説明

ラミネート用フィルム

【課題】TD方向への収縮が小さく、製袋した際に袋にたわみが発生しにくいラミネート用フィルムを提供する。
【解決手段】成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体および成分(B)のエチレン−α−オレフィン共重合体を含有する層を有する単層または多層のフィルムであって、該層に含まれる成分(A)の含有量が20〜50重量%であり、成分(B)の含有量が80〜50重量%であって(ただし成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%とする)、TD方向の収縮率が1.2%以下であるラミネート用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品包装や液体物包装などの各種包装に用いられるフィルムとしては、ポリエチレン系樹脂からなるフィルムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−127333号公報
【0004】
例えば特許文献1には、エチレン−α−オレフィン共重合体40〜95重量%と高圧法ポリエチレン60〜5重量%とを含む組成物からなる層と、エチレン−α−オレフィン共重合体を含む層とが直接積層された多層フィルムが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフィルムは、フィルム同士を貼り合わせて袋にしたとき、袋にたわみが発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、袋にたわみが発生する原因が、使用するフィルムのTD方向への収縮にあることを見出し、特定の組成のフィルムが上記問題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、以下の成分(A)および成分(B)を含有する層を有する単層または多層のフィルムであって、該層に含まれる成分(A)の含有量が20〜50重量%であり、成分(B)の含有量が80〜50重量%であって(ただし成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%とする)、TD方向の収縮率が1.2%以下であるラミネート用フィルムである。
成分(A):エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が7〜25であるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体
【発明の効果】
【0007】
本発明のラミネート用フィルムは、TD方向への収縮が小さく、製袋した際に袋にたわみが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】スタンディングパウチの模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下の成分(A)および成分(B)を含有する層を有する単層または多層のフィルムであって、該層に含まれる成分(A)の含有量が20〜50重量%であり、成分(B)の含有量が80〜50重量%であって(ただし成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%とする)、TD方向の収縮率が1.2%以下であるラミネート用フィルムである。
成分(A):エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が7〜25であるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体
【0010】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられ、好ましくは1−ヘキセン、1−オクテンである。また、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体である。エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体やエチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体もまた好ましく使用される。
【0012】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50〜99重量%である。α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常1〜50重量%である。
【0013】
JIS K 7210−1995に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.01〜100g/10分である。加工性を高める観点から、好ま0.07g/10min以上であり、好ましくは0.2g/10minである。
また、ヒートシール強度や耐衝撃性を高める観点から、好ましくは10g/10分以下であり、より好ましくは4g/10分以下であり、さらに好ましくは2g/10分以下である。
【0014】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、通常、890〜950kg/m3である。密度が高すぎると耐衝撃性に劣ることがある。好ましくは940kg/m3以下であり、より好ましくは930kg/m3以下であり、更に好ましくは925kg/m3以下である。また、該値は、剛性を高める観点から好ましくは900kg/m3以上であり、より好ましくは905kg/m3以上である。なお、該密度は、JIS K 6760−1995に記載のアニーリングを行った試料を用いて、JIS K 7112−1980に規定された水中置換法に従って測定される。
【0015】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有するような溶融張力に優れたエチレン−α−オレフィン共重合体であり、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は従来知られた通常のエチレン−α−オレフィン共重合体に比して、流動の活性化エネルギー(Ea)が高い。
【0016】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体のEaは40kJ/mol以上であり、熱収縮性をより小さくする観点から、好ましくは45kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、耐衝撃性をより高める観点から、Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0017】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、7〜25であり、好ましくは8以上である。
【0018】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、例えば、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2つ有し、該2つの配位子がアルキレン基やシリレン基等の架橋基で結合した構造を有するメタロセン錯体、具体的には、2つのインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのジメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体などをあげることができる。エチレンとα−オレフィンとの共重合において、上記のメタロセン錯体を触媒成分として用いることにより、流動活性化エネルギー(Ea)がより高いエチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0019】
