説明

ラベルセット及びその製造方法

【課題】レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術を利用することにより、容易に製造することのできるラベルセットを提供する。
【解決手段】基材と、基材の上に形成された接着剤層と、接着剤層の上に形成された下地層と、下地層の上に形成され視認により下地層と識別可能な隠蔽層とを備えた積層体よりなり、複数のラベル片10aを有するラベルセットであって、所定の第1領域にて下地層が露出するようにレーザの照射により隠蔽層等が除去されることにより形成された隠蔽層から下地層に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝1と、所定の第2領域にて接着剤層又は基材が露出するようにレーザの照射により隠蔽層及び下地層等が除去されることにより形成された隠蔽層から少なくとも接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝2a、2bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラベルセット及びその製造方法に関し、より詳しくはレーザマーキングを利用して製造したラベルセット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成され自己の表面に所定の文字、記号や図形等の情報表示部が印刷された表層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができそれぞれが該情報表示部を有する複数のラベル片を備えたラベルセットが知られている。
【0003】
このようなラベルセットは、通常、以下のように製造されている。まず、基材、接着剤層及び表層を備えた積層体を準備し、印刷機械を用いて積層体の表層の表面に所定の情報表示部を印刷する(印刷工程)。そして、刃物やカッタ等の工具を用いて所定領域の表層の全部を除去するか又は表層の全部及び接着剤層の少なくとも一部を除去することにより、情報表示部が印刷された印刷領域の周囲にシールカット用の区画溝(切り込み線)を形成し、これにより表層及び接着剤層よりなる複数の独立したラベル片に区画、分離する(シールカット工程)。
【0004】
なお、レーザの照射によるレーザマーキングを利用した印字技術が知られている(例えば、特許文献1や特許文献2等参照)。
【0005】
特許文献1には、耐洗紙の表面の所定領域にレーザを照射し、照射部分の表層部を焦がすことにより、情報表示部を形成表示したクリーニングタグが開示されている。なお、この特許文献1には、レーザの出力を高めることにより、シートカット加工、ミシン加工やハーフカット加工等の加工手段としてレーザを利用できることも開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された下地層と、該下地層の上に形成され視認により該下地層と識別可能な隠蔽層とを備えたレーザ印字用積層体に対して、隠蔽層側からレーザを照射し、照射部分の隠蔽層を除去することにより、下地層と隠蔽層との色の対比でレーザ印字画像を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−324929号公報(第1図〜第3図)
【特許文献2】特開平9−123606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のラベルセットの製造方法では、印刷機械を用いた印刷工程と、刃物等の工具を用いたシールカット工程とをそれぞれ別々に行う必要がある。このため、その製造に手間がかかるという問題があった。
【0008】
また、上述したような複数のラベル片を有するラベルセットは、複数の工程よりなる流れ作業において、一つのラベルセットを順次、次工程へ送りながら、各工程ではそれぞれの作業者がその工程で必要な数のラベル片をラベルセットから剥がして貼り付けていく(貼り付けた後は残りのラベルセットを次工程に送る)、というよう使われることがある。このとき、各工程で、ラベルセットから1片ずつラベル片を剥がしながら貼り付け作業を行い、その後に残ったラベルセットを次工程へ送る、というような作業形態では、貼り付け作業をしている間はそのラベルセットを次工程へ送ることができないため、流れ作業全体に要する作業時間が長期化してしまう。
【0009】
そこで、作業者はまず送られてきたラベルセットからその工程で必要な数のラベル片を有する小セットを分割し、残ったラベルセットを次工程へ送った後に分割した小セットからラベル片を剥がして貼り付け作業を行う、というような作業形態が考えられる。こうすれば、貼り付け作業の終了を待たずにラベルセットを次工程へ送ることができ、流れ作業全体に要する作業時間の短縮化を図ることが可能となる。また、一の工程において複数場所でラベル片の貼り付け作業を行うような場合は、送られてきたラベルセットからその工程で必要な数の小セットを分割するようにすれば、各小セットをそれぞれもった複数の作業者が複数の異なる場所で同時に貼り付け作業を行うことができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0010】
ところが、一つのラベルセットから小セットを分割する際には、ハサミ等を用いることになるが、このとき積層体中の接着剤が刃に付着するため刃の清掃を煩雑に行う必要があり、面倒である。
【0011】
なお、上記流れ作業に必要な数の小セットを初めから分割した状態で作製し(初めから小セットに分割した状態で印字し)、それらをまとめて流れ作業に乗せ、各工程で必要な数の小セットをそこから抜き取り、残りを次工程へ送る、というような作業形態も考えられるが、複数の小セットをまとめて取り扱う必要があり、やはり手間がかかってしまう。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術を利用することにより、容易に製造することのできるラベルセットを提供することを第1の課題とするものである。
【0013】
また、本発明は、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術を利用することにより、複数の小セットに容易に分割することのできるラベルセットを提供することを第2の課題とするものである。
【0014】
さらに、本発明は、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術を利用することにより、複数の小セットに分割することができ、しかも複数の分割箇所に優先順位がつけられたラベルセットを提供することを第3の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1、第2又は第3の課題を解決する本発明に係るラベルセット又はその製造方法は、積層体の隠蔽層側から所定領域にレーザを照射し、そのときの照射条件を領域に応じて適宜調整することにより、その照射部分で領域に応じた特定の層だけを除去する(レーザスリット溝の深さを調整したり、レーザスリット孔を形成したりする)ようにして、所定の第1領域にて情報表示用の第1レーザスリット溝を形成したり、所定の第2領域にてシールカット用の第2レーザスリット溝を形成したり、所定の第3領域にて基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成したり、あるいは第3領域に連続する所定の第4領域にて基材フルカット用のレーザスリット孔を形成したりしたものである。
【0016】
すなわち、上記第1の課題を解決する請求項1に記載のラベルセットは、基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された下地層と、該下地層の上に形成され視認により該下地層と識別可能な隠蔽層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができそれぞれが情報表示部をもつ複数のラベル片を有するラベルセットであって、各前記情報表示部を形成すべく、所定の第1領域にて前記下地層が露出するようにレーザの照射により前記隠蔽層の全部が除去されるか又は前記隠蔽層の全部及び前記下地層の一部が除去されることにより形成された前記隠蔽層から前記下地層に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝と、各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するようにレーザの照射により前記隠蔽層及び前記下地層の全部が除去されるか又は前記隠蔽層及び前記下地層の全部並びに前記接着剤層の少なくとも一部が除去されることにより形成された前記隠蔽層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝とを有していることを特徴とするものである。
【0017】
この請求項1に記載のラベルセットは、請求項5に記載のラベルセットの製造方法により製造することができる。この請求項5に記載のラベルセットの製造方法は、基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された下地層と、該下地層の上に形成され視認により該下地層と識別可能な隠蔽層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができそれぞれが情報表示部をもつ複数のラベル片を有するラベルセットを製造する方法であって、前記基材と、前記接着剤層と、前記下地層と、前記隠蔽層とを備えた積層体を準備する準備工程と、各前記情報表示部を形成すべく、所定の第1領域にて前記下地層が露出するように前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層の全部を除去するか又は前記隠蔽層の全部及び前記下地層の一部を除去することにより、前記隠蔽層から前記下地層に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝を形成する第1レーザ溝形成工程と、各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するように前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層及び前記下地層の全部を除去するか又は前記隠蔽層及び前記下地層の全部並びに前記接着剤層の少なくとも一部を除去することにより、前記隠蔽層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝を形成する第2レーザスリット溝形成工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0018】
