説明

ラミブジンシュウ酸塩及びその製造方法

本発明はラミブジンシュウ酸塩及びその製造方法、並びにラミブジンシュウ酸塩の結晶形に関する。本発明はラミブジンの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新しいラミブジンの塩及びその製造方法に関する。前記のラミブジンの塩はシス-ラミブジンのシュウ酸塩である。
【背景技術】
【0002】
ヌクレオチド系化合物とそれらの類縁体、誘導体は重要な抗ウイルス治療薬である。数多くのヌクレオチド系化合物はレトロウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)とヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV)に対して良い抗ウイルス活性を示す。
【0003】
PCT/GB91/00706(公開番号WO91/17159)の国際出願には、式Iで表される抗ウイルスヌクレオチド系化合物であるラミブジンが開示されている。

4−アミノ―1−(2R−ヒドロキシメチル―[1,3]オキサチオラン―5S−イル)−1H−ピリミジン―2−オン
【0004】
数多くのヌクレオチド系化合物及びその誘導体は少なくとも二つのキラル中心を有し、かつ光学異性体として存在する。しかし、このような化合物は、通常、シス異性体しか強い生物活性を示していない。従って、産業用に適合する汎用のヌクレオチド系化合物の立体選択合成方法はかつてからの研究課題である。
【0005】
WO92/20699には、主にラミブジンの光学活性なシスヌクレオチド類縁体と誘導体を製造するためのジアステレオ選択方法が公開されている。当該方法は特定のルイス酸の使用に依存する。しかし、このようなルイス酸は高い反応性を有する不安定の化合物であり、高価で明らかな毒性を有する。
【0006】
WO/1995/029174はWO92/20699により提供された方法を改善し、ルイス酸を添加することを避けるために、適切な離脱基を選択し、置換基と離脱基とを有するオキサチオランをピリミジンと反応させる。また、ラミブジンを精製する中間体塩の一つとして、ラミブジンのサリチル酸塩が開示されている。
【0007】
本出願の発明者は、キラル中心を有する化合物を原料として直接に使用して、ラミブジンを製造することにより、高い立体選択性を有するシス-ラミブジンを得られ、かつ精製・単離し易く、産業用に適する。
【0008】
本出願の発明者はWO/1995/029174に開示された技術の研究を行い、特にラミブジンのサリチル酸塩をさらに評価し、該塩が未だ種々の欠点を有することを発見した。
1、ラミブジンサリチル酸塩は、結晶性が悪く、粘着性の特性を有する。当業者は、粘着性の特性を有する物質が不純物を含有しやすく、精製し難いから、中間体とすれば、高純度のラミブジンを生産するために多段階の精製が必要であるので、生産コストは高く、また多段階の精製により生産時間が長くなり、生産性を低下させることが分かる。
2、WO/1995/029174には、サリチル酸を離脱させるためにトリエチルアミンを大量に添加する。トリエチルアミンは人への刺激作用と毒性の副作用を有するので、ラミブジンの品質制御のために厳しくコントロールする必要がある。また、当該化学試薬の残存は品質基準を満たすことを確保するために、対応する品質制御基準を確立する必要がある。かつトリエチルアミンを多く添加することは産業用では生産コストをコントロールするのに寄与しない。
【0009】
高い立体選択性と純度を有するラミブジンを製造し、コストを節約し、産業用に適用でき、かつ製品の毒性の副作用を低下させるために、本出願の発明者は本発明を完成した。
【発明の開示】
【0010】
本発明の一つの目的はラミブジンシュウ酸塩を提供することにある。前記のラミブジンシュウ酸塩は下記の構造式を有する:

【0011】
式 IIで示されるのはシス-ラミブジン、すなわちレボラミブジンとシュウ酸とから形成される塩である。
【0012】
本発明のもう一つの目的は前記のラミブジンシュウ酸塩の製造方法を提供することにある。
【0013】
一つの方法では、ラミブジンとシュウ酸を適切な溶媒に反応させ、そのうち、適切な溶媒としては、水、極性溶媒、例えばエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はアルコールが含まれ、そのうちのアルコールとして、例えばメタノール又はエタノールがあげられる。溶媒は各種類の溶媒の混合物であってもよい。
【0014】
もう一つの製造方法は以下の工程を含む。

