説明

ランプ形成工法及びランプ形成装置

【課題】 土荷重の増加を抑えることのできるランプ形成工法及びランプ形成装置を提供する。
【解決手段】 道路トンネル2にランプを形成するランプ形成工法において、道路トンネル2上にランプ43を形成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路トンネルにランプを形成するランプ形成工法及びランプ形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルにランプを形成する工法としては、道路トンネルの外周にシールド機を摺動自在に設け、道路トンネルのセグメントを外しながら道路トンネルの外周側に新たにセグメントを組み立て、道路トンネルを拡幅してランプを形成するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平02−296993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のシールド機を用いてランプを形成する場合、図18に示すように、道路トンネル50の側方を拡幅することとなるため、拡幅した分だけ広い範囲の土荷重が道路トンネル50に作用することとなり、道路トンネル50の強度を高める等、大きな土荷重に対する対策を施さなければならないという課題があった。
【0005】
また、道路トンネルの外周にシールド機を据え付けるときに一旦道路トンネルのセグメントを開放する必要があるため、立坑が必要であった。このため、特に大深度においては、セグメントに作用する荷重が大きく、施工区域全体の止水が難しく、立坑の構築が難しいなど、問題が多かった。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決し、道路トンネルに作用する土荷重の増加を抑えることのできるランプ形成工法及びランプ形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、道路トンネルにランプを形成するランプ形成工法において、道路トンネル上にランプを形成したものである。
【0008】
また、道路トンネルを構築する本線シールドに拡幅シールドを設け、本線シールドをローリングさせて拡幅シールドを周方向に移動させてランプを形成するものである。
【0009】
拡幅シールドを側方から上方に、又は上方から側方に移動させてランプを形成するとよい。
【0010】
地上からランプシールドを発進して上記ランプに到達させるとよい。
【0011】
また、ランプ形成装置は、道路トンネルを構築する本線シールドと、本線シールドに設けられた拡幅シールドと、本線シールドをローリングさせて拡幅シールドを上方に移動させるローリング機構とを備えて構成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、道路トンネルに作用する土荷重の増加を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図10は本発明のランプ形成工法に用いるランプ形成装置の平面断面図であり、図11は図10のA−A線矢視断面図であり、図12は図10のB−B線矢視図である。
【0014】
図10、図11及び図12に示すように、ランプ形成装置1は、道路トンネル2を構築する本線シールド3と、本線シールド3に設けられた拡幅シールド4と、本線シールド3をローリングさせて拡幅シールド4を上方に移動させるローリング機構5とを備えて構成されている。
【0015】
本線シールド3は、主カッタ6を有すると共に掘進方向後方部に掘削された主トンネル孔7にセグメント8を張設するための主セグメント組立部9を有して構成されている。
【0016】
主カッタ6は、シールド本体10のバルクヘッド11に回転自在に設けられており、バルクヘッド11には、主カッタ6を回転駆動するためのカッタ駆動装置12が設けられている。主セグメント組立部9には、エレクタ13が設けられている。シールド本体10は、断面円形に形成されている。
【0017】
拡幅シールド4は、本線シールド3に径方向に出没自在に設けられている。具体的には、拡幅シールド4は、シールド本体10の側部に径方向外方に出没自在に設けられ主カッタ6で掘削された主トンネル孔7の側部に沿って拡幅トンネル孔14を掘削する拡幅カッタ15と、拡幅カッタ15の後方に設けられ拡幅カッタ15によって掘削される拡幅トンネル孔14内に拡幅セグメント16を張設すべく組み立てる拡幅セグメント組立部17とを備えて構成されている。
