説明

ランキンサイクル装置

【課題】凝縮性能を向上させたランキンサイクル装置の提供。
【解決手段】加熱器で加熱され気体となった循環冷媒は、膨張機で膨張されてコンデンサで冷却される。コンデンサで液体に凝縮された循環冷媒は、レシーバ24へと流れ込む。コンデンサでは凝縮されなかった未凝縮蒸気は、エンジンの駆動状況に応じ流量が大きく変化する。しかし、レシーバ24のタンク24A内には、熱容量増大部として複数の金属球40が循環冷媒の中に配置されている。金属球40は循環冷媒よりも比熱高いアルミニウム製である。コンデンサから流れ込んだ未凝縮蒸気は、液体の循環冷媒および金属球40に熱を伝えることで冷却され凝縮する。これによりタンク24A内での温度上昇を遅らせ、循環冷媒の蒸気と液で温度差を確保することで循環冷媒の流量が大きく変化しても凝縮性能を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関を有した自動車では、自動車の仕事効率を向上させるために、内燃機関から出る排気ガスから動力を回収することが行われている。例えば、特許文献1では内燃機関の廃熱を利用してランキンサイクルを構成している。特許文献1の内燃機関は、排気ガスの一部を再循環ガスとしてガス冷却回路にて冷却水と熱交換をして内燃機関の吸気側へ送っている。そして、再循環ガスとの熱交換により暖められたガス冷却回路の冷却水をランキンサイクルの加熱器に送り、ランキンサイクルの冷媒(循環冷媒)は、暖められた冷却水との熱交換により加熱される。加熱器にて加熱された冷媒は、膨張機で膨張されて機械エネルギを回収している。そして膨張後の冷媒は、凝縮機(コンデンサ)にて凝縮して液化されるサイクルが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のランキンサイクルには、コンデンサで放熱不足が発生するという問題がある。自動車において、内燃機関の排気ガスは、運転状況による熱量の変動が激しい。特に、急加速時などは排気ガスの熱量が増大する。この場合、その排気ガスの熱量に応じて循環冷媒が加熱されるので、循環冷媒の循環量を増やせば良い。しかし、循環冷媒の循環量を増やすと、ランキサイクルにおいて発生する循環冷媒の蒸気量も増加し、コンデンサにて放熱不足が生じる。コンデンサにて放熱不足が生じると、循環冷媒において未凝縮の蒸気が発生する。未凝縮の蒸気がコンデンサ内に溜まっていくと、コンデンサ内の圧力が上昇し、膨張機の回生量が減少してしまう。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、作動流体の凝縮性能を向上させたランキンサイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、内燃機関の廃熱で液体作動流体を加熱して気体作動流体を発生させる加熱器と、加熱器が排出した気体作動流体を膨張させる膨張機と、膨張機から供給された気体作動流体を冷却するコンデンサと、コンデンサから流出する作動流体を気液分離するレシーバと、レシーバから流出する液体作動流体を加熱器へ供給するポンプとを備えたランキンサイクル装置において、少なくともレシーバの気体作動流体が存在する領域内又は領域の周囲においてレシーバ内の作動流体の温度上昇を抑制する熱容量増大部をレシーバに設けることを特徴とする。レシーバの気体作動流体が存在する領域内又は領域の周囲においてレシーバ内の作動流体の温度上昇を抑制する熱容量増大部を設けることにより、液体作動流体又は気体作動流体の温度上昇を熱容量増大部で抑制することができ、レシーバ内での気体作動流体の凝縮性能を向上させることができる。さらに、内燃機関の負荷が急激に変動してもレシーバ内の圧力変動を抑えて平準化することでランキサイクル装置における系の圧力差を確保することができ、膨張機での回生量の減少を抑えることができる。
【0007】
また、本発明のランキンサイクル装置の熱容量増大部は、作動流体の比熱よりも高い比熱を有する高比熱体が好ましい。これにより、作動流体の熱が高比熱体に多く吸収され、作動流体の凝縮性能を向上させることができる。さらに、本発明の高比熱体は、レシーバ内の液体作動流体中に浸漬しても良い。また、本発明の高比熱体は、レシーバ内の気体作動流体中に設けても良い。さらに、本発明の高比熱体は、アルミニウムの球体であることが好ましい。これにより、高比熱体と作動流体との接触面積を増加させるとともに、伝熱性能の高いアルミニウムを用いることで、気体作動流体の凝縮性能を更に向上させることができる。
【0008】
