説明

リアクトルおよび電力変換装置

【課題】大型化することなく、リアクトル電流が小さい領域での損失を抑制可能で、かつリアクトルに接続される素子に流れる電流の最大値を抑制可能なリアクトルを得る。
【解決手段】リアクトルL1は、電動車両に搭載されるコンバータに用いられる。リアクトルL1は、環状のコア部CRと、コア部CRの外周に巻き付けられたコイルCLとで構成される。コア部CRは、U字状のコアブロックBL1,BL2と、コアブロックBL1とコアブロックBL2との間のギャップαに挿入されるスペーサSとを含む。スペーサSは、コイルCLを流れる電流ILが増加した場合にコアブロックBL1,BL2よりも先に磁気飽和する特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力で駆動力を得る車両に搭載されるリアクトルおよび電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気車両などの電力で駆動力を得る車両には、直流電源であるバッテリの電力をモータを駆動するための電力に変換する電力変換装置が備えられる。この電力変換装置には、バッテリの電力を昇圧するコンバータが含まれる。リアクトルは、この昇圧コンバータを構成する主要な部品の1つである。
【0003】
特開2008−41880号公報(特許文献1)には、環状のコア部と、コア部の外周に巻き付けられたコイルとによって構成されるリアクトルが開示されている。特許文献1に開示されたリアクトルのコア部は、複数のコアブロックと、各コアブロック間のギャップに挿入されるスペーサとで構成される。スペーサは、非磁性材料から形成される基材中に粉状磁性材料を分散させて形成される。これにより、ギャップ周縁部において生じる漏れ磁束が減少するので、損失を減少させるとともに磁束密度の偏在を緩和して、エネルギ変換効率を向上させることのできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−41880号公報
【特許文献2】特開2008−28287号公報
【特許文献3】特開2002−57046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、コアブロックの磁気特性とスペーサの磁気特性との関係をどのように設定するかについては何ら開示されていない。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化することなく、リアクトル電流が小さい領域での損失を抑制可能で、かつリアクトルに接続される素子に流れる電流の最大値を抑制可能なリアクトルを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るリアクトルは、電力で駆動力を得る車両に搭載される電力変換装置に用いられるリアクトルである。このリアクトルは、磁性体で構成されるコア部と、コア部の外周に巻き付けられたコイルとを備える。コア部は、所定の長さの隙間を隔てて互いに対向する複数のコアブロックと、複数のコアブロックの間に挿入されるスペーサとを含む。スペーサは、コイルを流れる電流を増加させた場合に複数のコアブロックよりも先に磁気飽和する特性を有する。
【0008】
好ましくは、複数のコアブロックは、第1ブロックと、第2ブロックとを含む。スペーサは、第1ブロックおよび第2ブロックの間に隙間を満たすように挿入される。
【0009】
好ましくは、複数のコアブロックは、第1ブロックと、第2ブロックと、第1ブロックおよび第2ブロックの間に設けられる中間ブロックとを含む。中間ブロックは、第1の隙間を隔てて第1ブロックと対向するとともに、第2の隙間を隔てて第2ブロックと対向する。スペーサは、第1の隙間に第1の隙間を満たすように挿入される第1スペーサと、第2の隙間に第2の隙間を満たすように挿入される第2スペーサとを含む。第2スペーサは、コイルを流れる電流を増加させた場合に第1スペーサよりも先に磁気飽和する特性を有する。
【0010】
好ましくは、複数のコアブロックは、U字状の第1ブロックと、U字状の第2ブロックとを含む。コア部は、第1ブロック、第2ブロック、スペーサによって環状に形成される。
【0011】
この発明の別の局面に係る電力変換装置は、電力で駆動力を得る車両に搭載される電力変換装置である。この電力変換装置は、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子と、リアクトルとを備える。リアクトルは、磁性体で構成されるコア部と、コア部の外周に巻き付けられ、一端が第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の間に接続されるコイルとを備える。コア部は、所定の長さの隙間を隔てて互いに対向する複数のコアブロックと、複数のコアブロックの間に挿入されるスペーサとを含む。スペーサは、コイルを流れる電流を増加させた場合に複数のコアブロックよりも先に磁気飽和する特性を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大型化することなく、リアクトル電流が小さい領域での損失を抑制可能で、かつリアクトルに接続される素子に流れる電流の最大値を抑制可能なリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リアクトルが適用されるモータ駆動装置の回路図である。
