説明

ランプ制御装置

【課題】ランプが照射することによる視認性の向上とランプに関する省エネルギとを両立させることができるランプ制御装置を提供する。
【解決手段】制御部10は、照度センサ32の検出照度に基づいて、車両3近傍の明るさを検出し、車両3前方を撮像した撮像画像に基づいて、車両3遠方の明るさを検出する。そして、制御部10は、車両3近傍が明るく車両3遠方が暗い場合に、前照灯21,22の明るさが明るくなるよう、駆動回路13,14を介して半導体リレー11を連続的にオンにすることによって、前照灯21,22を連続的に点灯させ、車両3近傍及び車両3遠方が共に明るい場合、車両3近傍及び車両3遠方が共に暗い場合、並びに車両3近傍が暗く車両3遠方が明るい場合に、前照灯21,22の明るさが暗くなるよう、駆動回路13,14を介して半導体リレー11を断続的にオンにすることによって、前照灯21,22を断続的に点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外の明るさに応じてランプの明るさを制御するランプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンライトセンサを用いて車両近傍の明るさを検出し、検出結果に応じて前照灯(ヘッドランプ又はヘッドライト)の明るさを制御するランプ制御装置が提案されている(特許文献1参照)。このようなランプ制御装置においては、車両近傍が明るいときには前照灯が暗く点灯され、車両近傍が暗いときには前照灯が明るく点灯される。
【0003】
車両周辺が全体的に暗いときに前照灯で車両前方を明るく照射すると、車両前方の視認性を向上させることができる。一方、車両周辺が全体的に明るいときに前照灯で車両前方を暗く照射すると、車両前方の視認性を犠牲にすることなく、省エネルギに寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−311789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば車両近傍は明るいが車両前方は暗い場合、車両近傍の明るさに応じて前照灯を暗く点灯すると、車両前方の視認性を向上させることができない。
また、車両近傍は暗いが車両前方は明るい場合、車両近傍の明るさに応じて前照灯を明るく点灯すると、車両前方を無駄に明るく照射してしまうため、省エネルギに寄与することができない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、車両近傍及び遠方夫々の明るさに応じてランプの明るさを制御する構成とすることにより、視認性の向上と省エネルギとを両立させることができるランプ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係るランプ制御装置は、車両の外部の明るさに応じてランプの明るさを制御するランプ制御装置において、前記車両に近い近傍範囲の明るさを検出する近傍検出部と、前記車両から遠い遠方範囲の明るさを検出する遠方検出部と、前記近傍検出部及び前記遠方検出部夫々の検出結果に基づいて、前記ランプの明るさを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係るランプ制御装置は、前記ランプは前照灯であり、前記遠方検出部は、前記ランプが照射する照射範囲を含む前記車両の前方を撮像した撮像画像を受け付ける手段と、受け付けた撮像画像の前記照射範囲に対応する領域の内部に位置している画素及び前記領域の外部に位置している画素夫々の輝度に基づいて、前記遠方範囲の明るさを検出する手段とを有することを特徴とする。
【0009】
第3発明に係るランプ制御装置は、前記遠方検出部は、前記内部に位置している複数個の画素夫々の輝度の代表値と前記外部に位置している複数個の画素夫々の輝度の代表値とに基づいて、前記遠方範囲の明るさを検出するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係るランプ制御装置は、前記制御部は、前記近傍検出部の検出結果に基づいて、前記近傍範囲の明暗を判定する近傍判定手段と、前記遠方検出部の検出結果に基づいて、前記遠方範囲の明暗を判定する遠方判定手段と、前記近傍判定手段及び前記遠方判定手段夫々の判定結果の内、前記近傍判定手段が明と判定し、前記遠方判定手段が暗と判定した場合の前記ランプの明るさが、他の場合の前記ランプの明るさよりも明るくなるよう調整する調整手段とを有することを特徴とする。
