説明

ランダム共重合体を用いる疾患の治療方法

本発明は、ランダム共重合体の投与により疾患を処置または予防するための新しい方法およびキットに関する。本発明はまた、多発性硬化症等の自己免疫疾患の処置、および24時間よりも長い間隔で投与される製剤を含む処置養生法におけるランダム共重合体の投与、または24時間よりも長い期間にわたって共重合体を投与する徐放製剤にも関する。本発明はさらに、本明細書に記載されたランダム共重合体の製剤もしくは投薬養生法を含むか、またはこれに関するキットの製造、ライセンシングまたは流通を含む、医薬ビジネスを行うための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本願は、2004年5月7日に出願された米国仮出願第60/569292号および2005年3月18日に出願された米国仮出願第60/663333号に基づき優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
自己免疫疾患は、自己抗原に対する不適切な免疫応答から生じ、自己トレランス(self-tolerance)の正常な状態からの逸脱である。自己トレランスは、免疫系の早期展開(development)において起こる事象により、自己抗原に対して反応し得るT細胞およびB細胞の産生が防止されるときに生じる。加工された(processed)ペプチドをT細胞に結合および提示する能力を有することにより、免疫応答の調節において中心的な役割を担う細胞表面タンパク質は、主要組織適合性複合体(MHC)分子である(Rothbard, J. B.ら, 1991, Annu. Rev. Immunol. 9: 527)。自己免疫疾患には、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、ヒトI型すなわちインスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)およびセリアック病が挙げられる。
【0003】
自己免疫応答の阻害の1つの標的は、リンパ球表面タンパク質MHC分子の組、特に、MHCクラスII遺伝子によりコードされるタンパク質、例えば、HLA-DR、-DQおよび-DPである。MHC遺伝子は、それぞれ、哺乳動物集団の多数の改変体または対立遺伝子体において見出される。特定の自己免疫疾患、例えばMSおよびRAに罹患した被験体のゲノムは、当該疾患が関連する1つまたはそれ以上の特徴的なMHCクラスII対立遺伝子を有する可能性がより高い。
【0004】
多くの治療用剤が、自己免疫疾患を治療するために開発されてきたが、これらには、一般の抗炎症薬、例えば、COX-2阻害剤(すなわち、低分子量の炎症性化合物の形成を、シクロオキシゲナーゼを阻害することにより防止することができる薬剤);炎症のタンパク質メディエーターを阻害することにより機能し得る薬剤、例えば、炎症性タンパク質腫瘍壊死因子(TNF)を、抗TNF特異的モノクローナル抗体または抗体フラグメントで、あるいはTNF受容体の可溶体で封鎖することにより機能し得る薬剤;およびT細胞表面のタンパク質を標的とし、通常、CD4受容体または細胞付着受容体ICAM-1を阻害することにより、抗原提示細胞(APC)との相互作用を防止する薬剤が挙げられる。しかしながら、治療剤としての天然の折り畳みタンパク質を有する組成物は、製造、製剤、貯蔵および送達の問題に直面する可能性がある。これらの問題のいくつかにより、患者は入院での送達を余儀なくされる。
【0005】
比較的非特異的にいくつかのMHCクラスII分子と相互作用しかつ結合する薬剤は、共重合体1(Cop 1)であり、これは、マウスで誘発され得、MSのモデルである実験的なアレルギー性脳脊髄炎(EAE; Sela, M. ら, 1990, Bull. Inst. Pasteur (Paris))を抑制し得ることが示された合成アミノ酸ヘテロ重合体である。酢酸グラチラマーまたは1文字アミノ酸記号(以下参照;Yはチロシン、Eはグルタミン酸、AはアラニンおよびKはリシンを示す)を用いた「YEAK」としても知られるポリ(Y、E、A、K)である共重合体1は、MSの再発形態を治療するのに用いられてきたが、疾患を完全には抑制しない(Bornstein, M. B.ら, 1987, N. Engl. J. Med. 317: 408; Johnson, K.P. ら, 1995, Neurology 45:1268)。
【0006】
ランダム共重合体は、自己免疫疾患の治療に効果的であり得るが(Simpson, D. ら, 2003, BioDrugs 17 (3):207-10)、それらの繰り返しの投与は、不要な副作用を引き起こし得る。従って、副作用がより少なく、ランダム共重合体を用いる自己免疫疾患の改善された治療方法が必要とされている。
【0007】
(発明の簡単な概要)
本発明は、被験体、好ましくはヒトにおいて、疾患を治療または予防するための方法およびキットを提供する。本発明の1つの局面は、疾患を治療または予防する方法を提供し、該方法はランダム共重合体を用いて治療可能な疾患の改善のためのランダム共重合体の有効量を投薬養生法で被験体に投与することを含み、当該有効量は、24時間より長い、36時間より長い、より好ましくは48時間より長い時間間隔で、当該被験体に送達される。本発明の関連する局面は、当該治療を必要とする被験体の治療方法であって、ランダム共重合体を用いて治療可能な疾患の改善のためのランダム共重合体の有効量を投薬養生法で被験体に投与することを含み、有効量が、ランダム共重合体を、少なくとも2日、少なくとも4日または少なくとも6日の期間にわたって投与する徐放製剤を用いて当該被験体に送達され、ここで、当該有効量が、毎日送達された場合に効果的な量である、方法を提供する。いくつかの態様では、本発明の方法の疾患は、T細胞により、および特にTH1細胞またはTH1免疫姿勢(immune posture)を有する細胞により媒介されるか、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患である。いくつかの態様では、疾患は、多発性硬化症などの自己免疫疾患である。いくつかの好ましい態様では、ランダム共重合体は、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)およびリシン(K)(YFAK共重合体)を含む。他の態様では、ランダム共重合体は、共重合体1(YEAK)である。本発明は、特定のランダム共重合体または投与様式に限定されない。
【0008】
本発明はまた、疾患の治療用のキットを提供する。本発明の1つの局面は、自己免疫疾患の治療用のキットであって、(i)ランダム共重合体を含む組成物および(ii)当該組成物を、少なくとも24時間の時間間隔で、あるいはより好ましくは36時間または48時間またはそれより長い時間間隔で被験体に投与するための指示書を含む、キットを提供する。好ましい態様では、組成物は、皮下注射用に処方され、ランダム共重合体は、YFAKまたは共重合体1であり、かつ、疾患は、多発性硬化症、特に再発寛解(relapsing-remitting)型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。
【0009】
本発明は、さらに、疾患を治療するための医薬の製造のための薬剤を提供する。ランダム共重合体を被験体に投与することによる疾患の治療または予防のための本明細書中に開示されたいかなる方法も、当該疾患を治療するための医薬の製造におけるランダム共重合体の使用に適用され得る。従って、本発明の1つの局面は、被験体における疾患の治療のためのランダム共重合体の使用であって、当該ランダム共重合体が、24時間、36時間より長い間隔で、およびより好ましくは少なくとも48時間の間隔で被験体に投与されるように処方される、使用を提供する。好ましい態様では、ランダム共重合体は共重合体1(YEAK)であり、かつ、疾患は、多発性硬化症、特に再発寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。
【0010】
本発明は、さらに、医薬ビジネスを行う方法を提供する。
【0011】
(発明の詳細な説明)
I. 概略
本発明は、大まかには、ランダム共重合体の投与による疾患の治療および予防、疾患を治療するための医薬の製造のためのランダム共重合体の使用、およびランダム共重合体および指示書の両方を含むキットに関する。本発明はまた、 自己免疫疾患の治療、および当該疾患の治療のための長時間持続型ランダム共重合体製剤に関する。
【0012】
本発明の1つの局面は、被験体を治療する方法であって、ランダム共重合体を用いて治療可能な疾患の改善のためのランダム共重合体の有効量を投薬養生法で当該被験体に投与することを含み、当該有効量が、36時間より長い時間間隔で当該被験体に送達される、方法を提供する。本発明の関連する局面は、被験体を治療する方法であって、ランダム共重合体を用いて治療可能な疾患の改善のための少なくとも1つのランダム共重合体の有効量を投薬養生法で当該被験体に投与することを含み、当該有効量の少なくとも1種の共重合体が、24時間より長い時間間隔で、および特に48時間より長い時間間隔で、当該被験体に送達される方法を提供する。1つの態様では、24時間より長い間隔で投与されるランダム共重合体の有効量は、毎日投与される場合に有効な量である。関連する態様では、24時間より長い間隔で投与される有効量は、毎日投与される場合に有効であろう量である。さらに別の関連する態様では、24時間より長い間隔で投与される有効量は、毎日投与される場合に有効であることが知られている量である。本発明の1つの態様では、有効量は、1O mg〜30 mgの間、または15 mg〜25 mgの間からなる。他の態様では、有効量は約20 mgである。別の態様では、有効量は20mg未満である。特定の態様では、有効量は「x」mgである(ここで、「x」は1〜20の間の任意の整数である)。
【0013】
本明細書中で提供される方法の1つの態様では、被験体は、ランダム共重合体を用いて治療可能な疾患に罹患している。1つの態様では、当該疾患は、T細胞により、および特にTH1細胞またはTH1免疫姿勢を有する細胞により媒介されるか、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患である。別の態様では、被験体は、少なくとも1つの自己免疫疾患に罹患している。1つの態様では、被験体は、以下:多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎(uveoretinitis)、糸球体腎炎、ギヤン-バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫および結腸炎からなる群から選択される少なくとも1つの疾患に罹患している。好ましい態様では、疾患は、多発性硬化症または再発寛解型多発性硬化症である。本明細書中で提供される方法のさらなる態様では、疾患は、宿主対移植片疾患(host-versus-graft disease)(HVGD)または移植片対宿主疾患(graft-versus-host disease)(GVHD)あるいは両方である。本明細書に記載の方法の好ましい態様では、被験体は哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0014】
本明細書に記載の方法の1つの態様では、投薬養生法は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、皮内投与または経口投与を含む。ランダム共重合体はまた、経皮パッチ(patch)またはポンプまたはインプラントのようなランダム共重合体を連続的に送達するように設計された装置により投与されてもよい。例えば、経皮パッチを、ランダム共重合体を12時間のスパンで、48時間またはそれ以上毎に投与するのに用いてもよいし、あるいは、ポンプを、共重合体を2日の期間にわたって、4日またはそれ以上毎に投与するのに用いてもよい。関連する局面では、共重合体は、徐放製剤で投与される。
【0015】
本発明はまた、投薬養生法を必要とする被験体を治療する方法であって、ランダム共重合体を用いて治療可能な疾患の改善のためのランダム共重合体の有効量を投薬養生法で当該被験体に投与することを含み、当該有効量は、徐放製剤を用いて被験体に送達され、当該製剤は、ランダム共重合体を、少なくとも2日、少なくとも4日または少なくとも6日の期間にわたって投与し、ここで、当該有効量は、1日用量で送達される場合に有効な量である、方法を提供する。好ましい態様では、徐放製剤は、共重合体を、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日の期間にわたって投与する。別の態様では、徐放製剤により1日に送達される全用量は、疾患の治療に有効であることが知られている1日用量の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満または5%未満である。特定の態様では、徐放製剤を、毎日投与される場合に疾患を治療するのに有効であることが知られているランダム共重合体の用量の25%またはそれ未満で1日当たり投与する。説明のための例としては、共重合体1(YEAK)が、再発寛解型多発性硬化症の治療に効果的であることが知られている場合、20 mgの毎日1回の皮下注射のように、20 mgの投薬量で毎日投与される場合に、本発明は、共重合体の毎日の投与が20 mg未満、特に約l0 mg未満、9 mg未満、8 mg未満、7 mg未満、6 mg未満、5 mg未満、4 mg未満、3 mg未満、2 mg未満または1 mg未満の共重合体1となるような共重合体1の徐放製剤を提供する。
【0016】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、当該方法は、さらに、さらなる治療上活性な薬剤、例えば、抗炎症剤を被験体に投与することを含む。好ましい態様では、当該薬剤は、疾患を治療するのに有用である。別の好ましい態様では、当該薬剤は、ランダム共重合体と相乗的に作用して疾患を治療する。
【0017】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、投薬養生法は、ランダム共重合体を、被験体に、各投与の間の時間間隔を空けて複数回投与することを含む。好ましい態様では、各投与の間の時間間隔は、少なくとも36時間、48時間、72時間、96時間、120時間または144時間である。別の好ましい態様では、各投与の間の時間間隔は、36時間〜14日の間、または少なくとも7日である。関連する態様では、投与の間の少なくとも1つの時間間隔は、少なくとも36時間、48時間、72時間、96時間、120時間または144時間、少なくとも7日、あるいは36時間〜14日の間である。別の関連態様では、投与間の少なくとも10%、20%、30%、40%またはより好ましくは50%の時間間隔は、少なくとも36時間、48時間、72時間、96時間、120時間または144時間、少なくとも7日、または36時間と14日との間である。さらに別の関連態様では、投与間の平均時間間隔は、少なくとも36時間、48時間、72時間、96時間、120時間または144時間、少なくとも7日、または36時間〜14日の間である。
【0018】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、ランダム共重合体の有効量は、投与1回当たり0.02 mg〜投与1回当たり2000 mgの間であるか、またはより好ましくは、投与1回当たり2 mg〜投与1回当たり200 mgの間である。
【0019】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、ランダム共重合体は、共重合体1(YEAK)、YFAK、VYAK、VWAK、VEAKおよびFEAKからなる群から選択される。好ましい態様では、ランダム共重合体は共重合体1である。別の好ましい態様では、ランダム共重合体はYFAKである。別の態様では、ランダム共重合体は、YAK、YEK、KEAおよびYEAからなる群から選択されるような三元重合体である。さらに別の態様では、ランダム共重合体は、1個〜10個の間のアンカー(anchor)残基を有する。
【0020】
本発明はまた、疾患の治療のためのキットを提供する。本発明の1つの局面は、自己免疫疾患の治療のためのキットであって、(i)ランダム共重合体を含む組成物および(ii)当該組成物を、少なくとも36時間の時間間隔で被験体に投与するための指示書を含む、キットを提供する。好ましい態様では、キット中のランダム共重合体は、共重合体1である。別の好ましい態様では、キット中のランダム共重合体はYFAKである。いくつかの態様では、キット中のランダム共重合体は、約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間毎の投与用に製剤化される。いくつかの態様では、キットの指示書は、ランダム重合体を、少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間の時間間隔で被験体に投与すべきであると指示する。
【0021】
本発明により提供されるキットのいくつかの態様では、組成物は、徐放製剤として製剤化される。特定の態様では、徐放製剤は、全用量が毎日投与される場合に疾患を治療するのに有効であろう全用量を送達する。他の態様では、全用量は、約20mg、20mg未満またはx mgであり、ここで、xは、1〜20の間の任意の整数である。
【0022】
本発明により提供されるキットの別の態様では、キットは、当該治療を必要とする被験体に、組成物を、少なくとも24、36、48、72、96、120または144時間あるいはより長い時間間隔で、投与1回当たり約20mgの用量で投与するための指示書を含むが、他の態様では、用量は20mg未満、例えばx mgなどであり、ここで、xは、1〜20の間の任意の整数である。関連する態様では、キットは、当該治療を必要とする被験体に、組成物を、毎日投与される場合に疾患を治療するのに有効である用量で少なくとも24時間の時間間隔で投与するための指示書を含む。別の関連する態様では、キットは、当該治療を必要とする被験体に、組成物を、毎日投与される場合に疾患を治療するのに有効である用量で少なくとも24時間の時間間隔で投与するための指示書を含む。
【0023】
いくつかの態様では、キットが向けられる疾患は、T細胞により、および特にTH1細胞により媒介されるか、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患である。別の態様では、当該疾患は、キットにより治療を提供される疾患は、以下:多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン-バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫および結腸炎からなる群から選択される自己免疫疾患である。特定の態様では、疾患は、多発性硬化症、糖尿病または関節炎である。好ましい態様では、疾患は、再発-寛解性多発性硬化症である。キットはまた、包装、および皮下注射器、針のような共重合体の投与手段、スプーンまたは目盛り付き容器のような測定器具、吸入器またはポンプを含み得る。キットの指示書はまた、家庭での使用のための指示書を含み得る。
【0024】
本発明は、さらに、疾患を治療するための医薬を製造するための薬剤を提供する。ランダム共重合体を被験体に投与することによる疾患の治療または予防のための本明細書中に開示されたいかなる方法も、当該疾患を治療するための医薬の製造におけるランダム共重合体の使用に適用することができる。従って、本発明の1つの局面は、被験体における疾患の治療のためのランダム共重合体の使用であって、当該ランダム共重合体が、24時間より長い間隔で、およびより好ましくは少なくとも48時間の間隔で被験体に投与されるように製剤化される、使用を提供する。好ましい態様では、ランダム共重合体は共重合体1であり、かつ、疾患は、多発性硬化症、すなわちより詳しくは再発寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。他の好ましい態様では、ランダム共重合体はYFAKである。
【0025】
本発明の他の局面は、ビジネスを行うための特定の方法を提供する。特に、本発明は、医薬ビジネスを行うための方法であって、キットおよび製剤を、ヘルスケア供給元に販売するか、または当該キットを必要とする被験体に直接的に販売する方法を提供する。1つの局面では、医薬ビジネスを行うための方法であって、ヘルスケア供給元に販売するか、または当該キットを必要とする被験体に販売することを含む方法が提供されるが、これらのキットのいずれかを用いることによる疾患または障害の治療における有益性は、本明細書中に記載される。関連する局面では、医薬ビジネスを行うための方法であって:(a)本明細書中に記載の任意のキットを製造すること;および(b)ヘルスケア供給元に販売するか、またはキット、当該キットを用いることによる疾患または障害の治療における有益性を必要とする被験体に販売することを含む方法が提供される。いくつかの態様では、当該製剤を開発および販売する権利または当該製造工程を実施する権利は、対価のために第三者にライセンス付与され得る。いくつかの態様では、疾患は、再発寛解型多発性硬化症などの多発性硬化症である。別の態様では、キットは、共重合体1またはYFAKを含む。
【0026】
別の態様では、ヘルスケア供給元または患者への販売は、ランダム共重合体を、5〜7日毎に、50mg、あるいはより好ましくは20mgまたはそれ未満で投与することの指示を含む。他の態様では、販売は、ランダム共重合体を、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日毎に投与することの指示を含む。別の態様では、ヘルスケア供給元または患者への販売は、ランダム共重合体を、5〜7日毎に、50 mg、あるいはより好ましくは20 mgまたはそれ未満で投与することの指示を含む。さらに別の態様では、販売は、本明細書中に記載されたキットまたは製剤を用いることにより、現存する同じまたは異なるランダム共重合体の製剤に比べて副作用が低減されることを表示することを含む。特定の態様では、現存する製剤は、患者により頻繁に投与されるかまたは投与の間のより短い間隔で投与されるが、別の態様では、現存する製剤は、販売されているキットの平均1日用量よりも多い平均1日用量をもたらす。より多い平均1日用量は、例えば、キットによって提供される用量の20、50、100、200または500%も多くあり得る。
