説明

ラミネート方法及びラミネート装置

【課題】太陽電池モジュール等の被加工物をラミネート加工する際の加熱時間を従来よりも短縮できるラミネート方法を提供する。
【解決手段】押圧部材112により仕切られた上チャンバ113と下チャンバ121とを有し、その下チャンバ121に設けられた熱板122上に被加工物10を載置し、前記熱板122により加熱した前記被加工物10を、前記下チャンバ121を真空とし前記上チャンバ113に大気を導入し前記熱板122と前記押圧部材112とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用するラミネート方法であって、真空引き工程および加圧工程からなるラミネート工程において、下チャンバ121内の真空度を適正に悪化させる構成としたラミネート方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュール等の被加工物をラミネート加工するラミネート方法及びそのラミネート方法を使用するラミネート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールを製造するためのラミネート装置としては、特許文献1(特開平9−141743)が知られている。従来のラミネート装置は、下方に向かって膨張自在なダイヤフラムを備える上チャンバと、ヒータ盤を備えた下チャンバとを有するものである。搬送ベルト等で搬送された被加工物をヒータ盤の上に載せ、上チャンバを下チャンバに重ね合わせて密閉し、上下のチャンバ内を真空ポンプで減圧する。また、ヒータ盤を加熱し、搬送ベルトを通して被加工物を加熱する。上下のチャンバ内が所定の真空度に達したら、上チャンバ内に大気を導入する。すると、ダイヤフラムは下方に膨らみ、被加工物をヒータ盤に強く押しつける。被加工物はヒータ盤により加熱され、被加工物内の充填材が溶融して架橋反応を起こし、透明になって硬化する。
【0003】
ラミネート装置は、例えばプロセスの開始から1分もしくは2分以内に100〜200Pa以下に到達することを真空性能の仕様とすることが一般的である。下チャンバはプロセスの開始から終了まで可能な限り真空度を良くすることで、気泡発生を防止できるとしていたので、真空ポンプの性能や、チャンバの密閉度によっては、ワークは100Pa以下の高真空度にさらされていた。
【0004】
下チャンバを高真空に保つことは、気泡発生防止に効果があるかもしれないが、逆に真空度がよくなればなるほど、真空断熱効果により熱板からワークへの熱伝達速度は低下し、ワークの加熱時間を長くする必要が生じる。現行のプロセスおよび装置は、熱伝達低下の問題点は軽視されており、到達真空度が一定以下にならないように制御しておらず、また機能も有していない。
また、ワークによってはガラスの破損防止のため、プレス圧力を一定に制御したい場合がある。すなわち、熱伝達を向上させるため、下チャンバの真空度(圧力)を悪化させるような制御をプレス工程で行った場合、同時に上チャンバの圧力も同程度悪化させ、同じ加圧力(上下チャンバの差圧)を維持したい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−141743
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事実から考えられたもので、太陽電池モジュール等の被加工物をラミネート加工する際の加熱時間を従来よりも短縮できるラミネート方法及びそのラミネート方法を使用したラミネート装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための第1発明のラミネート方法は、押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を載置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用するラミネート方法であって、真空引き工程および加圧工程からなるラミネート工程において、下チャンバ内の真空度を適正に悪化させることを特徴としている。
第1発明によれば、ラミネート加工における加熱時間短縮によるラミネート加工時間の短縮が可能である。また真空ポンプ交換時に真空引き性能が向上したにもかかわらず、真空断熱効果が強くなったことで、熱板からの熱伝達が悪化しラミネート加工時間が長くなるような問題が発生しない。
【0008】
第2発明のラミネート方法は、第1発明において、前記ラミネート工程の中でプレス工程のみ前記下チャンバの真空度を適正に悪化させることを特徴としている。
第2発明によれば、真空度の悪化により気泡発生の原因となりうる真空引き工程における真空度を悪化させることなく、ラミネート加工における加熱時間短縮によるラミネート加工時間の短縮が可能である。
【0009】
第3発明のラミネート方法は、第1発明または第2発明において、前記ラミネート工程の中でプレス工程の前記下チャンバの真空度を徐々に悪化させながら、同時に上チャンバの真空度を下チャンバの圧力増加分と同じ量悪化させることを特徴としている。