【0011】
第1発明にあっては、ランプ制御装置は、近傍検出部、遠方検出部、及び制御部を備える。
近傍検出部は車両に近い近傍範囲の明るさを検出し、遠方検出部は車両から遠い遠方範囲の明るさを検出する。そして、制御部は、近傍検出部の検出結果と遠方検出部の検出結果とに基づいて、ランプの明るさを制御する。
つまり、近傍範囲の明るさ及び遠方範囲の明るさの両方に応じて、ランプの明るさが制御される。
この結果、従来のように車両近傍の明るさに応じてランプの明るさが制御される場合に比べて、ランプの明るさが緻密に制御される。
【0012】
第2発明にあっては、ランプは前照灯である。前照灯は、車両の前方、即ち、車両の正面側の遠方範囲の少なくとも一部を照射する。
遠方検出部は、車両の前方を撮像した撮像画像を受け付ける。受け付けた撮像画像には、前照灯が照射する照射範囲に対応する領域(以下、照射領域という)が含まれている。
そこで、遠方検出部は、照射領域の内部に位置している画素(以下、領域内画素という)の輝度と、照射領域の外部に位置している画素(以下、領域外画素という)の輝度とに基づいて、遠方範囲の明るさを検出する。
【0013】
近傍範囲の明るさは、例えば車両に搭載された照度センサ又はコンライトセンサ等を用いて容易に検出することができる。しかしながら、遠方範囲の明るさを、車両に搭載された照度センサ又はコンライトセンサ等を用いて検出することは困難である。
【0014】
ところで、照射範囲の内部は、照射範囲の外部よりも明るい。従って、領域内画素の輝度は、領域外画素の輝度より高い。ただし、車両の前方が明るい場合、領域内画素と領域外画素との輝度差は比較的小さく、車両の前方が暗い場合は比較的大きい。また、車両の前方が明るい場合、領域内画素と領域外画素との輝度比は比較的低く、車両の前方が暗い場合は比較的高い。換言すれば、照射領域の内部と照射領域の外部とのコントラストが低ければ車両の前方は明るく、コントラストが高ければ車両の前方は暗い。
【0015】
故に、例えば車両又はランプ制御装置が、車両の前方を撮像するカメラを備えるか、又は、撮像画像を外部から受信する等すれば、領域内画素の輝度と領域外画素の輝度とに基づいて、遠方範囲の明るさを容易に検出することができる。
【0016】
第3発明にあっては、遠方検出部は、複数個の領域内画素夫々の輝度の代表値と、複数個の領域外画素夫々の輝度の代表値とに基づいて、遠方範囲の明るさを検出する。
通常、照射範囲の内部(又は照射範囲の外部)の明るさは一様ではない。このため、照射範囲の内部(又は照射範囲の外部)の全体的な明るさを示すものとして、複数個の領域内画素(又は領域外画素)夫々の輝度の代表値を求める。そして、求めた代表値に基づいて、遠方範囲の明るさを検出する。以上の結果、遠方範囲の全体的な明るさを容易に検出することができる。
【0017】
第4発明にあっては、制御部は、近傍判定手段、遠方判定手段、及び調整手段を有する。
近傍判定手段は、近傍検出部の検出結果に基づいて、近傍範囲が明るいか暗いかを判定する。
遠方判定手段は、遠方検出部の検出結果に基づいて、遠方範囲が明るいか暗いかを判定する。
近傍範囲が明るい場合、運転者の目は、明るい場所を見ることに順応している(明所視)。このため、近傍範囲及び遠方範囲が共に明るいときには、車両外部の視認性は非常に高い。しかしながら、近傍範囲が明るいにもかかわらず遠方範囲が暗いときには、車両外部の視認性は非常に低い。
【0018】
一方、近傍範囲が暗い場合、運転者の目は、暗い場所を見ることに順応している(暗所視)。このため、近傍範囲及び遠方範囲が共に暗いときでも、近傍範囲が暗く遠方範囲が明るいときでも、近傍範囲が明るく遠方範囲が暗いときに比べれば、車両外部の視認性は高い。
従って、近傍範囲が明るく、遠方範囲が暗い状況下でのランプの明るさを、この状況下を除く他の状況下でのランプの明るさよりも明るくすれば、車両外部の視認性を向上させることができる。しかも、この状況下以外でのランプの明るさを比較的暗くする分だけ、省エネルギに寄与することができる。
