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ラメ加工糸とその製造方法およびこのラメ加工糸を用いた編織物
説明

ラメ加工糸とその製造方法およびこのラメ加工糸を用いた編織物

【課題】適度のストレッチ性を備え、しかも嵩高で柔らかく、ソフトな風合いを備えたラメ加工糸及びその編織物を提供する。
【解決手段】マルチフィラメント糸2とラメ糸3とを、そのマルチフィラメント糸2よりもラメ糸3の給糸速度を高くして、同時仮撚りするラメ加工糸の製造方法。捲縮させたマルチフィラメント糸2と、その周囲に配されるラメ糸3とを有しており、ラメ糸3に、マルチフィラメント糸2の周囲を一方向へ捲回した未解撚部と、逆方向へ捲回した過解撚部とを長さ方向に繰り返し形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時仮撚りすることで、捲縮されたフィラメント糸と、その周囲に配されたラメ糸とを備える、適度のストレッチ性と優れた嵩高性とを兼ね備えるラメ加工糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、優れたストレッチ性を得るためポリウレタン系弾性繊維を芯糸として用い、この芯糸の周囲にポリアミド繊維やポリエチレンテレフタレート繊維などを鞘糸として一重あるいは二重に被覆したカバリング糸が、ストッキング、ソックス、インナーなど一般衣料用途に使用されてきた(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
これに伴い、意匠性に優れた編織物に使用されるラメ糸についても同様に、芯糸に弾性糸を用いてストレッチを持たせた素材が多々提案されている。例えば、弾性糸からなる芯糸に捲縮加工糸を巻き付け、その上から金属線や箔糸を1重もしくは2重に巻き付けたもの(例えば特許文献2参照、以下、従来技術1という。)や、弾性糸からなる芯糸にラメ糸を一方向に巻き付け、その上から逆方向にポリアミド繊維などの糸を巻き付けたダブルカバリング構造のラメ加工糸が提案されている(例えば特許文献3参照、以下、従来技術2という。)。さらに、染色されたポリトリメチレンテレフタレート繊維の捲縮糸からなる芯糸に、ラメ糸をシングルカバーしたラメ加工糸も提案されている(例えば特許文献4参照、以下、従来技術3という。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−178845号公報
【特許文献2】特開昭61−194235号公報
【特許文献3】特開平10−1833号公報
【特許文献4】特開2003−155634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術1および2に準じて製造したラメ加工糸では、ゴム弾性を有する繊維、とりわけポリウレタン弾性繊維が芯糸に使用され、その周囲にラメ糸がカバリングしてある。これらの従来技術では、ラメ糸が芯糸の周囲へ強固に巻き付けてあるので、嵩高なラメ加工糸や柔らかい風合いのラメ加工糸にすることが容易でない。また、これらの従来技術のラメ加工糸を用いて編織物を形成したとき、ストレッチ性は優れるものの、ストレッチされていない状態では生地が厚くなり、近年のトレンドである薄地化(即ち、目付けを小さくすること)に対応できない問題もある。
【0006】
一方、上記の従来技術3では、芯糸に捲縮糸を使用し、その上からラメ糸をシングルカバーしてあるので、従来技術1や従来技術2に比べるとより嵩高で柔らかく、風合いについて若干の改善がなされている。しかしこの従来技術3では、ラメ糸を実撚りすることでカバリングされているため、得られたラメ加工糸が硬さの残ったものとなる問題があり、より嵩高で柔らかい風合いのラメ加工糸が望まれている。
【0007】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、適度のストレッチ性を備え、しかも嵩高で柔らかくソフトな風合いの、ラメ加工糸とその製造方法およびそのラメ加工糸を用いた編織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図3に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明1はラメ加工糸の製造方法に関し、マルチフィラメント糸(2)とラメ糸(3)とを、そのマルチフィラメント糸(2)よりもラメ糸(3)の給糸速度を高くして、同時仮撚りすることを特徴とする。
【0009】
本発明2はラメ加工糸に関し、捲縮させたマルチフィラメント糸(2)と、その周囲に配されるラメ糸(3)とを有しており、このラメ糸(3)に、マルチフィラメント糸(2)の周囲を一方向へ捲回された未解撚部(4)と逆方向へ捲回された過解撚部(5)とが、そのマルチフィラメント糸(2)の長さ方向に繰り返して形成してあることを特徴とする。
【0010】
また本発明3は編織物に関し、上記の本発明2のラメ加工糸(1)を用いて織成または編組したことを特徴とする。
【0011】
ここで、上記の同時仮撚りとは、マルチフィラメント糸とラメ糸とを一緒にして仮撚りすることをいう。また仮撚りとは、糸に所定の撚りを与え(以下、加撚処理ともいう)、熱セットしたのちその撚りを解く(以下、解撚処理ともいう)処理をいう。この加撚処理と熱セット処理と解撚処理は、それぞれ独立した工程で処理してもよいが、一連の工程で行うと簡単に仮撚り加工ができて好ましい。
【0012】
上記の本発明1により製造されたラメ加工糸は、マルチフィラメント糸とラメ糸とを同時仮撚りすることにより、マルチフィラメント糸が捲縮するとともに、両糸が互いにこなれあい、混繊される。このとき、そのマルチフィラメント糸よりもラメ糸の給糸速度が高いので、ラメ糸はマルチフィラメント糸の周囲に一方向とその逆方向とへ捲回された状態に配され、未解撚部と過解撚部とがマルチフィラメント糸の長さ方向に繰り返して形成される。
