説明

ラマン・レーザ発振(Ramanlasing)用途における使用のためのフィルタ・ファイバおよびそれを製造するための技術

光導波路は、波長動作範囲にわたって、複数のストークス・シフトをサポートする有効面積と、波長動作範囲内での目標波長における負分散の値とをファイバにもたらすように構築された屈折率変化を有する。さらに、屈折率変化は、目標波長より長い波長における有限のLP01カットオフをファイバにもたらすようにさらに構築され、それにより、LP01カットオフ波長が、選択された曲げ直径に対して、目標波長におけるマクロな曲げ損失と目標波長より長い波長におけるマクロな曲げ損失との間に差違をもたらし、それにより、ラマン散乱が、目標波長より長い波長において防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、2009年5月11日に出願した米国仮特許出願第61/177,058号の優先利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、光ファイバのデバイスおよび方法に関し、詳細には、ラマン・レーザ発振用途における使用のための改良されたフィルタ・ファイバ、およびそのようなファイバを設計し、製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、ファイバ・レーザおよびファイバ増幅器は、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、他など、レーザ活性(laser−active)希土類イオンでドープされた光ファイバに基づく。光ファイバ内の誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering)は、これらの希土類ドープ・ファイバが動作しない波長領域において非線形利得をもたらすために使用されうる有用な効果である。誘導ラマン散乱は、レーザ・ビームがラマン活性ファイバ(Raman−active fiber)を通って伝播するときに発生し、「ストークス・シフト(Stokes shift)」として知られる、波長の予測可能な増加を結果としてもたらす。ある長さのラマン活性ファイバの入力端および出力端において、一連の波長特定反射器格子を設けることによって、入力波長を選択された目標波長に変換するために、多段の一連のストークス・シフトを生成することができる。
【0004】
図1は、従来技術による例示的システム20の図であり、誘導ラマン散乱が、1550nm領域における利得をもたらすエルビウム・ドープ・ファイバ増幅器(EDFA)をポンピングするための、1480nmにおける高パワー出力80を発生させるために使用される。図示のように、システム20は、モノリシックYb−ファイバ・レーザ(monolithic Yb−fiber laser)40と、多段ラマン共振器(cascaded Raman resonator)(CRR)60との2段を含む。
【0005】
レーザ40では、活性媒体が、1000nm〜1200nmの範囲内で動作する、ある長さの二重クラッド(double−clad)Ybドープ・ファイバ42によってもたらされる。高反射器格子HR1が、ファイバ入力端44に設けられ、出力カプラ格子OC1が、ファイバ出力端46に設けられる。ファイバ42の高反射器HR1と出力カプラOC1との間の部分は、レーザ空胴(laser cavity)48として機能する。ポンピング・エネルギーが、複数のポンプ・ダイオード50によってファイバ42に供給され、ポンプ・ダイオードは、テーパ化ファイバ束(tapered fiber bundle)TFB1でファイバ42に結合される。本例では、レーザ40は、出力52として波長1117nmにおけるシングル・モード放射を供給する。
【0006】
レーザ出力が、多段ラマン共振器60をポンピングするために使用される。共振器60は、ラマン活性ファイバ62を含む。複数の入力格子64が、ファイバ入力端66に設けられ、複数の出力格子68が、ファイバ出力端70に設けられる。複数の入力格子64が高反射器HR2〜HR6を含み、複数の出力格子68が高反射器HR7〜HR11および出力カプラOC2を含む。
【0007】
1175nmから1480nmまでの範囲の例示的波長が、入力高反射器HR2〜HR6、出力高反射器HR7〜HR11および出力カプラOC2に対して示される。図1に見られるように、入力格子64および出力格子68は、個々のストークス・シフトで分離されるネストされた一連の波長整合対(wavelength−matched pair)を含む。入力格子64、出力格子68およびラマン・ファイバ62は、ネストされた一連のラマン空胴72をもたらす。図1は、格子64および68を使用して構築された多段ラマン共振器60を示すが、類似の共振器が、融合ファイバ(fused−fiber)・カプラおよびWDMループ・ミラーなどの他の構造など、他の波長選択素子を使用して構築されてよいことは、よく知られている。