そのうち、Rは任意に置換されたアルキル基であり、C1-10アルキル基を含み、当該アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であってもよく、置換基はアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニルなどである。鏡像異性体の単離に寄与するために、好ましくはRがキラル試薬であり、例えばメンタニル基、フェニル置換メンタニル基が挙げられ、より好ましくはL-メンタニル基、L-8-フェニルメンタニル基である。上記のシュウ酸にはシュウ酸誘導体が含まれ、式IIIをシュウ酸又はシュウ酸誘導体と反応させ、還元して塩を生成し、その中の還元試薬には水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムが含まれる。
【0015】
以下は一つの具体例が挙げられる。

式IIIを原料としてラミブジンシュウ酸塩を合成する工程は、緩衝液に式IIIを水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムと反応させ、不純物又は十分に反応しない原料を除去した後、さらにシュウ酸又はシュウ酸誘導体とを反応して、ラミブジンシュウ酸塩を得ることを含む。
【0016】
具体的な工程は以下の通りである。
(1)緩衝液を調製し、適切な量のエタノールを添加し、均一に撹拌して得られた溶液に原料である式IIIの化合物を加える。
(2)工程(1)で得られた溶液に水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウム溶液を滴下し、十分に反応するまで監視する。
(3)工程(2)で得られた溶液を溶媒又は水で処理して、不純物又は十分に反応しない原料を除去する。
(4)工程(3)の生成物にシュウ酸又はシュウ酸誘導体を添加し、反応させ、精製処理を行って、ラミブジンシュウ酸塩の結晶を得る。
更に具体的には以下の通りである。
(1)緩衝液を調製し、適切な量のエタノールを添加し、均一に撹拌して得られた溶液に原料CMEを加える。
(2)工程(1)で得られた溶液に、1時間以内に水素化ホウ素ナトリウム溶液を添加し、十分に反応するまで監視する。
(3)工程(2)で得られた溶液を置いて層に分離させ、下層の水層を適切な量のエタノールで洗浄し、すべての有機溶媒層を合わさせた後、酸でpH6〜6.5に調整し、温度を28〜32℃に維持する。アルカリでpH8.0〜8.3に調整する。エタノールを留出させ、室温に戻り、適切な量の水を加えて溶解させ、有機溶媒で洗浄し、有機溶媒層を合わせた後、水で抽出し、すべての水層を合わせた後、活性炭で脱色し、撹拌し、濾過し、ろ過ケーキを水で洗浄する。
(4)すべての水層を合わせた後、シュウ酸を加え、撹拌し、遠心分離させ、ろ過ケーキを少量の水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄し、製品を40〜45℃で真空乾燥して、ラミブジンシュウ酸塩の結晶を得る。
【0017】
上記の工程1における緩衝液は還元剤である水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムを用いるのに必要な緩衝液であり、適切な緩衝液として、例えばリン酸塩又はホウ酸塩緩衝液が挙げられ、例えばリン酸二カリウム水溶液が挙げられ、リン酸二カリウム溶液の濃度は20−50%であり、好ましくは濃度が25−45%であり、もっとも好ましくは濃度が31%である。工程1の温度は18〜20°Cであることが適宜である。
【0018】
工程1において、「適切な量のエタノール」とは原料含有量に対して4−7倍、好ましくは5−6倍である。
【0019】
工程2において、水素化ホウ素ナトリウム(又は水素化ホウ素カリウム)溶液の濃度は5mol/Lであり、好ましくは以下の方法で調製する。まず、0.4%の水酸化ナトリウム(又は水酸化カリウム)水溶液を調製し、その後、一定量の水素化ホウ素ナトリウム(又は水素化ホウ素カリウム)を当該水酸化ナトリウム(又は水酸化カリウム)溶液に溶解させ、濃度が5mol/Lである水素化ホウ素ナトリウム(又は水素化ホウ素カリウム)溶液を調製する。
【0020】
工程2において、「十分に反応するまで監視する」とは反応した後、原料である式III又は式III’の量が投料量の0.5%未満となることである。
【0021】
工程3において、pHを調整するのに用いられる酸として、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などが挙げられ、好ましくは塩酸であり、例えば6mol/Lの塩酸である。pHを調整するのに用いられるアルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0022】
本発明に記載されているラミブジンシュウ酸塩はいずれもシス-ラミブジン(レボラミブジン)とシュウ酸とから形成される塩である。
【0023】
本発明には記載されている原料となる式III’、すなわちCMEの化学名称は(2R,5S)−5−(4−アミノ−2−オキサ−ピリミジン−1−イル)−[1,3]オキサチオラン‐2−カルボン酸,2S−イソプロピル‐5R−メチル‐1R−シクロへキシルエステルであり、上記の式IIIとCME原料を市販で入手でき、或いはWO/1995/029174に開示された方法により製造できる。