【0013】
なお、上記の未解撚部と過解撚部は、いずれもラメ糸がマルチフィラメント糸の周囲を捲回するように配置されておればよく、その捲回はラメ糸がマルチフィラメント糸の周囲を例えば半周するなど、必ずしも一周以上捲回されている必要はない。しかしこのラメ糸が、上記の未解撚部と過解撚部とで、それぞれマルチフィラメント糸の周囲を一周以上捲回していると、マルチフィラメント糸を芯糸とし、ラメ糸を鞘糸とした芯鞘構造のラメ加工糸にでき、捲縮したマルチフィラメント糸がほぐれたり分繊したりすることを防止できるうえ、ラメ加工糸の周囲の全方向からこのラメ糸を目視できるので、優れた意匠性を発揮できて、より好ましい。
【0014】
また上記の製造方法などにより得られたラメ加工糸は、上記のマルチフィラメント糸が捲縮されているので適度のストレッチ性を備えている。また上記のラメ糸は、未解撚部と過解撚部とが繰り返し形成されているので、実撚りした場合と異なって、上記のマルチフィラメント糸をラメ糸で過剰に締め付けることがなく、この結果、嵩高で柔らかなラメ加工糸が得られる。
そしてこのラメ加工糸を用いた上記の本発明3の編織物は、そのラメ加工糸が嵩高で柔らかなことから、生地薄で目付けが小さく、ソフトな風合いのものとなる。
【0015】
上記の同時仮撚りにおいて、マルチフィラメント糸とラメ糸の各給糸速度は、マルチフィラメント糸よりもラメ糸の給糸速度が高ければよく、両糸の各給糸速度は特定の値に限定されない。
しかし、上記のマルチフィラメント糸のオーバーフィード率OFと、ラメ糸のオーバーフィード率OFとが、それぞれ下記式(F1)と式(F2)を満足していると、ラメ糸に上記の未解撚部と過解撚部とを確実に形成することができ、しかもラメ糸に過度の弛みを生じることがなく、ラメ加工糸からこのラメ糸が部分的に飛び出すことが防止されて、より好ましい。
OF ≧ 0 …(F1)
0 < OF−OF ≦ 70 …(F2)
ここで、
DR:ラメ加工糸(1)の引取り速度、
FC:マルチフィラメント糸(2)の給糸速度、
FE:ラメ糸(3)の給糸速度、
としたとき、
OF =(VFC−VDR)/VDR×100(%)、
OF =(VFE−VDR)/VDR×100(%)、
である。
【0016】
上記の仮撚りは、上記のマルチフィラメント糸が捲縮され、上記のラメ糸がそのマルチフィラメント糸の周囲に配されればよく、上記の加撚処理における仮撚り数は特定の値に限定されない。しかしこの仮撚り係数Kが下記式(F3)を満足する場合は、マルチフィラメント糸を適度に捲縮できて好ましい。
25000 ≦ K ≦ 42000 …(F3)
ここで、
T:ラメ糸の仮撚り数(回/m)、
D:ラメ糸全体の繊度(dtex)、
としたとき、
K = T × D1/2
である。
なお、上記の仮撚り数とは、仮撚り工程における加撚処理での撚り数をいい、例えば仮撚機のツイスタの回転速度を、加工糸の引取り速度(デリベリローラーの表面速度)で除した値が設定値として使用される。
【0017】
上記のラメ加工糸は、ラメ糸の比率を大きくして意匠性を向上させるため、ラメ糸のオーバーフィード率OFを上げていくと、上記の未解撚部と過解撚部だけでは、オーバーフィードされたラメ糸の糸長を充分に吸収しきれずに、ラメ糸が余る虞がある。ラメ糸が過剰に余ると、ラメ加工糸の解舒性が低下して、織成時や編成時に糸切れを生じるなど、ラメ加工糸の通過性等に問題を生じる場合がある。
このため、特にラメ糸のオーバーフィード率が高いなど、ラメ糸が過剰に余る虞がある場合は、仮撚り加工後に交絡処理を施すと、ラメ加工糸の収束性が改善され、解舒性が向上するので好ましい。
【0018】
上記の本発明2のラメ加工糸は、上記のラメ糸の未解撚部の撚り数と過解撚部の撚り数とが、必ずしも一致する必要はない。しかしこれらの撚り数が実質的に等しく、従ってラメ糸が実質的に無撚りであると、ラメ加工糸を一層、嵩高で柔らかな風合いにできて好ましい。ここで、撚り数が実質的に等しいとは、ラメ加工糸を部分的に観察するといずれか一方が多い場合であっても、ラメ加工糸の長い範囲に亘って平均化すれば、未解撚部の撚り数と過解撚部の撚り数とが互いに等しい状態をいう。
なお、上記の本発明2のラメ加工糸は、特定の製造方法によるものに限定されないが、上記本発明1により製造すると簡単に且つ確実に製造できて好ましい。
【0019】
上記のマルチフィラメント糸は、仮撚りにより捲縮するマルチフィラメントからなる糸であればよく、特定の材質にものに限定されない。具体的には、例えばポリエステル繊維やポリアミド繊維などは、仮撚りが容易であるので好ましい。特に、このマルチフィラメント糸がポリエステル複合繊維からなり、このポリエステル複合繊維が、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であると、上記の仮撚りによりこのマルチフィラメント糸を確実に且つ良好に捲縮でき、嵩高で良好なストレッチ性を備えたラメ加工糸にできて好ましい。
【0020】
一方、上記のラメ糸は、金属光沢を備えたものであればよく、金属箔などを用いてもよい。しかしこのラメ糸が、合成樹脂フィルムに金属を蒸着させて形成してあると、安価に製造できるうえ合成樹脂フィルムを無色にすることでラメ糸を金属自体の色にでき、またその合成樹脂を着色することで任意の色彩の金属光沢を備えることができるので、意匠性を良好に発揮できて好ましい。
【0021】
上記のラメ加工糸のストレッチ性を示す伸縮伸長率は、上記のマルチフィラメント糸の材質や捲縮状態、ラメ糸の捲回状態などによって異なり、特定の値に限定されない。しかしこのラメ加工糸の伸縮伸長率が25%以上であると、これを用いた編織物が適度のストレッチ性を良好に備えるのでより好ましい。この伸縮伸長率は、ラメ加工糸のストレッチ性を過度に高めると生地が厚くなるので、45%以下であることが好ましい。
