説明

ランキンサイクルシステムおよび発電システム

【課題】油ポンプの不要なランキンサイクルシステムを提供する。
【解決手段】ランキンサイクルシステム1は、熱媒および潤滑油が供給され、熱媒の膨張力を回転力に変換するスクリュ膨張機2と、スクリュ膨張機2から吐出された熱媒を冷却して液化する凝縮器3と、凝縮器3において液化した熱媒を加圧する循環ポンプ4と、循環ポンプ4が吐出した熱媒を加圧状態のまま貯留して、熱媒に含まれる潤滑油を比重差によって分離する分離タンク5と、分離タンク5によって潤滑油を分離した熱媒を加熱し、蒸発させてからスクリュ膨張機2に再供給する蒸発器6とが介設された循環流路7、および、分離タンク5によって熱媒から分離された潤滑油をスクリュ膨張機2に再供給する給油流路8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルシステムおよびランキンサイクルシステムを用いた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、加圧された液相の熱媒を蒸発器(加熱器)において熱源との熱交換によって加熱し、加熱した熱媒の膨張力によって膨張機を駆動して発電機を回し、膨張機から吐出された熱媒を冷却して液化し、ポンプによって液化した熱媒を再加圧して蒸発器に再供給するランキンサイクルを利用したバイナリ発電システムが公知である。
【0003】
膨張機として、潤滑およびシールのために潤滑油を用いるスクリュ膨張機を使用することも一般的であるが、従来は、特許文献1にも記載されているように、スクリュ膨張機から排気された熱媒から気液分離器を用いて潤滑油を分離し、分離した潤滑油を油ポンプによってスクリュ膨張機に再供給していた。
【0004】
スクリュ膨張機と機械的によく似た構成の圧縮機の場合には、吐出したガスから分離した潤滑油を吐出したガスの圧力によって再供給できるが、スクリュ膨張機の場合は、給気圧力の方が排気圧力よりも高いため、専用の油ポンプで再加圧することが必要とされるからである。
【0005】
また、特許文献1では、スクリュ膨張機のロータ室に、潤滑油を排出するための廃油口を設けて潤滑油を回収している。この場合、潤滑油だけでなく熱媒までもが回収流路に流出しないように、ある程度の背圧を加える必要がある。しかしながら、回収流路の背圧が高すぎると、潤滑油が逆流して廃油口が開口する空間の圧力を上昇させ、膨張工程における圧力こう配に部分的な逆転が生じて、スクリュロータの回転を妨げる逆方向の駆動力を発生させてしまう。このため、潤滑油の回収流路の圧力を厳密に制御できなければ、発電システムの効率が低下するという問題が生じる。
【0006】
また、ランキンサイクルにおいて、蒸発器とスクリュ膨張機との間に気液分離器を設置すれば、スクリュ膨張機に供給される熱媒と等しい圧力を有する潤滑油が得られるので、専用の油ポンプを設けなくてもよい。しかしながら、その場合、潤滑油も蒸発器を通過することになり、蒸発器における熱交換の効率が低下するという問題が生じるため、上述の油ポンプを用いたシステムとすることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−56104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点に鑑みて、本発明の課題は、油ポンプの不要なランキンサイクルシステムおよびランキンサイクル発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明によるランキンサイクルシステムは、熱媒および潤滑油が供給され、前記熱媒の膨張力を回転力に変換するスクリュ膨張機と、前記スクリュ膨張機から吐出された熱媒を冷却して液化する凝縮器と、前記凝縮器において液化した熱媒を加圧する循環ポンプと、前記循環ポンプが吐出した熱媒を加圧状態のまま貯留して、前記熱媒に含まれる前記潤滑油を比重差によって分離する分離タンクと、前記分離タンクによって前記潤滑油を分離した前記熱媒を加熱し、蒸発させてから前記スクリュ膨張機に再供給する蒸発器とが介設された循環流路、および、前記分離タンクによって前記熱媒から分離された前記潤滑油を前記スクリュ膨張機に再供給する給油流路を有するものとする。
【0010】
