説明

ランダムおよび非ランダムアルキレンオキシドポリマーアロイ組成物

(i)エチレンオキシドおよび、1つまたは複数の他のアルキレンオキシドを有する少なくとも1つのランダムコポリマーならびに(ii)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を有する少なくとも1つの非ランダムポリマーを含むポリマー材料を発見した。好ましくは、ポリマーアロイである。アルキレンオキシドホモポリマーまたはブロックコポリマーは非ランダムポリマーとしてもよい。関連する発見では、(a)粒子を(b)エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの少なくとも1つのポリ(エチレンオキシド)コポリマーのマトリックス、またはその組み合わせ中に懸濁させることにより、接着材料を製造することができる。取扱特性は、異なる用途(例えば、流動油〜硬質蝋)に合わせて調整してもよい。用途としては、接着剤、凝集剤、充填剤、潤滑剤、界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。特に、硬い材料は洗浄または蝋引きに使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は(i)エチレンオキシドおよび、他のアルキレンオキシドを有する少なくとも1つのランダムコポリマーならびに(ii)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を有する少なくとも1つの非ランダムポリマー(例えば、ホモポリマーおよび/またはブロックコポリマー)を含む組成物に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年2月12日に出願された米国特許仮出願第60/446,534号の恩典を主張する。これはまた、「医学的および外科的用途を有するランダムアルキレンオキシドコポリマー(Random Alkylene Oxide Copolymers With Medical and Surgical Utilities)」と題する、2004年2月12日に出願された特許出願(atty.dkt.4278-6)にも関連する。どちらの出願も参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
医学的および外科的分野では、粘性油〜硬質蝋の範囲の取扱特性を有する組成物に対する要求がまだ満たされていない。所望の組成物は1つまたは複数の下記特性を有する:生体適合性、生理的条件下での非代謝性、低毒性および腐食性、無修飾形態での体内からの排除容易性、製造および貯蔵の容易性および経済性、長寿命、ならびに可変粘度および硬度。好ましくは、そのような組成物は、対象とする目的を達成した後、体内に再吸収され、体内から容易に除去される。
【0004】
そのような組成物の用途の範囲は広い。外科的分野で使用するためには、硬い接着性蝋に類似する取扱特性を有する組成物が、骨表面からの出血を阻止するために使用することができる止血剤として有益である。油状、グリース状、または蝋状の特性(硬度が上昇する順)を有する組成物は外科用器具およびインプラントの潤滑剤として使用することができる。用途には、粒状の移植可能材料、生物活性剤および他の薬剤のための担体または賦形剤としての使用が含まれる。組成物はまた、粒状材料、接着剤(adhesive)/凝集剤(cohesive)、充填剤(filler)、および/または潤滑剤(lubricant)のためのマトリックス(matrix)としても適している。それらはまた、組成物、特に化粧用製剤および薬学製剤のための、分散剤または懸濁剤、乳化剤、増量剤、増粘剤、および/または粘度付与剤(bodying agent)として使用してもよい。
【0005】
本発明者らの発見まで、医学的用途および外科的用途のための、約25℃〜約37℃の温度でグリース〜蝋の範囲の取扱特性を有する、実質的に水を含まない(例えば、約5%または約1%未満の水分)ように製剤化することができる、生体適合性の、実質的に非毒性の、水溶性組成物は入手できなかった。そのような取扱特性を有し、医学的および外科的用途を対象とした、既知の水溶性組成物は全てその製剤中に水を含んだ。
【0006】
現在、適した製剤に対する医学的および外科的要求は、多くの異なる、受け入れがたい様式で、満たされているにすぎない。ほとんどが、完全に生体適合性ではない、もしくは対象とする用途に十分適した取扱特性を有さない、という問題のいずれかを有する。骨止血剤として一般に使用される蜜蝋は吸収性ではなく、骨の治癒を妨害し、炎症反応を引き起こす。生物供給源、例えばコラーゲン由来の化合物は、免疫反応を引き起こす可能性があり、病原菌を蔓延させる可能性さえある。使用される多くの化合物はヒドロゲルのカテゴリーに入る。ヒドロゲルは、化学結合または物理結合のいずかにより架橋された、水性媒質中の親水性ポリマー鎖の3次元ネットワークから構成される。理論的には、少なくとも、ネットワークは無限であり、ポリマー鎖は事実上単一分子である。定義によれば、ヒドロゲルは総重量(または体積)の少なくとも10%の水を含むが、より一般的には、ポリマーの10〜50倍(w/w/またはw/v)の水を含む。一般に、ヒドロゲルは、所定の位置に取り扱われ、かつ操作される必要のある材料に対し、理想的な物理特性を有さない。ヒドロゲルは典型的には弾性があるが、可塑性はなく、可鍛性および延性に欠き、しばしば、圧縮力、引っ張り力またはせん断力に曝露されると不安定であり、材料の不可逆的な破砕または破裂にいたる。ヒドロゲル内の水はまた、生物活性剤の寿命に影響するかもしれない。炭化水素化合物は、石油関連(例えば、パラフィン、ワセリン)または蜜蝋または植物由来の蝋などの他の原料由来のもののいずれかであり、適当な取扱特性を有するが、水溶性ではない。シリコン油およびシリコンゲルは生物学的に不活性でも水溶性でもない。このように、治療用途に適したポリマーを見出す必要が依然としてある。
【0007】
外科および歯科分野では、組織成長のための骨格として機能することができる粒状成分を含む移植可能材料が必要である。粒状成分は、広範囲の天然および合成移植可能物質から選択することができ、例えば、天然の自己骨または軟骨、直接移植された、または処理後のいずれかの他の原料由来の骨または軟骨、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンおよびジメチルポリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
粒状インプラントの性能は、粒子を一時的に互いに接着させパテを形成させるマトリックスを添加することにより著しく改善される。パテは、取扱特性を改善するように機能し、送達システムとして作用する。または従来の技術において開示されたマトリックスの大部分は、コラーゲン、グリセロール、多糖類、ムコ多糖類、ヒアルロン酸、プラスドン(plasdones)、およびポリビニルピロリドン(PVP)を含む水溶液またはヒドロゲルである。
【0009】
ゼラチン形態のコラーゲンが、Rofil Medical International製のARTEPLAST(登録商標)において使用されている。これは、ゼラチン溶液に懸濁させたPMMA小球体を含む注射用材料である。移植後、ゼラチンは吸収され、天然コラーゲンに置き換えられる。別の製剤、ARTECOLL(登録商標)は、欧州およびカナダで現在入手可能な製品である。これは、0.3%のリドカインを有する重量比25% PMMA/75%コラーゲンの濃度の、薬学的な閉集団(closed pharmaceutical herd)由来のウシコラーゲン中に懸濁させた平滑PMMA球を含む。ARTECOLL(登録商標)はウシコラーゲンを含むので、そのようなコラーゲンに対するアレルギー試験が推奨される。ウシコラーゲンはレシピエント患者による免疫反応のリスクを伴う。現在では、ウシの疾患、牛海綿状脳症(BSE)はウシ組織からヒトに伝播することがわかっている。このように、ウシコラーゲンは疾病伝播のリスクを伴い、同種移植骨の望ましいマトリックスではない。ヒトコラーゲンはこれらの動物由来の疾患を有さない。しかしながら、コラーゲンは徐々にヒト体内、特に血管分布程度の低い骨部位に吸収される。
【0010】
グリセロールはゲル形態の脱塩した同種移植骨に対するマトリックスとして使用される。例えば、Osteotech製のGRAFTONはグリセロールおよび凍結乾燥、脱塩した骨粉末の単純な混合物である(米国特許第5,073,373号)。GRAFTONは外科医が同種移植骨を所定の部位に配置できるように、うまく働く。しかしながら、グリセロールの分子量は非常に低く(92ダルトン)、手術部位で流れる血系の主成分である、水に非常によく溶ける。グリセロールはまた、温度が室温(典型的には、手術室では22℃)から患者の体温(典型的には37℃)まで上がると、粘度が著しく減少する。このように水溶性が高く、粘度が減少することにより、同種移植骨はグリセロールマトリックスと共に、配置後ほとんど直ぐに、流れやすくなりその部位から流れ去る。このため、外科医が注意深く配置した部位内に同種移植骨が正しく保持されなくなる。低分子量グリセロール担体の使用では、体積粘性率を達成するために使用するグリセロール濃度を高くする必要がある。グリセロールおよび他の低分子量有機溶媒はまた毒性があり、周囲の組織にとって刺激となる。米国特許第6,306,418号では、泌尿器科分野でのTEFLON粒子のためのマトリックスとしてのグリセロールの使用が記述されている。
【0011】
尿失禁に苦しむ患者を治療するために、人工括約筋の外科的移植がしばしば採用される。尿失禁患者を治療するために使用される最も一般的で広く使用される方法は、POLYTEFとして市販されている組成物の尿道周囲での注入である。POLYTEFはグリセリンマトリックスとTEFLON粒子の重量比1:1の混合物を含むペーストである。しかしながら、注入後、グリセリンは時間経過に伴い体内に容易に消散し、その後、代謝されるかまたは除去され、TEFLON粒子のみが残る。そのようなペーストの欠点は、粒子サイズが十分小さいので、身体の他の位置、例えば肺、脳などに移動することができてしまうことである。TEFLON粒子は組織反応を誘発し特定の個人ではTEFLON-誘発肉芽腫を形成することが知られている。このTEFLONに対する組織反応はまた、患者の健康に対する懸念を引き起こしている。
【0012】
米国特許第4,191,747号では、脂肪を含まず、粉末とされた変性骨粉を用いた骨欠損治療が開示されている。骨粉は生理食塩溶液中で多糖と混合され、骨欠損部位に適用される。
【0013】
米国特許第5,290,558号では、2個の炭素〜約18個の炭素を有し、単糖、二糖、水分散性オリゴ糖、および多糖などの多くのクラスの異なる糖を含む低分子量ポリヒドロキシ化合物と混合させた骨原製骨粉末を使用する流動性脱塩化骨粉末組成物が開示されている。
【0014】
米国特許第5,356,629号では、生体適合性粒子、好ましくはポリヒドロキシエチルメタクリレートでコートされたPMMAをマトリックス(例えば、ヒアルロン酸)中で混合し、骨に移植するのにうまく働くことができる成形半固体物質を得ることによる、骨の欠陥を充填する骨セメントの形態の剛性ゲルの製造が開示されている。ヒアルロン酸はまた、モノマー形態、または好ましくは約100万ダルトンを超える分子量を有するポリマー形態で使用することができる。非生体吸収性であるが生体適合性である粒子を、異種移植骨、同種骨、自己骨、ならびに他の物質から誘導することができる。生物活性物質はまた、分配された(morselized)海綿状骨、吸引された骨髄、および他の自己骨源の他に、骨原性薬、例えば、脱塩化骨粉とすることができる。これは、人工股関節の移植のために使用されるセメントである。
【0015】
Ersekらは、二相ヒドロゲル材料として送達される軟質粒子の臨床使用について記述する(Plast. Reconstr. Surg. 95:985-992、1995)。材料はプラスドンファミリーのヒドロゲル中に懸濁させた100μm〜600μmのサイズのジメチルポリシロキサンの固体粒子を含む。
【0016】
UroplastyからのBIOPLASTIQUE(登録商標)材料、二相材料は、PVPに懸濁させた、100μm〜400μmの範囲のサイズの固体シリコン粒子を含む。しかし、この材料は注入時に軽度の炎症反応を誘導する。ウサギモデルでは、ヒドロゲルマトリックスは体内に96時間以内に吸収され、腎臓により損傷のない形態で排除される。ヒドロゲルマトリックスはフィブリンおよび炎症細胞により置き換えられる。線維芽細胞がその領域に14日までに補充され、フィブリン床(fibrin bed)をコラーゲンマトリックスと置換させ始める。コラーゲンはシリコンを封入し局在化させ、動物実験では、異物遊走(foreign body migration)の証拠は示されていない。コラーゲン沈着が進み、材料の有機成分が、1:1をわずかに超える比で置換される。結合組織細胞が発達し、マトリックスの約30%が宿主コラーゲン原線維と置換される。382日に、線維形成が完了し、各個々の粒子がそれ自身の線維カプセル内に包まれると考えられる。この材料はシリコンを使用する明確な不都合を有し、このことは長期安全性を評価する際に懸案事項となるかもしれない。
【0017】
米国特許第5,641,502号では、i)ヒドロキシ酸、タクトン(tactones)、炭酸塩、エーテルエステル、無水物、オルソエステル、およびコポリマー、ターポリマーおよび/またはそれらの配合物に由来するポリマーを、ii)ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンの2〜55重量%のブロックコポリマーである少なくとも1つの表面活性剤と配合した材料が開示されている。さらに、0〜70重量%の浸出剤を配合物中に含有させてもよく、多孔質微細構造が得られる。
【0018】
