説明

リチウムイオンキャパシタ

【課題】量産性に優れ予め負極にリチウムイオンを十分に吸蔵させることができるリチウムイオンキャパシタを提供する。
【解決手段】リチウムイオンキャパシタ30は、アルミニウム箔W1に活物質合剤W2が塗着された正極板と、銅箔W3に活物質合剤W4が塗着された負極板とをセパレータ4を介して捲回した電極群7と、非水電解液と、電極群7および非水電解液を収容する円筒状容器8とを備えている。薄板状の金属リチウムを銅箔で保持した積層体を電極群7内に負極板と導通し正極板と絶縁した状態で予め配置しておき、積層体は、金属リチウムが負極板の活物質合剤を構成する負極活物質に吸蔵されることで銅箔のみが残存配置されており、容器8の内周面がポリアミドイミドでコーティングされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオンキャパシタに係り、特に、金属箔に活物質合剤が塗着された正極板と、金属箔に活物質合剤が塗着された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群を備えたリチウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題がクローズアップされる中、太陽光、風力発電等によるクリーンエネルギの蓄電システムや、自動車、ハイブリッド電気自動車等の移動体用の主電源ないし補助電源として蓄電デバイスが着目されている。蓄電デバイスとしては、従来、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が知られており、とりわけ、近時、リチウムイオン電池の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
また、最近では、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせた大容量(例えば、500F以上)のリチウムイオンキャパシタないしハイブリッドキャパシタの研究開発も行われている(例えば、特許文献1、2参照)。リチウムイオンキャパシタは、一般に、正極活物質に活性炭、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材が用いられており、正負極を、セパレータを介して配置し、リチウム塩を含む非水電解液で浸潤した構成が採られている。
【0004】
リチウムイオンキャパシタは、予め負極にリチウムイオンが吸蔵ないしドープされていることにより、負極電位が通常の電気二重層キャパシタよりより低く保たれるため、使用電圧範囲を広くとることができ、また、正極充放電機構として、通常の電気二重層キャパシタで利用される陰イオンの吸着に加え、陽イオンの吸着も利用できるため、容量を原理的に倍取り出すことができる。また、リチウムイオン電池に比べ、容量は小さいものの、内部抵抗が小さく出力特性の点で優れるとともに、長寿命である、という利点がある。なお、本発明に関連する技術として、リチウムイオンを吸蔵ないしドープさせるための金属リチウムを電極群内に捲回配置したリチウムイオンキャパシタが開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−294539号公報
【特許文献2】特開2006−286841号公報
【特許文献3】特開2007−067105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、リチウムイオンキャパシタの研究開発は盛んであるが、現在のところ、発明者らの知る限り、具体的な量産品として未だ市場に投入されていない。また、特許公報を参照する限り、量産前の試験的な技術が殆どであり、具体的に量産可能なリチウムイオンキャパシタの技術や量産に適した製造技術については今後の研究の余地がある。さらに、リチウムイオンを負極活物質に吸蔵ないしドープさせる際に、リチウムが負極の金属構成部材、とりわけ、電池容器の内周面に析出すると、負極活物質への吸蔵ないしドープが不完全となり、リチウムイオンキャパシタの性能(容量)が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、量産性に優れ予め負極にリチウムイオンを十分に吸蔵させることができるリチウムイオンキャパシタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、リチウムイオンキャパシタであって、金属箔に活物質合剤が塗着された正極板と、金属箔に活物質合剤が塗着された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、非水電解液と、前記電極群および前記非水電解液を収容する円筒状容器と、を備え、薄板状の金属リチウムを金属箔で保持した積層体を前記電極群内に前記負極板と導通し前記正極板と絶縁した状態で予め配置しておき、前記積層体は、前記金属リチウムが前記負極板の活物質合剤を構成する負極活物質に吸蔵されることで前記金属箔のみが残存配置されており、前記容器の内周面が樹脂材で被覆されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、薄板状の金属リチウムを金属箔で保持した積層体を電極群内に負極板と導通し正極板と絶縁した状態で予め配置しておいた金属リチウムが、負極板の活物質合剤を構成する負極活物質に吸蔵されることで、積層体は金属箔のみが電極群内に残存配置される。リチウムイオンの負極活物質への吸蔵の際、リチウムが容器の内周面に析出すると、上述したように、リチウムイオンキャパシタの充放電性能(容量)の低下を招くおそれがあるが、容器の内周面が樹脂材で被覆されているので、容器の内周面へのリチウム析出を防止でき、充放電性能の低下を払拭できる。
【0010】
本発明において、容器は有底缶であり、容器が負極の極性を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器の内周面が樹脂材で被覆されているので、容器の内周面へのリチウム析出を防止できることができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を円筒状リチウムイオンキャパシタに適用した実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオンキャパシタ30(以下、キャパシタ30と略称する。)は、ニッケルメッキが施されたスチール製有底円筒状の容器(缶)8を有している。容器8の内底面を除く内周面は、例えば、ポリアミドイミド等の樹脂材で被覆(コーティング)されている。容器8内には、中空円筒状で縦方向に複数本(本例では3本)のスリットが形成されたポリプロピレン製軸芯1に帯状の正極板および負極板がセパレータを介して配置された電極群7が収容されている。なお、本例では、容器8の外径は40mm、内径は39mmである。