この請求項1又は5に係る発明のラベルセット又はその製造方法では、積層体の隠蔽層側から所定領域にレーザを照射し、そのときの照射条件を領域に応じて適宜調整することにより、その照射部分で領域に応じた特定の層だけを除去する(レーザスリット溝の深さを調整する)ようにして、所定の第1領域にて情報表示用の第1レーザスリット溝を形成するとともに、所定の第2領域にてシールカット用の第2レーザスリット溝を形成している。すなわち、所定の第1領域においては、下地層が露出するように積層体の隠蔽層側からレーザを照射して、隠蔽層の全部を除去するか又は隠蔽層の全部及び下地層の一部を除去することにより、隠蔽層から下地層に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝を形成している。また、所定の第2領域においては、接着剤層又は基材が露出するように積層体の隠蔽層側からレーザを照射して、隠蔽層及び下地層の全部を除去するか又は隠蔽層及び下地層の全部並びに接着剤層の少なくとも一部を除去することにより、隠蔽層から少なくとも接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝を形成している。
【0019】
このため、この請求項1又は5に係る発明のラベルセットの製造に際しては、積層体表面に文字、記号や図形等の情報表示部を形成表示するために行う、印刷機械を用いた印刷工程や、情報表示部の周囲にシールカット用の切り込み線を形成するために行う、刃物等の工具を用いたシールカット工程が不要となり、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、情報表示部を有する複数のラベル片を備えたラベルセットの製造が可能となる。
【0020】
上記第1及び第2の課題を解決する請求項2に記載のラベルセットは、請求項1に記載のラベルセットにおいて、所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にてレーザの照射により前記隠蔽層、前記下地層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部が除去されることにより形成された前記隠蔽層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝をさらに有していることを特徴とする。
【0021】
この請求項2に記載のラベルセットは、請求項6に記載のラベルセットの製造方法により製造することができる。この請求項6に記載のラベルセットの製造方法は、請求項5に記載のラベルセットの製造方法において、所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層、前記下地層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部を除去することにより、前記隠蔽層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成する第3レーザスリット溝形成工程をさらに備えていることを特徴とする。
【0022】
この請求項2又は6に係る発明のラベルセット又はその製造方法では、さらに、所定の数のラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層、前記下地層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部を除去することにより、前記隠蔽層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成している。このように基材の内部にまで到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝が形成されていれば、この第3レーザスリット溝に沿って基材を引き裂くことにより、はさみ等を用いることなく、複数の小セットに容易に分割することができる。
【0023】
このため、この請求項2又は6に係る発明のラベルセット又はその製造方法によれば、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、複数の小セットに容易に分割することのできるラベルセットを提供することが可能となる。
【0024】
上記第1及び第2の課題を解決する請求項3に記載のラベルセットは、請求項2に記載のラベルセットにおいて、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にてレーザの照射により前記隠蔽層、前記下地層、前記接着剤層及び前記基材の全部が除去されることにより形成された、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔をさらに有していることを特徴とする。
【0025】
この請求項3に記載のラベルセットは、請求項7に記載のラベルセットの製造方法により製造することができる。この請求項7に記載のラベルセットの製造方法は、請求項6に記載のラベルセットの製造方法において、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層、前記下地層、前記接着剤層及び前記基材の全部を除去することにより、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成するレーザスリット孔形成工程をさらに備えていることを特徴とする。
【0026】
この請求項3又は7に係る発明のラベルセット又はその製造方法では、さらに、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層、前記下地層、前記接着剤層及び前記基材の全部を除去することにより、前記基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成している。このように隠蔽層から基材まで貫通する基材フルカット用のレーザスリット孔が基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝に連続して形成されていれば、このレーザスリット孔を引き裂きの導入部にしつつ第3レーザスリット溝に沿って引き裂くことできるので、引き裂きによる小セットの分割がより容易となる。
【0027】
このため、この請求項3又は7に係る発明のラベルセット又はその製造方法によれば、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、複数の小セットにより容易に分割することのできるラベルセットを提供することが可能となる。
【0028】
上記第1、第2及び第3の課題を解決する請求項4に記載のラベルセットは、請求項2又は3に記載のラベルセットにおいて、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方が部分的に変化させられていることを特徴とする。
【0029】
この請求項4に記載のラベルセットは、請求項8に記載のラベルセットの製造方法により製造することができる。この請求項8に記載のラベルセットの製造方法は、請求項6又は7に記載のラベルセットの製造方法において、前記レーザの照射条件を変化させることにより、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を部分的に変化させることを特徴とする。
【0030】
この請求項4又は8に係る発明のラベルセット又はその製造方法では、引き裂きが行われる基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝の深さ及び引き裂きの導入となる基材フルカット用のレーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方が部分的に変化させられている。引き裂きにより小セットに分割する際には、第3レーザスリット溝の深さが深くなればなるほど、その第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きに要する力が小さくなる。このため、第3レーザスリット溝の深さが部分的に変化させられていれば、深さの深い部分の第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きが、深さの浅い部分の第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きよりも優先的に行われる。また、第3レーザスリット溝に連続するレーザスリット孔の長さが長くなればなるほど、その第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きに要する力が小さくなる。このため、レーザスリット孔の長さが部分的に変化させられていれば、長さの長い部分のレーザスリット孔に連続する第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きが、長さの短い部分のレーザスリット孔に連続する第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きよりも優先的に行われる。