【0018】
拡幅カッタ15は、主カッタ6と主セグメント組立部9との間の位置に設けられており、シールド本体10に径方向内側に窪んで形成されたガイド部18内に径方向スライド自在に収容されたスライド部19と、スライド部19に縦軸回り揺動可能に設けられ球面状のシール面を有する揺動体20と、揺動体20に回転自在に設けられたカッタ本体部21とからなる。スライド部19とシールド本体10との間にはスライド部19を径方向にスライドさせるためのアクチュエータたるシリンダ22が設けられている。また、スライド部19と揺動体20との間には揺動体20を縦軸回り揺動させるためのアクチュエータたるシリンダ23が設けられている。
【0019】
拡幅セグメント組立部17は、シールド本体10に径方向外方に出没自在に設けられシールド本体10の径方向外側に拡幅セグメント16を組み立てるスペースを確保するための拡幅シールドフレーム24からなる。
【0020】
拡幅シールドフレーム24は、拡幅カッタ15と主セグメント組立部9との間に配置されており、シールド本体10から径方向外方へ突出されたときに前端を区画する前端壁部25と、外周を区画する周壁部26とを備えて構成されている。拡幅シールドフレーム24は、内部に掘進方向後方に臨んで開放された作業スペース27を有し、拡幅カッタ15で掘削した拡幅トンネル孔14内に突出するようになっている。
【0021】
また、拡幅シールドフレーム24とシールド本体10との間にはシール部材(図示せず)が設けられており、拡幅シールドフレーム24の周囲から機内に浸水しないようになっている。そして、拡幅シールドフレーム24には、組み立てた拡幅セグメント16を後方へ押圧するためのジャッキ28が設けられており、拡幅シールドフレーム24の後端部には、拡幅セグメント16と拡幅シールドフレーム24との間を止水するためのテールシール29が設けられている。
【0022】
拡幅シールドフレーム24内には、拡幅セグメント16を組み立てるための拡幅セグメント組立装置30が設けられている。拡幅セグメント16は、掘進方向に重ねてつなげることで道路トンネル2の外周部に沿った断面略弧状を呈する筒体状の拡幅トンネル31を構築するようになっている。
【0023】
また、シールド本体10には、組み立てられた拡幅セグメント16を道路トンネル2側に案内するための案内手段32が、拡幅セグメント組立部17と主セグメント組立部9とを結ぶシールド本体10の外側壁33に沿って設けられている。
【0024】
図12及び図13に示すように、ローリング機構5は、本線シールド3のシールドジャッキ34をシールド本体10の周方向に傾動させるジャッキ傾動装置35からなる。ジャッキ傾動装置35は、シールドジャッキ34に臨んでシールド本体10の固定系に設けられた球面受座36と、シールドジャッキ34に設けられ球面受座36に係合される係合部材37と、球面受座36に対する係合部材37の位置を調節してシールドジャッキ34を傾斜させるための傾斜調節部38とを備えて構成されている。傾斜調節部38は、固定系に周方向に延びて螺合され一端を係合部材37に係合される押付けねじ39と、シールドジャッキ34の傾斜角度を保持すべく固定系に係合部材37を締結する固定ねじ40とからなり、押付けねじ39で係合部材37の位置を調節することでシールドジャッキ34を傾斜させるように構成されている。押付けねじ39は、係合部材37の両側にそれぞれ配置されており、係合部材37の周方向の両側をそれぞれ支持するようになっている。
【0025】
つぎに、ランプ形成装置1を用いてランプを形成するランプ形成工法について述べる。
【0026】
まず、図10及び図11に示す拡幅シールド4を本線シールド3内に収容してランプ形成装置1を掘進させ、道路トンネル2のみを構築する。このとき、本線シールド3は、拡幅シールド4を上向きにして掘進させる。そして、本線シールド3がランプを形成すべき位置に到達したら、拡幅シールド4を本線シールド3の上方に突出させ、本線シールド3上に拡幅トンネル31を構築し始める。具体的には、拡幅トンネル31は、拡幅セグメント組立部17内で拡幅セグメント16を順次組み立てて構築する。またこのとき、拡幅トンネル31の端部には蓋部41を設け、塞ぐようにする。
【0027】