【0008】
Yb−ドープ・ファイバ・レーザ40の1117nmの出力52は、入力として共振器60に投入され、広範囲にわたる多段の一連のストークス・シフトをもたらし、1117nmの入力から1480nmのシステム出力80まで、波長の段階的増加を結果としてもたらす。それゆえ、出力80の1つの用途は、基本モードにおいて高パワーのシリカ・ベース・エルビウム・ドープ・ファイバ増幅器(EDFA)をポンピングするために使用されてよく、そのことが、1530〜1590nmの領域における利得をもたらす
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、システム20において、ある量のラマン散乱が、目標波長が達成された後でも発生し続ける。したがって、高パワーにおいて、光が次の不要な高次ストークス・シフトに転移されるため、かなりの量のポンピング・エネルギーが失われる可能性がある。この不要なストークス・シフトが、所望の出力波長で得ることができるパワーの量を制限する。さらに、CRRの出力80が、EDFAをポンピングするために使用されるならば、不要な高次のストークス・シフトは、潜在的に、EDFA内で増幅される信号波長に干渉する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来技術の上記その他の問題が、本発明によって対処され、本発明の一態様は、ラマン・レーザ発振用途における使用のためのフィルタ・ファイバおよびそのようなファイバを設計し、製造するための技術に関する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、光ファイバは、波長動作範囲にわたって、複数のストークス・シフトをサポートする有効面積と、波長動作範囲内での目標波長における負分散(negative dispersion)の値とをファイバにもたらすように構築された屈折率変化を有する光導波路(optical waveguide)を備える。さらに、屈折率変化は、目標波長より長い波長における有限のLP01カットオフをファイバにもたらすようにさらに構築され、それにより、LP01カットオフ波長が、選択された曲げ直径(bending diameter)に対して、目標波長におけるマクロな曲げ損失(macrobending loss)と目標波長より長い波長におけるマクロな曲げ損失との間に差違(disparity)をもたらし、それにより、ラマン散乱が、目標波長より長い波長において本質的に防止される。
【0012】
本発明の他の態様が、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術による多段ラマン共振器システムの図である。
【図2】本発明の一態様による、縮尺通りに描かれていない断面図である。
【図3】本発明の態様による例示的ファイバに対する、ほぼ縮尺通りに描かれた屈折率分布(refractive index profile)を示すグラフである。
【図3A】本発明の態様による例示的ファイバに対する、ほぼ縮尺通りに描かれた屈折率分布を示すグラフである。
【図3B】本発明の態様による例示的ファイバに対する、ほぼ縮尺通りに描かれた屈折率分布を示すグラフである。
【図3C】本発明の態様による例示的ファイバに対する、ほぼ縮尺通りに描かれた屈折率分布を示すグラフである。
【図4】LP01カットオフ波長と、結果としてもたらされる1480nmおよび1590nmにおけるマクロな曲げ損失との間の関係を示す、75mmおよび190mmのスプール径でそれぞれ評価された一対のグラフのうちの、75mmのスプール径に対するグラフである。
【図5】LP01カットオフ波長と、結果としてもたらされる1480nmおよび1590nmにおけるマクロな曲げ損失との間の関係を示す、75mmおよび190mmのスプール径でそれぞれ評価された一対のグラフのうちの、190mmのスプール径に対するグラフである。
【図6】1590nmにおいて一定のLP01カットオフ波長をもたらすW型屈折率分布(W−shaped index profile)における、コア半径およびコア屈折率の曲線(contour)を示すグラフである。
【図7】本発明によるプロトタイプのフィルタ・ファイバ設計における、減衰と波長との間の関係を示すグラフである。