【0027】
II. 定義
簡便のため、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語をここに集める。他に規定しない限り、本明細書中で用いる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【0028】
本明細書中で用いられる冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)の、冠詞の文法的目的語を意味する。例えば、「1つの要素(an element)」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0029】
用語「含む(including)」は、本明細書中で、句「含むが、これに限定されない(including but not limited)」を意味し、かつ、当該句と交換可能に用いられる。
【0030】
用語「または(or)」は、文脈が他に明確に示していない限り、本明細書中で、用語「および/または(and/or)」を意味し、かつ、これと交換可能に用いられる。
【0031】
用語「など(such as)」は、本明細書中で、句「などであるが、これに限定されない(such as but not limited to)」を意味し、かつ、これと交換可能に用いられる。
【0032】
本発明の方法により治療される「患者」または「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれか、好ましくは哺乳動物を意味し得る。
【0033】
用語「自己免疫症状」または「自己免疫疾患」は、自己抗原として知られている自らコードされる実在物に対する不適切な免疫応答により引き起こされる疾患状態を意味する。本明細書中で提供される共重合体化合物は、障害の1つの分類である以下:橋本甲状腺炎;重篤な甲状腺機能低下である、特発性粘液水腫;脳または脊髄中での斑点(patches)または硬化した組織により特徴付けられる脱髄疾患である、多発性硬化症;神経筋接合部でのアセチルコリン受容体での自己免疫攻撃により引き起こされる筋肉の進行性衰弱を有する疾患である、重症筋無力症;多発性神経炎である、ギヤン-バレー症候群;全身性エリテマトーデス;ブドウ膜炎;自己免疫卵巣炎;慢性免疫血小板減少性紫斑病;結腸炎;糖尿病;甲状腺機能低下の一形態であるグレーヴズ病;乾癬;尋常性天疱瘡;および慢性関節リウマチ(RA)に挙げられる自己免疫疾患の症候を治療するのに用いることができる。
【0034】
用語「脱髄症状」は、神経細胞の細長い部分の周囲を包む原形質膜(plasma membrane)からなる髄鞘の一部が、分解により除去される疾患状態を含む。脱髄症状は、ワクチン接種後、抗TNF治療後、ウイルス感染後およびMSにおいて発症する可能性がある。
【0035】
アミノ酸の「誘導体」の用語は、さらなる置換基、例えば、アミノ酸の原子に結合したN-カルボキシ無水物基、γ-ベンジル基、ε-N-トリフルオロアセチル基またはハロゲン化物基を有する、当該アミノ酸の化学的に関連する形態を意味する。
【0036】
用語「アナログ」は、異なるコンフィギュレーションを有するアミノ酸の化学的に関連する形態、例えば、異性体、またはL-コンフィギュレーションではなくD-コンフィギュレーション、またはアミノ酸とほぼ同じサイズ、電荷および形状を有する有機分子、またはペプチド結合に関与する原子に対する修飾を有するアミノ酸を意味し、その結果、アナログ残基を有する共重合体は、アナログを有しない共重合体と比較して、当該アナログが共重合体の内部または末端のいずれにあっても、そのようなアナログを有しない他の同様の共重合体よりもプロテアーゼに耐性である。
【0037】
句「アミノ酸」および「アミノ酸共重合体」は、本明細書中で規定されたアミノ酸誘導体および/またはアミノ酸アナログの1つ以上の成分を含むことができ、当該誘導体またはアナログは、その組成により示される20個の天然に存在するアミノ酸のうちの任意の1つまたはそれ以上についての残基を一部または完全に含む。例えば、1つ以上のチロシン残基を有するアミノ酸共重合体組成物では、1つ以上のこれらの残基の一部をホモチロシンと置換することができる。さらに、2つの隣接する残基の間に1つ以上の非ペプチドまたはペプチド模倣(peptidomimetic)結合を有するアミノ酸共重合体がこの定義に含まれる。
【0038】
用語「疎水性」アミノ酸は、脂肪族アミノ酸であるアラニン(Aまたはala)、グリシン(Gまたはgly)、イソロイシン(Iまたはile)、ロイシン(Lまたはleu)、メチオニン(Mまたはmet)、プロリン(Pまたはpro)およびバリン(Vまたはval)(括弧内の用語は、各アミノ酸についての1文字および3文字標準略号である)、ならびに芳香族アミノ酸であるトリプトファン(Wまたはtrp)、フェニルアラニン(Fまたはphe)およびチロシン(Yまたはtyr)を意味する。これらのアミノ酸は、共重合体または他のポリペプチド中で残基として見出された場合に、脂肪族側鎖の長さおよび芳香族側鎖のサイズの関数として疎水性を付与する。
【0039】
用語「荷電した」アミノ酸は、アミノ酸であるアスパラギン酸(Dまたはasp)、グルタミン酸(Eまたはglu)、アルギニン(Rまたはarg)およびリシン(Kまたはlys)を意味し、これらは、これらのアミノ酸の1つ以上の残基を含む共重合体または他のアミノ酸組成物の水溶液において生理学的pH値で正の(lys、およびarg)または負の(asp、glu)電荷を付与する。ヒスチジン(Hまたはhis)は、pH 7で疎水性であり、かつ、pH6で荷電する。
【0040】
用語「障害」および「疾患」は、身体の部分、器官またはシステム(あるいはそれらの任意の組み合わせ)の正常な構造または機能からの任意の逸脱に対して包括的に用いられ、かつ、それらを意味する。特定の疾患は、生物学的、化学的および身体的変化を含む特徴的な症候および徴候により明らかにされ、かつ、しばしば、以下:人口統計学的要素、環境的要素、労働要素、遺伝的要素および医学的履歴の要素を含む種々の他の要素と関連付けられるが、これらに限定されない。特定の特徴的な徴候、症候および関連する要素を種々の方法で定量して、重要な診断上の情報を得ることができる。
【0041】
用語「予防的」または「治療的」治療は、1つ以上の主題組成物を被験体に投与することを意味する。組成物が、望まれない症状(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床的発現の前に投与される場合、当該治療は予防的である、すなわち、宿主を望ましくない状態の発症から保護するのに寄与するが、一方、望ましくない症状の発症後に投与される場合、当該治療は治療的である(すなわち、これは、望ましくない症状またはそれからの副作用の消失、改善または進行の防止を意図する)。
【0042】
用語「治療効果」は、薬学的に活性な物質により引き起こされる、動物、特に哺乳動物、およびより詳細にはヒトにおける局所的または全身的効果を意味する。したがって、当該用語は、動物またはヒトの診断、治療、改善、疾患の治療または予防における使用、あるいは望ましい身体的または精神的発達および状態の増大における使用が意図される任意の物質を意味する。句「治療的有効量」は、いかなる治療にも適用可能な合理的な有益性/リスク比で所望の局所的または全身的効果を幾分か生じる物質の量を意味する。特定の態様では、化合物の治療的有効量は、その治療指数、溶解性などに依存する。例えば、本発明の方法で発見された特定の化合物は、当該治療に適用可能な合理的な有益性/リスク比を生じるのに十分な量で投与され得る。
【0043】
用語「有効量」は、適切な用量および養生法で被験体に投与されたときに所望の結果を生じる治療用試薬の量を意味する。
【0044】
用語「障害の治療を必要とする被験体」は、該障害と診断された被験体、おそらく該障害を発症するであろう被験体、または当該障害を有する疑いがある被験体である。
【0045】
本明細書中で用いられる用語「抗体」は、全ての抗体、例えば、任意のアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgEなど)を含むことを意図し、かつ、脊椎動物、例えば、哺乳動物のタンパク質とも特異的に反応するそれらのフラグメントを含む。抗体は、通常の技術を用いてフラグメント化され得、フラグメントは有用性および/または目的とする特定のエピトープとの相互作用についてスクリーニングされ得る。従って、当該用語は、特定のタンパク質と選択的に反応し得る抗体分子のタンパク質分解により切断されたまたは組み換えで調製された部分のセグメントを含む。このようなタンパク質分解によるおよび/または組み換えのフラグメントの非限定的な例には、Fab、F(ab')2、Fab'、Fvおよびペプチドリンカーにより結合したV[L]および/またはV[H]ドメインを含む単鎖抗体(scFv)が挙げられる。諸scFvは、共有結合または非共有結合して、2つ以上の結合部位を有する抗体を形成し得る。抗体との用語はまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または抗体および組み換え抗体の他の精製調製物を含む。
【0046】
用語「中枢性トレランス(central tolerance)」は、胸腺中での事象により制御される抗原に対するトレランス、すなわち、胸腺中の抗原に対して反応性のT細胞のクローン欠失を意味する。抗原に対する高親和性受容体により部分的に活性化されたT細胞は、ネガティブな(negative)選択、ならびに共発現および、細胞表面上でのFasLからFasへの結合により引き起こされるFas媒介アポトーシスによる胸腺におけるクローン欠失を受ける。対照的に、用語「末梢性トレランス(peripheral tolerance)」は、活性化により誘発される細胞死(activation-induced cell death)(AICD)によるT細胞の欠失および脾臓におけるクローン欠失なしでのT細胞の機能停止(クローンの活動消失)を意味する。また、ヘルパーT細胞の協力がない場合、B細胞はおそらく、T細胞依存性抗原に応答するのに「役に立たない」であろう。中枢性および末梢性トレランスの調節は、p56lckおよびZAP-70のリン酸化により制御される。これらのタンパク質の主要な残基のリン酸化の状態および程度は、末梢および中枢性トレランスに影響を与えるシグナル分子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションをもたらす。T細胞受容体シグナル伝達の阻害はまた、トレランスを誘発するのに役割を担う。
【0047】
本明細書中で用いられる他の技術用語は、種々の技術辞書で例示される、それらが用いられる技術分野での通常の意味を有する。
【0048】
III. ランダム共重合体
本発明のランダム共重合体の組成物は、交差反応性T細胞エピトープの多様性を寄せ集めた特徴を含む。本発明のランダム共重合体の組成物は、さらに、改変されたペプチドリガンドの特徴を含み得る。本発明のランダム共重合体の組成物の多数の機能的な重要性が存在する:1つは、数千の、好ましくは数十万の、より好ましくは数百万のT細胞エピトープと、MHC分子、好ましくはMHCクラスII分子の提示により機能的に相互作用する可能性であり、他のものは、サイトカインなどの可溶性メディエーターを分泌し得る、ランダム共重合体に特異的なT細胞の産生である。
【0049】
本発明のランダム共重合体は、選択されたアミノ酸のサブグループが特定のT細胞エピトープと優先的に相互作用するような特定のアミノ酸配列特性を与えられ得、該T細胞エピトープのいくつかは、病原性障害と直接的に関連し得る。好ましくは、本発明のランダム共重合体は、選択されたアミノ酸のサブグループが特定のT細胞エピトープと優先的に相互作用する2〜8のアミノ酸を含むような特定のアミノ酸配列特性を与えられ得、該T細胞エピトープのいくつかは、サイトカインなどの可溶性メディエーターの異常な産生により悪化する病原性障害と直接的に関連し得る。
【0050】
好ましくは、本発明のランダム共重合体は、選択したアミノ酸、および該アミノ酸の互いに対する比によって特定のT細胞エピトープと優先的に相互作用する2〜8のアミノ酸を選択されたアミノ酸のサブグループが含むような特定のアミノ酸配列特性を与えられ得、該T細胞エピトープのいくつかは、サイトカインなどの可溶性メディエーターの異常な産生により悪化する病原性障害と直接的に関連し得、当該病原性障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特定のMHCクラスII対立遺伝子と関連する。
【0051】
より好ましくは、本発明のランダム共重合体は、好ましくは、特定のT細胞エピトープと優先的に相互作用するペプチド結合を介してランダムに結合された2〜8のアミノ酸の重合体を含み、該T細胞エピトープのいくつかは、サイトカインなどの可溶性メディエーターの異常な産生により悪化する病原性障害と直接的に関連し得、当該病原性障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特定のMHCクラスII対立遺伝子と関連する。
【0052】
より好ましくは、本発明のランダム共重合体は、好ましくは特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用するペプチド結合を介してランダムに結合された3〜5のアミノ酸の重合体を含み、該T細胞エピトープのいくつかは、サイトカインなどの可溶性メディエーターの異常な産生により悪化する病原性障害と直接的に関連し得、当該自己免疫障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特定のMHCクラスII対立遺伝子と関連する。
【0053】
本発明のランダム共重合体は、適切な量の正の電荷のアミノ酸、例えば、リシンまたはアルギニンなどを、(好ましくはより少ない量の)負の電荷のアミノ酸、例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸などと組み合わせて、任意に、フィラーの働きをする電気的に中性のアミノ酸、例えば、アラニンまたはグリシンなどと組み合わせて、および任意に、共重合体に免疫原性を付与するために適合されたアミノ酸、例えば、チロシンまたはトリプトファンのような芳香族アミノ酸などと組み合わせて、含み得る。そのような組成物には、WO00/005250に開示された任意のものが挙げられ得、その内容の全体がこれにより参照によって本明細書中に援用される。
【0054】
4個のアミノ酸を含む共重合体
本発明の1つの態様では、ランダム共重合体は、それぞれ以下:(a)リシンおよびアルギニン;(b)グルタミン酸およびアスパラギン酸;(c)アラニンおよびグリシン;(d)チロシンおよびトリプトファンの群の異なる1つからの4つの異なるアミノ酸を含む。
【0055】
本発明のこの態様に従った特定の共重合体は、アラニン、グルタミン酸、リシンおよびチロシンの組み合わせを含み、かつ、正味の全体的な正の電荷を有する。1つの好ましい例は、共重合体1(Cop1)または酢酸グラチラマーともいう、平均分子量が約4,700〜約13,000ダルトンのYEAKである。好ましい共重合体は、約2,000〜約40,000ダルトンの分子量、または約2,000〜約13,000ダルトンの分子量を有する。好ましい分子量範囲および好ましい形態の共重合体1を製造する方法は、米国特許第5,800,808号に記載されており、その内容の全体が本明細書により完全に援用される。従って、共重合体は、約15〜約100アミノ酸長の、好ましくは約40〜約80アミノ酸長のポリペプチドであり得る。好ましい態様では、共重合体1の長さは35〜75アミノ酸残基の間である。より好ましくは、共重合体1の長さは35〜65アミノ酸残基の間である。好ましい態様では、共重合体1の長さは約50アミノ酸である。別の好ましい態様では、共重合体1の長さは約52個のアミノ酸である。好ましい態様では、以下により詳細に記載するように、共重合体1は、固相化学合成により合成され、Y:E:A:Kがそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の比である平均モルアウトプット比を有する。アウトプット比の変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲内である。
【0056】
約52個のアミノ酸残基の共重合体1の好ましい態様では、31-52位のアミノ酸におけるアラニン組成比は、11-30位のアミノ酸よりも大きく、かつ、11-30位のアミノ酸におけるアラニン組成比は、1-10位のアミノ酸よりも大きい。より詳細には、本発明の好ましい態様は、固相化学合成により合成した、平均モルアウトプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0である組成YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸塩(glutamate)、L-アラニンおよびL-リシン)のランダム共重合体であり、当該共重合体は52個のアミノ酸長を有し、かつ、共重合体配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、かつ残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する。
【0057】
本発明の目的のため、「Cop1あるいはCop1-関連ペプチドまたはポリペプチド」は、任意のペプチドまたはポリペプチドを含むことを意図し、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)と機能的に交差反応し、かつ抗原提示においてMHCクラスII上で(on)MBPと競合し得るランダム共重合体が挙げられる。共重合体1は、いくつかの国で、商品名COPAXONETMとして多発性硬化症(MS)の治療用に承認されている。COPAXONETMは、Teva Pharmaceuticals Ltd., Petah Tikva、イスラエルの商標である。共重合体1は、高親和性で、かつペプチド特異的様式で、精製したMS関連HLA-DR2(DRB1*1501)および慢性関節リウマチ(RA)関連HLA-DR1(DRBI*0101)またはHLA-DR4(DRB1*0401)分子に結合する。共重合体1はランダムポリペプチドの混合物であるので、異なるHLAタンパク質に結合する異なる配列を含み得る;この場合、全混合物のうちの一部のみが「活性成分」であろう。あるいは、全混合物が有能であり得る、すなわち、全てのポリペプチドが任意のHLA-DR分子に結合する。
【0058】
より好ましくは、本発明のランダム共重合体は、炎症性サイトカインの異常な産生により悪化する自己免疫障害と関連する特定のT細胞エピトープと優先的に相互作用するペプチド結合を介して、ランダムに結合されたアミノ酸の重合体共重合体1またはYFAKを含み、当該自己免疫障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特定のMHCクラスII対立遺伝子と関連する。
【0059】
より好ましくは、本発明のランダム共重合体は、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、糖尿病、セリアック病、慢性関節リウマチ、ステロイド感受性ネフローゼ症候群、メサンギウム(mesengial)IgAネフロパシー、ナルコレプシー、神経学的多発性硬化症、再発性多発性軟骨炎、皮膚科学的障害、例えば、ヘルペス性(herpetiformis)皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ベーチェット病、天疱瘡、乾癬、原発性シェーグレン症候群、全身性血管炎、エリテマトーデス、消化器障害、例えば、クローン病、呼吸器障害、例えば、ゾンマー(Sommer)型過敏性肺炎、および自己免疫性甲状腺疾患(AITD)と関連する特定のT細胞エピトープと優先的に相互作用するペプチド結合を介してランダムに結合されたアミノ酸の重合体共重合体1またはYFAKを含む。
【0060】
本発明の別の局面では、ランダム共重合体は、YFAK、VYAK、VWAK、VEAKおよびFEAKを含む。好ましい態様では、ランダム共重合体は、それぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモルアウトプット比(式中、XAは11.0より大きく30.0未満である)のアミノ酸残基YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)からなり、アウトプット比の変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲内である。別の好ましい態様では、ランダム共重合体は、それぞれ約1.0:1.0:XA:6.0のモルアウトプット比(式中、XAは5.0より大きく15.0未満である)のアミノ酸残基YFAKからなり、アウトプット比の変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲内である。好ましい態様のランダム共重合体のYFAKのモルアウトプット比を、以下の表Iに示す:
【0061】

【0062】
好ましい態様では、任意のこのような共重合体の長さは、35〜75アミノ酸残基の間である。より好ましくは、ランダム共重合体の長さは、35〜65アミノ酸残基の間である。好ましい態様では、ランダム共重合体の長さは、約50アミノ酸である。別の好ましい態様では、ランダム共重合体の長さは、約52個のアミノ酸である。
【0063】
