説明

ラベルテープ

【課題】連続して切断しても、刃先に粘着剤が付着することを抑制するラベルテープを提供する。
【解決手段】本発明に係るラベルテープは、対象物に粘着させるための粘着剤19を備え、使用時に印刷するとともに切断刃50を用いて切断をして使用する使用時印刷式のラベルテープである。切断刃50に粘着剤19が付着することを抑制するための付着抑制剤24を更に備え、切断の際に、付着抑制剤24が切断刃50に塗布される構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルテープに関する。特に、使用者が印刷後に任意の長さに切断して使用することができるラベルテープに関する。
【背景技術】
【0002】
表示したい内容を、使用時にラベル面に印字したのち決められた大きさに切断して使用する使用時印刷式のラベルテープが、スーパーマーケットやコンビニエンスストアをはじめとして広く用いられている。この使用時印刷式のラベルテープは使用者が必要な情報を個別に印刷機で印刷してラベルを作成した後、商品等に粘着させて使用する。日付や内容量の表示など、商品毎の個別情報をラベル上に印刷ができるため便利である。
【0003】
使用時印刷式のラベルテープにおいてラベルはあらかじめ決まった大きさに切りはなされて供給されるか、ミシン目などにより容易に切り離しができる形態で供給される。例えば、特許文献1に記載のラベルテープは前者の例であり、剥離紙上にあらかじめ切り離されたラベルが所定の間隔で配置されている。一方、特許文献2に記載のラベルテープは後者の例である。このラベルテープは剥離紙を必要としないラベルテープであって、所定の間隔ごとに切れ込みが設けられているため、印刷後にこの切り込み部から切り離すことによりラベルを形成することができる。
【0004】
いずれの場合であっても、あらかじめラベルの大きさが決まっているため、ラベル上に印刷する情報が多いときには、文字を小さくするなどして情報量を増やす必要がある。しかし、文字を小さくすることは、視認性を低下させる結果を招くため、好ましいことではない。
【0005】
そこで、印刷スペースを確保するためにラベルの大きさをあらかじめ固定せず、使用時において印刷量に応じて変化させることが考えられる。具体的には、ラベルテープに必要な情報を印刷した後に、印刷された情報量に合わせてラベルテープを切断することにより、ラベルを作成すればよい。
【0006】
このように、印刷された情報量に合わせてラベルテープを切断するためには、印刷機が切断装置を備える構成を有し、印刷後に印刷された情報量に合わせて自動的にラベルテープを切断する構成であることが好ましい。しかし、ラベルテープをカッター等の切断刃で切断すると、ラベルテープに備えられた粘着剤に切断刃が接触するため、粘着剤が切断刃に付着する。粘着剤が切断刃に付着すると、続くラベルテープの切断の際に、付着した粘着剤が、ラベルテープに触れ、切断を妨げる。その結果、連続して、ラベルテープを切断することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−234574号公報
【特許文献2】特開2010−217622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況を鑑みなされたもので、本発明の目的は、切断刃に粘着剤が付着することを抑制するラベルテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るラベルテープは、対象物に粘着させるための粘着剤を備え、使用時に印刷をするとともに切断刃を用いて切断をして使用する使用時印刷式のラベルテープである。前記切断刃に前記粘着剤が付着することを抑制するための付着抑制剤を更に備え、前記切断の際に、前記付着抑制剤が前記切断刃に塗布される構造を有する。
【0010】
本発明によると、切断の際に、付着抑制剤が切断刃に塗布されるため、切断刃に粘着剤が接した場合であっても、切断刃に粘着剤が付着することが抑制される。その為、先の切断時に付着した粘着剤が、後の切断時にラベルテープの切断を邪魔することがなく、連続したラベルテープの切断が可能となる。
【0011】