【0031】
したがって、この請求項4又は8に係る発明のラベルセット又はその製造方法によれば、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、複数の小セットに容易に分割することができ、しかも複数の分割箇所に優先順位がつけられたラベルセットを提供することが可能となる。
【0032】
上記第1及び第2の課題を解決する請求項9に記載のラベルセットは、基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された表層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができる複数のラベル片を有するラベルセットであって、各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するようにレーザの照射により前記表層の全部が除去されるか又は前記表層の全部及び前記接着剤層の少なくとも一部が除去されることにより形成された前記表層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝と、所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にてレーザの照射により前記表層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部が除去されることにより形成された前記表層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝とを有していることを特徴とするものである。
【0033】
この請求項9に記載のラベルセットは、請求項12に記載のラベルセットの製造方法により製造することができる。この請求項12に記載のラベルセットの製造方法は、基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された表層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができる複数のラベル片を有するラベルセットの製造方法であって、前記基材と、前記接着剤層と、前記表層とを備えた積層体を準備する準備工程と、各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するように前記積層体の前記表層側からレーザを照射することにより、前記表層の全部を除去するか又は前記表層の全部及び前記接着剤層の少なくとも一部を除去することにより、前記表層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝を形成する第2レーザスリット溝形成工程と、所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて前記積層体の前記表層側からレーザを照射することにより、前記表層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部を除去することにより、前記表層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成する第3レーザスリット溝形成工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0034】
この請求項9又は12に係る発明のラベルセット又はその製造方法では、積層体の表層側から所定領域にレーザを照射し、そのときの照射条件を領域に応じて適宜調整することにより、その照射部分で領域に応じた特定の層だけを除去する(レーザスリット溝の深さを調整する)ようにして、所定の第2領域にてシールカット用の第2レーザスリット溝を形成するとともに、所定の第3領域にて基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成している。すなわち、所定の第2領域においては、接着剤層又は基材が露出するように積層体の表層側からレーザを照射して、表層の全部を除去するか又は表層の全部及び接着剤の少なくとも一部を除去することにより、表層から少なくとも接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝を形成している。また、所定の第3領域においては、積層体の表層側からレーザを照射して、表層及び接着剤層の全部並びに基材の一部を除去することにより、表層から基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成している。このように基材の内部にまで到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝が形成されていれば、この第3レーザスリット溝に沿って基材を引き裂くことにより、はさみ等を用いることなく、複数の小セットに容易に分割することができる。
【0035】
このため、この請求項9又は12に係る発明のラベルセット又はその製造方法によれば、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、複数の小セットに容易に分割することのできるラベルセットを提供することが可能となる。
【0036】
上記第1及び第2の課題を解決する請求項10に記載のラベルセットは、請求項9に記載のラベルセットにおいて、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にてレーザの照射により前記表層、前記接着剤層及び前記基材の全部が除去されることにより形成された、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔をさらに有していることを特徴とする。
【0037】
この請求項10記載のラベルセットは、請求項13に記載のラベルセットの製造方法により製造することができる。この請求項13に記載のラベルセットの製造方法は、請求項12に記載のラベルセットの製造方法において、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて前記積層体の前記表層側からレーザを照射することにより、前記表層、前記接着剤層及び前記基材の全部を除去することにより、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成するレーザスリット孔形成工程をさらに有していることを特徴とする。
【0038】
この請求項10又は13に係るラベルセット又はその製造方法では、さらに、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて前記積層体の前記表層側からレーザを照射して、前記表層、前記接着剤層及び前記基材の全部を除去することにより、前記基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成している。このように表層から基材まで貫通する基材フルカット用のレーザスリット孔が基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝に連続して形成されていれば、このレーザスリット孔を引き裂きの導入部にしつつ第3レーザスリット溝に沿って引き裂くことできるので、引き裂きによる小セットの分割がより容易となる。
【0039】
このため、この請求項10又は13に係る発明のラベルセット又はその製造方法によれば、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、複数の小セットにより容易に分割することのできるラベルセットを提供することが可能となる。
【0040】
上記第1、第2及び第3の課題を解決する請求項11に記載のラベルセットは、請求項9又は10に記載のラベルセットにおいて、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方が部分的に変化させられていることを特徴とする。
【0041】
この請求項11に記載のラベルセットは、請求項14に記載のラベルセットの製造方法により製造することができる。この請求項14に記載のラベルセットの製造方法は、請求項12又は13に記載のラベルセットの製造方法において、前記レーザの照射条件を変化させることにより、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を部分的に変化させることを特徴とする。
【0042】
この請求項11又は14に係る発明のラベルセット又はその製造方法では、引き裂きが行われる基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝の深さ及び引き裂きの導入となる基材フルカット用のレーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方が部分的に変化させられている。引き裂きにより小セットに分割する際には、第3レーザスリット溝の深さが深くなればなるほど、その第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きに要する力が小さくなる。このため、第3レーザスリット溝の深さが部分的に変化させられていれば、深さの深い部分の第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きが、深さの浅い部分の第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きよりも優先的に行われる。また、第3レーザスリット溝に連続するレーザスリット孔の長さが長くなればなるほど、その第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きに要する力が小さくなる。このため、レーザスリット孔の長さが部分的に変化させられていれば、長さの長い部分のレーザスリット孔に連続する第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きが、長さの短い部分のレーザスリット孔に連続する第3レーザスリット溝に沿っての引き裂きよりも優先的に行われる。
