説明

リチウムイオンキャパシタ用電極材料としての炭素材料の使用

【課題】リチウムイオンキャパシタの出力密度を向上させるための炭素材料が求められている。
【解決手段】リチウムイオンキャパシタ用電極材料としての下記炭素材料の使用、該炭素材料を含むリチウムイオンキャパシタ用電極、及び、該電極を含むリチウムイオンキャパシタ。
<炭素材料>
フェノールフタレインを800〜1200℃で加熱して得られる炭素材料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンキャパシタ用電極材料としての炭素材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンキャパシタは、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電可能であるという特性を活かして、例えば、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターの小型用途から、車載などの大型用途での利用が期待されている。リチウムイオンキャパシタの電極の活物質として、黒鉛や活性炭等の炭素材料が用いられる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】辰巳、加納、辻村、他著「電池革新が拓く次世代電源」株式会社エヌ・ティー・エス、2006年2月1日発行、126〜127ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオンキャパシタの出力密度を向上させるための炭素材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の[1]〜[6]に記載される発明に至った。すなわち、本発明は、
[1]リチウムイオンキャパシタ用電極材料としての下記炭素材料の使用;
<炭素材料>
フェノールフタレインを800〜1200℃で加熱して得られる炭素材料
[2]下記炭素材料と結合剤と溶剤とを含むリチウムイオンキャパシタ用電極材料;
<炭素材料>
フェノールフタレインを800〜1200℃で加熱して得られる炭素材料
[3]結合剤が、フッ素化合物の重合体である[2]に記載されるリチウムイオンキャパシタ用電極材料;
[4]溶剤が、アルコール溶媒、アミド溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、アミン溶媒、エーテル溶媒および水からなる群から選ばれる少なくとも1種である[2]に記載されるリチウムイオンキャパシタ用電極材料;
[5]下記炭素材料を含むリチウムイオンキャパシタ用電極;
<炭素材料>
フェノールフタレインを800〜1200℃で加熱して得られる炭素材料
[6][5]に記載される電極を含むリチウムイオンキャパシタ;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リチウムイオンキャパシタの出力密度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明を詳細に説明する。まず、本発明に用いられる炭素材料とその製造方法について説明する。
【0008】
本発明に用いられる炭素材料は、フェノールフタレインを800〜1200℃、好ましくは850〜1200℃、特に好ましくは900〜1100℃で加熱して得られる(以下、かかる工程における操作を「加熱処理」と称することもある。)。加熱時の昇温速度は、0.1℃/分〜10℃/分の範囲が好ましい。
【0009】
フェノールフタレインは、市販のものを用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して用いてもよい。
【0010】
加熱処理は、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。処理時間は、1分間〜24時間の範囲が好ましい。
【0011】
不活性ガス雰囲気下で加熱処理する場合、フェノールフタレインが入った密閉容器を不活性ガス雰囲気にして密閉し加熱処理してもよいし、フェノールフタレインが入った容器に不活性ガスを通気させながら加熱処理してもよい。
【0012】
加熱処理は、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、流動炉、高温焼成炉等の焼成炉を用いて行うことが好ましい。
【0013】
加熱処理を焼成炉で行う場合、例えば、焼成炉内を不活性ガス雰囲気に置換し、800〜1200℃の温度範囲で、フェノールフタレインを処理すればよい。
【0014】
加熱処理により得られた炭素材料をさらに粉砕してもよい。かかる粉砕には、ジェットミル等の衝撃摩擦粉砕機;遠心力粉砕機;チューブミル、コンパウンドミル、円錐形ボールミル、ロッドミル等のボールミル;振動ミル;コロイドミル;摩擦円盤ミル;等の微粉砕用の粉砕機が好適に用いられる。ジェットミルおよびボールミルがより好ましく、ボールミルを用いる場合、金属粉の混入を避けるために、ボールや粉砕容器は、アルミナ、メノウ等の非金属製であることがさらに好ましい。
【0015】
得られる炭素材料のメジアン径(体積基準)は、通常4〜10μmである。
【0016】
本発明に用いられる炭素材料の製造方法は、加熱処理を行う前にフェノールフタレインを酸化性ガス雰囲気下で400℃以下にて加熱する不融化工程を含んでいてもよい。
【0017】
不融化工程を具体的に説明すると、空気、HO、COまたはO等の酸化性ガスの存在下に、フェノールフタレインを、通常400℃以下で処理する工程である。
【0018】