【図8A】4つの例示的ファイバ設計に対する仕様を説明する、一連の表のうちの1つである。
【図8B】4つの例示的ファイバ設計に対する仕様を説明する、一連の表のうちの1つである。
【図8C】4つの例示的ファイバ設計に対する仕様を説明する、一連の表のうちの1つである。
【図9】本発明の種々の説明された態様による一般的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、高パワー・ラマン・レーザ発振用途における使用のためのフィルタ・ファイバ、およびそのようなファイバを設計し、製造するための技術について、本発明の種々の態様による具体的な例が説明される。
【0015】
上述の図1で示されるラマン・レーザ発振システム20が、本議論に対する背景(context)を提供するために使用される。具体的には、本議論のために、本明細書で説明される技術によって構築されたフィルタ・ファイバが、例えば、CRR 60におけるラマン・ファイバ62の代わりに使用されてよいことが企図される。その場合には、CRRは、適切な長さのフィルタ・ファイバを設けることにより、かつ多段の一連のストークス・シフトを作成するように構成された波長を有する、入力格子と出力格子との適切な複数組を、ファイバの入力端および出力端に設けることによって作製され、結果として、入力波長を所望の目標波長まで、段階的に変換する。
【0016】
しかし、今説明されたフィルタ・ファイバおよび技術は、他のラマン・レーザ発振のシステムおよび構成に対して実施されてよいことが理解されよう。例えば、本発明は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体を本明細書に組み込まれた、2009年5月11日に出願した米国仮特許出願第61/177,058号に記載されたレーザ発振システム、またはそれらの変形のうちのいずれかと共に実施されてよい。
【0017】
以下に詳細に議論されるように、本発明によるフィルタ・ファイバは、波長動作範囲にわたって、超連続体(super−continuum)を生成することなく複数のストークス・シフトを可能にするように構築される。そのようなフィルタ・ファイバは、目標波長を超える波長に対して有害なポンプ・エネルギーの消耗を防止し、結果として、高次ストークス・シフトを介するラマン散乱を防止するように構築される。
【0018】
これらの所望の特性は、以下の、すなわち、
(a)超連続体の生成を回避するための、その動作範囲にわたる正常分散(すなわち、負分散)、
(b)目標波長における小さな有効面積、すなわち、所望のパワー・レベルにおいて波長動作範囲にわたって複数のストークス・シフトを可能にするのに十分に小さい有効面積、
(c)100メートル以上の長さのファイバにおいて容認されうる低損失、および
(d)目標波長より長い波長における有限のLP01モード・カットオフ
の属性を含むようにフィルタ・ファイバを構築することによって達成され、それにより、LP01カットオフ波長は、選択された曲げ直径に対して、目標波長におけるマクロな曲げ損失と目標波長より長い波長におけるマクロな曲げ損失との間に差違をもたらす。
【0019】
本議論は、ps/(nm−km)の単位を有する分散パラメータDを利用することに留意されたい。Dの負の値が正常分散を構成し、Dの正の値が異常分散を構成する。異常分散領域(regime)では、変調不安定性(modulation instability)およびソリトン形成(soliton formation)などの現象が発生し、それらのいずれも、正常分散領域には存在しない。標準的シングル−モード・ファイバは、1300nm付近の波長でゼロ分散を、そしてゼロ分散の波長より長い波長で異常分散を有することに留意されたい。
【0020】
本発明の実施によれば、LP01カットオフは、目標波長を超えて1/2〜1ストークス周波数だけシフトする波長にあり、それにより、所与のスプール径(例えば、75mm、190mm)に対して、選択されたLP01モード・カットオフは、目標波長におけるマクロな曲げ損失(例えば、0.01dB/km未満)と第1のストークス・シフトにおけるマクロな曲げ損失(例えば、300dB/km超)との間の大きな差違を結果としてもたらす。
【0021】
本発明の一態様によれば、これらのファイバの属性(attribute)は、W型屈折率分布の使用を介して達成される。本発明の態様は、本明細書で説明されるように、他の屈折率分布形状および他の屈折率変化を使用して実施されうることが理解されよう。
【0022】
