説明

ラミネーターロール

【課題】 ラミネート法において、基板上にシリコンゴムの残渣が付着しないようなラミネーターロールを提供する。
【解決手段】 第1及び第2のラミネーターロール30,40は、それぞれ、所定の熱源を備えた第1及び第2の回転軸31,41と、所定の弾性を有した第1及び第2のシリコンゴム32,42を備えている。さらに、第1及び第2のシリコンゴム32,42のそれぞれの表面には、その長手方向の全体にわたって、第1及び第2のフッ素樹脂膜70,80がコーティングされている。第1及び第2のフッ素樹脂膜70,80は、好ましくは、テトラフルオロエチレンの重合体であるポリテトラフルオロエチレンからなり、約3μmの膜厚保を以って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の光学的コーティングを行う装置に関し、特に、ラミネート法において用いられるラミネーターロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラのEVF(Electrical View Finder)等に用いられる表示装置として、カラー表示に対応した液晶表示装置の需要が益々高まっている。このカラー表示は、液晶表示装置の各表示画素に所定のカラーフィルタが形成されることにより実現される。従来より、カラーフィルタを形成する方法の1つとして、ラミネート法が多用されている。次に、ラミネート法について図面を参照して説明する。
【0003】
図2は、従来例に係るラミネート法を説明する図であり、基板10を表面側からみた上面図である。また、図3は図1のX−X線に沿った断面図である。図4は図1のY−Y線に沿った断面図である。図5は、ラミネート法を経た後、図2の基板10上に、さらに平坦化膜が積層された場合の基板10の断面図である。
【0004】
図2及び図3に示すように、例えばガラスからなり、液晶表示装置となるパネル領域が複数配置された基板10の表面上に、ラミネート用フィルム20が部分的に引き出されて載置されている。ラミネート用フィルム20を構成する樹脂フィルム21には、基板10と対向する側の面に、カラーフィルタとなる有機材料22が塗布されている。
【0005】
ここで、ラミネート用フィルム20は、基板10の進行方向と直交する線に沿った幅のうち、基板10の両端部の幅Bを除く幅Aを有している。基板10の表面における両端部の幅Bの領域では、カラーフィルタとなる有機材料22の層をパターニングする際のアライメントマーク(例えば銅やアルミニウム等の金属からなる)が形成されている。そのため、この幅Bの領域は、上記アライメントマークを露出させるためにカラーフィルタが形成されない領域、即ち有機材料22が転写されない領域となる。
【0006】
そして、基板10と、基板10上に載置されたラミネート用フィルム20を挟むようにして、基板10の表面及び裏面に、それぞれ、第1及び第2のラミネーターロール130,140が当接される。第1及び第2のラミネーターロール130,140は、それぞれ、コイル等の熱源を有した第1及び第2の回転軸31,41と、第1及び第2の回転軸31,41に沿って形成され所定の弾性を有した第1及び第2のシリコンゴム32,42を備えている。
【0007】
第1及び第2のラミネーターロール130,140が回転すると共に、上記熱源による所定の表面温度(約90℃〜140)を以って基板10に対して圧着されると、基板10が所定の進行方向に移動しながら、ラミネート用フィルム20の有機材料22が基板10の表面上に転写される。樹脂フィルム21は、全ての有機材料22の転写後に剥離されるか、もしくは有機材料22の転写と併行して剥離される。その後、例えばフォトリソグラフィによる露光及び現像により、基板10の表面に転写された有機材料22がパターニングされ、カラーフィルタが形成される。このラミネート法によるカラーフィルタの形成は、必要な色の数だけ繰り返される。
【0008】
なお、本願に関連する技術文献としては、以下の特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開2002−001820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記ラミネート法では、図4に示すように、第1のラミネーターロール130をラミネート用フィルム20に圧着する際に、基板10の表面における両端部の幅Bを有する領域には、ラミネーターロール130の第1のシリコンゴム32が基板10の表面に直接圧着される。そのため、上記幅Bの領域では、第1のシリコンゴム32が残渣50となって基板10の表面上に付着していた。
【0010】
この残渣50は、実際には目視されにくいが、図5に示すように、後に基板10の表面上に平坦化膜60の材料やレジスト材料等を塗布する際に、それらの材料を基板10の表面上に付着させないマスクとして機能してしまう。そのため、基板10に積層される平坦化膜60等が所定の領域に形成されなくなり、また、それらの層の平坦性が低下するなどの成膜不良が生じるという問題があった。
【0011】