【図2】リアクトルの構成を示す図である。
【図3】コアブロックおよびスペーサの磁気ヒステリシス曲線を示す図である。
【図4】リアクトルを流れる電流ILとリアクトルのインダクタンス値Lとの関係を示す図(その1)である。
【図5】従来のリアクトルの特性と本実施の形態に従うリアクトルの特性とを比較した表である。
【図6】リアクトルのコア部の構成を示す図(その1)である。
【図7】リアクトルを流れる電流ILとリアクトルのインダクタンス値Lとの関係を示す図(その2)である。
【図8】リアクトルのコア部の構成を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従うリアクトルL1が適用されるモータ駆動装置100の回路図である。図1を参照して、モータ駆動装置100は、直流電源BAと、コンバータ10と、インバータ20と、正極線PL1,PL2と、負極線NLと、電流センサ52と、電圧センサ54,56と、フィルタコンデンサC1と、平滑コンデンサC2と、制御装置30とを備える。
【0016】
このモータ駆動装置100は、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両に搭載される。そして、交流モータMは、図示されない駆動輪に機械的に連結され、車両を駆動するためのトルクを発生する。あるいは、交流モータMは、図示されないエンジンに機械的に連結され、エンジンの動力を用いて発電する発電機として動作し、かつ、エンジンの始動を行なう電動機としてハイブリッド自動車に組み込まれるようにしてもよい。
【0017】
コンバータ10は、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルL1とを含む。スイッチング素子Q1,Q2は、正極線PL2と負極線NLとの間に直列に接続される。そして、スイッチング素子Q1のコレクタは正極線PL2に接続され、スイッチング素子Q2のエミッタは負極線NLに接続される。また、スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD1,D2がそれぞれ接続される。なお、上記のスイッチング素子Q1,Q2およびインバータ20に含まれる後述のスイッチング素子Q3〜Q8として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等を用いることができる。
【0018】
リアクトルL1は、後述するように、環状のコア部と、コア部の外周に巻き付けられたコイルとによって構成される。リアクトルL1のコイルの一方端は、直流電源BAの正極端子に接続される正極線PL1に接続される。リアクトルL1のコイルの他方端は、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との中間点に接続される。
【0019】
インバータ20は、U相アーム22と、V相アーム24と、W相アーム26とを含む。U相アーム22、V相アーム24およびW相アーム26は、正極線PL2と負極線NLとの間に並列に接続される。U相アーム22は、直列接続されたスイッチング素子Q3,Q4を含む。V相アーム24は、直列接続されたスイッチング素子Q5,Q6を含む。W相アーム26は、直列接続されたスイッチング素子Q7,Q8を含む。また、スイッチング素子Q3〜Q8のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD3〜D8がそれぞれ接続される。そして、各相アームの中間点は、交流モータMの各相コイルにそれぞれ接続されている。
【0020】
直流電源BAは、再充電可能な蓄電装置であり、たとえばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池である。なお、直流電源BAとして、二次電池に代えて大容量のキャパシタを用いてもよい。
【0021】
コンバータ10のスイッチング素子Q1,Q2は、制御装置30からの信号PWCに基づいて、互いに逆の状態(すなわち、Q1オンのときはQ2オフ、Q1オフのときはQ2オン)となるように制御される。スイッチング素子Q1のオフ期間(スイッチング素子Q2のオン期間)とスイッチング素子Q1のオン期間(スイッチング素子Q2のオフ期間)とが交互に繰り返されることによって、正極線PL2および負極線NL間の電圧(以下「システム電圧」とも称する。)が直流電源BAの出力電圧以上の電圧に昇圧される。