【0043】
したがって、この請求項11又は14に係る発明のラベルセット又はその製造方法によれば、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、複数の小セットに容易に分割することができ、しかも複数の分割箇所に優先順位がつけられたラベルセットを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(請求項1乃至8に係る発明についての実施形態)
請求項1乃至8に係る発明のラベルセットでは、複数のラベル片(各ラベル片は接着剤層、下地層及び隠蔽層よりなる)がそれぞれ文字、図形や記号等の情報表示部をもっており、このラベルセットを構成する積層体が、基材と、接着剤層と、下地層と、隠蔽層とを備えている。
【0045】
この積層体を構成する基材、接着剤、下地層及び隠蔽層は特に限定されず、従来と同様のものを用いることができる。
【0046】
上記基材の形状や厚さも特に限定されない。
【0047】
また、下地層の上に形成される隠蔽層は、視認により下地層と識別可能なものであればよい。例えば、隠蔽層の色を、下地層と色度及び明度のうちの少なくとも一方が異なる色とすることができる。
【0048】
請求項1乃至8に係る発明では、所定の第1領域にて下地層が露出するようにレーザの照射により隠蔽層の全部が除去されるか又は隠蔽層の全部及び下地層の一部が除去されることにより、隠蔽層から下地層に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝が形成されている。そして、この第1レーザスリット溝の部分で隠蔽層に対して視認により識別可能な下地層が露出することにより、所定の情報表示がなされる。
【0049】
また、請求項1乃至8に係る発明では、所定の第2領域にて接着剤層又は基材が露出するようにレーザの照射により隠蔽層及び下地層の全部が除去されるか又は隠蔽層及び下地層の全部並びに接着剤層の少なくとも一部が除去されることにより、隠蔽層から少なくとも接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝が形成されている。この第2レーザスリット溝によって上記情報表示部を有する各ラベル片毎に区画、分離される。そして、基材から接着剤層が剥離されることにより、隠蔽層、下地層および接着剤層を有する各ラベル片を第2レーザスリット溝に沿って基材から1枚ずつ剥がすことができる。
【0050】
上記第1レーザスリット溝及び上記第2レーザスリット溝は、それぞれ積層体の隠蔽層側から所定の照射条件でレーザを照射することにより形成される。レーザの種類としては、積層体を構成する隠蔽層、下地層、接着剤層及び基材をレーザの照射により熱分解等で除去することができるものであれば特に限定されず、CO2 レーザ等を好適に用いることができる。そして、レーザを照射する際の照射条件、例えばレーザ出力やスキャン速度等を適宜調整することにより、レーザスリット溝の深さを調整したり、レーザスリット孔を形成したりすることができる。
【0051】
そして、請求項2又は6に係る発明では、さらに、所定の数のラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて積層体の隠蔽層側からレーザを照射して、隠蔽層、下地層及び接着剤層の全部並びに基材の一部を除去することにより、隠蔽層から基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成している。この基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝の深さは、隠蔽層から基材の内部に到達する深さ(基材の一部がカットされる深さ)であれば特に限定されないが、基材がカットされる深さが浅すぎると引き裂きによる分割が困難となる一方、深すぎると意図しない分割が発生しやすくなることから、基材の厚さの30〜50%程度とすることが好ましい。
【0052】
また、請求項3又は7に係る発明では、さらに、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて前記積層体の隠蔽層側からレーザを照射して、隠蔽層、下地層、接着剤層及び基材の全部を除去することにより、前記基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成している。この基材フルカット用のレーザスリット孔の長さは特に限定されないが、短すぎると分割をより容易にするというレーザスリット孔による効果が不十分となる一方、長すぎると意図しない分割が発生しやすくなることから、5〜10mm程度とすることが好ましい。
【0053】
さらに、請求項4又は8に係る発明では、前記第3レーザスリット溝や前記レーザスリット孔を形成する際のレーザの照射条件を変化させることにより、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を部分的に変化させている。具体的には、ラベルセットをn個(nは3以上の整数)の小セットにn分割させる必要がある場合は、分割数に応じて(nの数より1だけ小さい数で)多段階的に、第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を変化させることが好ましい。例えば、一つのラベルセットをn個(nは3以上の整数)の小セットに(n−1)回の引き裂きによりn分割させる必要がある場合は、最初の引き裂き線となる1番目の第3レーザスリット溝の深さを一番深くし、2回目の引き裂き線となる2番目の第3レーザスリット溝の深さを1番目の第3レーザスリット溝よりも浅くし、そして3回目以降の引き裂き線となる3番目以降の第3レーザスリット溝の深さを順に浅くしていくことにより、1番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、2番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも最優先で行うことができ、また、2番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、3番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも優先的に行うことができ、3番目以降の第3レーザスリットに沿った引き裂きも同様に優先的に行うことができる。また同様に、一つのラベルセットをn個(nは3以上の整数)の小セットに(n−1)回の引き裂きによりn分割させる必要がある場合は、1回目の引き裂き線となる1番目の第3レーザスリット溝に連続する1番目のレーザスリット孔の長さを一番長くし、2回目の引き裂き線となる2番目の第3レーザスリット溝に連続する2番目のレーザスリット孔の長さを1番目のレーザスリット孔よりも短くし、そして3回目以降の引き裂き線となる3番目以降の第3レーザスリット溝に連続する3番目以降のレーザスリット孔の長さを順に短くしていくことにより、1番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、2番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも最優先で行うことができ、また、2番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、3番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも優先的に行うことができ、3番目以降の第3レーザスリットに沿った引き裂きも同様に優先的に行うことができる。
【0054】
(請求項9乃至14に係る発明についての実施形態)
請求項9乃至14に係る発明のラベルセットでは、複数のラベル片(各ラベル片は接着剤層及び表層よりなる)を有するこのラベルセットを構成する積層体が、基材と、接着剤層と、表層とを備えている。このラベルセットにおける各ラベル片は、文字、図形及び記号よりなる群のうちから選ばれる少なくとも一種よりなる情報表示部を有していないものであるが、表層の色によって他のラベルセットとの識別化が可能であれば、表層の色を特定の色にすることで、他のラベルセットと識別化する識別機能をもたせることができる。
【0055】
この積層体を構成する基材、接着剤及び表層は特に限定されず、従来と同様のものを用いることができる。なお、表層の色は上述のとおり識別機能を果たす特定の色を適宜採択することができる。
【0056】
上記基材の形状や厚さも特に限定されない。
【0057】
請求項9乃至14に係る発明では、所定の第2領域にて接着剤層又は基材が露出するようにレーザの照射により表層の全部が除去されるか又は表層の全部及び接着剤層の少なくとも一部が除去されることにより、表層から少なくとも接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝が形成されている。この第2レーザスリット溝によって各ラベル片毎に区画、分離される。そして、基材から接着剤層が剥離されることにより、表層及び接着剤層を有する各ラベル片を第2レーザスリット溝に沿って基材から1枚ずつ剥がすことができる。
【0058】