この構成によれば、分離タンクは、熱媒と潤滑油とを比重によって分離するので、その構成が簡単である。また、分離タンクで分離した潤滑油もスクリュ膨張機に供給される熱媒と同じ圧力を有するので、専用のポンプを必要とせずにスクリュ膨張機にそのまま供給できる。
【0011】
また、本発明のランキンサイクルシステムにおいて、前記給油流路は、前記潤滑油を加熱する熱交換器を備えてもよい。
【0012】
この構成によれば、スクリュ膨張機において、潤滑油が熱媒の熱を奪って、熱媒の膨張力、ひいては、スクリュ膨張機の回転エネルギーを減少させることがない。
【0013】
また、本発明のランキンサイクルシステムにおいて、前記給油流路は、前記潤滑油の全量を前記スクリュ膨張機の給気側の軸受に供給してもよい。
【0014】
この構成によれば、給気される熱媒と同じ圧力の潤滑油を、給気側の軸受に供給するので、圧力差による損失が生じず、軸受を潤滑した潤滑油は、熱媒と共にロータ室を介して排気側の軸受にも供給されるので、スクリュ膨張機の各部に個別に潤滑油を供給する必要がない。
【0015】
また、本発明のランキンサイクルシステムにおいて、前記スクリュ膨張機は、前記軸受に供給した前記潤滑油の全量を、前記熱媒と共に排出してもよい。
【0016】
この構成によれば、潤滑油を途中で排出しないので、膨張行程における圧力こう配に逆転が生じず、効率が高い。
【0017】
また、本発明による発電システムは、上記ランキンサイクルシステムのいずれかを有し、前記スクリュ膨張機によって発電機を駆動するものとする。
【0018】
この構成によれば、工場排熱等の比較的低温の熱源によって、一般的な油潤滑式スクリュ膨張機を用いる簡素なシステムによって効率的に発電できる。
【0019】
また、本発明の発電システムにおいて、前記スクリュ膨張機のケーシングと前記発電機のケーシングとが一体化され、前記スクリュ膨張機から排気された前記熱媒が、前記発電機の内部空間を通して前記循環流路に流出してもよい。
【0020】
この構成によれば、膨張することによりスクリュ膨張機を駆動して温度低下した熱媒によって発電機の巻線を冷却して、発電機の効率低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態のランキンサイクル発電システムである。
【図2】本発明の第2実施形態のランキンサイクル発電システムである。
【図3】本発明の第3実施形態のランキンサイクル発電システムである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態であるランキンサイクル発電システム1の構成を示す。ランキンサイクル発電システム1は、例えば従来廃棄されていた低圧蒸気のような工場排熱等を熱源とし、その熱を回収して発電し、電気エネルギーとして回収するためのシステムである。
【0023】
ランキンサイクル発電システム1は、スクリュ膨張機2、凝縮器3、循環ポンプ4、分離タンク5および蒸発器6を介設してなり、熱媒(例えばR245fa)を封入した循環流路7と、分離タンク5の上部をスクリュ膨張機2の給油を要する部位に接続する給油流路8とを有する。スクリュ膨張機2の出力軸9には、発電機10が接続されている。
【0024】
スクリュ膨張機2は、ケーシング内に形成したロータ室に雌雄一対のスクリュロータを収容してなり、ロータ室をスクリュロータによって区分して形成した膨張空間内において熱媒を膨張させることにより、スクリュロータを回転させる。また、スクリュ膨張機2は、供給された潤滑油によって、スクリュロータ間およびスクリュロータとケーシングとの間の潤滑およびシールを行うように構成されている。また、スクリュロータの軸受も、潤滑油が供給されることによって摩耗を防止するようになっている。したがって、スクリュ膨張機から排気される熱媒は、潤滑油を含んだものとなる。
【0025】
凝縮器3は、クーリングタワーで製造される冷却水のような極めて安価な冷熱源によって、熱媒を冷却して液化させる熱交換器である。循環ポンプ4は、凝縮器3において液化した熱媒を、スクリュ膨張機2への供給圧力まで再加圧する。
【0026】
加圧された熱媒は、分離タンク5に導入され、分離タンク内に一定時間滞留する。分離タンク5において、液相の熱媒は、非常に流速が低い状態で貯留されるので、含まれている潤滑油の液滴が比重差によって浮き上がる。例えば、熱媒(R245fa)の比重は、1300kg/mであるのに対し、潤滑油の比重は、900kg/mである。
【0027】