エチレンとα−オレフィンとの共重合において、上記メタロセン錯体からなる触媒成分は、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分と併用して用いられることが、分子量分布(Mw/Mn)が広いエチレン−α−オレフィン共重合体を得る観点で好ましい。該固体粒子状の助触媒成分としては、具体的には、メチルアルモキサンを多孔質シリカと混合させた成分、ジエチル亜鉛と水とフッ化フェノールを多孔質シリカと混合させた成分等と併用して用いられることが、分子量分布(Mw/Mn)が広いエチレン−α−オレフィン共重合体を得る観点で好ましい。
【0020】
重合方法として、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の形成を伴う連続重合方法であり、例えば、連続気相重合、連続スラリー重合、連続バルク重合であり、好ましくは、連続気相重合である。気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
【0021】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造に用いられるメタロセン系オレフィン重合用触媒の各成分を反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。触媒の各成分は個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施し、予備重合された予備重合触媒成分を本重合の触媒成分または触媒として使用することが好ましい。
【0022】
重合温度としては、通常、エチレン−α−オレフィン共重合体が溶融する温度未満であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合温度は高い方が好ましい。
【0023】
重合時間としては(連続重合反応である場合は平均滞留時間として)、通常1〜20時間である。エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合時間(平均滞留時間)は長い方が好ましい。
【0024】
また、共重合体の溶融流動性を調節する目的で、水素を分子量調節剤として添加してもよく、混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。重合反応ガス中のエチレンのモル濃度に対する重合反応ガス中の水素のモル濃度は、重合反応ガス中のエチレンのモル濃度100モル%として、通常、0.1〜3モル%である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、該重合反応ガス中の水素のモル濃度は、高い方が好ましい。
【0025】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法の具体例としては、下記助触媒担体(A)、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)および有機アルミニウム化合物(C)を接触させて得られる触媒の存在下、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0026】
助触媒担体(A)は、(a)ジエチル亜鉛、(b)フッ素化フェノール、(c)水、(d)シリカおよび(e)トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させて得られる担体である。
【0027】
上記(a)、(b)、(c)各成分の使用量は特に制限はないが、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとすると、yおよびzが下記の式を満足することが好ましい。
|2−y−2z|≦1
上記の式におけるyとして、好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
【0028】
また、成分(a)に対して使用する成分(d)の量としては、成分(a)と成分(d)との接触により得られる粒子に含まれる亜鉛原子のモル数が、該粒子1gあたり0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。成分(d)に対して使用する成分(e)の量としては、成分(d)1gあたり成分(e)0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
【0029】
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)として、好ましくはラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドである。
【0030】
また、有機アルミニウム化合物(C)として、好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムである。
【0031】
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)の使用量は、助触媒担体(A)1gあたり、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物(C)の使用量として、好ましくは、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)のジルコニウム原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子が1〜2000モルとなる量である。
【0032】
成分(B)は、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、該エチレン−α−オレフィン共重合体として、好ましくは、炭素数3〜20のα-オレフィンであり、さらに好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体である。
【0033】
成分(B)のエチレン−α−オレフィン共重合体はエチレンに基づく単量体単位を有する重合体であり、該エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、当該重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50重量%以上である。α−オレフィンに基く単量体単位の含有量は、当該重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50重量%以下である。
【0034】
成分(B)のJIS K 7210−1995に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートは、耐衝撃性を高める観点から、好ましくは0.1g/10分以上であり、より好ましくは0.3g/10分以上であり、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。該値は、加工性を高める観点から、好ましくは50g/10分以下であり、より好ましくは8g/10 分以下であり、さらに好ましくは5g/10分以下である。