前記不融化工程を経て得られたものは、フェノールフタレインが一部又は全部架橋して高分子量化したもの、及び/又は、フェノールフタレインが一部又は全部炭化したものである。
【0019】
不融化工程における処理は、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、流動炉、高温焼成炉等の焼成炉を用いて行うことが好ましい。
【0020】
次に、上記の炭素材料を含む電極について説明する。
【0021】
本発明の電極は、通常、結合剤等を用いて炭素材料を成形して得られる。好ましくは、集電体の上に本発明の炭素材料および結合剤等を含む混合物を成形する。具体的な製造方法としては、例えば、本発明の炭素材料と結合剤と溶剤と含む電極材料を集電体に、ドクターブレード法等により塗布または浸漬することにより成形し、得られた成形体を乾燥させる方法;本発明の炭素材料と結合剤と溶剤と含む電極材料を混練し、シート状に成形し、乾燥させ、得られたシート状の成形物を集電体表面に導電性接着剤等を介して接合させた後に、プレスおよび熱処理する方法;本発明の炭素材料と結合剤と溶剤とを含む電極材料を集電体上に成形した後、溶剤を除去し、次いで、得られたシート状の成形物を一軸または多軸方向に延伸処理する方法;が挙げられる。このように、本発明の電極の製造には、本発明の炭素材料と結合剤と溶剤とを含む電極材料が好適に用いられる。
【0022】
電極をシート状とする場合、その厚みは5〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0023】
集電体の材料としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅、金、銀、白金、アルミニウム合金またはステンレス等の金属;炭素素材または活性炭繊維に、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、鉛またはこれらの合金をプラズマ溶射またはアーク溶射することによって形成されたもの;ゴム又はスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等の樹脂に導電剤を分散させた導電性フィルム;が挙げられる。
【0024】
集電体の形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチング状若しくはエンボス状であるもの、またはこれらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板等)が挙げられる。エッチング処理等により、集電体表面に凹凸を形成させてもよい。
【0025】
結合剤としては、例えば、フッ素化合物の重合体が挙げられる。フッ素化合物としては、例えば、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート;パーフルオロドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−オクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル置換アルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロドデシルオキシエチル(メタ)アクリレート及びパーフルオロデシルオキシエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロオキシアルキル(メタ)アクリレート;フッ素化アルキル(炭素数1〜18)クロトネート;フッ素化アルキル(炭素数1〜18)マレートおよびフマレート;フッ素化アルキル(炭素数1〜18)イタコネート;パーフロオロヘキシルエチレン等のフッ素化アルキル置換オレフィン(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜17);テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等の二重結合炭素にフッ素原子が結合したフッ素化オレフィン(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜20);が挙げられる。
【0026】
結合剤のその他の例示としては、フッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体の付加重合体が挙げられる。かかる単量体としては、例えば、(シクロ)アルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート]、芳香環含有(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート]、アルキレングリコールもしくはジアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4)のモノ(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート]、(ポリ)グリセリン(重合度1〜4)モノ(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート[例えば、(ポリ)エチレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート]等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系誘導体[例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド]等の(メタ)アクリルアミド系単量体;(メタ)アクリロニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチルアクリルアミド等のシアノ基含有単量体;スチレンおよび炭素数7〜18のスチレン誘導体[例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレンおよびジビニルベンゼン]等のスチレン系単量体;炭素数4〜12のアルカジエン[例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン]等のジエン系単量体;カルボン酸(炭素数2〜12)ビニルエステル[例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、オクタン酸ビニル]、カルボン酸(炭素数2〜12)(メタ)アリルエステル[例えば、酢酸(メタ)アリル、プロピオン酸(メタ)アリル、オクタン酸(メタ)アリル]等のアルケニルエステル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体;炭素数2〜12のモノオレフィン[例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン及び1−ドデセン]等のモノオレフィン類;塩素、臭素又はヨウ素原子含有単量体[例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン]等のフッ素以外のハロゲン原子含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸;ブタジエン、イソプレン等の共役二重結合含有単量体;が挙げられる。
【0027】
また、付加重合体として、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体等の共重合体も挙げられる。また、カルボン酸ビニルエステル重合体は、ポリビニルアルコールなどのように、部分的または完全にケン化されていてもよい。
【0028】
結合剤は、フッ素化合物とフッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体との共重合体であってもよい。
【0029】
結合剤のその他の例示としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等の多糖類およびその誘導体;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂:ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;石油ピッチ;石炭ピッチ;が挙げられる。
【0030】
結合剤として、複数種の結合剤を併用してもよい。結合剤としては、フッ素化合物の重合体が好ましく、フッ化ビニリデンの重合体であるポリフッ化ビニリデンがより好ましい。
【0031】
電極における結合剤の配合量としては、上記の炭素材料100重量部に対し、0.5〜30重量部の範囲が好ましい。より好ましくは2〜30重量部の範囲である。
【0032】
また、溶剤としては、通常、結合剤を溶解しうる有機溶剤または水が使用され、例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等のアルコール溶媒;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル溶媒;ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン溶媒;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;および水が好ましく用いられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、水を溶剤として用いる場合は、さらに分散剤や増粘剤等を加えてSBR等のラテックスで炭素材料をスラリー化することもできる。溶剤の使用量は、炭素材料に対して、0.8〜2.0重量倍であることが好ましい。
【0033】
結合剤が増粘する場合には、集電体への塗布を容易にするために、可塑剤を使用してもよい。
【0034】
次に、本発明の電極を用いたリチウムイオンキャパシタについて説明する。リチウムイオンキャパシタとは、通常、正極、セパレータ、電解液および負極を含み、リチウムイオンおよび電解質イオンの吸脱着により充放電を行うものであり、電気二重層キャパシタのエネルギー密度を改善したキャパシタである。
【0035】
本発明のリチウムイオンキャパシタにおいては、通常、本発明の電極は負極として用いられる。
【0036】
正極は、通常、リチウムイオンと、例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンとを可逆的に担持できる材料、導電材および結合剤を含む合剤を集電体上に担持したものである。
【0037】
リチウムイオンとアニオンとを可逆的に担持できる材料の具体例としては、例えば、炭素の同位体が用いられ、電気二重層キャパシタで用いられる電極活物質が広く使用できる。炭素の同素体の具体例としては、活性炭、ポリアセン(PAS)、カーボンウィスカ及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末または繊維を使用することができる。この中でも、活性炭が好ましい。
【0038】
正極に含まれる結合剤は、上記本発明の電極における結合剤として例示したと同じものが例示される。
【0039】
