータ間で制御パケットをやりとりすることで、ラベルスイッチングパスの確立を自動で行う方法もあるが、その方法では規模が大きくなればなるほどラベルスイッチングパス数も増大するため、その増大したラベルスイッチングパス一つ一つに対して制御パケットを送らなければならず、トラフィックの増大を招くとともに、スケーラビリティの問題やネットワークリソースが不足するという問題が生じてくる。
【0008】
この場合、ラベルスイッチングパスの障害が検出されると、そのための制御パケットがラベルスイッチングパス一つ一つに必要となり、制御パケットの増大による切替処理の負荷が増大し、高速切替が行えなくなり、その間のサービス中断が長くなるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、ネットワークリソース及び運用コストを削減することができ、大規模ネットワークへのスケーラビリティ問題をも解決することができるラベルスイッチングネットワーク及びそれに用いるラベルスイッチングパス設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるラベルスイッチングネットワークは、ラベルスイッチングルータ間のラベルスイッチングパスがコマンドにて設定されて運用されるラベルスイッチングネットワークであって、
前記ラベルスイッチングルータは、
少なくとも前記コマンドで確立されたラベルスイッチングパスのリモート障害を含む前記ラベルスイッチングパスの障害を検出する検出手段と、
運用ポリシーに基づいて予め作成されかつ前記ラベルスイッチングパスの障害に応じたプロテクションポイントでのラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報を格納するLSP障害通知検索テーブルと、
前記検出手段にて前記障害が検出された時に前記LSP障害通知検索テーブルを検索しかつその検索結果から障害通知を生成して前記LSP障害通知検索テーブルにおいて指定されているプロテクションポイントに送信する障害通知生成手段と、
自機器が前記プロテクションポイントである場合に他のラベルスイッチングルータからの前記障害通知の受信時にそのメッセージ内容に基づいて前記ラベルスイッチングパスの切替えを行う手段とを備え、
前記LSP障害通知検索テーブルに、障害となったラベルスイッチングパスに対してどのプロテクションポイントにどのような内容の障害通知を行えばよいかを解決するための情報として、前記ラベルスイッチングパスの障害に応じた前記プロテクションポイントでの前記ラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報、サービスの停止を通知する情報、予め設定されたラベルスイッチングパスのグループを一括して迂回するのに必要な情報を少なくとも格納している。
【0011】
本発明によるラベルスイッチングパス設定方法は、ラベルスイッチングルータ間にラベルスイッチングパスがコマンドにて設定されて運用されるラベルスイッチングネットワークに用いるラベルスイッチングパス設定方法であって、
前記ラベルスイッチングルータに、運用ポリシーに基づいて予め作成されかつ前記ラベルスイッチングパスの障害に応じたプロテクションポイントでのラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報を格納するLSP障害通知検索テーブルを設け、
前記ラベルスイッチングルータが、少なくとも前記コマンドで確立されたラベルスイッチングパスのリモート障害を含む前記ラベルスイッチングパスの障害を検出する処理と、その障害が検出された時に前記LSP障害通知検索テーブルを検索しかつその検索結果から障害通知を生成して前記LSP障害通知検索テーブルにおいて指定されているプロテクションポイントに送信する処理と、前記ラベルスイッチングルータが前記プロテクションポイントである場合に他のラベルスイッチングルータからの前記障害通知の受信時にそのメッセージ内容に基づいて前記ラベルスイッチングパスの切替えを行う処理とを実行し、
前記LSP障害通知検索テーブルに、障害となったラベルスイッチングパスに対してどのプロテクションポイントにどのような内容の障害通知を行えばよいかを解決するための情報として、前記ラベルスイッチングパスの障害に応じた前記プロテクションポイントでの前記ラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報、サービスの停止を通知する情報、予め設定されたラベルスイッチングパスのグループを一括して迂回するのに必要な情報を少なくとも格納している。
【0012】
すなわち、本発明のラベルスイッチングネットワークは、上記の問題を解決するために、Static−LSP(Label Switched Path)におけるリモート障害検出機能を提案している。また、これに付随してMPLS(Multi−Protocol Label Switching)ネットワークの運用ポリシー[Diff−serv(differentiated services)クラス、帯域、サービス等]に柔軟に対応したLSPプロテクション機能も可能としている。
【0013】