本発明の好ましい態様は、以下により詳細に説明する、固相化学合成により合成された、平均モルアウトプット比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAKのランダム共重合体である。
【0064】
好ましい態様では、YFAKの平均モルアウトプット比は約1.0:1.2:XA:6.0であり(ここで、XAは18より大きい)、アラニンの比は、共重合体の長さと共に増加する。好ましい態様では、このようなランダム共重合体の長さは約52個のアミノ酸残基であり、31-52位のアミノ酸中のアラニン組成の比は、11-30位のアミノ酸より大きく、かつ、11-30位のアミノ酸中のアラニン組成の比は、1-10位のアミノ酸より大きい。より詳細には、本発明の好ましい態様は、固相化学合成により合成された、平均モルアウトプット比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)のランダム共重合体であって、当該共重合体は、52個のアミノ酸の長さを有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6のモルアウトプット比を有する。
【0065】
3個のアミノ酸を含む共重合体
別の態様では、ランダム共重合体は、それぞれ上記の群(a)〜(d)の3つの群の異なる1つからの3つの異なるアミノ酸を含む。これらの共重合体を、本明細書中で、「三元重合体」という。平均分子量は、2,000〜約40,000ダルトンの間であり、好ましくは約3,000〜約35,000ダルトンの間である。より好ましい態様では、平均分子量は、約5,000〜約25,000ダルトンである。
【0066】
1つの態様では、本発明で用いるための三元重合体は、チロシン、アラニンおよびリシンを含み、本明細書中の以下でYAKと命名する。これらの三元重合体におけるアミノ酸の平均モル分率は、変動し得る。例えば、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得る;アラニンは、約0.3〜約0.6のモル分率で存在し得る;そして、リシンは、約0.1〜約0.5のモル分率で存在し得る。アルギニンをリシンで、グリシンをアラニンで、および/またはトリプトファンをチロシンで置換することが可能である。より好ましいチロシン、アラニンおよびリシンの三元重合体、すなわちYAKの単量体のモル比は、約0.10:約0.54:約0.35である。YAK共重合体の例は、Fridkis-Hareli M., Hum Immunol. 2000; 61 (7): 640-50に記載されている。
【0067】
別の態様では、本発明で用いるための三元重合体は、チロシン、グルタミン酸およびリシンを含み、本明細書中の以下でYEKと命名する。これらの三元重合体におけるアミノ酸の平均モル分率は変動し得る。グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得る;チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得る;そして、リシンは、約0.3〜約0.7のモル分率で存在し得る。アスパラギン酸をグルタミン酸で、アルギニンをリシンで、および/またはトリプトファンをチロシンで置換することが可能である。より好ましいグルタミン酸、チロシンおよびリシンの三元重合体、すなわちYEKの単量体のモル比は、約0.26:約0.16:約0.58である。
【0068】
別の態様では、本発明で用いるための三元重合体は、リシン、グルタミン酸およびアラニンを含み、本明細書では以下KEAと命名する。これらのポリペプチドにおけるアミノ酸の平均モル分率もまた、変動し得る。例えば、グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、アラニンは、約0.005〜約0.600のモル分率で存在し得、およびリシンは、約0.2〜約0.7のモル分率で存在し得る。アスパラギン酸をグルタミン酸で、グリシンをアラニンで、および/またはアルギニンをリシンで置換することが可能である。より好ましいグルタミン酸、アラニンおよびリシンの三元重合体、すなわちKEAの単量体のモル比は、約0.15:約0.48:約0.36である。
【0069】
別の態様では、本発明で用いるための三元重合体は、チロシン、グルタミン酸およびアラニンを含み、本明細書では以下YEAと命名する。これらのポリペプチドにおけるアミノ酸の平均モル分率は変動し得る。例えば、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得、グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、およびアラニンは、約0.005〜約0.800のモル分率で存在し得る。トリプトファンをチロシンで、アスパラギン酸をグルタミン酸で、および/またはグリシンをアラニンで置換することが可能である。より好ましいグルタミン酸、アラニンおよびチロシンの三元重合体、すなわちYEAの単量体のモル比は、約0.21:約0.65:約0.14である。
【0070】
より好ましい態様では、三元重合体のアミノ酸のモル分率は、共重合体1について好ましいモル分率とほぼ同じである。共重合体1のアミノ酸のモル分率は、グルタミン酸が約0.14、アラニンが約0.43、チロシンが約0.10およびリシンが約0.34である。共重合体1についての最も好ましい平均分子量は、約5,000〜約9,000ダルトンの間である。本明細書中に開示された用途についての共重合体1の活性は、1つ以上の以下の置換:アスパラギン酸(D)のグルタミン酸(E)での置換、グリシン(G)のアラニン(A)での置換、アルギニン(R)のリシン(K)での置換、およびトリプトファン(W)のチロシン(Y)での置換、がなされる場合に残存すると予想される。
【0071】
MHCクラスIIタンパク質に結合する共重合体
1つの態様では、本明細書に記載の方法において用いられる共重合体は、好ましくは自己免疫疾患に関連するMHCクラスIIタンパク質に結合することが可能である。少なくとも3つのタイプのクラスII MHC分子:HLA-DR、HLA-DQおよびHLA-DP分子が存在する。これらのHLA分子のそれぞれのタイプをコードする多数の対立遺伝子もまた存在する。クラスII MHC分子は、Bリンパ球、およびマクロファージ等の抗原提示細胞の表面上で主に発現する。共重合体が1つ以上のMHCクラスIIタンパク質に結合するかどうかを確認するため、任意の利用可能な方法を用いることができる。例えば、ポリペプチドは、MHCクラスIIタンパク質の粗製または純粋な調製物と混合したレポーター分子(例えば、放射性ヌクレオチドまたはビオチン)で標識し得、結合は、未結合のポリペプチドを除去した後にレポーター分子がMHCクラスIIタンパク質に結合(adhere)する場合に検出される。
【0072】
別の態様では、本明細書に記載の方法において用いられる共重合体は、多発性硬化症に関連するMHCクラスIIタンパク質に結合することが可能である。本態様のポリペプチドは、多発性硬化症に関連するMHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝に対し、共重合体1が有する親和性と同等かまたはより大きい親和性を有し得る。従って、意図されるポリペプチドは、MHCクラスIIタンパク質からのミエリン自己抗原の結合を阻害し得るか、または結合を置換し得る。多発性硬化症に関連するMHCクラスIIタンパク質の1つは、HLA-DR4(DRB1*1501)である。
【0073】
別の態様では、本明細書に記載の方法において用いられるランダム共重合体は、関節炎状態、例えば慢性関節リウマチまたは骨関節炎と関連するMHCクラスIIタンパク質に結合し得る。本態様のランダム共重合体は、自己免疫疾患に関連するMHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝に対し、II型コラーゲン261-273ペプチドが有する親和性よりも大きい親和性を有し得る。従って、本明細書中に記載されるYFAK等の意図される共重合体1またはランダム共重合体は、MHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝からのII型コラーゲン261-273ペプチドの結合を阻害し得るか、または置換し得る。クラスII MHCタンパク質は、ほぼ等しいサイズのαおよびβサブユニットからなり、その両方とも膜内外タンパク質である。ペプチド結合間隙(cleft)は、αおよびβサブユニットの両方のアミノ末端の部分により形成される。このペプチド結合間隙は、T細胞に対する抗原の提示部位である。
【0074】
他の態様では、本発明において用いられるランダム共重合体は、HLA-DR分子のペプチド結合溝に結合し得る。MS-関連HLA-DR分子に対するCop 1の結合モチーフは公知であるので(Fridkis-Hareli ら, 1999, J. Immunol.; 162 (8):4697-704)、固定された配列のポリペプチドが容易に調製でき、かつFridkis-Hareliに記載のようにHLA-DR分子のペプチド結合溝への結合を試験することができる。かかるペプチドの例は、WO 00/005249号で開示されたものであり、その全内容は本明細書中に参照として援用される。前記出願で具体的に開示された32のペプチドは、以下のとおりである:

【0075】
本発明に使用するためのさらなるランダム共重合体、およびそれらの合成方法は、Shukaliak Quandt, J.ら, 2004, Mol. Immunol. 40 (14-15):1075-87; Montaudo, M.S., 2004, J. Am. Soc. Mass Spectrom. 15 (3):374-84; Takeda, N.ら, 2004, J. Control Release 95(2): 343-55; Pollino, J. M.ら, 2004, J. Am. Chem. Soc. 126 (2):563-7; Fridkis-Hareli, M.ら, 2002, J. Clin Invest. 109(12):1635-43; Williams, D.M.ら, 2000, J. Biol. Chem. 275 (49): 38127-30; Tselios, T. ら, 2000, Bioorg. Med Chem. 8 (8): 1903-9; およびCady, C.T. ら, 2000, J. Immunol. 165 (4): 1790-8中等の文献中に見出され得る。
【0076】
1つの特定の態様では、ランダム共重合体は、少なくとも7つのアミノ酸残基長を含み、かつ、自己免疫疾患に関連するMHCクラスIIタンパク質に結合することができ、合成ペプチド結合は、MHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝に対し、II型コラーゲン261-273ペプチドよりも大きい親和性を有し、ここで合成ペプチドは、アラニン-グルタミン酸-リシン-チロシン-アラニン(AEKYA)、アラニン-グルタミン酸-リシン-バリン-アラニン(AEKVA)、アラニン-グルタミン酸-リシン-フェニルアラニン-アラニン(AEKFA)、アラニン-リシン-チロシン-アラニン-グルタミン酸(AKYAE)、グルタミン酸-アラニン-リシン-チロシン-アラニン(EAKYA)、アラニン-リシン-バリン-アラニン-グルタミン酸(AKVAE)、およびグルタミン酸-アラニン-リシン-バリン-アラニン(EAKVA)、アラニン-リシン-フェニルアラニン-アラニン-グルタミン酸(AKFAE)、およびグルタミン酸-アラニン-リシン-フェニルアラニン-アラニン(EAKFA)からなる群より選択される配列を含む。
【0077】
特定の好ましい態様では、本発明の共重合体は、HLA-DQA1分子に結合し、より好ましくは、対立遺伝子DQA1*0501〜DQB1*0201、DQA1*0301、DQB1*0401およびDQA1*03〜DQB1*0302中でコードされる1つ以上のHLA分子に結合する。
【0078】
他の態様では、本発明の方法の共重合体は、HLA-DR分子および/または他のDQイソタイプと結合するための共重合体の解離定数(Kd)の少なくとも10倍未満のKdを有し、ある特定のHLA-DQ分子の保有者をI型糖尿病およびセリアック病等の自己免疫関連疾患に罹患しやすくする、ある特定のHLA-DQ分子に結合する。かかるHLA-DQ分子は、DQB1*0201、DQB1*0302、DQB1*0304、DQB1*0401、DQB1*0501、DQB1*0502;およびDQA1*0301、DQA1*0302、DQA1*0303、DQA1*0501として公知である特定のHLA-DQB1およびDQA1対立遺伝子の組み合わせタンパク質生成物である。これらの対立遺伝子は、DQB1*0201〜DQA1*0501〜DRB1*0301およびDQB1*0302〜DQA1*0301〜DRB1*0401等の同一のハプロタイプ(「シス」対立遺伝子)上でコードされえる。「シス」対立遺伝子のポリペプチド生成物を含む得られるHLA分子を、本明細書中で「シス二量体」とよぶ。あるいは、対立遺伝子は、異なるハプロタイプ(「トランス」対立遺伝子)上でコードされ得る。「トランス」対立遺伝子のポリペプチド生成物を含むHLA分子を、本明細書中で「トランス二量体」とよぶ。「トランス」対立遺伝子の例は、DQB1*0201〜DQA1*0501〜DRB1*0301上のDQB1*0201、およびDQB1*0301〜DQA1*0301〜DRB1*0404の組み合わせである。
【0079】
ある特定の態様では、本明細書に記載の方法に用いられるDQ指向共重合体は、以下の4つの群:(1)疎水性脂肪族アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン等);(2)酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸等);(3)小親水性側鎖を有するアミノ酸(セリン、システイン、トレオニン);および(4)小脂肪族側鎖を有するアミノ酸(アラニン、グリシン等)のそれぞれからのアミノ酸を含むランダムなまたは部分的にランダムなアミノ酸配列の混合物であり、さらに共重合体は、プロリン残基を含む。1つの態様では、共重合体は、アミノ酸グルタミン(E)および/またはアスパラギン酸(D)、ロイシン(L)、セリン(S)およびアラニン(A)を用いて誘導され、本明細書中で「ELSA」共重合体とよぶ。
【0080】
ある特定の他の態様では、DQ指向共重合体は、以下の4つの群:(1)疎水性脂肪族アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン等);(2)嵩高い疎水性アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン等);(2)酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸等);(3)小親水性側鎖を有するアミノ酸(セリン、システイン、トレオニン等);および(4)小脂肪族側鎖を有するアミノ酸(アラニン、グリシン等)のそれぞれからのアミノ酸を含むランダムなまたは部分的にランダムなアミノ酸配列の混合物であり、さらに共重合体は、プロリン残基を含む。例示の共重合体は、アミノ酸残基グルタミン(E)および/またはアスパラギン酸(D)、ロイシン(L)、チロシン(Y)およびバリン(V)を用いて誘導され、本明細書中で「DLYV」共重合体とよぶ。
【0081】
1つの態様では、自己免疫疾患の処置方法は、自己免疫疾患に関連するHLA-DQ分子に結合する共重合体を投与することを含む。好ましくは、処置方法は:(1)疎水性脂肪族残基(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン);(2)酸性残基(アスパラギン酸、グルタミン酸);(3)小親水性残基(セリン、システイン、トレオニン);(4)小脂肪族残基(アラニン、グリシン);および(5)プロリンから選択される複数のアミノ酸残基を含むポリペプチドを含む共重合体を用いて行われる。
【0082】
好ましい態様では、本発明の共重合体組成物は、1μM以下の平均Kd、より好ましくは100nM、10nM、またはさらにlnM未満の平均Kdを有する1つ以上のDQアイソタイプに結合する。好ましい共重合体を同定する別の方法は、Sidney ら, 2002, J. Immunol. 169: 5098に記載のような競合結合アッセイにおいて共重合体の他のものへの置換を測定することに基づいており、これをIC50値として表す。本発明の好ましい共重合体は、1μM未満、より好ましくは500nM未満、さらにより好ましくは100nM未満のIC50値を有する。
【0083】
ある特定の好ましい態様では、共重合体は、種々のアミノ酸残基のランダム合成(重合)により形成される。ランダム共重合体に取り込まれる(incorporate)アミノ酸のある特定の比が用いられ得る。本発明の好ましいランダム共重合体は、アミノ酸残基K、E、A、S、VおよびPを含む。より好ましくは、K:E:A:S:Vの比は、0.3:0.7:9:0.5:0.5:0.3である。好ましくは、ランダム共重合体は、約10〜100アミノ酸残基長、より好ましくは20〜80アミノ酸残基長、さらにより好ましくは40〜60アミノ酸残基長、および最も好ましくは約50アミノ酸残基長である。合成されるとき、ランダム共重合体の代表的な調製物は、種々の長さのペプチドの混合物であり、その大部分は所望の長さであるが、現在利用可能な合成プロセスによって必然的に生じるより短いかまたはより長いペプチドを含む。
【0084】
さらに、ある特定の態様では、共重合体は、最適なクラスII結合を提供する得られた重合体中に規則的な間隔を伴って生じる「アンカー」、すなわち固定された残基を有するセミランダム(または半規則的)重合体であり得る。ペプチド内のアンカー残基は、E、DまたはVであり得る。例えば、共重合体は、一般的配列のうち1つを有するように合成され得る:



(式中、XはA、S、V、KまたはPであり、その比は5:1:1:1:0.5であり、かつ、1≦n≦8である)。
【0085】
ペプチドは、9〜25アミノ酸残基長を有する。好ましくは、ペプチドは、13アミノ酸残基長である。9〜25アミノ酸の規定された配列長さのペプチドは、2〜20の固定された残基を含み得る。本発明に記載されたペプチドの個々の固定された残基は、クラスII MCH分子のペプチド結合溝(grove)のP1、P4、P7またはP9位のいずれかに結合し得る。好ましくは、かかるペプチドは、2または3の固定された残基を含む。1つの態様では、13アミノ酸の規定された配列長さのペプチドは、2つの固定された残基、EもしくはDのいずれか、またはその任意の組み合わせを含み得る。好ましくは、13アミノ酸の規定された配列長さのペプチドは、3つの固定された残基を含み得る。ペプチドは規定された配列の多量体であり得、ここで繰り返し単位の数は好ましくは2〜8の範囲内である。より好ましくは、繰り返し単位の数は、3〜6である。最も好ましくは、繰り返し単位の数は4である。好ましい態様では、本発明の多量体は、2つの固定された残基、EもしくはDのいずれか、またはその任意の組み合わせを含む13アミノ酸の規定された配列長さのペプチドを含む。
【0086】
ある特定の好ましい態様では、主題の共重合体は、医薬としての使用のために、25,000未満、およびより好ましくは10000、5000、1000、500、100、50、またはさらに10未満の多分散度を有するように製剤される。
【0087】
ランダム共重合体の合成
本発明に用いられる三元重合体およびランダム共重合体は、当業者が利用可能な任意の手順で製造することができる。例えば、三元重合体は、溶液中で所望のモル比のアミノ酸を用いる縮合条件下で、または固相合成法により、製造することができる。縮合条件は、1つのアミノ酸のカルボキシル基を他のアミノ酸のアミノ基と縮合させてペプチド結合を形成するための適切な温度、pH、および溶媒条件を含む。例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤を用いて、ペプチド結合形成を促進することができる。ブロッキング基を用いて、望まれない副反応に対する側鎖部位およびいくつかのアミノまたはカルボキシル基などの官能基を保護することができる。
【0088】
例えば、米国特許第3,849,550号に開示された方法を用いることができ、ここでチロシン、アラニン、γ-ベンジルグルタミン酸塩およびN-ε-トリフルオロアセチルリシンのN-カルボキシ無水物は、周囲温度で無水ジオキサン中、開始剤としてジエチルアミンを用いて重合される。グルタミン酸のγ-カルボキシル基は、氷酢酸中の臭化水素により脱ブロック化することができる。1モルのピペリジンにより、トリフルオロアセチル基をリシンから除去する。当業者は、グルタミン酸、アラニン、チロシンまたはリシンのいずれか1つに関連する反応を選択的に除外することにより、所望のアミノ酸、すなわち、共重合体1中の4つのアミノ酸のうちの3つを含むペプチドおよびポリペプチドを製造するために、当該方法が調整し得ることを容易に理解する。本願の目的のため、用語「周囲温度」および「室温」は、約20℃〜約26℃の範囲の温度を意味する。
【0089】
本発明のランダム共重合体の好ましい合成方法は、固相合成によるものである。合成は、Fmoc保護アミノ酸を用いて固相ペプチド合成(SPPS)アプローチによる複数の工程でなされる。SPPSは、必要に応じて側鎖を保護した保護アミノ酸誘導体を、重合体支持体(ビーズ)に連続的に添加することに基づく。塩基性の不安定なFmoc基を、N-保護に用いる。保護基を(ピペリジン加水分解により)除去した後、次のアミノ酸混合物を、カップリング試薬(TBTU)を用いて添加する。最後のアミノ酸が結合した後、N-末端をアセチル化する。
【0090】
得られるペプチド(そのC-末端を介して重合体支持体に結合している)を、TFAを用いて切断し、粗製のペプチドを得る。この切断工程の間、全ての側鎖保護基もまた切断する。ジイソプロピルエーテルを用いて沈殿させた後、固体を濾過し、乾燥する。得られるペプチドを分析し、2℃〜8℃で保存する。