道路トンネル2上に拡幅トンネル31を所定距離に渡って形成したら、本線シールド3をローリングさせて拡幅シールド4を本線シールド3の上方から側方に移動させる。これにより、道路トンネル2の上方から側方にかけて略螺旋状に延びる拡幅トンネル31が構築されることとなる。本線シールド3のローリングは、図13に示すジャッキ傾動装置35でシールドジャッキ34を周方向に傾動させ、シールドジャッキ34を伸張させることで行う。シールドジャッキ34の傾動は、固定ねじ40を緩めて係合部材37の締結を解いた後、傾ける側の押付けねじ39を、シールドジャッキ34の傾動角度に応じた長さ緩め、他方の押付けねじ39を締めて係合部材37を球面受座36に沿って移動させ、係合部材37が所定の位置に移動されたらそれぞれの押付けねじ39を締めてそれぞれの押付けねじ39の間に係合部材37を挟み込み、固定ねじ40を締めて係合部材37を固定系に締結することで行う。
【0028】
そしてさらに、掘進方向前方で他のランプを形成する場合、拡幅シールド4を本線シールド3の側方に突出させた状態のまま所定距離掘進し、本線シールド3を逆向きにローリングさせて拡幅シールド4を本線シールド3の側方から上方に移動させる。これにより、拡幅トンネル31が側方から上方にかけて略螺旋状に延長されることとなる。
【0029】
このようにして拡幅トンネル31が構築されたら、道路トンネル2に拡幅トンネル31を接合し、図1から図6に示すように、道路トンネル2の外周側に略螺旋状の拡幅部42を形成する。拡幅トンネル31の接合は、拡幅トンネル31の周囲の地山に止水用固化剤を注入したのち、道路トンネル2と拡幅トンネル31との間にあるセグメント8、16を外し、トンネル2、31間を液密に塞ぐことで行う。
【0030】
拡幅部42が形成されたら、図1及び図7に示すように、道路トンネル2内に本線道路44を形成すると共に、拡幅部42内にランプ43、47を形成する。
【0031】
そして、図8に示すように、地上からランプシールド45を発進して道路トンネル2上のランプ43に到達させ、ランプ43を延長する。このとき、ランプシールド45は、道路トンネル2の一部を切削容易な材料とすることにより道路トンネル2を切削しながら合流することができる。
【0032】
また、図7に示す他方のランプ47にも同様に地上からランプシールド45を発進して到達させ、ランプ47を延長する。
【0033】
このように、道路トンネル2上にランプ43、47を形成するため、図9に示すようにランプ43、47の位置で道路トンネル2が水平方向に拡幅されず、道路トンネル2に作用する土荷重の増大を抑えることができる。そしてこれにより、道路トンネル2の強度を高める等の土荷重に対する対策を簡単なものにできる。また図1に示すように、一般に本線道路44は、複数の車線を有し、断面円形の道路トンネル2内に形成することから、道路トンネル2の上部に未使用空間が形成されることとなるが、この道路トンネル2の上部にランプ43、47を形成するため、空間を有効に利用することができる。
【0034】
また、道路トンネル2を構築する本線シールド3に拡幅シールド4を設け、本線シールド3をローリングさせて拡幅シールド4を周方向に移動させてランプ43、47を形成するため、立坑を構築しなくても容易にランプ43、47を形成することができる。そしてこれにより、大深度であってもセグメント8、16に作用する荷重や、施工区域全体の止水などの問題が発生するのを防ぐことができる。
【0035】
拡幅シールド4を側方から上方に、又は上方から側方に移動させてランプ43、47を形成するため、ランプ43、47と本線道路44とを簡単に接続することができる。
【0036】
地上からランプシールド45を発進してランプ43、47に到達させるため、ランプ43、47を容易に延長することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、ランプシールド45を蓋部41に到達させるようにしたが、蓋部41及びその近傍のランプ43、47をランプシールド45が入る程度の大きさに形成すれば、ランプ43、47からランプシールド45を発進させることもできる。
【0038】
また、道路トンネル2を構築する本線シールド3と、本線シールド3に設けられた拡幅シールド4と、本線シールド3をローリングさせて拡幅シールド4を上方に移動させるローリング機構5とを備えてランプ形成装置1を構成したため、立坑を構築しなくても容易に道路トンネル2上にランプ43、47を形成できる。
【0039】
そして、本線シールド3に拡幅シールド4を径方向に出没自在に設けるものとしたため、拡幅シールド4を出没させることで拡幅部42となる拡幅トンネル31を任意の位置で構築し始めたり止めたりすることができ、本線道路44とランプ43、47とを一貫して効率よく形成できる。
【0040】