なお、上記のラメ加工糸の伸縮伸長率は、JIS L 1013(2010)「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.11 伸縮性 a)A法(1本ずつ測定する場合)」に記載の試験方法に準じて測定される。
【0022】
上記のラメ加工糸のかさ高度も、上記のマルチフィラメント糸の材質や捲縮状態、ラメ糸の捲回状態などによって異なり、特定の値に限定されない。しかしこのかさ高度が5cm/g以上であると、エアージェット織機(AJL)において緯糸にこのラメ加工糸を用いた場合、その緯糸をエアーに乗せて飛ばしやすいうえ、これを用いた編織物は柔らかくソフトな風合いを備え、また容易に薄地化(目付けを低減化)できるので、より好ましい。このかさ高度の上限は、特に制限されるものでないが、一般的には25cm/g程度となる。
なお、上記のラメ加工糸のかさ高度は、JIS L 1013(2010)「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.16 かさ高性 a)A法(並列法)」に記載の試験方法に準じて測定される。
【0023】
上記の本発明3の編織物は、上記の本発明2のラメ加工糸を用いてあればよく、このラメ加工糸を単独で用いて織成または編組したものであってもよく、或いは、他の糸と任意の割合で組み合わせて織成または編組したものであってもよい。この場合、上記の他の糸は天然繊維と合成繊維のいずれであってもよく、特定の材質のものに限定されない。この他の糸は、伸縮性を備えていると編織物全体の伸縮性が良好に発揮される。しかしこの他の糸は、伸縮性が低い場合や伸縮性を備えていない場合であっても良く、この場合も、上記のラメ加工糸を組み合わせて用いることで編織物全体としての伸縮性が発揮され、しかもラメ糸による意匠性が良好に発揮される。なお上記の織成や編組は、任意の組織構造を採用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0025】
(1)マルチフィラメント糸とラメ糸とを一緒に仮撚りするので、マルチフィラメント糸を捲縮でき、ラメ糸の給糸速度をマルチフィラメント糸の給糸速度よりも高くしているので、このラメ糸をマルチフィラメント糸の周囲に配することができる。この結果、適度のストレッチ性を備えるとともに、嵩高で柔らかなラメ加工糸を得ることができる。
【0026】
(2)上記のラメ加工糸は、マルチフィラメント糸が捲縮されており、その周囲にラメ糸が配され、そのラメ糸に未解撚部と過解撚部とが形成されるので、適度のストレッチ性を備えるとともに、嵩高で柔らかな風合いを備えている。また、このラメ糸は嵩高であるので、エアージェット織機において緯糸に用いた場合、その緯糸をエアーに乗せて飛ばしやすく、簡単に且つ確実に織成することができる。しかもラメ糸がラメ加工糸の周囲に配されているので、良好な意匠性を発揮することができ、例えばデニム生地などに好ましく用いられて10%程度の伸縮性を備えた編織物にすることができる。
【0027】
(3)上記のラメ加工糸は、適度のストレッチ性を備え、嵩高で柔らかであるので、このラメ加工糸を用いた編織物は、適度のストレッチ性を備えるとともに、嵩高で柔らかな風合いを備えている。しかも、ラメ糸は仮撚りされているだけであるので目付けを小さくして生地の薄地化に対応できるうえ、ラメ糸が芯糸の周囲に配されているので、意匠性の優れた編織物にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のラメ加工糸の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のラメ加工糸の製造に使用される、製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明のラメ加工糸の製造に使用される、交絡処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明のラメ加工糸の実施例の、製造条件と物性の対比表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のラメ加工糸の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、このラメ加工糸(1)は、捲縮させたマルチフィラメント糸(2)と、このマルチフィラメント糸(2)の周囲に配されたラメ糸(3)とを有している。このラメ糸(3)には、マルチフィラメント糸(2)の周囲に一方向へ捲回した、例えばS撚りの未解撚部(4)と、逆方向へ捲回した、例えばZ撚りの過解撚部(5)とが、そのマルチフィラメント糸(2)の長さ方向に繰り返して形成してある。このため、このラメ加工糸(1)は、マルチフィラメント糸(2)を芯糸とし、ラメ糸(3)を鞘糸とする芯鞘構造となっている。しかし上記の未解撚部(4)の撚り数と過解撚部(5)の撚り数とは、実質的に互いに等しく形成されており、従ってこのラメ加工糸(1)は、実質的には無撚りの状態となっている。
【0030】
上記のマルチフィラメント糸(2)を構成する繊維としては、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維など、仮撚り加工を施すことで捲縮される任意のフィラメントを用いることができる。しかし、より優れたストレッチを付与する観点から、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするなど、2種類のポリエステル材料を複合させた、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル複合繊維が特に好ましい。このポリエステル複合長繊維の単糸断面形状がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であることにより、この複合長繊維からなる糸条に熱が付与された際、コイル状捲縮がより確実に発現し、糸条に良好な伸縮性を付与することができる。