【0091】
固相合成の例
L-アラニン、L-リシン-、L-フェニルアラニンおよびL-チロシンからなるランダム共重合体YFAKを、Wang樹脂上で、その保護された形態で調製される。用いられた樹脂は、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-Wang(0.62mmol/g)、Fmoc-L-Phe-Wang(0.72mmol/g)、 Fmoc-L-Ala-Wang(0.70mmol/g)およびFmoc-L-Lys(Boc)-Wang(0.72mmol/g)であった。各カップリング工程の間、4つのF-moc保護アミノ酸、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-L-Ala-OHおよびFmoc-L-Lys-OHを、それぞれ1:1:10:6のモルインプット比で用いる。合成に用いられる他の試薬は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム、テトラフルオロホウ酸塩(TBTU)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピペリジンおよびトリフルオロ酢酸(TFA)である。用いられる溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、イソプロパノール(IsOH、IPA、i-PrOH)、塩化メチレンおよびイソプロピルエーテルである。各カップリングの化学量論は、以下のとおりである:
・2当量のFmoc保護アミノ酸を用いる残基1〜10;
・2当量をダブルカップリングのFmoc保護アミノ酸で用いる残基11〜30;
・2.5当量のFmoc保護アミノ酸をダブルカップリングで用いる残基31〜52。
【0092】
顕著に高いアラニン含量を有するYFAK合成の代表例におけるアミノ酸インプット比の例は、以下のとおりである:
【0093】

【0094】
同様の様式で、本発明の好ましい態様のランダム共重合体である共重合体1は、その保護形態で、Wang樹脂上で調製される。用いられた樹脂は、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-Wang(0.62mmol/g)、Fmoc-L-Glu-Wang、Fmoc-L-Ala-Wang(0.70mmol/g)およびFmoc-L-Lys(Boc)-Wang(0.72 mmol/g)であった。各カップリング工程の間、4つのF-moc保護アミノ酸、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH、Fmoc-L-Glu-OH、Fmoc-L-Ala-OHおよびFmoc-L-Lys-OHを、それぞれ1:2:6:5のモルインプット比で用いる。用いられた他の試薬およびカップリング化学量論は、YFAKの合成と同様である。
【0095】
顕著に高いアラニン含量を有するYEAK合成の代表例におけるアミノ酸インプット比の例は、以下のとおりである:
【0096】

【0097】
非天然ポリペプチド、および共重合体の化学修飾
1つの態様では、本発明の共重合体は、天然に存在するアミノ酸から構成される。他の態様では、共重合体は、天然に存在する誘導体および合成の誘導体、例えば、セレノシステインから構成される。アミノ酸は、さらにアミノ酸アナログを含む。アミノ酸「アナログ」は、異なる立体配置、例えば異性体、もしくはL-配置よりもむしろD-配置を有するアミノ酸の化学的に関連する形態であるか、またはアミノ酸とほぼ同じサイズおよび形状を有する有機分子、もしくはポリペプチド中で重合したときにプロテアーゼ耐性となるようペプチド結合に関与する原子の修飾を伴うアミノ酸である。
【0098】
本発明に使用するための共重合体は、L-もしくはD-アミノ酸またはそれらの混合物から構成することができる。当業者に公知のように、L-アミノ酸はほとんどの天然のタンパク質に存在する。しかしながら、D-アミノ酸は市販で入手可能であり、本発明の三元重合体および他の共重合体を製造するのに用いられるいくつかのアミノ酸または全てのアミノ酸の代用となり得る。本発明は、D-およびL-アミノ酸の両方を含む共重合体、ならびにL-またはD-アミノ酸のいずれかから本質的になる共重合体を意図する。
【0099】
ある特定の態様では、本発明のランダム共重合体は、異なる化学的部位を置換するかまたは添加することによりさらに修飾されるような線状共重合体を含む。1つの態様では、かかる修飾は、残基の位置であり、かつ、被験体において共重合体のタンパク質分解的分解を阻害するのに十分な量である。例えば、アミノ酸修飾は、少なくとも1つのプロリン残基の配列中に存在し得る;残基は、少なくとも1つのカルボキシ-およびアミノ末端に存在する;さらに、プロリンは、少なくとも1つのカルボキシ-およびアミノ-末端の4残基以内に存在し得る。さらに、アミノ酸修飾は、D-アミノ酸の存在下であり得る。
【0100】
ある特定の態様では、主題のランダム共重合体は、ペプチド模倣物である。ペプチド模倣物は、ペプチドおよびタンパク質に基づくか、またはこれらから誘導される化合物である。本発明の共重合体ペプチド模倣物は、典型的には、例えば、非天然のアミノ酸、立体配置の制限、等価の置換などを用いる1つ以上の天然アミノ酸残基の構造的修飾により得ることができる。主題のペプチド模倣物は、ペプチド合成構造と非ペプチド合成構造との間の構造的空間の連続体を構成する。
【0101】
かかるペプチド模倣物は、加水分解不可能であり(例えば、プロテアーゼまたは対応するペプチド共重合体を分解する他の生理的条件に対して増加した安定性)、増加した特異性および/または強度のような特性を有する。例示の目的のため、本発明のペプチドアナログは、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、「Peptides: Chemistry and Biology, 」G. R. Marshall 編, ESCOM Publisher: Leiden, Netherland,1988におけるFreidinger らを参照)、置換γラクタム環(「Peptides: Chemistry and Biology,」 G. R. Marshall 編, ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, pl23におけるGarveyら), C-7模倣体(「Peptides: Chemistry and Biology,」G. R. Marshall 編, ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p. 105におけるHuffman ら)ケトメチレン偽ペプチド(Ewenson ら, 1986, J. Med. Chem. 29: 295; および「Peptides: Structure and Function (第9回米国ペプチドシンポジウム要旨集),」 Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985におけるEwensonら)、β-回転ジペプチドコア(Nagaiら, 1985, Tetrahedron Lett. 26: 647; およびSatoら, 1986, J. Chem. Soc. Perkin Trans.1: 1231)、β-アミノアルコール(Gordonら, 1985, Biochem. Biophys. Res. Commun. 126: 419; およびDannら, 1986, Biochem. Biophys. Res. Commun. 134: 71)、ジアミノケトン(Natarajanら, 1984, Biochem. Biophys. Res. Commun. 124: 141)、およびメチレンアミノ修飾(「Peptides: Chemistry and Biology,」G. R. Marshall 編, ESCOM Publisher: Leiden, Netherland, 1988, p134におけるRoarkら)を用いて生成させ得る。また、一般には、「Peptides: Chemistry and Biology,」 G.R. Marshall編, ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988におけるSession III:Analytic and synthetic methods)を参照。
【0102】
ランダム共重合体の分子量は、ポリペプチド合成の間に、または共重合体が合成された後に、調整することができる。ポリペプチド合成の間に分子量を調整するため、合成条件またはアミノ酸の量を、ポリペプチドがほぼ所望の長さに達した時に合成が停止するように調整する。合成後、所望の分子量を有するポリペプチドは、分子量サイジングカラムまたはゲル上でのポリペプチドのクロマトグラフィー等の任意の利用可能なサイズ選別手順、および所望の分子量範囲の回収により得ることができる。本ポリペプチドはまた、例えば、酸または酵素的加水分解によって部分的に加水分解することにより高分子量種を除去し、次いで精製して酸または酵素を除去することもできる。
【0103】
1つの態様では、所望の分子量を有するランダム共重合体は、保護ポリペプチドを臭化水素酸と反応させて、所望の分子量プロフィールを有するトリフルオロアセチルポリペプチドを形成することを含む方法により調製され得る。反応は、1以上の試験反応により予め定められた時間および温度で行われる。試験反応の間、時間および温度は変動し、試験ポリペプチドの所定のバッチの分子量範囲が決定される。当該ポリペプチドのバッチに対して最適な分子量範囲を与える試験条件を、該バッチに用いる。従って、所望の分子量プロフィールを有するトリフルオロアセチルポリペプチドは、試験反応により予め定められた時間および温度で、保護ポリペプチドを臭化水素酸と反応させることを含む方法により生成され得る。所望の分子量プロフィールを有するトリフルオロアセチルポリペプチドを、次いで、ピペリジン水溶液でさらに処理し、所望の分子量を有する低毒性のポリペプチドを形成する。
【0104】
1つの好ましい態様では、所定のバッチからの保護ポリペプチドの試験試料を、約10-50時間、約20-28℃の温度で臭化水素酸と反応させる。当該バッチの最良な条件は、いくつかの試験反応を行うことにより決定される。例えば、1つの態様では、保護ポリペプチドを、約17時間、約26℃の温度で臭化水素酸と反応させる。
【0105】
いくつかの態様では、本明細書に用いられ得るランダム共重合体としては、PCT国際公開第WO 00/05250号、同第WO 00/05249号、同第WO 02/59143号、同第WO 0027417号、同第WO 96/32119号、米国特許出願公開第2004/003888号、同第2002/005546号、同第2003/0004099号、同第2003/0064915号および同第2002/0037848号、米国特許第6,514,938号、同第5,800,808号および同第5,858,964号に記載のもの、ならびにPCT出願PCT/US05/06822号に記載のものが挙げられる。これらの参考文献は、さらに、ランダム共重合体を合成する方法、ランダム共重合体を含む組成物、ランダム共重合体の治療用製剤、ランダム共重合体を被験体に投与する方法、ランダム共重合体で処置され得る疾患、およびランダム共重合体と共に被験体に同時投与され得るさらなる治療有効剤を記載する。これらの全ての特許、出願および公開公報の教示は、それらの全体が参照として本明細書中で援用される。
【0106】
これは例示のためのみに与えられ、かつ、当該組成は、上記の一般基準が厳守される(adhere)場合、成分および成分の相対的割合の双方に関して変動し得ることが明らかである。
【0107】
IV.疾患
本発明は、被験体の疾患を処置または予防する方法を提供する。疾患を発症するリスクがある被験体、疾患に罹患している疑いのある被験体、または疾患に罹患している被験体は、本発明により提供される方法を用いて処置され得る。
【0108】
1つの態様では、本発明の方法で処置され得る疾患には、T細胞、および特にTH1細胞により媒介される疾患、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患を含む。本発明の方法は、全身性虚血、または特に心臓、肺もしくは腎臓に対する局所的虚血により引き起こされるものを含む、虚血性傷害を含む疾患を処置するのに用いられ得る。いくつかの態様では、炎症は、敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、トキシックショック症候群、悪液質、壊死、壊疽、歯科用インプラント(prosthetic implant)、またはI型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時型過敏症、抗体媒介過敏症、免疫複合体媒介過敏症、Tリンパ球媒介過敏症および遅延型過敏症を含む過敏症に関連する。他の態様では、疾患は、心筋梗塞、心停止、虚血-再灌流障害、うっ血性心不全、心毒性、寄生虫感染による心損傷、劇症心アミロイドーシス、心臓外科手術、心臓移植、外傷性心傷害、胸部大動脈瘤の外科手術による修復、副腎大動脈瘤、血液損失による出血性ショック、心筋梗塞または心不全による心原性ショック、アナフィラキシー、不安定冠動脈症候群、頻脈、徐脈またはそれらの組み合わせを含む。
【0109】
1つの態様では、本発明の方法で処置され得る疾患は、自己免疫疾患を含む。本発明により意図される自己免疫疾患は、細胞媒介疾患(例えばT-細胞)または抗体媒介(例えばB細胞)障害のいずれかを含む。かかる障害は、とりわけ、関節炎状態、脱髄疾患および炎症性疾患であり得る。本発明の方法は、特に、脱髄炎症性疾患の治療に関心がもたれており、当該疾患には、多発性硬化症、EAE、視神経炎、急性横断脊髄炎および急性散在性脳炎が挙げられる。1つの特定の態様では、意図するポリペプチドが自己免疫疾患に関連するMHCクラスIIタンパク質に結合する限り、いかなる自己免疫疾患も本ポリペプチドで処置することが可能となる。疾患の進行は、公知の方法を用いて、臨床的または診断的症状をモニタリングすることにより測定することができる。
【0110】
1つの態様では、本明細書中で提供される方法により処置される疾患は、「関節炎状態」である。本明細書中で用いられる場合、関節炎状態とは、少なくとも1つの慢性関節リウマチの症状が、哺乳動物の少なくとも1つの関節、例えば、哺乳動物の肩、膝、臀部、背骨または指で観察される状態である。RAは、白色人種で約1%の罹患率を有する一般的なヒトの自己免疫疾患であり(Harris, B. J.ら, 1997, In Textbook of Rheumatology 898-932)、現在、250万人の米国人が罹患している。RAは、滑液関節の慢性炎症、ならびに活性化したT細胞、マクロファージおよび血漿細胞の浸潤により特徴付けられ、関節軟骨の進行性破壊をもたらす。これは関節疾患の最も重篤な形態である。RAに対する遺伝的罹患性(susceptibility)は、MHCクラスII DRB1座において対立遺伝子DRB1*0401、DRB1*0404もしくはDRB1*0405、またはDRB1*0101対立遺伝子を有する罹患被験体と強く関連する。コラーゲンII型(CII)が重要な候補であるが、RAにおける自己抗原の性質はあまり理解されていない。残基261-273に対応するコラーゲンII型における免疫優勢T細胞エピトープが同定されている(Fugger, L.ら, 1996, Eur. J. Immunol. 26: 928-933)。
【0111】
関節炎状態の他の例としては、「多発性関節炎」が挙げられ、これは、2つ以上の関節に影響する関節炎状態である;「若年性関節炎」は、21歳未満のヒトの関節炎状態である;ならびに、フェルティー症候群は、好中球減少、巨脾腫、体重減少、貧血、リンパ節腫脹および皮膚の色素斑の症状を含み得る。
【0112】
別の態様では、本明細書中で提供される方法で処置される疾患は、多発性硬化症(MS)である。多発性硬化症の疾患の過程は非常に多様で予測不可能であり、ほとんどの患者で弛張性である。MSの病理学的な顕著な特徴は、多中心性、多相性CNS炎症および脱髄である。数ヶ月または数年の寛解は、特に疾患の初期で、エピソードを中断(separate)し得る。約70%の患者が再発寛解(RR)型であり、これは、全寛解または部分的寛解を伴う急性悪化により特徴付けられる。残りの患者は、慢性進行性MSを示し、これはさらに(a)一次進行型(PP)、(b)再発進行型(RP)、これはRRおよびRPの特徴を組み合わせたパターンであり、臨床的重篤性は中程度である、および(c)二次進行性(SP)、これは多くの患者が時間とともに進行するRRを有する、に細かく分類される。特定の好ましい態様では、本方法で処置される疾患は、再発寛解型多発性硬化症である。
【0113】
MSの臨床的症状としては、感覚損失(異常感覚)、運動(次いで痙縮に移行する筋肉痙攣)および自律神経性(膀胱、腸、性的不能)脊髄症状;小脳症状(例えば、断続性言語(dysarthna)、眼振(ataxia)、振戦(tremor)のシャルコー三徴);疲労および眩暈;神経心理学的試験における情報処理の障害;側方注視における複視を含む眼症状;三叉神経神経痛;および視神経炎が挙げられる。
【0114】
MSにおける自己抗原は、いくつかのミエリンタンパク質の1つである可能性が最も高い(例、タンパク脂質タンパク質(PLP);ミエリン乏突起膠細胞グリコタンパク質(MOG);ミエリン塩基性タンパク質(MBP);ミエリン関連グリコタンパク質(MAG)、ミエリン関連乏突起膠細胞塩基性タンパク質(MBOP);シトルリン修飾MBP(6アルギニンが脱イミノ化してシトルリンになったMBPのC8アイソフォーム)、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPase)、α-B結晶など)。一体化した膜タンパク質PLPは、ミエリンの主な自己抗原である。小グリア細胞およびマクロファージは、一緒になって抗原提示細胞として作用し、サイトカイン、補体および炎症性プロセスの他の調節因子の活性化が得られ、特異性乏突起膠細胞およびそれらの膜ミエリンを標的化する。IFN-γを分泌する能力を有するミエリン自己反応性TH1細胞の量的増加は、MSおよびEAEの病原性に関連し、MS患者の末梢血液中の自己免疫誘導物質/ヘルパーTリンパ球が、MS患者において脱髄プロセスを開始および/または調節し得ることを示唆する。一方、IL-4およびIL-10等の抗炎症性サイトカインを産生するTH2細胞の保護的役割についての広範囲な文献が存在する。細胞のTH1型からTH2型へのバランスのシフトは、MSおよびEAEの予防および処置に有益であると期待される。
【0115】
別の態様では、本明細書中で提供される方法により処置される疾患は、インスリン依存性糖尿病である。ヒトI型すなわちインスリン依存性糖尿病(IDDM)は、ランゲルハンス膵島中の細胞の自己免疫破壊により特徴付けられる。β-細胞の枯渇の結果、血糖値の調節が不能となる。明白な糖尿病は、血糖値が特定のレベル、通常約250mg/dlを超えたときに起こる。ヒトでは、糖尿病の発症の前に、長い症状前期間がある。この期間の間、膵β細胞機能の機能が次第に失われる。疾患の発症は、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼおよびチロシンホスファターゼIA2(IA2)に対する自己抗体の存在に関連し、それぞれが本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチドまたは自己ペプチドの例である。ヒトIDDMは、現在、血糖値をモニタリングして、組み換えインスリンの投与またはポンプでの送達を指導することにより、処置されている。食事療法および運動養生法は、適切な血糖値コントロールを達成するのに寄与する。
【0116】
症状前段階の間に評価され得るマーカーは、膵臓中のインスリン炎の存在、島細胞抗体のレベルおよび頻度、島細胞表面抗体、膵β細胞上でのクラスII MHC分子の異常な発現、血糖濃度およびインスリンの血漿濃度である。膵臓中のTリンパ球の数、島細胞抗体および血糖の増加は、当該疾患を示すものである。なぜならそれは、インスリン濃度の減少であるからである。
【0117】
血清中で種々の特異性を有する自己抗体の組み合わせの存在は、ヒトI型糖尿病に対して高感度でありかつ特異的である。例えば、GADおよび/またはIA-2に対する自己抗体の存在は、対照の血清からのI型糖尿病を同定するために、ほぼ98%の感度および99%の特異性である。I型糖尿病患者に対する非糖尿病の最初の度合いにおいて、GAD、インスリンおよびIA-2を含む3つの自己抗原のうちの2つに対して特異的な自己抗体が存在することにより、5年以内のI型DMの発症が90%を超える陽性予測値(positive predictive value)をもたらす。
【0118】
別の態様では、本明細書中で提供される方法により処置される疾患は、自己免疫性ブドウ膜炎である。自己免疫性ブドウ膜炎は、400,000人が罹患していると推定される眼の自己免疫疾患であり、米国では1年あたり43,000人が新たに発症している。自己免疫性ブドウ膜炎は現在、ステロイド、メトトレキセートおよびシクロスポリン等の免疫抑制剤、静脈内免疫グロブリンおよびTNFα-アンタゴニストを用いて処置される。
【0119】
別の態様では、本明細書中で提供される方法により処置される疾患は、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)である。EAUは、眼の神経網膜、ブドウ膜および関連組織を標的とするT細胞媒介自己免疫疾患である。EAUはヒト自己免疫性ブドウ膜炎と多くの臨床的および免疫学的特徴で共通しており、完全フロイントアジュバント(CFA)中で乳化したブドウ膜炎原性ペプチドの末梢投与により誘発される。
【0120】