薬物送達システムとして使用するための、ポロキサマー-系熱可逆性ヒドロゲルが開発されている。薬物を含む冷却ポロキサマー溶液は10℃未満で液体である。体内の所望の位置に容易に投与され、薬物含有溶液は37℃まで温められるとヒドロゲルを形成する。固化したゲルはその部位に残ったままで、拡散により、および/またはゲルマトリックスが徐々に可溶化することにより薬物が徐々に放出される。そのような組成物はランダムコポリマー成分を含まず、本明細書で開示されている広範囲の用途を有さないことから本発明者らの発明とは区別される。
【0019】
米国特許第6,281,195号では、骨原性蛋白質を送達するためのポロキサマーヒドロゲルマトリックスが開示されている。特に、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)はヒドロゲル形態で使用される。しかし、ヒドロゲルは、本発明の組成物の代わりにマトリックスとして使用することには欠点を有する。
【0020】
そのため、外科分野では、生体適合性の、接着(adhesive)および凝集(cohesive)特性を有する実質的に非毒性の組成物が必要である。止血は、そのような組成物の適用例である。骨は豊富な血液供給源を有する構造である。骨内の血液は典型的には、管系を通って、骨髄内で循環し、従来の方法、例えば電気焼灼を用いた止血は効果がない。元々は、主に蜜蝋を含む製剤を出血している骨の切り口に塗布することにより、骨止血が得られる。蜜蝋が骨に接着し、管および骨髄空間のタンポン充填として機能し、最終的には、血液凝固に至る。残念なことに、蜜蝋は身体により排除されず、骨治癒を妨害するように作用し、炎症反応が知られている。
【0021】
米国特許仮出願第60/162,347号では、蜜蝋を真似た取扱特性を有する骨止血剤として使用するための水溶性蝋が開示されている。止血のために骨の出血部位にアルキレンオキシドブロックコポリマーを適用することが記述されている。従来の方法よりも優れた利点としては、骨の成長が阻害されなかった、および水溶性組成物が吸収、排出されたという結果が挙げられる。記述されている好ましい材料は、2つのブロックコポリマー:ポロキサマー235(PLURONIC(登録商標)P85)およびポロキサマー238(PLURONIC(登録商標)F88)の重量比9:1の配合物である。しかし、ランダムコポリマー成分は教示も示唆もされていない。ポロキサマー235およびポロキサマー238の配合は、容易な静的混合物ではない配合物を保存し、所望の機械特性を得るために、成分の正確な組み合わせおよび即座の冷却(snap cooling)が必要である。
【0022】
従来技術における骨止血剤の製剤は、下記特性のうちの1つまたは複数に欠けている:生体適合性、優れた取扱特性、ならびに製造および貯蔵の容易さ。対照的に、本発明の好ましい態様では、生体適合性の、実質的には非毒性の、安定な(すなわち、非代謝性で容易に排除される)、優れた取扱特性を有する組成物が提供される。
【0023】
本発明の目的は、医学的および外科的用途に対し優れた特性を有する組成物を提供することである。生体適合性、実質的な非毒性、水溶性、所望の取扱特性(例えば、硬度、延性、可鍛性)、乳化、充填、滑りやすさ(例えば、潤滑性)、表面活性(例えば、表面活性)、粘着性(例えば、接着、凝集)、および濃化が特に興味深い特性である。本発明の利点をさらに記述する。
【発明の開示】
【0024】
発明の概要
本発明は、医薬、外科処置、歯科および様々な他の商業的(すなわち、非医学的)用途において使用してもよい組成物に関する。この製品および関連製品についての製造法および使用法も提供される。
【0025】
ポリマー組成物は(i)エチレンオキシドおよび、1つまたは複数の他のアルキレンオキシドを有する少なくとも1つのランダムコポリマー、ならびに(ii)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を有する少なくとも1つの非ランダムポリマーを含んでもよい。非ランダムポリマーはホモポリマーまたは少なくとも2つの(アルキレンオキシド)のブロックコポリマーであってもよい。組成物はポリマーアロイとしてもよい。組成物は生体適合性で、生組織に対し実質的に非毒性で、生理学的条件下で実質的に非代謝性で、無修飾形態で体内から容易に排除され、またはそれらの特性の任意の組み合わせを有してもよい。組成物は水溶性であるが水を含まない(すなわち、少量の吸収された水以外は実質的に無水)ように製剤化することができる。組成物は、粘性油〜硬質蝋(グリースまたはペーストを含む)のコンシステンシーを有してもよい。使用前、または体内に吸収される前に水を添加してもよいが、体内で使用するか、またはさらに製剤化する前に、約5%または1%未満の水を含む流動性液として組成物を製剤化することが好ましい。それは一般に、特に、体内で使用する、またはさらに製剤化する前ではヒドロゲルとは考えられない。
【0026】
製造中の、他のアルキレンオキシド、分子量、質量比、および手順の選択は、化合物特性、例えば、硬度、接着性、凝集性、延性、可鍛性および硬度に影響することがある。例えば、化合物を「加工(working)」すると、その内部構造を均一化することにより、特性が変化するかもしれない。取扱特性は、雰囲気温度(例えば、20℃〜50℃)と体温(例えば、37℃または40℃)の間で比較すると、同様であり得る。
【0027】
そのような製品を身体に投与してもよい(例えば、皮膚または他の露出組織に局所的に塗布、デポー製剤または坐薬、体内に移植または配置、摂取、注入)。生体適合性および実質的な非毒性が、そのような用途での所望の特性である。
【0028】
別の組成物は、(a)粒子を、(b)(i)エチレンオキシドおよび、1つまたは複数の他のアルキレンオキシドを有する少なくとも1つのランダムコポリマー、ならびに(ii)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を有する少なくとも1つの非ランダムポリマーを含む担体に懸濁させることにより製造してもよい。この材料は硬組織(例えば、歯、骨、軟骨)に付着させてもよく、組織による有害反応は最小であり、マトリックスは吸収され、固体粒子の多孔質骨格が後に残り、組織は細孔内で成長することができる。好ましい態様では、組成物は、ポロキサマー188を22Kランダムアルキレンオキシドコポリマー(AOC)と約1:3の質量比で混合し、軟質蝋を形成させることにより製造される。
【0029】
ポリマーアロイ組成物は、(a)エチレンオキシドおよび、1つまたは複数の他のアルキレンオキシドを有する少なくとも1つのランダムコポリマーならびに(b)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を有する少なくとも1つの非ランダムポリマーを配合することにより製造してもよい。
【0030】
本発明の目的は担体および賦形剤を提供することである。これらの担体および賦形剤は、治療手段(例えば、生物活性剤、装置、器具)をヒトまたは動物の体内に送達するために、本明細書で記述した有利な特性のいずれか1つを利用してもよい。例えば、賦形剤は潤滑剤として作用し、治療手段を体内またはその一部に通過させる、または配置させることを支援する。
【0031】
別の目的は、賦形剤または下剤として使用すべき経口組成物を提供することである。同様に、局所塗布用、特に塗布部位から流体を引き離すことが望ましい用途において化粧製剤および薬学的製剤のための成分を提供することが意図されている。
【0032】
別の目的は、失蝋鋳造および水溶性クレヨンなどの用途のための蝋状材料を提供することである。組成物は洗剤または染み抜き剤として使用してもよい。通過を容易にし、摩擦を減少させる流動性液または固体のいずれかの潤滑剤を提供する。
【0033】
本発明の別の局面は、下記の詳細な説明および特許請求の範囲、ならびにそれらの一般論から、当業者にとって明らかである。特に、本発明の文脈において、「組成物」という用語は、ポリマー(例えば、ランダムコポリマーおよび非ランダムポリマーの配合物またはアロイ)のみを含む組成物、ならびに非ポリマー添加物(例えば、生物活性剤、医療装置/外科装置、インプラント、器具、固体または多孔質粒子、治療または非治療製品、およびそれらの組み合わせ)を有する組成物が挙げられる。
【0034】
本発明の特定の態様の説明
当業者であれば、本明細書で記述した組成物を広範囲の様々な用途のために使用してもよいことを、認識するであろう。本発明は水溶性で、生体適合性で、実質的に非毒性で、実質的に非代謝性で、および/または容易に排除される組成物を提供する。ポリマーアロイである組成物が好ましい。本明細書で記述した条件下で規定される「ポリマーアロイ」は、適合ポリマー配合物および混和性ポリマー配合物を有する複数の異なる種のポリマーの、肉眼的には均一な組成物であるが、この定義は不適合ポリマー配合物を排除する。組成物の特定の性質および取扱特性は、本明細書で示されるように、ポリマー、ならびにその分子量および比率を適当に選択することにより設計することができる。
【0035】
組成物は、(i)少なくとも1つのランダムアルキレンオキシドコポリマー(ランダムAOC)および(ii)少なくとも1つの非ランダムアルキレンオキシドポリマーを含むポリマー材料を配合することにより製造してもよい。ランダムAOCはエチレンオキシドおよび1つまたは複数のアルキレンオキシドを有してもよい。非ランダムポリマーはホモポリマー(AOH)および/またはコポリマー(ブロックAOC)としてもよい。
【0036】
ポリオキシアルキレン(POA)としても知られているポリ(アルキレンオキシド)(PAO)は、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)の重合により製造される。ホモポリマーは1つの型のアルキレンオキシドのみから形成され、一方、コポリマーは複数の異なるアルキレンオキシドから形成され、アルキレンオキシドコポリマー(AOC)として周知である。前者の例は、エチレンオキシド(EO)のポリマーであるポリ(エチレンオキシド)(PEO)、およびプロピレンオキシド(PO)のポリマーであるポリ(プロピレンオキシド)(PPO)である。ポリ(エチレンオキシド)はまたは一般に、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリオキシエチレン(POE)としても周知である。そのようなポリマーの分子量は一般に、長さ(または繰り返しユニット)分布の平均として特徴づけられる。PEOは両親媒性で、非常に親水性で、水溶性で、生体適合性で、実質的に非毒性であり、商業的に広範囲の分子量で製造される(200g/mol〜1000万g/mol)。600g/mol未満のPOEの低分子量形態(すなわち、平均14未満のEOモノマーユニット未満のオリゴマー形態)は、室温で低粘性液であり;PEOは600g/molを超えると25℃で固体である。PPOは、疎水性であり、低分子量(約1kg/mol未満)の場合を除き水に一般に不溶であり、高分子量(例えば、6kg/mol)であっても25℃で液体であるという点でPEOとは異なる。ホモポリマーは少なくとも約1kg/mol、約2kg/mol、または約5kg/molの分子量を有してもよく、分子量はまた、約10kg/mol、約20kg/mol、または約50kg/mol以下であってもよい。化合物は、上記上限および下限を用いた中間範囲によりさらに説明してもよい。
【0037】
標準直線形態の他に、複数のヒドロキシ-、アミノ-、またはチオール-基(これらはそれぞれ、ポリマー鎖成長のための開始点として機能することができる)を有する多官能性開始剤を用いて重合反応を開始させることにより、分枝または星形態のポリ(アルキレンオキシド)が製造される。例えば、開始剤としてグリセロール(3つのヒドロキシル基)を使用すると、3腕(three-armed)分枝ポリマーが得られ、一方、ペンタエリスリトールでは、4腕ポリマーが得られる。この型のPEO分子は市販されており(例えば、Sunbright(商標)シリーズ、NOF Corporation、日本)、3〜100を超える腕を有する。従来、3〜10腕を有するこの型のポリマーは「分枝」と呼ばれ、10を超える腕を有するポリマーは「星」ポリマーと呼ばれる。「櫛」コポリマーは分枝および星形態に類似するが、櫛コポリマーのための開始剤は、開始剤バックボーンに沿って離されて配置された複数のヒドロキシル-、アミノ-、またはチオール-基を有する多官能性ポリマーである。これらの官能基のそれぞれが、ポリマー鎖成長のための開始点として機能することができる。「移植」コポリマーは、不飽和C=C結合またはペンダント官能基(例えば、ヒドロキシル)(ここから、反応性単官能性ポリマー鎖を使用することによりペンダント鎖を付加することができる)を有するポリマーバックボーンに沿ってペンダントポリマー鎖を付加することにより製造される。
【0038】
全てのポリ(アルキレンオキシド)は、複数のアルキレンオキシド由来の繰り返しユニットの他に、ポリマー合成を開始させるのに使用される分子に対応する1つの残基を含む。直鎖ポリマーでは、これは合成のために使用されるアルキレンオキシドに対応するアルキレングリコールとしてもよく(例えば、それぞれエチレンオキシドおよびエチレングリコール)、このため、開始剤由来の残基は、ポリマー鎖中の他の繰り返しユニットと区別できない。しかし、アルキレングリコール以外の小分子がしばしば、開始剤として使用され、例えば、メタノールまたはN-ブタノール(直鎖ポリマーに対し)およびトリメチロールプロパン、グリセロール、およびペンタエリスリトール(分枝ポリマーに対し)またはエチレンジアミンが挙げられる。最終ポリマー鎖の質量に対する開始剤の質量は、一般に非常に少なく、通常無視することができる。このように、ポリ(アルキレンオキシド)という用語は、本明細書では、通常の意味で使用され、アルキレングリコール分子から開始されるポリ(アルキレンオキシド)および別の小分子から開始されるポリ(アルキレンオキシド)の両方を含む。
【0039】
水溶性ポリ(アルキレンオキシド)は、皮膚に塗布するか、または経口摂取しても、実質的に非毒性であり、PEGおよびいくつかのポロキサマー(例えば、F68またはポロキサマー188)は医学的用途および外科的用途に対し評価されているが、非経口用途に適していることが証明されている。
【0040】
ランダムアルキレンオキシドコポリマー