【0031】
上記のポリエステル複合繊維は、ラメ加工糸(1)が十分なストレッチ性を得るため、上記のポリエステル材料はそれぞれの極限粘度が互いに異なる。このように極限粘度の異なる二つの重合体が貼り合わされることによって、紡糸・延伸時に高粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なり、熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮するために単繊維内で歪みが生じて、上記の複合繊維が3次元コイル状に捲縮する。この3次元コイルのコイル径と単繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分(高粘度側成分)と低収縮成分(低粘度側成分)との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。ストレッチ素材としてコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多く、コイルの耐へたり性がよい(伸縮回数に応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れること)と、伸長特性に優れ、見映えがよいことから、好ましい。また上記の3次元コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性と回復性を有することが好ましい。具体的には、上記の低粘度側のポリエステルの極限粘度[ηb]と高粘度側のポリエステル極限粘度[ηa]の極限粘度比([ηb]/[ηa])は、0.3〜0.8であることが好ましい。
【0032】
上記のポリエステル複合繊維に用いられる、上記のポリエチレンテレフタレートとしては、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなり、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルが好ましい。このポリエチレンテレフタレートには、他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、その割合は、好ましくは10モル%以下とされる。この共重合可能な化合物としては、スルフォン酸、ナトリウムスルフォン酸、硫酸、硫酸エステル、硫酸ジエチル、硫酸エチル、脂肪族スルフォン酸、エタンスルフォン酸、クロロベンゼンスルフォン酸、脂環式スルフォン酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、アジピン酸、シュウ酸、デカンジカルボン酸などのジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸などのジカルボン酸類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0033】
一方、上記のポリエステル複合繊維に用いられる、上記のポリトリメチレンテレフタレートとしては、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなり、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルが好ましい。このポリトリメチレンテレフタレートには、他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、その割合は、好ましくは10モル%以下とされる。この共重合可能な化合物としては、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマー酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0034】
上記のポリトリメチレンテレフタレートは、代表的なポリエステル長繊維であるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートと同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性がきわめて優れている。これは、ポリトリメチレンテレフタレートの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュ構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0035】
本発明において、上記のポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度は、得られたコイル状捲縮を良好に発現させ、編織物を形成した際に所望の伸縮性を得る観点から、1.0以上であるのが好ましく、1.2以上であるのがより好ましい。
【0036】
なお上記のポリエステル複合長繊維におけるポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率は、製糸性や繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の観点から、30/70以上70/30以下の範囲に設定され、好ましくは35/65以上65/35以下、より好ましくは40/60以上60/40以下の範囲に設定される。