また、請求項9乃至14に係る発明では、所定の数のラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて積層体の表層側からレーザを照射して、表層及び接着剤層の全部並びに基材の一部を除去することにより、表層から基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成している。この基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝の深さは、表層から基材の内部に到達する深さ(基材の一部がカットされる深さ)であれば特に限定されないが、基材がカットされる深さが浅すぎると引き裂きによる分割が困難となる一方、深すぎると意図しない分割が発生しやすくなることから、基材の厚さの30〜50%程度(ハーフカット量30〜50%程度)とすることが好ましい。
【0059】
上記2レーザスリット溝及び上記第3レーザスリット溝は、それぞれ積層体の表層側から所定の照射条件でレーザを照射することにより形成される。レーザの種類としては、積層体を構成する表層、接着剤層及び基材をレーザの照射により熱分解等で除去することができるものであれば特に限定されず、CO2 レーザ等を好適に用いることができる。そして、レーザを照射する際の照射条件、例えばレーザ出力やスキャン速度等を適宜調整することにより、レーザスリット溝の深さを調整したり、レーザスリット孔を形成したりすることができる。
【0060】
そして、請求項10又は13に係る発明では、さらに、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて積層体の表層側からレーザを照射して、表層、接着剤層及び基材の全部を除去することにより、前記基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成している。この基材フルカット用のレーザスリット孔の長さは特に限定されないが、短すぎると分割をより容易にするというレーザスリット孔による効果が不十分となる一方、長すぎると意図しない分割が発生しやすくなることから、5〜10mm程度とすることが好ましい。
【0061】
また請求項11又は14に係る発明では、前記第3レーザスリット溝や前記レーザスリット孔を形成する際のレーザの照射条件を変化させることにより、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を部分的に変化させている。具体的には、ラベルセットをn個(nは3以上の整数)の小セットにn分割させる必要がある場合は、分割数に応じて(nの数より1だけ小さい数で)多段階的に、第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を変化させることが好ましい。例えば、一つのラベルセットをn個(nは3以上の整数)の小セットに(n−1)回の引き裂きによりn分割させる必要がある場合は、最初の引き裂き線となる1番目の第3レーザスリット溝の深さを一番深くし、2回目の引き裂き線となる2番目の第3レーザスリット溝の深さを1番目の第3レーザスリット溝よりも浅くし、そして3回目以降の引き裂き線となる3番目以降の第3レーザスリット溝の深さを順に浅くしていくことにより、1番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、2番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも最優先で行うことができ、また、2番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、3番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも優先的に行うことができ、3番目以降の第3レーザスリットに沿った引き裂きも同様に優先的に行うことができる。また同様に、一つのラベルセットをn個(nは3以上の整数)の小セットに(n−1)回の引き裂きによりn分割させる必要がある場合は、1回目の引き裂き線となる1番目の第3レーザスリット溝に連続する1番目のレーザスリット孔の長さを一番長くし、2回目の引き裂き線となる2番目の第3レーザスリット溝に連続する2番目のレーザスリット孔の長さを1番目のレーザスリット孔よりも短くし、そして3回目以降の引き裂き線となる3番目以降の第3レーザスリット溝に連続する3番目以降のレーザスリット孔の長さを順に短くしていくことにより、1番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、2番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも最優先で行うことができ、また、2番目の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きを、3番目以降の第3レーザスリット溝に沿った引き裂きよりも優先的に行うことができ、3番目以降の第3レーザスリットに沿った引き裂きも同様に優先的に行うことができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
本実施例は、請求項1、2、3、5、6又は7に記載の発明を具現化したものである。
【0064】
図1〜図4に示す本実施例に係るラベルセットは、基材11と、基材11の上に形成された接着剤層12、接着剤層12の上に形成された下地層13と、下地層13の上に形成され視認により下地層13と識別可能な隠蔽層14とを備えた積層体10よりなり(図2及び図4参照)、基材11から接着剤層12が剥離されることにより基材11から剥がすことができそれぞれが情報表示部をもつ12枚のラベル片10aを有している。なお、このラベルセットの周縁部には、ラベル片10aが存在しない縁部10bが設けられている。
【0065】
上記基材11は紙製台紙よりなり、下地層13は白色のアクリルフィルムよりなり、隠蔽層14は黒色のアクリルフィルムよりなる。なお、接着剤層12、下地層13及び隠蔽層14の厚さは合計で150μm程度である。
【0066】
そして、このラベルセットは、各情報表示部を形成すべく、所定の第1領域にて下地層13が露出するようにレーザの照射により隠蔽層14の全部及び下地層13の一部が除去されることにより形成された、隠蔽層14から下地層13の内部に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝1を有している。この第1レーザスリット溝1は、図1に示されるように、各ラベル片10aに対応する所定の第1領域に、それぞれ「AB…」で表された文字列よりなる情報表示部を形成するように設けられている。
【0067】
また、このラベルセットは、各ラベル片10a毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて接着剤層12が露出するようにレーザの照射により隠蔽層14及び下地層13の全部並びに接着剤層12の一部が除去されることにより形成された、隠蔽層14から接着剤層12の内部に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝2a、2bを有している。図1に示されるように、第2レーザスリット溝2aは横に延びる7本の横線よりなり、第2レーザスリット溝2bはラベルセットの両側で縦に延びる2本の両側縦線よりなる。
【0068】
さらに、このラベルセットは、それぞれが6個のラベル片10aを有する2個の小セットに容易に2分割できるように、所定の第3領域にてレーザの照射により隠蔽層14、下地層13及び接着剤層12の全部並びに基材11の一部が除去されることにより形成された、隠蔽層14から基材11の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝(ハーフカット量30%)3をさらに有している。この第3レーザスリット溝3は、図1に示されるように、ラベルセットの中央で上端付近から下端まで縦に延びる一本の中央縦線(ラベルセットの上端側にある上端側の縁部10bの部分(図1の太線で示す部分)は除く)よりなる。
【0069】
また、このラベルセットは、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にてレーザの照射により隠蔽層14、下地層13、接着剤層12及び基材11の全部が除去されることにより形成された、前記第3レーザスリット溝3に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔(長さ10mm)4をさらに有している。このレーザスリット孔(図1に太線で示す部分)4は、上記第3レーザスリット溝3に連続するように、ラベルセットの上端側にある上端側の縁部10bの部分に設けられている。
【0070】
上記構成を有する本実施例に係るラベルセットは、以下のようにして製造した。
【0071】
<準備工程>
まず、上記積層体10として、市販品のレーザーラベル(商品名「レーザーラベル 6930 PV6 AF48 ”フットプリント”」、エィコス株式会社、テサグループ製)を準備した。
【0072】
<第1レーザ溝形成工程>
各前記情報表示部を形成すべく、所定の第1領域にて下地層13が露出するように積層体10の隠蔽層14側からレーザを照射して、隠蔽層14の全部及び下地層13の一部を除去することにより、隠蔽層14から下地層13の内部に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝1を形成した。このときの照射条件は、以下のとおりである。
【0073】
レーザの種類:CO2 レーザ 30W
スキャン速度:1000mm/s
出力 :75%
<第2レーザ溝形成工程>
各ラベル片10a毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて接着剤層12が露出するように積層体10の隠蔽層14側からレーザを照射して、隠蔽層14及び下地層13の全部並びに接着剤層12の一部を除去することにより、隠蔽層14から接着剤層12の内部に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝2a、2bを形成した。このときの照射条件は、以下のとおりである。
【0074】
レーザの種類:CO2 レーザ 30W