なお、ローリング機構5は、シールドジャッキ34を傾動させるジャッキ傾動装置35からなるものとしたが、本線シールド3をローリングできるものであれば、他のタイプのものであってもよい。
【0041】
拡幅カッタは、球面状のシール面を有する揺動体20にカッタ本体部21を回転自在に設けた球体カッタに限るものではなく、他のタイプであってもよい。例えば、拡幅カッタは、図14(a)、(b)に示すように、本線シールド60にカッタ本体61を径方向に出没自在かつ周方向にスライド自在に設けたスライドカッタ62であってもよく、図15(a)、(b)に示すように、本線シールド63に屈曲自在なブーム64を設け、ブーム64の先端にカッタヘッド65を設けたブームカッタ66であってもよく、図16(a)、(b)に示すように、本線シールド67に対してそれぞれ独立して径方向に出没自在に設けられた複数のスクリューカッタ68からなるものであってもよい。
【0042】
また、ランプ形成装置1は、ローリング機構5を有するものとしたが、図17に示すように、本線シールド70を軸方向に複数分割し、主セグメント組立部9を有する固定胴部71を形成すると共に、固定胴部71に軸回り回転自在に嵌合される回転胴部72を形成して二重筒構造とし、回転胴部72に拡幅カッタ15を設けると共に拡幅セグメント組立部17を設けてランプ形成装置73を構成しても道路トンネル上にランプを形成することが可能である。このとき、固定胴部71と回転胴部72との間にシール(図示せず)を設け、機内への浸水を防止するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す道路トンネルとランプの正面断面図である。
【図2】道路トンネルとランプの正面断面図である。
【図3】道路トンネルとランプの正面断面図である。
【図4】道路トンネルとランプの正面断面図である。
【図5】道路トンネルとランプの正面断面図である。
【図6】道路トンネルとランプの正面断面図である。
【図7】道路トンネルとランプの平面断面図である。
【図8】ランプシールドとランプの側面断面図である。
【図9】道路トンネルに作用する土荷重を説明する説明図である。
【図10】ランプ形成装置の平面断面図である。
【図11】図10のA−A線矢視断面図である。
【図12】図10のB−B線矢視図である。
【図13】図12のC−C線矢視断面図である。
【図14】(a)は他の実施の形態を示す拡幅カッタの平面図であり、(b)は(a)の背面図である。
【図15】他の実施の形態を示す拡幅カッタの背面図であり、(a)は拡幅カッタが非作動位置にある状態を示し、(b)は拡幅カッタが作動位置にある状態を示すものである。
【図16】他の実施の形態を示す拡幅カッタの背面図であり、(a)は拡幅カッタが非作動位置にある状態を示し、(b)は拡幅カッタが作動位置にある状態を示すものである。
【図17】他の実施の形態を示すランプ形成装置の平面説明図である。
【図18】道路トンネルに作用する土荷重を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ランプ形成装置
2 道路トンネル
3 本線シールド
4 拡幅シールド
5 ローリング機構
43 ランプ
45 ランプシールド
47 ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路トンネルにランプを形成するランプ形成工法において、道路トンネル上にランプを形成することを特徴とするランプ形成工法。
【請求項2】
道路トンネルを構築する本線シールドに拡幅シールドを設け、本線シールドをローリングさせて拡幅シールドを周方向に移動させてランプを形成することを特徴とするランプ形成工法。
【請求項3】
拡幅シールドを側方から上方に、又は上方から側方に移動させてランプを形成する請求項2記載のランプ形成工法。
【請求項4】
地上からランプシールドを発進して上記ランプに到達させる請求項1〜3いずれかに記載のランプ形成工法。
【請求項5】
道路トンネルを構築する本線シールドと、本線シールドに設けられた拡幅シールドと、本線シールドをローリングさせて拡幅シールドを上方に移動させるローリング機構とを備えたことを特徴とするランプ形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−125036(P2006−125036A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314238(P2004−314238)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】