本発明のラベルスイッチングネットワークは、MPLSネットワークにおけるラベルスイッチングパス(LSP)の障害検出機能及びラベルスイッチングパスのプロテクション機能に関するものであり、オペレータによって手動(コマンド)で確立されたStatic−LSPのリモート障害を検出し、ローカル障害のLSPプロテクションが可能であったStatic−LSPにおいて、リモート障害時にもLSPプロテクションを実現するものである。
【0014】
これによって、本発明のラベルスイッチングネットワークでは、既存のStatic−LSPのLSPプロテクションを提供する場合、MPLSネットワークを構成する全てのラベルスイッチングルータ(LSR:Label Switching Router)に代替パスを確立する必要があるが、Static LSPの任意のポイントにおいて障害を検出し、このLSP障害通知(Fault−Indication)をリモートのLSPプロテクションポイントへ通知可能とすることによって、各ラベルスイッチングルータに設定が必要であったプロテクションパスを集約することが可能となり、ネットワークリソースや管理コストの削減を図ることが可能となる。
【0015】
また、Fault−Indicationの通知内容については、運用上のポリシーを設定可能とすることによって、LSPプロテクションも従来の固定的なラベルスイッチングパス単位のプロテクションだけでなく、QoS(Quality of Service)ポリシーやVPN(Virtual Private Network)に応じたプロテクション、複数のラベルスイッチングパスをまとめたプロテクションも可能となる。これによって、本発明では、切替処理の負荷の軽減及び高速切替が可能となるので、その間のサービス中断を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記のように、ラベルスイッチングルータ間にラベルスイッチングパスを設定して運用されるラベルスイッチングネットワークにおいて、任意のラベルスイッチングルータが、ラベルスイッチングパスの障害を検出した時にその障害検出通知を予め設定された迂回ポイントに通知し、迂回ポイントとなるラベルスイッチングルータが障害検出通知の受信時にそのメッセージ内容に基づいてラベルスイッチングパスの切替えを行うことによって、ネットワークリソース及び運用コストを削減することができ、大規模ネットワークへのスケーラビリティ問題をも解決することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例によるMPLS(Multi−Protocol Label Switching)ネットワークの構成を示すブロック図である。図1において、本発明の一実施例によるMPLSネットワークはラベルスイッチングルータ(LSR:Label Switching Router)1〜6間にラベルスイッチングパス(LSP:Label Switched Path)が設定可能に構成されている。ここで、ラベルスイッチングルータ1はプロテクション(迂回)ポイントであるLSR−P(Protection)であり、ラベルスイッチングルータ3は障害を検出したLSR−F(Fault)である。
【0018】
また、本発明の一実施例によるMPLSネットワークでは、オペレータによって各ラベルスイッチングルータ1〜6に手動(コマンド)でラベル(Label)値を設定して確立するStatic LSPを前提としている。
【0019】
プロテクションポイントのラベルスイッチングルータ(LSR−P)1以外のラベルスイッチングルータ(LSR−F)3においてラベルスイッチングパスの障害発生a1を検出した場合(図1のa2)、ラベルスイッチングルータ(LSR−F)3は保持しているLSP障害通知検索テーブル(図示せず、後述)を検索し、障害となったラベルスイッチングパスに対してどのプロテクションポイントにどんな内容のLSP障害を通知すればよいかを解決する。
【0020】
その解決後、ラベルスイッチングルータ(LSR−F)3はプロテクションポイント[この場合、ラベルスイッチングルータ(LSR−P)1]にLSP障害通知(Fault−Indication)のための通知パケットa3を送出する。
【0021】
このLSP障害通知検索テーブルは運用ポリシー[Diff−serv(differentiated services)クラス、帯域、サービス等]に基づいて予めオペレータによって作成されるものである。また、プロテクションポイントへのLSP障害通知パケットa3はラベルスイッチングパスのプロテクション(迂回)に必要な情報を含む構成をとる。このLSP障害通知パケットについては、送信側と受信側との間できちんと規定されている必要がある。
【0022】
プロテクションポイントのラベルスイッチングルータ(LSR−P)1ではLSP障害を検出したラベルスイッチングルータ(LSR−F)3からのLSP障害通知パケットを受信すると(図1のa4)、そのメッセージに含まれる情報から切替対象のラベルスイッチングパスを特定し、該当するラベルスイッチングパスの切替えを実施する(図1のa5)。
【0023】
図2は図1のラベルスイッチングルータ(LSR−P)1の構成例を示すブロック図である。図2において、ラベルスイッチングルータ1は受信バッファ11−1〜11−iと、切替制御部12と、検索テーブル13と、ラベル交換部14と、プライマリィ(primary)の送信バッファ15−1〜15−jと、セカンダリィ(secondary)の送信バッファ16−1〜16−kと、障害検出部17と、障害通知生成部18と、LSP障害通知検索テーブル19とから構成されている。