スキャン速度:225mm/s
出力 :75%
<第3レーザスリット溝形成工程>
所定の数のラベル片10aを有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて積層体10の隠蔽層14側からレーザを照射して、隠蔽層14、下地層13及び接着剤層12の全部並びに基材11の一部を除去することにより、隠蔽層14から基材11の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝3をさらに形成した。このときの照射条件は、以下のとおりである。
【0075】
レーザの種類:CO2 レーザ 30W
スキャン速度:150mm/s程度
出力 :75%
<レーザスリット孔形成工程>
前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて積層体10の隠蔽層14側からレーザを照射して、隠蔽層14、下地層13、接着剤層12及び基材11の全部を除去することにより、前記第3レーザスリット溝3に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔4をさらに形成した。このときの照射条件は、以下のとおりである。
【0076】
レーザの種類:CO2 レーザ 30W
スキャン速度:100mm/s
出力 :75%
こうして本実施例に係るラベルセットを製造した。なお、製造したラベルセットは、図3及び図4に示されるように、準備工程で準備した積層体10よりもサイズがひとまわり小さく、ラベルセットの周囲の四辺を上記レーザスリット孔4を形成するときと同様の照射条件で連続的にレーザ照射して、切り出し用のレーザスリット孔5を形成することにより、切り出したものである。
【0077】
したがって、本実施例に係るラベルセット又はその製造方法では、積層体10の隠蔽層14側から所定領域にレーザを照射し、そのときの照射条件を領域に応じて適宜調整することにより、その照射部分で領域に応じた特定の層だけを除去する(レーザスリット溝の深さを調整したり、レーザスリット孔を形成したりする)ようにして、所定の第1領域にて情報表示用の第1レーザスリット溝1を形成し、所定の第2領域にてシールカット用の第2レーザスリット溝2a、2bを形成し、所定の第3領域にて基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝3を形成し、かつ、所定の第4領域にて基材フルカット用のレーザスリット孔4を形成している。
【0078】
このため、本実施例に係る発明のラベルセットの製造に際しては、積層体10表面に情報表示部を形成表示するために行う、印刷機械を用いた印刷工程や、情報表示部の周囲にシールカット用の切り込み線を形成したりラベルセットを切り出したりするために行う、刃物等の工具を用いたカット工程が不要となり、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、情報表示部を有する複数のラベル片10aを備えたラベルセットの製造が可能となる。
【0079】
また、本実施例に係るラベルセットでは、ラベルセットの中央で縦に延びる一本の中央縦線(ラベルセットの上端側にある上端側の縁部10bの部分は除く)よりなる基板ハーフカット用の第3レーザスリット溝3を形成するとともに、ラベルセットの上端側にある上端側の縁部10bの部分(図1に太線で示す部分)に第3レーザスリット溝3に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔4を形成している。このため、レーザスリット孔4を引き裂きの導入部にしつつ第3レーザスリット溝3に沿って容易に引き裂くことできるので、それぞれが6個のラベル片10aよりなる2個の小セットに容易に2分割することが可能となる。したがって、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、複数の小セットに容易に分割することのできるラベルセットを提供することが可能となる。
【0080】
(実施例2)
本実施例は、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の発明を具現化したものである。
【0081】
図5及び図6に示す本実施例に係るラベルセットは、基材11から接着剤層12が剥離されることにより基材11から剥がすことができそれぞれが情報表示部をもつ11枚のラベル片10aを有している。
【0082】
そして、図5に示されるように、情報表示用の第1レーザスリット溝1は、各ラベル片10aに対応する所定の第1領域に、それぞれ「12…」で表された文字列よりなる情報表示部を形成するように設けられている。
【0083】
また、シールカット用の第2レーザスリット溝2aは横に延びる2本の横線よりなり、同じくシールカット用の第2レーザスリット溝2bは縦に延びる9本の縦線よりなる。
【0084】
さらに、基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝3a〜3cは、ラベルセットの上端付近から下端まで縦に延びる3本の縦線よりなる。そして、これら第3レーザスリット溝3a〜3cは、深さがそれぞれ異なり、図6に示されるように、1番目(図5及び図6の左側)の第3レーザスリット溝3aは基材11の厚さの50%程度まで達しており(ハーフカット量50%程度)、2番目(図5及び図6の中央)の第3レーザスリット溝3bは基材11の厚さの40%程度まで達しており(ハーフカット量40%程度)、3番目(図5及び図6の右側)の第3レーザスリット溝3cは基材11の厚さの30%程度まで達している(ハーフカット量30%程度)。なお、第3レーザスリット溝3a〜3cを形成する際のレーザ照射条件は、1番目の第3レーザスリット溝3aを形成する際がスキャン速度:120mm/s程度であり、2番目の第3レーザスリット溝3bを形成する際がスキャン速度:130〜140mm/s程度であり、3番目の第3レーザスリット溝3cを形成する際がスキャン速度:150mm/s程度である。
【0085】
また、各第3レーザスリット溝3a〜3cにそれぞれ連続する基材フルカット用のレーザスリット孔(図5に太線で示す部分)4a〜4cは、ラベルセットの上端側にある上端側の縁部10bの部分に設けられており、これらレーザスリット孔4a〜4cの長さがそれぞれ異なっている。すなわち図5に示されるように、1番目の第3レーザスリット溝3aに連続する1番目のレーザスリット孔4aの長さは10mm、2番目の第3レーザスリット溝3bに連続する2番目のレーザスリット孔4bの長さは8mm、3番目の第3レーザスリット溝3cに連続する3番目のレーザスリット孔4cの長さは5mmとされている。
【0086】
その他の構成及び製造方法は前記実施例1と同様である。
【0087】
したがって、本実施例に係るラベルセット又はその製造方法では、前記実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示す作用効果も奏する。
【0088】
すなわち、このラベルセットでは、第3レーザスリット溝3a〜3c及びレーザスリット孔4a〜4cを形成する際のレーザの照射条件を変化させることにより、第3レーザスリット溝3a〜3cの深さ及びレーザスリット孔4a〜4cの長さが多段階的に変化するようにそれぞれ異ならせている。具体的には、ラベルセットを4個の小セットに4分割させるべく、3段階に、第3レーザスリット溝の深さ3a〜3cの深さ及びレーザスリット孔4a〜4cの長さを変化させている。このため、最初の引き裂き時には、レーザスリット孔の長さが1番長い1番目のレーザスリット孔4aを引き裂きの導入部とし、この1番目のレーザスリット孔4aに連続し第3レーザスリット溝の深さが1番深い1番目の第3レーザスリット溝3aに沿う1番目の引き裂きを最優先で行うことができる。そして、次の引き裂き時には、レーザスリット孔の長さが2番目に長い2番目のレーザスリット孔4bを引き裂きの導入部とし、この2番目のレーザスリット孔4bに連続し第3レーザスリット溝の深さが2番目に深い第3レーザスリット溝3bに沿う2番目の引き裂きを優先的に行うことができる。
【0089】
したがって、本実施例に係るラベルセットは、複数の工程よりなる流れ作業において、一つのラベルセットを順次、次工程へ送りながら、各工程ではそれぞれの作業者がその工程で必要な数のラベル片を有する小セットを分割し、残りのラベルセットを次工程に送る、というよう作業形態に好適に使うことができる。
【0090】
すなわち、各工程の作業者はまず送られてきたラベルセットからその工程で必要な数のラベル片10aを有する小セットを分割し、残ったラベルセットを次工程へ送った後に分割した小セットからラベル片10aを剥がして貼り付け作業を行う。この最初の引き裂き時には、作業者は上記1番目の第3レーザスリット溝3aに沿って最優先で引き裂くことにより、容易に必要な数のラベル片10aを有する小セットを分割することができる。そして、次工程の作業者も同様に、その工程で必要な数のラベル片10aを有する小セットを、上記2番目の第3レーザスリット溝3bに沿って優先的に引き裂くことにより、容易に分割することができる。このように各工程の作業者は貼り付け作業の終了を待たずにラベルセットを次工程へ送ることができ、流れ作業全体に要する作業時間の短縮化を図ることが可能となる。また、一の工程において複数場所でラベル片の貼り付け作業を行うような場合は、送られてきたラベルセットからその工程で必要な数の小セットを分割するようにすれば、各小セットをそれぞれもった複数の作業者が複数の異なる場所で同時に貼り付け作業を行うことができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0091】
(実施例3)
本実施例は、請求項9、10、11、12、13又は14に記載の発明を具現化したものである。
【0092】