【0014】
<正極>
図2(A)、(B)に示すように、正極板2は、例えば、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)W1の両面に、正極活物質として活性炭を含む正極活物質合剤W2が塗着されている(図1も参照)。アルミニウム箔W1は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる正極リード片2aと、正極リード片2aに隣接して多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した正極活物質合剤W2が塗着されている。
【0015】
本例では、正極板2は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=2800mm、幅方向の長さa=90mm、孔明き形成部の幅方向の長さb=60mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、孔明き形成部のうち貫通孔未形成部の幅方向の長さβ=0.5mm、孔明き形成部の正極活物質合剤W2の片面塗工厚=40μm(両面で80μm)、正極活物質合剤W2のかさ密度=0.5g/cm。また、詳細を後述するように、孔明き形成部のうちスラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ流動で合剤が塗着される幅方向の長さα=0.2mm(概ね貫通孔1個分の幅に相当)に設定されている。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う正極リード片2aの間隔dは50mm、正極リード片2aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な正極活物質合剤の塗着幅は(e+α)、孔明き形成部の幅方向の長さb=e+(α+β)、正極リード片2aの先端からの正極活物質合剤が未塗着の幅=c+βである。
【0016】
図2(A)および図3に示すように、正極活物質合剤W2が塗着された孔明き形成部の正極リード片2a側の端部の断面は、上述したように、スラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ状態で最も外側の(貫通孔未形成部に最も近い)貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込むことで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に(角度δ参照)傾斜している。
【0017】
<負極>
一方、負極板3も正極板2とほぼ同じ構造を有している。すなわち、負極板3は、例えば、厚さ16μmの銅箔(負極集電体)W3の両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質合剤W4が塗着されている。銅箔W3は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる負極リード片3aと、負極リード片3aに隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した負極活物質合剤W4が塗着されている。
【0018】
本例では、負極板3は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=3000mm、幅方向の長さa=92mm、孔明き形成部の幅方向の長さb=62mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、孔明き形成部のうち貫通孔未形成部の幅方向の長さβ=0.5mm、孔明き形成部の負極活物質合剤W4の片面塗工厚=20μm(両面で40μm)、負極活物質合剤W4のかさ密度=1.0g/cm。また、詳細を後述するように、孔明き形成部のうちスラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ流動で合剤が塗着される幅方向の長さα=0.2mm(概ね貫通孔1個分の幅に相当)に設定されている。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率は20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う負極リード片3aの間隔dは50mm、負極リード片3aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な負極活物質合剤の塗着幅は(e+α)、孔明き形成部の幅方向の長さb=e+(α+β)、負極リード片3aの先端からの負極活物質合剤が未塗着の幅=c+βである。
【0019】
また、正極板2と同様に、負極活物質合剤W4が塗着された孔明き形成部の負極リード片3a側の端部の断面は、上述したように、スラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ状態で最も外側の(貫通孔未形成部に最も近い)貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込むことで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に傾斜している。
【0020】
<電極群>
図1に示すように、正極板2と負極板3とは、両極板が直接接触しないように、厚さ50μmの2枚の紙セパレータ4を介して、軸芯1を中心として断面渦巻き状に捲回され、電極群7が構成されている。なお、電極群7内には、積層体(図10の符号20A、20B参照)が捲回されているが、その内容については後述する。上述した正極リード片2aと負極リード片3aとは、それぞれ電極群7の互いに反対側に配置されており、セパレータ4の端から所定長さ(例えば、4mm)はみ出している。電極群7は、正極板2、負極板3、セパレータ4等の長さを調整することで、所定の内直径(例えば、9mm)および所定の外直径(例えば、38±0.1mm)に設定されている。なお、電極群7の捲回終端部は、巻き解けを防止するために、粘着テープを貼り付けることで固定されている。
【0021】
<キャパシタ構造>