【0024】
ラベルスイッチングルータ1において、回線を介して受信されたパケットは受信バッファ11−1〜11−iに一時蓄積され、予め付加されているラベル(Label)値がラベル交換部14で付け替えられ、付け替え前のラベル値に対応する送信バッファ15−1〜15−j,16−1〜16−kから回線へと送信される。
【0025】
ラベル交換部14でのラベル値の付け替えは切替制御部12による検索テーブル13の検索結果に応じて行われる。切替制御部12は上記のラベル交換部14に対する制御を行うとともに、送信バッファ15−1〜15−j,16−1〜16−kの選択やプライマリィとセカンダリィとの切替え制御を行う。この場合、切替制御部12は他のラベルスイッチングルータ2〜6からのLSP障害通知を受けると、そのLSP障害通知の内容に応じてプライマリィとセカンダリィとの切替え制御を行う。
【0026】
障害検出部17はStatic−LSPにおけるリモート障害の検出のほかに、常時監視による回線の障害の検出、及び上位プロトコル[例えば、SDH(Synchronous Digital Hierarchy)やATM(Asynchronous Transfer Mode)等]からの障害通知による障害の検出を行い、障害を検出すると、その旨を障害通知生成部18に通知する。
【0027】
ここで、上記の障害の種別としては装置の実装内容に依存しているが、POS[Packet Over SONET(Synchronous Optical NETwork)]であればSDHやPPP(Point−to−Point Protocol)の障害、ATMであればSDH、VP(Virtual Path)、VC(Virtual Channel)の障害、Ethernet(登録商標)であればリンク障害等がある。
【0028】
障害通知生成部18は障害検出部17から障害の検出が通知されると、その障害箇所を基にLSP障害通知検索テーブル19を検索し、その検索結果からLSP障害通知を生成してLSP障害通知検索テーブル19において指定されているプロテクションポイントのラベルスイッチングルータに送信する。
【0029】
LSP障害通知検索テーブル19は運用ポリシー[Diff−serv(differentiated services)クラス、帯域、サービス等]に基づいて予めオペレータによって作成されている。つまり、LSP障害通知検索テーブル19にはラベルスイッチングパスの障害に応じたプロテクションポイントでのラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報を含みかつ予め設定された運用ポリシーの情報が格納されている。
【0030】
尚、上記の説明ではラベルスイッチングルータ1の構成及び動作について述べたが、他のラベルスイッチングルータ2〜6の構成及び動作もラベルスイッチングルータ1と同様なので、それらの説明については省略する。また、ラベルスイッチングルータ1〜6は上記の構成とすることで、回線の障害を検出すると、障害を検出したLSR−Fとなり、プロテクションポイントとして指定されると、プロテクションポイントであるLSR−Pとなる。
【0031】
図3は図2のLSP障害通知検索テーブル19の構成例を示す図である。図3において、LSP障害通知検索テーブル19には障害監視インタフェースに対応して「通知先プロテクションポイント」、「エントリタイプ」、「エントリ」が格納されている。
【0032】
例えば、インタフェース#0に対応する記憶領域には「通知先プロテクションポイント」として「192.168.2.10」が、「エントリタイプ」として「LSP」が、「エントリ」として「LSP1,LSP2」がそれぞれ格納されている。つまり、インタフェース#0に障害が検出された場合には、「192.168.2.10」のプロテクションポイントに、LSP1,LSP2を迂回するようにLSP障害通知が送られることとなる。
【0033】
インタフェース#1に対応する記憶領域には「通知先プロテクションポイント」として「192.168.3.2」が、「エントリタイプ」として「POLICY」が、「エントリ」として「EF.AF4(Diff−servクラス名)」がそれぞれ格納されている。つまり、インタフェース#1に障害が検出された場合には、「192.168.3.2」のプロテクションポイントに、EF.AF4のサービスを停止するようにLSP障害通知が送られることとなる。
【0034】
インタフェース#2に対応する記憶領域には「通知先プロテクションポイント」として「192.168.4.12」が、「エントリタイプ」として「GROUP」が、「エントリ」として「LSP−Gr1,LSP−Gr2」がそれぞれ格納されている。つまり、インタフェース#2に障害が検出された場合には、「192.168.4.12」のプロテクションポイントに、LSP−Gr1,LSP−Gr2のLSPのグループを一括して迂回するようにLSP障害通知が送られることとなる。
【0035】
インタフェース#3に対応する記憶領域には「通知先プロテクションポイント」として「192.168.5.6」が、「エントリタイプ」として「LSP」が、「エントリ」として「LSP1,LSP3,LSP5」がそれぞれ格納されている。つまり、インタフェース#3に障害が検出された場合には、「192.168.5.6」のプロテクションポイントに、LSP1,LSP3,LSP5を迂回するようにLSP障害通知が送られることとなる。