別の態様では、本明細書中で提供される方法により処置される疾患は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である。PBCは、器官特異性自己免疫疾患であり、主に40〜60歳の女性が罹患する。この群について報告されている罹患率は、1,000人中1人である。PBCは、小肝内胆管の被覆(lining)の肝内胆汁上皮細胞(IBEC)の進行性破壊により特徴付けられる。これは、胆汁分泌の閉塞および障害をもたらし、最終的に肝硬変を引き起こす。シェーグレン症候群、クレスト症候群、自己免疫甲状腺疾患および慢性関節リウマチを含む、上皮被覆/分泌系の損傷により特徴付けられる他の自己免疫疾患との関連が報告されている。
【0121】
別の態様では、本明細書中で提供される方法により処置される疾患は、セリアック病であり、セリアックスプルーまたはグルテン-感受性腸疾患としても知られる。セリアック病は、小麦、大麦および麦に存在する、グルテンまたはその産物であるグリアジンおよびグルテニンを含むシリアル穀物貯蔵タンパク質への過敏症による消化器吸収の不具合により生じる疾患である。該疾患は、グリアジンを食物抗原であると認識するCD4T細胞によって引き起こされ、これらの細胞は、Thl媒介慢性炎症性応答を引き起こす。症状としては、下痢、体重減少および脂肪便が挙げられ、絨毛萎縮および吸収不良がみられる。これはまた、ヘルペス様皮膚炎、小胞性皮膚発疹に関連し得る。セリアック病は、DQA1*0301およびDQA1*0501と組み合わされた対立遺伝子DQB1*0302およびDQB1*0201に関連する。95%の患者は、DQB1*0201またはDQB1*0302のいずれかを有する。強いHLA関連性は、DQB1*0201、DQA1*0501、DQB1*0302およびDQAl*0301によりコードされたDQ分子の能力が、グリアジンおよびグルテミンから誘導されるグルタミンリッチなペプチドの脱アミノ化変異体を効果的に示すことによるものと考えられている。
【0122】
別の態様では、被験体において自己免疫疾患を処置する方法は、さらに、自己抗原に応答するT細胞の増殖または機能を阻害することに関与する。自己免疫疾患および免疫拒絶の病理学的プロセスは、T細胞により媒介される。抗原に結合しかつ認識する際、T細胞は増殖し、サイトカインを分泌し、該部位にさらなる炎症性および細胞傷害性細胞を増加させる(recruit)。
【0123】
さらに別の態様では、被験体において自己免疫疾患を処置するための本明細書に記載の方法は、ランダム共重合体を自己免疫疾患に関連する主要組織適合遺伝子複合体クラスIIタンパク質に結合させることを含む。クラスII MHCタンパク質は、Bリンパ球およびマクロファージ等の抗原提示細胞の表面上で主に発現する。これらのクラスII MHCタンパク質は、ペプチド結合間隙を有し、これは、抗原性ペプチドがT細胞に提示される部位である。本ランダム共重合体が主要組織適合遺伝子複合体クラスIIタンパク質と結合する場合、これらのランダム共重合体は、抗原提示および/またはT細胞活性化を阻害するかまたは妨害し得る。
【0124】
1つの態様では、本発明の方法により処置される疾患は、宿主対移植片疾患(HVGD)または移植片対宿主疾患(GVHD)である。臓器移植および骨髄再生等の移植システムは、多くの生命を脅かす疾患に対する重要かつ効果的な療法となった。しかしながら、免疫拒絶は、依然として首尾良い移植の主な障害である。これは、臓器移植の場合における機能低下および移植片拒絶(宿主対移植片疾患すなわちHVGDにより明らかである。病理学的免疫反応性の他の徴候は、骨髄レシピエントの約30%に起こるGVHDである。GVHDを発症する患者の半数までが、この過程で死亡し得る。この高い罹患率および死亡率は、GVHDを制御または予防する可能性についての継続的な関心をもたらしてきた。臨床病理学的には、GVHDの2つの形態が認識されている。急性GVHDは、骨髄移植後最初の3ヶ月以内に発症し、皮膚、肝臓および消化管の障害により特徴付けられる。慢性GVHDは、移植後3ヶ月〜3年までで発症する多臓器(multi-organ)自己免疫様疾患であり、全身性エリテマトーデス(SLE)および強皮症のような天然に存在する(naturally occuring)自己免疫障害と特徴が共通する。本明細書に記載の方法は、急性および慢性GVHDの両方を処置するために用いられ得る。
【0125】
本明細書に記載の方法の特定の態様では、共重合体1またはYFAKランダム共重合体は、GVHDを発症する臓器移植の全ての場合においてGVHDの予防および処置に用いられ得るが、具体的には胎児胸腺、およびより具体的には同種異系骨髄移植において用いることができる。適切な状態の養生法の下での患者に対し、GLAT共重合体を処置養生法で移植日の2日前から、次いで移植日後さらに60-100日間、少なくとも60日間投与し得る。かかる期間の養生法は、ランダム共重合体を、24、30、36、42または48時間より長い間隔で投与することを含み得る。シクロスポリン、メトトレキセートおよびプレドニゾンなどの他の免疫抑制薬を、共重合体1共重合体と共に投与し得る。
【0126】
本発明の方法はまた、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性非リンパ芽球性白血病(ANLL)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)等の白血病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、大理石骨病(osteopetrosis)、再生不良性貧血、ゴーシェ病、サラセミアおよび他の先天的にまたは遺伝的に決定された造血性異常または代謝異常を含む、骨髄移植により治癒可能な疾患に罹患する患者における骨髄移植の過程で、GVHDを予防および処置するのに適用され得る。
【0127】
別の態様では、本発明の方法は、神経再生を促進するかまたは原発性神経系傷害、例えば、危険なスポーツに参加することにより引き起こされるもの等の閉鎖性頭部外傷および鈍的外傷、弾丸による外傷等の貫通性外傷、出血性卒中、虚血性卒中、緑内障、脳虚血、または腫瘍切除等の手術により引き起こされる損傷、に続いて起こり得る二次的変性を予防または阻害するのに適用され得る。さらに、かかる組成物は、限定されないが、糖尿病性神経障害、老人性痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、顔面神経(ベル)麻痺、緑内障、ハンティングトン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、癲癇重積症、非動脈性視神経障害、椎間板ヘルニア、ビタミン欠損、クロイツフェルト・ヤコブ病等のプリオン疾患、手根管症候群、限定されないが尿毒素を含む種々の疾患に関連する末梢神経障害、ポルフィリン症、低血糖、シェーグレン・ラーソン症候群、急性感覚神経障害、慢性運動失調神経障害、胆汁性肝硬変、原発性アミロイドーシス、閉塞性肺疾患、末端肥大症、吸収不良症候群、真性赤血球増加症、IgAおよびIgGガンマパシー(gammapathy)、種々の薬(例えば、メトロニダゾール)および毒素(例えば、アルコールまたは有機リン酸類)の合併症、シャルコー・マリー・ツース病、毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangectasia)、フリードライヒ運動失調、アミロイド多神経障害、副腎骨髄神経障害、巨大軸索神経障害、レフサム病、ファブリー病、リポタンパク血症などを含む種々の疾患または障害の結果としての、灰白質または白質のいずれか(または両方)において起こる変性のような変性過程で生じる疾患の影響を改善するために用いられ得る。さらに、本発明のランダム共重合体の投与により処置され得る他の臨床的症状には、癲癇、健忘症、不安、痛覚過敏、精神病、痙攣、異常に上昇した眼圧、酸化ストレス、ならびに鎮痛剤(opiate)耐性および依存性が挙げられる。
【0128】
特定の態様では、本明細書に記載の方法で処置される疾患には、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン・バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫または結腸炎を含む。いくつかの態様では、被験体は、1つ以上の疾患に罹患している。
【0129】
V. 治療用組成物
本発明のランダム共重合体を、薬学的有効量の共重合体ならびに許容され得る担体および/または賦形剤を含む組成物として被験体に投与し得る。薬学的に許容され得る担体には、生理学的に適合可能な任意の溶媒、分散媒体またはコーティングが挙げられる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、経口、腹腔内、皮内、経皮、局所または皮下投与に適している。薬学的に許容され得る担体の1つの例は、生理食塩水である。他の薬学的に許容され得る担体およびその製剤は周知であり、一般に、例えば、Remington's Pharmaceutical Science (第18版、Gennaro編、 Mack Publishing Co. , Easton, PA, 1990)に記載されている。種々の薬学的に許容され得る賦形剤が当該分野で周知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients (第4版、Roweら編、 Pharmaceutical Press, Washington, D. C.)で見出すことができる。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、カプセル、錠剤または他の適切な形態として製剤化され得る。共重合体を含む活性成分は、材料でコーティングされ、作用の標的部位に到達する前の環境による不活性化から保護され得る。本発明の医薬組成物は、好ましくは運搬時に無菌かつ非発熱性であり、好ましくは、製造および貯蔵条件下で安定である。
【0130】
本発明の他の態様では、医薬組成物は制御性放出製剤である。本発明の共重合体は、生物学的に適合可能な重合体または即時型(immediate)環境中への共重合体の放出速度を制御するマトリックスと混合され得る。制御性放出組成物または徐放組成物としては、親油性デポー(depot)(例えば脂肪酸、ワックス、油)中の製剤が挙げられる。
【0131】
本発明のいくつかの態様では、医薬組成物は、油および乳化剤で製剤化されるランダム共重合体を含み、油中水微粒子および/またはエマルジョンを形成する。油は、周囲温度〜ほぼ体温にて液体である任意の非毒性の疎水性材料であり得、例えば、サフラワー油、大豆油、コーン油およびキャノーラ油を含む食用植物油;または鉱物油である。ラウリルグリコール等の化学的に規定された油物質もまた用いられ得る。本態様に有用な乳化剤には、Span 20(ソルビタンモノラウレート)およびホスファチジルコリンが挙げられる。いくつかの態様では、ランダム共重合体組成物は、水溶液として調製され、95〜65%の鉱物油等の油中および5〜35%のSpan 20等の乳化剤中に分散された油中水エマルジョン中で調製される。本発明の別の態様では、エマルジョンは、油および乳化剤を用いるよりはむしろミョウバンを用いて形成される。これらのエマルジョンおよび微粒子は、ランダム共重合体の取り込み速度を低減し、制御化された抗原送達を達成する。
【0132】
いくつかの態様では、医薬組成物はまた、さらなる治療上活性な剤を含む。このようなさらなる成分は、少なくとも、異なるHLA分子に結合する共重合体1(YEAK、コパキソン(Copaxone)(商標))のようなさらなるランダム共重合体、不要な炎症性分子またはサイトカイン(例えば、インターロイキン-6、インターロイキン-8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子α)に結合する抗体、プロテアーゼ阻害剤であるアプロチニンまたはシクロオキシゲナーゼ阻害剤のような酵素阻害剤;アモキシシリン、リファンピシリン、エリスロマイシンのような抗生物質;アシクロビルのような抗ウイルス剤;グルココルチコイドのようなステロイド性抗炎症剤;アスピリン、イブプロフェンまたはアセトアミノフェンのような非ステロイド性抗炎症剤;あるいはインターロイキン-4またはインターロイキン-10のような非炎症性サイトカインが挙げられる。他のサイトカインおよび成長因子(例えば、インターフェロン-β、腫瘍壊死因子、抗血管新生因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、インターロイキン、成熟因子、化学走化性タンパク質、ならびに同様の生理学的活性を保持するそれらの変異体および誘導体もまた、さらなる成分として用いられ得る。
【0133】
いくつかの態様では、さらなる活性な治療上活性な剤は、抗乾癬クリーム、点眼薬、点鼻薬、スルファサラジン、グルココルチコイド、プロピルチオウラシル、メチマゾール、I131、インスリン、IFN-β1a, IFN-β1b、グルココルチコイド、ACTH、アボネックス、アザチオプリン、シクロフォスファミド、UV-B、PUVA、メトトレキセート、カルシピトリオール、シクロフォスファミド、OKT3、FK-506、シクロスポリンA、アザチオプリンおよびマイコフェノレートモフェチルからなる群から選択される。
【0134】
本発明の共重合体はまた、抗肥満薬と組み合わせて用いられ得る。抗肥満薬には、P-3拮抗剤、CB-1拮抗剤、食欲抑制剤(例えば、シブトラミン(メリディア)など)およびリパーゼ阻害剤(例えば、オルリスタット(ゼニカル)など)が挙げられる。主題の共重合体は、糖尿病性患者において脂質障害を治療するのに一般的に用いられる薬と組み合わせて、本明細書の方法で用いられ得る。そのような薬には、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、ニコチン酸、胆汁酸金属イオン封鎖剤およびフィブリン酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリペプチドはまた、抗高血圧薬(例えば、β-阻害剤、カテプシンS阻害剤およびACE阻害剤)との組み合わせで用いられ得る。β-阻害剤の例には、アセブトロール、ビスプロロール、エスモロール、プロパノロール、アテノロール、ラベタロール、カルベジロールおよびメトプロロールが挙げられる。ACE阻害剤の例には、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、フォシノプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、トランドプリルおよびモエキシプリルが挙げられる。
【0135】
本発明はさらに、(i)ランダム共重合体を含む組成物、および(ii) 自己免疫疾患などの疾患の治療のために、当該組成物を、24時間より長い時間間隔で、より好ましくは36時間より長い時間間隔で、当該治療を必要とする被験体に投与するための指示書を含むキットを提供する。1つの態様では、自己免疫障害は多発性硬化症である。好ましい態様では、共重合体は共重合体1である。別の好ましい態様では、ランダム共重合体は、約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間より長いかあるいはそれらの間の任意の間隔で投与するための用量で処方される。本明細書中に記載のキットの別の態様では、指示書は、ランダム重合体を約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間毎に、あるいはそれらの間の任意の間隔で投与すべきであることを示す。キットは、包装、および共重合体を投与するための1つまたはそれ以上の皮下注射器などの装置を含み得る。
【0136】
特定の態様では、自己免疫疾患は、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン・バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫および結腸炎からなる群から選択される。
【0137】
VI. 治療方法
本発明の1つの態様は、1つまたはそれ以上のランダム共重合体を治療上有効量で被験体に投与することにより、自己免疫疾患などの疾患に罹患しているかまたは罹患している疑いのある被験体を治療するための新規な方法を提供する。特に、本発明の好ましい態様として、ランダム共重合体組成物を含む医薬組成物の皮下投与が意図される。皮下投与は、TH2応答に偏ったより望ましい免疫応答を誘発するが、これは特定の抗原に対するトレランスの基礎である。
【0138】
一般に、本発明の治療方法は、当該治療を必要とする被験体の免疫修飾であって、ワクチン接種とは区別することができる。首尾良いワクチン接種は、投与されるワクチンの免疫原性に依存するが、これは、ワクチン中の抗原に直接的に反応性である抗体の力価を増加させる。対照的に、本発明のランダム共重合体は、共重合体そのものに対する抗体の高い力価を誘発することなく、疾患の治療に効果的である。以下の実施例で示すように、本発明の方法の有効性は、共重合体に対する抗体産生に依存しないので、ワクチン接種とは基本的に異なる。ワクチン接種とは異なり、本発明の方法により投与される本発明のランダム共重合体は、疾患関連抗原に対するトレランスを誘発し、およびより詳細には、末梢性トレランスを誘発する。中枢性トレランスと対照的に、末梢性トレランスは、モジュレーター現象としてより安全であるという利点がある。従って、本発明の1つの態様は、ランダム共重合体および疾患関連抗原に対する末梢性トレランスを誘発するように、本発明のランダム共重合体を含む組成物の投与方法により具体化される。
【0139】
一般に、本発明の態様は、治療用効果、例えば、症候の改善を生じるのに最も少ない有効用量である適切な用量の治療用共重合体組成物を投与することである。治療用共重合体は、好ましくは、適切な最小の出発用量として、少なくとも約2 mg、少なくとも約5 mg、少なくとも約10 mg、または少なくとも約20 mg、あるいは約x mg(xは1〜20の間の整数である)の1日用量に対応する1被験体当たりの用量で投与される。本明細書に記載の方法の1つの態様では、約0.01〜約500 mg/kgの用量が投与され得る。一般に、本発明の化合物の有効用量は、1日当たり、被験体1 kg当たり約50〜約400 mgの化合物である。1つの特定の態様では、1日当たりの等価の用量は、用量が投与される頻度にかかわらず、約5〜100 mg/日、またはより好ましくは約10〜40 mg/日、またはより好ましくは 約20mg/日である。別の特定の態様では、治療養生法におけるそれぞれの個別の用量は、約5〜100 mg/用量、またはより好ましくは約10〜40 mg/用量、またはより好ましくは約20 mg/用量である。
【0140】
しかしながら、本発明の組成物の用量は、被験体および用いられる特定の投与経路により変動するであろうことが当業者に理解される。用量を個別の被験体に合うよう調整することは常套手段である。さらに、有効量は、中でも、化合物のサイズ、化合物の生分解性、化合物の生物活性および化合物のバイオアベイラビリティーに基づき得る。化合物が迅速に分解せず、生物学的に利用可能でかつ活性が高い場合、有効であるためにはより少量が必要とされるであろう。被験体に適切な実際の用量は、当業者、例えば、一般的な出発点を与えられた医師または獣医師によって、常套的プラクティスにより容易に決定され得る。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物で用いられる本発明の化合物の投与を、所望の治療用効果を達成するのに必要とされるレベルよりも低いレベルから開始することができるであろうし、所望の効果が達成されるまで、時間とともに用量を増加させることもできるであろう。医師または獣医師は、一般的な出発点として、コパキソン(商標)の投与についての他の推奨を参照することもできるであろう。
【0141】
本発明の文脈において、用語「治療養生法」は、1つまたはそれ以上のランダム共重合体を含む1つまたはそれ以上の組成物の投与の治療的、改善的または予防的形態(modality)を意味する。特定の治療養生法は、特定の疾患または障害の性質、その重篤性および患者の全体的症状に依存して変動し得るであろう期間にわたって続けられ得、かつ毎日1回から延長され得、またはより好ましくは36時間または48時間毎にまたはより長い時間毎に1回、または1ヶ月または数ヶ月毎に1回である。治療後、患者は、彼/彼女の症状の変化および障害または疾患状態の改善をモニタリングされる。オリゴヌクレオチドの用量は、患者が現在の用量レベルにあまり反応しない場合は増加され得、あるいは、障害または疾患状態の改善が観察された場合、または障害または疾患状態が除去された場合、または出発用量で望ましくない副作用が観察された場合には、低減され得る。
【0142】
1つの態様では、治療上有効量のランダム共重合体は、投与間に少なくとも36時間、またはより好ましくは48時間の間隔を含む治療養生法で、被験体に投与される。別の態様では、ランダム共重合体は、少なくとも54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間の間隔で、あるいは等価な1日量で、投与される。いくつかの態様では、剤は、1日毎に投与されるが、他の態様では、週に1回投与される。2つの共重合体が被験体に投与される場合、そのような共重合体は、同時に(at the same time)(例えば、同時に(simultaneously)、または実質的に同時に(例えば、連続的に))投与され得る。あるいはそれらの投与はずらされ(stagger)得る。例えば、48時間毎に投与される2つの共重合体は、同日に投与され得るか、または一方をある日に投与し、他方を次の日に投与する(以下同様)ことを交互の様式で行い得る。
【0143】
以下の実施例に示すように、より長い投与間隔での治療養生法(結果として、しばしば、共重合体の全曝露がより少なくなる)は、共重合体自身に対する抗体のより低い力価を誘発する一方、所望の保護効果を誘発する。このような中和抗体の低減は望ましい。なぜなら、中和抗体の低減は、ランダム共重合体組成物が中和されることなくその有効性を保持することを補助するであろうと考えられるからであり、このことは、アナフィラキシーショックの危険性を低減して疾患のより安全な治療を提供することに関連する。より長い間隔計画もまた、TH2応答への偏り(これはランダム共重合体療法のための作用様式であると考えられている)を強化するので望ましい。