【0019】
このために、調整手段は、近傍判定手段が明と判定し、遠方判定手段が暗と判定した場合のランプの明るさが、遠方判定手段が明と判定した場合、並びに近傍判定手段及び遠方判定手段が共に暗と判定した場合夫々のランプの明るさよりも明るくなるよう調整する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のランプ制御装置による場合、近傍範囲及び遠方範囲夫々の明るさに応じて、ランプの明るさを緻密に制御することができる。この結果、車両外部の視認性を向上させることができ、且つ、省エネルギに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るランプ制御装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】車両が暗所を走行している状況を模式的に示す平面図である。
【図3】車両が暗所を走行している場合の撮像画像の一例を示す模式図である。
【図4】車両が明所を走行している状況を模式的に示す平面図である。
【図5】車両が明所を走行している場合の撮像画像の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るランプ制御装置で実行されるランプ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1に係るランプ制御装置で実行される明暗判定処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係るランプ制御装置1の要部構成を示すブロック図である。
図中3は車両であり、車両3には、ランプ制御装置1と、前照灯21,22と、電源30と、撮像装置31と、照度センサ32とが搭載されている。
電源30は車載用の発電機又はバッテリ等を用いてなる。
撮像装置31は、不図示の配線を介して電源30から給電され、車両3の前方を撮像した撮像画像の電子データ(以下、画像データという)を、ランプ制御装置1へ出力する。このような撮像装置31は、バックミラーの裏、ダッシュボードの上、又はフロントグリル等に配されている。
【0024】
撮像画像は複数個の画素を用いてなり、画像データは複数個の画素夫々にデジタルのR値、G値、及びB値(R:赤、G:緑、B:青。以下、RGB値という)が関連付けられてなる。各画素のRGB値を、例えば下記の式(1)に代入すれば、各画素のY値(Y:輝度)が求められる。
Y=0.30×R+0.59×G+0.11×B…(1)
なお、撮像装置31は、ランプ制御装置1のみならず、例えば車両3に搭載されている図示しない表示装置へも画像データを出力するよう構成されていてもよい。
【0025】
また、画像データはデジタルデータに限定されず、アナログデータであってもよい。この場合、入力されたアナログデータを、例えば後述する制御部10がデジタルデータに変換する。また、ランプ制御装置1に与えられる画像データはRGB値を用いてなるものに限定されず、例えばY値、Cr値、及びCb値(Cr,Cb:色差)を用いてなるものであってもよい。この場合、Y値を算出する必要はない。
【0026】
照度センサ32は例えばフォトダイオードを用いてなり、車両3の外部、且つ運転席近傍(以下、車両3近傍という)の照度を検出し、検出照度を制御部10へ出力する。照度センサ32の検出照度が高い/低い場合、即ち車両3近傍の照度が高い/低い場合、車両3近傍は明るい/暗い。このような照度センサ32は、バックミラーの裏、又はダッシュボードの上等に配されている。
本実施の形態では、その明るさをランプ制御装置1によって制御されるべきランプとして、前照灯21,22を例示する。
前照灯21,22夫々は白熱電球又はLED等を用いてなり、電源30からランプ制御装置1を介して給電される。前照灯21,22は、車両3前方の視認性を向上させるべく車両3前方を照射する。
【0027】
ランプ制御装置1は、前照灯21,22の点/滅を制御する機能を有するECUであり、制御部10、半導体リレー11,12、及び駆動回路13,14を備える。