【0037】
上記のラメ加工糸(1)に用いられるマルチフィラメント糸(2)の繊度は、特定の値に限定されず、好ましくは、例えば30〜350デシテックスのものが用いられるが、このラメ加工糸を用いて織成または編組された編織物の用途などに応じて、これら以外の繊度であってもよい。
【0038】
上記のラメ糸(3)は金属光沢を備えておればよく、特定の材質のものに限定されない。例えば、ポリエステルやポリアミドなどの合成樹脂製フィルムに、銀やアルミニウムなどの金属を蒸着させ、これを所定幅に裁断して形成したものを用いてある。
【0039】
上記のラメ加工糸(1)は、上記のマルチフィラメント糸(2)が捲縮されており、上記のラメ糸(3)は未解撚部(4)と過解撚部(5)とを備えておって、実質的に撚りが無いことから、例えば40〜180%程度などの、優れた伸縮伸長率を備えている。またこのラメ加工糸(1)は、かさ高度が例えば5〜25cm/g程度に設定してある。
【0040】
次に、上記のラメ加工糸(1)の製造方法について説明する。このラメ加工糸(1)は、上記のマルチフィラメント糸(2)とラメ糸(3)とを、そのマルチフィラメント糸(2)よりもラメ糸(3)の給糸速度を高くして、同時仮撚りすることにより製造される。
【0041】
上記のラメ加工糸(1)は、例えば図2に示すラメ加工糸製造装置(6)で製造される。
この製造装置(6)は、図2に示すように、マルチフィラメント糸(2)及びラメ糸(3)の供給部(7)と、製造されたラメ加工糸(1)の巻取り部(8)との間に、マルチフィラメント糸(2)の給糸ローラーである第1フィードローラー(9)と、ラメ糸(3)の給糸ローラーである第2フィードローラー(10)と、加熱手段であるヒーター(11)と、加撚手段であるツイスタ(12)と、ラメ加工糸(1)を引取るデリベリーローラー(13)とを順に備えており、巻取り部(8)にラメ加工糸(1)をパッケージ(14)へ巻き取るテイクアップローラー(15)を備えている。そして、上記の両フィードローラー(9・10)とツイスタ(12)との間が加撚ゾーン(16)とされ、このツイスタ(12)とデリベリーローラー(13)との間が解撚ゾーン(17)とされている。
【0042】
上記のヒーター(11)は、ここを通過するマルチフィラメント糸(2)を熱セットするため所定温度で加熱できるものであればよく、特定の加熱手段に限定されない。
また上記のツイスタ(12)は、ピン、フリクションディスク、ベルトのいずれの形式のものであってもよいが、マルチフィラメント糸(2)の張力が緩んでも確実に撚りを付与できる点から、ピン形式であるのが好ましい。
【0043】
上記のラメ加工糸製造装置(6)は、必要に応じて、図3に示すように上記のデリベリーローラー(13)と巻取り部(8)との間に交絡処理装置(20)を備えていてもよい。
即ちこの交絡処理装置(20)は、デリベリーローラー(13)と交絡用引取りローラー(19)との間に交絡ノズル(18)が配置してある。この交絡ノズル(18)からは、デリベリーローラー(13)から供給される仮撚りされたラメ加工糸(1)に対して、所定圧の空気が吹き付けられる。
【0044】
次に、上記の製造装置を用いてラメ糸加工糸を製造する手順について説明する。
最初に、上記の供給部(7)から、上記のマルチフィラメント糸(2)が第1フィードローラー(9)により給糸され、上記のラメ糸(3)が第2フィードローラー(10)により給糸される。両糸(2・3)は一緒にされて上記のツイスタ(12)により加撚ゾーン(16)で所定方向に同時仮撚りされ、ヒーター(11)上で加熱されて熱セットされる。
【0045】
この熱セットされた仮撚り糸は、上記のツイスタ(12)を通過して、上記のデリベリーローラー(13)に引き取られるが、このツイスタ(12)とデリベリーローラー(13)との間の解撚ゾーン(17)で、上記の仮撚りが解撚される。これにより得られたラメ加工糸(1)は、マルチフィラメント糸(2)の周囲をラメ糸(3)が所定方向への捲回と反転方向への捲回とを交互に繰り返した構造となり、両捲回が互いに相殺されて、実質的には無撚りのラメ加工糸(1)となる。そしてこの実質的に無撚りのラメ加工糸(1)が、上記のデリベリーローラー(13)から送り出されて、上記のテイクアップローラー(15)によりパッケージ(14)へ巻き取られる。
【0046】
上記の加撚ゾーン(16)における上記の同時仮撚りの際、マルチフィラメント糸(2)よりもラメ糸(3)の給糸速度を高く設定してある。これにより、ラメ糸(3)の糸長がマルチフィラメント糸(2)の糸長よりも長くなり、マルチフィラメント糸(2)とラメ糸(3)とが合流する寸前において、マルチフィラメント糸(2)側の張力がラメ糸(3)の張力よりも大きくなる。この結果、仮撚りされた糸は上記のラメ糸(3)がマルチフィラメント糸(2)の外側に配され、マルチフィラメント糸(2)が芯糸でラメ糸(3)が鞘糸の芯鞘構造となる。
【0047】
上記の両糸(2・3)の給糸速度は、ラメ糸(3)による十分な被覆性を得ること、即ち、ラメ糸(3)がマルチフィラメント糸(2)の周囲へ確実に配されることを考慮し、より具体的には、マルチフィラメント糸(2)のオーバーフィード率OFと、ラメ糸(3)のオーバーフィード率OFとが、それぞれ下記式(F1)と式(F2)を満足するように設定される。
OF ≧ 0 …(F1)
0 < OF−OF ≦ 70 …(F2)
ここで、
DR:ラメ加工糸(1)の引取り速度、即ち、デリベリーローラー(13)の表面速度、
FC:マルチフィラメント糸(2)の給糸速度、即ち、第1フィードローラー(9)の表面速度、
FE:ラメ糸(3)の給糸速度、即ち、第2フィードローラー(10)の表面速度、
としたとき、