第3発明によれば、加圧圧力の安定化によりワーク品質の向上および安定化を実現することができる。例えば基板ガラス、充填材、及びカバーガラスを積層構造とした薄膜式の太陽電池モジュールの場合は以下のような問題が発生しやすい。加圧圧力が安定化しない場合に過度の圧力がかかることでカバーガラスの端部に応力が集中し、できあがり厚みが不安定になったり、端部まで充填材がいきとどかなかったり、しいてはガラスの破損につながる。これらの問題を第3発明のラミネート方法により防止することができる。
【0010】
第4発明のラミネート装置は、第1発明から第3発明のいずれかのラミネート方法を使用したことを特徴としている。
第4発明のラミネート装置によれば、第1発明から第3発明のいずれかのラミネート方法を使用しているので、被加工物である太陽電池モジュールのラミネート加工における加熱時間を短縮化することが可能であり、ラミネート装置の生産能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】被加工物としての太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【図2】ラミネート装置の全体の構成を示す図である。
【図3】ラミネート装置のラミネート部の側断面図である。
【図4】ラミネート装置のラミネート加工時におけるラミネート部の側断面図である。
【図5】真空度悪化手段1の説明図である。
【図6】真空度悪化手段2の説明図である。
【図7】本発明の実施例1のラミネート方法と従来のラミネート方法によるラミネート加工中の被加工物の温度変化の相違の説明図である。
【図8】本発明の実施例1のラミネート方法と従来のラミネート方法によるラミネート加工中の被加工物の温度変化の相違の説明図である。
【図9】本発明の実施例2のラミネート方法と従来のラミネート方法によるラミネート加工中の被加工物の温度変化の相違の説明図である。
【図10】本発明の実施例2のラミネート方法と従来のラミネート方法によるラミネート加工中の被加工物の温度変化の相違の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0013】
ここでは、まず、ラミネート装置でラミネートされる被加工物10について説明する。
【0014】
図1は、被加工物10として結晶系セルを使用した太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、図示のように、透明なカバーガラス11と裏面材12との間に、充填材13、14を介してストリング15を挟み込んだ構成を有する。裏面材12にはポリエチレン樹脂等の材料が使用される。また、充填材13、14にはEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が使用される。ストリング15は、電極16、17の間に結晶系セルとしての太陽電池セル18をリード線19を介して接続した構成である。
【0015】
また、被加工物10としては、上述した太陽電池モジュールだけではなく、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池モジュールを対象とすることもできる。この薄膜式太陽電池モジュールの代表的な構造例では、透明なカバーガラスに、予め、透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。このような薄膜式太陽電池モジュールは、カバーガラス(基板ガラス)を下向きに配置し、カバーガラス上の発電素子の上に充填材を被せる。更に、充填材の上に裏面材を被せた構造になっている。このような状態で真空加熱ラミネートすることにより薄膜式太陽電池モジュールの構成部材が接着される。すなわち、薄膜式太陽電池モジュールは、上述した太陽電池モジュールの結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけである。薄膜式太陽電池モジュールの基本的な封止構造は上述した太陽電池モジュールと同じである。
【0016】
尚本発明のラミネート方法は、上記の発電素子を蒸着した基板ガラスに充填材を被せ、さらにその上にカバーガラスを被せた構成の薄膜式太陽電池モジュールにも使用することができる。
【0017】
図2は、本実施形態に係るラミネート装置100の全体の構成を示す図である。ラミネート装置100は、上ケース110と、下ケース120と、被加工物10を搬送するための搬送ベルト130とを有する。搬送ベルト130は、被加工物10を上ケース110と下ケース120との間に搬送する。ラミネート装置100には、ラミネート前の被加工物10をラミネート装置100に搬送するための搬入コンベア200が設けられている。また、ラミネート装置100には、ラミネート後の被加工物10をラミネート装置100から搬出するための搬出コンベア300が設けられている。搬入コンベア200と搬出コンベア300とは、ラミネート装置に連設されている。被加工物10は、搬入コンベア200から搬送ベルト130に受け渡され、搬送ベルト130から搬出コンベア300に受け渡される。