本発明のランキンサイクル装置の熱容量増大部は、レシーバのタンク肉厚部であることが好ましい。レシーバのタンク肉厚部により液体作動流体又は気体作動流体の温度上昇を抑制することで凝縮性能を向上できる。また、タンクの形状変更により熱容量増大部を形成することができる。さらに、本発明の熱容量増大部は、レシーバのタンク壁よりも比熱が高い高比熱体であり、高比熱体は、レシーバのタンク壁に設けることが好ましい。タンク壁にタンク壁よりも比熱が高い高比熱体を設けることにより、タンク壁に接する気体作動流体をより凝縮させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、作動流体の凝縮性能を向上させたランキンサイクル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るランキンサイクル装置の回路図。
【図2】第1の実施形態に係るコンデンサを示す正面断面図。
【図3】第1の実施形態に係るレシーバを示す正面断面図。
【図4】第2の実施形態に係るレシーバを示す正面断面図。
【図5】第3の実施形態に係るレシーバを示す正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るランキンサイクル装置を図に基づいて説明する。
図1に示すランキンサイクル装置10は、自動車などの車両に搭載されるものである。車両には、内燃機関としてのエンジン11が設けられている。車両にはさらにエンジン11を冷却するラジエータ12が設けられている。エンジン11とラジエータ12との間には、冷却水が循環する冷却水路12Aが形成されている。ラジエータ12の近傍には、ラジエータ12に風を送る送風ファン13が設けられている。冷却水路12A内の冷却水は、送風ファン13によりラジエータ12で冷却される。エンジン11には、排気ガスを排気する排気管14が接続されている。排気管14は図示しない排ガス処理部(例えばマフラー)を介して大気中へ排気ガスを排気している。
【0012】
排気管14には、加熱器に相当する熱交換器20が設けられている。熱交換器20は、エンジン11の排気ガスの廃熱でランキンサイクルの循環冷媒を加熱する。本実施形態では、循環冷媒としてフロンを使用する。ランキンサイクルの作動流体としての循環冷媒は、熱交換器20において液体から蒸気へと変化する。熱交換器20には、ランキンサイクル装置10の循環冷媒が流れる循環路21が接続されている。循環路21には、熱交換器20の下流側に、熱交換器20にて加熱され蒸気となった循環冷媒(気体作動流体)を膨張させて機械エネルギ(駆動力)を出力する膨張機22が設けられている。そして、膨張機22の下流側には、膨張機22から供給される蒸気の循環冷媒を冷却するコンデンサ23が設けられている。さらに、コンデンサ23の下流側には、コンデンサ23で冷却され液体に凝縮された循環冷媒(液体作動流体)を熱交換器20に供給するポンプ25が設けられている。
【0013】
膨張機22とポンプ25は、駆動力を伝達自在に接続されている。そのため、膨張機22により得られた機械エネルギによりポンプを駆動させることができる。また、ポンプ25には、モータ・ジェネレータ26が接続されている。モータ・ジェネレータ26を電動機として駆動すると、ポンプ25を駆動することができる。逆に、ポンプ25を介して膨張機22から駆動力をモータ・ジェネレータ26に伝達すると、モータ・ジェネレータ26は、発電機として駆動する。膨張機22で得られた機械エネルギのうち、ポンプ25の駆動力を差し引いた分で発電機としてモータ・ジェネレータを駆動することができる。モータ・ジェネレータ26には、バッテリ27が接続されている。バッテリ27は、電力をモータ・ジェネレータ26に供給可能である。また逆に、モータ・ジェネレータ26からの電力によりバッテリ27を充電することができる。
【0014】
ここで、コンデンサ23の詳細について説明する。図2に示すように、コンデンサ23は、メインクーラ23Aとサブクーラ23Bから構成されている。メインクーラ23Aの一方の側面(図2右側)の上端には、膨張機22から蒸気の循環冷媒が流入するための流入路21Aが接続されている。メインクーラ23Aは、流入路21Aから流入した蒸気の循環冷媒を冷却して凝縮した液体の循環冷媒とする。ただし、メインクーラ23Aでは、蒸気の循環冷媒の量に応じ、未凝縮の蒸気が多少残ることがある。サブクーラ23Bの一方の側面(図2右側)の下端には、サブクーラ23B内の凝縮された循環冷媒がポンプ25へと流出するための流出路21Bが接続されている。なお、流入路21Aおよび流出路21Bは、循環路21の一部である。サブクーラ23Bはメインクーラ23Aの下に接触し配置されている。
【0015】