電極群7の下側には、電極群7の下端側端面に対向するように、負極板3からの電位を集電するための銅製の負極集電リング6が配置されている。負極集電リング6の内周面には軸芯1の下端部外周面が嵌着されている。負極集電リング6の外周縁には、負極板3から導出された負極リード片3aの先端部が超音波溶接で接合されている。負極集電リング6の下部には電気的導通のための銅製の負極リード板9が配置されており、負極リード板9は負極外部端子を兼ねる(負極性を呈する)容器8の内底部に抵抗溶接で接合されている。負極集電リング6および負極リード板9はエポキシ樹脂等の樹脂製材11で覆われ、樹脂製材11は負極集電リング6の上部から容器8の内底面まで配されている構成を採用することができる。この場合、容器8の底部は樹脂製材11により詰め物がなされた状態となっている。
【0022】
一方、電極群7の上側には、電極群7の上端面と対向するように、軸芯1のほぼ延長線上に正極板2からの電位を集電するためのアルミニウム製の正極集電リング5が配置されている。正極集電リング5は軸芯1の上端部に嵌着されている。正極集電リング5の周囲から一体に張り出している鍔部周縁には、正極板2から導出された正極リード片2aの先端部が超音波溶接で接合されている。
【0023】
正極集電リング5の上方には、正極外部端子を兼ねる容器蓋12が配置されている。容器蓋12は、下側に配置された蓋ケース12aと、上側に配置された蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁を蓋キャップ12bにかしめることで組み立てられている。なお、蓋ケース12aには、内圧上昇により開裂する開裂溝が形成されている。正極集電リング5の上面には、リボン状のアルミニウム箔を積層した2本の正極リード板10のうち1本の一側が接合されている。正極リード板10のもう1本の一側は、容器蓋12を構成する蓋ケース12aの外底面に接合されている。また、2本の正極リード板10の他端同士も接合されている。
【0024】
容器蓋12は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂製ガスケット13を介して容器8の上部にかしめられている。このため、キャパシタ30の内部は密封されている。また、容器8内には、電極群7全体を浸潤可能な量の非水電解液(不図示)が注液されている。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比30:50:20の割合で混合した溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットル溶解したものが用いることができる。なお、本例のキャパシタ30の定格容量は700Fである。
【0025】
<積層体>
ここで、負極板2の負極活物質(本例では非晶質炭素)にリチウムイオンを吸蔵させるための積層体について説明する。
【0026】
図8(A)、(B)に示すように、積層体20は、薄板状の金属リチウムW5と、2枚の銅箔W3とで構成されている。銅箔W3は負極板3を構成する銅箔W3と同じものを所定寸法に切断して用いることができる。すなわち、銅箔W3は、長手方向に沿う一側にタブ20a(負極リード片3aと同じものであるが混同を避けるためにタブという。)が形成されたタブ形成部と、タブ形成部に隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とを有しており、金属リチウムW5は、2枚の銅箔W3の孔明き形成部に当接して挟持されている。なお、負極板3で説明したように、孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。
【0027】
銅箔W3に形成された孔明き形成部の面積は金属リチウムW5の面積より大きく、金属リチウムW5は孔明き形成部の中央部に配置されている。金属リチウムW5を銅箔W3に形成された孔明き形成部で挟持し金属リチウムW5と銅箔W3を重ねてロールで圧接すると、金属リチウムW5は粘性を発揮し、銅箔W3、金属リチウムW5、銅箔W3の積層状態を保持することができる。
【0028】
タブ20aは銅箔W3を切り欠くことにより櫛状に形成されており、所定間隔で複数のタブ20aが形成されていることが好ましいが、上述したように、負極板3の銅箔W3を共用しており、後述するように本例では、積層体20は電極群7の内周部および外周部の2箇所に配置(挿入)捲回されるため(図10参照)、内周部に配置捲回される積層体20のタブ20aが1つとなる場合もある。また、2枚の銅箔W3に形成されたタブ20aは同じ方向に導出されている。なお、銅箔W3は、長手方向に沿って、孔明き形成部のタブ形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している(図2の幅βを有する箇所)。
【0029】
また、金属リチウムW5の総充填量(本例では内周部と外周部とに配置捲回された2つの積層体の金属リチウムW5の合計量)は、負極板3の活物質合剤を構成する負極活物質にリチウムイオンを十分吸蔵可能な量に設定されるが、このような総充填量は負極活物質の材質、量を考慮して論理計算を行うとともに、実際にリチウムイオンの吸蔵を行って十分に吸蔵されたかを確認することで設定することができる。これにより、積層体20を量産する場合の金属リチウムW5の面積および厚さの設定が可能となる。なお、本例では、金属リチウムW5として厚さ500μmを選択した。
【0030】
上述したように、本実施形態では、積層体20は、電極群7内で内周部(軸芯1の近傍)と外周部の2箇所に捲回されている(図10参照)。すなわち、負極板3が挟まれたセパレータ4の2面間で負極板3の捲回延長線上に配置されるように、負極板3の捲回前および捲回後に挿入捲回されている(図9も参照)が、配置ないし捲回詳細についてはさらに後述する。
【0031】
(製造方法)
次に、本実施形態のキャパシタ30の量産方式による製造方法を中心に説明する。
【0032】
<活物質合剤の調製>
まず、正極活物質合剤および負極活物質合剤を調製する。正極活物質合剤は、例えば、正極活物質として比表面積が1000m/g以上の活性炭と、結着剤としてアクリル系バインダと、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを重量(質量)比で85:7:3:5となるように混合し、これに水(分散溶媒)を添加、混練して正極スラリを作製する。
【0033】
一方、負極活物質合剤は、例えば、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出可能な非晶質炭素と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素材とを重量(質量)比90:5:5となるように混合し、これに分散溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)を添加、混練して負極スラリを作製する。