【0035】
成分(B)のMFRRは、加工性を高める観点から、好ましくは15以上であり、より好ましくは17以上である。また、耐衝撃性を高める観点から、該値は、好ましくは40以下であり、より好ましくは35以下であり、更に好ましくは25以下である。
【0036】
成分(B)の密度は、剛性を高める観点から、好ましくは898kg/m3以上であり、より好ましくは905kg/m3以上である。耐衝撃性を高める観点から、好ましくは940kg/m3以下であり、より好ましくは935kg/m3以下であり、更に好ましくは930kg/m3以下である。
【0037】
本発明のラミネート用フィルムは、上記成分(A)および成分(B)を含有する層を有する単層または多層のフィルムである。成分(A)および成分(B)を含有する層に含まれる成分(A)および成分(B)の合計量を100重量%とするとき、該層に含まれる成分(A)は20〜50重量%であり、好ましくは25〜45重量%である。該層に含まれる成分(B)は80〜50重量%であり、好ましくは75〜55重量%である。
【0038】
通常、スタンディングパウチを製造する際には、ラミネート用フィルムと基材とが積層されている包装用積層フィルムを用い、図1に示すように、フィルムのTD方向がパウチの長手方向となるようにする。そのため、フィルムのTD方向の収縮が、スタンディングパウチのたわみに大きく影響する。本発明のラミネート用フィルムは、TD方向の収縮率が1.2%以下であり、好ましくは1.0%以下である。このようにTD方向の収縮率の小さいラミネート用フィルムを用いることにより、たわみの小さいスタンディングパウチを得ることができる。
【0039】
本発明のラミネート用フィルムが多層フィルムである場合、各層における成分(A)の含有量が20〜50重量%であり、成分(B)の含有量が80〜50重量%である(ただし各層に含まれる成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%とする)ことが好ましい。ただし、全ての層が全く同じ組成である必要はない。
【0040】
本発明のラミネート用フィルムは、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、加工性改良剤等の添加剤や他の樹脂などを含んでいてもよく、該添加剤や他の樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記の酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤等が挙げられる。それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
該フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名Irganox1076、チバ・ジャパン社製)、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(商品名Irganox1010、チバ・ジャパン社製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名Irganox3114、チバ・ジャパン社製)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(商品名スミライザー GA80、住友化学社製)等が挙げられる。
【0043】
該リン系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト(商品名アデカスタブPEP8)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名Irgafos168、チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト(商品名Sandostab P−EPQ、クラリアントシャパン社製)、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名:スミライザーGP、住友化学社製)等が挙げられる
【0044】
上記の抗ブロッキング剤としては、無機系抗ブロッキング剤、有機系抗ブロッキング剤が挙げられる。無機系抗ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、タルク、アルミノ珪酸塩、カオリン、炭酸カルシウム等が挙げられる。有機系抗ブロッキング剤としては、例えば、エポスターMA(株式会社日本触媒製)が挙げられる。
【0045】
上記の滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0046】
上記の帯電防止剤としては、例えば、炭素数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸のアルキルジアルカノールアミド、ポリエチレングリコールエステル、アルキルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0047】
上記の顔料としては、例えば、白色顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
【0048】
本発明のラミネート用フィルムの膜厚に制限はないが、通常10〜200μmであり、50〜200μmが好ましい。
また、ラミネート用フィルムが多層である場合、各層の厚みはシール層:中間層:ラミネート層の比が、1:1〜5:0.5〜2とすることが好ましい。
【0049】
本発明のラミネート用フィルムは、公知の方法で製造することができ、例えば、インフレーションフィルム成形法、Tダイキャストフィルム成形法等が挙げられる。成形温度は、通常、110〜250℃である。
【0050】
本発明のラミネート用フィルムは、通常、基材と積層して使用する。基材としては、例えば、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレンからなるフィルムや、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔等が挙げられ、好ましくは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂またはポリプロピレン樹脂からなるフィルムあるいはアルミニウム箔であり、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂またはポリプロピレン樹脂からなるフィルムについては、延伸フィルムであることが好ましい。また、該積層フィルムには、ラミネート用フィルムおよび基材に加え、更に他のフィルムが積層されていてもよい。
【0051】
ラミネート用フィルムと基材とを積層する方法としては、公知の方法、例えば、ドライ
ラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、ホットメルトラミネート法
等が用いられる。
【0052】
本発明のラミネート用フィルムは、TD方向の収縮が小さいため、該ラミネート用フィルムと基材とを積層した包装用積層フィルムは、スタンディングパウチ用として好適である。特に、液体洗剤、シャンプーといった界面活性剤を含む内容物を充填し収納するスタンディングパウチとして利用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例の物性は、次の方法に従って測定した。
