説明

ラミネート装置用熱板およびその熱板を用いたラミネート装置

【課題】 本発明は、ラミネート加工した被加工物内の架橋密度を均一にできる熱板をおよびその熱板を使用したラミネート装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のラミネート装置用の熱板は、押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を載置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用する熱板を、前記熱板の加熱領域を、被加工物の中央から周辺に向かって略同心形状に分割した各加熱領域とし、各加熱領域に一つ以上のヒーターを設け、前記加熱領域を個別に温度制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板上に太陽電池モジュール等の被加工物を配置し、熱板により加熱した被加工物を熱板と押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用する熱板およびその熱板を用いたラミネート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池モジュールを製造する場合、ラミネート装置が使用されている(特許文献1)。ラミネート装置は、下方向に向けて膨張自在なダイヤフラムを有する上ケースと、熱板を有する下ケースとを有している。太陽電池モジュールをラミネートする際、まず、構成部材を重ね合わせた太陽電池モジュールを、上ケースと下ケースとで形成される空間に搬送する。次に、ラミネート装置は、上ケースと下ケースとで形成される空間を真空状態にし、熱板上に太陽電池モジュールを配置した後、構成部材を加熱した状態で、上ケースの内部に大気圧を導入する。このようにすることで、太陽電池モジュールは、ダイヤフラムと熱板とで挟圧されて、ラミネートされ、太陽電池モジュールの各構成部材が溶融された封止材により接着される。
【0003】
また特許文献1には、ラミネート装置用の熱板内に複数のヒーターを設け、その熱板を複数の加熱領域に分けてその加熱領域の一部又は全てに温度センサーを設けその測定結果により、ヒーターを個別で制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−47766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のラミネート装置は、熱板の上面を複数の加熱領域に分割して、何れの加熱領域でも均一の温度になるように設定されている。しかしながら、上ケースと下ケースとで形成される空間は、熱板によりすでに加熱されている。したがって、太陽電池モジュールが、その空間に搬送されると、太陽電池モジュールの構成部材であるカバーガラスの上下面の温度差等の影響により、太陽電池モジュールの周縁部が熱板から離間するような態様で反ってしまう。このように反った太陽電池モジュールでは、太陽電池モジュールの内側部(中央部)のみが熱板上に接地し、その後、周縁部がダイヤフラムの押圧によって内側部に遅れて接触する。
【0006】
このような状況では、太陽電池モジュールをラミネート加工する際に封止材を架橋する時間は、太陽電池モジュールの中央部に比べ周辺部は少ない。一方、反りのためダイヤフラムからの圧力は中心よりも強いことが予想される。よって、ラミネート加工後の封止材の架橋密度は、場所的に均一になっているか分からない。もし、太陽電池モジュールの架橋密度が中央部に比べ周辺部が小さければ、ラミネート加工後の封止材と透明基板(カバーガラス)や裏面材との接着能力が劣ることを意味している。このような太陽電池モジュールは、接着能力が弱い周辺部の一部に剥離が発生し太陽電池モジュールの内部へ水の侵入を許すことになり、太陽電池モジュールとしての寿命は短い。太陽電池モジュールを長寿命とするためには、ラミネート加工により太陽電池全面に亘り架橋密度を均一とし、太陽電池モジュール周辺の封止材の接着能力を中央部と同等程度とする必要がある。
【0007】
また特許文献1に記載のラミネート装置は、熱板内に複数のヒーターと温度センサーが設けられているが、熱板の温度を均一にする、あるいは熱板の温度分布を意図的にある領域のみ高目に設定するためには、ヒーターを細かく分割し温度センサーを複数個設け制御する必要があり熱板の構造が複雑になる。さらに熱板そのものが1枚の板で構成されている。したがって、ある領域のみ加熱温度を上昇させるというようなことは困難である。