コンデンサ23の他方(図2の左側)には、メインクーラ23Aおよびサブクーラ23Bに接続されたレシーバ24が設けられている。レシーバ24には、メインクーラ23Aから第一管路30を介して循環冷媒が流入可能である。レシーバ24は、第一管路30を通してメインクーラ23Aから流入した循環冷媒を重力分級により気液分離するものである。レシーバ24は、アルミニウムで成型された円筒形状のタンク24Aを有している。タンク24Aの内部には、循環冷媒が充填されている。第一管路30は、メインクーラ23Aの他方の側面における下方から突出し、レシーバ24のタンク24A内に挿入されている。第一管路30は、タンク24A内で上方に向かい90度屈曲するL字形状である。レシーバ24は、タンク24Aの内部に、2つの円盤状のメッシュ31、32が設けられている。
【0016】
メッシュ31、32は、凝縮された循環冷媒が透過自在であり、タンク24A内を3つの空間に区画している。第一管路30は、メッシュ31、32を貫通し、タンク24Aの上側の空間に伸びている。第一管路30の端部開口は、メッシュ31の上面からわずかに突出する位置である。第一管路30からは、コンデンサ23にて凝縮しきれなかった未凝縮蒸気が混じった液体の循環冷媒が噴出する。未凝縮蒸気は、浮力により液体の循環冷媒より上方へ浮上し、気体の循環冷媒による蒸気域Gを形成している。そして、蒸気域Gの下側には、凝縮された液体の循環冷媒による液域Lが形成されている。なお、第一管路30の端部開口付近、つまり、メッシュ31の上面より上方のタンク24A内部が気体の循環冷媒(未凝縮蒸気)が存在する領域である。そして、本実施形態では図3に示すように、気体の循環冷媒が存在する領域内であるメッシュ31の上面に、熱容量増大部として金属球40が配置されている。
【0017】
金属球40は、凝縮された液体の循環冷媒が存在する液域Lに浸漬されている。金属球40は、タンク24Aと同じアルミニウムで成型されており、循環冷媒のフロンの比熱よりも高い比熱を有する高比熱体である。金属球40は、複数個がメッシュ31の上面に配置されているが、循環冷媒が金属球40間に形成される隙間を透過可能である。メッシュ31とメッシュ32との間の空間には、乾燥剤41が配置されている。なお、本実施形態では乾燥剤としてゼオライトを挿入している。乾燥剤41も球状に成型されており、複数の球体が循環冷媒の中に乾燥剤41の層を形成している。タンク24Aのメッシュ32の下方の空間には、第二管路33が挿入されている。第二管路33は、タンク24Aとサブクーラ23Bとを接続している。第二管路33は、レシーバ24内の液体の循環冷媒をサブクーラ23Bへと送るための管路である。
【0018】
次に、本実施形態における作用について説明する。
エンジン11が駆動して車両が走行すると、排気ガスが排気管14から排出される。その一方で、バッテリ27から電力を受けたモータ・ジェネレータ26は、電動機としてポンプ25を駆動する。ポンプ25は、循環路21を介してコンデンサ23のサブクーラ23Bから、さらにはレシーバ24から凝縮し液体となった循環冷媒を熱交換器20へと供給する。すると熱交換器20では、エンジン11からの排気ガスの廃熱と循環冷媒とが熱交換を行う。液体の循環冷媒は、排気ガスにより加熱されて蒸気となる。蒸気となった循環冷媒は、膨張機22に供給される。膨張機22では、蒸気の循環冷媒が膨張され、機械エネルギが出力される。このときの機械エネルギにより、以後、ポンプ25を駆動する。また、ポンプ25の駆動力以上の機械エネルギは、モータ・ジェネレータ26が発電機として電力に変換し、バッテリ27を充電する。
【0019】
膨張機22にて膨張した蒸気の循環冷媒は、流入路21Aからコンデンサ23のメインクーラ23Aへと流入する。すると、メインクーラ23Aで蒸気の循環冷媒は冷却されて大半の循環冷媒が凝縮する。凝縮した液体の循環冷媒は、第一管路30からレシーバ24へと流れていく。このとき、循環冷媒は、凝縮された液体の中に未凝縮蒸気として気泡が混じっている。そしてレシーバ24のタンク24A内では、第一管路30から循環冷媒が流入し、重力分級により未凝縮蒸気の気泡が上方へと浮上していく。ここで、未凝縮蒸気は、タンク24A内の液体の循環冷媒により冷却されて凝縮を促される。さらに循環冷媒よりも比熱の高い金属球40が熱容量増大部として液体の循環冷媒の温度上昇を抑制し、未凝縮蒸気を冷却し凝縮を促進させる。未凝縮蒸気は高温であり、タンク24A内の循環冷媒の温度上昇を招く。しかし、循環冷媒よりも比熱の高い金属球40が液域Lに浸漬されていることにより、液体の循環冷媒の温度上昇は緩やかである。したがって液体の循環冷媒と未凝縮蒸気に温度差が発生し、未凝縮蒸気を凝縮させる。
【0020】