制御部10は、ランプ制御装置1の制御中枢であり、電源30から給電される。制御部10には、撮像装置31から出力された画像データが入力される。
半導体リレー11は前照灯21に対応し、半導体リレー12は前照灯22に対応する。半導体リレー11,12は、対応する前照灯21,22を点灯/消灯するために、電源30から与えられる電力をスイッチングする。
【0028】
具体的には、半導体リレー11,12は、電源30と前照灯21,22との間夫々直列に接続されている。このため、半導体リレー11,12がオンの場合は電源30から前照灯21,22へ電力が供給されるが、オフの場合は供給されない。
半導体リレー11,12及び制御部10は、互いに並列に接続されている。
駆動回路13は半導体リレー11に対応し、駆動回路14は半導体リレー12に対応する。駆動回路13,14は、対応する半導体リレー11,12を駆動する。このとき、各駆動回路13,14はオン/オフ制御及びPWM制御の何れか一方を行なう。
まず、オン/オフ制御について説明する。
【0029】
オン制御時の駆動回路13,14は、半導体リレー11,12へリレーオン信号を連続的に出力することによって、半導体リレー11,12を連続的にオンにする。このとき、前照灯21、22は連続的に点灯される。
オフ制御時の駆動回路13,14は、半導体リレー11,12へのリレーオン信号及び後述するパルス信号の出力を連続的に停止することによって、半導体リレー11,12を連続的にオフにする。このとき、前照灯21、22は連続的に非点灯となる。
制御部10は、オン制御を行なう場合、駆動回路13,14へランプオン信号を出力する。また、制御部10は、オフ制御を行なう場合、ランプオン信号及び後述するPWM信号の何れも出力しない。
【0030】
次に、PWM制御について説明する。
PWM制御時の駆動回路13,14は、半導体リレー11,12へパルス信号を周期的に出力することによって、半導体リレー11,12を短時間で繰り返しオン/オフする。換言すれば、半導体リレー11,12は断続的にオンになる。このとき、前照灯21,22は断続的に点灯(即ち点滅)される。ただし、前照灯21,22の点滅速度は人間の目には感じられない速さである。
前照灯21,22の明るさは、連続的に点灯されている場合よりも断続的に点灯されている場合の方が暗い。また、前照灯21,22で消費される電力は、連続的に点灯されている場合よりも断続的に点灯されている場合の方が小さい。
【0031】
パルス信号のデューティ比D(0<D<1)が“1”に近い場合は、各半導体リレー11,12がオンになっている時間が長い。このため、前照灯21,22の明るさは比較的明るいが、前照灯21,22の消費電力は比較的大きい。デューティ比Dが“0”に近い場合は、各半導体リレー11,12がオフになっている時間が長い。このため、前照灯21,22の明るさは更に暗いが、前照灯21,22の消費電力は更に小さい。
PWM制御を行なう場合、制御部10は、所要のデューティ比Dを示すPWM信号を駆動回路13,14へ出力する。
【0032】
本実施の形態では、デューティ比Dは一定である。従って、前照灯21,22は、オン制御とPWM制御とオフ制御との切り替えによって、大電力を消費して明るく照射する照射状態(後述する表1に示す前照灯の照射状態「明」)と、小電力を消費して暗く照射する照射状態(表1に示す前照灯の照射状態「暗」)と、連続的に非点灯となる非照射状態とが切り替えられる。
なお、ランプ制御装置1は、前照灯21,22夫々について異なるデューティ比Dを用いる構成でもよい。また、ランプ制御装置1は、例えば照度センサ32の検出照度又は運転者の操作等に基づいて、デューティ比Dを変更する構成でもよい。
【0033】
更に、前照灯21,22の照射状態「明」/「暗」は、例えば前照灯21,22を構成している複数個のLEDの内、点灯されているLEDの個数を変更することによって切り替えられてもよい。
ところで、車両3の前方の視認性を向上させるためには、前照灯21,22の明るさは明るい方が好ましい。しかしながら、省エネルギに寄与するためには、前照灯21,22の明るさは暗い方が好ましい。