LP01モードが、選択されたカットオフ波長を超えて誘導され得ない、W型フィルタ・ファイバは、S−帯域エルビウム−ドープ・ファイバ増幅器(EDFA)用途のために使用されてきた。また、W型フィルタ・ファイバは、高パワーYbファイバ増幅器におけるラマン散乱を抑えるために使用されてきた。これらの初期の用途のいずれにおいても、広い波長範囲にわたるフィルタ・ファイバの分散は、重視すべき事項ではない。
【0023】
ラマン・レーザ発振用途は、離散した周波数におけるラマン利得を必要とする。しかし、十分に高いパワーが異常分散を有するファイバに投入されると、離散した周波数におけるラマン利得の代わりに、超連続体の生成が、変調不安定性によって発生する可能性がある。それゆえ、本発明によるファイバは、波長動作範囲にわたって正常分散を示すように構築される。
【0024】
所与のファイバにおけるラマン利得は、ポンプ・パワー強度と関係するので、ラマン利得は、ファイバのモーダル有効面積(modal effective area)に逆比例する。それゆえ、本発明によるファイバは、小さな有効面積を有するように構築される。しかし、ラマン・レーザにおけるファイバ長さは、およそ100メートル以上になる傾向があるので、ファイバのパワー損失もまた、重要な役割を果たす。
【0025】
したがって、本発明のフィルタ・ファイバは、小さな有効面積、低損失および正常分散を有するファイバを提供して、所望の目標波長へのラマン散乱を促進するために、初期のフィルタ・ファイバとはかなり異なって構築される。ファイバは、所望の目標波長より長い波長におけるラマン散乱を防ぐために、LP01モードのカットオフのフィルタリング特性を使用する。
【0026】
次に、上の属性を有するように構築されたフィルタ・ファイバを設計するための具体的な技術が説明される。本議論の目的のために、所望の目標波長が1480nmであり、1480nmの後の最初のストークス・シフトが1590nmであるものと仮定される。しかし、説明されたファイバおよび技術が、他の波長において使用されるように適合されてよいことは、本説明から明らかとなろう。
【0027】
図2は、本発明の第1の態様によるファイバ100の一例の、縮尺通り描かれていない断面を示す。ファイバ100は、複数の異なる同心領域、すなわち、
外部半径rおよび屈折率nを有するコア101と、
コア101を取り囲み、外部半径rおよび屈折率nを有する内側クラッド103と、
内側クラッド103を取り囲み、外部半径rおよび屈折率nを有する外側クラッド105と
を生成するように化学的にドープされた、シリカ(SiO)または他の適切な材料から作製された光導波路を備える。
【0028】
また、コアと内側クラッドとの境界102、および内側クラッドと外側クラッドとの境界104が、図2に示される。
【0029】
ファイバ領域のそれぞれは、外側クラッドの屈折率nを基準値として使用して決定される、個々の「屈折率差」Δn、すなわち、

外側クラッド105に対して、Δn=n−n=0、
コア101に対して、Δn=n−n
内側クラッド103に対して、Δn=n−n

を有する。
【0030】
図3は、本発明の態様による第1の例示的ファイバに対する、ほぼ縮尺通りに描かれた屈折率分布(RIP)120である。RIP 120は、ファイバ領域101、103、105に対して、個々の外部半径r−rおよび屈折率差Δn−Δnをグラフの形で示す。
【0031】
図3に示されるように、RIP 120は、従来から、W型分布と呼ばれる。W型分布は、コア101に対応し、比較的狭い外部半径rおよび比較的大きい正の屈折率差Δnを有する、中央突出(central spike)121を含む。中央突出121は、内側クラッド103に対応し、コアの外部半径rに比べて比較的大きい外部半径rを有し、(Δnに比べて)比較的小さい負の屈折率差Δnを有する、溝(trench)123で取り囲まれる。溝123は、外側クラッド105に対応し、外部半径rおよび屈折率差Δnを有する、比較的平らな外部領域125によって取り囲まれる。
【0032】
図3A〜図3Cは、本発明の他の態様によるファイバの第2および第3の例の、ほぼ縮尺通りに描かれた屈折率分布120’および120”を示す。RIP 120’およびRIP 120”は共に、所望のフィルタリング効果を達成する、中央突出121’/121”、溝123’/123”、および外側クラッド125’/125”を含み、r’/r”、r’/r”、r’/r”、Δn’/Δn”、Δn’/Δn”、およびΔn’/Δn”に対する個々の値を有するW型である。
【0033】
次に、所与の目標波長に対する適切な屈折率分布に到達するための技術が説明される。
【0034】