【0144】
他の態様では、ランダム共重合体は、少なくとも1つの不規則な時間間隔を含む治療養生法で投与され、時間間隔のうち少なくとも1つは、少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間、あるいは等価な長さの日の長さである。
【0145】
1つの態様では、治療養生法の間、重合体は被験体に少なくとも3回、投与の間隔が少なくとも2回の間隔が存在するように投与される。これらの間隔はI1および12と示され得る。重合体が4回投与される場合、3回目および4回目の投与の間にさらなる間隔I3が存在するであろう。従って、所与の投与回数「n」についての間隔の数は「n-1」である。従って、1つの態様では、投与の間の少なくとも1つの時間間隔は、約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間より長い。別の態様では、時間間隔の総数n-1のうち、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%が、少なくとも約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間である。
【0146】
さらに別の態様では、投与間の平均時間間隔((I1+I2 +...+In-1)/n-1)は、少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間、あるいは少なくとも2週である。
【0147】
別の態様では、投薬養生法は、一連の2またはそれ以上の異なる間隔からなる。例えば、第1部の投薬養生法は、被験体に毎日、2日毎に、または3日毎に、例えば、約22 mgの共重合体/m2(被験体の体表面積)で投与され、ここで、被験体はヒトである。本発明のいくつかの態様では、投薬養生法は、被験体に、2日毎に、3日毎に、毎週、2週毎または毎月投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与の用量は、それぞれ約65 mg/m2および110 mg/mまでであり得る。ランダム共重合体を毎週投与することを含む投薬養生法については、用量は約500mg/m2までを含み、ランダム共重合体を2週毎または毎月投与することを含む投薬養生法については、1.5 g/m2までが投与され得る。第1部の投薬養生法は、30日まで、例えば、7、14、21または30日投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露(ステップダウン(step-down)投与)での毎週、14日毎または毎月の投与による引き続く第2部の投薬養生法が、必要に応じて、例えば、500 mg/m2体表面積で毎週、最大約1.5 g/m2体表面積まで、4週〜2年、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善された場合、用量は維持されるかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140 mg/m2体表面積に保持され得る。もし、ステップダウン投薬養生法の間に、疾患症状が再発した場合、効果が観察されるまで第1の投薬養生法を再開(resume)され得、そして第2の投薬養生法が進められ得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返され得る。
【0148】
より詳細には、本発明の1つの態様は、ランダム共重合体を用いて治療可能な疾患の治療である。本発明の1つの態様は、固相化学合成により合成されたモルインプット比がそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)のランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法であって、当該ランダム共重合体を、治療を必要とするヒト被験体に、毎日約22 mg/m2体表面積の用量を含む第1部の投薬養生法で投与することを含む、方法である。本発明のいくつかの態様では、投薬養生法は、被験体に毎日、2日毎に、3日毎に、毎週、2週毎または毎月投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与の用量は、それぞれ約65 mg/m2および110 mg/m2までであり得る。ランダム共重合体を毎週投与することを含む投薬養生法については、用量は約500 mg/m2までを含み、ランダム共重合体を2週毎または毎月投与することを含む投薬養生法については、1.5 g/m2までが投与され得る。第1部の投薬養生法は、30日まで、例えば、7、14、21または30日投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露での毎週、14日毎または毎月の投与(ステップダウン投与)を用いる引き続く第2部の投薬養生法が、必要に応じて、例えば、500 mg/m2体表面積で毎週、最大約1.5 g/m2体表面積まで、4週〜2年、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善された場合、用量は維持され得るかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140 mg/m2体表面積に保持され得る。もし、ステップダウン投薬養生法の間に、疾患症状が再発した場合、効果が観察されるまで第1の投薬養生法を再開され得、そして第2の投薬養生法が進められ得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返され得る。
【0149】
本発明の別の態様では、当該方法は、モルインプット比が約1.0:2.0:6.0:5.0であり、かつ固相化学合成により合成された、約52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)で治療可能な疾患を治療するためのものである。投薬養生法は、上記YFAKについて記載したものと同じである。
【0150】
本発明の他の態様は、固相化学合成により合成されたモルインプット比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)のランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法であって、当該ランダム共重合体を、治療を必要とするヒト被験体に、約22 mg/m2体表面積の用量で毎日、または上記のように、2日毎に、3日毎に、毎週、2週毎または毎月のような長い間隔で投与することを含む、方法である。本発明の別の態様は、当該方法は、モルインプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0であり、固相化学合成により合成された、52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)(当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法である。投薬養生法は、上記に記載したものと同様であり、必要に応じてステップダウン投与(sage)を含み得る。もし、ステップダウン投薬養生法の間に、疾患症状が再発した場合、効果が観察されるまで第1の投薬養生法を再開され得、そして第2の投薬養生法が進められ得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返され得る。
【0151】
本発明の他の態様は、モルインプット比がそれぞれ約1.0:1.0:XA:6.0(XAは5.0より大きくかつ15.0未満である)である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)を含むランダム共重合体を用いて治療可能な疾患の改善手段であって、当該疾患を改善するのに有効な用量を被験体に投与することを含む手段として具体化される。より詳細には、本発明の1つの態様は、アウトプット平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)のランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6の比を有する)を用いて治療可能な疾患の改善手段である。本発明の別の態様では、当該方法は、固相化学合成により合成された、モルインプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0であり、かつ、固相化学合成により合成された、52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)(当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法である。被験体は、約22 mgの共重合体/m2被験体体表面積の用量を含む投薬養生法に従って治療され、ここで、被験体はヒトである。本発明のいくつかの態様では、投薬養生法は、被験体に、2日毎に、3日毎に、毎週、2週毎または毎月投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与の用量は、それぞれ約65 mg/m2および110 mg/m2までであり得る。ランダム共重合体を毎週投与することを含む投薬養生法については、用量は約500 mg/m2までを含み、ランダム共重合体を2週毎または毎月投与することを含む投薬養生法については、1.5 g/m2までが投与され得る。第1部の投薬養生法は、30日まで、例えば、7、14、21または30日投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露での(ステップダウン投与)、毎週、14日毎または毎月の投与による引き続く第2部の投薬養生法が、必要に応じて、例えば、500 mg/m2体表面積で毎週、最大約1.5 g/m2体表面積まで、4週〜2年、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善された場合、用量は維持されるかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140 mg/m2体表面積に保持され得る。もし、ステップダウン投薬養生法の間に、疾患症状が再発した場合、効果が観察されるまで第1の投薬養生法を再開され得、そして第2の投薬養生法が進められ得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返され得る。
【0152】
本発明の態様は、モルインプット比がそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)を含むランダム共重合体を、疾患を改善するのに有効な用量で被験体に投与することにより、不要な免疫応答を改善する手段である。本発明の別の態様では、当該方法は、モルインプット比が約1.0:2.0:6.0:5.0であり、固相化学合成により合成された、約52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)を用いて治療可能な疾患を治療するためのものである。投薬養生法は、上記YFAKについて本明細書中に記載したものと同じである。両方のタイプのランダム共重合体について、例示の手段は、ヒト被験体に約22 mgのランダム共重合体/m2体表面積の1日用量を投与することによる。本発明のいくつかの態様では、投薬養生法は、被験体に、2日毎に、3日毎に、毎週、2週毎または毎月投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与の用量は、それぞれ約65 mg/m2および110 mg/m2までであり得る。ランダム共重合体を毎週投与することを含む投薬養生法については、用量は約500 mg/m2までを含み、ランダム共重合体を2週毎または毎月投与することを含む投薬養生法については、1.5 g/m2までが投与され得る。第1部の投薬養生法は、30日まで、例えば、7、14、21または30日投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露での(ステップダウン投与)、毎週、14日毎または毎月の投与による引き続く第2部の投薬養生法が、必要に応じて、例えば、500 mg/m2体表面積で毎週、最大約1.5 g/m2体表面積まで、4週〜2年、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善された場合、用量は維持され得るかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140 mg/m2体表面積に保持され得る。もし、ステップダウン投薬養生法の間に、疾患症状が再発した場合、効果が観察されるまで第1の投薬養生法を再開され得、そして第2の投薬養生法が進められ得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返され得る。
【0153】
本発明のさらに他の態様は、固相化学合成により合成された、モルインプット比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)のランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6のモルアウトプット比を有する)を用いて、当該疾患を改善するのに有効な用量で被験体に投与することにより、不要な免疫応答を改善する手段である。本発明の別の態様では、当該方法は、モルインプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0であり、かつ固相化学合成により合成された、52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)(当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法である。投薬養生法は、上記YFAKについて本明細書中に記載したものと同じである。両方のタイプのランダム共重合体について、当該方法は、ヒト被験体に約22mgランダム共重合体/m2体表面積の1日用量を投与することにより行われ得る。投薬養生法は、上記に記載したものと同じであり得るか、または被験体の要求に応じて調整され得る。あるいは、ランダム共重合体は、最大1日用量約80mgでヒト被験体に投与され得る。
【0154】
本発明の他の態様は、TH1表現型を有する不要な免疫応答を改善する方法であって、固相化学合成により合成された、アウトプット平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)のランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6の比を有する)を用いる方法である。本発明の別の態様では、当該方法は、モルインプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0であり、かつ固相化学合成により合成された、52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)(当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法である。両方のタイプのランダム共重合体について、投薬養生法は、決定され得、被験体の要求に応じて調整され得、かつ、上記に記載したものと同様であり得る。
【0155】
本発明のさらに他の態様は、固相化学合成により合成された、モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)のランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6の比を有する)を用いて、被験体において自己免疫反応を改善する手段である。本発明の別の態様では、当該方法は、固相化学合成により合成された、モルインプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0であり、かつ固相化学合成により合成された、52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)(当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法である。両方のタイプのランダム共重合体について、投薬養生法は、上記に記載したものと同様であり得、かつ被験体の要求に応じて調整され得る。
【0156】
当該方法および手段のいずれも、本願に記載された組成物および製剤を用いて実施され得る。
【0157】
本発明の他の態様では、本発明の方法のいずれも、ランダム共重合体を含む徐放製剤を用いて実施され得る。本発明のランダム共重合体を、徐放性処方(formula)を用いて投与する場合、共重合体への全曝露は、概してボーラス投与よりも少ない。例えば、第1部の投薬養生法が被験体に毎日、2日毎にまたは3日毎に、例えば、約22 mg共重合体/m2被験体体表面積で投与され、当該被験体はヒトである。本発明のいくつかの態様では、投薬養生法は、徐放処方を用い、被験体に、2日毎に、3日毎に、毎週、2週毎にまたは毎月投与することにより、重合体が間隔の間に放出される。2日毎にまたは3日毎に投与するための用量は、それぞれ約35 mg/m2および65 mg/m2までである。ランダム共重合体を毎週投与することを含む投薬養生法については、用量は約140 mg/m2までを含み、ランダム共重合体を2週毎にまたは毎月投与することを含む投薬養生法については、750 g/m2までが投与され得る。第1部の投薬養生法は、30日まで、例えば、7、14、21または30日投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露での(ステップダウン投与)、毎週、14日毎または毎月の投与による引き続く第2部の投薬養生法が、必要に応じて、例えば、140 mg/m2体表面積で毎週、最大約1.5 g/m2体表面積まで、4週〜2年、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善された場合、用量は維持され得るかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140 mg/m2体表面積に保持され得る。もし、ステップダウン投薬養生法の間に、疾患症状が再発した場合、効果が観察されるまで第1の投薬養生法を再開され得、そして第2の投薬養生法が進められ得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返され得る。
【0158】
本発明の他の態様は、固相化学合成により合成された、アウトプット平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)のランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6の比を有する)を用いて、多発性硬化症(MS)に罹患しているかまたはその症候を示す被験体を治療する手段である。本発明の別の態様では、当該方法は、モルインプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0であり、かつ固相化学合成により合成された、52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)(当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法である。当該共重合体は、多発性硬化症 (MS) に罹患しているかまたはその症候を示す被験体を治療するために、上記ランダム共重合体の最大用量500 mgのランダム共重合体として投与され得る。ランダム共重合体は徐放製剤で送達され得る。
【0159】
多発性硬化症に罹患した被験体を徐放製剤中で送達される500 mgの最大用量で治療する手段は、アウトプット平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0であり、かつ固相化学合成により合成された組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン-)を含むランダム共重合体(当該共重合体は、52個のアミノ酸長を有し、当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11-30は約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31-52は約1.0:1.2:20:6の比を有する)である。本発明の別の態様では、当該方法は、モルインプット比がそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0であり、かつ固相化学合成により合成された、52個のアミノ酸長の共重合体1(YEAK)(当該共重合体の配列の残基1-10は約1.0:2.0:5.5:5.0のモルアウトプット比を有し、残基11-30は約1.0:2.0:6.0:5.0のモルアウトプット比を有し、残基31-52は約1.0:2.0:6.5:5.0のモルアウトプット比を有する)を用いて治療可能な疾患を治療する方法である。あるいは、被験体は、徐放製剤で送達される、毎週最大用量500 mgのランダム共重合体を用いて治療され得る。
【0160】
上記記載の例示の態様のいずれかにおいて、各投与形態の容量は、好ましくは0.1 ml〜5 mlである。
【0161】