【0008】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、ラミネート加工した被加工物内の架橋密度を均一にできる熱板およびその熱板を使用したラミネート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1発明のラミネート装置用の熱板は、押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を載置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用する熱板であって、前記熱板は、前記熱板の加熱領域を、被加工物の中央から周辺に向かって略同心形状に分割した各加熱領域とし、各前記加熱領域に一つ以上のヒーターを設け、前記加熱領域を個別に温度制御することを特徴している。
【0010】
第2発明のラミネート装置用の熱板は、第1発明において、前記加熱領域は、それぞれの加熱領域が熱的に遮蔽されていることを特徴としている。
【0011】
第3発明のラミネート装置用の熱板は、第2発明において、隣接する各加熱領域の間に遮熱材を配置することにより、前記各加熱領域の熱的な遮蔽を行うことを特徴としている。
【0012】
第4発明のラミネート装置用の熱板は、第2発明において、隣接する各加熱領域の間に空気層を設けることにより、前記各加熱領域の熱的な遮蔽を行うことを特徴としている。
【0013】
第5発明のラミネート装置用の熱板は、第1から第4発明のいずれかにおいて、前記各加熱領域に対応する熱板を被加工物を載置する載置板を介して接続して構成されていることを特徴としている。
【0014】
第6発明のラミネート装置用の熱板は、第1から第4発明のいずれかにおいて、前記各加熱領域に対応する熱板を一枚の裏板を介して接続して構成されていることを特徴としている。
【0015】
第7発明のラミネート装置用の熱板は、第1から第6発明のいずれかにおいて、前記各加熱領域に略同心形状のヒーターを埋設したことを特徴としている。
【0016】
第8発明のラミネート装置用の熱板は、第1から第7発明のいずれかにおいて、前記熱板は、前記各加熱領域に一つ以上のヒーター及びヒートパイプを埋設したことを特徴としている。
【0017】
第9発明のラミネート装置は、第1から第8発明のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板を使用したことを特徴としている。
【0018】
第10発明のラミネート方法は、第1から第8発明のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板を使用したラミネート装置により太陽電池モジュールのラミネート加工を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、以下の効果が発現する。前記熱板は、前記熱板の加熱領域を、被加工物の中央から周辺に向かって略同心形状に分割した各加熱領域とし、前記加熱領域を個別に温度制御するので、被加工物の透明基板に反りがあったり、被加工物の中央部と周辺部とでラミネート加工における加熱時間に差があっても、被加工物の各部分に供給される熱量は同じになるので、被加工物の架橋密度は均一になる。
その結果、太陽電池モジュールの中央部と周辺部とで封止材の架橋密度が均一な太陽電池モジュールを製造することができる。
【0020】
第2の発明によれば、前記各加熱領域は、熱的に遮蔽されているので、第1発明の効果を顕著に発現させることができる。
【0021】
第3発明によれば、隣接する各加熱領域の間に遮熱材を配置しているので、前記各加熱領域の熱的な遮蔽を容易に行なうことができる。
【0022】
第4発明によれば、隣接する各加熱領域の間に空気層を配置しているので、前記各加熱領域の熱的な遮蔽を容易に行なうことができる。
【0023】
第5発明によれば、前記各加熱領域に対応する熱板を被加工物を載置する載置板を介して接続しているので、各加熱領域の熱板を容易に一体化できる。
【0024】
第6発明によれば、前記各加熱領域に対応する熱板を一枚の裏板を介して接続して構成されているので、各加熱領域の熱板を容易に一体化できるとともに第1発明の効果を顕著に発現させることができる。
【0025】
第7発明によれば、前記各加熱領域に略同心形状のヒーターを埋設しているので、熱板の構成を簡単にすることができる。
【0026】
第8発明によれば、前記熱板は、前記各加熱領域に一つ以上のヒーターおよびヒートパイプを埋設したことを特徴としているので各加熱領域の温度を均一に制御することが更に容易になる。
【0027】
第9発明のラミネート装置は、第1発明から第8発明の熱板を使用している。前記熱板は、前記被加工物の周縁部と中央部を同心形状の加熱領域に分割した構成を採用しているので、前記被加工物の周縁部と中央部をその架橋密度を均一にできるよう熱板に温度分布を設けることができる。したがって太陽電池モジュールの構成部材である透明基板に反りがあっても、ラミネート加工時にその中央部と周辺部とが受ける熱量を、架橋密度が均一になるように制御できる。これにより架橋密度が均一な被加工物(太陽電池モジュール)を得ることができる。
【0028】