視認性を向上させつつ省エネルギに寄与するために、ランプ制御装置1は、車両3に近い近傍範囲の明るさと、車両3から遠い遠方範囲の明るさとに応じて、前照灯21,22の明るさを制御する。ここでは、近傍範囲として車両3近傍を考慮し、遠方範囲として車両3前方を考慮する。
【0034】
次に、車両3が、夜間、周囲に光源が存在しない場所(以下、暗所という)を走行している場合と、周囲に光源が存在している場所(以下、明所という)を走行している場合とを説明する。
図2は、車両3が暗所を走行している状況を模式的に示す平面図であり、図3は、車両3が暗所を走行している場合の撮像画像の一例を示す模式図である。
図4は、車両3が明所を走行している状況を模式的に示す平面図であり、図5は、車両3が明所を走行している場合の撮像画像の一例を示す模式図である。
図2及び図4では、車両3が道路Rを夜間走行している状況を例示している。このため、図3及び図5に示す撮像画像には、道路Rに対応する道路領域rが含まれている。
【0035】
明所では、車両3前方に、複数の光源である複数個の街灯が存在しているため、図5に示すように、撮像画像には、街灯に対応する街灯領域L,L,…が含まれている。一方、暗所では、車両3前方に街灯は存在していないため、図3に示すように、撮像画像には街灯領域L,L,…が含まれていない。つまり、図2及び図3は、車両3前方が暗い場合の例示であり、図4及び図5は、車両3前方が明るい場合の例示である。
図2中のAD及び図4中のALは、前照灯21,22が照射する照射範囲の内部(以下、照射範囲内という)である。図2中のBD及び図4中のBLは、照射範囲の外部(以下、照射範囲外という)である。
【0036】
図3中のaD及び図5中のaLは、撮像画像における照射範囲に対応する領域(即ち照射領域)の内部であり、以下では、照射領域内aD,aLという。照射領域内aD,aLは、撮像画像の下側中央部に位置している。図3中のbD及び図5中のbLは、照射領域の外部であり、以下では、照射領域外bD,bLという。
以下では、暗所の照射範囲内ADの明るさと、明所の照射範囲内ALの明るさとが同程度であり、暗所の照射範囲外BDの明るさと、後述する非投光範囲B2の明るさとが同程度であるものとして説明する。
【0037】
図2に示すように、暗所の照射範囲外BDは、照射範囲内AD(又は図4に示す照射範囲内AL)に比べて非常に暗い。従って、図3に示すように、照射領域内aDと照射領域外bDとのコントラストは高い。
一方、図4に示すように、明所の照射範囲外BLには、複数個の街灯が投光している投光範囲B1が含まれている。この投光範囲B1は、投光範囲B1を除く照射範囲外BL(以下、非投光範囲B2という)よりも明るい。この結果、明所の照射範囲外BLは、照射範囲内AL(又は図2に示す照射範囲内AD)に比べれば暗いが、暗所の照射範囲外BDに比べれば明るい。
【0038】
このため、図5に示すように、明所の照射領域外bLには、投光範囲B1及び非投光範囲B2に対応する投光領域b1及び非投光領域b2が含まれており、照射領域内aLと照射領域外bLとのコントラストは低い。
以上のことから、撮像画像における照射領域内と照射領域外とのコントラストの高/低は、車両3前方が暗い/明るいことを示す指標であることがわかる。
【0039】
次の表1は、車両3近傍及び車両3前方夫々の明るさの組み合わせとランプの明るさとの対応関係を示している。本実施の形態では、車両3近傍及び車両3前方夫々の明るさは、明るいか暗いかの2通りである。このため、車両3近傍及び車両3前方夫々の明るさの組み合わせは4通りである。なお、車両3近傍及び車両3前方夫々の明るさは3通り以上に細分されてもよく、これらの組み合わせは5通り以上とされてもよい。
【0040】
【表1】

【0041】
照度センサ32の検出照度が高い(表中「高」)場合、近傍範囲である車両3近傍は明るい(表中「明」)。照度センサ32の検出照度が低い(表中「低」)場合、近傍範囲である車両3近傍は暗い(表中「暗」)。
撮像画像における照射領域内と照射領域外とのコントラストが高い(表中「高」)場合、遠方範囲である車両3前方は暗い(表中「暗」)。撮像画像における照射領域内と照射領域外とのコントラストが低い(表中「低」)場合、遠方範囲である車両3前方は明るい(表中「明」)。