図7及び図8に示す本実施例に係るラベルセットは、基材21と、基材21の上に形成された接着剤層22と、接着剤層22の上に形成された表層23とを備えた積層体20よりなり、基材21から接着剤層22が剥離されることにより基材21から剥がすことができる11枚のラベル片20aを有している。なお、このラベルセットの周縁部には、ラベル片20aが存在しない縁部20bが設けられている。
【0093】
上記基材21は紙製台紙よりなり、表層23は白色のアクリルフィルムよりなる。
【0094】
そして、このラベルセットは、各ラベル片20a毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて接着剤層22が露出するようにレーザの照射により表層23の全部並びに接着剤層22の一部が除去されることにより形成された、表層23から接着剤層22の内部に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝2a、2bを有している。図7に示されるように、シールカット用の第2レーザスリット溝2aは横に延びる2本の横線よりなり、同じくシールカット用の第2レーザスリット溝2bは縦に延びる9本の縦線よりなる。
【0095】
また、このラベルセットは、それぞれが2個、3個、3個、3個のラベル片20aを有する4個の小セットに容易に4分割できるように、所定の第3領域にてレーザの照射により表層23及び接着剤層22の全部並びに基材21の一部が除去されることにより形成された、表層23から基材21の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝3〜3cをさらに有している。この第3レーザスリット溝3a〜3cは、図7に示されるように、ラベルセットの上端付近から下端まで縦に延びる3本の縦線よりなる。そして、これら第3レーザスリット溝3a〜3cは、深さがそれぞれ異なり、図8に示されるように、1番目(図7及び図8の左側)の第3レーザスリット溝3aは基材21の厚さの50%程度まで達しており(ハーフカット量50%程度)、2番目(図7及び図8の中央)の第3レーザスリット溝3bは基材21の厚さの40%程度まで達しており(ハーフカット量40%程度)、3番目(図7及び図8の右側)の第3レーザスリット溝3cは基材の21の厚さの30%程度まで達している(ハーフカット量30%程度)。
【0096】
さらに、このラベルセットは、前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にてレーザの照射により表層23、接着剤層22及び基材21の全部が除去されることにより形成された、前記第3レーザスリット溝3a〜3cにそれぞれ連続する基材フルカット用のレーザスリット孔4a〜4cをさらに有している。各第3レーザスリット溝3a〜3cにそれぞれ連続する基材フルカット用のレーザスリット孔(図7に太線で示す部分)4a〜4cは、ラベルセットの上端側にある上端側の縁部10bの部分に設けられており、これらレーザスリット孔4a〜4cの長さがそれぞれ異なっている。すなわち図7に示されるように、1番目の第3レーザスリット溝3aに連続する1番目のレーザスリット孔4aの長さは10mm、2番目の第3レーザスリット溝3bに連続する2番目のレーザスリット孔4bの長さは8mm、3番目の第3レーザスリット溝3cに連続する3番目のレーザスリット孔4cの長さは5mmとされている。
【0097】
上記構成を有する本実施例に係るラベルセットは、以下のようにして製造した。
【0098】
<準備工程>
まず、所定の台紙よりなる基板21の上に、所定の接着剤層22付きの表層23を貼り付けて、上記積層体20を準備した。
【0099】
<第2レーザ溝形成工程>
各ラベル片20a毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて接着剤層22が露出するように積層体20の表層23側からレーザを照射して、表層23の全部及び接着剤層22の一部を除去することにより、表層23から接着剤層22の内部に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝2a、2bを形成した。このときの照射条件は、以下のとおりである。
【0100】
レーザの種類:CO2 レーザ 30W
スキャン速度:225mm/s
出力 :75%
<第3レーザスリット溝形成工程>
所定の数のラベル片20aを有する小セットの4分割を可能とすべく、所定の第3領域にて積層体20の表層側からレーザを照射して、表層23及び接着剤層22の全部並びに基材21の一部を除去することにより、表層23から基材21の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝3a〜3cをさらに形成した。このときの照射条件は、以下のとおりである。
【0101】
レーザの種類:CO2 レーザ 30W
1番目の第3レーザスリット溝3aのスキャン速度:120mm/s程度
2番目の第3レーザスリット溝3bのスキャン速度:130〜140mm/s程度
3番目の第3レーザスリット溝3cのスキャン速度:150mm/s程度
出力 :75%
<レーザスリット孔形成工程>
前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて積層体20の表層23側からレーザを照射して、表層23、接着剤層22及び基材21の全部を除去することにより、各前記第3レーザスリット溝3a〜3cにそれぞれ連続する基材フルカット用のレーザスリット孔4a〜4cをさらに形成した。このときの照射条件は、以下のとおりである。
【0102】
レーザの種類:CO2 レーザ 30W
スキャン速度:100mm/s
出力 :75%
こうして本実施例に係るラベルセットを製造した。なお、製造したラベルセットは、準備工程で準備した積層体20よりもサイズがひとまわり小さく、ラベルセットの周囲の四辺を上記レーザスリット孔4a〜4cを形成するときと同様の照射条件で連続的にレーザ照射して、切り出し用のレーザスリット孔を形成することにより、切り出したものである。
【0103】
したがって、本実施例に係るラベルセット又はその製造方法では、積層体20の表層23側から所定領域にレーザを照射し、そのときの照射条件を領域に応じて適宜調整することにより、その照射部分で領域に応じた特定の層だけを除去する(レーザスリット溝の深さを調整するとともに、レーザスリット孔を形成する)ようにして、所定の第2領域にてシールカット用の第2レーザスリット溝2a、2bを形成し、所定の第3領域にて基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝3a〜3cを形成し、かつ、所定の第4領域にて基材フルカット用のレーザスリット孔4a〜4cを形成している。
【0104】
このため、本実施例に係る発明のラベルセットの製造に際しては、積層体20表面に情報表示部を形成表示するために行う、印刷機械を用いた印刷工程や、情報表示部の周囲にシールカット用の切り込み線を形成したりラベルセットを切り出したりするために行う、刃物等の工具を用いたカット工程が不要となり、レーザの照射条件を調整しつつ行うレーザマーキング技術のみを利用した簡単かつ容易な製法によって、白色の表層23によって他の色のラベル片と識別可能な複数のラベル片20aを備えたラベルセットの製造が可能となる。
【0105】
また、本実施例に係るラベルセットでは、レーザスリット孔4a〜4cを引き裂きの導入部にしつつ第3レーザスリット溝3a〜3cに沿って容易に引き裂くことができるので、4個の小セットに容易に4分割することが可能となる。しかも、このラベルセットでは、第3レーザスリット溝3a〜3c及びレーザスリット孔4a〜4cを形成する際のレーザの照射条件を変化させることにより、第3レーザスリット溝3a〜3cの深さ及びレーザスリット孔4a〜4cの長さが段階的に変化するようにそれぞれ異ならせている。具体的には、ラベルセットを4個の小セットに4分割させるべく、3段階に、第3レーザスリット溝3a〜3cの深さ及びレーザスリット孔4a〜4cの長さを変化させている。このため、最初の引き裂き時には、レーザスリット孔の長さが1番長い1番目のレーザスリット孔4aを引き裂きの導入部とし、この1番目のレーザスリット孔4aに連続し第3レーザスリット溝の深さが1番深い1番目の第3レーザスリット溝3aに沿う1番目の引き裂きを最優先で行うことができる。そして、次の引き裂き時には、レーザスリット孔の長さが2番目に長い2番目のレーザスリット孔4bを引き裂きの導入部とし、この2番目のレーザスリット孔4bに連続し第3レーザスリット溝の深さが2番目に深い第3レーザスリット溝3bに沿う2番目の引き裂きを優先的に行うことができる。
【0106】
したがって、本実施例に係るラベルセットは、前記実施例2と同様に、複数の工程よりなる流れ作業において、一つのラベルセットを順次、次工程へ送りながら、各工程ではそれぞれの作業者がその工程で必要な数のラベル片を有する小セットを分割し、残りのラベルセットを次工程に送る、というよう作業形態に好適に使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施例1に係るラベルセットの平面図である。
【図2】実施例1に係るラベルセットの断面図であり、図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】実施例1に係るラベルセットの製造過程における平面図である。
【図4】実施例1に係るラベルセットの製造過程における断面図であり、図3のB−B線矢視断面図である。
【図5】実施例2に係るラベルセットの平面図である。
【図6】実施例2に係るラベルセットの断面図であり、図5のC−C線矢視断面図である。
【図7】実施例3に係るラベルセットの平面図である。
【図8】実施例3に係るラベルセットの断面図であり、図7のD−D線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0108】
10、20…積層体 10a、20a…ラベル片
