説明

ラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物

【課題】 耐レトルト性、耐ブロッキング性、基材密着性、耐傷つき性、作業性に優れ、かつオーバーコートニスを塗布された場合にも十分な艶消し効果の得られるラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物を得る。
【解決手段】 (A)数平均分子量1000〜6000のエポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂、(C)数平均分子量5000〜30000、ガラス転移点20〜100℃の飽和型ポリエステル樹脂、(D)平均粒子径0.1〜10μmである親水性のシリカ及び(E)強酸化合物を含有するラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物、及び、該インキ層上にオーバーコート組成物を塗布したラミネートフィルム被覆包装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶などの包装材を被覆するラミネートフィルム用マットインキ組成物及びこの組成物を用いたラミネートフィルム被覆包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製缶メーカーでは缶のデザインを多様化させ、他社との差別化を図っている。この一環としてグラビア印刷したフィルムを缶にラミネートする新型缶が確立されている。この缶に使用されるグラビアインキは全て裏刷りであり、耐高温熱水(レトルト)性、傷つき性などの問題から表刷りインキは実用化されていない。
【0003】
通常、ラミネート缶には、印刷されたフィルムを缶にラミネートした後、表面保護の目的でオーバーコート層が設けられる。意匠性の観点で、オーバーコート組成物中に艶消し剤を含有させることも知られている(例えば、特許文献1段落0045-0048参照)。しかしながら、この場合、全面均一な艶消しの意匠性となり、任意の部分に艶消しを施すというより意匠性を増したデザインは得られない。
【0004】
もし、表刷りを可能とした場合、フィルムの艶消しによる高級感の付与が可能となり、新たな意匠性が確立できる。
【0005】
これを確立するための課題としては、(1)高温熱水処理工程における耐レトルト性があること、(2)フィルムが巻き取られた際に裏刷りされた加飾インキとブロッキングしないこと、(3)プラスティックフィルムとの基材密着性を有すること、(4)製缶工程、特にラミネート後、焼付け処理がされるまでの間で被膜に傷が発生しないこと、(5)艶消し剤として二酸化ケイ素などを使用した際に作業性を低下させないことなどが挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−183572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、耐レトルト性、耐ブロッキング性、基材密着性、傷つき性、作業性に優れ、かつオーバーコートニスを塗布された場合にも十分な艶消し効果の得られるラミネート缶フィルム用表刷り部分マットインキ組成物及びこれにオーバーコート剤を積層した被覆包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の数平均分子量を有するエポキシ樹脂、高エーテル化アミノ樹脂、飽和型ポリエステル樹脂、二酸化珪素、強酸化合物を特定の配合比率で調整することにより、優れた耐レトルト性、ブロッキング性、基材密着性、傷つき性、作業性を有し且つ十分な艶消し感が得られるマットインキとしての樹脂組成及び積層膜を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(A)数平均分子量1000〜6000のエポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂、(C)数平均分子量5000〜30000、ガラス転移温度20〜100℃の飽和型ポリエステル樹脂、(D)平均粒子径0.1〜10μmである親水性のシリカ、及び、(E)スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物から選ばれる1種以上の強酸化合物を含有することを特徴とするラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明はプラスティックフィルム層、インキ層、及び、オーバーコート層をこの順に積層したプラスティックフィルム被覆包装材であって、該インキ層が、(A)数平均分子量1000〜6000のエポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂、(C)数平均分子量5000〜30000、ガラス転移温度20〜100℃の飽和型ポリエステル樹脂、(D)平均粒子径0.1〜10μmである親水性シリカ、及び、(E)スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物から選ばれる1種以上の強酸化合物を含有し、該オーバーコート層が、エポキシ樹脂(a)、アミノ樹脂(b)、シリコーン変性共重合物(c)を含有することを特徴とするプラスティックフィルム被覆包装材を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐レトルト性を有し且つ高い艶消し感を有する上、良好な流動性をもつラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物が得られる。このインキを使用したフィルムラミネート缶はグラビア印刷でデザインを鮮明に印刷することができ、且つ部分的な艶消しを可能とする新たな意匠性が確立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明のラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物について以下に詳細に説明する。