【0022】
インバータ20は、制御装置30からの信号PWIに基づいて、正極線PL2および負極線NLから供給される直流電力を三相交流に変換して交流モータMへ出力し、交流モータMを駆動する。これにより、交流モータMは、信号PWIによって指定されたトルクを発生するように駆動される。また、インバータ20は、モータ駆動装置100が搭載されたハイブリッド自動車または電気自動車の制動時、交流モータMにより発電された三相交流電力を信号PWIに基づいて直流に変換し、正極線PL2および負極線NLへ出力する。
【0023】
電流センサ52は、コンバータ10のリアクトルL1に流れる電流ILを検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。
【0024】
フィルタコンデンサC1は、正極線PL1と負極線NLとの間に接続される。電圧センサ54は、フィルタコンデンサC1の両端の電圧VLをコンバータ10の入力電圧として検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。
【0025】
平滑コンデンサC2は、正極線PL2と負極線NLとの間に接続される。平滑コンデンサC2は、コンバータ10からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をインバータ20へ供給する。
【0026】
電圧センサ56は、平滑コンデンサC2の両端の電圧VHをコンバータ10の出力電圧として検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。
【0027】
回転角センサ58は、交流モータMのロータの回転角θを検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。
【0028】
制御装置30は、パルス幅変調法を用いて、コンバータ10を駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWCとしてコンバータ10へ出力する。
【0029】
また、制御装置30は、図示されない外部のECU(Electronic Control Unit)から受ける交流モータMのトルク指令値TR1およびモータ回転数MRN1に基づいて、交流モータMを駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWIとしてインバータ20へ出力する。
【0030】
リアクトルL1を流れる電流ILは、コンバータ10のスイッチング素子Q1のオフ期間(スイッチング素子Q2のオン期間)とスイッチング素子Q1のオン期間(スイッチング素子Q2のオフ期間)とが交互に繰り返されることによって、図1に示すように、リップル成分を含んだ波形となる。電流ILのリップル幅ΔILは、リアクトルL1のインダクタンス値Lに反比例する。つまり、インダクタンス値Lが大きいほど、電流ILのリップル幅ΔILは小さくなる。
【0031】
図2は、リアクトルL1の構成を示す図である。図2を参照して、リアクトルL1は、コア部CRと、コア部CRの外周に巻き付けられたコイルCLとで構成される。なお、コイルCLに流れる電流が、リアクトルL1を流れる電流ILである。したがって、電流ILが流れることによって、コイルCLが作る磁場がコア部CRに作用することになる。
【0032】
コア部CRは、U字状のコアブロックBL1,BL2と、I字状のスペーサSとを含む。コアブロックBL1,BL2、スペーサSは、いずれも磁性体である。コアブロックBL1とコアブロックBL2とは、所定の隙間α(以下「ギャップα」ともいう)を隔てて互いに対向するように配置される。スペーサSは、ギャップαを満たすようにギャップαに挿入される。これにより、コア部CRの形状は、コアブロックBL1,BL2、スペーサSによって連続した環状となる。
【0033】
本発明の実施の形態1の最も特徴的な点は、電流ILの大きさを増加させた場合にスペーサSがコアブロックBL1,BL2よりも先に磁気飽和するように、スペーサSの磁気特性とコアブロックBL1,BL2の磁気特性との関係を設定した点である。なお、磁気飽和とは、磁性体に与える磁界の強さを増加しても磁性体内の磁束密度が上昇しなくなる状態をいう。磁気飽和した磁性体は、磁性体としての働きをしなくなる。
【0034】
図3は、コアブロックBL1,BL2およびスペーサSの磁気ヒステリシス曲線を示す。なお、磁気ヒステリシス曲線とは、磁性体に作用する外部磁気Hとその磁性体の磁化の強さを表す磁束密度Bとの関係を示す曲線であって、B−H曲線とも呼ばれる。図3において、横軸は外部磁気H(電流ILの大きさに相当)であり、縦軸は磁束密度Bである。曲線LbはコアブロックBL1,BL2の磁気ヒステリシス曲線を示し、曲線LbはスペーサSの磁気ヒステリシス曲線を示す。