そして、タンク24A内において凝縮して液体へと変化した循環冷媒は液域Lに留まる。液体の循環冷媒および金属球40により冷やされても凝縮しない未凝縮蒸気は、タンク24A内の上部の蒸気域Gへと浮上する。蒸気域Gの気体の循環冷媒は、液域Lにおける液体の循環冷媒の上面から徐々に冷やされ、少しずつ凝縮していく。タンク24A内の液体の循環冷媒は、ポンプ25の駆動により、第二管路33からサブクーラ23Bを介して十分に冷却されて再びポンプ25から熱交換器20へと供給されていく。
【0021】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)レシーバ24のタンク24A内に、循環冷媒よりも単位体積当たりの比熱が大きいアルミニウムの金属球40を配置し、熱容量を大きくすることで、エンジン11の運転状況により廃熱の変動が大きくなってタンク24Aに循環冷媒に含まれる未凝縮蒸気が大量に流れても、循環冷媒の温度上昇が遅く、未凝縮の蒸気の循環冷媒と凝縮した液体の循環冷媒との温度差が確保でき、未凝縮の蒸気を凝縮させる凝縮性能を向上できる。
(2)タンク24A内で比熱の高い金属球40を配置することで、タンク24Aおよびメインクーラ23Aにおける蒸気の循環冷媒を凝縮させる能力が向上するため、ランキンサイクル回路の低圧側の圧力変動を小さく平準化することができ、ランキンサイクル装置10におけるサイクル効率を高く維持することができる。
【0022】
(3)熱容量増大部は、金属球40として球形を採用しており、循環冷媒との接触面積を増やし循環冷媒の熱を素早く熱交換して循環冷媒の温度上昇を防ぐことができる。また、金属球40は複数の金属球40を配置しても金属球40同士の間に適度な隙間を有するので循環冷媒の流れを止めることない。
(4)金属球40は、アルミニウム製であるので、循環冷媒より比熱が高く、また伝熱性も高いので、循環冷媒の熱を素早く受けることができ、レシーバ24内の急激な熱変動を抑えることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係るレシーバ44について図4に基づいて説明する。なお、本実施形態では第1の実施形態におけるタンク24A内における金属球40の配置を変更したものである。変更箇所について詳細を説明するとともに、第1の実施形態と同じ部材については、同じ部材番号を用いて説明する。
図4に示すように、レシーバ44のタンク44A内には、メッシュ31、32との間に乾燥剤41が配置されている。タンク44Aには、コンデンサ23のメインクーラ23Aから循環冷媒が流入する第一管路30が設けられている。タンク44Aの上部は、循環冷媒の蒸気域Gとなっている。本実施形態では、複数の貫通孔45Aを有したパンチングメタルで形成された区画板45が蒸気域Gに配置されている。区画板45の上方には、熱容量増大部としての複数の金属球40が配置されている。金属球40は、タンク44A内の循環冷媒の蒸気に晒されている。金属球40は、レシーバ44と同様にアルミニウム製であり、循環冷媒よりも比熱が高くなっている。
【0024】
次に、レシーバ44内での循環冷媒の作用について説明する。
第1の実施形態と同様に、ランキンサイクル装置10における循環冷媒が熱交換器20で加熱膨張され、膨張機22を介してコンデンサ23のメインクーラ23Aで冷却される。そして、メインクーラ23Aで凝縮した液体の循環冷媒は、未凝縮蒸気の循環冷媒を含んで第一管路30からレシーバ44へと流れてくる。第一管路30からタンク44A内に流れ込んだ未凝縮蒸気は、液体の循環冷媒により冷却されつつ液域Lから蒸気域Gへと浮上していく。蒸気域Gでは、高温の未凝縮蒸気が区画板45の貫通孔45Aを介して上方の蒸気と混合する。そして、区画板45の上面に配置された金属球40に接触する。
高温の蒸気の熱は金属球40に吸収され、未凝縮蒸気は冷却される。また、蒸気域Gに高温の未凝縮蒸気が供給されても、蒸気域Gの未凝縮蒸気の温度上昇が抑えられる。未凝縮蒸気は、金属球40により冷却されて凝縮すると、液体へと変化する。液体となった循環冷媒は、区画板45の貫通孔45Aを通して液域Lの循環冷媒へと落下する。液域Lの循環冷媒は、メッシュ31、32の間の乾燥剤41を通して第二管路33からコンデンサ23のサブクーラ23Bへと流れる。サブクーラ23Bからレシーバ44の循環冷媒はポンプ25により熱交換器20へと供給される。
【0025】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)、(2)に加え、以下の効果を奏する。