【0018】
ラミネート装置100には、シリンダ及びピストンロッド等で構成される図示しない昇降装置が設けられている。昇降装置は、上ケース110を水平状態に維持したまま下ケース120に対して昇降させることができる。昇降装置が上ケース110を下降させることで、上ケース110と下ケース120との内部空間を密閉させることができる。
【0019】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100のラミネート部101の構成についてより具体的に説明する。図3は、ラミネート装置100において被加工物10をラミネート加工する前のラミネート部101の側断面図である。図4は、ラミネート加工時におけるラミネート部101の側断面図である。
【0020】
上ケース110には、下方向に開口された空間が形成されている。この空間には、空間を水平に仕切るようにダイヤフラム112が設けられている。ダイヤフラム112は、シリコーン系のゴム等の耐熱性のあるゴムにより成形されている。後述するように、ダイヤフラム112は、被加工物10を押圧する押圧部材として機能し、ラミネートを行う。上ケース110内には、ダイヤフラム112によって仕切られた空間(上チャンバ113)が形成される。
【0021】
また、上ケース110の上面には、上チャンバ113と連通する吸排気口114が設けられている。上チャンバ113では、吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空ポンプにより真空引きして真空状態にしたり、上チャンバ113内に大気を導入したりすることができる。
【0022】
下ケース120には、上方向に開口された空間(下チャンバ121)が形成されている。この空間には、熱板122(パネル状のヒータ)が設けられている。熱板122は、下ケース120の底面に立設された支持部材によって、水平状態を保つように支持されている。この場合に、熱板122は、その表面が下チャンバ121の開口面とほぼ同一高さになるように支持される。
【0023】
また、下ケース120の下面には、下チャンバ121と連通する吸排気口123が設けられている。下チャンバ121では、吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真真空ポンプにより空引きして真空状態にしたり、下チャンバ121内に大気を導入したりすることができる。
【0024】
上ケース110と下ケース120との間であって、熱板122の上方には、搬送ベルト130が移動自在に設けられている。搬送ベルト130は、図2の搬入コンベア200からラミネート前の被加工物10を受け取ってラミネート部101の中央位置、すなわち熱板122の中央部に正確に搬送する。また、搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を図2の搬出コンベア300に受け渡す。
【0025】
また、上ケース110と下ケース120との間であって、搬送ベルト130の上方には、剥離シート140が設けられている。剥離シート140は、被加工物10の充填材13、14(図1参照)が溶融したときに、充填材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。
【0026】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100によるラミネート工程についてより具体的に説明する。まず、図3に示すように、搬送ベルト130は、被加工物10をラミネート部101の中央位置に搬送する。なお、このとき、下チャンバ121や熱板122に配設された上下動可能な図示しない保持ピン等を上昇させることで、被加工物10を熱板122上から離間した位置に保持しておいてもよい。
【0027】
次に、昇降装置は、上ケース110を下降させる。上ケース110を下降させることにより、図4に示すように、上ケース110と下ケース120との内部空間は、密閉される。すなわち、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保つことができる。
【0028】
次に、ラミネート装置100は、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空ポンプにより真空引きを行う。同様に、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空ポンプにより真空引きを行う(以下真空工程という)。下チャンバ121の真空引きにより、被加工物10内に含まれている気泡は、被加工物10外に送出される。なお、上下動可能な図示しない保持ピンにより被加工物10を、熱板122上から離間した位置に保持していた場合は、真空工程の略後半から、保持ピンを下降して被加工物10を熱板122上に載置する。
被加工物10は、後述する温度制御装置の温度制御により加熱された熱板122によって加熱されるので、被加工物10の内部に含まれる充填材13、14も加熱される。