本発明に係るラベルテープは、前記付着抑制剤がマイクロカプセルに封入されるとともに該マイクロカプセルが前記粘着剤に混入されており、前記切断の際に、前記マイクロカプセルが破壊されることにより封入されていた前記付着抑制剤が前記切断刃に塗布されることが好ましい。
【0012】
本発明によると、付着抑制剤がマイクロカプセルに封入されているため、粘着剤に混入させても、付着抑制剤が粘着剤に悪影響を与えることがない。また、粘着剤に混入されているため、塗工工程を増やすことなく、ラベルテープが付着抑制剤を備える構成とすることができる。更に、マイクロカプセルが切断刃で破壊されることにより、切断刃近傍で選択的に付着抑制剤の封入を解くことができるため、他に影響を与えず、切断刃に付着抑制剤を付着させることができる。
【0013】
本発明に係るラベルテープは、前記マイクロカプセルの粒径が、1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0014】
粒径が1μm以上であるため、切断刃によりマイクロカプセルが容易に切断され、付着抑制剤の封入を解くことができる。また、粒径が10μm以下であるため、製造工程または使用時に掛かる圧力によりマイクロカプセルが破壊される蓋然性が低くなる。
【0015】
本発明に係るラベルテープは、前記粘着剤に混入される前記マイクロカプセルの量の乾燥質量が、前記粘着剤および前記マイクロカプセルの乾燥質量に対して、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0016】
マイクロカプセルの混入量を10質量%以上とすることにより、粘着剤付着を抑制する効果が一層大きくなる。また、マイクロカプセルの混入量を30質量%以下とすることにより、マイクロカプセルが粘着力の低下させる効果を抑制することができる。
なお、乾燥質量とは、溶媒・分散媒を除いた質量のことである。但し、マイクロカプセルに封入されている付着抑制剤の質量は乾燥質量に含まれている。
【0017】
本発明に係るラベルテープは、該ラベルテープの延設方向と同方向に延設された付着抑制剤層を形成する態様で前記付着抑制剤が備えられており、前記切断の際に、前記切断刃が前記付着抑制剤層を切断することにより前記付着抑制剤が前記切断刃に塗布されることが好ましい。
【0018】
本発明によると、付着抑制剤は、ラベルテープの延設方向と同方向に延設された付着抑制剤層を形成する態様で備えられている。この付着抑制剤層は汎用の塗布技術を用いて容易に形成することができる。ここで、ラベルテープの延設方向と平行な方向とは、即ち、切断刃による切断方向に対して垂直な方向である。よって、切断刃がラベルテープを切断する際には、必ず、付着抑制剤層を切断することになる。そのため、切断刃がこのラベルテープを切断する際には、付着抑制剤が切断刃に塗布されることとなる。
【0019】
本発明に係るラベルテープは、付着抑制剤がパラフィン、シリコン、油脂からなる群より選択される少なくとも1つの成分を主成分とする好ましい。
【0020】
パラフィン、シリコン、油脂は汎用かつ安価な成分であり、入手が容易である。また、粘着剤の付着抑制剤として広く用いられており、粘着剤付着抑制効果に疑念が生じない。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るラベルテープによると、粘着剤付着抑制剤が、切断刃に塗布されるため、粘着剤が切断刃に付着することが抑制される。従って、同ラベルテープを連続的に切断することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は第1の実施形態のラベルテープの全体模式図である。
【図2】図2は同実施形態のラベルテープの断面図である。
【図3】図3は図2の要部拡大断面図である。
【図4】図4は同実施形態のラベルテープの切断時の状態を示した要部拡大断面図である。
【図5】図5は第2の実施形態のラベルテープの断面図である。
【図6】図6は同実施形態のラベルテープの切断時の状態を示した断面図である。
【図7】図7はマイクロカプセルの混入量と粘着剤の付着質量との関係を示すグラフである。
【図8】図8はマイクロカプセルの混入量と粘着剤の付着質量との関係を示すグラフであって、粘着剤の付着質量を拡大表示したグラフである。