本明細書で説明されるラマン・フィルタ・ファイバ設計では、ポンプ・エネルギーが目標波長における利得をもたらし、目標波長を超える高次のストークス散乱で消耗されることはない。本議論の目的のために、所望の目標波長が1480nmであり、1480nmの後の最初のストークス・シフトが1590nmであることが仮定される。しかし、説明されたファイバおよび技術が、他の波長において使用されるように適合されてよいことは、本説明から明らかとなろう。
【0035】
本発明によるフィルタ・ファイバは、目標波長すなわち1480nmにおけるマクロな曲げ損失において、第1のストークス・シフト波長すなわち1590nmにおけるマクロな曲げ損失に比べてかなりの差違をもたらすように構築される。今説明されたラマン・フィルタリング用途は、この減衰の差違を利用する。
【0036】
使用時に、ラマン・ファイバは、通常、知られている直径を有するスプールに巻き付けられる。したがって、典型的なラマン・レーザ発振用途では、ラマン・ファイバは、知られている曲げ直径において、マクロな曲げ損失を受ける。
【0037】
図4は、75mmのスプール径で評価された、LP01カットオフ波長と、結果としてもたらされる1480nmおよび1590nmにおけるマクロな曲げ損失との間の関係を示すグラフ140であり、図5は、190mmのスプール径で評価された、LP01カットオフ波長と、結果としてもたらされる1480nmおよび1590nmにおけるマクロな曲げ損失との間の関係を示すグラフ150である。
【0038】
図4に示されるグラフ140は、LP01カットオフ波長が1540nmと1610nmとの間にあるとき、75mmの直径のスプールに巻き付けられたラマン・ファイバは、1480nmにおいて0.01dB/km未満のマクロな曲げ損失を有し、1590nmにおいて100dB/kmより大きいマクロな曲げ損失を有することが期待されることを示す。同様に、図5に示されるグラフ150は、LP01カットオフ波長が1510nmと1590nmとの間にあるとき、190mmの直径のスプールに巻き付けられたラマン・ファイバは、1480nmにおいて0.01dB/km未満のマクロな曲げ損失を有し、1590nmにおいて100dB/kmより大きいマクロな曲げ損失を有することが期待されることを示す。目標波長とストークス波長との間の減衰において描かれた10の桁の差が、高次のラマン散乱を防ぐために、著しいフィルタリング効果をもたらす。本発明の実施によれば、次のストークス次数におけるパワーは、前のストークス次数より小さいかまたは前のストークス次数に匹敵し、出力波長より20dB低い。
【0039】
図6は、1590nmにおいて一定のLP01カットオフ波長をもたらす、図3A〜図3Cに示されるようなW型屈折率分布における、コア半径およびコア屈折率の曲線を示すグラフ160である。これらのW型設計では、コアは、−0.008のΔn屈折率差および12μmの外部半径を有する溝領域で取り囲まれる。溝領域は、非ドープのシリカでさらに取り囲まれる。また、図6は、1590nmのLP01カットオフ波長を得るファイバ設計に対する、右垂直軸上に示された目盛りを有する、1480nmにおける色分散(chromatic dispersion)を示す。また、1480nmにおける有効面積が示される。この数値は、上の属性を持つためのそのようなW型屈折率分布における、コア半径およびコア屈折率に関する設計空間を特定する。これらの設計は、1590nmにストークス波長を有する、1480nmの目標波長に対して行われているが、類似の設計が、他の目標波長における用途に対して行われてよい。75mmのスプール直径に対して、これらの設計は、1480nmにおいて0.01dB/km未満、および1590nmにおいて300dB/km超のマクロな曲げ損失を示す。
【0040】
他の溝半径および溝屈折率が、W型フィルタ・ファイバ設計のために使用されてよい。一般に、より小さい外部溝半径およびより小さい溝の屈折率の大きさが、有効面積およびマクロな曲げ損失の両方を増加させる。以下の表は、同じ1590nmのLP01カットオフを維持しながら、異なる溝屈折率および溝外部半径を有する設計における特性の比較を示す。190mmのより大きなスプール直径を使用することによって、ラマン・フィルタ・ファイバは、望ましい負分散および1.48μmにおける低い曲げ損失を維持しながら、より大きい有効面積を有することができる。また、全体としてファイバの減衰を低減する、より小さいコア屈折率を有する設計を選択することも望ましい。
【0041】