【0042】
車両3近傍が明るく、車両3前方が暗い場合、車両3前方の視認性は非常に低い。そこで、ランプ制御装置1は、前照灯21,22の照射状態を「明」とすることによって、車両3前方を明るく照射する。この結果、車両3前方の視認性を向上させることができる。
車両3近傍及び車両3前方が共に明るい場合と、車両3前方の明暗を問わず車両3近傍が暗い場合とは、車両3近傍が明るく車両3前方が暗い場合に比べれば、車両3前方の視認性が高い。そこで、ランプ制御装置1は、前照灯21,22の照射状態を「暗」とすることによって、車両3前方を暗く照射する。この結果、車両3前方の視認性を確保しつつ、省エネルギに寄与することができる。
【0043】
なお、互いに異なる2個以上のデューティ比Dを用いることによって、前照灯21,22の明るさを3段階以上に変更することが可能であってもよい。例えば、前照灯21,22の照射状態として、「明」、「暗」、及び「明」と「暗」との中間程度の電力を消費して中程度の明るさで照射する「中」が存在する場合を考える。この場合でも、車両3近傍が明るく車両3前方が暗いときには、前照灯21,22の照射状態は「明」とされる。一方、車両3近傍及び車両3前方が共に暗いとき、及び、車両3近傍が暗く車両3前方が明るいときには、前照灯21,22の照射状態は「中」とされる。そして、車両3近傍及び車両3前方が共に明るいときには、前照灯21,22の照射状態は「暗」とされる。
【0044】
本実施の形態では、撮像装置31による撮像範囲及び前照灯21,22夫々の照射範囲は一定である。このため、制御部10には、撮像画像の画素が領域内画素及び領域外画素の何れであるかを示す画素識別情報が予め与えられている。
なお、撮像装置31による撮像範囲又は前照灯21,22夫々の照射範囲は可変であってもよい。この場合、例えばハイビーム時の画素識別情報と、ロービーム時の画素識別情報とが予め制御部10に与えられていればよい。
図6は、本発明の実施の形態に係るランプ制御装置で実行されるランプ制御処理の手順を示すフローチャートである。ランプ制御処理の実行は、例えば車両3に備えられている図示しないアクセサリスイッチがオンになった場合に開始される。
【0045】
制御部10は、前照灯21,22を点灯すべきタイミングであるか否かを判定する(S11)。S11における制御部10は、例えば車両3に備えられている図示しないランプスイッチがオンになった場合、又は、照度センサ32の検出照度が所定の照度を下回った場合等に、前照灯21,22を点灯すべきタイミングであると判定する。
前照灯21,22を点灯すべきタイミングではない場合(S11でNO)、制御部10は、再びS11の処理を実行する。
前照灯21,22を点灯すべきタイミングである場合(S11でYES)、制御部10は、駆動回路13,14へランプオン信号を出力する(S12)。この結果、前照灯21,22が車両3前方を明るく照射する。
【0046】
次いで、制御部10は、前照灯21,22を消灯すべきタイミングであるか否かを判定する(S13)。S13における制御部10は、例えばランプスイッチがオフになった場合、又は、照度センサ32の検出照度が所定の照度以上になった場合等に、前照灯21,22を消灯すべきタイミングであると判定する。
前照灯21,22を消灯すべきタイミングである場合(S13でYES)、制御部10は、駆動回路13,14へのランプオン信号の出力を停止する(S14)。この結果、前照灯21,22が消灯される。
S14の処理終了後、制御部10は、処理をS11へリターンする。
前照灯21,22を消灯すべきタイミングではない場合(S13でNO)、制御部10は、後述する図7に示す明暗判定処理を実行する(S15)。
【0047】
明暗判定処理では、車両3近傍が明るいことを示す近傍範囲「明」フラグと、車両3近傍が暗いことを示す近傍範囲「暗」フラグとが排他的にセットされる。即ち、近傍範囲「明」フラグ及び近傍範囲「暗」フラグは、一方がセットされれば他方がリセットされる。同様に、明暗判定処理では、車両3前方が明るいことを示す遠方範囲「明」フラグと、車両3前方が暗いことを示す遠方範囲「暗」フラグとが排他的にセットされる。以下では、フラグの一方をセットし他方をリセットする場合は、フラグの一方をセットするという。