第10発明のラミネート方法は、前記被加工物をラミネート加工するラミネート装置は第1発明から第8発明の熱板を使用している。したがって第9発明と同様の効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】被加工物である太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の熱板を載置したラミネート装置の全体の構成を示す図である。
【図3】ラミネート装置のラミネート部の側断面図である。
【図4】ラミネート装置のラミネート加工時におけるラミネート部の側断面図である。
【図5】実施例1の熱板の構成の説明図である。
【図6】実施例2の熱板の構成の説明図である。
【図7】実施例3の熱板の構成の説明図である。
【図8】実施例4の熱板の構成の説明図である。
【図9】実施例5の熱板の説明図である。
【図10】実施例5の熱板に評価用のカバーガラスを設置した状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本実施形態に係るラミネート装置について説明する。
ここでは、まず、ラミネート装置でラミネートされる被加工物10について説明する。
図1は、被加工物10として結晶系セルを使用した太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、図示のように、透明なカバーガラス11(透明基板)と裏面材12との間に、封止材13、14を介してストリング15およびストリング15を複数列並列に接続したマトリックス状のものを挟み込んだ構成を有する。裏面材12にはポリエチレン樹脂等の材料が使用される。また、封止材13、14にはEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂や、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂等が使用される。ストリング15は、電極16、17の間に結晶系セルとしての太陽電池セル18をリード線19を介して接続した構成である。
【0031】
また、被加工物10としては、上述した太陽電池モジュールだけではなく、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池モジュールを対象とすることもできる。この薄膜式太陽電池モジュールの代表的な構造例では、透明なカバーガラスに、予め、透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。このような薄膜式太陽電池モジュールは、カバーガラスを下向きに配置し、カバーガラス上の発電素子の上に封止材を被せる。更に、封止材の上に裏面材を被せた構造になっている。このような状態で真空加熱ラミネートすることにより薄膜式太陽電池モジュールの構成部材が接着される。すなわち、薄膜式太陽電池モジュールは、上述した太陽電池モジュールの結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけである。薄膜式太陽電池モジュールの基本的な封止構造は上述した太陽電池モジュールと同じである。
【0032】
図2は、本実施形態に係るラミネート装置100の全体の構成を示す図である。ラミネート装置100は、上ケース110と、下ケース120と、被加工物10を搬送するための搬送ベルト130とを有する。搬送ベルト130は、被加工物10を上ケース110と下ケース120との間に搬送する。ラミネート装置100には、ラミネート前の被加工物10をラミネート装置100に搬送するための搬入コンベア200が設けられている。また、ラミネート装置100には、ラミネート後の被加工物10をラミネート装置100から搬出するための搬出コンベア300が設けられている。搬入コンベア200と搬出コンベア300とは、連設されている。被加工物10は、搬入コンベア200から搬送ベルト130に受け渡され、搬送ベルト130から搬出コンベア300に受け渡される。
【0033】
ラミネート装置100には、シリンダ及びピストンロッド等で構成される図示しない昇降装置が設けられている。昇降装置は、上ケース110を水平状態に維持したまま下ケース120に対して昇降させることができる。昇降装置が上ケース110を下降させることで、上ケース110と下ケース120との内部空間を密閉させることができる。
【0034】
次に、本施形態に係るラミネート装置100のラミネート部101の構成についてより具体的に説明する。図3は、ラミネート装置100において被加工物10をラミネートするラミネート部101の側断面図である。図4は、ラミネート加工時におけるラミネート部101の側断面図である。
【0035】
上ケース110には、下方向に開口された空間が形成されている。この空間には、空間を水平に仕切るようにダイヤフラム112(押圧部材)が設けられている。ダイヤフラム112は、シリコーン系のゴム等の耐熱性のあるゴムにより成形されている。後述するように、ダイヤフラム112は、被加工物10を押圧する押圧部材として機能し、ラミネートを行う。上ケース110内には、ダイヤフラム112によって仕切られた空間(上チャンバ113)が形成される。