【0029】
次に、ラミネート装置100は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じることで、ダイヤフラム112が膨張する。従って、ダイヤフラム112は、図4に示すように下方に押し出される(以下加圧工程という)。被加工物10は、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板122とで挟圧され、加熱により溶融された充填材13、14によって各構成部材が接着される。
【0030】
このようにラミネート工程が終了した後、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置は、上ケース110を上昇させる。上ケース110を上昇させることにより、図3に示すように、搬送ベルト130を移動させることができるようになる。搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を搬出コンベア300に受け渡す。
【0031】
ラミネート加工は、上記のように行われるが、ラミネート加工における真空引工程および加圧工程において真空度を良くしすぎると、図2から図4の熱板からの熱が被加工物10に伝達しにくくなり、加熱時間は長くなり、ラミネート加工時間が長くなる原因になる。
【0032】
ラミネート加工の際の被加工物の加熱時間を短縮し、ラミネート加工時間を短縮するラミネート方法について説明する。
【0033】
本発明のラミネート方法では、ラミネート加工中の下チャンバの真空度を悪化(真空度の数値を増加させる)させ、熱板から被加工物への熱伝達を良好にし、ラミネート加工時間を短縮させる。このためラミネート加工中の真空度の悪化は、以下のように行う。
【0034】
<真空度悪化手段1>
図5により真空度悪化手段1について説明する。図中V1、V2は、従来の真空引きに使用される切替バルブである。真空ポンプにて真空引きする際に下チャンバの吸排気口側の配管にバルブV3が設けられている。このバルブV3は、大気への経路を有したリークバルブである。このバルブを必要に応じて開閉することにより真空度を悪化することが可能である。また図5のV3としては、真空引き流路の断面積を減じるようなバルブを使用することができる。このようなバルブを使用することにより下チャンバ内の真空度の数値が一定値以下にならないようにすることが可能である。
ここで真空度の数値が小さくなることは真空度が良くなることを示すものとする。このような真空度の制御は、電気的な制御を使用しても良いが、機械的な制御バルブのみでも実現可能である。
【0035】
<真空度悪化手段2>
図6により真空度悪化手段2について説明する。図中VE1、VE2は、図5のV1とV2に相当し真空引きに使用される切替バルブである。真空ポンプにて真空引きする際に下チャンバの吸排気口側の配管にバルブVE3が設けられている。バルブVE3は、真空度悪化手段1と同様の機能と作用を有している。
本手段2の場合は、ラミネート加工中の真空引きを悪化させるだけでなく、加圧工程のいかなる段階においても上チャンバと下チャンバの真空度を任意に悪化させること、および加圧工程における上チャンバの押圧部材(ダイヤフタム)による加圧圧力(上下チャンバの差圧)の一定制御も行う。したがって本手段2では、これらのバルブVE1、VE2、VE3は、全て電気制御信号により動作させる。このような真空度の悪化手段2は、真空度悪化手段1と組み合わせることにより更に高度な真空度制御が可能となる。
【0036】
<真空度悪化手段を応用したラミネート方法>
上記真空度悪化手段1及び2を使用し、ラミネート加工工程において以下の様に真空度制御を行う。
真空引工程において、上記真空度悪化手段1を使用し、例えば300Pa±50Pa程度の値で真空度を一定に保持する。この真空度の値は、図1の充填材(封止材)13、14の種類、カバーガラス11など透明基板の面積などによって最適値に設定される。これにより、真空引工程における図1の太陽電池モジュールの構成部材の加熱が促進される。
ラミネート加工工程が真空引工程からダイヤフラム112などの押圧部材による加圧工程に移行すると、一般的には上チャンバのみの圧力を悪化(例えば大気開放)させ、下チャンバとの差圧で被加工物としての太陽電池モジュール10に対して加圧加工を行うが、加圧して一定時間後に下チャンバの真空度のみを適正値(例えば5kPa)に悪化させ、加圧加工時の熱伝達を向上させる。
【0037】
被加工物によっては、加圧圧力を一定に保つ必要があるため、同時に上チャンバの真空度も悪化させる。例えば加圧圧力を30kPaで一定に保持したい場合、加圧時下チャンバ圧力は300Paから5kPaに変化させるのと同時に、上チャンバはプレス開始時30kPaから35kPaに変化させる。加圧加工時により熱伝達を高めるために下チャンバ真空度を段階的に悪化させたい場合は、同じように同様に上チャンバ真空度も制御する。
【実施例1】
【0038】
本発明の真空度悪化手段1または2を使用したラミネート方法により、図1の構成の太陽電池モジュールをラミネート加工する実施例1について説明する。