11、21…基材 12、22…接着剤層
13…下地層 14…隠蔽層
23…表層 1…第1レーザスリット溝
2a、2b…第2レーザスリット溝
3a、3b、3c…第3レーザスリット溝
4a、4b、4c…レーザスリット孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された下地層と、該下地層の上に形成され視認により該下地層と識別可能な隠蔽層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができそれぞれが情報表示部をもつ複数のラベル片を有するラベルセットであって、
各前記情報表示部を形成すべく、所定の第1領域にて前記下地層が露出するようにレーザの照射により前記隠蔽層の全部が除去されるか又は前記隠蔽層の全部及び前記下地層の一部が除去されることにより形成された前記隠蔽層から前記下地層に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝と、
各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するようにレーザの照射により前記隠蔽層及び前記下地層の全部が除去されるか又は前記隠蔽層及び前記下地層の全部並びに前記接着剤層の少なくとも一部が除去されることにより形成された前記隠蔽層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝とを有していることを特徴とするラベルセット。
【請求項2】
所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にてレーザの照射により前記隠蔽層、前記下地層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部が除去されることにより形成された前記隠蔽層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝をさらに有していることを特徴とする請求項1記載のラベルセット。
【請求項3】
前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にてレーザの照射により前記隠蔽層、前記下地層、前記接着剤層及び前記基材の全部が除去されることにより形成された、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔をさらに有していることを特徴とする請求項2記載のラベルセット。
【請求項4】
前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方が部分的に変化させられていることを特徴とする請求項2又は3記載のラベルセット。
【請求項5】
基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された下地層と、該下地層の上に形成され視認により該下地層と識別可能な隠蔽層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができそれぞれが情報表示部をもつ複数のラベル片を有するラベルセットを製造する方法であって、
前記基材と、前記接着剤層と、前記下地層と、前記隠蔽層とを備えた積層体を準備する準備工程と、
各前記情報表示部を形成すべく、所定の第1領域にて前記下地層が露出するように前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層の全部を除去するか又は前記隠蔽層の全部及び前記下地層の一部を除去することにより、前記隠蔽層から前記下地層に到達する情報表示用の第1レーザスリット溝を形成する第1レーザ溝形成工程と、
各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するように前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層及び前記下地層の全部を除去するか又は前記隠蔽層及び前記下地層の全部並びに前記接着剤層の少なくとも一部を除去することにより、前記隠蔽層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝を形成する第2レーザスリット溝形成工程とを備えていることを特徴とするラベルセットの製造方法。
【請求項6】
所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層、前記下地層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部を除去することにより、前記隠蔽層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成する第3レーザスリット溝形成工程をさらに備えていることを特徴とする請求項5記載のラベルセットの製造方法。
【請求項7】
前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて前記積層体の前記隠蔽層側からレーザを照射して、前記隠蔽層、前記下地層、前記接着剤層及び前記基材の全部を除去することにより、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成するレーザスリット孔形成工程をさらに備えていることを特徴とする請求項6記載のラベルセット。
【請求項8】
前記レーザの照射条件を変化させることにより、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を部分的に変化させることを特徴とする請求項6又は7記載のラベルセットの製造方法。
【請求項9】
基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された表層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができる複数のラベル片を有するラベルセットであって、
各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するようにレーザの照射により前記表層の全部が除去されるか又は前記表層の全部及び前記接着剤層の少なくとも一部が除去されることにより形成された前記表層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝と、
所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にてレーザの照射により前記表層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部が除去されることにより形成された前記表層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝とを有していることを特徴とするラベルセット。
【請求項10】
前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にてレーザの照射により前記表層、前記接着剤層及び前記基材の全部が除去されることにより形成された、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔をさらに有していることを特徴とする請求項9記載のラベルセット。
【請求項11】
前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方が部分的に変化させられていることを特徴とする請求項9又は10記載のラベルセット。
【請求項12】
基材と、該基材の上に形成された接着剤層と、該接着剤層の上に形成された表層とを備えた積層体よりなり、該基材から該接着剤層が剥離されることにより該基材から剥がすことができる複数のラベル片を有するラベルセットの製造方法であって、
前記基材と、前記接着剤層と、前記表層とを備えた積層体を準備する準備工程と、
各前記ラベル片毎に区画、分離すべく、所定の第2領域にて前記接着剤層又は前記基材が露出するように前記積層体の前記表層側からレーザを照射することにより、前記表層の全部を除去するか又は前記表層の全部及び前記接着剤層の少なくとも一部を除去することにより、前記表層から少なくとも前記接着剤層に到達するシールカット用の第2レーザスリット溝を形成する第2レーザスリット溝形成工程と、
所定の数の前記ラベル片を有する小セットの分割を可能とすべく、所定の第3領域にて前記積層体の前記表層側からレーザを照射することにより、前記表層及び前記接着剤層の全部並びに前記基材の一部を除去することにより、前記表層から前記基材の内部に到達する基材ハーフカット用の第3レーザスリット溝を形成する第3レーザスリット溝形成工程とを備えていることを特徴とするラベルセットの製造方法。
【請求項13】
前記小セットの分割を容易にすべく、前記第3領域に連続する所定の第4領域にて前記積層体の前記表層側からレーザを照射することにより、前記表層、前記接着剤層及び前記基材の全部を除去することにより、前記第3レーザスリット溝に連続する基材フルカット用のレーザスリット孔を形成するレーザスリット孔形成工程をさらに有していることを特徴とする請求項12記載のラベルセットの製造方法。
【請求項14】
前記レーザの照射条件を変化させることにより、前記第3レーザスリット溝の深さ及び前記レーザスリット孔の長さのうちの少なくとも一方を部分的に変化させることを特徴とする請求項12又は13記載のラベルセットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−98969(P2006−98969A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287507(P2004−287507)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】