【0054】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210−1995に規定された方法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
【0055】
(2)メルトフローレートレシオ(MFRR)
JIS K 7210−1995に規定された方法に従い、温度190℃、荷重211.8Nの条件で測定したメルトフローレートを温度190℃、荷重21.18Nのメルトフローレートで除した値をMFRRとした。
【0056】
(3)密度(単位:Kg/m3
JIS K 7112−1995のうち、A法に規定された方法に従って、測定した。なお、試料には、JIS K 6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0057】
(4)分子量分布(Mw/Mn、単位:−)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(9)により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
測定条件
(1)装置:Waters社製 150CV ALC/GPC
(2)分離カラム:昭和電工社製Shodex GPC AT−806MS
(3)温度 :140℃
(4)溶媒 :o−ジクロロベンゼン
(5)溶出溶媒流速:1.0ml/分
(6)試料濃度:1mg/ml
(7)測定注入量:400μl
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン(東ソー社製;分子量=6000000〜500)
(9)検出器:示差屈折
【0058】
(5)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800)を用いて、下記測定条件で130℃、150℃、170℃および190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線を測定し、次に、得られた溶融複素粘度−角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、活性化エネルギー(Ea)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.5〜2mm
ストレイン:5%
角周波数:0.1〜100rad/秒
測定雰囲気:窒素下
【0059】
(6)収縮率
実施例で得られたフィルムの未処理面側同士を重ね合わせた後、フィルムのTD方向に長さ200mmの直線を引き、ノギスで0.01mm単位まで測定した。該直線の上を、以下に示す条件でヒートシールし、シール後の直線の長さをノギスで0.01mm単位まで測定し、収縮率を求めた。収縮率が小さいほうが、該フィルムを用いて得られるスタンディングパウチのたわみが小さくなる。
収縮率(%)=(シール前の長さ−シール後の長さ)/シール前の長さ×100
装置:インパルスシーラOPL-3005(富士インパルス株式会社)
シール巾 :5mm
シール温度:180℃
シール時間:1秒
冷却時間:8秒
【0060】
(7)1%正割弾性率(1% Secant Modulus:1%SM)
フィルムの加工方向(MD)、またはその直角方向(TD)に巾2cmの試験片を切り出し、引張試験機にチャック間距離6cmで取り付け、5mm/分の速度で引張、1%伸びたときの応力から100×(応力)/(断面積)[MPa]の式で計算した。
【0061】
(8)引張試験
フィルムからJIS K6781 に準ずる大きさのダンベル型試験片を打ち抜き、チャック間距離86mm、引張速度200mm/分で引張試験を行い引張速度500mm/分で引っ張り、破断したときの応力と伸びを求めた。
【0062】
(9)振子インパクト
フィルムの衝撃強度
恒温槽付フィルムインパクトテスター(東洋精機製)を用い、振り子先端の貫通部形状を15mmφの半円球とし、有効試験片面積を50mmφの円形にして、5℃および23℃でのフィルムの衝撃穴開け強さを測定した。
【0063】
[実施例1]
(1)助触媒担体の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;50%体積平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.9kgとトルエン1.4kgとの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら30分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に95℃に昇温し、95℃で3時間撹拌し、ろ過した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエン7.1kgを加えスラリーとし、一晩静置した。
【0064】
上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50重量%)3.46kgとヘキサン2.05kgとを投入し、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール1.55kgとトルエン2.88kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で1時間撹拌した。その後、5℃に冷却し、H2O0.221kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で2時間撹拌し、更に80℃に昇温し、80℃で2時間撹拌した。撹拌後、室温にて、残量16Lまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、次に、95℃に昇温し、4時間撹拌した。撹拌後、室温にて、上澄み液を抜き出し、固体生成物を得た。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することにより、固体成分(以下、助触媒担体(a)と称する。)を得た。
【0065】
(2)予備重合触媒成分(1)の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン80リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド35mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に上記助触媒担体(a)0.7kgを投入し、オートクレーブを30℃まで降温して系内が安定した後、エチレンを0.1kg、水素を0.1リットル(常温常圧体積)仕込み、続いてトリイソブチルアルミニウム140mmolを投入して重合を開始した。エチレンと水素をそれぞれ0.7kg/Hrと0.7リットル(常温常圧体積)で連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ3.2kg/Hrと9.6リットル(常温常圧体積)/Hrで連続供給することによって合計6時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素などをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、助触媒担体(a)1g当り23gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分(1)を得た。