ランダムAOCは好ましくは約1kg/mol〜約1000kg/molの分子量(すなわち、ポリマー分布の平均分子量)を有する。ランダムAOCは少なくとも約5kg/mol、約10kg/mol、または約20kg/molの分子量を有してもよく;分子量は約25kg/mol、約50kg/mol、または約200kg/mol以下であってもよい。エチレンオキシドの他のアルキレンオキシドに対する質量比は好ましくは、約5:95〜約95:5である。少なくとも約10:90、約25:75、または約40:60の質量比を有してもよく;質量比は約60:40、約75:25、または約90:10以下であってもよい。化合物は、上記上限および下限を用いて中間範囲によりさらに説明されてもよい。
【0041】
好ましいランダムAOCはエチレンオキシドおよびCnH2nOのコポリマーであり、ここでn=3〜6である。特別な態様では、分子量は約15kg/mol〜約30kg/molであってもよい。好ましくは、分子量は少なくとも約20kg/molおよび/または約25kg/mol以下であり、エチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する質量比は実質的に等モルである。
【0042】
ブロックAOCとは対照的に、アルキレンオキシドのランダムコポリマーは、アルキレンオキシドの適当な混合物から直接合成することができ、このため、異なるアルキレンオキシド分子がランダムな順序でポリマー鎖に添加される。ランダムAOCはEOおよびPOのコポリマーであってもよい。ランダムEO/POコポリマーはEOおよびPOホモポリマーならびにブロックAOCとは識別可能な特性の一定の組み合わせを有し、このため、一定の薬学的用途のための賦形剤として固有の有益性を有することとなる。これらの中で最も重要なことは、PEOおよびPPOの2つの所望の特性を組み合わせていることである。すなわち、室温およびそれ以上で液体であり広範囲の分子量にわたるが、しかし水溶性である。対照的に、非常に低い分子量(1000g/mol未満)を除き、PPOは水に溶解せず、POEは固体である。また、ほとんどのブロックコポリマーのように、ランダムAOCは純粋状態では自己会合して構造化ドメインまたは結晶構造を形成することはない(このため、液体性質である)。全ての他のPAOのように、水にほとんど溶解しない疎水性薬物を含む多くの有機および無機物質を溶解させることができ、選択した有機溶媒に溶解でき、かつ毒性が非常に低い。
【0043】
小PEO分子(600g/molまたはそれ以下)は、インビボで代謝され、毒性のあるシュウ酸塩が生成されることがあるといういくつかの証拠がある。しかし、より大きなPAOは事実上不活性で、インビボで代謝されず、変化無しで排出される。このため、液体PEOに対し、より分子量の高いランダムPAO液体がさらに有利である。
【0044】
好ましい態様は分子量が約22kg/molで、約50:50のEO:PO質量比を有するランダムアルキレンオキシドコポリマー(22KランダムAOC)を使用する。そのような化合物はBASF CorporationからPLURACOL(登録商標)V-10として市販されている。その製造者によれば、V-10は水-グリコール耐火性作動液中で使用するために特別に開発され、さらに水溶性の切削液および研削液として、様々な金属加工用途において適している。さらに、製造者は、V-10に関する完全な毒性情報はまだ完全には明らかにされていないこと、V-10を用いて加工する場合、任意の化学薬品を取り扱う際に用いる標準の予防処置を使用すべきであること:例えば、目を保護すべきであり、皮膚との長期にわたる接触は避けるべきであることを開示している。別の好ましい態様は、分子量が約12kg/molで、EO:PO質量比が約75:25であるランダムアルキレンオキシドコポリマー(12kランダムAOC)である。
【0045】
ランダムAOCは、BASF、Dow ChemicalおよびSigma/Aldrichを含むいくつかの製造者により、とりわけ、PLURADOT(登録商標)、PLURACOL(登録商標)、SYNALOX(登録商標)EPB、およびEMKAROX(登録商標)という商品名で製造されている。ある範囲のEO:PO比および分子量(例えば、1,000〜22,000g/mol)、直線および分枝形状のものが入手可能であり、一般に、分子量よりもその粘度により特徴づけられる。Dow Chemicalは1,500〜4,900の範囲の分子量を有する多くのランダムAOCを提供する。例えば、下記コードを有するものが挙げられる:EP 530、EP 1730、EP 435、EP 1660、15-200、112-2、UCON 50-HB-5100、およびUCON 50-HB-660。Sigma/Aldrichは2,500〜12,000の範囲の分子量を有する多くのランダムAOCを提供する。例えば、下記コードを有するものが挙げられる:43,819-7、43,820-0、43,818-9、40,918-9。PAOに対する医学的用途はブロックAOCに焦点が合わせられていた。対照的に、ランダムAOCの使用は、ほぼ例外なく、非医学的用途に限定され、医学的利点を提供する可能性のほとんどが見落とされていた。
【0046】
ブロックアルキレンオキシドコポリマー
ブロックAOCは直線または分枝であってもよく、好ましくは約1kg/mol〜約100kg/molの分子量を有する(すなわち、ポリマー分布の平均分子量)。少なくとも約2kg/mol、約4kg/mol、約6kg/mol、または約10kg/molの分子量を有してもよく:分子量はまた、約10kg/mol、約15kg/mol、約20kg/mol、または約50kg/mol以下としてもよい。好ましいブロックAOCはエチレンオキシドおよびCnH2nOのコポリマーであり、ここでn=3〜6である(プロピレンオキシドが好ましい)。エチレンオキシドの他のアルキレンオキシドに対する質量比は好ましくは、約5:95〜約95:5である。少なくとも約10:90、約25:75、または約40:60の質量比を有してもよく;質量比はまた、約60:40、約75:25、または約90:10以下としてもよい。化合物は、上記上限および下限を用いて中間範囲によりさらに説明されてもよい。好ましい態様は、(1)約6kg/mol〜10kg/molの分子量、および60:40〜90:10のEO:PO質量比、または(2)約6kg/mol〜10kg/molの分子量、および60:40〜90:10のEO:PO質量比を有するブロックアルキレンコポリマーを使用する。
【0047】
ブロックコポリマーは連続して合成される。第1に、中心ブロックを1つの型のアルキレンオキシド(例えば、PO)から普通に重合し、その後に、1つまたは複数の外側ブロックを、第2の重合段階で別のアルキレンオキシド(例えば、EO)を用いて末端に付加させる。ポロキサマー(例えば、BASF製のPLURONIC(登録商標)コポリマー)は、一般式(EO)x(PO)y(EO)x(式中、x、yはブロック内のEOおよびPOモノマーユニットの平均数である)を有するEOおよびPOの直線A-B-Aトリブロックコポリマーである。所望の分子量の疎水性物質が、プロピレングリコールの2-ヒドロキシル基に添加するプロピレンオキシドを制御することにより得られ;その後、エチレンオキシドを添加し、疎水性ブロックを親水性ブロックの間に差し込む。親水性ブロックは最終分子の10〜80%重量を構成する。分子量が1,100〜15,000g/molの範囲で、PO:EO比が9:1〜2:8であるポロキサマーが入手可能である。メロキサポール(例えば、BASF製のPLURONIC(登録商標)R)はポロキサマーと同様の直線トリブロックコポリマーであるが、構造が反転しており(B-A-B)、このため一般式が(PO)y(EO)x(PO)yである。所望の分子量の親水性物質が、エチレングリコールへのエチレンオキシドの添加を制御することにより製造され;その後、プロピレンオキシドを添加すると、中心親水性ブロックの外側に疎水性ブロックが形成される。ブロックコポリマーの物理特性は、分子量およびEO:PO比を正確に組み合わせることにより、低粘度液〜ペースト〜固体に及ぶ(分子量が高くEO比が高いほど、融点が高くなる)。Schmolkaによる概説を参照のこと(J. Am. Oil Chem. Soc.、54:110-116、1977)。
【0048】
BASFのPLURONIC(登録商標)コードでは、室温の生成物の物理的形態からアルファベット表示が導かれる:液体に対しL、ペーストに対しP、フレーク(固体)形態に対しFである。好ましいブロックAOCはP108、P188、P238、P288、P338、P237、P335、およびP407である。数値表示では、300をかけた第1桁の数字(または、3つの数字のコードでは最初の2桁の数字)は疎水性物質の大体の分子量を示す。10をかけた最後の数値は、PLURONIC(登録商標)コポリマー中の親水性物質の大体のパーセンテージ(w/w)を示す。
【0049】
ポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68)(8350g/mol、80%POE)は局所的な創傷の洗浄に使用されており、ペルフルオロ炭素酸素運搬製剤のための乳化剤として静脈内で使用されることが認められている。十分高濃度(典型的には約30% w/vを超える)の、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)(12,500g/mol、70% POE)などのポロキサマーの水溶液が薬物送達のためのヒドロゲル製剤として使用される。これらは好ましいブロックAOCである。
【0050】
ポロキサミン(例えば、BASF製のTETRONIC(登録商標)ブロックコポリマー)は、一般式[(EO)x-(PO)y]2-NCH2CH2N-[(PO)y-(EO)x]2を有するエチレンジアミン開始剤を使用して調製した4腕対称ポリ(アルキレンオキシド)ブロックポリマーであり、組成物を製造するのに使用してもよいアルキレンオキシドコポリマーの別の例である。4つのPPOブロックの前に4つのPEOブロックを付加する逆ポロキサミンもまた使用することができる。
【0051】
ランダムおよび非ランダムアルキレンオキシドポリマーの配合物
本発明のための1つの基礎を形成する発見は、一定のランダムAOCが、選択した固体AOHおよびブロックAOCと、適合または混和可能な配合物(すなわち、アロイ)を形成することができるということである。この、以前には認識されなかった性質により、ランダムAOCが他の液体ポリマー、例えば低分子量PEOおよびPPO(これらは、固体PEOまたはポロキサマーとアロイを形成しない)、または液体ポロキサマー(一般に密接に関連するコポリマーのみとしかアロイを形成せず、そのため、混合により何の利益も得られない)と区別される。非ランダムポリマーとランダムコポリマーとの間の質量比を調節すると、様々な硬度および粘度を有する組成物が得られる。組成物では、質量比(ブロックAOC:ランダムAOC)は1:199〜199:1としてもよい。22KランダムAOCを用いると質量比約2:98は、もはや流動性のある液体ではなく、22KランダムAOCを用いると、質量比約1:19は、固体である。質量比は少なくとも約1:4、約1:3、または約1:2としてもよく、質量比はまた、約2:1、約3:1、または約4:1以下としてもよい。組成物は、上記上限および下限を用いた中間範囲によりさらに説明してもよい。
【0052】
ほとんどのポリマーの機械的特性は、可塑剤を含有させることにより調節しその対象とする用途に適応させる必要がある。可塑剤を使用してポリマーの柔軟性、可鍛性または延性をより大きくし、脆性をより低くする。可塑剤は、この機能を遂行するためのポリマーと混和できなければならない。ほとんどの可塑剤は小分子であり、本来、しばしば毒性があり、非生体適合性であり、ポリマーから容易に放出される。高分子可塑剤は多くの用途に対し非常に有益で、とりわけ、生体適合性で、毒性がなく、代謝されず、直ちに排出されるものが有益である。固体アルキレンオキシドポリマーおよびコポリマーに対する高分子可塑剤は以前には記述されていない。柔軟剤または可塑剤として使用することができる適した生体適合性材料を見出すため本発明者らは多大な努力を払い、最終的に、ブロックAOCおよびAOH(表を参照のこと)と共に適合性または混和性配合物(すなわち、ポリマーアロイ)を形成する特定の分子量の範囲のランダムAOCに到達した。液体ランダムAOCに固体非ランダムPAOと組み合わせて使用し、商業的有用性を有する新規ポリマーアロイを形成することができるという発見は、予期しておらず、本発明者らの知る限りでは、以前に説明されていない。
【0053】
グリース状コンシステンシー〜硬質蝋の範囲の取扱特性を有するポリマーアロイを製造することができる。主に、実施例および表で概略を示したように成分の選択およびその比率を変えることにより、異なるレベルの可鍛性および可塑性を達成することができる。同様に、様々な他の態様が製造される。固体AOHまたはブロックAOCコポリマー成分は通常、室温では、液体ランダムAOC成分に溶解しない。しかしながら、ポリマーアロイは下記のように製造することができる:固体成分に熱を適用し溶融状態にする。ランダムAOC成分を同じ温度まで加熱し、2つの成分を、溶融状態で撹拌することにより完全に混合する。冷却すると、AOCアロイが形成される。冷却速度を変えると、また、AOCアロイの取扱特性および構造を調節することができる。
【0054】
相対的に少量の固体ブロックAOC成分を用いて、非流動性組成物を製造することができる。例えば、2重量部の固体ポロキサマー188-98部の液体22KランダムAOCを含むアロイは室温では流動性がない(表を参照のこと)。一方、ポロキサマー188および水から作製したヒドロゲルは37℃で非流動性ゲルを形成するには30%の固体を必要とするが、低温でなお流動性がある。
【0055】