【0024】
また、本発明はラミブジンシュウ酸塩を原料としてラミブジンを製造する方法を提供する。
【0025】
発明者らはラミブジンシュウ酸塩を極性溶媒から単離しやすいから、一般的な方法によりラミブジンの遊離アルカリへ変換できることを発見した。一般的な方法には適切なアルカリを用いることが含まれ、適切なアルカリは第三級アミン、例えばトリエチルアミンであってもよい。
【0026】
具体的には、エタノールにラミブジンシュウ酸塩を添加し、40〜45°Cで30分間以内で一定量のトリエチルアミンを加え、温度を維持しながら4時間撹拌し、室温で遠心分離し、製品を40〜45°Cで真空乾燥させて、ラミブジンシュウの結晶を得る。
また、本発明は式IIIを原料としてラミブジンを製造する方法を提供し、式IIIを水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムと反応させ、その後シュウ酸又はシュウ酸誘導体とを反応させ、ラミブジンシュウ酸塩を得た後、アルカリと反応させることでラミブジンを得る。

そのうち、Rは任意に置換されたアルキル基であり、C1−10アルキル基を含み、当該アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であってもよく、置換基はアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニルなどであり、好ましくはRがメンタニル基、フェニル置換メンタニルアルキル基であり、更に好ましくはL−メンタニル基、L−8−フェニルメンタニル基である。
【0027】
具体的には式IIIを還元してシュウ酸又はその誘導体と塩を生成し、さらに対応するアルカリを遊離させて式Iの化合物を得る。その中、式IIIから式IIまでの工程において、反応試薬には水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムが含まれる。
【0028】
本発明は結晶形のラミブジンシュウ酸塩を提供し、ラミブジンシュウ酸塩の結晶を提供する。
【0029】
前記の結晶のCu-Kα線を利用する粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ(°)で示すと、基本的に21.04、22.44、23.46、23.78、25.26に回折ピークがあり、更に13.94、14.86、21.04、21.30、22.44、23.46、23.78、25.26、33.36に回折ピークがあり、更に13.94、14.86、16.88、17.66、20.34、21.04、21.30、22.44、23.46、23.78、25.26、28.30、33.36に回折ピークがある。更に、2θ(°)で示すと、13.94、14.86、16.88、17.66、18.74、19.12、19.66、20.34、21.04、21.30、22.44、22.96、23.46、23.78、25.26、26.78、28.30、28.68、28.96、30.08、30.40、31.92、32.24、32.84、33.36、34.64、35.00、35.80に回折ピークがある。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態の粉末X線回折スペクトルを示すものである。
【0031】
上記の本発明のラミブジンシュウ酸塩の結晶は無水または無溶媒であり、あるいは僅かな又は測定できない水や溶媒を含有し、一般的には本発明の結晶は水や溶媒を約1%未満含有し、代表的には水や溶媒を0.5%未満含有する。本発明の結晶は非結晶質を20%未満含む可能性があり、一般的には、本発明のラミブジンシュウ酸塩の結晶は10%未満、典型的には1%未満、通常0.1%未満の非結晶質を含有する。
【0032】
本発明が提供するラミブジンシュウ酸塩の結晶は約201.9℃にはDSC吸熱転移ピークがあり、約199℃から吸熱転移が始まり、一実例のDSCスペクトルは図2に示され、その最初転移温度は199.23℃である。融点は201.3〜202.7℃である。
【0033】
ラミブジンのシュウ酸塩は医薬品に用いられる塩であり、WO9117159に記載されるように抗ウイルス剤としてもよく、また、医薬品組成物に調製してもよい。
【0034】
本発明により製造するラミブジンシュウ酸塩は高純度ラミブジンを製造するための非常に優れた中間体である。それより、ラミブジンのその他の有機酸塩、例えばサリチル酸塩などはべたつきという性状を有し、不純物をより多く含有し、乾燥しがたいので、次のステップで高純度ラミブジンを製造し難い。一方、ラミブジンシュウ酸塩は良い結晶であり、製造工程には上記の現象がなく、ラミブジンシュウ酸から製造したラミブジンは精製されない場合でも99.5%以上の純度を有する。後に高純度シス-ラミブジンを生成することに寄与する。
【0035】
本発明が提供したラミブジンシュウ酸塩は一分子のシュウ酸と二分子のラミブジンからなる塩であり、ラミブジンを製造するために有機酸を離脱した場合に用いられるトリエチルアミンはその他のラミブジン有機酸塩より使用量が大幅減少される。トリエチルアミンは毒性があり、燃焼しやすい化学試薬であり、アンモニア臭が強く、空気にわずかに発煙し、その蒸気又は液体は人の皮膚と粘膜を刺激する。主に吸入、経口、経皮などの方式で人に吸収され、人が不注意でトリエチルアミン蒸気を吸収した後、気道への刺激が強く、肺水腫ないし死亡を引き起こすことがあり、眼及び皮膚と接触すると化学火傷を引き起こすことがある。従って、一方ではトリエチルアミンを減少することで産業用コストを減少させ、もう一方では毒性試薬を減少させることで、生産工程の安全性を向上して、最終製品に残存する化学試薬を減少することができる。
【0036】
発明者は主としてラミブジンシュウ酸塩とサリチル酸塩が同モルで投入される場合有機酸を離脱するのに必要なトリエチルアミンの使用量を対比する。
1、ラミブジンシュウ酸塩からラミブジンを製造する方法は以下のとおりである。