【0048】
S15の処理終了後、制御部10は、近傍範囲「明」フラグがセットされ、且つ、遠方範囲「暗」フラグがセットされているか否かを判定する(S16)。
近傍範囲「明」フラグ及び遠方範囲「暗」フラグの両方がセットされている場合(S16でYES)、制御部10は、処理をS13へ戻す。
近傍範囲「明」フラグ及び遠方範囲「暗」フラグの少なくとも一方がリセットされている場合(S16でNO)、制御部10は、駆動回路13,14へ出力していたランプオン信号を、PWM信号に切り替える(S17)。この結果、前照灯21,22が車両3前方を暗く照射する。
【0049】
次いで、制御部10は、S13の処理と同様にS18の処理を実行する。
前照灯21,22を消灯すべきタイミングである場合(S18でYES)、制御部10は、駆動回路13,14へのPWM信号の出力を停止する(S19)。この結果、前照灯21,22が消灯される。
S19の処理終了後、制御部10は、処理をS11へリターンする。
前照灯21,22を消灯すべきタイミングではない場合(S18でNO)、制御部10は、S15の処理と同様にS20の処理を実行する。
S20の処理終了後、制御部10は、S16の処理と同様にS21の処理を実行する。
【0050】
近傍範囲「明」フラグ及び遠方範囲「暗」フラグの少なくとも一方がリセットされている場合(S21でNO)、制御部10は、処理をS18へ戻す。
近傍範囲「明」フラグ及び遠方範囲「暗」フラグの両方がセットされている場合(S21でYES)、制御部10は、駆動回路13,14へ出力していたPWM信号を、ランプオン信号に切り替える(S22)。この結果、前照灯21,22が車両3前方を明るく照射する。
S22の処理終了後、制御部10は、処理をS13の処理へ戻す。
図7は、本発明の実施の形態1に係るランプ制御装置で実行される明暗判定処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0051】
制御部10は、照度センサ32の検出照度を受け付け(S31)、受け付けた検出照度が、所与の所定照度以上であるか否かを判定する(S32)。
照度センサ32の検出照度が所定照度以上である場合(S32でYES)、制御部10は、近傍範囲「明」フラグをセットする(S33)。
一方、照度センサ32の検出照度が所定照度未満である場合(S32でNO)、制御部10は、近傍範囲「暗」フラグをセットする(S34)。
【0052】
なお、制御部10は、照度センサ32の検出照度に替えて、車両3近傍が暗い場合はオン(又はオフ)となり、明るい場合はオフ(又はオン)となる光センサからの信号を用いる構成でもよい。この場合、制御部10は、光センサがオフ(又はオン)であれば近傍範囲「明」フラグをセットし、光センサがオン(又はオフ)であれば近傍範囲「暗」フラグをセットすればよい。
S33又はS34の処理終了後、制御部10は、撮像装置1から出力される画像データを受け付け(S35)、受け付けた画像データを用いて、撮像画像に含まれている各画素のY値(輝度値)を算出する(S36)。
【0053】
次いで、制御部10は、領域内画素のY値の平均値を算出し(S37)、また、領域外画素のY値の平均値を算出し(S38)、領域内画素のY値の平均値と領域外画素のY値の平均値との比(以下、輝度比という)を算出する(S39)。なお、S37〜S39における制御部10は、Y値の代表値として平均値を用いているが、これに替えて、最大値、最小値、中央値、又は最頻値等を用いる構成でもよい。
更に、制御部10は、S39で算出した輝度比が所定輝度比以下であるか否かを判定する(S40)。
S39で算出した輝度比が所定輝度比以下である場合(S40でYES)、制御部10は、遠方範囲「明」フラグをセットする(S41)。
【0054】
一方、S39で算出した輝度比が所定輝度比超過である場合(S40でNO)、制御部10は、遠方範囲「暗」フラグをセットする(S42)。
S33又はS34の処理終了後、制御部10は、明暗判定処理を終了して、図6に示すランプ制御処理へ戻る。
図7に示す明暗判定処理のS31の処理を実行する制御部10は、本発明の実施の形態における近傍検出部として機能し、S35〜S39の処理を実行する制御部10は、本発明の実施の形態における遠方検出部として機能する。