組成物はまた、固体または液体形態で製剤化してもよい(例えば、切削(miling)、かき混ぜ、混練、または撹拌)が、固体または粘性形態で均一性を達成するには組成物を加熱することが好ましい。組成物は高圧滅菌または照射などの標準技術により滅菌してもよい。手で成形し;ブラシ、平坦または成形ロッド、またはシリンジを用いて塗布し;バーまたはスティックに成形し;または体内に移植/配置してもよい。装置は賦形剤でコートしてもよく、生物活性剤は賦形剤と混合してもよい。可鍛性、熱可塑性および粘性を当技術分野で周知の方法により測定してもよい。同様に、生体適合性および非毒性を、当技術分野で周知の方法によりアッセイしてもよい。
【0056】
1つの好ましい態様では、組成物は室温で固体である、ポロキサマー188などのブロックAOCと、室温で液体である、22KランダムAOCなどのランダムAOCの重量比1:1の混合物を混合することにより製造される。しかしながら、AOCアロイの物理特性の範囲は、その対象とする用途により作成することができる(表を参照のこと)。
【0057】
無水状態では、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)は硬質固体であり、砂状粉末またはフレーク形態で入手可能であり、それ自体、それほど有益ではない。少量でも22KランダムAOCを添加すると、硬質材料は柔らかくなり、取扱特性が改善されるが、表面活性剤および他の特性は元のポロキサマー407と同様である、均一な蝋または石鹸様の材料が製造される。ランダムAOCの濃度を増大させると、組成物の可鍛性がより大きくなる。
【0058】
逆に、22KランダムAOCは室温で流動的な、粘性液である。2%(w/w)の少量のポロキサマー188を添加することにより、グリース状の固体のように取り扱われ、室温では流れないポリマーアロイが形成される。
【0059】
他の合成AOCが開発され、市販されるであろうことは予期される。例えば、本発明の範囲内に明確には入らないAO鎖を含む化合物を製造することは可能であるかもしれない。ランダムAOCの厳格な分類に含まれない、室温で液体の高分子量化合物を製造することができること、または本質的に固体のAOCの化合物は厳格にはブロックから構成されないかもしれないことは予想できる。PAOコポリマーはブロックコポリマーおよびランダムコポリマーの区分を含むように製造することができることは、完全に予想できる。そのような等価物は保護の範囲に含まれるべきである。
【0060】
医学的有用性
いくつかの態様は、特性が改善されたため、整形外科、歯科、再構成、脊髄および頭蓋顔面外科、および他の外科的用途において使用することができる接着材料に関する。多数の用途としては、骨止血剤、または例えば、ねじをねじ回しの刃に容易に接着させることができる接着剤が挙げられる。1つの好ましい態様では、ポリマーアロイは1:1比のNFグレードポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127NF)および22KランダムAOCを用いて製造される。この製剤の取扱特性により、とりわけ、骨止血剤として、骨によく接着する粘着性の凝集性蝋として、骨の表面が濡れている場合でさえも、有益である。従来技術とは対照的に、好ましい態様では、生体適合性で、実質的に非毒性で、安定な(すなわち、非代謝性で容易に排除される)、優れた取扱特性を有するポリマーアロイが提供される。
【0061】
多孔質インプラント材料は、骨格の修復または再構成に有益である。インプラントを使用して骨欠損を満たすことができ、ヒトまたは動物において骨または軟骨を増加または置換することができる。細孔サイズが60μmまたはそれ以上である多孔質インプラントは細孔内での組織成長を示す。コラーゲンは細孔内に堆積し、非常に静的な複合体を形成し、これは感染および曝露に対し耐性がある。多孔質組成物がインプラント材料として有益であるためには、4つの基準を満たさなければならない:(1)生体適合性、(2)細孔は、組織成長を可能とするのに十分大きくなければならない、(3)細孔は、相互に連結されなければならない、(4)インプラントの構造は、移植部位で遭遇する条件下で多孔質骨格を維持するのに十分永久的で剛性でなければならない。有益であるには、材料はまた、臨床設計で十分容易に使用されなければならない。材料が非毒性で、比較的長い寿命を有し、比較的経済的で、良好な取扱特性を有することも望ましい。取扱特性を改善し、細孔を充填または被覆するために吸収性組成物を添加する必要がある。細孔の充填または被覆により、インプラントは組織平面を滑り抜けることができ、細片がインプラントに入らないようにできる。
【0062】
そのため、別の目的は、細孔が吸収性物質により充填または被覆された多孔質インプラントを作製することである。
【0063】
ヒトおよび動物において使用される多孔質インプラントは、ポリエチレン、PMMA、またはチタンなどの固体粒子を焼結させることにより製造され;または、多孔質の珊瑚質ヒドロキシアパタイトの場合、珊瑚などの天然物質から適合される。生物学的に不活性な材料であるポリエチレンは、外科において多くの用途を有する。ポリエチレンは、エチレンの重合により合成される直鎖炭化水素である。ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウムは組成が、骨の主鉱物成分に類似しており、その製剤によって、再吸収または再構築される。メタクリレート-およびシリコン-含有粒子は使用するのに好ましくない。
【0064】
1つまたは複数の骨欠損に多孔質インプラントを配置することは、一般的な外科処置である。骨の細孔内への成長を可能とするインプラント材料は骨伝導性であると考えられる。骨形成を誘導する生物活性成分を有するインプラント、例えば、異なる位置から除去した骨から作製したインプラントは骨誘導性であると考えられる。天然の骨が最終的にインプラントにとって換わることが望ましい事象では、身体により再構築できる材料が好ましいかもしれない。一定の臨床状況、例えば大人のヒトの頭蓋内欠損では、骨は成長しないと予測され、非吸収性製剤が好ましい。研究により、頭蓋顔面骨格では、多くの一般的に使用される固体インプラントにより、移植部位に隣接して骨吸収が引き起こされることが示されている。多孔質インプラントは同じ効果を有しないかもしれない。
【0065】
組織の成長を可能とする多孔質インプラントのほとんどが、微孔性の構造を有する非常に硬い構造である。臨床的に有益となるように、しばしば、外科医が所望の形態に彫刻する必要がある。インプラントの微孔性の構造によりインプラントは、VELCROマジックテープの一片の様に、組織に接着することがあり、インプラント配置が困難になる。細孔内での細片堆積は、多孔質インプラントの使用に対する別の望ましくない欠点である。細菌感染の危険を減少させるために、使用前にインプラントを抗菌溶液に浸してもよい。
【0066】
細孔を生体適合性賦形剤で充填したインプラントは、現在臨床的に使用されているインプラントよりも改善されている。組織成長が起こるまで一時的に細孔を充填すると、インプラント内での細片の蓄積が排除され、細菌感染の発生が減少する。適当な賦形剤を使用して細孔を一時的に充填すると、その取扱特性が改善し、インプラントがより滑らかになり、組織に対する損傷性が低くなり、このため、インプラントは、外科的配置中、組織平面に沿って滑ることが可能となる。その後、適当な賦形剤もまた体液の存在下で接着性となりインプラント配置後に起こることがある位置異常の発生が減少する。生体適合性賦形剤はまた、治療製品のための担体としても機能することができる。例えば、時間経過に伴い、賦形剤が吸収されるにつれ、化学化合物が放出される。
【0067】
好ましい担体または賦形剤は、生体適合性で、非毒性で、非代謝性で、容易に排除され、かなり経済的で、良好な取扱特性を有するべきである。組成物によりインプラントは滑らかになり組織平面に沿って滑ることができるようになるが、組成物により、インプラントは、最終配置に到達すると周囲の構造に接着することができるようになるべきである。凝集性を使用して、より永久的な付着が達成されるまで、組織を一時的につなぎ合わせてもよい。無水製剤は生物剤の半減期を増大させ、汚染の危険を減少させる。
【0068】
好ましい態様では、水溶性骨蝋を多孔質インプラント、例えば珊瑚質の多孔質ヒドロキシアパタイトの表面に塗布する。これにより、インプラントは、組織液と接触した際に滑りやすくなる。このため、周囲の軟組織の接着が減少することにより、インプラントの配置が容易になる。
【0069】
別の好ましい態様では、多孔質インプラントは、細孔が大体または完全に吸収性ポリマーで充填されるように製造することができる。これは、例えば、多孔質ポリエチレンインプラントを溶融ポリマー組成物中に、真空下で配置し、その後、冷却させることにより達成することができる。生じたインプラントは組織表面に沿って滑り、可撓性のままであり、細片がその細孔内で集まらないようにする。いったん移植されると、ポリマーアロイが吸収されるにつれて、インプラントの細孔内への血管および軟組織の成長が起こる。
【0070】
従来技術では、金属表面に対し高い親和性を有する潤滑剤としてのランダムAOCの使用が教示されている。しかし、ランダムAOCは液体であり、油のように、連続して置換されないと表面から流れ去ってしまう。軸受けなどを滑らかにするために定位置に残るグリースを製剤化するために、そのような製品の製造者はしばしば、AOCまたはAOホモポリマー基準貯蔵物をイオン石鹸、通常はリチウム、カルシウムまたはナトリウム系と組み合わせる。非流動性、非イオン性、非腐食性で、完全に水溶性のグリース様潤滑剤、特に、生体適合性で医薬および外科において使用するのに適した潤滑剤に対する要求はまだ満たされていない。別の態様では、水溶性組成物が非流動性、非腐食性の水溶性潤滑剤として使用される。
【0071】
手術中、器具または他の装置の潤滑は通常、生理食塩水および患者本人の体液に限られている。ヒトまたは動物起源に由来する潤滑物質の使用は、免疫反応および病原菌の感染の危険がある。必要に応じて塗布することができる外科用潤滑剤として使用することができる安全で、生体適合性で、高価でない担体が必要である。そのような潤滑剤により組織の損傷が減少し、および/または組織を通り抜ける装置の取扱特性が改善される。外科用器具により引き起こされる損傷の例は、狭い組織上面に沿って移動する内視鏡により引き起こされる組織の摩耗火傷である。外科インプラント、例えば、多孔質ポリエチレンから製造されたものはとりわけ、組織平面に沿って通過しにくい。軟組織がこれらのインプラントに接着する傾向があるからである。乳房インプラント、とりわけ小さな遠隔切開を通して配置されるざらつき(textured)表面を有するものは十分な潤滑なしには非常に配置しにくい。このように、組成物を装置(例えば、インプラント、器具)のための担体として使用し、挿入を容易にしてもよい。
【0072】
1つの態様では、AOCアロイを潤滑剤および/または保護剤として使用することができる。例えば、1:19の比のNFグレードポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127NF)および22K ランダムAOCを用いて製造したポリマーアロイを、器具を外科処置に使用する前に、外科用鋼器具の表面に塗布することができる。ポリマーアロイは保護剤として機能し、液体ではなく、そのため、流れず、典型的に外科用器具と接触する布に吸収されないという点で従来技術よりも有利である。完全に水溶性であり、非毒性であるという利点が付加される。外科処置で使用されると直ちに、組織液の存在下、器具の表面は潤滑性となり、これにより器具の組織表面に沿って滑る能力が増強する。
【0073】
別の態様は、外科処置で使用するための、多孔質または固体充填剤と組み合わされたマトリックス(例えば、PEO、またはブロックAOCコポリマーもしくはランダムAOCコポリマー、またはそれらの組み合わせ)を含む接着材料である。
【0074】
多くの臨床用途では、粒子間の空間中に軟組織が成長することにより所望の位置に固定される、固体粒子または顆粒の凝集体を配置することにより多孔質構造を構成すると好都合である。同種移植骨は固体粒子の代用源である。容易に入手でき、上記自己骨に関連する外科合併症および患者の罹患率を阻止する。同種移植骨は活性骨形態形成蛋白質(BMP)を含むコラーゲン繊維強化ヒドロキシアパタイトマトリックスであると考えてもよく、滅菌形態で提供することができる。鉱物成分を骨から除去して、脱塩骨基質(DBM)を形成させてもよい。そのようなDBMは当然、骨誘導性および骨伝導性の両方である。外科的に移植されると直ちに、DBMは患者の組織内に完全に組み入れられる。DBMは骨の外科処置において、骨欠損を充填するのに使用されている。DBMは通常、寿命が延びるように、凍結乾燥された滅菌形態で入手可能である。この形態のDBMは通常非常に粗く乾燥しており、外科医が処置するのは困難である。DBMは低分子量溶媒のマトリックス中で供給されることが知られているが、これらは、周辺組織に対し有毒であることがわかっており、流れやすい組成物を形成する。
【0075】
そのため、1つの態様は、DBMのためのマトリックスとして組成物を使用するものである。例として、1:2の質量比のポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127NF)および22KランダムAOCを含む組成物を使用することができる。得られたDBMパテは優れた取扱特性を有し、DBMを対象の部位に接着させ、周囲の組織に対し非毒性であり、DBM中の骨形態形成蛋白質を不活性化する水を含まない。
【0076】
無機材料は、新しい骨が外科処置部位で成長するためのマトリックスも提供することができる。これらの無機材料としては、海サンゴから得られる、または合成により得られるヒドロキシアパタイトが挙げられる。どちらの形態も患者の血液および/または骨髄と混合することができる。ヒドロキシアパタイト顆粒は骨インレーまたはアンレーとして使用してもよい。顆粒はミクロフィブリルコラーゲンおよび患者由来の血液と混合することができる。本明細書では混合物は「ペースト」と呼ばれるが、その取扱特性により、ゲル、パテ、またはスラリー(slurry)として記述されてもよい。
【0077】