本明細書に記載の方法の1つの態様では、投与の経路は、経口、腹腔内、経皮、皮下、静脈内または筋肉内投与によるか、吸入によるか、局所、病変内、灌流による;リポソーム媒介送達による;局所、くも膜下、歯肉ポケット、経直腸、経膣、気管支内、経鼻、経粘膜、経腸、眼内または経耳送達によるか、あるいは当業者が容易に想到し得るような当該分野で公知の任意の他の方法であり得る。本発明の組成物の他の態様は、粒子形態保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤、または非経口、経肺、経鼻および経口投与を含む種々の投与経路のための透過促進剤を含む。投与は、全身的または局所的であり得る。好ましい態様では、ランダム共重合体は皮下投与される。
【0162】
本発明の方法の態様では、本発明の共重合体の投与は、徐放形態である。当該方法は、徐放経皮パッチを貼付すること、あるいは徐放カプセルまたはコーティングされたインプラント可能な医療デバイスをインプラントすることを含み、その結果、治療上有効な用量の本発明の共重合体が、規定された時間間隔で、当該方法の被験体に送達される。主題の発明の化合物および/または剤は、ランダム共重合体の長期にわたる制御放出を可能にするカプセルにより送達され得る。制御または持続放出組成物には、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤が挙げられる。本発明には、重合体(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングされた粒子組成物もまた包含される。特定の態様では 共重合体の源は、IDDMの治療のために、自己免疫攻撃の領域(例えば、膵臓付近)の中または近傍に定位に提供される。
【0163】
経口投与のために、医薬調製物は、液体形態、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液であり得るか、または使用の前に水または他の適切なビヒクルで再構成するための薬物製品として提供される。そのような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用油脂) ; 乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア) ; 非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステルまたは分溜植物油) ; および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)のような医薬的に許容され得る添加剤を用いて、通常の手段により調製され得る。医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、プレゼラチン化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、馬鈴薯澱粉または澱粉グリコレートナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの医薬的に許容され得る賦形剤を用いて通常の手段により調製される錠剤またはカプセルの形態をとり得る。錠剤は、当該分野で周知の方法によりコーティングされ得る。
【0164】
共重合体1または他のランダム共重合体が経口で導入される場合、これは他の食物形態と混合されて、固体、半固体、懸濁液またはエマルジョンの形態で消費され得る;および、これは、医薬上許容され得る担体(水、懸濁剤、乳化剤、風味増強剤などが挙げられる)と混合され得る。1つの態様では、経口組成物は、腸溶性コーティングされている。腸溶性コーティングの使用は、当該分野で周知である。例えば、 Lehman (1971) は、オイドラギット Sおよびオイドラギット Lのような腸溶性コーティングを教示する。The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第2版は、オイドラギット Sおよびオイドラギット Lの用途も教示する。本明細書において用いられ得る1つのオイドラギットはL30D55である。経口投与用の製剤は、適切に処方されて、活性化合物の制御放出を与え得る。
【0165】
経頬投与のために、組成物は、通常の様式で処方される錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。組成物は、例えば、ボーラス投与または連続的灌流による非経口投与用に処方され得る。注射用の製剤は、単位投与形態、例えば、アンプル中または複数回投与容器中に、添加された保存剤と共に存在し得る。組成物は、懸濁液、溶液、あるいは油性または水性ビヒクル中のエマルジョンのような形態をとり得、かつ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含み得る。あるいは、活性成分は、使用の前に適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質を含まない水で構成されるための粉末形態であり得る。
【0166】
組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような 通常の坐剤基剤を含む坐剤または保留浣腸のような腸組成物に処方され得る。吸入による投与のために、本発明の使用のための組成物は、圧縮パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体の使用により、簡便に送達される。圧縮エアロゾルの場合、投与単位は、計られた量を送達するためのバルブを提供することにより与えられ得る。インヘラーまたはインサフレーターにおける使用のための、例えばゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物および適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたは澱粉)の粉末混合物を含んで処方され得る。
【0167】
好ましい態様では、共重合体1または他のランダム共重合体を含む組成物は、ヒトへの静脈投与に適した医薬組成物としての常套的手順に従って処方される。代表的には、静脈内投与用の組成物は、無菌の等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤、または投与部位の痛みを改善するためのリグノカインのような局所麻酔剤を含み得る。一般に、成分は、別々にまたは共に混合物としてのいずれかで供給される。組成物が灌流により投与される場合、無菌の医薬グレードの水または生理食塩水を含む灌流ボトルを用いて調合することができ、投与の間隔は、24時間より長いか、32時間より長いか、あるいはより好ましくは、36時間より長いまたは48時間より長い間隔である。組成物が用量により投与される場合、投与前に成分が混合され得るように、投与用の無菌の水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0168】
特定の態様では、本明細書に記載の方法は、活性成分の徐放に適切な、経皮パッチ、徐放製剤でコーティングされたインプラント可能な医療デバイスコーティング、あるいはインプラント可能なまたは注射可能な医薬製剤のような徐放担体により、自己免疫疾患の連続的治療を可能にする。このような態様では、投与間の間隔は、好ましくは24時間より長いか、32時間より長いか、あるいは、より好ましくは36時間より長いかまたは48時間より長い。例えば、共重合体を2日の期間にわたって放出するインプラント可能なデバイスまたは徐放製剤は、4日毎に患者にインプラントすることができ、その結果、共重合体が被験体に投与されない間隔は2日となる。関連する態様では、そのような投与を行わない間隔は、少なくとも24+x時間(xは任意の正の整数を示す)である。
【0169】
別の態様では、ランダム共重合体は、治療を必要とする被験体に少なくとも24時間の時間間隔で投与された場合に治療効果を有するように処方される。特定の態様では、ランダム共重合体は、長期にわたる治療効果を有するように処方され、その結果、投与の間の時間間隔が少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間で被験体に投与される場合に、疾患の治療における治療効果が観察される。
【0170】
本発明の他の態様は、例えば、自己免疫疾患を発症するリスクのある被験体を、ランダム共重合体を投与することにより予防的に治療する方法である。リスクのある被験体は、例えば、自己免疫疾患への遺伝的感受性を、当該自己免疫疾患と関連するHLAの対立遺伝子を試験することによって測定することにより、および/または家族歴に基づき、あるいは当該自己免疫疾患と相関する他の遺伝的マーカーにより、同定される。そのような予防的治療は、治療すべき自己免疫疾患に関連するHLA分子に結合する第2の共重合体をさらに含み得る。第2のHLA分子は、HLA-DQまたはHLA-DR分子であり得る。好ましくは、予防的に治療すべき自己免疫疾患は、IDDMまたはセリアック病である。
【0171】
本明細書に記載の方法の他の態様では、さらなる治療上活性な剤が被験体に投与される。1つの態様では、組成物は、ランダム重合体を含む組成物とは別の組成物として被験体に投与されるさらなる治療剤を含む。例えば、被験体は、ランダム共重合体を含む組成物を皮下投与される一方で、他の治療剤を含む組成物を経口投与され得る。さらなる治療上活性な剤は、ランダム共重合体と同様の疾患、関連疾患を治療し得るか、または共重合体の投与による望ましくない副作用を治療する(例えば、皮内投与部位の腫脹を低減する)ことを意図され得る。
【0172】
被験体に投与され得るさらなる治療上活性な剤には、コパキソン(商標)のような疾患に関連する第2のHLA分子に結合する共重合体;抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、非ステロイド抗炎症剤、代謝拮抗物質、サイトカイン、または可溶性サイトカイン受容体が挙げられる。第2のHLA分子は、HLA-DQ分子またはHLA-DR分子であり得る。酵素阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤またはシクロオキシゲナーゼ 阻害剤であり得る。さらなる剤が医薬組成物の一部として投与され得るか、または併用的に投与され得るか、またはさらなる剤の生理学的効果が本発明の共重合体の生理学的効果と重複する期間内に投与され得る。より詳細には、さらなる剤は、併用的に投与され得るか、あるいは共重合体の投与の1週、数日、24時間、8時間前または直前に投与され得る。あるいは、さらなる剤は、共重合体の投与の1週、数日、24時間、8時間前または直後に投与され得る。
【0173】
ランダム共重合体の投与の結果としての、多発性硬化症(MS)に罹患している被験体の症候の改善は、MSのエピソードの再発頻度の減少により、症候の重篤性の減少により、および投与の開始後の一定の期間にわたる再発エピソードの除去により認められ得る。治療上有効用量は、治療していない被験体に対して、好ましくは再発の症候および頻度を、少なくとも約20%、例えば、少なくとも約40%、少なくとも約60%、および少なくとも約80%減少するか、あるいは1つまたはそれ以上の症候または自己免疫疾患の再発を約100%除去する。期間は少なくとも約1か月、少なくとも約6か月、または少なくとも約1年であることができる。
【0174】
関節炎、または関節の炎症を生じる任意の他の自己免疫障害に罹患している被験体の症候の改善は、1つまたはそれ以上の関節の浮腫の減少により、1つまたはそれ以上の関節の炎症の減少により、または1つまたはそれ以上の関節の可動性の増加により、認められ得る。治療上有効用量は、好ましくは関節炎および浮腫を減少し、かつ、可動性を、治療していない被験体に対して、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、およびなおさらにより好ましくは少なくとも約80%増加させる。
【0175】
本願のいずれかの箇所で参照した特許、特許出願、特許公開公報または科学論文の内容は、その全体が本明細書中に援用される。
【0176】
本発明の実施は、適切でありかつ他に示されていない限り、当該分野の知識の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、ウイルス学、組み替えDNAおよび免疫学の通常の技術を用いるであろう。そのような技術は、以下の文献に記載されている。例えば、 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版 Sambrook および Russell編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 2001); 学術論文 Method In Enzymology (Academic Press, Inc., N. Y.); Using Antibody, 第2版 Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Press, New York, 1999; Current Protocols in Cell Biology Bonifacino, Dasso, Lippincott-Schwartz, Harford, およびYamada編; John Wiley and Sons, Inc., New York, 1999; ならびに PCR Protocols, Bartlettら編, Humana Press, 2003を参照されたい。
【実施例】
【0177】
VII. 実施例
実施例1. ランダム共重合体および疾患関連抗原ペプチドに対する抗体の産生
PLP(139-151)ペプチドは、CD4+TH1細胞によって認識される主要な免疫原性決定因子であり、これは次いで、SJLマウスにおけるEAE発症をもたらす。百日咳毒素とともに注射されると、PLP(139-151)ペプチドは、SJLマウスにおいてMS様症候を引き起こす。百日咳毒素の非存在下では、注射された動物は、穏やかかつ一過性の疾患を発症するにすぎない。ランダム共重合体組成物が、PLP投与の影響から動物を保護する能力は、動物をPLP(139-151)ペプチドに曝露した後の毎日および毎週の投与の過程で評価した。抗体イソタイプもまた試験した。CD4T細胞は、それらのサイトカイン産生のパターンに応じて、少なくとも2つの異なるサブセットに分類することができる。TH1細胞は、IL-2およびIFN-γ、活性化マクロファージを優先的に産生し、マウスにおけるIgサブクラスIgG2aおよびIgG3ならびにヒトのIgG1およびIgG3の産生を刺激する。対照的に、TH2細胞の重要なサイトカインは、IL-4、IL-5およびIL-13であり、これらは強力なB細胞補助を提供し、かつ、マウスではIgEおよびIgG1に対して、またはヒトではIgE、IgG2およびIgG4に対してアイソタイプスイッチング(switching)を誘発する。従って、マウスIgG1およびIgG2bは、概してTH2応答と関連し、そして、TH1免疫性のマーカーであるマウスIgG2aを測定した。
【0178】
マウス(SJL、雌性)を、第1日に、完全フロイントアジュバント中の100μgのPLP(139-151)ペプチドで免疫化した。同日に、動物に200 ngの百日咳毒素を静脈内投与した。第3日に、同じIV投与を繰り返した。コパキソン(商標)(YEAK)またはCo-14(YFAK)7.5mg/kgを用いた毎日または毎週の処置を、第6日に開始し、第36日まで投与を続けた。第37日に、個体の血清を回収し、PLP(139-151)ペプチド、Co-14(YFAK)およびコパキソン(商標)に対する抗体応答を、抗マウス全Ig、IgG1、IgG2aまたはIgG2bを第2の抗体として用いる標準ELISAを用いて測定した。
【0179】
実験の過程の間、疾患の重篤性は、0(疾患なし)〜5(瀕死)の間の標準的な採点システムを用いて測定し、マウスの体重を、疾患状態の別の測定として記録した。動物の死亡率を毎日記録した。
【0180】
コパキソン(商標)の毎日の投与は、マンニトールのみの投与に比べて、疾患の重篤性を低減するのに効果的であったが(図1)、コパキソン(商標)の毎日の投与によって処置されたマウスは、大部分が処置の約3週間後すぐに死んだ(図2)。図3に示すように、コパキソン(商標)の毎日の投与は、生存している注射済みマウスにおいて多量の抗体を誘発した。一方、コパキソン(商標)を毎週投与し、かつ、Co-14(YFAK)を毎日および毎週投与した結果、抗体力価がかなり低減された。免疫応答は、主にIgGI+IgG2b(すなわち、主にTH2)応答であって、ずっと低いIgG2a(すなわち、TH1)応答が観察された。コパキソン(商標)を毎日投与した群の少数の生存マウスは、化合物に対して大きなIgGlおよびIgG2b応答(図4および5)を示したが、このことは、コパキソン(商標)を毎日投与したマウスの死因はおそらくアナフィラキシーであることを示す。一方、ずっと低い抗体力価を示したコパキソン(商標)の毎週の投与およびCo-14(YFAK)の毎日および毎週の投与により、アナフィラキシーショックが防止され、薬効が高められた。抗体力価の他の例を図6に示すが、ここで、コパキソン(商標)およびCo-14(YFAK)は、週に1回または週に3回投与された。コパキソン(商標)は、週に3回投与された場合、それに対して多量の抗体の産生を誘発したが、一方、コパキソン(商標)およびCo-14(YFAK)の投与は、週に1回または週に3回の投与のいずれの場合も、それぞれの共重合体に対してそれほど多くの量の抗体を誘発しなかった。
【0181】
コパキソン(商標)およびCo-14(YFAK)の両方においてPLP(139-151)ペプチドの抗体力価を測定した場合、投与間隔にかかわらず、ビヒクルのみの投与と比較して、PLP(139-151)ペプチドに対するIgG1形成の量の同様の少ない増加が誘発された(図7)。PLP(139-151)に対するIgG2bの力価もまた、あまり影響を受けなかった(図8)。これらの結果は、コパキソン(商標)またはCo-14(YFAK)の保護効果が、PLP(139-151)ペプチドに対する抗体量の調節により発揮されるのではないことを示す。
【0182】
実施例2. ランダム共重合体に対するT細胞応答
5μgのコパキソン(商標)またはCo-14(YFAK)を週3回または毎週ベースで、治療の第22日まで注射したマウスのTH1およびTH2プロファイル。第2、8、9、15、16、22、23、29日に、脾臓を回収し、脾臓細胞を単離した。1ウェル当たり400,000個の脾臓細胞を、種々の濃度(0.8、4または20 μg/ml)のCo-14(YFAK)で、3日間再刺激した。細胞培養の第3日に、細胞を、IFN-γ(インターフェロンγ)またはIL-13(インターロイキン13)のいずれかでコーティングしたELISPOT(酵素結合免疫スポットアッセイ)プレートに移した。T細胞応答を、IFNγ産生(TH1サイトカイン)およびIL-13産生(TH2サイトカイン)を測定することにより試験する。トリチウム化チミジン取り込みにより示される細胞の増殖を測定することにより、T細胞刺激の程度もまた試験する。
【0183】
投与の第1週に、応答の突発が観察され、次いで、低減されたが持続型である応答が観察される。図9に示すように、応答はTH2に偏っており、コパキソン(商標)またはCo-14(YFAK)のいずれかで治療された細胞において常にIFN-γよりも強いIL-13産生を伴った。TH2への偏りは、図10で明らかなように、23のサイトカインおよびケモカインの量により、さらに確認される。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】図1は、EAEの疾患進行に対する共重合体の投与の効果を示す。
【図2】図2は、EAEを有するマウスの、ランダム共重合体を投与された場合の生存率を示す。
【図3】図3は、1日用量または1週用量で投与された共重合体に対するIgG抗体産生を示す。
【図4】図4は、1日用量または1週用量で投与された共重合体に対するIgG1抗体産生を示す。
【図5】図5は、1日用量または1週用量で投与された共重合体に対するIgG2b抗体産生を示す。
【図6】図6は、治療の時間経過の間の共重合体に対する抗体力価の変化を示す。
【図7】図7は、ランダム共重合体を投与されたマウスにおけるPLPペプチドに対するIgG1抗体産生を示す。
【図8】図8は、ランダム共重合体を投与されたマウスにおけるPLPペプチドに対するIgG2b抗体産生を示す。
【図9】図9は、ランダム共重合体を投与されたマウスにおける、IFNγに対するIL-13の比を示す。
【図10】図10は、ランダム共重合体を投与されたマウスにおける、TH1関連サイトカインと比較したTH2関連サイトカインの誘発の偏りを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダム共重合体で処置可能な疾患の処置方法であって、ランダム共重合体を疾患の改善に有効な量の投薬養生法で、それを必要とする被験体に投与することを含み、ランダム共重合体が、固相化学合成により合成されるYFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)をインプットモル比がそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0で含み、52個のアミノ酸長を有する、処置方法。
【請求項2】
有効量が被験体に2回以上の用量で送達され、各投与が24時間よりも長い時間間隔で隔てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
哺乳動物がヒトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
毎日投与したとき有効量が効果的な量である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
毎日投与した場合に有効量が効果的な量である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
毎日投与したとき有効量が効果的であると知られている量である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