【図9】図9はマイクロカプセルの混入量と粘着力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係るラベルテープを図1〜図4を用いて説明する。なお、以下の説明において、方向および向きについては、図1に記載した方向および向きを用いる。
【0024】
図1は、ラベルテープが巻きとられた状態を示している。ラベルテープはこのように巻きとられた形態で、使用者に供給される。このラベルテープは剥離紙を必要としない型式のラベルテープである。図2は同ラベルテープを延設方向に切断した断面図である。具体的には、表面側から順に剥離層12、感熱発色剤層14、基材層16、粘着剤層18の順に積層されている。
【0025】
より具体的には、剥離層12は粘着剤層18と接触した場合であっても、容易に粘着剤層18から剥離することができる材料で形成されている。係る材料としては、シリコンを含有する材料が例示される。
【0026】
また、感熱発色剤層14は、加熱することにより発色する構成を有している。通常は染料である発色剤と、加熱することにより分解し、発色剤と反応することにより発色剤を発色させる顕色剤とを含有する層である。発色剤としては、ロイコ染料が例示され、顕色剤としては、ヒドロキシジフェニルスルホン系化合物が例示される。係る構成を有するためこのラベルテープは、加熱により感熱層を発色させることにより、使用時に情報を印刷することができる。印刷のための加熱は、一般にサーマルヘッドと呼ばれる加熱型の印刷ヘッドを用いて行うことができる。
【0027】
基材層16は、ラベルテープの物理強度を維持するための層である。用途に応じて紙・パルプ等の不透明基材やPET(Polyethylene Terephthalate)樹脂等の透明プラスチックフィルム等を用いて形成することができる。
【0028】
この基材層の裏側には、粘着剤層18が形成されている。この粘着剤層18は、例えばゴム系の粘着剤19を主原料として形成されている。この粘着剤層18によって、ラベルテープは、対象物に粘着させることができる。
【0029】
図3に示すように、この粘着剤層を形成する粘着剤19には、粘着剤19が付着することを抑制するための付着抑制剤が封入されたマイクロカプセル20が混入されている。このマイクロカプセル20は樹脂皮膜で形成された外殻22の内部に付着抑制剤としてのパラフィン24が封入されて形成されている。
【0030】
図4に示すように、ラベルテープを切断するための切断刃であるカッター刃50で同ラベルテープを切断すると、粘着剤層18に混入されたマイクロカプセル20の外殻22が破壊され、パラフィン24が放出される。この放出されたパラフィン24がカッター刃50の表面に塗布され、カッター刃50の表面を覆うことにより、粘着剤19がカッター刃50の表面に付着することを抑制する。
【0031】
なお、マイクロカプセル20に含まれるパラフィン24は、微量であるため、大部分がカッター刃50の表面31に塗布される。従って、粘着剤19にパラフィン24が混入して、粘着力を低下させる蓋然性は小さくなる。
【0032】
しかしながら、マイクロカプセル20自身には粘着性がないため、混入量が増加するに従い、粘着剤層18の粘着力は低下する。そのため、粘着力低下を抑制するためには、マイクロカプセル20の混入量は、粘着剤19およびマイクロカプセル20の乾燥質量に対するマイクロカプセル20の乾燥質量値で30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることが一層好ましい。
【0033】
一方、マイクロカプセル20の混入量が多いほど多くのパラフィン24をカッター刃50に塗布できるため、粘着剤19が刃に付着することを抑制する効果は大きくなる。従って、粘着剤付着を抑制する観点からは、マイクロカプセル20の混入量は粘着剤19およびマイクロカプセル20の乾燥質量に対するマイクロカプセル20の乾燥質量値で10質量%以上とすることが好ましく、15質量%以上とすることが一層好ましく、20質量%以上とすることがより一層好ましい。
【0034】
また、マイクロカプセル20の粒径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。粒径が10μmを超えると、ラベルテープの製造工程またはラベルテープ使用時に掛かる圧力によって、マイクロカプセル20が破壊される蓋然性が大きくなる。一方、粒径が1μm未満であると、カッター刃50によるラベルテープの切断の際に、マイクロカプセル20の外殻22がうまく破壊されず、粘着剤19の付着抑制効果が十分発揮されない可能性がある。同じ理由から、マイクロカプセル20の粒径は1μm以上4μm以下であることが一層好ましい。