エタノール1000mlには、ラミブジンシュウ酸塩(本発明の方法により製造されるもの)120gを添加し、40〜45℃で30分間以内でトリエチルアミン60mlを添加し、温度を維持しながら4時間撹拌し、室温で遠心分離し、製品を40〜45℃で真空乾燥して、ラミブジンの結晶が得られる。
【0037】
公知の方法により、液相クロマトグラフィーを使用して上記の方法で得られたラミブジンの結晶を監視する。装置とクロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
装置:WATERSE2695 QuatPump
検出器:WATERS2489紫外吸光検出器
ワークステーション:Empower2ソフトウェア
クロマトグラフィーカラム:Thermo社BDS HYPERSIL C18(250×4.6mm)
移動相:メタノール−0.025mol/L酢酸アンモニウム溶液(酢酸でpH3.9に調整する)(5:95)
流速:1.0ml/min
監視波長:277nm
カラム温度:30℃
正規化法により算出したところ、ラミブジンの純度が98%以上であるが、典型的には99.6%である。
【0038】
2、ラミブジンサリチル酸塩からラミブジンを製造する工程について、中国特許ZL95193466.Xの実施例1(d)に開示された内容を参照する。
当該特許明細書には、ラミブジンサリチル酸塩66.7gからラミブジンを製造するために、トリエチルアミン26mlが必要であるという内容が記載され、モルと体積との比に換算すれば、約1mol:150mlとなる。
【0039】
対比結果は表1に示される。

表1から、ラミブジンシュウ酸塩を中間体としてラミブジン1molを製造する場合は、トリエチルアミンの使用量が15ml少なくなることが分かり、産業用において、この減少量により、トリエチルアミンの投与量を大幅減少できる。それは、毒性を持つ化学試薬による危険性を減少させるとともに、原料のコストも減らされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1はラミブジンシュウ酸塩の結晶のX線回折図である。
【図2】図2はラミブジンシュウ酸塩の結晶の示差走査熱量測定図(DSC図)である。
【実施例】
【0041】
以下、具体的な実施例により本発明の内容をさらに詳しく説明するが、本発明を限定するものではない。
【0042】
実施例1
水426mLにリン酸二カリウム191.8gを添加し、溶解するまで撹拌し、温度を18℃にコントロールする。エタノール1Lを添加し、10分間撹拌し、さらにラミブジン原料であるCME140gを添加し、温度を18〜20℃に維持し、1時間以内で水素化ホウ素ナトリウム溶液(水素化ホウ素ナトリウム溶液の調製方法:まず0.4%の水酸化ナトリウム水溶液を調製した後、水素化ホウ素ナトリウム28gを当該水酸化ナトリウム溶液150mLに溶解する)を滴下し、完全に反応するまで監視した。
【0043】
置いて二層に分離させ、下層となる水層をエタノール160mLで洗浄し、有機相を合わせた後6mol/L塩酸でpH6〜6.5に調整し、温度を28〜32℃に維持した。さらに、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム1.12kg/水14L)を用いてpH8.0〜8.3に調整する。エタノールを蒸留させ、残渣を冷却して室温に戻し、水280mlを添加して溶解させ、トルエン240mlで二回洗浄し、トルエン層を合わせた後水70mlで抽出し、全ての水層を合わせた後、活性炭6gを添加し、室温で30分間撹拌し、濾過し、ろ過ケーキを水180mlで洗浄した。全ての水層を合わせた後、シュウ酸25gを添加し、撹拌し、遠心分離し、ろ過ケーキを少量の水で洗浄し、さらに冷たいメタノール68mlで洗浄し、製品を40〜45℃で真空乾燥した。ラミブジンシュウ酸塩が得られた。
【0044】
(1)核磁気実験
装置:BrukerAV400核磁気共鳴分光計
溶媒:D0(重水)
1HNMR (D2O) δH: 3.18 (dd, 1H); 3.49 (dd, 1H); 3.79 (dd, 1H); 3.94 (dd, 1H); 5.25 (t, 1H); 6.03 (d, 1H); 6.24 (dd, 1H); 8.12 (d, 1H)
【0045】
(2)X線回折実験
装置:RigakuD/Max−RCX線回折;
測定条件:40kv100mA; DS=SS=1° RS=0.3mm
ターゲット:Cu
レンジ:3.00−40.00
走査レート:10.00Deg/min
【0046】