有効量が10mg〜30mgからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
有効量が15mg〜25mgからなる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
有効量が約20mgである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
有効量が20mg未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
被験体がランダム共重合体で処置可能な疾患に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
疾患がTH1細胞により媒介される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
被験体が少なくとも1つの自己免疫疾患に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
疾患が不要な免疫応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
疾患が、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン・バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫および結腸炎から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
疾患がHVGDまたはGVHDである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
投薬養生法が静脈内、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内もしくは皮内、または経口投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
投薬養生法が皮下投与を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
投薬養生法が、ランダム共重合体を継続的に送達するように設計された装置からのランダム共重合体の投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
装置が経皮パッチまたはポンプである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
少なくとも3日間にわたってランダム共重合体を投与する徐放製剤を用いることにより、被験体に前記有効量が送達され、毎日送達される場合に有効量が効果的な量である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
被験体にさらなる治療活性剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
さらなる薬剤が1つ以上のランダム共重合体である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
薬剤が疾患の処置に有用である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
薬剤が抗炎症薬である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
疾患が自己免疫疾患である、請求項25記載の方法。
【請求項30】
各投与間の時間間隔が少なくとも36時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
各投与間の時間間隔が少なくとも48時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
各投与間の時間間隔が少なくとも72時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
各投与間の時間間隔が少なくとも96時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
各投与間の時間間隔が少なくとも120時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
各投与間の時間間隔が少なくとも144時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
各投与間の時間間隔が少なくとも7日である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
各投与間の時間間隔が36時間〜14日である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
有効量が3回以上の用量で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが少なくとも36時間である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが少なくとも48時間である、請求項38記載の方法。
【請求項41】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが少なくとも72時間である、請求項38記載の方法。
【請求項42】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが少なくとも96時間である、請求項38記載の方法。
【請求項43】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが少なくとも120時間である、請求項38記載の方法。
【請求項44】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが少なくとも144時間である、請求項38記載の方法。
【請求項45】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが少なくとも7日である、請求項38記載の方法。
【請求項46】
投与間の時間間隔の少なくとも1つが36時間〜14日である、請求項38記載の方法。
【請求項47】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が少なくとも36時間である、請求項38記載の方法。
【請求項48】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が少なくとも48時間である、請求項38記載の方法。
【請求項49】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が少なくとも72時間である、請求項38記載の方法。
【請求項50】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が少なくとも96時間である、請求項38記載の方法。
【請求項51】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が少なくとも120時間である、請求項38記載の方法。
【請求項52】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が少なくとも144時間である、請求項38記載の方法。
【請求項53】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が少なくとも7日である、請求項38記載の方法。
【請求項54】
投与間の時間間隔の少なくとも50%が36時間〜14日である、請求項38記載の方法。
【請求項55】
投与間の平均時間間隔が少なくとも36時間である、請求項38記載の方法。
【請求項56】
投与間の平均時間間隔が少なくとも48時間である、請求項38記載の方法。
【請求項57】
投与間の平均時間間隔が少なくとも72時間である、請求項38記載の方法。
【請求項58】
投与間の平均時間間隔が少なくとも96時間である、請求項38記載の方法。
【請求項59】
投与間の平均時間間隔が少なくとも120時間である、請求項38記載の方法。
【請求項60】
投与間の平均時間間隔が少なくとも144時間である、請求項38記載の方法。
【請求項61】
投与間の平均時間間隔が少なくとも7日時間(days hours)である、請求項38記載の方法。
【請求項62】
投与間の平均時間間隔が36時間〜14日である、請求項38記載の方法。
【請求項63】
投薬養生法が2つ以上の部を含み、投薬養生法の第一部は第一の時間間隔でランダム共重合体を投与することを含み、投薬養生法の第二部は第二の時間間隔でランダム共重合体を投与することを含み、第一の時間間隔は第二の時間間隔よりも短い、請求項38記載の方法。
【請求項64】
第一の時間間隔が少なくとも24時間である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
第一の時間間隔が24、48または72時間である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
第二の時間間隔が少なくとも7日である、請求項63、64または65記載の方法。
【請求項67】
第二の時間間隔が7日、14日、21日または30日である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
投薬養生法が必要に応じて繰り返される、請求項63記載の方法。
【請求項69】
投薬養生法の第一部が7、14、21または30日までの間続く、請求項63記載の方法。
【請求項70】
投薬養生法の第二部が4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週までの間続く、請求項63記載の方法。
【請求項71】
ランダム共重合体の有効量が0.02mg/用量〜2000mg/用量である、請求項1記載の方法。
【請求項72】
ランダム共重合体の有効量が2mg/用量〜200mg/用量である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
投薬養生法が、毎日被験体の体表面積1m2あたり約22mgの用量を含む、請求項1記載の方法。
【請求項74】
投薬養生法が、2日毎に被験体の体表面積1m2あたり約65mgの用量を含む、請求項1記載の方法。
【請求項75】
投薬養生法が、3日毎に被験体の体表面積1m2あたり約110mgの用量を含む、請求項1記載の方法。
【請求項76】
投薬養生法が、毎週被験体の体表面積1m2あたり約500mgの最大用量を含む、請求項1記載の方法。
【請求項77】
投薬養生法が、2週毎に被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量を含む、請求項1記載の方法。
【請求項78】
投薬養生法が、毎月被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量を含む、請求項1記載の方法。
【請求項79】
毎週被験体の体表面積の1m2あたり約500mg最大用量の投与をさらに含む、請求項73、74または75記載の方法。
【請求項80】
2週毎に被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量の投与をさらに含む、請求項73、74または75記載の方法。
【請求項81】
毎月被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量の投与をさらに含む、請求項73、74または75記載の方法。
【請求項82】
ランダム共重合体で処置可能な疾患の処置方法であって、それを必要とする被験体に投薬養生法で投与することを含み、ランダム共重合体が、固相化学合成により合成されるアウトプット平均モル比でそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0であるYFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)を含み、52個のアミノ酸長を有し、共重合体配列の残基1-10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11-30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31-52が約1.0:1.2:20:6の比を有する、処置方法。
【請求項83】
投薬養生法が、毎日被験体の体表面積1m2あたり約22mgの用量を含む、請求項87記載の方法。
【請求項83】
投薬養生法が、毎日被験体の体表面積1m2あたり約22mgの用量を含む、請求項82記載の方法。
【請求項84】
投薬養生法が、2日毎に被験体の体表面積1m2あたり約22mgの用量を含む、請求項82記載の方法。
【請求項85】
投薬養生法が、3日毎に被験体の体表面積1m2あたり約22mgの用量を含む、請求項82記載の方法。
【請求項86】
投薬養生法が、毎週被験体の体表面積1m2あたり約500mgの最大用量を含む、請求項82記載の方法。
【請求項87】
投薬養生法が、2週毎に被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量を含む、請求項82記載の方法。
【請求項88】
投薬養生法が、毎月被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量を含む、請求項82記載の方法。
【請求項89】
毎週被験体の体表面積1m2あたり約500mgの最大用量の投与をさらに含む、請求項83、84または85記載の方法。
【請求項90】
2週毎に被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量の投与をさらに含む、請求項83、84または85記載の方法。
【請求項91】
毎月被験体の体表面積1m2あたり約1500mgの最大用量の投与をさらに含む、請求項83、84または85記載の方法。
【請求項92】
固相化学合成によって合成され、アウトプット平均モル比でそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)のランダム共重合体であって、52個のアミノ酸長を有し、共重合体配列の残基1-10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有するランダム共重合体を投与することを含む、不要な免疫応答を改善する方法。
【請求項93】
被験体がヒトであり、ランダム共重合体を被験体の体表面積1m2あたり約22mgの日用量で投与する、請求項92記載の方法。
【請求項94】
被験体がヒトであり、ランダム共重合体を約80mgの最大日用量で投与する、請求項92記載の方法。
【請求項95】
不要な免疫応答がTH1表現型を有する、請求項92記載の方法。
【請求項96】
固相化学合成によって合成され、アウトプット平均モル比でそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)のランダム共重合体であって、52個のアミノ酸長を有し、共重合体配列の残基1-10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有するランダム共重合体を投与することを含む、被験体の自己免疫応答を改善する方法。
【請求項97】
固相化学合成によって合成され、アウトプット平均モル比でそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)のランダム共重合体であって、52個のアミノ酸長を有し、残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、共重合体配列の残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有するランダム共重合体を投与することを含む、それを必要とする被験体における多発性硬化症の処置方法。
【請求項98】
ランダム共重合体を500mgの最大用量で投与する、請求項97記載の方法。
【請求項99】
ランダム共重合体を持続放出配合物で送達する、請求項98記載の方法。
【請求項100】
ランダム共重合体を500mgの最大週用量で投与する、請求項99記載の方法。
【請求項101】
組成YFAK (L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)をインプットモル比がそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0で含むランダム共重合体の有効量を、それを必要とする被験体に投与することによる、不要な免疫応答の改善方法。
【請求項102】
被験体がヒトであり、ランダム共重合体が、被験体の体表面積1m2あたり約22mgの日用量で投与される、請求項101記載の方法。
【請求項103】
被験体がヒトであり、ランダム共重合体が、被験体の体表面積1m2あたり約500mgの週用量で投与される、請求項101記載の方法。
【請求項104】
被験体がヒトであり、ランダム共重合体が、500mgの最大用量で4日より長い間隔で投与される、請求項101記載の方法。
【請求項105】
ランダム共重合体で処置可能な疾患の処置方法であって、インプットモル比でそれぞれ約1.0:1.0:>5.0<15:6.0のYFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)を含む組成物を、被験体に前記疾患の改善に有効な用量で投与することにより投与することを含む、処置方法。
【請求項106】
ランダム共重合体YFAKおよび薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物を含む予め定量した注射用バイアルを含むキット。
【請求項107】
自己免疫疾患が、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン‐バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫 および結腸炎からなる群より選択される、請求項106記載のキット。
【請求項108】
疾患が自己免疫疾患である、請求項106記載のキット。
【請求項109】
疾患が多発性硬化症である、請求項106記載のキット。
【請求項110】
多発性硬化症が再発寛解型多発性硬化症である、請求項109記載のキット。
【請求項111】
疾患がTH1細胞によって媒介される、請求項106記載のキット。
【請求項112】
請求項106〜111いずれか記載のキットを医療サービス提供業者に、疾患または障害の処置において該キットを使用することの有益性をマーケティングすることを含む、製薬ビジネスを行なうための方法。
【請求項113】
(a) 請求項106〜111いずれか記載のキットを製造すること;および
(b) 医療サービス提供業者に、疾患または障害の処置において該キットを使用することの有益性をマーケティングすること
を含む、製薬ビジネスを行なうための方法。
【請求項114】
ランダム共重合体を投与することにより処置可能な疾患の処置方法であって、それを必要とする被験体に投薬養生法で投与することを含み、該ランダム共重合体が、固相化学によって合成され、アウトプット平均モル比でそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0であるYFAK (L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)を含み、52個のアミノ酸長を有し、残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有し、該投薬養生法は、該ランダム共重合体に対する抗体の形成を抑制し、被験体においてランダム共重合体に対する末梢性トレランスを誘導するものである、処置方法。
【請求項115】
被験体において前記ランダム共重合体に対する末梢性トレランスを誘導する、請求項114記載の方法。
【請求項116】
被験体において前記ランダム共重合体に対する中枢性トレランスを誘導する、請求項114記載の方法。
【請求項117】
微粒子またはエマルジョンの形態のランダム共重合体を含む医薬組成物。
【請求項118】
ランダム共重合体が、 (inn)水相、油、および乳化剤であり、該水相が油中水エマルジョンを形成する、請求項117記載の医薬組成物。
【請求項119】
ランダム共重合体がミョウバン中に懸濁されている、請求項117記載の医薬組成物。
【請求項120】
油が鉱物油であり、乳化剤がモノラウリル酸ソルビトールである、請求項118記載の医薬組成物。
【請求項121】
ランダム共重合体が、固相化学によって合成されるYFAK(L−チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リシン)であってインプットモル比がそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0であり、52個のアミノ酸長を有する、請求項117、118、119、または120記載の医薬組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−536279(P2007−536279A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511722(P2007−511722)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/016344
【国際公開番号】WO2005/112972
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506297762)ペプチミューン,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】