【0036】
さらに、インタフェース#X−1に対応する記憶領域には「通知先プロテクションポイント」として「192.168.7.1/192.168.8.1」が、「エントリタイプ」として「LSP」が、「エントリ」として「LSP4」がそれぞれ格納されている。つまり、インタフェース#X−1に障害が検出された場合には、「192.168.7.1/192.168.8.1」のプロテクションポイントに、LSP4を迂回するようにLSP障害通知が送られることとなる。
【0037】
同様に、インタフェース#Xに対応する記憶領域には「通知先プロテクションポイント」として「192.168.9.7」が、「エントリタイプ」として「GROUP」が、「エントリ」として「LSP−Gr3」がそれぞれ格納されている。インタフェース#Xに障害が検出された場合には、「192.168.9.7」のプロテクションポイントに、LSP−Gr3のグループを一括して迂回するようにLSP障害通知が送られることとなる。
【0038】
図4は本発明の一実施例で用いるLSP障害通知パケットのフォーマット例を示す図である。図4において、LSP障害通知パケットにはバージョン(Version)、メッセージタイプ(Msg.Type)、エントリタイプ(Entry Type)、エントリカウンタ(Entry Count)、そのエントリカウンタで指定されるエントリ数で規定されるのエントリ(Entry#0〜Entry#X)、予備領域(Reserve)の各項目が設けられている。
【0039】
図5は本発明の一実施例によるMPLSネットワークの通常運用状態を示す図であり、図6は図1のラベルスイッチングルータ1〜6の処理動作を示すフローチャートである。これら図1〜図6を参照して本発明の一実施例によるMPLSネットワークの動作について説明する。
【0040】
図5に示すMPLSネットワークの通常運用状態から、ラベルスイッチングルータ(LSR−F)3においてLSP障害発生を検出すると、図1に示すように、「LSP障害発生a1」→「LSP障害検出a2」→「LSP障害通知a3」の一連の処理が実施される。
【0041】
ラベルスイッチングルータ(LSR−F)3はLSP障害を検出すると(図6ステップS1)、図3に示すLSP障害通知検索テーブル19に対して、「LSP障害を検出したインタフェース」を検索キーとする検索を行う(図6ステップS2)。
【0042】
ラベルスイッチングルータ(LSR−F)3はLSP障害通知検索テーブル19の検索結果から「通知先プロテクションポイント」、「エントリタイプ」、「エントリ」を解決する(図6ステップS3)。
【0043】
ラベルスイッチングルータ(LSR−F)3はこれらの解決した情報を基に、図4に示すLSP障害通知パケット(Fault−Indicationパケット)を生成し(図6ステップS4)、これをプロテクションポイントのラベルスイッチングルータ(LSR−P)1に通知する(図6ステップS5)。
【0044】
下位レイヤ(ネットワークレイヤ)においてはIP(Internet Protocol)を基本とし、LSP障害通知パケットはIP宛先アドレスが図3に示すLSP障害通知検索テーブル19によって解決された「通知先プロテクションポイント」[この場合、ラベルスイッチングルータ(LSR−P)1]へ送信される。
【0045】
ラベルスイッチングルータ(LSR−P)1ではLSP障害通知パケットを受信すると(図6ステップS6)、そのメッセージ内にあるエントリタイプ(Entry Tyep)とエントリ(Entry)とから切替対象となるStatic−LSPを特定し(図6ステップS7)、該当するラベルスイッチングパスの切替えを実施する(図6ステップS8)。
【0046】
このLSP障害通知パケットのメッセージにあるエントリタイプ、エントリには、必ずしもラベルスイッチングパスが直接設定されなくてもよい。図3に示す例にあるように、運用ポリシーを定義し、ラベルスイッチングルータ(LSR−F)3からラベルスイッチングルータ(LSR−P)1へはその運用ポリシーを通知し、ラベルスイッチングルータ(LSR−P)1において、その運用ポリシーにしたがったラベルスイッチングパスを検索するということも可能である。
【0047】
また、多数のラベルスイッチングパスが切替対象となる場合、LSP障害通知パケットのメッセージに関するオーバヘッドを削減することを目的とし、ラベルスイッチングパスのグループを定義し、そのグループをLSP障害通知パケットで通知することによって、多数のラベルスイッチングパスの一括切替え(例えば、プライオりティからセカンダリィへの切替え、この場合にはラベル値の交換をも含む場合がある)を行うこともできる。
【0048】
つまり、従来のように、自動でラベルスイッチングパスの確立を行う場合に比べて、本実施例ではラベルスイッチングパス一つ一つの制御パケットが不要となり、制御パケットの増大による切替処理の負荷増大を招くことがないので、高速切替を行うことができるとともに、その間のサービス中断を短縮することができる。当然、制御パケットによるトラフィックの増大も抑えることができる。尚、図4に示すLSP障害通知パケットの「メッセージタイプ」は、将来的に障害復旧時の通知としてのエリアが定義されているものである。
【0049】
このように、本実施例では、Static−LSPにおいて、リモートLSP障害時であってもこれをプロテクションポイントまで通知することによって、ラベルスイッチングパスの切替えを行うことができる。これによって、ローカルLSP障害検出用に各ラベルスイッチングルータに迂回用のラベルスイッチングパスを確立する必要がなく、ネットワークリソースや運用コストを削減することができ、また大規模ネットワークへのスケーラビリティ問題をも解決することができる。
【0050】
さらに、LSP障害通知(Fault−Indication)で定義される通知内容はラベルスイッチングパスという固定情報だけでなく、運用ポリシーによって可変であり、ある特定のポリシーに基づいて確立されたラベルスイッチングパスの切替え等の柔軟性のある切替動作を行うことができる。
【0051】
さらにまた、LSP障害通知も集約可能となるので、多数のラベルスイッチングパス障害が発生した場合でも、LSP障害通知処理によるラベルスイッチングパス切替処理のオーバヘッドを縮小することができ、高速なラベルスイッチングパス切替が可能となり、ラベルスイッチングパスを使用したサービス中断を最小限に食い止めることができる。
【0052】
尚、本実施例ではLSP障害通知のメッセージ内のエントリにラベルスイッチングパス指定を行っているが、このラベルスイッチングパス指定だけでなく、運用ポリシー(例えば、QoSポリシー)も指定可能であるので、切替対象のラベルスイッチングパスはStatic−LSPだけでなく、シグナリングで確立したラベルスイッチングパスにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例によるMPLSネットワークの構成を示すブロック図である。
【図2】図1のラベルスイッチングルータの構成例を示すブロック図である。
【図3】図2のLSP障害通知検索テーブルの構成例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例で用いるLSP障害通知パケットのフォーマット例を示す図である。
【図5】本発明の一実施例によるMPLSネットワークの通常運用状態を示す図である。
【図6】図1のLSRの処理動作を示すフローチャートである。
【図7】従来例によるMPLSネットワークの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 プロテクションポイントであるLSR−P
2,4〜6 ラベルスイッチングルータ
3 障害を検出したLSR−F
11−1〜11−i 受信バッファ
12 切替制御部
13 検索テーブル
14 ラベル交換部
15−1〜15−j,
16−1〜16−k 送信バッファ
17 障害検出部
18 障害通知生成部
19 LSP障害通知検索テーブル
a1 障害発生
a2 障害検出
a3 障害通知
a4 障害通知受信
a5 LSP切替

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベルスイッチングルータ間のラベルスイッチングパスがコマンドにて設定されて運用されるラベルスイッチングネットワークであって、
前記ラベルスイッチングルータは、
少なくとも前記コマンドで確立されたラベルスイッチングパスのリモート障害を含む前記ラベルスイッチングパスの障害を検出する検出手段と、
運用ポリシーに基づいて予め作成されかつ前記ラベルスイッチングパスの障害に応じたプロテクションポイントでのラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報を格納するLSP障害通知検索テーブルと、
前記検出手段にて前記障害が検出された時に前記LSP障害通知検索テーブルを検索しかつその検索結果から障害通知を生成して前記LSP障害通知検索テーブルにおいて指定されているプロテクションポイントに送信する障害通知生成手段と、
自機器が前記プロテクションポイントである場合に他のラベルスイッチングルータからの前記障害通知の受信時にそのメッセージ内容に基づいて前記ラベルスイッチングパスの切替えを行う手段とを有し、
前記LSP障害通知検索テーブルに、障害となったラベルスイッチングパスに対してどのプロテクションポイントにどのような内容の障害通知を行えばよいかを解決するための情報として、前記ラベルスイッチングパスの障害に応じた前記プロテクションポイントでの前記ラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報、サービスの停止を通知する情報、予め設定されたラベルスイッチングパスのグループを一括して迂回するのに必要な情報を少なくとも格納することを特徴とするラベルスイッチングネットワーク。
【請求項2】
MPLS(Multi−Protocol Label Switching)ネットワークであることを特徴とする請求項1記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項3】
前記障害通知生成手段は、前記障害が検出された時に前記LSP障害通知検索テーブルを検索してどのプロテクションポイントにどのような内容の障害通知を行えばよいかを解決することを特徴とする請求項1または請求項2記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項4】