OF =(VFC−VDR)/VDR×100(%)、
OF =(VFE−VDR)/VDR×100(%)、
である。
【0048】
上記式(F1)では、ラメ糸(3)が加撚ゾーン(16)でオーバーフィードされていることを示し、仮撚りでの加撚張力が緩み、所謂、未解撚仮撚りを促進できる。さらに、上記式(F2)により、マルチフィラメント糸(2)とラメ糸(3)に糸長差を与え、芯鞘構造となるようにラメ糸(3)をマルチフィラメント糸(2)の周囲へ確実に配することができる。
【0049】
上記の仮撚りされた糸を熱セットするための、上記のヒーター(11)による加熱温度は、上記のマルチフィラメント糸(2)を充分に捲縮でき、しかも繊維の熱劣化による単糸切れや糸切れ、毛羽の発生を抑える等の観点から、好ましくは140℃以上220℃以下に設定される。ただし、サイドバイサイド型複合繊維などの所謂、潜在捲縮型のマルチフィラメント糸にあっては、その後の加熱処理により捲縮させることができるので、この仮撚り加工時での加熱処理を省略することも可能である。
【0050】
上記のツイスタ(12)により加撚される仮撚り数は、マルチフィラメント糸(2)の材質や繊度、ラメ加工糸(1)の繊度、付与する捲縮の度合い等によっても異なる。しかし、この仮撚り数にラメ加工糸(1)全体の繊度の平方根を乗じた仮撚り係数Kが、下記式(F3)を満足する場合は、マルチフィラメント糸を適度に捲縮できて好ましい。
25000 ≦ K ≦ 42000 …(F3)
ここで、
T:ラメ加工糸の仮撚り数(回/m)、
D:ラメ加工糸全体の繊度(dtex)、
としたとき、
K = T × D1/2
である。
【0051】
上記の仮撚り加工されたラメ加工糸(1)は、必要に応じて、上記のデリベリーローラー(13)とテイクアップローラー(15)との間で交絡処理が施される。
即ち図3に示すように、上記のデリベリーローラー(13)を通過したラメ加工糸(1)は、交絡用引取りローラー(19)との間で0〜10%程度、オーバーフィードされる状態で、上記の交絡ノズル(18)を通過する。このとき、この交絡ノズル(18)から所定圧の空気が吹き付けられ、これによりラメ加工糸(1)に交絡処理が施される。
【0052】
上記の製造装置(6)と製造方法により得られた本発明のラメ加工糸(1)は、適度の伸縮性と、嵩高でソフトな風合いを備えている。このため、このラメ加工糸(1)を単独で或いは他の糸と組み合わせて用いて、編組或いは織成した編織物は、例えば10%程度の伸縮性を備えるなど、適度の伸縮性があるため着用性やフィット性等に優れた衣料等にできるうえ、目付けを小さくして薄地化に対応できるとともに、柔らかで風合いに優れた生地にできる。しかもラメ糸(3)がラメ加工糸(1)の表面に配されるため、良好な意匠性を発揮でき、例えばデニム生地などの編織物にされ、この編織物を用いて衣料等にされる。
【実施例】
【0053】
以下、上記の製造装置(6)を用いて製造した実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
糸構成として、マルチフィラメント糸(2)に44デシテックス、24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用い、ラメ糸(3)に厚さ12μm、幅0.1515mm、繊度が29デシテックス相当の金糸(泉工業株式会社製、商品名:ジョーテックススレンダー、黄色層でコーティングしたポリエステルフィルムのコーティング面に銀を蒸着したもの2枚を、銀蒸着面が内側になるようにラミネートしたもの)を用いた。
【0055】
上記のサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維は、次の手順で製造した。極限粘度(ηa)が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと、極限粘度(ηb)が0.52のポリエチレンテレフタレートとをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金より、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、132デシテックス24フィラメントの未延伸糸を得た。なお上記の極限粘度比([ηb]/[ηa])は、0.40である。またこれらの極限粘度(η)は、オルソクロロフェノール10mLに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
次に上記の未延伸糸を、ホットロール−熱板系延伸機を用いて、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸し、44デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を得た。
【0056】
上記の製造装置(6)により、上記の糸構成と次の糸加工条件で糸加工して、実施例1のラメ加工糸(1)を得た。なお、この実施例1のラメ加工糸(1)の仮撚り係数Kは、34664であった。
・加工速度、即ちデリベリーローラー(13)の表面速度:50m/分
・マルチフィラメント糸(2)のオーバーフィード率OF:+5%
・ラメ糸(3)のオーバーフィード率OF:+7.2%
・ツイスタ(12):ピン形式
・仮撚り数:3943回/m
・ヒーター温度:170℃
・交絡処理:あり
使用ノズル:交絡ノズル
交絡フィード率:+4%
交絡空気圧:0.16MPa
【0057】
[実施例2]
糸構成として、マルチフィラメント糸(2)に167デシテックス、72フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用い、ラメ糸(3)に厚さ12μm、幅0.2331mm、繊度が50デシテックス相当の金糸(泉工業株式会社製、商品名:ジョーテックス、黄色層でコーティングしたポリエステルフィルムのコーティング面に銀を蒸着したもの2枚を、銀蒸着面が内側になるようにラミネートしたもの)を用いた。