【0035】
外部磁気Hを増加させた場合(電流ILの大きさを増加させた場合に相当)、図3に示すように、コアブロックBL1,BL2は、外部磁気Hが所定値H2となった時点で磁束密度Bが飽和する。これに対して、スペーサSは、外部磁気Hが所定値H2よりも小さい所定値H1となった時点で磁束密度Bが飽和する。つまり、電流ILの大きさを増加させた場合、スペーサSは、コアブロックBL1,BL2よりも先に磁気飽和する。このような磁気特性を有するスペーサSをギャップαに挿入した点が、本実施の形態1の最も特徴的な点である。たとえば、コアブロックBL1,BL2の材料を珪素鋼板とし、スペーサSの材料をフェライトとすればよい。
【0036】
図4は、電流ILとリアクトルL1のインダクタンス値Lとの関係を示す図である。図4に示すように、電流ILが所定値I0よりも小さい範囲では、コアブロックBL1,BL2およびスペーサSの双方が磁気飽和していない状態である。この状態では、インダクタンス値Lは、ギャップαにスペーサSを挿入しない場合(いわゆるエアギャップを設けた場合)のインダクタンス値(破線参照)よりも高い値となる。
【0037】
一方、電流ILが所定値I0となった時点で、スペーサSはコアブロックBL1,BL2よりも先に磁気飽和する。この影響でインダクタンス値Lが低下する。しかしながら、コアブロックBL1,BL2は未だ磁気飽和しない。そのため、電流ILが所定値I0よりも大きい範囲では、インダクタンス値Lは、エアギャップを設けた場合と実質的に同じ値となり、エアギャップを設けない場合に比べてインダクタンス値Lの低下幅を小さくすることができる。
【0038】
図5は、従来のリアクトルの特性と本実施の形態1に従うリアクトルL1の特性とを比較した表である。図5の比較表において、区分1〜区分3が従来のリアクトルの特性を示し、区分4が本実施の形態1に従うリアクトルL1の特性を示す。
【0039】
区分1に示されたリアクトルは、コア部にギャップが設けられていない。このリアクトルでは、電流ILが小さい常用域では、インダクタンス値Lが非常に大きい値となる。そのため、電流ILのリップル幅ΔILが小さくなり、リップル成分による損失を小さくすることができる。しかしながら、このタイプのリアクトルでは、電流ILが増加すると直ぐにコア部が磁気飽和してしまい、インダクタンス値Lが極端に小さい値となり、リップル幅ΔILが大きくなってしまう。このように電流ILが大きい過渡域でリップル幅ΔILが大きくなるため、電流ILの最大値が大きくなる。そのため、リアクトルに接続された半導体素子(本実施の形態1ではスイッチング素子Q1,Q2など)を流れる電流の最大値が大きくなってしまう。つまり、半導体素子の許容電流値を大きい値に設定する必要があり、コスト増加の要因となる。
【0040】
区分2に示されたリアクトルは、コア部にギャップが設けられる。このリアクトルでは、区分1で示されたリアクトルに比べて、過渡域でのインダクタンス値Lをやや大きくすることは可能であるが、常用域でのインダクタンス値Lが小さくなり、電流ILのリップル成分による損失が大きくなってしまう。
【0041】
区分3に示されたリアクトルは、区分2のリアクトルのサイズを全体的に大きくしたものである。このリアクトルでは、区分2に示されたリアクトルに比べて、サイズを大きくしたことに応じてインダクタンス値Lが全体的に大きくなるため、常用域での損失低減も、過渡域での半導体素子の最大電流値の抑制も可能であるが、リアクトルのサイズが大きくなってしまい、重量増加や搭載スペースの問題が生じる。
【0042】
これらに対し、区分4に示されたリアクトルは、区分2で示されたリアクトルのコア部のギャップαに、コアブロックよりも先に磁気飽和するスペーサを挿入したリアクトルである。つまり、区分4に示されたリアクトルは、本実施の形態1に従うリアクトルL1である。
【0043】
区分4に示されたリアクトルL1では、常用域ではコアブロックBL1,BL2およびスペーサSの双方が磁気飽和しない。そのため、区分4に示されたリアクトルL1を用いる場合、区分2で示されたリアクトルを用いる場合に比べて常用域のインダクタンス値Lを大きくすることができ、リップル幅ΔILを小さくすることができる。これにより、リップル成分による損失が小さくなりエネルギ効率が向上するので、最終的に車両の燃費が向上する。
【0044】
さらに、区分4に示されたリアクトルL1では、過渡域ではスペーサが先に磁気飽和するもののコアブロックは未だ磁気飽和しない。そのため、区分4に示されたリアクトルL1を用いれば、区分1で示されたリアクトルに比べて過渡域のインダクタンス値Lを大きい値に保つことができ、半導体素子を流れる電流の最大値が大きくなることを抑制することができる。
【0045】