【0047】
(3)ラミブジンシュウ酸塩の結晶のDSCについて、その吸熱転移温度の開始転移温度は199.23℃であり、ピーク値は201.87℃であり、加熱速度は10.00℃/minである。融点は201.3−202.7℃である。装置番号はwaters2414である。
【0048】
実施例2
エタノール1000mlにラミブジンシュウ酸塩(本発明の方法により製造するもの)120gを添加し、40〜45℃で30分間以内でトリエチルアミン60mlを添加し、温度を維持しながら4時間撹拌し、室温で遠心分離し、製品を40〜45℃で真空乾燥し、ラミブジンの結晶が得られた。
【0049】
前工程で得られる製品65gを取り、エタノール1Lを添加し、昇温しながら30分間還流し、固体を完全に溶解させた。活性炭4gを添加し、引き続き30分間還流し、そのまま濾過した。反応混合物を3〜4時間かけて室温まで冷却し、温度を維持しながら6時間撹拌し、濾過し、ろ過ケーキを少量のエタノールで洗浄した。生成物を、40〜45℃で真空乾燥して、高純度ラミブジンを得た。純度は99.6%であった。
測定したところ、ラミブジンの融点が174−177℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:

を有することを特徴とするラミブジンシュウ酸塩。
【請求項2】
ラミブジンシュウ酸塩の結晶。
【請求項3】
Cu-Kα線を利用する粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ(°)で示すと、21.04、22.44、23.46、23.78、25.26に吸収ピークがあることを特徴とする請求項2に記載のラミブジンシュウ酸塩の結晶。
【請求項4】
粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ(°)で示すと、13.94、14.86、21.04、21.30、22.44、23.46、23.78、25.26、33.36に吸収ピークがあることを特徴とする請求項3に記載の結晶。
【請求項5】
DSC吸熱転移ピークは約201.9℃であり、開始転移温度は約199℃であることを特徴とする請求項3又は4に記載のラミブジンシュウ酸塩の結晶。
【請求項6】
以下の工程:

(ここで、RはC1-10アルキル基を含む置換されていてもよい直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であり、置換基はアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニルなどである。上記のシュウ酸にはシュウ酸誘導体が含まれ、その中の還元試薬には水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムが含まれる。Rがメンタニル基、フェニル置換メンタニル基であることは好ましく、より好ましくはL−メンタニル基、L−8−フェニル置換メンタニル基である。)
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のラミブジンシュウ酸塩の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のラミブジン塩を適切な塩基と反応させることを含み、塩基は第三級アミンであることが好ましく、より好ましくはトリエチルアミンであるラミブジンの製造方法。
【請求項8】
以下の工程:

(ここで、RはC1-10アルキル基を含む置換されていてもよい直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であり、置換基はアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニルなどである。Rがメンタニル基、フェニル置換メンタニル基であることは好ましく、より好ましくはL−メンタニル基、L−8−フェニル置換メンタニル基である。)
を含み、
具体的には、式IIIの化合物を還元し、シュウ酸又はその誘導体との塩を生じせしめ、さらに対応の塩基を遊離させて式Iの化合物を得、ここで、式IIIの化合物から式IIの化合物への変換の工程に用いられる反応試薬には、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムが含まれるラミブジンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のラミブジンシュウ酸塩のラミブジンの製造における用途。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のラミブジンシュウ酸塩の抗ウィルス剤への用途。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−520449(P2013−520449A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554198(P2012−554198)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/CN2010/080151
【国際公開番号】WO2011/103762
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512221496)チャンスー チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】