食作用による粒子遊走の可能性を最小に抑え、注入性を促進するには、約35μm〜約500μm(または約50μm〜約150μm)の範囲のサイズ(すなわち、最大寸法)を有する粒子が望ましい。15μmまたはそれ以下のオーダーのより小さな粒子が細胞により包み込まれ、および、一般的に注射により組織内に導入された増強材料の部位からリンパ系により除去された場合に食作用が起こる。下端では、15μmを超える(典型的には35μmまたはそれ以上)の粒子は大きすぎて、貪食されず、周知の分粒技術(sizing techniques)(例えば、濾過、ゲル排除、分子ふるい)により容易に分離することができる。実質的に球状の粒子の群では、少なくとも大部分の群で、直径は約35μm〜約500μmの範囲としてもよい。このように、使用するのに望ましい、狭く、等価な粒子サイズ範囲を製造するのは比較的簡単である。
【0078】
粒子は少なくとも約10%(v/v)、少なくとも約25%(v/v)、約40%(v/v)以下、約64%(v/v)以下、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。組成物は混練してもよく、または他の方法で加工してもよく、組成物中で粒子の均一な分布が得られる。しかしながら、不均一分布が所望される場合、そのような加工は回避され、異なる組成物が共に積層されてもよい。
【0079】
例えば、50〜300μmのサイズのポリエチレン粒子を、1:2比のポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127NF)および22KランダムAOCを含む組成物と配合する。得られたポリマーパテを使用して頭蓋欠損を充填することができる。マトリックスは2つの重要な課題を実行する:凝集性パテを形成し、移植対象部位に粒子を接着させるように機能する。この点で、組成物は従来技術よりも優れている。
【0080】
賦形剤は、薬物、装置、および他の治療薬(しばしばその組み合わせ)に関連し、治療製品を製造する生物学的に不活性な物質である。賦形剤は、機能により分類してもよい:バインダ、崩壊剤、充填剤、希釈剤、懸濁化剤、分散剤、潤滑剤、流動性増強剤、軟化剤、可塑剤、およびコーティングとして機能する。生物学的に不活性であるが、治療製品の重要で本質的な成分であるかもしれない。これらを使用すると、生物活性剤の不安定さが減少し、生物学的利用能が増強し、および/または生物活性剤の放出位置および速度が制御される。これらはまた、経口、非経口、腸内、または局所に関わらず、所望の経路により製剤を送達させる必要があり、適切な場合、製品の外観および食味を増大させる必要があるかもしれない。多くの治療製品では、賦形剤は総剤形の大部分を構成する。賦形剤は高圧滅菌または照射により、製剤化前に滅菌することができ、または製剤は製造の一部として滅菌してもよい。さらに、溶媒を治療製品に含有させてもよい。溶媒は水、緩衝および/または生理学的塩を有する別の水溶液、非水溶液、エマルジョン、または懸濁液としてもよい。装置は、充填剤、アンカー、カテーテル、インプラント、プレート、補綴、ねじ、縫合糸、手術器具、などとしてもよい;装置は骨(例えば、チップまたは粉末)またはその誘導体(例えば、脱塩骨)、セラミック(例えば、カルシウム塩、とりわけヒドロキシアパタイト)、ガラス、ポリエチレン、または金属(例えば、ステンレス鋼、チタン)から製造してもよい。薬物は、骨成長因子または形態形成蛋白質、ホルモン、他の蛋白質、核酸(例えば、DNA、RNA、それらの類似体または混合物)、鎮痛薬または麻酔薬、抗生物質、防腐剤、睡眠薬、ステロイド性または非ステロイド性抗炎症薬、などとしてもよい。
【0081】
組成物はまた、生物活性剤、医療装置/外科装置(例えば、インプラントおよび器具)、および他の治療(例えば、非ポリマー)製品のための担体または賦形剤としてもよく適応する。物品を担体でコートしてもよく、化学薬品を賦形剤と混合してもよい。滅菌はオートクレーブ内で、または照射により、インビボで使用するために実施してもよい。
【0082】
骨形態形成蛋白質(BMP)およびTGF-βは生物活性物質の2つの例である。他の分化因子、幹細胞因子、抗生物質、抗体、抗原、化学療法薬、サイトカイン/ケモカイン、酵素およびそれらの基質(例えば、活性化剤、阻害剤、または反応物)、受容体(とりわけ分泌形態およびそれらの模倣薬)、またはそれらのリガンド(例えば、作用薬または拮抗薬)、シグナル伝達分子(例えば、シグナル伝達経路の媒介物質、それらの作用薬または拮抗薬)はその組成物と共に、1つの組成物に製剤化してもよい。
【0083】
担体または賦形剤として使用するために、生体適合性で、実質的に非毒性で、製造が簡単で、ヒトまたは動物により容易に排除されるという属性が重要である。さらに、組成物は疎水性化合物を溶解することができ、これにより疎水性化合物を溶液中に放出することができる。無水製剤は、水性環境で不安定な生物活性剤に対する安定した賦形剤を提供するという利点を有する。さらに、水が存在すると、組成物は水と結合するように作用し、生物活性剤と相互作用することができなくなる。水に不溶の化合物をポリマー組成物中に混入させ、被験者に投与してもよい。従来技術ではこれらの属性を有するものは知られていない。
【0084】
担体または賦形剤の例は、(1)1:2の質量比のポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127NF)および22KランダムAOCを含むポリマーアロイ、および(2)1:1の質量比のポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68NF)および22KランダムAOCを含むポリマーアロイである。
【0085】
ウイルスおよび感染粒子などの一定のベクターは、同様に、水を含まない賦形剤を必要としている。1つの態様は、生体適合性で、実質的に非毒性で、水を含まないように製剤化することができる生物ベクターのための賦形剤を提供する。そのような賦形剤は、ベクターを細胞、組織、器官、動物、および植物に送達する際に有益である。
【0086】
いくつかの外科用器具(例えば、ハサミおよび鉗子)のジョイントは典型的には、清浄である必要があり、ジョイントは潤滑にする必要がある。そのような器具は、外科処置において使用する前に器具ミルク(instrument milk)中に浸漬することができる。このように、洗剤として使用する他に、組成物は潤滑剤として使用してもよい。生体適合性、流動性、実質的な非毒性、および水溶性のために、器具ミルクとしての組成物の有効性が増強されうる。
【0087】
上述したように、組成物は、薬物送達のために、または他の生物活性剤を含む組成物の製造において、そのような化合物を様々な経路、例えば、経皮、腸内、鼻内または呼吸、局所、および経粘膜(例えば、直腸)を通して被験者に送達するために、賦形剤として使用してもよい。十分な量で経口により取り込まれると、組成物は水を消化管内に引き込むことができるためにそれ自体の生物活性を有し、下剤として作用することができる。
【0088】
開いた傷口、特に感染し、または体液が染み出す傾向のある傷口は、医療提供者にとって引き続き取扱が困難な問題である。これらの状況において傷のケア管理の目的は、傷を湿らせ続けること、このため、傷が治癒する条件を最適にすること;過剰の体液および細片を傷から除去すること;および感染を最小限にし、または治療することである。創傷包帯の成分が、湿らせ続け、過剰の体液を除去または吸収することができ、抗菌薬を含むように製剤化されると、好都合である。このように、1つの態様はそのような創傷処置のための物質を提供する。
【0089】
日焼け止めおよび創傷包帯を含む、クリーム、ゲル、および軟膏などの様々な局所製剤が存在する。水を吸収し、そのため、しみ出た創傷および鬱血性潰瘍を治療する際に有益な潤滑成分に対する要求が満たされていない。組成物をビンまたはチューブにパッケージし、傷に塗布し、その後、任意に密封または非密封包帯で被覆してもよい。また、無菌条件下で、包帯と共に予めパッケージしておいてもよい。
【0090】
このため、いくつかの態様では、組成物は下剤または創傷包帯として使用してもよい。
【0091】
非医学的有用性
蝋は25℃で固体であり、加熱すると融解して液体となる有機の、プラスチック様物質である。蝋は事実上可塑性であるので、熱を適用しなくても加圧下で変形する。「蝋」という用語は、多くの化学的に異なる化合物に適用され、水に溶解する化合物を含む。これらの蝋は、分散水溶液の性質を有すると言われている。米国特許第6,554,052号では、宝石を製造する際の貴金属の量を減少させるための水溶性蝋の使用および「失蝋」鋳造法における有用性が教示されている。取扱特性の改善および水溶性蝋の製造の容易性が必要とされる。
【0092】
1つの態様では、組成物は蝋として使用される。
【0093】
非毒性で、水で落ちるクレヨンおよびパステルを製剤化する必要がある。米国特許第4,978,390号では、布、壁紙および塗面から水で落ちるクレヨンまたはマーキング鉛筆の芯の形態の組成物が教示されている。組成物の好ましい態様は、ポリ(エチレングリコール)樹脂のエポキシド誘導体を含む。そのような組成物は、水を適用した後、残留物が残るという欠点がある。簡単、安価で、実質的に非毒性で、水溶性のクレヨンが必要である。
【0094】
適当な組成物(例えば、約3重量部のポロキサマー338および1重量部の22KランダムAOCのポリマーアロイ)は、標準の蝋クレヨンのように、脆弱でなく、紙などの表面に塗布でき、薄片となったり砕けたりしない中程度の硬度の蝋を形成する。広範囲の無害の染料を使用して、材料を適当な形状のクレヨン鋳型に流し込む前に溶融ポリマー構造と単に混合することにより、組成物を着色することができ、例えば、標準型の子供用蝋クレヨンを着色するのに現在使用されているものが挙げられる。このように形成されたクレヨンはたった2つの安価な成分と染料から製造され、非毒性で、絵画用の標準クレヨンとしての有用性があるが、完全に水に溶ける。微粉として溶融組成物に添加すると、多くの親水性染料(例えば、メチレンブルー)は分散するが溶解しない。このようにして製剤化されたクレヨンは淡く、わずかに色むらがある。使用時には、これらのクレヨンは紙にかすかに印をつけるだけである。しかしながら、クレヨン蝋は水溶性なので、少量の水を紙に適用すると、使用したクレヨンの見かけの色とはかなり異なる明るい飽和色が発現する。このため、これの組成物は新規美術材料としての有用性がある。水溶性クレヨンの別の明らかな利点は、クレヨンを誤用した場合、浄化が簡単であることである。水で落ちる染料および他の着色剤を顔料として使用する。
【0095】
別の態様では、組成物は、水で落ちるクレヨンの製造に使用することができる着色顔料のための担体として使用される。
【0096】
ポロキサマーおよび他の洗剤を使用して、表面および材料を滅菌していた。そのような薬剤は通常、粉末またはフレーク形態である。ポロキサマーを使用し、高い鉱物量を有する溶液中(例えば、硬水)、または高い塩分の溶液(例えば、汽水または海水)中で実施できる能力を有する非イオン性石鹸、洗剤、または染み抜き剤が必要であり、取扱特性が改善された好都合な物理形態、例えば固体バーまたは塗りつけスティックで提供することができる。ここで、組成物は、便利で、使用が容易な形態で、非イオン性洗剤の表面活性官能基を提供する。
【0097】
組成物の界面活性剤特性は、非イオン性洗剤または染み抜き剤が必要な場合に有利である。そのような洗剤は、環境的に安全であり、石鹸カスを出すことなく、硬水および塩水環境で機能するという点で有利である。例えば、約60重量%のポロキサマー188および40重量%の22KランダムAOCのアロイを溶融し、好ましくは石鹸の標準バー(standard bar)の形状と類似するバー形態(bar form)に鋳造することができる。製剤は洗剤バー(cleanser bar)として使用することができ、グリセリン石鹸と非常に類似した外観を有し、所望であれば、他の洗浄剤、促進剤(booster)、着色剤、香料、および湿潤剤を製剤中に含有させることにより、さらに増強させることができる。この態様の主な価値は、標準形態では硬い白色顆粒材料であるポロキサマー188の非イオン性界面活性剤特性を、よく知られている簡単で便利なバー形態で、以前には使用されていなかったタスク作業、例えば手洗いに適用することができることである。他のポロキサマーまたは同様のブロックコポリマーもポロキサマー188の代わりに使用することができる。非イオン性石鹸バーは、機械工の手の油およびグリース汚れを除去するための洗浄剤として使用するのに効果的であり、硬水で機能し、石鹸カスが出ず、塩水中でも使用することができる。
【0098】
鋳造などの用途では、水性離型剤(aqueous release agent)が使用される。非毒性、非腐食性、水溶性、非流動性で、安価な、表面には接着するが、要求に応じて、例えば水性環境に配置されると、解放する離型剤が必要である。
【0099】
1つの態様では、水溶性組成物が水性離型剤として使用される。
【0100】
水溶性の非石油系合成潤滑剤として使用するために、組成物は、単に成分の割合を変えることにより、硬質蝋から軟質グリースまでの任意の多くの異なるグレードで製剤化することができる。約30%(w/w)のランダムAOC、例えば22KランダムAOC、および約70%のブロックAOC、例えばポロキサマー188の配合物を単純なスティック型(例えば、引き込み式管内)に鋳造させると、必要とされる箇所に塗ることができ、または移動表面、切断器具(例えば、鋸刃、ドリル用ビット(drill bits)、平削り盤(planing machines))または機械の部品に安全に直接塗布することができる、中程度の硬さの潤滑剤スティックが得られる。組成物の水溶性の、非油性特性は、繊細な材料または木材を加工する際の損害または染色を避けるのに有効であり、清浄化が簡略化される。ランダムAOC成分は熱金属表面に引き付けられ、その上をメッキ(plate out)することから、組成物はさらに金属潤滑剤として使用すると有用である。非腐食性特性もまた、金属加工用途にとって好都合である。
【0101】
約40%の22KランダムAOC、約60%のポロキサマー188の中間配合物をバーまたはスティック形態で、スキー、スノーボードなどの下側のための塗布潤滑剤として使用することができる。この用途では、成分の毒性の欠如、証明された環境安全性、および非腐食特性がとりわけ有用である。