上記のサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維は、実施例1と同じ原料を用い、複合紡糸口金を72孔とした他は同じ紡糸条件で、500デシテックス72フィラメントの未延伸糸を得たのち、実施例1と同じ延伸条件で延伸して167デシテックス72フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を得た。
【0058】
上記の製造装置(6)により、上記の糸構成と次の糸加工条件で糸加工して、実施例2のラメ加工糸(1)を得た。なお、この実施例2のラメ加工糸(1)の仮撚り係数Kは、31730であった。
・加工速度、即ちデリベリーローラー(13)の表面速度:50m/分
・マルチフィラメント糸(2)のオーバーフィード率OF:+5%
・ラメ糸(3)のオーバーフィード率OF:+7.2%
・ツイスタ(12):ピン形式
・仮撚り数:2097回/m
・ヒーター温度:170℃
・交絡処理:あり
使用ノズル:交絡ノズル
交絡フィード率:+4%
交絡空気圧:0.16MPa
【0059】
[実施例3]
糸構成として、マルチフィラメント糸(2)に44デシテックス、24フィラメントのポリエステル延伸糸を用い、ラメ糸(3)に実施例1と同じ、厚さ12μm、幅0.1515mm、繊度が28デシテックス相当のラメ糸銀糸(泉工業株式会社製、商品名:ジョーテックススレンダー、透明層でコーティングしたポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの2枚を銀蒸着面が内側になるようにラミネートしたもの)を用いた。
【0060】
上記の製造装置(6)により、上記の糸構成と次の糸加工条件で糸加工して、実施例3のラメ加工糸(1)を得た。なお、この実施例3のラメ加工糸(1)の仮撚り係数Kは、27907であった。
・加工速度、即ちデリベリーローラー(13)の表面速度:50m/分
・マルチフィラメント糸(2)のオーバーフィード率OF:+5%
・ラメ糸(3)のオーバーフィード率OF:+18%
・ツイスタ(12):ピン形式
・仮撚り数:3135回/m
・ヒーター温度:170℃
・交絡処理:あり
使用ノズル:交絡ノズル
交絡フィード率:+4%
交絡空気圧:0.16MPa
【0061】
[実施例4]
糸構成として、マルチフィラメント糸(2)に80デシテックス、24フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸を用い、ラメ糸(3)に実施例3と同じ、厚さ12μm、幅0.1515mm、繊度が28デシテックス相当の銀糸(泉工業株式会社製、商品名:ジョーテックススレンダー、透明層でコーティングしたポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの2枚を銀蒸着面が内側になるようにラミネートもの)を用いた。
【0062】
上記の製造装置(6)により、上記の糸構成と次の糸加工条件で糸加工して、実施例4のラメ加工糸(1)を得た。なお、この実施例4のラメ加工糸(1)の仮撚り係数Kは、40114であった。
・加工速度、即ちデリベリーローラー(13)の表面速度:50m/分
・マルチフィラメント糸(2)のオーバーフィード率OF:−40%
・ラメ糸(3)のオーバーフィード率OF:+18%
・ツイスタ(12):ピン形式
・仮撚り数:4456回/m
・ヒーター温度:170℃
・交絡処理:なし
【0063】
上記の各実施例のラメ加工糸について、それぞれ伸縮芯伸長率とかさ高度を、次の測定方法により測定した。
【0064】
[伸縮伸長率(%)]
JIS L 1013(2010)「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.11 伸縮性 a)A法(1本ずつ測定する場合)」に記載の試験方法に準じて測定を行った。
即ち、試料の上端をクランプで固定し、0.176mN×表示テックス数の荷重をかけて垂下し、30秒後上部クランプから20cm(a)の位置に印をつけ、次に8.82mN×表示テックス数の荷重をかけて30秒後の上部クランプから上記印までの試料長さ(b)を測定し、下記式にて伸縮伸長率を算出する。
伸縮伸長率(%) = [(b−a)/a]×100
試験回数は20回とし、その平均値を伸縮伸長率とした。
【0065】
[かさ高度(cm/g)]
JIS L 1013(2010)「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.16 かさ高性 a)A法(並列法)」に記載の試験方法に準じて測定を行った。
即ち、中央に約4cm×4cmの開口を形成した紙枠を用いて、試料を約4cm×4cmの大きさに自然の状態で重ならない程度に接して平行に並べ、両端を接着剤で紙枠に固定して試験片とする。この試験片3枚を糸方向が交互になるように重ねて1組とし、これを圧縮弾性試験機で圧縮面積2cmに初荷重(6cN)を加えて厚さt(mm)を測定する。この重ねた試験片から接着剤の部分を除去し、表面積A(cm)と質量W(g)を測定して、下記式にてかさ高度を算出する。
かさ高度(cm/g) = (A×t)/(W×10)
試験回数は5回とし、その平均値をかさ高度とした。
【0066】
上記の測定結果を、図3の物性等対比表に示す。この測定結果から明らかなように、本発明の各実施例は、いずれも適度のストレッチ性と優れた嵩高性を示した。しかも、交絡処理を施した実施例1から3のラメ加工糸は収束性にも優れており、良好に解舒することができた。
【0067】