【0013】
本発明のラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物は、
(A)数平均分子量1000〜6000のエポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂、(C)数平均分子量5000〜30000、ガラス転移温度20〜100℃の飽和型ポリエステル樹脂、(D)平均粒子径0.1〜10μmである親水性シリカ、及び、(E)スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物から選ばれる1種以上の強酸化合物を含有することを特徴としている。
【0014】
各構成成分の好ましい範囲は、(A)エポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂、(C)ポリエステル樹脂、(D)親水性シリカ、及び、(E)強酸化合物を必須成分として含有し、合計100質量部中に(A)エポキシ樹脂:38〜78質量部、(B)高エーテル化アミノ樹脂:1〜20質量部、(C)ポリエステル樹脂:0.5〜10質量部、(D)親水性シリカ:17〜37質量部、(E)強酸化合物:0.01〜10質量部の範囲である。
【0015】
(A)エポキシ樹脂
(A)エポキシ樹脂は、数平均分子量1000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、特にビスフェノールA型が好適に使用される。
【0016】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じて酸またはアルカリ触媒(燐酸系またはアンモニウム塩系触媒等)の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであってもよい。
【0017】
上記ビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン等を挙げることができ、なかでもビスフェノールAが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0018】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製の、JER1004、同1007、同1009、同1010;旭化成エポキシ(株)製の、AER6097、同6099及び大日本インキ化学工業(株)のエピクロン7050、同9050等を挙げることができる。
【0019】
上記エポキシ樹脂の数平均分子量が1000未満の場合は、高エーテル化アミノ樹脂との反応性が劣り、十分な架橋が得られず高温熱水処理時にレトルト性不良、傷つき性不良を呈する場合がある。また、同様の理由からインキを塗工されたフィルムを巻き取った際に裏刷りの加飾インキとブロッキングが発生する危険もある。また、数平均分子量が6000を超える場合は溶液粘度が高くなり、塗工性、作業性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0020】
(B)高エーテル化アミノ樹脂
(B)高エーテル化アミノ樹脂としてはメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものが適しており、中でもこのエーテル化度が高いものが好適に使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。アミノ樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をアルキルエーテル化したメチロール化メラミン樹脂が好適に使用できる。
【0021】
上記アミノ樹脂の市販品としては、三井サイテック(株)社製サイメル235、サイメル300、サイメル303、サイメル370、サイメル325等を挙げることができる。
【0022】
(C)ポリエステル樹脂
(C)ポリエステル樹脂としては、数平均分子量が5000〜30000、ガラス転移温度が20〜100℃の飽和型ポリエステル樹脂が用いられる。好ましくは数平均分子量が15000〜20000、ガラス転移温度が40〜80℃の範囲である。
【0023】
上記ポリエステル樹脂の数平均分子量が5000未満のものを用いた場合には基材との密着性が低下し、30000を超えるものを使用した場合には(A)エポキシ樹脂との相溶性が低下し、塗料化が困難になる場合がある。また、ガラス転移点が20℃未満のものを使用した場合には裏刷り加飾インキとのブロッキングが発生する危険があり、100℃を超えた場合には加工性が低下する場合がある。
【0024】
上記(C)ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものであり、少なくとも一方の成分として三官能以上の成分を用いればよい。多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの1種以上のニ塩基酸及び、これらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
【0025】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA等のニ価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することが出来る。
【0026】
本発明において用いられる(C)ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、東洋紡績(株)社製のバイロン200、同240、同245、同270、同280、同290、同296、同600、バイロンGK150、同250、同360、同640、同880、ユニチカ(株)社製エリーテルUE−3200、同3210、同3215、同3620、同9200、同9800、東亞合成(株)社製アロンメルトPES−360、同316等が挙げられる。
【0027】