【0034】
<塗工>
次に、集電体へのスラリの塗工について説明する。以下、説明を簡単にするために、アルミニウム箔W1へのスラリの塗工について例示するが、銅箔W3についても同じである。図4(B)に示すように、アルミニウム箔Wへの塗工は、それぞれ塗工口を有する4つの塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bと、攪拌機(不図示)を有し各塗工ヘッドにスラリを供給するスラリ貯留槽21C、21Dと、を備えた塗工装置21により行われる。上述したように作製された正極スラリは、スラリ貯留槽21C、21Dに一時的に貯留される。
【0035】
図4(A)に示すように、本例の塗工装置21は、塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工し、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工することで、合計4倍幅分の正極板2の塗工を同時に行うものである。
【0036】
アルミニウム箔供給部から供給されたアルミニウム箔Wは、図示しない駆動ローラおよび従動ローラを介して塗工装置21内を略垂直方向(図4の矢印V方向)に搬送される(図6も参照)。アルミニウム箔Wは搬送方向と交差する幅方向で長さがAに設定されている。塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとは、搬送されるアルミニウム箔Wに対し、一面側(表面側)、他面側(裏面側)にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド21Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている(図4(B)参照)。同様に、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとは、搬送されるアルミニウム箔Wの一面側、他面側にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド22Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている。このため、本例では、図4(A)に示すように、アルミニウム箔Wの搬送方向上流側から下流側に向けて、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22A、塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aの順で配設されている。なお、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aとが垂直方向でずれて配設されているのは、アルミニウム箔Wの幅に対し各塗工ヘッドを並べた合計幅が大きいためである。
【0037】
各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bの塗工口の搬送されるアルミニウム箔Wの幅方向(搬送方向と交差する方向)に対する長さは、アルミニウム箔W1のスラリ塗工幅eの2倍の2eに設定されており、塗工ヘッド21A、21Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔Wの一側端(図4(A)に示す右端)を基準として順に、幅方向の一端(右端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(左端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。一方、塗工ヘッド22A、22Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔Wの他側端(図4(A)に示す左端)を基準として順に、幅方向の一端(左端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(右端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。塗工ヘッド21A、21Bの塗工口の左端と塗工ヘッド22A、22Bの塗工口の右端とには、c+2(α+β)の間隔が設定されている。
【0038】
塗工装置21では、スラリ貯留槽21C、21Dに所定エア圧を加えることによりスラリ貯留槽21C、21D内に貯留されたスラリが各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに供給され、各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに所定のエア圧を加えることにより、各塗工ヘッドの塗工口から、搬送されるアルミニウム箔Wにスラリを表裏の両面とも略均等な厚さで塗工することができる。
【0039】
図5(A)に示すように、例えば、塗工機22Bの塗工口から吐出されたスラリは、搬送されるアルミニウム箔Wに形成された貫通孔内のエアを排出して他面(表面)側まで到達し、搬送されるアルミニウム箔Wに対して塗工ヘッド22Bの他面側に配置された塗工ヘッド22Aの塗工口からスラリが吐出されることにより、図5(B)に示すように、搬送されるアルミニウム箔Wの他面側にもスラリが塗工される。
【0040】
<乾燥>
図6に示すように、塗工装置21の下流側には乾燥機29が配置されている。アルミニウム箔Wに塗工されたスラリ(分散溶媒を含む)は、塗工装置21を経て乾燥機29に至るまで、略垂直方向に搬送され、塗工装置21によるスラリ塗工幅2eから、スラリが乾燥する前に、上述したように、貫通孔未形成部に最も近い貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込む(図3も参照)ことで、アルミニウム箔Wへのスラリ塗工幅は2(e+α)となり、2α分塗工幅が広がる(図7も参照)。
【0041】
乾燥機29は、垂直方向に搬送されるアルミニウム箔Wに対し水平方向両側に複数のヒータなどの熱源が所定間隔で配置されており、アルミニウム箔Wに塗工されたスラリから分散溶媒を蒸発させるものである。スラリが塗工されたアルミニウム箔Wは、乾燥機29内を略垂直方向に搬送され、ヒータなどの熱源による加熱よりスラリを構成する分散溶媒が蒸発し、アルミニウム箔Wには正極活物質合剤が2(e+α)の幅でそれぞれ塗着され(図7参照)、乾燥後に金属や各種プラスチックなどでできたパイプ状のコアを芯とした巻き取り装置にてロール状に巻き取る。
【0042】
<リード片形成>