【0036】
また、上ケース110の上面には、上チャンバ113と連通する吸排気口114が設けられている。上チャンバ113では、吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空引きして真空状態にしたり、上チャンバ113内に大気を導入したりすることができる。
【0037】
下ケース120には、上方向に開口された空間(下チャンバ121)が形成されている。この空間には、熱板122(パネル状のヒーター)が設けられている。熱板122は、下ケース120の底面に立設された支持部材によって、水平状態を保つように支持されている。この場合に、熱板122は、その表面が下チャンバ121の開口面とほぼ同一の高さになるように支持される。
【0038】
また、下ケース120の下面には、下チャンバ121と連通する吸排気口123が設けられている。下チャンバ121では、吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空引きして真空状態にしたり、下チャンバ121内に大気を導入したりすることができる。
【0039】
上ケース110と下ケース120との間であって、熱板122の上方には、搬送ベルト130が移動自在に設けられている。搬送ベルト130は、図2の搬入コンベア200からラミネート前の被加工物10を受け取ってラミネート部101の中央位置、すなわち熱板122の中央部に正確に搬送する。また、搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を図2の搬出コンベア300に受け渡す。
【0040】
また、上ケース110と下ケース120との間であって、搬送ベルト130の上方には、剥離シート140が設けられている。剥離シート140は、被加工物10の封止材13、14(図1参照)が溶融したときに、封止材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。
【0041】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100によるラミネート工程についてより具体的に説明する。まず、図3に示すように、搬送ベルト130は、被加工物10をラミネート部101の中央位置に搬送する。なお、このとき、下チャンバ121や熱板122に配設された上下動可能な図示しないリフトピン等を上昇させることで、被加工物10を熱板122上から離間した位置に保持しておいてもよい。
【0042】
次に、昇降装置は、上ケース110を下降させる。上ケース110を下降させることにより、図4に示すように、上ケース110と下ケース120との内部空間は、密閉される。すなわち、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保つことができる。
【0043】
次に、ラミネート装置100は、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内の真空引きを行う。同様に、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内の真空引きを行う(真空工程)。下チャンバ121の真空引きにより、被加工物10内に含まれている気泡は、被加工物10外に送出される。なお、上下動可能な図示しないリフトピンにより被加工物10を、熱板122上から離間した位置に保持していた場合は、真空工程の略後半から、リフトピンを下降して被加工物10を熱板122上に載置する。
被加工物10は、後述する温度制御装置の温度制御により加熱された熱板122によって加熱されるので、被加工物10の内部に含まれる封止材13、14も加熱される。
【0044】
次に、ラミネート装置100は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じることで、ダイヤフラム112が膨張する。従って、ダイヤフラム112は、図4に示すように下方に押し出される(加圧工程)。被加工物10は、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板122とで挟圧され、加熱により溶融された封止材13、14によって各構成部材が接着される。
【0045】
このとき、封止材13、14がカバーガラス11と裏面材12との間からはみ出てしまうことがあるものの、はみ出した封止材13、14は剥離シート140に付着する。このように剥離シート140を介在させることにより、はみ出した封止材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。従って、剥離シート140は、ダイヤフラム112から次にラミネートする被加工物10に封止材13、14が付着するのを防止する。また、はみ出した封止材13、14が、搬送ベルト130上に付着した場合は、付着した封止材13、14は、図示しないクリーニング機構により除去される。