さらに、区分4に示されたリアクトルL1は、区分2に示されたリアクトルと同じサイズであり、区分3に示されたリアクトルに比べて小さいサイズでよい。そのため、重量増加や搭載スペースの問題も解消する。
【0046】
以上のように、本発明の実施の形態1においては、リアクトルL1のコアブロックBL1,BL2の間のギャップαに、コアブロックBL1,BL2よりも先に磁気飽和するスペーサSを挿入した。これにより、本発明の実施の形態1に従うリアクトルL1は、大型化することなく、電流ILが小さい領域での損失を抑制することができ、かつリアクトルL1に接続される素子に流れる電流の最大値を抑制することができる。
【0047】
[実施の形態2]
実施の形態1では、コアブロックBL1とコアブロックBL2との間にスペーサSを挿入した。
【0048】
これに対し、実施の形態2では、コアブロックBL1とコアブロックBL2との間に、スペーサS1に加えて、スペーサS2を挿入する点に特徴を有する。
【0049】
図6は、リアクトルL1の、実施の形態2に従うコア部CRaの構成を示す図である。なお、コア部CRa以外の構造、機能などは、前述の実施の形態1と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0050】
図6に示すように、コア部CRaは、コアブロックとして、U字状のコアブロックBL1、BL2と、コアブロックBL1とコアブロックBL2との間に設けられたI字状の中間ブロックBL3とを含む。また、コア部CRaは、スペーサとして、スペーサS1,S2を含む。
【0051】
中間ブロックBL3は、コアブロックBL1,BL2に対してそれぞれギャップα1,α2を隔てて設けられる。ギャップα1の幅とギャップα2の幅とは同じである。なお、ギャップα1の幅とギャップα2の幅とが異なっていてもよい。
【0052】
スペーサS1は、ギャップα1を満たすようにギャップα1に挿入される。スペーサS2は、ギャップα2を満たすようにギャップα2に挿入される。スペーサS1,S2は、ともに、電流ILの大きさを増加させた場合にコアブロック(コアブロックBL1、BL2、中間ブロックBL3)よりも先に磁気飽和する特性を有する。
【0053】
さらに、スペーサS2は、電流ILの大きさを増加させた場合にスペーサS1よりも先に磁気飽和する特性を有する。
【0054】
図7は、電流ILと、コア部CRaを備えたリアクトルのインダクタンス値Lとの関係を示す図である。
【0055】
図7において、電流ILが所定値I1よりも小さい領域では、コアブロックBL1,BL2、中間ブロックBL3、スペーサS1,S2のいずれもが磁気飽和していない状態となる。この領域では、ギャップα1,α2にスペーサS1,S2を挿入しないエアギャップの場合(図7の破線参照)に比べてインダクタンス値が非常に高い値となる。そのため、車両の燃費が向上する。
【0056】
電流ILが所定値I1から所定値I2までに含まれる領域では、スペーサS2のみが磁気飽和し、他のコアブロックBL1,BL2、中間ブロックBL3、スペーサS1が磁気飽和していない状態となる。この領域では、インダンクタンス値は、電流ILが所定値I1よりも小さい領域に比べれば低下するが、エアギャップの場合(図7の破線参照)に比べれば高い値に保つことができる。これにより、リップル幅ΔILが小さくなりスイッチング素子Q1,Q2での発熱量が低減される。そのため、スイッチング素子Q1,Q2の耐熱温度を低く設定することができる。
【0057】
電流ILが所定値I2よりも大きい領域では、スペーサS2に加えてスペーサS1も磁気飽和するが、コアブロックBL1,BL2および中間ブロックが磁気飽和していない状態となる。この状態では、インダンクタンス値は、エアギャップの場合(図7の破線参照)と同じ値となる。そのため、ギャップが設けられていないリアクトルに比べて、インダクタンス値Lを大きい値に保つことができ、スイッチング素子Q1,Q2の許容電流値を低く設定することができる。
【0058】
このように、異なる磁気特性を有するスペーサS1,S2を組合せることで、電流ILとインダクタンス値Lとの関係をある程度は自由に設計することができる。
【0059】
なお、スペーサS1の磁気特性とスペーサS2の磁気特性とを異ならせる手法としては、たとえば、スペーサS1とスペーサS2とに異なる磁気特性を有する磁性体を用いればよい。また、ギャップα1とギャップα2とでギャップ幅を異なる値に設定してもよい。
【0060】
また、スペーサS1とスペーサS2とに同一の磁気特性を有する磁性体を用いた場合であっても、コイルCLが作る磁力が通過する面積(以下、「磁力通過面積」という)をスペーサS1とスペーサS2とで異ならせることによって、スペーサS1の磁気特性とスペーサS2の磁気特性とを異ならせることができる。
【0061】