正極に含まれる導電材は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック等が挙げられる。もちろん、上記の炭素材料を用いてもよい。導電材は、それぞれ単独で用いてもよいし、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いるといった複合導電材系を選択してもよい。
【0040】
本発明のリチウムイオンキャパシタに用いる電解液としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解質溶液が挙げられる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiC(SOCF、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlClが挙げられる。これらリチウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、フッ素を含むLiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、およびLiC(CFSOからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0041】
電解液に用いる有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート溶媒;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;3−メチル−2−オキサゾリドン等のカーバメート溶媒;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトン等の含硫黄溶媒;上記の各有機溶媒にフッ素置換基を導入して得られる溶媒;を用いることができる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いることが好ましい。
【0042】
セパレータは、作用極と対極とを分離し、電解液を保持する役割を担うものであり、通常、大きなイオン透過度と機械的強度とを有する絶縁性の膜が用いられる。
【0043】
セパレータとしては、例えば、ビスコースレーヨンや天然セルロース等の抄紙、セルロースやポリエステル等の繊維を抄紙して得られる混抄紙、電解紙、クラフト紙、マニラ紙、マニラ麻シート、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、ガラス繊維、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリエステル、アラミド繊維、ポリブチレンテレフタレート不織布、パラ系全芳香族ポリアミド、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンと6フッ化プロピレンとの共重合体、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂等の不織布または多孔質膜が挙げられる。
【0044】
また、シリカ等のセラミック粉末粒子と前記結合剤とからなる成形物をセパレータとして用いてもよい。該成形物は、通常、作用極および対極と一体成形される。また、ポリエチレンやポリプロピレン等を用いたセパレータについては、親水性を向上させるために界面活性剤やシリカ粒子を混合されてもよい。さらに、セパレータには、アセトン等の有機溶媒やジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤等が含有されていてもよい。
【0045】
セパレータとして、プロトン伝導型ポリマーを用いてもよい。
【0046】
セパレータとしては、電解紙、ビスコースレーヨンまたは天然セルロースの抄紙、クラフト紙、マニラ紙、セルロースまたはポリエステルの繊維を抄紙して得られる混抄紙、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、マニラ麻シートおよびガラス繊維シートが好ましい。
【0047】
セパレータの孔径は、0.01〜10μmの範囲が好ましい。セパレータの厚さは、1〜300μmの範囲が好ましく、5〜30μmの範囲がより好ましい。
【0048】
セパレータは空孔率の異なるセパレータを積層したものであってもよい。ポリオレフィン多孔質膜とポリエステル樹脂多孔質膜とからなるセパレータが好適である。
【0049】
本発明のリチウムイオンキャパシタは、上記の正極、セパレータ、電解液および負極を、常法により組み立てて製造することができる。
【0050】
本発明の電極は、繰り返し使用しても優れた性能を示す。
【0051】
本発明において、リチウムイオンキャパシタの出力密度を向上させるとは、出力密度を高くすることをいう。上記の炭素材料を用いれば、電極の電気抵抗を低下させることができ、その結果として出力密度が向上すると考えられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。実施例において、「部」は重量部を意味する。
【0053】
参考例1(炭素材料の製造)
焼成炉中を窒素雰囲気下とした後、窒素ガスを毎分0.1L/g(フェノールフタレインの重量)の割合で流通させながら、室温から毎分5℃の割合で昇温して1000℃に到達するまでフェノールフタレイン(和光純薬工業(株)より購入した試薬特級)を加熱し、引き続き、窒素ガスを毎分0.1L/g(フェノールフタレインの重量)の割合で流通させながら、1000℃で1時間保持した後、冷却して本発明の炭素材料を得た。次いで、ボールミル(メノウ製ボール、28rpm、5分間)で粉砕し、粉末状の炭素材料を得た。
【0054】
実施例1(リチウムイオンキャパシタの製造およびその評価)