【0102】
グリースの例として、95%〜98%の22KランダムAOCおよび2%〜5%のポロキサマー188を配合し、重力下、室温では流れない硬い〜柔らかい半固体グリースが得られた。とりわけ、金属部品を潤滑化するには有益なグリース代替品である。天然油または石油系油に比べより安定であり、水溶性で、生体適合性で、実質的に非毒性であるというさらなる利点が存在するからである。非常に少量のブロックAOCを用いると、配合物は粘性で、幾分粘着性の、油性液となることがあり、これは潤滑剤として有益である。
【0103】
任意の潤滑剤組成物はまた、容易に油に溶解しない潜在的に有益な摩擦調節剤を含む他の摩擦調節剤(TEFLON粒子、コロイド、など)のための担体としても使用することができる。
【0104】
実施例
下記実施例は、より特定的に本発明を記述するが、例示目的に過ぎない。様々な改変および変更が当業者には明らかだからである。
【0105】
実施例1-ポリマー組成物の特徴づけ
様々な態様の特定の特徴づけは、様々な特別技術(例えば、高感度示差走査熱量測定)を用いて確認することができる。これらの技術を使用して、アロイの正確な性質、および成分分子間の相互作用を探索することができる。特に、個々の成分のガラス転移温度(Tg)が有意に異なる場合、個々の成分のTgに対するアロイのTgの変化により混和性を確認してもよい。しかしながら、ポリマー混合物に対するそのような測定は、当分野の熟練者であっても、実施および解釈が非常に困難である。良好な結果が得られる場合、その結果は、その測定が実施された正確な組成、体積分率、および温度にしばしば厳密に限られており、最も理論的な分析をもってしても、これらのデータは他のポリマーの組み合わせに対し、たとえ、分子量または構造にわずかな差異があるだけだとしても、予測値をほとんど有さない。このため、下記の通り、巨視的および微視的の両方の直接観察によりポリマー配合物をスクリーニングすること、どの組み合わせが所望の物理特性の組み合わせを提供するかを決定すること、ポリマーには微視的スケールで適合性または混和性があるかどうかを決定することがより好都合であることが証明される。
【0106】
非ランダムAOHまたはAOCおよびランダムAOCを様々な比率で共に配合した。適当な量(w/w)の各ポリマーをガラス容器に入れ、10gのポリマー混合物を調製し、マイクロ波中で60〜90秒間加熱し、固体成分を融解させた(時間は、ポリマー混合物が約80℃に達するように必要に応じて変化させた)。完全に混合した後、サンプルを500gで2分間遠心分離にかけ、全ての気泡を除去した。サンプルは全て、80℃の溶融状態で無色透明の外観であった。
【0107】
巨視的評価のために、溶融ポリマー配合物を80℃まで再加熱し、2インチ×0.75インチ×深さ0.1インチの個々のアルミニウム鋳型に注ぎ入れることにより鋳造し小さなバーとし、完全に硬化するまで(5分以内)4℃で維持した。各サンプルの外観および機械特性を視覚的におよび、ポリマーアロイの対象となる用途のいくつかをシミュレートするように手成形(hand molding)により評価した。微視的試験のために、15μl〜20μlの溶融物をピペットで取り、サーモスタッド制御のホットプレート上の顕微鏡用ガラススライド上に乗せた。カバースリップを溶融物の上に乗せ、わずかに圧力をかけると、ポリマー配合物が25mm×25mmのカバースリップの縁まで流れ、一貫した薄層が形成された。その後、スライドをホットプレートから除去し、顕微鏡下で調べた。コポリマースフェルライトまたは非混和性配合物を10×の倍率で写真撮影した。微分干渉コントラストシステム(交差偏光器)を使用し、スフェルライト結晶により表される特性複屈折パターン(マルタクロス)を増強させた。
【0108】
3つのランダムコポリマーを評価した:EO:PO比が1:1の3つに枝分かれした22K g/molランダムAOC(22KランダムAOC)(BASF Pluracol(登録商標)V-10);EO:PO比が3:1の直線12K g/molランダムAOC(12KランダムAOC)(Sigma-Aldrich#43,820-0)、およびEO:PO比が1:1の直線3.9K g/molランダムAOC(3.9KランダムAOC)(Dow UCON 50-HB-5100)。非ランダムコポリマーはPluronic(登録商標)ブロックコポリマー(F68、F88、F98、F108、F87、F127)および様々な分子量(約1.5K、2K、3.5K、5K、7.5K、12K、20K、および35K g/mol)のPEO(ホモポリマー)画分の範囲から選択した。
【0109】
ポリマーの組み合わせの巨視的特性を表に記述する。表には、それぞれの興味深い特性に対する記述的データおよび半定量的ランキングの両方を示した。ここで、F68およびV-10の1:1アロイを基準点として使用した。データは、異なる型および分子量のポロキサマーおよび、各3つのランダムコポリマーを有するPEO分子に対する適合性の範囲が示されている。
【0110】
22Kランダムコポリマーでは、巨視的に適合性のある配合物が、広範囲の割合、2〜98%にわたり、F68(ポロキサマー188)を用いて製造でき、不適合の証拠は見られなかった。F68の割合の低い配合物(表では2%および5%)は、透明で無色のグリースに似ていたが、他の配合物は蝋状固体であり、非常に柔らかい〜非常に硬いものであり、外観は他の型の蝋(例えば、パラフィン蝋または蝋そくの蝋)に類似する。アロイの取扱特性はポリマー比率を厳密に追跡し、F68量が2%〜80%にわたり増加するにつれ、硬度は増加し、可鍛性および延性は減少した。22KランダムAOCとF88、F98、F108、F87およびF127の混合物もまた選択した比率で評価した。F68組成物に対し、他のブロックコポリマーの各々により、わずかに異なる、潜在的に有益な特性が組成物に付与された。例えば、50:50の質量比のF127ブロックコポリマー:22KランダムAOCでは、F68ブロックコポリマーおよび22KランダムAOCの同様の組成物に比べ、より柔らかく、より可鍛性のある、より粘着性のアロイが得られ、F68組成物が透明であるのに対し、魅力的な白色の不透明な外観が得られた。他の違いは表のデータから明らかである。
【0111】
22KランダムAOCと組み合わせたPEOの適合性はPEO分子量の関数であった。このように、巨視的に適合性のある配合物が、1.5K g/mol〜5K g/molのPEOに対し得られたが、7.5 Kg/molは適合性が最低で、または適合性がなく、12K g/molのPEOは、配合物の粒状テクスチャーおよび凝集性の欠如により示されるように、明らかに22KランダムAOCと適合しなかった。適合PEO組成物は一般にブロックコポリマー組成物と類似していたが、より柔らかく、より延性が高い傾向があり、異なる「感触」を有し、すなわち、手触りがより油性で、ゴムのような粘着性を有した。
【0112】
12KランダムAOCランダムコポリマーはまた、同じブロックコポリマーおよびPEOホモポリマー(2K、3.5K、および5K)とアロイを形成し、12Kおよびそれ以上のPEOサンプルとは不適合であった。12KランダムAOCアロイは、機械的特性および外観の観点から、等価の22KランダムAOC組成物とほとんど同一であった。対照的に、ランダムEO:POコポリマーの分子量が低くなると、3.9KランダムAOCは、この研究で評価したブロックコポリマーまたはホモポリマーのいずれとも適合しなかった:見かけ上は80℃で完全に混和したが、配合物ポリマーは冷却すると分離し、非ランダムポリマーの硬い結晶粒を含む粘性のまたは液体担体(主には、3.9KランダムAOC)の2相系が形成される。これらの結果から、ブロックAOCおよびPEOと適合性配合物を形成するには高分子量のランダムAOCが必要であること:しきい値はおそらく約4K g/molと約12K g/molとの間に存在することが示される。
【0113】
AOCポリマーの組み合わせのほとんどが巨視的に均一な材料を形成するが、ポリマー相の適合性を確認するには微視的研究が必要であった。図1は、2%(w/w)〜98%(w/w)の比率の22KランダムAOCおよびF68のアロイの冷却後の低倍率(125×)図である。最初に20%(w/w)〜60%(w/w)サンプルを見ると、各々の画像は非常に類似しており、各々のスフェルライト結晶が材料を通って広がり、非常に正確な境界に沿って隣接するスフェルライトに接触し、間隙または空間は全く存在しない。2%(w/w)〜10%(w/w)F68配合物では、スフェルライトは、結晶F68の量が低いのであまり明確ではないが、スフェルライトのサイズは同じであり、間隙も他の欠陥も存在しないことは明らかである。60%(w/w)を超えるF68では、スフェルライトサイズが増加し、線(顕微鏡下で暗い)がスフェルライト間の領域間に現れる。冷却しながらポリマー配合物を観察すると、これらの線は実際には、おそらく材料の収縮による陰圧下での気泡の突然の核形成により、進行するスフェルライト境界間の液相中に突然現れる負の欠陥であることが明らかになった。これらの気泡欠陥は、F68量の増加に伴いアロイの白さおよび不透明度が増加する原因であると考えられる。スフェルライト構造の規則性およびスフェルライト間の22KランダムAOC-充填空間が無いことは、材料が事実上単一相であり、2つのポリマーが少なくともμmレベルでは互いに、完全におよび密接に関連することを示す。
【0114】
図2は1:1の質量比のランダムコポリマーおよび非ランダムポリマーを示した図である。図2A〜2Bは適合アロイ由来のものであり、均一なスフェルライトパターンであり、欠陥が存在しないことに注意すべきである。図2C〜2Eは不適合で非混和性の組成物の例である。いくつかの明確な相が見られる-幾つかのPEOの大きなスフェルライト結晶ドメインにランダムコポリマーの大きな明確な球状領域が散りばめられている。その中に、結晶化され、相分離した小滴の界面に対応する形状となったさらにより小さなPEO滴が存在する。
【0115】
このように、本発明者らは、ランダムおよび非ランダムアルキレンオキシドポリマーの組み合わせに対する適合性の範囲を規定し、広範囲の非常に有益な材料特性を有するポリマー組成物の生成を可能とした。得られた結果から、さらに、所望の規格を満たすように組成物の材料特性を調整するために、どのように正確な型、分子量、および成分ポリマーの比率を選択すべきかが示される。これらの型のポリマーの適合可能な組み合わせの発見、成分ポリマーに対する適当な分子量の同定は新規で予想外であり、従来技術のいずれにおいても教示されていない。
【0116】
実施例2-骨止血のためのポリマー組成物
骨止血剤としての有用性のある好ましい組成物は下記のように製造してもよい:等重量のNFグレードポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68NF)および22KランダムAOCを耐熱ガラス容器中に密閉し、オーブンで80℃の温度まで加熱する。フラスコの中身を8時間80℃で撹拌する。液体組成物をさらに16時間、80℃で放置したままにし、気泡を液内から出て行かせる。その後、液体を直接、80℃の温度に維持したTEFLONコート金属鋳型に分配する。鋳型を4℃まで15分間冷却する。固体ポリマー組成物を取り出し、ポリエチレンコーティングで裏打ちした個々のホイルパケット(foil packets)に入れる。これらのパケットをその後、滅菌した移植装置をパッケージするのに適した袋に入れる。製品を適当な線量のプラズマ放射を用いて滅菌する。
【0117】
成体ラットの対頭蓋欠損においてAOC蝋と市販の蜜蝋との長期効果を比較する研究を実施した。10のSprague-Dawleyラットの正中線の両側の頭頂骨を通して歯科用ドリルを用い、直径4mmの2つの欠損を手で切り取った。使用した材料は直径4mm、厚さ1.0mmのディスク形状であり、等重量のNF-グレードポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68NF)および22KランダムAOCから構成されるAOC蝋、または蜜蝋(Bonewax、Ethicon、Inc.)とした。どちらの材料も各ラットに移植した。外科処置時では、2つの材料は取扱特性および止血効果において差異を示さなかった。7日、30日、60日、および90日に動物を屠殺した。全体検査では、蜜蝋は各動物に残ったままであり、AOC蝋は残っていなかった。AOC蝋の視認可能な悪影響はなかった。ホルマリン固定後、単純なX線写真(距離16インチ、50kV、0.1sec間)を得た。骨治癒に対するAOC蝋の悪影響は、X線写真像の検査では見られなかった。その後、骨標本を5%酢酸中で7日間、脱灰し、パラフィン蝋中に埋め込み、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色のために切片化した。試料の顕微鏡観察では、骨治癒、局所組織または下にある脳に対するAOC蝋の有害効果の証拠はなかった。
【0118】
実施例3-ポリマー組成物の非毒性
組成物の生体適合性を、皮内反応性、全身毒性、細胞毒性、溶血反応、変異原性、および染色体異常の可能性を評価することにより証明した。全ての試験に使用した組成物は、等重量のNF-グレードポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68NF)および22KランダムAOCから構成された。
【0119】
潜在的な刺激および感作について試験するために、皮内反応性について組成物を評価した。0.2mlの用量の材料を、対照と共に、ウサギの背中の5つの別個の部位に皮内経路で注入した。注入後24、48および72時間に紅斑および浮腫の観察を実施したが、刺激の証拠は見られなかった。組成物に対する一次刺激指数の特徴づけは無視できるものであった。
【0120】
合衆国薬局方および国際標準化機構(ISO)10993のガイドラインに従い、組成物の全身毒性を評価した。50ml/kg体重の単回用量を静脈内経路によりマウスに注入した。動物を7日間、定期間隔で観察したが、全身毒性の証拠は見られなかった。
【0121】