上記問題への対処としては、第1のシリコンゴム32の残渣50をブラッシング等により除去する方法が考えられるが、この方法では、ブラッシングにより基板10の表面に損傷が生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明は、上述のようなラミネート法において、基板上にシリコンゴムの残渣が付着しないようなラミネーターロールを提供する。
【0013】
本発明のラミネーターロールは、樹脂フィルムに塗布された被転写材料を基板の表面に転写するように所定の表面温度を以って樹脂フィルムを基板に圧着する第1のラミネーターロールと、基板を挟むように第1のラミネーターロールと対向して配置され、基板の裏面に当接される第2のラミネーターロールとからなる1対のラミネーターロールであって、以下の特徴を有する。
【0014】
即ち、第1のラミネーターロールは、所定の熱源を有した第1の回転軸と、第1の回転軸に沿って形成された第1のシリコンゴムと、第1のシリコンゴムの表面に形成された第1のフッ素樹脂膜と、を備える。ここで、第1のフッ素樹脂膜は、例えばポリテトラフルオロエチレンである。また、第1のフッ素樹脂膜は、第1のシリコンゴムの表面の全面に形成されていることが好ましい。
【0015】
さらに上記構成において、第2のラミネーターロールは、所定の熱源を有した第2の回転軸と、第2の回転軸に沿って形成された第2のシリコンゴムと、第2のシリコンゴムの表面に形成された第2のフッ素樹脂膜と、を備えてもよい。ここで、第2のフッ素樹脂膜は、例えばポリテトラフルオロエチレンである。また、第2のフッ素樹脂膜は、第2のシリコンゴムの表面の全面に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1のラミネーターロールが基板の表面上に圧着された際に、その第1のラミネーターロールを構成する第1のシリコンゴムからなる残渣が基板上に付着しない。また、第1のラミネーターロールを基板へ圧着する際に、その圧力が基板の表面の全面に極力均等に加わるため、被転写材料が良好な状態で転写される。結果として、さらに基板の表面上に積層される層の平坦性が増すなど、その層の成膜状態が従来例に比して良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態に係るラミネーターロールについて図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るラミネーターロールを示す斜視図である。なお、図1では、図2乃至図5に示したものと同一の構成要素については同一の符号を付して説明を行うものとする。また、図1では、1対のラミネーターロール、即ち第1及び第2のラミネーターロール30,40を同一の図面を用いて示している。なお、これらの第1及び第2のラミネーターロール30,40は、図2乃至図5に示した第1及び第2のラミネーターロール130,140と同様の配置関係(基板10に対する)を有するものとする。
【0018】
図1に示すように、第1のラミネーターロール30は、例えばコイル等の熱源を有した第1の回転軸31を備えている。第1の回転軸31の周りには、その長手方向に沿って、所定の弾性を有した第1のシリコンゴム32が例えば数センチメートルの厚さを以って形成されている。第1のシリコンゴム32の表面は、第1の回転軸31の表面と平行になるようにして、平坦に形成されている。
【0019】
そして、第1のシリコンゴム32の表面の全面には、基板10の表面に比して摩擦係数が小さく、かつ所定の耐熱性を有した第1のフッ素樹脂膜70がコーティングされている。第1のフッ素樹脂膜70は、特に限定されないが、テトラフルオロエチレンの重合体であるポリテトラフルオロエチレン(例えばデュポン社のフッ素樹脂「テフロン(デュポン社の登録商標)」)からなることが好ましい。
【0020】
この第1のフッ素樹脂膜70の弾性は、第1のシリコンゴム32の弾性に比して低い。そのため、第1のフッ素樹脂膜70は、その表面が第1のシリコンゴム32の弾性を完全に失わないように調査された膜厚として、約1μm〜20μmの膜厚でコーティングされている。さらにいえば、第1のフッ素樹脂膜70は約3μmの膜厚でコーティングされていることが好ましい。
【0021】
また、第1のフッ素樹脂膜70は、第1のシリコンゴム32の表面の長手方向の全体、即ち、基板10の表面の両端部で露出する幅Bの領域のみならず、ラミネート用フィルム20と接する幅Aの領域においてもコーティングされていることが好ましい。
【0022】
上述したように、第1のラミネーターロール30の第1のシリコンゴムの表面が第1のフッ素樹脂膜70に覆われているため、基板10の表面の両端部の幅Bの領域に第1のシリコンゴム32が接しても、そのシリコンゴムが残渣として基板10の表面上に付着しない。
【0023】
さらに、第1のフッ素樹脂膜70が基板10の中央部の幅Aの領域を含めた全面に接するため、ラミネート用フィルム20を介して第1のラミネーターロール30を基板10へ圧着する際に、その圧力が基板10の表面の全面に均等に加わり易くなり、被転写材料である有機材料22が良好な状態で基板10の表面上に転写される。
【0024】