【0035】
以上に説明した本実施形態によれば、上記した以下の効果を得ることができる。
【0036】
(1)本実施形態においては、ラベルテープが切断される際に、付着抑制剤がカッター刃50に塗布されるため、カッター刃50に粘着剤19が接した場合であっても、切断刃に粘着剤19が付着することが抑制される。その為、先の切断時に付着した粘着剤19が、後の切断時にラベルテープの切断を邪魔することがない。従って、連続したラベルテープの切断が可能となる。
【0037】
(2)本実施形態においては、付着抑制剤であるパラフィン24がマイクロカプセル20に封入されているため、粘着剤19に混入させても、パラフィン24が粘着剤19に悪影響を与えることがない。また、粘着剤19に混入されているため、塗工工程を増やすことなく、ラベルテープがパラフィン24を備える構成とすることができる。更に、マイクロカプセル20がカッター刃50で破壊されることにより、カッター刃50近傍で選択的にパラフィン24の封入を解くことができるため、他に影響を与えず、カッター刃50にパラフィン24を付着させることができる。
【0038】
(3)本実施形態においては、マイクロカプセル20の粒径が1μm以上であるため、カッター刃50によりマイクロカプセル20が容易に切断され、パラフィン24の封入を解くことができる。また、マイクロカプセル20の粒径が10μm以下であるため、製造工程または使用時に掛かる圧力によりマイクロカプセル20が破壊される蓋然性が低くなる。
【0039】
(4)本実施形態においては、マイクロカプセル20の混入量を、粘着剤19およびマイクロカプセル20の乾燥質量に対するマイクロカプセル20の乾燥質量において10質量%以上とすることにより、粘着剤付着を抑制する効果が一層大きくなる。また、マイクロカプセル20の混入量を、粘着剤19およびマイクロカプセル20の乾燥質量に対するマイクロカプセル20の乾燥質量において30質量%以下とすることにより、マイクロカプセル20が粘着力の低下させる効果を抑制することができる。
【0040】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態に係るラベルテープを図5および図6を用いて説明する。なお、第2の実施形態に係るラベルテープは第1の実施形態に係るラベルテープと基本構成は同一であるため、差異のある部分のみ詳細に説明するとともに、同様の機能を備える部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
図5は同ラベルテープを延設方向に切断した断面図である。具体的には、表面側から順に剥離層12、感熱発色剤層14、基材層16、付着抑制剤層26、粘着剤層18の順に積層されている。すなわち、基材層16と粘着剤層18との間に付着抑制剤層26を設けた点が本実施形態の特徴である。この付着抑制剤層26は他の層と同様に、公知の汎用技術を用いて容易に形成することができる。
【0042】
具体的には、付着抑制剤層26はラベルテープの延設方向と同方向に延設されて形成されている。また、この付着抑制剤層26は付着抑制剤としてのパラフィン24によって形成されている。従って、切断刃がこのラベルテープを切断する際には、付着抑制剤であるパラフィン24が切断刃に塗布されることとなる。
【0043】
具体的には、図6に示すように、ラベルテープをカッター刃50で切断する場合、カッター刃50は、剥離層12、感熱発色剤層14、基材層16を切断した後、付着抑制剤層26を切断する。付着抑制剤層26はパラフィン24で形成されているため、カッター刃50が付着抑制剤層26を横断する際にパラフィン24がカッター刃50に塗布され、カッター刃50の表面がパラフィン24により覆われる。そのため、その後に粘着剤層18を切断する際に、粘着剤19がカッター刃50の表面に付着することが抑制される。
【0044】
なお、係る構成であっても、粘着剤層18と付着抑制剤層26とは分離されているため、粘着剤19にパラフィン24が混入して、粘着力を低下させる蓋然性は小さい。