乾燥機29を出てロール状に巻き取られた正極板をリード片形成装置に移して引出し、スラリが塗工されていないアルミニウム箔W部分cを切り欠くことにより所定間隔で正極リード片2aを形成する。上述した切り欠きは、金属ローラに所定形状の刃物を埋め込んだ専用ローラ対23を配置し、専用ローラ対23を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、正極板をこのローラ対に通過させることにより、スラリを塗工していないアルミニウム箔W部分に所定間隔で複数の正極リード片2aを形成する。この工程は専用ローラ対23に代え、所定形状に刃物を埋め込んだ打ち抜き体を装着したプレス装置を、正極板の間欠送りと連動して作動させる工程でもよい。
【0043】
<プレス>
専用ローラ対23の下流側には、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔Wの両面を所定の線圧でプレスするヒートローラ対24が配置されている。ヒートローラ対24を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、ローラ内には、ニクロム線やヒートランプ等の熱源が内蔵されている。正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔は、ヒートローラ対24間を搬送され、上述した厚さおよびかさ密度に設定される。なお、以上の乾燥、プレス工程を経ることにより、正極スラリに対し正極活物質合剤の比重は1.25、固形分は30%、負極スラリに対し負極活物質合剤の比重は1.30、固形分は50%となる。
【0044】
<分離>
ヒートローラ対24の下流側には、ループ機構25および切断装置26が配設されている。ループ機構25は、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔Wの切断装置26への搬送を調整するものであり、切断装置26は、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔Wを切断することにより幅方向で4枚分の正極板2に分離するものである。
【0045】
ループ機構25は、アルミニウム箔Wをカイト状にループ搬送するための5つのローラで構成されている。5つのローラのうち1つのローラは水平方向に移動可能であり、常時矢印H方向にバネで付勢されている。このため、切断装置26によるアルミニウム箔Wの切断の際に、切断装置26内でアルミニウム箔Wの搬送が停止されても、1つのローラがバネで付勢され水平方向に移動することにより、搬送されるアルミニウム箔Wの張力を一定に保つことができる。
【0046】
切断装置26は、ループ機構25の下流側に配置されており、アルミニウム箔Wに対して移動(進退)可能な板状の台座と、同じく、アルミニウム箔Wに対して移動(進退)可能で複数の切断部を有するカッタと、これらの台座およびカッタの両側に配設された駆動ローラとで構成されている。なお、駆動ローラは、ループ機構25までのアルミニウム箔Wの搬送駆動源とは異なる駆動源で動作する。
【0047】
切断装置26内では、切断の際、アルミニウム箔Wの搬送が停止され(上述した駆動ローラの回転を停止し)、台座をアルミニウム箔W側に進出させ、カッタを、アルミニウム箔Wを介して台座方向に所定スピードで進出させることで、アルミニウム箔Wを幅方向で4枚分の正極板2に分離する。
【0048】
図7は、切断装置26によるアルミニウム箔Wの切断位置を示したものである。ここで、確認のため、図4と図7とを比較することで、スラリ塗工幅と活物質塗着幅との相違について簡単に説明する。上述したように、スラリ塗工幅はそれぞれ2e、両端の未塗工幅はc+(α+β)、2つのスラリ塗工幅間の未塗工幅は{c+2(α+β)}である(図4参照)。一方、乾燥機29に搬送されるまでにスラリ塗工幅は2α分広がるため、図7に示すように、活物質塗着幅はそれぞれ2(e+α)、両端の未塗工幅はc+β、2つの活物質塗着幅間の未塗工幅はc+2βとなる。
【0049】
アルミニウム箔Wの両側(左端側および右端側)には、上述した正極リード片2aが形成され、正極活物質合剤が塗着された合剤塗着幅間の中央にも正極リード片2aが形成される。また、正極活物質合剤が塗着された合剤塗着幅2(e+α)の中央も切断される。従って、このような塗工方式および切断方式を採用することにより、アルミニウム箔Wの幅を正極リード片2aの長さcの分を節約することができるとともに、正極板4倍幅分の正極リード片2aを一度に形成することができる。
【0050】
図6に示すように、切断装置26では、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔Wを所定距離ずつバッチ処理により幅方向に4つに分離する。この間、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向に移動しアルミニウム箔Wのループ機構25内での張力が保たれている。切断装置26での切断(カッタによる正極板2の幅方向での4枚分の分離)が終了すると、台座およびカッタをアルミニウム箔Wから退避する方向へ移動させ、駆動ローラを回転させる。これにより、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向とは反対側に移動しアルミニウム箔Wのループ機構25内での張力を保つとともに、新たに(連続して)切断対象となるアルミニウム箔Wの部分を切断装置26に搬送する。
【0051】
<巻取>
切断装置26の下流側には、幅方向で4枚分の正極板2に分離されたフープ状の正極板2を巻き取る正極板巻取リールが所定間隔隔てて配設されている。正極板巻取リールは上述した駆動ローラの回転と同期して回転を開始し、分離された4倍幅分の正極板2はロール状にそれぞれ正極板巻取リールを中心として巻き取られる。これにより、ロール状に巻き取られた(フープ状の)正極板2を得ることができる。
【0052】
なお、ロール状に巻き取られた負極板3も同様の方法で得ることができる。また、ロール状に巻き取られた積層体20の圧延銅箔W3を作製する場合には、負極板3を作製する場合と比較し、スラリの塗布(活物質合剤の塗着)、乾燥、プレスが必要ないため、アルミニウム箔供給部からループ機構25または切断装置26に直接供給するようにしてもよいし、塗工装置21、乾燥機29およびヒートローラ対24での処理を行うことなく単に通過させるようにしてもよい。
【0053】
<捲回>
電極群7は、軸芯1を捲回中心として、2枚のセパレータ4を介して、正極板2および負極板3が直接接触せず、かつ、正極板2と2枚の積層体20が直接接触しないように捲回されることで構成される。以下、便宜上、電極群7の最内周に配置される(軸芯1の周面に当接する)セパレータを4A、電極群7の最外周に配置されるセパレータを4B、電極群7の内周部に配置される積層体を20A、電極群7の外周部に配置される積層体を20Bとして説明する。