参考例1で得た炭素材料91部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)9部(固形分)にN−メチル−2−ピロリドンを適量加えた混合物を混錬した後、ドクターブレード法により厚さ20μmの銅集電体上に塗布し、50℃で2h予備乾燥した。次いで、乾燥された塗布物を、直径1.45cmの円形に切断して、電極を作成し、得られた電極を120℃、8時間真空乾燥した。得られた電極には、炭素材料及びPVDFの混合物2.95mgが塗布されていた。真空乾燥後、得られた電極を負極とし、正極としてリチウム箔、セパレータとしてニッポン高度紙工業社製TF40−50、電解液として濃度1モル/リットルのLiPF/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(IEC/JIS規格)のコインセルを用いて、2極式セルを組み立てた。
リチウムのドープ法・アンドープ法は、特許第2519454号公報(6ページ)に、一定電流下でも一定電圧下でも、又電流および電圧の変化する条件のいずれで行ってもよいと記載されていることから、定電流−定電圧充電を用いた。
充放電評価装置(東洋システム(株)製「TOSCAT(登録商標)−3100」)を用い、前記2極式セルを、0Vに達するまで電流密度40mA/gで定電流充電し、0Vに到達後、充電量が486mAh/gに到達するまで定電圧位充電を実施した。その後、40mA/gの定電流にて、充電量が243mAh/gになるまで放電を実施した。これにより、プレドープ済電極を作成した。プレドープの方法は炭素材料学会 第3回10月セミナー資料133ページ〜138ページ(2008年10月開催)に記載されているリチウムインキャパシタの評価方法に記載されている方法を参考にした。
【0055】
前述の方法により得られたプレドープ済電極を負極とし、正極として市販活性炭電極(宝泉株式会社製)、セパレータとしてニッポン高度紙工業社製TF40−50、電解液として濃度1モル/リットルのLiPF/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(IEC/JIS規格)のコインセルを用いて、リチウムイオンキャパシタを組み立てた。正極活物質と負極活物質の重量バランスは、2.5:1であった。充放電評価装置(東洋システム(株)製「TOSCAT(登録商標)−3100」)を用い、前記リチウムイオンキャパシタを、3.8Vに達するまで電流密度40mA/gで3.5時間定電流充電した後、電流密度2mA/cmにて、2.2Vに達するまで放電された積算電気量を測定したところ、放電容量は0.19mAhであった。
その後、3.8Vに達するまで電流密度40mA/gで3.5時間定電流充電した後、電流密度15mA/cmにて、2.2Vに達するまで放電された積算電気量を測定したところ、放電容量は0.14mAhであった。また、この時の放電開始直後から1秒間のIRドロップから算出した抵抗の値は、11.8Ωであった。
その後、3.8Vに達するまで電流密度40mA/gで3.5時間定電流充電した後、電流密度30mA/cmにて、2.2Vに達するまで放電された積算電気量を測定したところ、放電容量は0.11mAhであった。
ここで、放電電流密度については、特開2006−286841号公報に記載されている値を参考にした。また充電電圧、放電電圧については特開2006−303118号公報に記載されている値を参考にした。
【0056】
参考例2(炭素材料の製造)
焼成時の最高到達温度を1050℃とする以外は、実施例1と同様にして粉末状の炭素材料を得た。
【0057】
実施例2(リチウムイオンキャパシタの製造およびその評価)
実施例1で得られた炭素材料の代わりに、実施例2で得られた炭素材料を使用し、プレドープ量を237mA/gとする以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタの性能を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、リチウムイオンキャパシタの出力密度を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンキャパシタ用電極材料としての下記炭素材料の使用。
<炭素材料>
フェノールフタレインを800〜1200℃で加熱して得られる炭素材料
【請求項2】
下記炭素材料と結合剤と溶剤とを含むリチウムイオンキャパシタ用電極材料。
<炭素材料>
フェノールフタレインを800〜1200℃で加熱して得られる炭素材料
【請求項3】
結合剤が、フッ素化合物の重合体である請求項2に記載されるリチウムイオンキャパシタ用電極材料。
【請求項4】
溶剤が、アルコール溶媒、アミド溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、アミン溶媒、エーテル溶媒および水からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載されるリチウムイオンキャパシタ用電極材料。
【請求項5】
下記炭素材料を含むリチウムイオンキャパシタ用電極。
<炭素材料>
フェノールフタレインを800〜1200℃で加熱して得られる炭素材料
【請求項6】
請求項5に記載される電極を含むリチウムイオンキャパシタ。

【公開番号】特開2011−146672(P2011−146672A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154529(P2010−154529)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】