【0045】
以上に説明した第2の実施形態によれば、第1実施の形態で示した(2)〜(4)の効果に換えて、以下の効果を得ることができる。
【0046】
(2)本実施形態においては、付着抑制剤であるパラフィン24は、ラベルテープの延設方向と同方向に延設された付着抑制剤層26を形成している。この付着抑制剤層26は汎用の塗布技術を用いて容易に形成することができる。ここで、ラベルテープの延設方向と平行な方向とは、即ち、カッター刃50による切断方向に対して垂直な方向である。よって、カッター刃50がラベルテープを切断する際には、必ず、付着抑制剤層26を切断することになる。そのため、カッター刃50がこのラベルテープを切断する際には、パラフィン24がカッター刃50に付着することとなる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
【0048】
・上記実施形態においては、粘着剤層18はゴム系の粘着剤19を主原料として形成されているが、他の構成であってもよい。例えば、アクリル系、シリコン系等の他の感圧性粘着剤であってもよい。またエマルジョン等の感熱性接着剤であってもよい。第1の実施形態においては、マイクロカプセル20を混入させうるものであれば特に限定されず、第2の実施形態においては、付着抑制剤層26に接するように粘着剤層18を形成できる素材であれば、特に限定されない。
【0049】
・上記各実施形態において、剥離層12を形成する材料として、シリコンを含有する材料が例示されているが、他の材料であってもよい。剥離層12は、粘着剤層18と接触した場合であっても、容易に粘着剤層18から剥離することができる素材であればいいのであるから、粘着剤層18に対応して、樹脂、ワックス等を適宜選択すればよい。
【0050】
・上記各実施形態において、感熱発色剤層14を形成する発色剤としてロイコ染料が例示され、顕色剤としてヒドロキシジフェニルスルホン系化合物が例示されているが、感熱発色する構成であれば、係る組み合わせに限定されることはない。
【0051】
・また、上記各実施形態において、感熱発色剤層14を割愛してもよい。使用時に印刷し、切断刃を用いて切断をして使用する使用時印刷式のラベルテープであれば、本発明は適用できるのであるから、例えば、インクジェット式の印刷装置によって印刷するラベルテープに本発明を適用してもよい。
【0052】
・第1の実施形態においては、マイクロカプセル20の樹脂皮膜で形成された外殻22の内部にパラフィン24が封入されて形成されているが、他の構成であってもよい。例えば、パラフィン24に換えて、シリコン樹脂等を使用してもよい。付着抑制剤として機能すればよいのであるから、使用する粘着剤の種類に対応して、適宜選択すればよい。
【0053】
・同様に、外殻22についても付着抑制剤を内包することが可能であるとともに粘着剤19によって侵されない材料であって、かつ、ラベルテープ切断時にカッター刃50によって容易に破壊される材料で形成されていれば、特に限定されない。
【0054】
・第1の実施形態においては、ラベルテープは表面側から順に剥離層12、感熱発色剤層14、基材層16、粘着剤層18の順に積層されている。また、第2の実施形態においては、ラベルテープは表面側から順に剥離層12、感熱発色剤層14、基材層16、付着抑制剤層26、粘着剤層18の順に積層されている。しかし、他の構成であってもよい。例えば基材層16と粘着剤層18との間に、アンカー層が設けられていてもよいし、剥離層12と感熱発色剤層14との間に、保護層が設けられていてもよい。対象物に粘着させるための粘着剤19を備えるラベルテープであれば、特にラベルテープの構成を限定されることはない。
【0055】
・また、上記各実施形態は、剥離紙を必要としない型式のラベルテープ本発明を適応した例であるが、剥離紙を用いたラベルテープに適応してもよい。
【0056】
・第1の実施形態においては、付着抑制剤はマイクロカプセル20に封入されて粘着剤層18に混入されている。一方、第2の実施形態においては、付着抑制剤は付着抑制剤層26を形成している。しかし、本発明の実施形態は上記各実施形態の構成に限定されない。付着抑制剤を備え、ラベルテープを切断する際に、付着抑制剤が切断刃に付着する構造を有するのであれば、いかなる構成であってもよい。
【0057】