【0054】
捲回前の電極群7の配置を分解して説明すると、図9に示すように、積層体20A、負極板3、積層体20Bで一群を形成することができ、その背後(図9の紙面奥側)にセパレータ4A、その背後に正極板2、さらにその背後にセパレータ4Bを配置することで、捲回した場合でも上述した各構成部材間の短絡を防止することができる。
【0055】
電極群7の形成(捲回)は捲回装置で行われる。図11は、本例で使用される捲回装置27の要部(中央部)を模式的に示したものである。捲回装置27は、軸芯1を装着、回転可能な軸芯回転部(不図示)を有している。軸芯回転部の上部にはセパレータ4Bと正極板供給部が配置されている。捲回軸上部右から、時計回りの方向に、正極板2を供給する正極板供給部、セパレータ4Aを供給する第1のセパレータ供給部、積層体20を供給する積層体供給部、負極板3を供給する負極板供給部、セパレータ4Bを供給する第2のセパレータ供給部、の順で配置されており、各供給部はフープ状の供給物を所定長さで切断するカッタ(不図示)を有するとともに、搬送ローラ、搬送ガイド(不図示)を有している。
【0056】
オペレータが操作ボタンを押下すると、図示しないロボットアームにより軸芯1が軸芯回転部に装着され、第1および第2のセパレータ供給部からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が開始され粘着テープで軸心に固定する。固定後、軸芯1の回転および第1および第2のセパレータ供給部からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が再開される。これにより、セパレータ4A、4Bは、少なくとも1周、好ましくは2ないし3周、軸芯1の周りに捲回される(図9も参照)。
【0057】
次に、積層体供給部から積層体20が供給される。積層体供給部の図示しないカッタは捲回1周分の長さでフープ状の積層体20を切断し、積層体供給部からの積層体20の供給を停止する。このような制御は、例えば、制御監視にエンコーダ用いてパルス数を管理するとともに、軸芯1の回転数を監視することで行うことができる。このように供給された積層体20は、上述した積層体20Aに対応する。次いで、負極板供給部から負極板3の供給が開始され1周以上捲回する。換言すれば、積層体20Aの捲回後に、負極板3の捲回が開始される。続いて、正極板供給部から正極板2の供給が開始される。上述したように、正極板2は負極板3より長手方向の長さが短いため、負極板3より正極板2の捲回が1周以上早く終了する。
【0058】
正極板供給部は、図示しないカッタで正極板2が所定の長さとなるように切断し、正極板2の供給を停止する。負極板2はなおも負極供給部から供給されるが、所定長さ供給すると、正極板2と同様に、カッタで切断され、負極板2の供給が停止される。次に、積層体供給部から積層体20が再度供給される。換言すれば、負極板3の捲回後に、積層体20の捲回が開始される。積層体供給部の図示しないカッタは捲回1周分の長さで積層体供給部からの積層体20を切断し、積層体20の供給を停止する。このように供給された積層体20は、上述した積層体20Bに対応する。
【0059】
第1および第2のセパレータ供給部はなおもセパレータ4A、4Bの供給を続行し、少なくとも1周、好ましくは2ないし3周捲回可能な長さに至ると、カッタでセパレータ4A、4Bを切断し、セパレータ4A、4Bの供給を停止する(図9も参照)。従って、セパレータ4A、4Bは捲回途中で切断されることはない。軸芯回転部はなおも軸芯1を回転させ、セパレータ4A、4Bが電極群7の外周を構成するまで回転を継続して、軸芯1の回転を停止後、重ねて切断し終端位置を合わせる。次に、電極群7の外周に捲回されたセパレータ4A、4Bの巻き解けを防止するために、電極群7の長手方向に沿って粘着テープが貼り付けられる。粘着テープの貼付は、図示を省略したテープ貼付部により行われる。次いで、電極群7(軸芯1)は、図示しないロボットアームにより軸芯回転部から脱着され、所定位置に配置され軸芯1を支持するための支持部を有する載置台上に載置され、1つの電極群7の捲回が終了する。
【0060】
従って、図9に示すように、積層体20A、20Bは、負極板3が挟まれたセパレータ4Aの表面(図9に示すセパレータ4Aの紙面側の面)と、セパレータ4Bの裏面(図9に示すセパレータ4Bの背面側の面)との2面間で挟まれて捲回されているとともに、負極板3の捲回延長線上に配置されるように捲回されている。また、積層体20Aは負極板3の捲回前に捲回され、積層体20Bは負極板3の捲回後に捲回される。これにより、図10に示すように、電極群7の内周側および外周側にそれぞれ積層体20A、20Bが挿入捲回された電極群7を得ることができる。なお、図10では、正極リード片2a、負極リード片3aおよびタブ20aを捨象している。
【0061】
<組立>
図1に示すように、正極リード片2aを変形させ、その全てを、電極群7の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング5の周面付近に集合させ、接触させた後、正極リード片2aの先端部と周面とを超音波溶接して正極リード片2aを周面に接合する。一方、負極集電リング6と負極リード片3aとの接続操作も、正極集電リング5と正極リード片2aとの接合操作と同様に接合する。また、積層体20A、20Bのタブ20aの先端部も同様に負極集電リング6に接合する。なお、タブ20aおよび負極リード片3aの負極集電リング6への接合は同時に行われる。
【0062】
積層体20の負極板への電気的接続手段は、必ずしも上記に限定されず、タブ20aを設けずに、次のようにすることもできる。
(1)負極板3の捲回開始部分(捲回群の内側にあたる)に、積層体20を溶接またはリベット、または圧着して接続する。
(2)負極板3の捲回終り部分(捲回群の外側にあたる)に、積層体20を溶接またはリベット、または圧着して接続する。
(3)捲回途中で正負極板を切断し積層体20を溶接またはリベット、または圧着して負極板の端に接続する、さらに、捲回を続ける新たな負極板の端に、前記積層体20の反対端側を溶接またはリベット、または圧着して接続し、さらに捲回を行う。この操作中、セパレータは捲回終了まで切断しない。前記正負極板の切断は複数回行ってもよい。
(4)上記(1)から(3)の少なくとも一つ以上の操作を組み合わせる。
(5)捲回開始部分、捲回終り部分、捲回途中部分の少なくとも一箇所で、積層体20を負極板に直接接触するように配置する。正負極板、セパレータのいずれも途中で切断することはない。