(5)複数の金属球40は、タンク44A内の蒸気域Gに配置され、蒸気の循環冷媒との接触面積が多くなるよう晒されている。これにより、蒸気の循環冷媒の熱を吸収し凝縮を促進できる。
【0026】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態に係るレシーバ54について図5に基づいて説明する。なお、本実施形態では第1の実施形態におけるタンク24A内における熱容量増大部を変更したものである。変更箇所について詳細を説明するとともに、第1の実施形態と同じ部材については、同じ部材番号を用いて説明する。
図5に示すように、レシーバ54のタンク54A内には、メッシュ31、32との間に乾燥剤41が配置されている。タンク54Aには、コンデンサ23のメインクーラ23Aから循環冷媒が流入する第一管路30が設けられている。タンク54Aの上部は、循環冷媒の蒸気域Gとなっている。本実施形態のタンク54Aには、熱容量増大部としてタンク肉厚部54Bが設けられている。タンク肉厚部54Bは、タンク54Aの内部の容量を変えずに、タンク54Aの壁の厚さを増やしたものである。タンク肉厚部54Bは、蒸気の作動流体が存在する第一管路30の端部開口付近から上部に成型されている。タンク肉厚部54Bは、アルミニウム製で均一の厚みであり、循環冷媒よりも比熱が高くなっている。
【0027】
次に、レシーバ54内での循環冷媒の作用について説明する。
第1の実施形態と同様に、ランキンサイクル装置10における循環冷媒が熱交換器20で加熱膨張され、膨張機22を介してコンデンサ23のメインクーラ23Aで冷却される。そして、メインクーラ23Aで凝縮した液体の循環冷媒は、未凝縮蒸気を含んで第一管路30からレシーバ54へと流れてくる。第一管路30からタンク54A内に流れ込んだ未凝縮蒸気は、液体の循環冷媒により冷却されつつ液域Lから蒸気域Gへと浮上していく。蒸気域Gでは、高温の未凝縮蒸気がタンク54Aのタンク肉厚部54Bに接触する。未凝縮蒸気の熱は、タンク肉厚部54Bに伝わり未凝縮蒸気は冷却される。未凝縮蒸気は、タンク肉厚部54Bにより冷却されて凝縮すると、液体へと変化する。液体となった循環冷媒は、タンク54Aの壁面に沿って液域Lの循環冷媒へと落下する。液域Lの循環冷媒は、メッシュ31、32の間の乾燥剤41を通して第二管路33からコンデンサ23のサブクーラ23Bへと流れる。サブクーラ23Bからレシーバ44の循環冷媒はポンプ25により熱交換器20へと供給される。
【0028】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(6)レシーバ54のタンク54Aには、循環冷媒の未凝縮蒸気が存在する領域に面する壁面をタンク肉厚部54Bとして熱容量を増大させている。そのため、未凝縮蒸気から熱を受けて循環冷媒を冷却し凝縮させることができる。エンジン11の運転状況により廃熱の変動が大きくタンク54A内に未凝縮蒸気が大量に流れても、循環冷媒の温度上昇を遅らせて、未凝縮蒸気と凝縮した液体の循環冷媒との温度差が確保でき、未凝縮蒸気を凝縮させる凝縮性能を向上させることができる。
(7)タンク54Aは、熱容量増大部としてタンク肉厚部54Bを形成するだけで良いので、レシーバ54の部品点数を増加させることなく熱容量を増加させることができる。
【0029】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。以下に本発明の変更例を説明する。
○レシーバ24、44、54のタンク24A、44A、54Aは、アルミニウム製に限らない。
○レシーバ54は、タンク54Aを外径が大きくレシーバ54の体格が増大するようにタンク肉厚部54Bを設けたが、これに限らない。タンク肉厚部54Bをタンク54Aの外径が大きくならないように内径を小さくして肉厚にしても良い。また、タンク肉厚部54Bは、均一の厚さに限らない。第3の実施形態において、気体の循環冷媒が存在するメッシュ31上面より上方の領域であれば一部分のみ厚さを増す形状にしても良い。また、タンク54Aの上方に向かって厚さが増すように厚みを変化させても良い。
○レシーバ54のタンク肉厚部54Bは、レシーバ54と別体に形成しても良い。また、別体で形成するタンク肉厚部は、レシーバ54の材質よりも比熱の高い高比熱体で形成することが好ましい。例えば、アルミニウムよりも比熱が高い冷却水が循環可能なジャケットをレシーバ54に別体で設けると良い。
【0030】
○金属球40は、熱伝導性が高いアルミニウムが好ましいが、アルミニウム以外の材質としても良い。例えばステンレス鋼(SUS)で成型しても良い。また、金属球40の変わりに循環冷媒の凝縮温度帯で液化・凝固する潜熱体を用いても良い。例えば、エイコサン(分子式:C2042)は、融点36.7℃の潜熱体であり、液体の循環冷媒の温度を36.7℃に安定させる効果を持つ。ただしエイコサンを用いる場合は、細かい粒子状にすると伝熱性能を確保できて良い。