・また、上記各実施形態は、付着抑制剤としてパラフィンを使用しているが、シリコン、油脂等であってもよい。また、パラフィン、シリコン、油脂等を組み合わせて主成分としてもよい。粘着剤の付着効果が確認されている成分であれば特に限定されることはない。パラフィン、シリコン、油脂はいずれもかかる要件を満たすともに、汎用かつ安価な成分であるから入手が容易である。
【実施例1】
【0058】
次に、第1の実施形態に係るラベルテープを作成し、その効果を確認した。実施例について説明する。
【0059】
○マイクロカプセル
三菱製紙 サーモメモリー FS-9。流動性パラフィンをメラミン樹脂で形成した壁材の内部に封入して形成されている。このマイクロカプセルは水に分散されたスラリーとして供給される。
【0060】
○マイクロカプセル混入粘着剤の作成
アクリル系粘着剤(東亜合成 アンタロック HV-C3006)を攪拌しながら、スラリー状のマイクロカプセル(三菱製紙 サーモメモリー FS-9)を、粘着剤およびマイクロカプセルの乾燥質量に対するマイクロカプセルの乾燥質量が10質量%となるように混入する。このマイクロカプセルの粒径は、1〜4μmであることが、レーザー顕微鏡による目視観察により確認された。
【0061】
○粘着剤層の作成
剥離紙(TOMOEGAWA製 一般グレード)のうえに、上記マイクロカプセル混入粘着剤をのせ、YBA型ベーカーアプリケーター(ヨシミツ精機株式会社製)を用いて塗り拡げることにより、27μm厚となるように均等に塗工した。その後、塗工した粘着剤を105℃にて2分間乾燥させることにより、粘着剤層を作成した。
【0062】
○ラベルテープの作成
粘着剤層の上に、剥離層、感熱発色剤層、基材層を備える感熱発色紙(リコー 150LA−1)を、基材層が粘着剤層に触れる対応で積層し、加圧機を用いて、10kg/cm2で10分間加圧する。この加圧の結果、基材層に粘着剤層が粘着することにより、粘着剤層が感熱発色紙に転写される。最後に、粘着剤層から剥離紙を剥離することにより、剥離紙を必要としないタイプのラベルテープが作成される。
【0063】
○粘着力試験(ステンレス)
ラベルテープの粘着力をJIS Z 0237に従って測定した。結果を表1に示す。
【表1】

【0064】
○粘着力試験(ポリエチレン)
ラベルテープの粘着力をJIS Z 0237に準じて測定した。具体的には試験板として、高密度ポリエチレン板(新神戸電気株式会社製 コウベポリシートEL)を使用した以外はJIS Z 0237と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0065】
○粘着剤付着抑制効果の確認試験
130mmに形成した、上記ラベルテープを回転刃式の裁断機(KOKUYO DN−61N)によって150回裁断し、回転刃に付着した粘着剤量を測定することにより粘着剤付着抑制効果を確認した。詳細を以下に示す。
【0066】
あらかじめ酢酸エチルで洗浄した略円盤状の回転刃(KOKUYO DN−600A)の質量を測定した後、スライダーにセットする。裁断機本体に固定したラベルテープの上を回転刃がセットされた同スライダーを150mm/秒で通過させる態様で、ラベルテープを回転刃により裁断する。この裁断を150回繰り返した後、回転刃を取り外し、その質量を測定する。裁断を繰り返した後の回転刃の質量から、裁断前の回転刃の質量を減じて、付着した粘着剤の質量を算出した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0067】
更に、第1の実施形態に係るラベルテープを作成し、その効果を確認した。実施例2は実施例1のマイクロカプセルの種類を変更した実施例であり、ラベルテープの製造方法および試験方法については、実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
○マイクロカプセル
三菱製紙 サーモメモリー FP-5。流動性パラフィンをメラミン樹脂で形成した壁材の内部に封入して形成されている。このマイクロカプセルは粉体として供給される。
【0069】
上記粉体状のマイクロカプセル(三菱製紙 サーモメモリー FP-5)を、粘着剤およびマイクロカプセルの乾燥質量に対するマイクロカプセルの乾燥質量が10質量%となるように混入して使用した。このマイクロカプセルの粒径は、10〜40μm(中心粒径20μm)であることが、マイクロスコープによる目視観察により確認された。粘着力試験及び粘着剤付着抑制効果の確認試験の結果を表1に示す。