【0039】
本実施例の場合は、図1の構成の太陽電池モジュールの構成部材を図2のラミネート装置に搬入し、上ケースを下降させて下ケースに重ね合わせて閉合させた後、下チャンバの真空度を真空引工程の開始時から悪化させている。つまり下チャンバの到達真空度の設定を従来の100Pa程度から悪化させる。このような本実施例のラミネート方法を使用した場合と、従来のラミネート方法を使用した場合の、被加工物の温度変化を被加工物の中央部X部と端部Y部とで測定した結果を図7と図8に示す。
【0040】
被測定物の中央部X部の温度変化を示す図7と被測定物の端Y部の温度変化を示す図8ともに、従来のラミネート方法よりも140℃の到達時間は、従来のラミネート方法の到達時間10分に対して約半分の5分で140℃に到達している。約5分早く所定温度に到達していることが分かる。従って本実施例のラミネート方法を使用することにより、ラミネート加工時間は従来よりも5分程度短縮される。通常のラミネート加工時間は、約15分から20分であり、本発明のラミネート方法によりラミネート時間は、従来に比較して20%から30%短縮されることが分かる。
【0041】
本実施例における真空引工程における下チャンバの真空度の悪化の程度は、ラミート加工した製品の周辺部分に気泡が残存しない程度まで真空度を悪化することが可能である。
【実施例2】
【0042】
本発明の真空度悪化手段2によるラミネート方法を使用し、図1の構成の太陽電池モジュールをラミネート加工する実施例1について説明する。
【0043】
図1の構成の太陽電池モジュールの構成部材を図2のラミネート装置に搬入し、上ケースを下降させて下ケースに重ね合わせて閉合させた後、以下のように真空引工程と加圧工程を行う。
1)下チャンバと上チャンバは真空引きを開始し真空度を約100Paに到達させる(図9と図10において6分後)。
2)上チャンバの真空度を15kPaに悪化させて押圧部材であるダイヤフラムを下方に膨張させて加圧工程が開始する。
3)加圧工程が開始30秒後に下チャンバの真空度を2kPaに悪化させて加圧工程を続行する。
【0044】
このような本発明のラミネート方法を使用した場合と、従来のラミネート方法を使用した場合の、被加工物の温度変化を被加工物の中央部X部と端部Y部とで測定した結果を図9と図10に示す。
【0045】
被測定物の中央部X部の温度変化を示す図9と被測定物の端Y部の温度変化を示す図10ともに、従来のラミネート方法よりも、被加工物の温度が150℃に到達する時間は4分から5分早いことが分かる。従って本発明のラミネート方法を使用することにより、ラミネート加工時間は従来よりも4分から5分程度短縮される。通常のラミネート加工時間は、約15分から20分であり、本発明のラミネート方法によりラミネート時間は、従来に比較して20から30%短縮されることが分かる。
【0046】
本実施例のラミネート方法を使用することにより、ラミネート加工中の熱板から被加工物への熱伝達が良好になり、ラミネート加工時間を短縮することができ、太陽電池モジュールの生産効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 被加工物(太陽電池モジュール)
11 カバーガラス
12 裏面材
13、14 充填材
100 ラミネート装置
101 ラミネート部
110 上ケース
112 ダイヤフラム
113 上チャンバ
120 下ケース
121 下チャンバ
122 熱板
V1、V2 バルブ
V3 リークバルブ
VE1、VE2 バルブ
VE3 リークバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を載置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用するラミネート方法であって、
真空引き工程および加圧工程からなるラミネート工程おいて、下チャンバ内の真空度を適正に悪化させるラミネート方法。
【請求項2】
前記ラミネート工程の中で真空引き工程もしくはプレス工程のみ前記下チャンバの真空度を適正に悪化させることを特徴とする請求項1に記載のラミネート方法。
【請求項3】
前記ラミネート工程の中でプレス工程の前記下チャンバの真空度を徐々に悪化させながら、同時に上チャンバの真空度を下チャンバの圧力増加分と同じ量悪化させることを特徴とする請求項1または請求項2のいれかに記載のラミネート方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のラミネート方法を使用したことを特徴とするラミネート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−71387(P2013−71387A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213625(P2011−213625)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】