○金属球40は、第1の実施形態のように循環冷媒の液域Lと第2の実施形態のように循環冷媒の蒸気域Gの両方に配置しても良い。液域Lと蒸気域Gの両方に金属球40を配置することで、より熱容量を増加させることができ、ランキンサイクルの効率を向上させることができる。さらに、第3の実施形態のようにタンク24A、44Aの壁にタンク肉厚部を形成しても良い。金属球40とタンク肉厚部を両方用いることで熱容量を大きく増加させることができる。
【0031】
○金属球40は、球形としたが、形状は限定されない。四角形状や多面体形状、不規則形状でも良い。また幾つかの形状の部材を一緒にレシーバ24、44、54内に配置しても良い。さらに、金属球40の形状は大きさを限定されない。伝熱性能の高い材質であれば大きめの形状としても良い。また、複数の金属球40で均一の大きさを用いる必要は無く、様々なサイズの金属球40を一緒にレシーバ24、44、54内に配置しても良い。
○金属球40は、均一の材質でなくても良い。例えば、金属球40の内部に空間を設け、アルミニウムよりも比熱が高い水を金属球40の内部の空間に充填しても良い。アルミニウムよりも比熱が高い水を内部に設けることで熱容量をさらに増加させることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 ランキサイクル装置
11 エンジン
12 ラジエータ
12A 冷却水路
13 ファン
14 排気管
20 熱交換器
21 循環路
21A 流入路
21B 流出路
22 膨張機
23 コンデンサ
23A メインクーラ
23B サブクーラ
24、44、54 レシーバ
24A、44A、54A タンク
25 ポンプ
26 モータ・ジェネレータ
27 バッテリ
30 第一管路
31 第一メッシュ
32 第二メッシュ
33 第二管路
40 金属球(熱容量増大部)
41 乾燥剤
45 区画板
45A 貫通孔
54B タンク肉厚部(熱容量増大部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の廃熱で液体作動流体を加熱して気体作動流体を発生させる加熱器と、
前記加熱器が排出した気体作動流体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機から供給された気体作動流体を冷却するコンデンサと、
前記コンデンサから流出する作動流体を気液分離するレシーバと、
前記レシーバから流出する液体作動流体を前記加熱器へ供給するポンプとを備えたランキンサイクル装置において、
少なくとも前記レシーバの気体作動流体が存在する領域内又は前記領域の周囲において前記レシーバ内の作動流体の温度上昇を抑制する熱容量増大部を前記レシーバに設けることを特徴とするランキンサイクル装置。
【請求項2】
前記熱容量増大部は、作動流体の比熱よりも高い比熱を有する高比熱体であることを特徴とする請求項1記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
前記高比熱体は、前記レシーバ内の液体作動流体中に浸漬されることを特徴とする請求項2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
前記高比熱体は、前記レシーバ内の気体作動流体中に設けられることを特徴とする請求項2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項5】
前記高比熱体は、アルミニウムの球体であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項6】
前記熱容量増大部は、前記レシーバのタンク肉厚部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項7】
前記熱容量増大部は、前記レシーバのタンク壁よりも比熱が高い高比熱体であり、
前記高比熱体は、前記レシーバのタンク壁に設けたことを特徴とする請求項1に記載のランキンサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92111(P2013−92111A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234752(P2011−234752)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】