(D)親水性シリカ
(D)親水性シリカとしては、平均粒子径0.1〜10μmで親水性である二酸化珪素が適している。中でも平均粒子径が1〜5μmのものが好適である。平均粒子径が0.1μm未満のもの又は疎水性若しくは表面処理のあるシリカは艶消し調の塗膜が得られにくい。また、平均粒子径が10μmを超えると塗膜の外観が損なわれる場合がある。
【0028】
上記(D)親水性シリカの市販品としては、富士シリシア(株)社製サイリシア250、同320、同350、同420、同430、同530、同550、同710、同770等が挙げられる。
【0029】
(E)強酸化合物
(E)強酸化合物を使用する理由は以下の通りである。即ち、上述した(A)〜(C)の樹脂組成物を非極性溶媒にて溶解し、この溶液に(D)親水性シリカを添加させた場合、シリカ同士が強固な水素結合で凝集するため、構造粘性が極端に高くなり、塗工性、作業適性を著しく低下させる。仮に極性溶媒を使用する若しくは、(D)親水性シリカ表面を有機物処理したものを使用するなどし、(D)親水性シリカの凝集力を抑制した場合には、皮膜となった際に十分な艶消し感が得られなくなる。以上の理由から溶液状態では構造粘性を抑制し、皮膜化した際にこの抑制効果を低下させる設計が理想である。この構造粘性コントロール剤として(E)強酸化合物の使用が挙げられる。(E)強酸化合物は溶液中でシリカの水素結合を破断させる効果がある一方で加熱した際に(A)エポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂の硬化触媒として作用する為、水素結合を破断させる作用を一時的に失い、皮膜状態では(E)親水性シリカが適度に凝集し、十分な艶消し感が得られる。以上の理由から、(E)強酸化合物の使用により、溶液状態と乾燥皮膜で(D)親水性シリカの凝集をコントロールすることを可能とする。
【0030】
前述した(E)強酸化合物としてはスルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が適している。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。この市販品としてはp−トルエンスルホン酸アルコール混合物として、テイカ(株)社製テイカキュアAC−700、クメンスルホン酸のアルコール混合物として、テイカ(株)社製テイカキュアAC−800、ドデシルベンゼンスルホン酸のアルコール混合物として、米国キングインダストリーズ社製ネイキュア5076、テイカ(株)社製テイカキュアAC−400S、ジノニルナフタレンスルホン酸のアルコール混合物として、米国キングインダストリーズ社製ネイキュア1051、テイカ(株)社製テイカキュアAC−901、ジノニルナフタレンジスルホン酸のアルコール混合物として、米国キングインダストリーズ社製ネイキュア155等が挙げられる。
【0031】
本発明のラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物は、通常の使用形態として、フィルム上に表刷りされた後、その面にオーバーコート剤が塗布される。次に、本発明のラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物層上に積層するに適したオーバーコート剤について説明する。
【0032】
(オーバーコート剤)
本発明のラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物の印刷層上に塗布されるオーバーコート剤としてはエポキシ樹脂(a)、アミノ樹脂(b)、シリコーン変性共重合物(c)を含有し、例えば100質量部中に
エポキシ樹脂(a) : 38〜82
アミノ樹脂 (b) : 1〜20
シリコーン変性共重合物(c) :0.5〜10
の組成から成るオーバーコート剤を好適に使用することができる。
【0033】
上記オーバーコート剤に使用されるエポキシ樹脂(a)としては、(A)エポキシ樹脂と同様のものが好適に使用することができる。アミノ樹脂(b)としては、前述した(B)高エーテル化アミノ樹脂と同様のものが好適に使用することができる。シリコーン変性共重合物(c)はフィルムを缶にラミネートした際、滑性、傷つき性等を付与する為に用いるが、シリコーン成分が脱離した場合には、フィルムが巻き取られた際に接触面に付着し、接着剤等の塗工阻害が発生する場合がある。このため、先に述べたオーバーコート樹脂組成物であるエポキシ樹脂(a)、アミノ樹脂(b)の少なくとも1種と反応し得る官能基を有するシリコーン化合物であることが好ましい。この官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アクリロイル基、カルボキシル基、メタクリロイル基などを挙げることができる。この市販品としては日本ユニカー社製シルウェットFZ−3720、同FZ−319、東亜合成社製サイマックUS−270、同US−350、同US−352、同US−380、同US−413、同US−450などが挙げられる。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、60質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル化型メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分10質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸:ネイキュア5076(ノンブロックタイプ 楠本化成社製)固形分0.3質量部、飽和共重合ポリエステル樹脂:バイロン240(数平均分子量15000、Tg60℃東洋紡績社製)固形分5質量部を配合・混合させ、実施例1のマットインキ組成物を得た。
【0035】