【0046】
このようにラミネート工程が終了した後、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置は、上ケース110を上昇させる。上ケース110を上昇させることにより、図3に示すように、搬送ベルト130を移動させることができるようになる。搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を搬出コンベア300に受け渡す。
【0047】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100の熱板122の構成について説明する。
【実施例1】
【0048】
図5は、第1の実施例1の熱板122の構成を示す図である。図5において図3および図4の熱板122は、熱板20としている。図5(a)は、熱板20の平面図でありヒーターの埋設状態を示した図面である。図5(b)は熱板20の正面図である。
【0049】
熱板20は、全体の大きさが図3の下ケース120内に収まるサイズである。また図5(a)の2点鎖線で示す被加工物である太陽電池モジュール10よりも大きいサイズで形成される。ここで、本実施形態の熱板20の寸法は、例えば幅Whが約1500mm、奥行きDhが約1200mmである。また、この熱板20により加熱される太陽電池モジュール10の寸法は、奥行きdが約1100mm、幅Wが約1400mmであり、平面視で長方形状である。尚上記の熱板20のサイズは、参考例であり、この寸法に限定されるものではない。
図5(b)に示すように熱板20上に被加工物10が載置されている。
【0050】
図5において、熱板本体201〜204は、アルミニウム又はアルミニウム合金等により、被加工物10を載置できるようなパネル状に形成されている。尚材質は、ステンレス等の鉄系材料を使用することができる。
【0051】
図5(a)に示すように、熱板20は、その中心部から周辺部に略同心楕円形状に加熱領域1〜加熱領域4に区画分けをしている。更に加熱領域1〜加熱領域4には、それぞれ4個の直線形状のヒーターHが熱板内部に埋設されている。図5(a)は、熱板内部のヒーターの配設状態を示している。ヒーターとしては、シースヒーター等を使用することができる。またシースヒーターとヒ−トパイプを併用することもできる。また図示はしていないが、各加熱領域には、温度センサーを一つ以上設け、各加熱領域の温度を確認し温度制御装置により制御することができる。
尚加熱領域の数量は、本実施例の4つ加熱領域に限定されるものではなく、ラミネート加工する太陽電池モジュールの寸法により増減させることができる。
また各加熱領域に埋設されるヒーターの数量も本実施例に限定されることはない。被加工物の特性等によりヒーターの数量を変更することができる。
【0052】
上記の加熱領域1〜加熱領域4は、図示してはいないが、相互に接続されていると、加熱領域という区画に分けて、温度差を設けても熱伝導で熱板の温度差は無くなってしまう。したがって各加熱領域の間には、遮熱手段を設けている。各加熱領域の遮熱は、例えば、各加熱領域を個別の熱板とし、各加熱領域の間に隙間(空気層)を設けることで実現することができる。またその他の遮熱手段については、別例の実施例で説明する。
【0053】
実施例1の構成の熱板を使用することにより、被加工物である太陽電池モジュールの透明基板に反りがあったり、それによる被加工物の中央部と周辺部とでラミネート加工における加熱時間に差があっても、被加工物の各部分に供給される熱量は同じになるので、被加工物の架橋密度は均一になる。したがって長期の耐久性に優れた太陽電池モジュールを製造することができる。
【実施例2】
【0054】
第2の実施例の熱板30の構成を図6により説明する。また実施例1と同じ内容については、説明は省略する。
図6に示すように、熱板30は、その中心部から周辺部に略同心楕円形状に加熱領域1〜加熱領域4に区画分けをしている。各加熱領域は、熱板本体301〜304となっている。更に加熱領域1〜加熱領域4には、略同心形状のヒーターが熱板内部に埋設されている。図6は、熱板内部のヒーターの配設状態を示している。ヒーターHとしては、シースヒーター等を使用することができる。またシースヒーターとヒ−トパイプを併用することもできる。また図示はしていないが、各加熱領域には、温度センサーを一つ以上設け、各加熱領域の温度を確認し温度制御装置により制御することができる。
これにより実施例1の構成の熱板と同様の効果を発現することができる。
【実施例3】
【0055】
第3の実施例の熱板40の構成を図7により説明する。図7(a)は、熱板40の正面図でヒーターHの埋設状態を示した図面であり、図7(b)は、熱板40のC―C断面矢視図である。
【0056】