ISO10993に基づくインビトロ生体適合性研究を用い、細胞毒性を評価した。5%血清および2%抗生物質を補った溶液を調製し、5% CO2中で増殖させたL-929マウス線維芽細胞の集密単層上に置き、37℃で、5% CO2の存在下、48時間インキュベートした。単層を顕微鏡により48時間で調べると、細胞形態の変化、細胞溶解、または細胞毒性の証拠は見られなかった。
【0122】
組成物について、ヒト赤血球と接触すると溶血(赤血球の溶解)を引き起こすかどうかを確かめるために、インビトロでも試験した。材料をヒト赤血球の溶液中で4時間インキュベートした。インキュベーション後、ヘモグロビンの放出は検出されず、溶血が起こらなかったことが示された。
【0123】
組成物の潜在的な発癌性を、細菌復起突然変異試験を用いて確認した。この試験では、変異原性潜在力を微生物のヒスチジン依存株において評価した。遺伝子組み換えネズミチフス菌(S.typhimurium)株TA98、TA100、TA1535およびTA1537は、特異的突然変異が起こらなければ、ヒスチジン無しで増殖することができない。突然変異原が存在すると、これらの突然変異速度が増加する。微生物培養プレート1つあたり、5mgの材料を添加しても、細胞毒性または変異原性の証拠はなかった。
【0124】
哺乳類細胞培養物の染色体異常のインビトロ試験により、潜在的発癌性をさらに評価した。アッセイでは、チャイニーズハムスターの卵巣細胞を使用して、染色体構造の変化を検出した。ギムザ染色で染色した中期の染色体を観察した。染色体異常の証拠は検出されなかった。
【0125】
実施例4-ヒドロキシアパタイト骨充填剤合成
骨充填剤として有益なヒドロキシアパタイト粒子を配合した好ましい組成物を下記のように製造してもよい:1重量部のPLURONIC(登録商標)F68NF(ポロキサマー188)および2重量部の22KランダムAOC(PLURACOL(登録商標)V-10)を耐熱ガラス容器に密閉し、オーブンで80℃の温度まで加熱する。フラスコの内容物を8時間80℃で撹拌する。2体積部の液体ポリマーを、サイズが50〜300μmの範囲の3部のヒドロキシアパタイト粒子と配合する。組成物を真空下でさらに16時間80℃で維持し、気泡を製剤から排除させる。その後、組成物を直接1ccシリンジ内に分注し、4℃の温度まで冷却する。4℃で15分後、シリンジを個々のポリエチレンコーティングで裏打ちされたホイルパケットに入れる。製品を適当な線量のプラズマ放射を用いて滅菌する。
【0126】
実施例5-ポリエチレン骨充填剤合成
骨充填剤として有益な高密度ポリエチレン粒子を配合した好ましい組成物を下記のように製造してもよい:1重量部のF68NF(ポロキサマー188)および2重量部の22KランダムAOCを耐熱ガラス容器に密閉し、オーブンで80℃の温度まで加熱する。フラスコの内容物を8時間80℃で撹拌する。液体ポリマーを、その後サイズが50〜300μmの範囲の等質量の高密度ポリエチレン粒子と配合する。組成物を減圧下でさらに16時間80℃で維持し、気泡を製剤から排除させる。その後、組成物を直接1ccシリンジ内に分注し、4℃の温度まで冷却する。4℃で15分後、シリンジを個々のポリエチレンコーティングで裏打ちされたホイルパケットに入れる。製品を、プラズマ放射を用いて滅菌する。
【0127】
実施例6-脱塩骨基質送達
滅菌条件下、脱塩骨基質(DBM)粒子(サイズが200〜500μm)を調製した。DBMを組成物(2:3)と配合し、そのため、各1gの配合物は5mgのDBMを含む。5%ゼラチン溶液中にDBMを配合させた対照を使用した。マウス筋芽細胞のサブクローンを使用して配合物の骨形成能力を決定した。これは細胞のアルキレンホスファターゼ活性をアッセイすることにより達成した。アルカリホスファターゼ活性により測定される骨原性活性の量はどちらの群でも同じであった。この研究の結果から、組成物はDBMのための適した賦形剤であることが示唆される。
【0128】
実施例7-薬物送達のための製剤
疎水性赤色染料Sudan IVを疎水性薬剤の代理として選択した。この染料は脂質染色液として広く使用されている。これを、2つの異なるブロックAOC/ランダムAOC組成物、および適当な対照と組み合わせ、疎水性染料を水性環境に分散させる組成物の能力を評価した。
【0129】
染料を2つの異なる様式で組成物と配合した:(1)溶融:組成物を80℃まで加熱し、蝋1gあたり5mgの染料を添加し、溶融混合物を撹拌し染料を完全に溶解させた。その後、蝋を室温まで冷却させた。(2)混合:いくつかの薬物は熱的に不安定であるので、染料(5mg/g)および蝋を、均一の着色蝋が得られるまで、共に室温で混練した。評価した蝋は、(A)ポロキサマー188および22KランダムAOCの1:1配合物;(B)ポロキサマー407および22KランダムAOCの1:1配合物;(C)純粋22KランダムAOC。対照は(D)蜜蝋および(E)Brij 700(非経口用途に適していないPEO-ステアリン酸界面活性剤)とした。染料(5mg/g)を、上述したように、溶融により(C)、(D)および(E)に添加した。AまたはBのいずれかを0.25g、40mlの脱イオン水に添加し、完全に溶解させた。その後、12.5mgの染料をこれら2つのビーカー(A0およびB0)ならびに40mlの脱イオン水を含む第3のビーカー(F0)に添加した。直後に、A1、A2、B1、B2、C1、D1、およびE1の各々0.25gを50mlビーカー中の40mlの脱イオン水に添加した。その後、全てのビーカーを穏やかに2時間撹拌した。赤色が強いほど、より染料が放出されることを考えると、結果は以下のようにランク付けされる:
E1:明るい赤色の溶液で、染料粒子はほとんど残っていない
B1:赤色溶液で、少量の染料粒子が残っている
A1:深いピンク色の溶液で、少量の染料粒子が残っている
B2:汚れた赤色溶液で、染料粒子が懸濁して残っている
A2:汚れたピンク色溶液で、染料粒子が懸濁して残っている
C1:淡赤色の溶液で、染料粒子が懸濁している
B0:非常に淡い緑色の溶液で、染料粒子がフラスコの底にある
A0:非常に淡い緑色の溶液で、染料粒子が空気/水界面でゆるく凝集している
F0:著しく薄い緑色の溶液で、きつく凝集した染料粒子が空気/水界面に存在する
D1:透明溶液で、着色蝋が浮遊しており変化はない
【0130】
染料は水またはAもしくはBのいずれかの溶液で、ほとんど完全に不溶性であり、蜜蝋から放出されなかったが、どちらかの組成物中に、強い非生体適合性の界面活性剤であるBrij 700に等しい程度まで完全に混入されると、容易に溶液に分散された。かなりの割合の染料はまた、固体染料(粗い粉末/結晶形態)を機械的に混合した後分散された。これらの結果から、無水形態から水性環境中に疎水性材料を効果的に放出する、生体適合性組成物の能力が明確に説明される。
【0131】
他の生物活性剤(例えば、炭水化物、脂質、天然産物およびその合成類似体、核酸、人間により合成された小分子、蛋白質、抗生物質、抗体、抗原、化学療法薬、造影剤、放射線治療薬、受容体またはそのリガンド)を使用してもよい。組成物のデポー効果(depot effects)(もし、あれば)をアッセイし、生物学的活性の増強が存在するかどうかを決定してもよい。
【0132】
実施例8-水溶性クレヨン
好ましい組成物を染料と配合し、下記様式で水溶性クレヨンを製剤化した:3重量部のポロキサマー338および1重量部のPLURACOL(登録商標)V-10を耐熱ガラス容器中に密閉し、オーブンで80℃の温度まで加熱した。染料を5mg/gポリマーの濃度で添加し、溶解するまで撹拌した。その後、液体組成物を16時間80℃で静置し、気泡を液体内から除去させた。液体組成物を鋳型に注ぎ入れ、4℃まで15分間冷却することによりクレヨンを形成させた。
【0133】
実施例9-生体適合性洗剤
洗浄剤としての組成物の実用性を評価してもよい。組成物の界面活性剤活性、および装置または機器の表面からしみまたは汚染物質を除去する能力を、臨床状況で使用される他の洗浄剤と比較することができる。洗剤が、深い洗浄が必要な表面に接着するように意図されている場合、粘性組成物を使用してもよく;そうでなければ、迅速な洗浄およびすすぎのために非粘性組成物を使用してもよい。組成物の生体適合性は有利である。洗浄した装置または機器を容易に病院で再使用することができるからである。これはきつい洗浄剤の代替品となる。
【0134】
実施例10-非腐食性潤滑剤
潤滑剤としての組成物の実用性を評価してもよい。医療装置、外科的インプラント、または機器を滑りやすくすることができる能力を、臨床状況で使用される他の潤滑剤と比較することができる。様々な粘度(例えば、油〜グリース)の組成物を状況に応じて使用することができる。組成物の生体適合性およびその迅速な除去は、安全のため有利である。
【0135】
本明細書で引用した特許、特許出願、書籍、および他の出版物は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0136】
数値範囲を述べる場合、範囲内にある全ての値もまた記述していると理解すべきである(例えば、1〜10は1〜10の全ての整数値、ならびに2〜10、1〜5、および3〜8などの全ての中間範囲も含む)。「約」という用語は、測定に関連する統計学的不確定性または当業者が本発明の動作またはその特許性に影響しないことを理解する数値量の変動性を示す。
【0137】
特許請求の範囲の意味およびその法的等価物の範囲内にある全ての改変および置換は、その範囲内に含まれるべきである。移行語(transition)「含む(comprising)」を使用した特許請求の範囲では、特許請求の範囲内に他の要素を含めることができる;本発明はまた、「含む」という用語ではなく、移行句「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」(すなわち、著しく本発明の動作に影響しなければ、他の要素を特許請求の範囲に含ませることができる)および移行語「〜からなる(consisting)」(すなわち、特許請求の範囲には、本発明に通常関連する不純物または重要でない活動以外の要素のみを列挙させることができる)を使用するそのような特許請求の範囲によっても記述される。これらの3つの移行語はいずれも本発明を主張するのに使用することができる。
【0138】
この明細書で記述した要素は、明確に特許請求の範囲で記述されていなければ、主張した本発明を制限するものとして解釈すべきでないことを理解すべきである。このように、特許付与された特許請求の範囲は、特許請求の範囲に読み込まれている明細書の制限ではなく、法的保護の範囲を決定するための基礎である。対照的に、従来技術は、主張した発明を予測し、または新規性を損なう特定の態様の程度まで、本発明から明確に排除される。
【0139】
さらに、特許請求の範囲で明確に記述されていなければ、特許請求の範囲の制限間では特別な関係は意図されていない(例えば、製品の特許請求の範囲における構成要素の配列または方法の特許請求の範囲における段階の順序は、明確に記述されていなければ、限定するものではない)。本明細書で開示した個々の要素の全ての可能な組み合わせおよび順列は、本発明の局面であると考えられる。同様に、本発明の記述の一般化は本発明の一部であると考えられる。
【0140】
上記のように、本発明が、本発明の趣旨または本質的な特徴から逸脱せずに、別の特定の形態で具体化できることは、当業者には明らかである。記述した態様は、例示にすぎず、限定するものではないと考えるべきである。本発明のために提供される法的保護の範囲は、この明細書ではなく添付の特許請求の範囲により示されるからである。
【表1A】

【表2A】

【表1B】

【表2B】

【表1C】

【表2C】

硬度:1=グリース、2=半固体、3=非常に柔らかい、4=柔らかい、5=中程度に柔らかい、6=中程度、7=中程度に硬い、8=硬い、9=非常に硬い、10=岩のように硬い
延性:0=粉々に崩壊、1および2=破損、3=破損せず、4=伸縮性
可鍛性:0=変形性無し、1=低い成形性、2=加工により成形可能、3=容易に成形可能、4=非常に成形可能
接着性:0=粘着性(tacky)無し、1=わずかに粘着、2=粘着性、3=非常に粘着性、4=中程度にネバネバ(sticky)、5=ネバネバ、6=非常にネバネバ
凝集:-2=凝集、-1=弱い/減じた凝集、0=凝集性、1=ほとんど凝集性なし/わずかに凝集性、2=粉々に崩壊
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】ランダムAOC(約22,000g/mol;質量比50:50のエチレンオキシド対プロピレンオキシド)およびブロックAOC、ポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68)を用いて、非ランダムポリマー対ランダムコポリマー(F68:22K ランダムAOC)の下記比率で製造した組成物の結晶を示した図である:(A)2:98、(B)5:95、(C)10:90、(D)20:80、(E)30:70、(F)40:50、(G)50:50、(H)60:40、(I)70:30、(J)80:20、(K)90:10、または(L)98:2。全ての組成物において単結晶が形成され、結晶間に間隙は現れなかった(すなわち、単一成分固体)。全て、適合する均一配合物を有することが示される。スフェルライトサイズは、質量比5:95〜50:50で変動しなかったと考えられる。質量比60:40を超えると、結晶サイズは増大し、スフェルライトリングおよび破損(fracture)が明らかになった。破損により、固体スティックの概観が不透明となった。70:30〜98:2の間の質量比では、結晶内および結晶間で黒線として破損が明らかに見られた。