【0066】
(3)エチレン−1−ヘキセン共重合体の製造
上記の予備重合触媒成分(1)を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンとの共重合を実施した。重合条件は、温度86℃、全圧2MPa、エチレンに対する水素のモル比は1.12%、エチレンに対する1−ヘキセンのモル比は1.31%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間4hrとなるように、上記予備重合触媒成分と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、20.5kg/hrの重合効率でエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下、PE−1と称する。)のパウダーを得た。
【0067】
(4)エチレン−1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−1のパウダーにスミライザーGPを750ppm配合し、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)により、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、PE−1のペレットを得た。PE−1のペレットの評価結果を表1に示す。
【0068】
シール層として、PE−1のペレット30重量%、PE−2のペレット59重量%、PE−4ペレット11重量%を加え、滑剤(エルカ酸アミド)、AB剤(アンチブロッキング剤:アルミナシリケート)の最終濃度がそれぞれ0.04重量部、0.6重量部となるように調整したマスターバッチを配合し、タンブルミキサーで混合した混合物を用いた。
中間層として、PE−1のペレット30重量%、PE−2のペレット65重量%、PE−4ペレット5重量%を加え、滑剤(エルカ酸アミド)の最終濃度がそれぞれ0.04重量部となるように調整したマスターバッチを配合し、タンブルミキサーで混合した混合物を用いた。
ラミ層はシール層と同じ混合物を用いた。
PE−2、PE−4のペレット評価結果を表1に示す。
【0069】
上記混合物を用いて、以下に示す3層Tダイ成形装置および成形条件でフィルム成形を行った。3層Tダイ装置はモダンマシナリー製、ダイ幅600mm、リップ0.9mmおよびフィードブロック方式の押出機3台(L/D=32、シール層およびラミ層には40mmφスクリュー、中間層に50mmφスクリュー)、冷却ロール450mmφ(セミマトロール)、エアチャンバー使用の装置を用いた。成形条件としてダイ温度240℃、冷却ロール温度75℃、引き取り速度13m/min、表面コロナ処理レベル:初期45mN/m、3層(シール層/中間層/ラミ層の層構成比率が1/3/1)の厚み120μmで行った。得られたフィルムの物性結果を表3に示す。
【0070】
[実施例2]
シール層として、PE−1のペレット30重量%、PE−3のペレット59重量%、PE−4ペレット11重量%を加え、滑剤(エルカ酸アミド)、AB剤(アンチブロッキング剤:アルミナシリケート)の最終濃度がそれぞれ0.04重量部、0.6重量部となるように調整したマスターバッチを配合し、タンブルミキサーで混合した混合物を用いた。
中間層として、PE−1のペレット30重量%、PE−3のペレット65重量%、PE−4ペレット5重量%を加え、滑剤(エルカ酸アミド)の最終濃度がそれぞれ0.04重量部となるように調整したマスターバッチを配合し、タンブルミキサーで混合した混合物を用いた。
PE−3のペレット評価結果を表1に示す。
ラミ層はシール層と同じ混合物を用いた。
上記混合物を用いて、実施例1と同様にフィルム加工した。得られたフィルムの物性結果を表3に示す。
【0071】
[比較例1]
シール層として、PE−3のペレット20重量%、PE−4のペレット11重量%、PE−5ペレット69重量%を加え、滑剤(エルカ酸アミド)、AB剤(アンチブロッキング剤:アルミナシリケート)の最終濃度がそれぞれ0.04重量部、0.6重量部となるように調整したマスターバッチを配合し、タンブルミキサーで混合した混合物を用いた。
中間層として、PE−3のペレット20重量%、PE−4のペレット5重量%、PE−5ペレット75重量%を加え、滑剤(エルカ酸アミド)の最終濃度がそれぞれ0.04重量部となるように調整したマスターバッチを配合し、タンブルミキサーで混合した混合物を用いた。
PE−5のペレット評価結果を表1に示す。
ラミ層はシール層と同じ混合物を用いた。
上記混合物を用いて、実施例1と同様にフィルム加工した。得られたフィルムの物性結果を表3に示す。
【0072】
【表1】

PE-2:日本エボリュー(株)製、住友化学(株)販売、スミカセンE FV101(エチレン−ヘキセン共重合体)
PE-3:日本エボリュー(株)製、住友化学(株)販売、スミカセンE FV102(エチレン−ヘキセン共重合体)
PE-4:日本エボリュー(株)製、住友化学(株)販売、スミカセンE FV402(エチレン−ヘキセン共重合体)
PE-5:日本エボリュー(株)製、住友化学(株)販売、スミカセンE FV205(エチレン−ヘキセン共重合体)
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【符号の説明】
【0075】
1:サイドシール部
2:ボトムシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および成分(B)を含有する層を有する単層または多層のフィルムであって、該層に含まれる成分(A)の含有量が20〜50重量%であり、成分(B)の含有量が80〜50重量%であって(ただし成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%とする)、TD方向の収縮率が1.2%以下であるラミネート用フィルム。
成分(A):エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が7〜25であるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体
【請求項2】
多層フィルムであって、各層における成分(A)の含有量が20〜50重量%であり、成分(B)の含有量が80〜50重量%である(ただし各層に含まれる成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%とする)請求項1に記載のラミネート用フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のラミネート用フィルムと基材とが積層されている包装用積層フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の包装用積層フィルムを用いて得られるスタンディングパウチ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−98544(P2011−98544A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255930(P2009−255930)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】