(実施例2)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、60質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル化型メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分10質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分17質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸:ネイキュア5076(ノンブロックタイプ 楠本化成社製)固形分0.3質量部、飽和共重合ポリエステル樹脂:バイロン240(数平均分子量15000、Tg60℃東洋紡績社製)固形分5質量部を配合・混合させ、実施例2のマットインキ組成物を得た。
【0036】
(実施例3)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、60質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1004(数平均分子量1400、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル化型メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分10質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸:ネイキュア5076(ノンブロックタイプ 楠本化成社製)固形分0.3質量部、飽和共重合ポリエステル樹脂:バイロン240(数平均分子量15000、Tg60℃東洋紡績社製)固形分5質量部を配合・混合させ、実施例3のマットインキ組成物を得た。
【0037】
(実施例4)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、60質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル化型メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分20質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸:ネイキュア5076(ノンブロックタイプ 楠本化成社製)固形分0.3質量部、飽和共重合ポリエステル樹脂:バイロン240(数平均分子量15000、Tg60℃東洋紡績社製)固形分5質量部を配合・混合させ、実施例4のマットインキ組成物を得た。
【0038】
(実施例5)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、60質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル型化メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分10質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分10質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸:ネイキュア5076(ノンブロックタイプ 楠本化成社製)固形分0.3質量部、飽和共重合ポリエステル樹脂:バイロン240(数平均分子量15000、Tg60℃東洋紡績社製)固形分5質量部を配合・混合させ、実施例5のマットインキ組成物を得た。
【0039】
(比較例1)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、60質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル型化メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分10質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸:ネイキュア5076(ノンブロックタイプ 楠本化成社製)固形分0.3質量部を配合・混合させ、比較例1のマットインキ組成物を得た。
【0040】
(比較例2)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、60質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル型化メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分10質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分30質量部、飽和共重合ポリエステル樹脂:バイロン240(数平均分子量15000、Tg60℃東洋紡績社製)固形分5質量部を配合・混合させ、比較例2のマットインキ組成物を得た。
【0041】
(比較例3)
酢酸プロピル/メチルエチルケトン=37/63の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中60部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル型化メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分10質量部を混合し、樹脂ベースを得る。この樹脂ベースに親水性シリカ:サイリシア350(平均粒子径4μm、pH7.5 比表面積300m2/g、吸油量310ml/100g富士シリシア社製)固形分30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸:ネイキュア5076(ノンブロックタイプ 楠本化成社製)固形分0.3質量部、飽和共重合ポリエステル樹脂:バイロン500(数平均分子量23000、Tg4℃東洋紡績社製)固形分5質量部を配合・混合させ、比較例3のマットインキ組成物を得た。
【0042】
(比較例4)