(6)捲回開始部分、又は捲回終り部分、捲回途中部分の負極板に、活物質層非形成部(集電体剥き出しの部分)を予め形成しておき、該活物質層非形成部に積層体20を直接接触するように配置する。正負極板、セパレータのいずれも途中で切断することはない。
【0063】
その後、正極集電リング5の周面全周に絶縁被覆を施す。すなわち、粘着テープを正極集電リング5の周面から電極群7外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、電極群7を容器8内に挿入する。絶縁被覆には、例えば、基材がポリイミドで、その片面にアクリレート系粘着剤を塗布した粘着テープを用いることができる。
【0064】
負極集電リング6には予め電気的導通のための負極リード板9が溶接されており、容器8内に電極群7を挿入後、軸芯1の内周を利用して容器8の内底部と負極リード板9とを抵抗溶接により接合する。次いで、軸芯1の内周を利用して所定量のエポキシ樹脂を所定量注入することが好ましい。この場合、上述したように、軸芯1には縦方向に複数本のスリットが形成されているため(図9も参照)、エポキシ樹脂は、これらのスリットを介して容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで進入し、負極リード板9および負極集電リング6はエポキシ樹脂で埋没するように覆われる。所定時間経過すると、注入されたエポキシ樹脂は固化して樹脂製材11が形成される。
【0065】
一方、正極集電リング5には、正極リード板10を溶接しておき、正極リード板10の他端を、容器8を封口するための容器蓋12の下面(蓋ケース12aの外底面)に接合する。上述したように、容器蓋12は、蓋ケース12aと蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁をかしめることによって予め組立てられている。なお、蓋ケース12aには、何らかの異常でリチウムイオンキャパシタの内圧が上昇したときに、安全のために所定の内圧に達したときに開裂する開裂溝が形成されている。開裂溝の開裂により、リチウムイオンキャパシタの内圧が開放される。
【0066】
次に、軸芯1の内周を利用して非水電解液を所定量容器8内に注入する。このような注液は安全性を確保するため低温環境下がよい。上述したように、軸芯1には複数本のスリットが形成されているため、これらのスリットを介して電極群7は非水電解液に浸潤される。その後、正極リード板10を折りたたむようにして容器蓋12で容器8に蓋をし、ガスケット13を介してかしめて密封することにより、キャパシタ30を作製する。
【0067】
(負極活物質へのリチウムの吸蔵)
次に、本実施形態のキャパシタ30において、積層体20A、20Bの金属リチウムW5の負極活物質(非晶質炭素)への吸蔵方法について説明する。
【0068】
本例では、所定温度(例えば、室温)に管理された貯蔵室に所定期間(例えば、2週間〜4週間)、キャパシタ30を放置することでリチウムイオンを負極活物質に吸蔵させる。積層体20A、20Bのタブ20aは負極リード片3aとともに負極集電リング6に接合されているため、負極電位とリチウム電位との電位差により、所定期間の放置することで、金属リチウムW5は溶解し、負極板3の負極活物質(非晶質炭素)に吸蔵される。これにより、積層体20A、20Bに挟持された金属リチウムW5は溶解し、積層体20A、20Bはそれぞれ2枚の銅箔W3のみが残存配置されることになる。
【0069】
(作用等)
次に、本実施形態の積層体20ならびにキャパシタ30の作用等について説明する。
【0070】
まず、本実施形態の積層体20によれば、金属リチウムW5を両面から銅箔W3で挟持する場合、銅箔W3の金属リチウムW5への貼付作業性が、片面に貼付ける場合より向上する。すなわち、金属リチウムW5に銅箔W3を貼付ける工程をロール等で圧接する手法を用いて自動化する際に、片面だけに銅箔W3を貼付けようとすると、ロールに直接触れる金属リチウムW5はロール周面に貼付くため、ロール周面に金属リチウムW5の一部が残存しやすく、安定した作業に懸念がある。また、ロール周面に金属リチウムW5が貼付いたままになると、急激な酸化反応が起こりやすく危険である。これを避けるために紙等の副資材を用いて、金属リチウムW5とロール周面との直接接触を回避すると、圧接時の銅箔W3と紙の伸び率の差異から歪が生じて、しわの発生や、最悪の場合、金属リチウムW5や銅箔W3の切断が起こる。金属リチウムW5を両面から銅箔W3で挟持することにより、前記の懸念を回避でき、生産性が大幅に向上する。
【0071】
また、金属リチウムW5を両面から銅箔W3で挟持した積層体20は、取扱いが容易である。すなわち、金属リチウムW5の片面に銅箔W3を貼付けた場合に比べて、積層体20の折り曲げ強度が高いので、取り扱い中にしわ等が発生する懸念がない。また、切断強度が高いので切れにくい、金属リチウムW5に直接触れることがなくなるので安全である、取り扱い中に金属リチウムW5が剥れる心配がない等の利点がある。
【0072】
次に、本実施形態のキャパシタ30によれば、金属リチウムW5を備えた積層体20A、20Bを電極群7内に予め配置しておき、所定期間放置することで、金属リチウムが溶解して負極板3の負極活物質に吸蔵されることで、予め実施する吸蔵操作を容易に行うことができる。
【0073】
金属リチウムW5を両面から銅箔W3で挟持した積層体20は、両面の銅箔W3に負極へ接続するためのタブを設けることにより、同一面積の金属リチウムW5に対して銅箔W3に形成されたタブの密度が倍になる。金属リチウムW5の片面に銅箔W3を貼付けた場合に比べて、負極との接続抵抗が下がるので、リチウムイオンの負極への吸蔵が進みやすくなる。また、このとき、金属リチウムW5の銅箔W3からの滑落が防止され、実質的に全ての金属リチウムW5を負極への吸蔵に活用でき、吸蔵量の向上が可能である。金属リチウムW5の滑落による安全性低下(ショートを起こす懸念)の回避も可能である。負極へ吸蔵しきらず残存した金属リチウムW5があっても、銅箔W3に挟持されて滑落の心配がないので安全である。
【0074】
ところで、本実施形態のように、金属リチウムW5を負極に電気的に接触させて金属リチウムと負極の電位差だけでリチウムイオンの吸蔵を行う場合、負極の吸蔵深度が深くなるとその後の吸蔵がほとんど進まなくなる。そのため、容器8内に配置した金属リチウムW5が完全に負極に吸蔵され、容器8内に残らないようにするためには、理論量よりも少ない量を配置せざるを得ない場合が起こり得る。その一方で、キャパシタのフロート充電を例にとって考えると、長期間高温、高電圧でフロート充電した場合、電解液中のリチウムイオンと正極活物質および負極活物質との反応が進んで、負極から徐々にリチウムイオンが非可逆的に抜けてゆく。従って、予め負極に吸蔵させるリチウムイオンが多いほど(理論量に近いほど)キャパシタの信頼性は高くなる。