また、S32〜S34の処理を実行する制御部10は、本発明の実施の形態における近傍判定手段として機能する。
【0055】
また、S40〜S42の処理を実行する制御部10は、本発明の実施の形態における遠方判定手段として機能する。
そして、図6に示すランプ制御処理のS12、S16、S17、S21、及びS22の処理を実行する制御部10は、本発明の実施の形態における調整手段として機能する。
【0056】
以上のようなランプ制御装置1による場合、車両3近傍及び車両3前方夫々の明るさに応じて、前照灯21,22の明るさを緻密に制御することができる。この結果、車両3近傍が明るく車両3前方が暗い場合には、省エネルギよりも車両3前方の視認性の向上を優先させることができる。また、車両3近傍及び車両3前方が共に明るい場合、並びに車両3近傍が暗い場合には、車両3前方の視認性を犠牲にすることなく、省エネルギに寄与することができる。
なお、ランプ制御装置1は、画像データを車両3の外部から受信してもよい。
【0057】
また、ランプ制御装置1は、前照灯21,22に限定されず、例えば車両3の側方又は後方を照射する図示しないランプの明るさを制御する構成でもよい。この場合、ランプ制御装置1は、車両3の側方又は後方を撮像した画像の電子データを用いて、車両3の側方又は後方(即ち遠方範囲)の明るさを検出してもよい。
【0058】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、ランプ制御装置1に、実施の形態に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ランプ制御装置
10 制御部(近傍検出部,遠方検出部)
21,22 前照灯(ランプ)
3 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部の明るさに応じてランプの明るさを制御するランプ制御装置において、
前記車両に近い近傍範囲の明るさを検出する近傍検出部と、
前記車両から遠い遠方範囲の明るさを検出する遠方検出部と、
前記近傍検出部及び前記遠方検出部夫々の検出結果に基づいて、前記ランプの明るさを制御する制御部と
を備えることを特徴とするランプ制御装置。
【請求項2】
前記ランプは前照灯であり、
前記遠方検出部は、
前記ランプが照射する照射範囲を含む前記車両の前方を撮像した撮像画像を受け付ける手段と、
受け付けた撮像画像の前記照射範囲に対応する領域の内部に位置している画素及び前記領域の外部に位置している画素夫々の輝度に基づいて、前記遠方範囲の明るさを検出する手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載のランプ制御装置。
【請求項3】
前記遠方検出部は、前記内部に位置している複数個の画素夫々の輝度の代表値と前記外部に位置している複数個の画素夫々の輝度の代表値とに基づいて、前記遠方範囲の明るさを検出するようにしてあることを特徴とする請求項2に記載のランプ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記近傍検出部の検出結果に基づいて、前記近傍範囲の明暗を判定する近傍判定手段と、
前記遠方検出部の検出結果に基づいて、前記遠方範囲の明暗を判定する遠方判定手段と、
前記近傍判定手段及び前記遠方判定手段夫々の判定結果の内、前記近傍判定手段が明と判定し、前記遠方判定手段が暗と判定した場合の前記ランプの明るさが、他の場合の前記ランプの明るさよりも明るくなるよう調整する調整手段と
を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のランプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−32112(P2013−32112A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169471(P2011−169471)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】