図8は、リアクトルL1の、実施の形態2の変形例に従うリアクトルL1のコア部CRbの構成を示す図である。コア部CRbにおいては、図8に示すように、スペーサS2bの径γをスペーサS1の径βよりも小さくすることで、スペーサS2bの磁力通過面積をスペーサS1の磁力通過面積よりも小さくしている。このような構成によっても、スペーサS2がスペーサS1よりも先に磁気飽和する磁気特性となる。
【0062】
また、実施の形態2では、異なる磁気特性を有するスペーサS1,S2を組合せたが、コアブロックよりも先に磁気飽和するスペーサとエアギャップとを組合せるようにしてもよい。このような組合せによっても、スペーサS1,S2を組合せた場合と同様、電流ILとインダクタンス値Lとの関係をある程度自由に設計することができる。
【0063】
今回開示された実施の形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
10 コンバータ、20 インバータ、30 制御装置、52 電流センサ、54,56 電圧センサ、58 回転角センサ、100 モータ駆動装置、BA 直流電源、BL1,BL2 コアブロック、BL3 中間ブロック、C1 フィルタコンデンサ、C2 平滑コンデンサ、CL コイル、CR,CRa,CRb コア部、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、M 交流モータ、Q1〜Q8 スイッチング素子、S,S1,S2,S2b スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力で駆動力を得る車両に搭載される電力変換装置に用いられるリアクトルであって、
磁性体で構成されるコア部と、
前記コア部の外周に巻き付けられたコイルとを備え、
前記コア部は、
所定の長さの隙間を隔てて互いに対向する複数のコアブロックと、
前記複数のコアブロックの間に挿入されるスペーサとを含み、
前記スペーサは、前記コイルを流れる電流を増加させた場合に前記複数のコアブロックよりも先に磁気飽和する特性を有する、リアクトル。
【請求項2】
前記複数のコアブロックは、第1ブロックと、第2ブロックとを含み、
前記スペーサは、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの間に前記隙間を満たすように挿入される、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記複数のコアブロックは、第1ブロックと、第2ブロックと、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの間に設けられる中間ブロックとを含み、
前記中間ブロックは、第1の隙間を隔てて前記第1ブロックと対向するとともに、第2の隙間を隔てて前記第2ブロックと対向し、
前記スペーサは、前記第1の隙間に前記第1の隙間を満たすように挿入される第1スペーサと、前記第2の隙間に前記第2の隙間を満たすように挿入される第2スペーサとを含み、
前記第2スペーサは、前記コイルを流れる電流を増加させた場合に前記第1スペーサよりも先に磁気飽和する特性を有する、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記複数のコアブロックは、U字状の第1ブロックと、U字状の第2ブロックとを含み、
前記コア部は、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記スペーサによって環状に形成される、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項5】
電力で駆動力を得る車両に搭載される電力変換装置であって、
直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子と、
リアクトルとを備え、
前記リアクトルは、
磁性体で構成されるコア部と、
前記コア部の外周に巻き付けられ、一端が前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の間に接続されるコイルとを備え、
前記コア部は、
所定の長さの隙間を隔てて互いに対向する複数のコアブロックと、
前記複数のコアブロックの間に挿入されるスペーサとを含み、
前記スペーサは、前記コイルを流れる電流を増加させた場合に前記複数のコアブロックよりも先に磁気飽和する特性を有する、電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−199227(P2011−199227A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67451(P2010−67451)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】