【0070】
[比較例]
粘着剤にマイクロカプセルを混入しないことを除いて、実施例1および実施例2と同様のラベルテープを作成し、同一の試験を行った。結果を表1に示す。
【0071】
[結果分析]
比較例と、実施例1および実施例2とを、粘着力についてまず比較する。実施例1においては、ステンレス板において97%、ポリエチレン板において89%と、比較例とほぼ同様の粘着力が得られている。一方、実施例2においては、ステンレス板において45%、ポリエチレン板において44%と、比較例に対して、半分以下の接着力しか得られていない。従って、接着力の低下を抑制する観点からは、マイクロカプセルの粒径は実施例2の下限である10μm以下であることが好ましい。また、実施例1のマイクロカプセルの分布範囲である1μm以上4μm以下であることが一層好ましい。
【0072】
なお、実施例2において粘着力が大きく低下した理由については、詳細な原因はわからないが、ラベルテープの製造工程における加圧により、マイクロカプセルが破壊されたためであると推察されている。
【0073】
次に、比較例と、実施例1および実施例2とを、粘着剤付着抑制効果について比較する。比較例における粘着剤の付着を100%として比較すると、実施例1においては45%の粘着剤が付着し、実施例2については85%の粘着剤が付着している。従っていずれにおいても、粘着剤の抑制効果がみられる。特に、粘着剤付着抑制効果の観点からは、マイクロカプセルの粒径は実施例2の下限である10μm以下であることが好ましい。また、実施例1のマイクロカプセルの分布範囲である1μm以上4μm以下であることが一層好ましい。
【実施例3】
【0074】
実施例1で用いた1μm以上4μm以下のマイクロカプセルを用いた感熱紙について更に詳細に検討し、その効果を確認した。具体的には、マイクロカプセルの混入量を変えるとともに、裁断回数を実施例1より増やすことにより、粘着剤付着抑制効果を一層詳細に確認した。
【0075】
なお、実施例3は、主として実施例1のマイクロカプセルの混入量を変更した実施例であり、マイクロカプセルの種類、ラベルテープの製造方法および試験方法については、実施例1と略同様であるので、相違する部分のみ詳説し、同様の部分の説明を省略する。
【0076】
○ラベルテープの作成
実施例1で使用した粉体状のマイクロカプセル(三菱製紙 サーモメモリー FS-9)を、粘着剤およびマイクロカプセルの乾燥質量に対するマイクロカプセルの乾燥質量が10,15,20質量%となるように混入して使用した。その他は実施例1と同様である。
【0077】
○粘着剤付着抑制効果の確認試験
110mmに形成した上記ラベルテープを、カッター付きラベルプリンター(SATO製MR410SV)を使用し裁断した。裁断回数が1000回、2000回、3000回において粘着剤付着量を測定することにより、粘着剤抑制効果を確認した。その他については実施例1と同様である。試験の結果を表2および図7,8に示す。
【表2】

【0078】
[比較例]
粘着剤にマイクロカプセルを混入しないことを除いて、実施例3と同様のラベルテープを作成し、同一の試験を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[結果分析]
図7は表2を図示したものである。表2および図7より、無混入の場合に比して、マイクロカプセルを10%以上混入すれば、粘着剤の付着が大きく抑制されていることがわかる。図8は、粘着剤の付着量の差を明示するために、図7の縦軸を拡大表示した図である。図8より、マイクロカプセルを15%以上混入すると、粘着剤の付着が10%混入の場合に比して一層抑制されていることがわかる。また、20%混入においては、粘着剤の付着は、測定限界以下である。すなわち、粘着剤の付着は、より一層抑制されている。
【0080】
従って、粘着剤付着を抑制する観点からは、マイクロカプセルの混入量は10質量%以上とすることが好ましく、15質量%以上とすることが一層好ましく、20質量%以上とすることがより一層好ましい。
【実施例4】
【0081】