このようにして、分離タンク5において潤滑油が分離された液相の熱媒は、蒸発器6において熱源との熱交換によって加熱され、飽和蒸気となってスクリュ膨張機2に供給される。
【0028】
また、分離タンク5において分離された潤滑油は、給油流路8を介してスクリュ膨張機2に再供給される。給油流路8に、オリフィスや絞り弁等を設けて、スクリュ膨張機2への供給潤滑油の流量を調整してもよい。また、スクリュ膨張機2の複数の部位に給油する場合、部位毎に必要な流量の潤滑油を供給できるように、給油流路8の分岐流路にオリフィスや絞り弁等を設けてもよい。
【0029】
本実施形態において、蒸発器6は、潤滑油を分離した後の純粋な熱媒のみを加熱するので、蒸発器6を熱媒の加熱に最適化して設計することにより、最大限の熱回収を可能にできる。
【0030】
また、分離タンク5は、気液分離器のように複雑な構造を必要とせず、単純な容器でよいので、安価であり、メンテナンスも不要である。
【0031】
さらに、分離タンク5は、熱媒および分離された潤滑油を循環ポンプ4によって加圧された後の圧力に保つので、給油流路8からスクリュ膨張機2に供給される潤滑油の圧力は、蒸発器6を介してスクリュ膨張機2に供給される熱媒の圧力と等しい。このため、分離タンク5で分離した潤滑油は、それ以上加圧しなくてもスクリュ膨張機2に導入できる。
【0032】
続いて、図2に、本発明の第2実施形態であるランキンサイクル発電システム1aの構成を示す。尚、本実施形態について、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。本実施形態のランキンサイクル発電システム1aは、給油流路8に、蒸発器6において熱媒を加熱するのと同じ熱源によって潤滑油を加熱するための熱交換器11が設けられている。
【0033】
これにより、潤滑油の温度を高くするので、スクリュ膨張機2の内部において、潤滑油が熱媒を冷却して、膨張力を減少させることがなく、エネルギー変換効率(発電効率)を高くできる。
【0034】
さらに、図3に、発明の第3実施形態であるランキンサイクル発電システム21の構成を示す。本実施形態のランキンサイクル発電システム21は、スクリュ膨張機22と、発電機23と、凝縮器24と、循環ポンプ25と、分離タンク26と、蒸発器27とが介設され、熱媒を封入した循環流路28と、分離タンク26で分離された潤滑油をスクリュ膨張機22に再供給する給油流路29とを有する。
【0035】
スクリュ膨張機22は、膨張機ケーシング30に形成したロータ室31に、スクリュロータ32を収容し、スクリュロータ32の回転軸33を、膨張機ケーシング30に形成した軸受室34,35に収容した軸受36,37によって支持している。熱媒は、循環流路28から、給気流路38を通してロータ室31に供給され、ロータ室31で膨張することによりスクリュロータ32を回転駆動した熱媒は、排気流路39から排気される。
【0036】
発電機23は、膨張機ケーシング30に一体に接続された発電機ケーシング40の内部空間41に、回転子42および固定子43を収容してなる。回転子42は、内部空間41まで延伸するスクリュロータ32の回転軸33に設けられており、スクリュロータ32とともに回転することによって、固定子43に電力を生じさせる。発電機23の内部空間41は、スクリュ膨張機22の排気側の軸受室35および排気流路39に連通している。これによりスクリュ膨張機22から発電機23の内部空間41に排気された熱媒は、発電機ケーシング40に設けた排気口44から循環流路28に流出する。
【0037】
給油流路29は、スクリュ膨張機22の給気側の軸受室34のみに接続されており、分離タンク26で分離された潤滑油の全量を給気側の軸受36に供給するようになっている。給気側の軸受室34に供給された潤滑油は、回転軸33と膨張機ケーシング30との隙間、および、スクリュロータ32の給気側の端面と膨張機ケーシング30との隙間を通して、スクリュロータ32の歯溝(膨張機ケーシング30の内壁とスクリュロータ32の歯とによって画定される空間)に流入する。
【0038】
この歯溝がスクリュロータ32の回転によって排気側に到達すると、潤滑油の大半は、熱媒とともに、排気流路39を通して発電機23の内部空間41に排気され、循環流路28に流出する。しかしながら、スクリュロータ32の歯溝の潤滑油の一部は、熱媒の一部とともに、スクリュロータ32の排気側の端面と膨張機ケーシング30との隙間、および、回転軸33と膨張機ケーシング30との隙間を通して、排気側の軸受室35に流入する。軸受室35に流入した潤滑油は、排気側の軸受37を潤滑し、熱媒とともに、発電機23の内部空間41を通して循環流路28に流出する。