前記障害通知は、前記プロテクションポイントに対する前記ラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項5】
前記障害通知は、前記プロテクションポイントに対する運用上のポリシー設定に必要な情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項6】
前記障害通知は、前記プロテクションポイントに対して予め定義されたラベルスイッチングパスのグループを指定するのに必要な情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項7】
前記ラベルスイッチングパスの切替えを行う手段は、前記障害検出通知に含まれる情報から切替対象のラベルスイッチングパスを特定することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項8】
ラベルスイッチングルータ間にラベルスイッチングパスがコマンドにて設定されて運用されるラベルスイッチングネットワークに用いるラベルスイッチングパス設定方法であって、
前記ラベルスイッチングルータに、運用ポリシーに基づいて予め作成されかつ前記ラベルスイッチングパスの障害に応じたプロテクションポイントでのラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報を格納するLSP障害通知検索テーブルを設け、
前記ラベルスイッチングルータが、少なくとも前記コマンドで確立されたラベルスイッチングパスのリモート障害を含む前記ラベルスイッチングパスの障害を検出する処理と、その障害が検出された時に前記LSP障害通知検索テーブルを検索しかつその検索結果から障害通知を生成して前記LSP障害通知検索テーブルにおいて指定されているプロテクションポイントに送信する処理と、前記ラベルスイッチングルータが前記プロテクションポイントである場合に他のラベルスイッチングルータからの前記障害通知の受信時にそのメッセージ内容に基づいて前記ラベルスイッチングパスの切替えを行う処理とを実行し、
前記LSP障害通知検索テーブルに、障害となったラベルスイッチングパスに対してどのプロテクションポイントにどのような内容の障害通知を行えばよいかを解決するための情報として、前記ラベルスイッチングパスの障害に応じた前記プロテクションポイントでの前記ラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報、サービスの停止を通知する情報、予め設定されたラベルスイッチングパスのグループを一括して迂回するのに必要な情報を少なくとも格納することを特徴とするラベルスイッチングパス設定方法。
【請求項9】
前記ラベルスイッチングネットワークがMPLS(Multi−Protocol Label Switching)ネットワークであることを特徴とする請求項8記載のラベルスイッチングパス設定方法。
【請求項10】
前記ラベルスイッチングルータが、前記障害通知を生成する処理において、前記障害が検出された時に前記LSP障害通知検索テーブルを検索してどのプロテクションポイントにどのような内容の障害通知を行えばよいかを解決することを特徴とする請求項8または請求項9記載のラベルスイッチングパス設定方法。
【請求項11】
前記障害通知は、前記プロテクションポイントに対する前記ラベルスイッチングパスの迂回に必要な情報を含むことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか記載のラベルスイッチングパス設定方法。
【請求項12】
前記障害通知は、前記プロテクションポイントに対する運用上のポリシー設定に必要な情報を含むことを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか記載のラベルスイッチングパス設定方法。
【請求項13】
前記障害通知は、前記プロテクションポイントに対して予め定義されたラベルスイッチングパスのグループを指定するのに必要な情報を含むことを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか記載のラベルスイッチングパス設定方法。
【請求項14】
前記ラベルスイッチングルータが、前記ラベルスイッチングパスの切替えを行う処理において、前記障害通知に含まれる情報から切替対象のラベルスイッチングパスを特定することを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか記載のラベルスイッチングパス設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−151179(P2007−151179A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37267(P2007−37267)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2002−25989(P2002−25989)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】