【図2】下記ランダムAOCおよび非ランダムポリマーを等しい質量比で有する組成物の結晶を示した図である:(A)3.5K PEOホモポリマーおよび12K ランダムAOC、(B)ポロキサマー188および12KランダムAOC、(C)35K PEOホモポリマーおよび12K ランダムAOC、(D)2K PEOホモポリマーおよび3.9K ランダムAOC、ならびに(E)7.5K PEOホモポリマーおよび3.9KランダムAOC。図2A〜2Bは本明細書で使用した条件下、解像度で、適合可能な混和性配合物の例である。結晶間に間隙のないスフェルライトにより、単一相のみが観察されることが示された。図2C〜2Eは不適合(不混和性)配合物の例である。明らかに複数の相が観察され、溶融相中のPEOは冷却するにつれ、分離した球状結晶滴を形成する。図2Dは幾らかの適合(線維状)領域の存在を示す。本明細書で使用したAOCアロイの定義の下では、図2A〜2Bはポリマーアロイの例を示すが、不適合組成物は図2C〜2Eに示される。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図1I】

【図1J】

【図1K】

【図1L】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)エチレンオキシドおよび、1つまたは複数の他のアルキレンオキシドを含む少なくとも1つのランダムコポリマー、ならびに(ii)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を含む少なくとも1つの非ランダムポリマーを含む組成物。
【請求項2】
骨、皮膚、または他の体組織に接着することができる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
生体適合性があり、実質的に非毒性である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
実質的に非代謝性であり、無修飾形態で容易に排除される、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
水溶性であるが、実質的に無水形態である、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
水を用いて製剤化されない、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
25℃で、粘性油からハードワックスのコンシステンシーを有する、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
他のアルキレンオキシドがプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドである、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
固体粒子、他のポリマー、および着色顔料からなる群より選択される1つまたは複数の添加剤とさらに配合される、請求項1〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
ランダムコポリマーが少なくとも5kg/molの分子量を有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
ランダムコポリマーが少なくとも10kg/molの分子量を有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
ランダムコポリマーが少なくとも20kg/molの分子量を有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
ランダムコポリマーが25kg/mol以下の分子量を有する、請求項1〜12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
ランダムコポリマーが50kg/mol以下の分子量を有する、請求項1〜12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
ランダムコポリマーが200kg/mol以下の分子量を有する、請求項1〜12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
ランダムコポリマーが1kg/mol〜1000kg/molの分子量を有する、請求項1〜15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
他のアルキレンオキシドがプロピレンオキシドであり、ランダムコポリマーが(i)15kg/mol〜30kg/molの分子量および(ii)エチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する質量比25:75〜75:25を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
ランダムコポリマーが20kg/mol〜25kg/molの分子量を有する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
ランダムコポリマーがエチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する質量比40:60〜60:40を有する、請求項17または18記載の組成物。
【請求項20】
非ランダムポリ(アルキレンオキシド)が、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポロキサマー、メロキサポール(meroxapol)、ポロキサミン(poloxamine)、逆ポロキサミン、ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの他のブロックコポリマーからなる群より選択される、請求項1〜19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
非ランダムポリ(アルキレンオキシド)がブロックコポリマーである請求項1〜19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
ブロックコポリマーがP108、P188、P238、P288、P338、P235、P237、P335およびP407からなる群より選択されるポロキサマーである、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
ブロックコポリマーがエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーである、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
ブロックコポリマーが10kg/mol〜50kg/molの分子量を有する、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
ブロックコポリマーがエチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する質量比25:75〜95:5を有する、請求項23または24記載の組成物。
【請求項26】
ブロックコポリマーがエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのトリブロックコポリマーである、請求項21記載の組成物。
【請求項27】
トリブロックコポリマーが4kg/mol〜20kg/molの分子量を有する、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
トリブロックコポリマーがエチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する質量比25:75〜95:5を有する、請求項26または27記載の組成物。
【請求項29】
ブロックコポリマーが、(i)6kg/mol〜10kg/molの分子量および(ii)エチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する質量比60:40〜90:10を有する、請求項23記載の組成物。
【請求項30】
ブロックコポリマーが、(i)10kg/mol〜15kg/molの分子量および(ii)エチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する質量比60:40〜90:10を有する、請求項23記載の組成物。
【請求項31】
非ランダムポリ(アルキレンオキシド)がホモポリマーである、請求項1〜19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
ホモポリマーが1kg/mol〜20kg/molの分子量を有する、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
ホモポリマーが1kg/mol〜10kg/molの分子量を有する、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
ホモポリマーがポリ(エチレンオキシド)である、請求項31〜33のいずれか一項記載の組成物。
【請求項35】
(i)少なくとも1つの生物活性剤、医療装置/外科的装置、または他の治療製品、および(ii)請求項1〜34のいずれか一項記載の組成物を含む、医薬または外科処置において使用するための組成物。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか一項記載の組成物の使用または製造方法。
【請求項37】
(a)請求項1〜35のいずれか一項記載の組成物を提供する段階、および
(b)組成物を被験者に投与する段階
を含む、被験者を医学的または外科的に治療するための方法。
【請求項38】
組成物が、少なくとも経口により、非経口により、または局所的に被験者に投与される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
組成物が、被験者の粘膜に坐薬として投与される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
組成物が外科処置中に、被験者の体腔または組織内に挿入されることにより投与される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
組成物が接着剤、凝集剤、充填剤、潤滑剤、界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせとして、被験者の医学的または外科的治療のために使用される、請求項37〜40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
(a)少なくとも1つの生物活性剤、医療装置/外科的装置、または他の治療製品を、(b)請求項1〜34のいずれか一項記載の組成物と組み合わせる段階を含む、製品の製造方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法により製造される製品。
【請求項44】
医学的または外科的用途における請求項43記載の製品の使用。
【請求項45】
(i)粒子を、(ii)請求項1〜34のいずれか一項記載の組成物中に懸濁させたものを含む、医薬または外科処置のために有益な製品。
【請求項46】
粒子が10%体積〜64%体積である、請求項45記載の製品。
【請求項47】
粒子サイズが35ミクロン〜500ミクロンである、請求項45または46記載の製品。
【請求項48】
粒子が、骨細片または骨粉、脱塩骨、ヒドロキシアパタイト、ポリエチレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項45〜47のいずれか一項記載の製品。
【請求項49】
(a)粒子を、(i)エチレンオキシドおよび、1つまたは複数の他のアルキレンオキシドを含む少なくとも1つのランダムコポリマー、ならびに(ii)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を含む少なくとも1つの非ランダムポリマーを含む、(b)担体中に懸濁させる段階を含む、医薬または外科処置のために有益な製品の製造方法。
【請求項50】
請求項49記載の方法により製造された製品。
【請求項51】
医学的または外科的用途における請求項50記載の製品の使用。
【請求項52】
(a)エチレンオキシドおよび、1つまたは複数の他のアルキレンオキシドを含む少なくとも1つのランダムコポリマーならびに(b)1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)を含む少なくとも1つの非ランダムポリマーを配合する段階を含む、ポリマー合金組成物の製造方法。
【請求項53】
請求項52記載の方法により製造された組成物。
【請求項54】
「失ろう」(lost wax)鋳造法における、請求項1〜34および53のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項55】
請求項1〜34および53のいずれか一項記載の組成物の、洗浄バー(cleansing bar)または水で落ちるクレヨンとしての使用。
【請求項56】
請求項1〜34および53のいずれか一項記載の組成物の、接着剤、凝集剤、充填剤、潤滑剤、界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせとしての使用。
【請求項57】
請求項1〜34および53のいずれか一項記載の組成物の、止血および/または組織増大のための使用。

【図2】
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【公表番号】特表2006−521425(P2006−521425A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503533(P2006−503533)
【出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/004174
【国際公開番号】WO2004/071452
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
TEFLON
VELCRO
マジックテープ
【出願人】(505305606)セレメド インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】