またこれらの各実施例のラメ加工糸で織成したところ、ラメ糸が表面にあって意匠性が高いうえ、適度のストレッチ性を備えており、しかも目付けが小さく薄地化された、柔らかな風合いの生地が得られた。
【0068】
上記の実施形態や実施例で説明したラメ加工糸とその製造方法は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、糸構成や糸加工条件等は上記の実施形態や実施例のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0069】
例えば、上記の実施例では、マルチフィラメント糸として、サイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維やポリエステル延伸糸を用いた。しかし本発明では、仮撚りにより捲縮できる繊維であれば、他の材料の繊維を単独で或いは複数種を組み合わせて用いたマルチフィラメント糸であってもよい。
また上記の実施形態では、ラメ糸としてポリエステルフィルムに銀を蒸着したものを用いた。しかし本発明に用いるラメ糸は、例えばポリアミドなど他の合成樹脂フィルムを用いてもよく、アルミニウムなど銀以外の金属を蒸着させたものであっても良い。本発明のマルチフィラメント糸やラメ糸、ラメ加工糸は、特定の繊度のものに限定されないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のラメ加工糸は、ラメ糸がマルチフィラメント糸の周囲に配され、しかも適度の伸縮性を備えながら、嵩高で柔らかなことから、優れた意匠性とフィット性を備え、ソフトな風合いを備える衣料用編織物に好適である。
【符号の説明】
【0071】
1…ラメ加工糸
2…マルチフィラメント糸
3…ラメ糸
4…未解撚部
5…過解撚部
6…ラメ加工糸製造装置
7…供給部
8…巻取り部
9…マルチフィラメント糸(2)の給糸ローラー(第1フィードローラー)
10…ラメ糸(3)の給糸ローラー(第2フィードローラー)
11…加熱手段(ヒーター)
12…加撚手段(ツイスタ)
13…ラメ加工糸(1)の引取りローラー(デリベリーローラー)
14…パッケージ
15…テイクアップローラー
16…加撚ゾーン
17…解撚ゾーン
18…交絡ノズル
19…交絡用引取りローラー
20…交絡処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメント糸(2)とラメ糸(3)とを、そのマルチフィラメント糸(2)よりもラメ糸(3)の給糸速度を高くして、同時仮撚りすることを特徴とする、ラメ加工糸の製造方法。
【請求項2】
上記のマルチフィラメント糸(2)のオーバーフィード率OFと、ラメ糸(3)のオーバーフィード率OFが、それぞれ下記式(F1)と式(F2)を満足する、請求項1に記載のラメ加工糸の製造方法。
OF ≧ 0 …(F1)
0 < OF−OF ≦ 70 …(F2)
ここで、
DR:ラメ加工糸(1)の引取り速度、
FC:マルチフィラメント糸(2)の給糸速度、
FE:ラメ糸(3)の給糸速度、
としたとき、
OF =(VFC−VDR)/VDR×100(%)、
OF =(VFE−VDR)/VDR×100(%)、
である。
【請求項3】
仮撚り係数Kが下記式(F3)を満足する、請求項1または2に記載のラメ加工糸の製造方法。
25000 ≦ K ≦ 42000 …(F3)
ここで、
T:ラメ加工糸(1)の仮撚り数(回/m)、
D:ラメ加工糸(1)全体の繊度(dtex)、
としたとき、
K = T × D1/2
である。
【請求項4】
仮撚り加工後に交絡処理を施す、請求項1から3のいずれかに記載のラメ加工糸の製造方法。
【請求項5】
捲縮させたマルチフィラメント糸(2)と、その周囲に配されるラメ糸(3)とを有しており、このラメ糸(3)に、マルチフィラメント糸(2)の周囲を一方向へ捲回された未解撚部(4)と逆方向へ捲回された過解撚部(5)とが、そのマルチフィラメント糸(2)の長さ方向に繰り返して形成してあることを特徴とする、ラメ加工糸。
【請求項6】
上記の未解撚部(4)の撚り数と過解撚部(5)の撚り数とが実質的に等しい、請求項5に記載のラメ加工糸。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載のラメ加工糸の製造方法により製造されることを特徴とする、ラメ加工糸。
【請求項8】
上記のマルチフィラメント糸(2)がポリエステル複合繊維からなり、このポリエステル複合繊維が、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型である、請求項5から7のいずれかに記載のラメ加工糸。
【請求項9】
伸縮伸長率が40%以上である、請求項5から8のいずれかに記載のラメ加工糸。
【請求項10】
かさ高度が5cm/g以上である、請求項5から9のいずれかに記載のラメ加工糸。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかに記載のラメ加工糸(1)を用いて織成または編組したことを特徴とする、編織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2020(P2013−2020A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136314(P2011−136314)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(597122792)原田商事株式会社 (4)
【出願人】(593160105)泉工業株式会社 (3)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】