図7は、本発明によるプロトタイプのフィルタ・ファイバ設計における、減衰と波長との間の関係を示すグラフ170である。多数の異なる外側クラッド直径、すなわち、120μm(曲線171)、121μm(曲線172)、122μm(曲線173)、125μm(曲線174)、130μm(曲線175)および140μm(曲線176)に対して、実験データが生成された。これらのファイバは、同じプレフォーム(preform)から引かれたので、それらのコア直径はクラッド直径に比例し、例えば140μmのクラッド直径のファイバにおけるコア直径は、120μmのクラッド直径のファイバにおけるコア直径より約16.7%大きい。曲線171〜曲線176は、説明されたフィルタリング効果を示し、すなわち、フィルタ・ファイバは、カットオフ波長の下で低い減衰を有し、カットオフ波長の上で高い減衰を有する。さらに、曲線171〜曲線176は、外側クラッド直径が、所望のカットオフ波長を有するフィルタ・ファイバの設計において考慮されるべき、付加的なパラメータであることを示す。例えば、外側クラッド直径を修正することが、設計工程の終盤に向けて、カットオフ波長を微調整するために利用されてよい。
【0042】
図8A〜図8Cは、図3、図3A、図3Bおよび図3Cに対して上で説明された4つの例示的ファイバに対する仕様および測定された性能を説明する、一連の表180〜182である。図8Aにおいて説明される表180は、ファイバ1(図3)、ファイバ2(図3A)、ファイバ3(図3B)およびファイバ4(図3C)に対して、以下の詳細事項、すなわち、

(a)コア半径r(μm)、
(b)コア屈折率差Δn
(c)溝半径r(μm)
(d)溝の屈折率差Δn
(e)LP01カットオフ波長(nm)、
(f)1480nmにおける分散(ps/nm/km)、
(g)1480nmにおける有効面積Aeff(μm

を説明する。
【0043】
図8Bにおいて説明される表181は、75mmの曲げ半径に対して、1480nmおよび1590nmにおける4つのファイバに対する曲げ損失を説明する。図8Cにおいて説明される表182は、190mmの曲げ半径に対して、1480nmおよび1590nmにおける4つのファイバに対する曲げ損失を説明する。表181および表182に示されるように、説明されたファイバ設計は、目標波長1480nmにおける曲げ損失と、目標波長を1ストークス・シフトだけ超える、1590nmにおける曲げ損失とにおいて、著しい差を結果としてもたらす。
【0044】
図9は、本明細書で説明された本発明の種々の態様によるフィルタ・ファイバを設計するための、一般的な方法200を説明する流れ図である。方法は、以下の構成要素を含む、
箱201:波長動作範囲にわたって、複数のストークス・シフトをサポートする有効面積と、波長動作範囲内での目標波長における負分散の値とをファイバにもたらすように構築された屈折率変化を有する光導波路を設ける
箱202:目標波長より長い波長における有限のLP01カットオフをファイバにもたらすようにファイバを構築し、それにより、LP01カットオフ波長が、選択された曲げ直径に対して、目標波長におけるマクロな曲げ損失と、目標波長より長い波長におけるマクロな曲げ損失との間に、差違をもたらす
箱203:それにより、ラマン散乱が、目標波長より長い波長において防止される。
【0045】
上の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にするであろう詳細を含むが、説明は本質的に例示的であり、本発明の多くの改変形態および変更形態が、これらの教示の恩恵を受けるそれらの当業者には明らかとなることを認識されたい。したがって、本明細書における本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ定義され、特許請求の範囲は、従来技術によって容認される限り広く解釈されることが企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバであって、
波長動作範囲にわたって、複数のストークス・シフトをサポートする有効面積と、前記波長動作範囲内での目標波長における負分散の値とを前記ファイバに提供するように構築された屈折率変化を有する光導波路を備え、
前記屈折率変化が、前記目標波長より長い波長における有限のLP01カットオフを前記ファイバに提供するようにさらに構築され、それにより、前記LP01カットオフ波長が、選択された曲げ直径に対して、前記目標波長におけるマクロな曲げ損失と前記目標波長より長い波長におけるマクロな曲げ損失との間に差違をもたらし、
それにより、ラマン散乱が、前記目標波長より長い波長において防止される、光ファイバ。
【請求項2】