実施例1で用いた1μm以上4μm以下のマイクロカプセルを用いた感熱紙について更に詳細に検討し、その効果を確認した。具体的には、マイクロカプセルの混入量と粘着力との関係を詳細に確認した。
【0082】
なお、実施例4は、主として実施例1のマイクロカプセルの混入量を変更した実施例であり、マイクロカプセルの種類、ラベルテープの製造方法および試験方法については、実施例1と略同様であるので、相違する部分のみ詳説し、同様の部分の説明を省略する。
【0083】
○ラベルテープの作成
実施例1で使用した粉体状のマイクロカプセル(三菱製紙 サーモメモリー FS-9)を、粘着剤およびマイクロカプセルの乾燥質量に対するマイクロカプセルの乾燥質量が1〜70質量%となるように混入して使用した。その他は実施例1と同様である。
【0084】
○粘着力試験
実施例1と同様の試験を行ない、マイクロカプセルの混入量と粘着力との関係を調べた。試験の結果を表3および図9に示す。
【0085】
[比較例]
粘着剤にマイクロカプセルを混入しないことを除いて、実施例4同様のラベルテープを作成し、同一の試験を行った。結果を表1に示す。
【表3】

【0086】
図9は表3を図示したものである。表3および図9より、も、マイクロカプセルの混入量が増加するのに伴って、いずれの粘着対象物に対してラベルテープの粘着力が低下することがわかる。但し、その低下の度合いは一様ではなく、ステンレスに対ししては、0%からおよそ25%まで一様に低下し、25%から30%まで停滞し、30%を超えると、急激に低下することが読み取れる。また、ポリエチレンに対ししても、0%から5%まで粘着力の低下が見られないことを除き、ほぼ同様の傾向が見られる。
【0087】
従って、粘着力の低下を抑制する観点からは、マイクロカプセルの混入量は30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることが一層好ましい。
【符号の説明】
【0088】
12 剥離層
14 感熱発色剤層
16 基材層
18 粘着剤層
19 粘着剤
20 マイクロカプセル
22 外殻
24 ワックス樹脂(付着抑制剤)
26 付着抑制剤層
50 カッター刃(切断刃)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に粘着させるための粘着剤を備え、使用時に印刷をするとともに切断刃を用いて切断をして使用する使用時印刷式のラベルテープであって、
前記切断刃に前記粘着剤が付着することを抑制するための付着抑制剤を更に備え、前記切断の際に、前記付着抑制剤が前記切断刃に塗布される構造を有するラベルテープ。
【請求項2】
前記付着抑制剤がマイクロカプセルに封入されるとともに該マイクロカプセルが前記粘着剤に混入されており、
前記切断の際に、前記マイクロカプセルが破壊されることにより封入されていた前記付着抑制剤が前記切断刃に塗布される請求項1に記載のラベルテープ。
【請求項3】
前記マイクロカプセルの粒径が、1μm以上10μm以下である請求項2に記載のラベルテープ。
【請求項4】
前記粘着剤に混入される前記マイクロカプセルの量の乾燥質量が、前記粘着剤および前記マイクロカプセルの乾燥質量に対して、10質量%以上30質量%以下である請求項2または3に記載のラベルテープ。
【請求項5】
前記付着抑制剤は、該ラベルテープの延設方向と同方向に延設された付着抑制剤層を形成する態様で備えられており、
前記切断の際に、前記切断刃が前記付着抑制剤層を切断することにより前記付着抑制剤が前記切断刃に塗布される請求項1に記載のラベルテープ。
【請求項6】
前記付着抑制剤がパラフィン、シリコン、油脂からなる群より選択される少なくとも1つの成分を主成分とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のラベルテープ。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−208161(P2012−208161A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71607(P2011−71607)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000205306)大阪シーリング印刷株式会社 (90)
【Fターム(参考)】