酢酸エチル/イソプロピルアルコール=40/60の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、アクリル樹脂:アクリディックWCL-1419(数平均分子量16000、Tg55℃ 大日本インキ社製)を65質量部、硝化綿:LIG1/8(平均重合度45〜55、窒素分10.7〜11.4 旭化成社製)を3質量部、疎水性シリカ:サイロホービック200(平均粒子径4μm、pH8、吸油量230ml/100g、有機珪素化合物処理 富士シリシア社製)を25質量部、ポリエチレン:AF31(数平均分子量3500、融点114℃、平均粒子径7μm、BASF社製)3質量部を配合・混合させ、比較例4のマットインキ組成物を得た。
【0043】
(評価サンプルの作製)
(1)上記実施例1〜5、比較例1〜4のマットインキ組成物を、片面コロナ放電処理したPETフィルム(厚さ12μm)のコロナ処理無しの面に乾燥膜厚0.8〜1.2μmの厚みになるようにバーコーターにて塗布し、ヘアドライヤーにて数秒乾燥した。
(2)オーバーコート剤としては、シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン/ブチルセロソルブ=40/30/15/15の質量比からなる混合溶剤中へ固形分の合計が100質量部中、77質量部の割合でエポキシ樹脂:JER1007(数平均分子量2900、ジャパンエポキシレジン社製)を混合溶解する。これに高エーテル化アミノ樹脂:サイメル303(完全アルキル化型メチル化メラミン樹脂三井サイテック社製)固形分16質量部、シリコーン変性共重合物:サイマックXSG-30A(東亜合成社製)固形分2.3質量部を混合して得た。
(3)上記組成のオーバーコート剤を、マットインキ組成物層上に乾燥膜厚1.0〜1.4μmの厚みになるようにバーコーターにて塗布した。
(4)115℃−8秒乾燥させた後、コロナ放電処理面にポリウレタン樹脂系インキをバーコーターにて塗布した。
(5)その上にポリエステル/イソシアネート系接着剤を4.4〜4.8μmの厚みになるようにバーコーターで塗布し、115℃−8秒乾燥させ、サンプルフィルムを得た。
(6)このフィルムを金属板に180℃−3.6m/minでラミネートした後、215℃/80秒間焼付け処理を行い、テストピースを得た。次いで以下に示す評価試験方法に従って測定した。
【0044】
(評価試験方法)
(1)光沢値
日本電色社製グロスメーターVG2000にて測定した60°光沢の値を用いた。(JIS Z8741)
(2)流動特性
流動性の比較としてB型粘度計によるTI値を用いた。(JIS Z3284)
(3)耐レトルト性
富士製缶社製クラッチレトルトにて130℃/30分間の高温熱水処理を行い、白化性、密着性を評価した。
(耐レトルト性の評価基準)
◎:白化が全く認められなかったもの
○:一部に軽度の白化が認められたもの
△:広範囲に白化が認められたもの
×:全体的に白化が認められたもの
(4)密着性
上記レトルト処理前後のサンプルを碁盤目セロハンテープ法にて剥離試験を行った。(JIS G3312)
(5)傷付き性
紙テープを使用した傷つき摩耗の評価としてRCA摩耗試験機を用いて傷が下へ到達するまでの回数を試験した。
(6)ブロッキング性
8cm×8cmにカットしたサンプルフィルムのインキ塗工面を張り合わせ、0.3MPaの圧力で40℃の雰囲気に72時間保持した際に張り合わせたフィルム同士を剥離速度1000mm/minで、180°の角度でピールした際の剥離強度を測定した。
【0045】
(評価結果)
評価結果を表1、2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物により、耐レトルト性を有し且つ高い艶消し感を有するラミネート缶が得られるため、缶に新たな意匠性を付与できデザインの自由度を増すことが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)数平均分子量1000〜6000のエポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂、(C)数平均分子量5000〜30000、ガラス転移温度20〜100℃の飽和型ポリエステル樹脂、(D)平均粒子径0.1〜10μmである親水性のシリカ、及び、(E)スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物から選ばれる1種以上の強酸化合物を含有することを特徴とするラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、(B)アミノ樹脂、(C)ポリエステル樹脂、(D)シリカ、(E)強酸化合物の合計を100質量部としたときに、
(A)エポキシ樹脂 : 38〜78質量部
(B)アミノ樹脂 : 1〜20質量部
(C)ポリエステル樹脂 : 0.5〜10質量部
(D)シリカ : 17〜37質量部
(E)強酸化合物 : 0.01〜10質量部
の組成から成る請求項1に記載のラミネートフィルム用表刷りマットインキ組成物。
【請求項3】
プラスティックフィルム層、インキ層、及び、オーバーコート層をこの順に積層したプラスティックフィルム被覆包装材であって、該インキ層が、(A)数平均分子量1000〜6000のエポキシ樹脂、(B)高エーテル化アミノ樹脂、(C)数平均分子量5000〜30000、ガラス転移温度20〜100℃の飽和型ポリエステル樹脂、(D)平均粒子径0.1〜10μmである親水性シリカ、及び、(E)スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物から選ばれる1種以上の強酸化合物を含有し、該オーバーコート層が、エポキシ樹脂(a)、アミノ樹脂(b)、シリコーン変性共重合物(c)を含有することを特徴とするプラスティックフィルム被覆包装材。

【公開番号】特開2009−161710(P2009−161710A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3089(P2008−3089)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】