結果として、上記転写された有機材料22を含む基板10の表面上に、さらに平坦化膜やレジスト層等が積層された場合、その平坦化膜等の平坦性が増すなど、それらの層の成膜状態が従来例に比して良好となる。
【0025】
さらに、本実施形態では、上記構成に加えて、基板10の裏面に当接される第2のラミネーターロール40も、第1のラミネーターロール30と同様の構成を有していることが好ましい。即ち、第2のラミネーターロール40は、第1の回転軸31と同様の第2の回転軸41と、第1のシリコンゴム32と同様の第2の回転軸42とを備え、さらに、第2のシリコンゴム42の表面に、第1のフッ素樹脂膜70と同様の第2のフッ素樹脂膜80がコーティングされることが好ましい。
【0026】
これにより、第1及び第2のラミネーターロール30,40の圧着と回転により基板10を所定の進行方向に移動させる際に、基板10の表面側と裏面側における第1及び第2のラミネーターロール30,40との摩擦力の差異が小さくなる。即ち、第1及び第2のラミネーターロール30,40の回転による基板10の移動をより安定的に行うことができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、ラミネート用フィルム20の樹脂フィルム21に塗布された被転写材料は、例えばカラーフィルタに用いられる有機材料22としたが、本発明はこれに限定されない。即ち、被転写材料は、樹脂フィルム21に塗布されるものであり、かつ上記ラミネート法により基板10上に転写されるものであれば、上記以外の材料が樹脂フィルム21に塗布されてもよい。例えば、図示しないが、液晶表示装置の基板上に積層されるブラックマトリクスや、柱剤等となる材料が、被転写材料として樹脂フィルム21に塗布され、その材料が基板10上に転写されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るラミネーターロールを示す斜視図である。
【図2】従来例に係るラミネート法を説明する基板の表面側からみた上面図である。
【図3】図2のX−X線に沿った断面図である。
【図4】図2のY−Y線に沿った断面図である。
【図5】図2の基板上に平坦化膜が積層された場合の基板の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 基板 20 ラミネート用フィルム
21 樹脂フィルム 22 有機材料
30,130 第1のラミネーターロール 31 第1の回転軸
32 第1のシリコンゴム 40,140 第2のラミネーターロール
41 第2の回転軸 42 第2のシリコンゴム
50 残渣 60 平坦化膜
70 第1のフッ素樹脂膜 80 第2のフッ素樹脂膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムに塗布された被転写材料を基板の表面に転写するように所定の表面温度を以って前記樹脂フィルムを前記基板に圧着する第1のラミネーターロールと、前記基板を挟むように前記第1のラミネーターロールと対向して配置され、前記基板の裏面に当接される第2のラミネーターロールとからなる1対のラミネーターロールであって、
前記第1のラミネーターロールは、所定の熱源を有した第1の回転軸と、前記第1の回転軸に沿って形成された第1のシリコンゴムと、前記第1のシリコンゴムの表面に形成された第1のフッ素樹脂膜と、を備えることを特徴とするラミネーターロール。
【請求項2】
前記第1のフッ素樹脂膜は、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1記載のラミネーターロール。
【請求項3】
前記第1のフッ素樹脂膜は、前記第1のシリコンゴムの表面の全面に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラミネーターロール。
【請求項4】
前記第2のラミネーターロールは、所定の熱源を有した第2の回転軸と、前記第2の回転軸に沿って形成された第2のシリコンゴムと、前記第2のシリコンゴムの表面に形成された第2のフッ素樹脂膜と、を備えることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載のラミネーターロール。
【請求項5】
前記第2のフッ素樹脂膜は、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項4記載のラミネーターロール。
【請求項6】
前記第2のフッ素樹脂膜は、前記第2のシリコンゴムの表面の全面に形成されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のラミネーターロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−57056(P2007−57056A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245476(P2005−245476)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(304053854)三洋エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】