図7(a)に示すように、熱板40は、その中心部から周辺部に略同心楕円形状に加熱領域1〜加熱領域4に区画分けをしている。加熱領域1〜加熱領域4の熱板本体401〜404は、取付板405の上に遮熱シート406を介して固定されている。また各加熱領域の間に遮熱層407が設けられている。遮熱シート406および遮熱層407としては、テフロンシート、グラスウールやロックウールをシート状に成形したものなどを使用することができる。また遮熱層407は、実施例1で説明したように隙間として空気層を設ける構成としても良い。また各加熱領域(熱板本体)には、それぞれ4個の直線形状のヒーターが熱板内部に埋設されている。ヒーターとしては、シースヒーター等を使用することができる。またシースヒーターとヒ−トパイプを併用することもできる。また図示はしていないが、各加熱領域には、温度センサーを一つ以上設け、各加熱領域の温度を確認し温度制御装置により制御することができる。
これにより実施例1の構成の熱板と同様の効果を発現することができる。さらに熱板をラミネート装置の図3または図4の下ケース120に取り付ける際にその取り付けを容易にすることができる。
【実施例4】
【0057】
第4の実施例の熱板50の構成を図8により説明する。図8(a)は、熱板50の正面図でヒーターHの埋設状態を示した図面であり、図8(b)は、熱板50のC―C断面矢視図である。また実施例3と同じ内容については、説明は省略する。
【0058】
図8(a)に示すように、熱板50は、その中心部から周辺部に略同心矩形状に加熱領域1〜加熱領域4に区画分けをしている。加熱領域1〜加熱領域4の熱板本体401〜404は、それぞれ4個の直線形状のヒーターHが熱板内部に埋設されている。
これにより実施例3の構成の熱板と同様の効果を発現することができる。
【実施例5】
【0059】
本構成の熱板を用いて性能を評価するために以下のように評価試験を行った。
【0060】
<1>架橋密度シート組成及び成形方法
EPDM系ゴム(三井化学社製 EPT4010)100質量部にカーボンブラック50質量部、オイル50質量部、ステアリン酸1質量部、亜鉛華1号
5質量部をニーダー50Lで15分混練し、コンパウンドを得た。温度が90℃以下になってから、イオウ 0.5質量部、チウラム系加硫促進剤(大内新興化学工業製 ノクセラーTT)1質量部、同じくチウラム系加硫促進剤(大内新興化学工業製 ノクセラーTRA)1.5質量部を配合したゴムコンパウンドを作成し、60cm×70cmの大きさで1mm厚シートを作成し、幅1mmである直線状の溝を1cm当り4本作成した。このように作成した架橋密度測定シートから約10mm角程度の架橋密度測定用サンプルを切り出し所定数量を用意した。
【0061】
<2>熱板の構成
本実施例において使用する熱板は、図9に示すように加熱領域を略同心矩形状とし3区画設けている。各加熱領域は、遮熱材により遮熱されている。この熱板を図2のラミネート装置に図3および図4に示すように配置した。尚本実施例では、熱板内にリフトピン機能が設けられたラミネート装置としている。リフトピンの機能が付与されたラミネート装置を使用しているので、カバーガラスが熱板上に搬入された時には、リフトピンは上昇している。したがってカバーガラスは、直ぐには熱板上に載置されない、真空引きの工程において一定時間経過後にリフトピンが下降しカバーガラスが熱板上に載置されるのでカバーガラスの反りは少ない。
【0062】
<3>ラミネート処理
太陽電池モジュールに使用するカバーガラスを図9の熱板60上に載置した時に、加熱領域1から加熱領域3に相当する箇所に<1>で作成した架橋密度測定用シートを図10に示すようにA〜Iの位置に貼り付けする。このようなカバーガラスを、図6のように、ラミネート装置の本実施例の熱板60上に載置する。その後、表1および表2に示す条件にてラミネート処理を行った。
【0063】
<4>架橋密度測定
ラミネート処理後のカバーガラス11上に配置した小片シートから架橋密度測定用のサンプルを切出し、溶剤膨潤法(Flory−Rehner法)によりJIS K6258に準拠し、架橋密度を測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0064】
【表1】

【表2】

【比較例1】
【0065】
比較例1は、熱板60の温度設定を全て150℃と均一とした以外は実施例5と同じとした。熱板60上に載置するカバーガラスに反りが有る状態で加熱領域1から加熱領域3の設定温度を全て均一にした状態を想定している。表3および表4に示す条件にてラミネート処理を行い、実施例5と同一場所の架橋密度測定した。その結果を表3および表4に示す。
【表3】

【表4】

【実施例6】
【0066】
実施例6は、使用するラミネート装置がリフトピン機能無しとした以外は、実施例5と同じとした。表5および表6に示す条件にてラミネート処理を行い、実施例5と同一場所の架橋密度測定した。その結果を表5および表6に示す。
【表5】

【表6】

【比較例2】
【0067】