【0039】
本実施形態では、スクリュ膨張機22のロータ室31において膨張することによって圧力および温度が低下した熱媒によって、発電機23の回転子42および固定子43を冷却するので、発電機23の発電効率の低下を防止できる。
【0040】
また、本実施形態のように、潤滑油の全量を給気側の軸受室34に供給し、供給した潤滑油の全量を熱媒とともに循環流路28に流出させ、スクリュ膨張機の膨張行程の途中において、潤滑油を供給および排出しないようにすることで、スクリュ膨張機の内部において熱媒の圧力こう配に逆転を生じさせないようにでき、熱エネルギーを効率よく回転エネルギーに変換でき、ひいては、発電効率を向上させられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、発電システムだけでなく、ランキンサイクルによって熱エネルギーを回転エネルギーに変換するシステムに広く適用でき、例えば、スクリュ膨張機によってコンプレッサを駆動するランキンサイクルシステム等にも利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1,1a,21…ランキンサイクル発電システム
2,22…スクリュ膨張機
3,24…凝縮器
4,25…循環ポンプ
5,26…分離タンク
6,27…蒸発器
7,28…循環流路
8,29…給油流路
10,23…発電機
11…熱交換器
30…膨張機ケーシング
31…ロータ室
32…スクリュロータ
33…回転軸
34,35…軸受室
36,37…軸受
38…給気流路
39…排気流路
40…発電機ケーシング
41…内部空間
42…回転子
43…固定子
44…排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒および潤滑油が供給され、前記熱媒の膨張力を回転力に変換するスクリュ膨張機と、
前記スクリュ膨張機から吐出された熱媒を冷却して液化する凝縮器と、
前記凝縮器において液化した熱媒を加圧する循環ポンプと、
前記循環ポンプが吐出した熱媒を加圧状態のまま貯留して、前記熱媒に含まれる前記潤滑油を比重差によって分離する分離タンクと、
前記分離タンクによって前記潤滑油を分離した前記熱媒を加熱し、蒸発させてから前記スクリュ膨張機に再供給する蒸発器とが介設された循環流路、および、
前記分離タンクによって前記熱媒から分離された前記潤滑油を前記スクリュ膨張機に再供給する給油流路を有することを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項2】
前記給油流路は、前記潤滑油を加熱する熱交換器を備えることを特徴とする請求項1に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項3】
前記給油流路は、前記潤滑油の全量を前記スクリュ膨張機の給気側の軸受に供給することを特徴とする請求項1または2に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項4】
前記スクリュ膨張機は、前記軸受に供給した前記潤滑油の全量を、前記熱媒と共に排出することを特徴とする請求項3に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のランキンサイクルシステムを有し、前記スクリュ膨張機によって発電機を駆動することを特徴とする発電システム。
【請求項6】
前記スクリュ膨張機のケーシングと前記発電機のケーシングとが一体化され、前記スクリュ膨張機から排気された前記熱媒が、前記発電機の内部空間を通して前記循環流路に流出することを特徴とする請求項5に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127231(P2012−127231A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278103(P2010−278103)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】