前記選択された曲げ直径に対して、前記目標波長における前記マクロな曲げ損失が0.01dB/km未満であり、前記目標波長を超える1のストークス・シフトにおける前記マクロな曲げ損失が300dB/kmより大きい、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記選択された曲げ直径が、前記フィルタ・ファイバが巻き付けられるファイバ・スプールの曲げ直径に相当する、請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記光導波路が、コアと、前記コアを取り囲む内側クラッドと、前記内側クラッドを取り囲む外側クラッドとを含む複数の同心領域を含み、前記ファイバの領域のそれぞれが、外部半径と屈折率差とを有し、
前記屈折率の分布が、前記ファイバ・コアに対応する中央突起および前記内側クラッドに対応する溝を有し、前記中央突起が正の屈折率差を有し、前記溝が負の屈折率差を有し、
前記外側クラッドが、外部半径r、屈折率nおよび屈折率差Δn=0を有し、
前記コアが、外部半径r、屈折率nおよび屈折率差Δn=n−nを有し、
前記内側クラッドが、外部半径r、屈折率nおよび屈折率差Δn=n−nを有する、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記目標波長が1480nmであり、前記光ファイバが、1590nmにおける第1のストークス・シフトおよび1590nmにおけるLP01カットオフ波長を有し、
±10%、
=2.0μm
Δn=0.01308
=12μm
Δn=−0.008
である、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記目標波長が1480nmであり、前記光ファイバが、1590nmにおける第1のストークス・シフトおよび1590nmにおけるLP01カットオフ波長を有し、
±10%、
=2.5μm
Δn=0.00917
=6μm
Δn=−0.008
である、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記目標波長が1480nmであり、前記光ファイバが、1590nmにおける第1のストークス・シフトおよび1590nmにおけるLP01カットオフ波長を有し、
±10%、
=2.0μm
Δn=0.01098
=12μm
Δn=−0.004
である、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記目標波長が1480nmであり、前記光ファイバが、1590nmにおける第1のストークス・シフトおよび1590nmにおけるLP01カットオフ波長を有し、
±10%、
=1.8μm
Δn=0.01529
=8μm
Δn=−0.008
である、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項9】
フィルタ・ファイバを製造する方法であって、
波長動作範囲にわたって、複数のストークス・シフトをサポートする有効面積と、前記波長動作範囲内での目標波長における負分散の値とを前記ファイバに提供するように構築された屈折率変化を有する光導波路を設け、
前記目標波長より長い波長における有限のLP01カットオフを前記ファイバに提供する屈折率変化を有するように前記ファイバを構築するとを含み、それにより、前記LP01カットオフ波長が、選択された曲げ直径に対して、前記目標波長におけるマクロな曲げ損失と前記目標波長より長い波長におけるマクロな曲げ損失との間に差違をもたらし、
それにより、ラマン散乱が、前記目標波長より長い波長において防止される、方法。
【請求項10】
前記選択された曲げ直径が、前記フィルタ・ファイバが巻き付けられるファイバ・スプールの曲げ直径に相当する、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−527014(P2012−527014A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510918(P2012−510918)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034321
【国際公開番号】WO2010/132405
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509094034)オーエフエス ファイテル,エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】