比較例2は、熱板60の温度設定を全て150℃と均一とした以外は実施例6と同じとした。熱板60上に載置するカバーガラスに反りが有る状態で加熱領域1から加熱領域3の設定温度を全て均一にした状態を想定している。表7および表8に示す条件にてラミネート処理を行い、実施例6と同一場所の架橋密度測定した。その結果を表7および表8に示す。
【表7】

【表8】

【0068】
実施例については表1に示すように、制御領域単位で設定温度を調整すると、高温加圧10分経過後でほぼ架橋密度が7付近であり、比較例では表3に示すように、同一温度で設定されているため、ガラスの反りにより周辺の架橋密度が高くなっており、伝熱が悪い所は、架橋密度が小さく、バラツキが大きいことも分かる。
また、30分経過後では表2に示す実施例のとおり、10分経過後より架橋密度が2倍程度に大きくなり、全体的に均一であったが、表4に示される比較例では中央部の架橋密度が極端に高くなり、全体のバラツキがより大きくなり、品質が不均一になった。
実施例6の表5、6の結果ではリフトピンが無いため、表1の結果に比べガラスの反りが大きくなり、周辺部の架橋密度が大きくなっていたが、全体の均一性は維持できていた。リフトピンが無い比較例2では、表7,8に示すようにリフトピンを使用した比較例1に比べ中心部や周辺部で極端に架橋密度が大きくなり、全体のバラツキがかなり大きくなった。
これらの結果より、実施例については制御領域単位で設定温度を調整することで経過時間によらず、全体的に架橋密度を均一にすることが可能となった。比較例では全体の温度制御が同じ温度のため、経過時間10分後の初期ではガラスの反りにより周囲の架橋密度が高くなり、30分経過後は中央の加熱領域1での架橋密度が極端に高くなることが分かる。
【符号の説明】
【0069】
10 被加工物(太陽電池モジュール)
11 カバーガラス
13、14 封止材
100 ラミネート装置
101 ラミネート部
110 上ケース
112 ダイヤフラム
113 上チャンバ
120 下ケース
121 下チャンバ
122 熱板
20〜60 熱板
201〜204 熱板本体
301〜304 熱板本体
401〜404 熱板本体
501〜504 熱板本体
405、505 取付板
406、506 遮熱シート
407、507 遮熱材
H ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を載置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用する熱板であって、
前記熱板は、前記熱板の加熱領域を、被加工物の中央から周辺に向かって略同心形状に分割した各加熱領域とし、各前記加熱領域に一つ以上のヒーターを設け、前記加熱領域を個別に温度制御することを特徴とするラミネート装置用の熱板。
【請求項2】
前記加熱領域は、それぞれの前記加熱領域が熱的に遮蔽されていることを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項3】
隣接する各加熱領域の間に遮熱材を配置することにより、前記各加熱領域の熱的な遮蔽を行うことを特徴とする請求項2に記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項4】
隣接する各加熱領域の間に空気層を設けることにより、前記各加熱領域の熱的な遮蔽を行うことを特徴とする請求項2に記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項5】
前記熱板は、前記各加熱領域に対応する熱板を被加工物を載置する載置板を介して接続して構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項6】
前記熱板は、前記各加熱領域に対応する熱板を一枚の裏板を介して接続して構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項7】
前記熱板は、前記各加熱領域に加熱領域の略同心形状のヒーターを埋設したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項8】
前記熱板は、前記各加熱領域に一つ以上のヒーターおよびヒートパイプを埋設したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板を使用したラミネート装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板を使用したラミネート装置により太陽電池モジュールの製造方法。































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−235442(P2011−235442A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105897(P2010−105897)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】