【0075】
その点、本実施形態の積層体20中の金属リチウムW5は、滑落する心配がなく容器8内に残存することになっても安全であり、いずれは負極に吸蔵されて容器8内から全て消失する。銅箔W3で金属リチウムW5を挟持した積層体20を容器8に配置することで、安全性を損なうことなくリチウムイオンの理論量を負極へ吸蔵できるので、キャパシタの信頼性を向上できる。
【0076】
さらに、積層体20A、20Bの銅箔W3の孔明き形成部には、貫通孔が略均等に形成されており、電極群7の内周部および外周部の両側に積層体20A、20Bが配置されているので、放置期間を短くすることができるとともに、負極活物質に均等にリチウムイオンを吸蔵させることができる。また、本実施形態のキャパシタ30では、積層体20A、20Bが、負極板3が挟まれた2枚のセパレータの2面間で負極板3の捲回延長線上に配置されるように捲回されており、積層体20A、20Bは負極板3と対向するため、放置期間の短縮と非晶質炭素へのリチウムイオンの均等吸蔵を助長することができる。
【0077】
また、本実施形態のキャパシタ30では、予め実施する吸蔵操作により、積層体20A、20Bに挟持された金属リチウムW5は溶解し、電極群7内に、積層体20A、20Bのうちそれぞれ銅箔W3のみ残存配置される。しかしながら、金属リチウムW5は薄い板状であり、銅箔W3が残存配置されるとともに、積層体20A、20Bはセパレータ4A、4Bの負極板4が挟まれた捲回延長線上に挿入捲回されており、負極板4は正極板5より長いので、金属リチウムを直接電極群7内に捲回する場合と比べ、電極群7の捲回構造を維持することができ、正極板2、負極板3からの活物質合剤の剥離離脱(滑落)を防止することができる。このため、長期使用をしても、初期の性能を維持することができる。さらに、セパレータ4A、4Bは途中で切断されることなく電極群7内で捲回されているので、この利点を助長することができる。
【0078】
さらに、本実施形態のキャパシタ30では、正極板2、負極板3、積層体20A、20Bのそれぞれを構成するアルミニウム箔W1および銅箔W3のリード片ないしタブに隣接する箇所に貫通孔未形成部が形成されているとともに、積層体20A、20Bでは、孔明き形成部の面積が金属リチウムW5の面積より大きく設定されている。このため、正極板2、負極板3、積層体20A、20Bをセパレータ4を介して捲回し電極群7を構成しても、正極板2、負極板3、積層体20A、20Bの捲回で、アルミニウム箔W1や銅箔W3に塗着されたり挟持された活物質合剤や金属リチウムにより、リード片ないしタブの基部が膨らんだり、エッジ状の突出部が形成されることなく、長期使用によっても、セパレータ4の破断や破断による内部短絡を防止することができる。従って、長寿命のキャパシタ30を得ることができる。なお、図3に示した活物質合剤の端部構造もこの利点を助長している。
【0079】
また、本実施形態のキャパシタ30では、正負極板のアルミニウム箔W1および銅箔W3の両面に活物質合剤が塗着されており、該活物質合剤は孔明き形成部を介して連通しているとともに、スラリ塗布時に塗工口がずらされた表裏面2つの塗工機でスラリの塗工が行われ、アルミニウム箔Wの垂直搬送が行われるので、貫通孔にエアが残留することを防止することができる。従って、キャパシタ30のエネルギ密度を高めることができるとともに、内部抵抗を低減させることができる。とりわけ、本実施形態では、貫通孔の各面積が8×10−7以下の1.3×10−7(=0.2mm×0.2mm×π)で略均等に設定され、貫通孔の開口率が20%に設定されているので、量産工程において金属箔への活物質合剤の塗着が容易で、かつ、キャパシタ全体の内部抵抗を小さくすることができる。換言すれば、貫通孔の各面積が8×10−7を超えるとスラリの均一塗工(活物質合剤の集電体への均一塗着)が難しくなり(特に、貫通孔への活物質合剤の充填および凸凹の発生)、また、電極群を構成したときに正負極板の強度の弱化を招く。なお、貫通孔の各面積が小さい場合には、リチウムイオンの移動距離を短くし内部抵抗の増加を避けるために、アルミニウム箔W1および銅箔W3にリチウムイオンが通過可能なように単位面積あたりの貫通孔を多く形成することが好ましい。
【0080】
さらにまた、本実施形態のキャパシタ30では、上述したように、極板を作製する際に、幅方向で4倍幅分を一度に(連続工程で)作製するとともに、アルミニウムWの幅を1つの極板のリード片分ないし1つの積層体のタブ分の長さcだけ小さくすることができる。このため、生産性が向上するとともに、コストの低減を図ることができる。さらに、本実施形態のキャパシタ30では、負極板3の銅箔W3と積層体20の銅箔W3とを共通化したので、部品管理が容易となるとともに、コスト低減を図ることができる。
【0081】
また、本実施形態のキャパシタ30では、容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで樹脂製材11により詰め物がなされている。このため、金属リチウムW5からのリチウムイオンが負極活物質に吸蔵されずに、他の負極を構成する部材に析出してセパレータ4の破断等を招くことを防止するとともに、論理総充填量に近い金属リチウムW5の総充填量を設定でき、金属リチウムW5の厚さを極力薄くすることが可能となり、電極群7の捲回構成の脆弱化を防止することができる。さらに、容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで樹脂製材11を配することにより、遊離電解液をなくすことができる。また、容器8の内周面がポリアミドイミドで被覆されているので、容器8の内周面にリチウムが析出せず、充放電性能(容量)の低下を防止することができる。
【0082】
従って、本実施形態のキャパシタ30よれば、内部抵抗、エネルギ密度、寿命等のキャパシタとしての特性が優れているとともに、量産性に優れたキャパシタを実現することができる。また、本実施形態のキャパシタ30は大容量の700Fであり、複数のキャパシタ30を並列ないし直列接続したキャパシタシステムを構成することにより、例えば、自動車のエンジン始動を連続して複数回行うことができる。
【0083】
なお、本実施形態では、積層体20を電極群7の内周側と外周側との2箇所に挿入捲回した例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、図12に示すように、積層体20を電極群7内の1箇所に挿入捲回するようにしてもよい。このような形態では、負極板は2つに分割され、積層体は、2つの負極板の間に捲回されるとともに、負極板が挟まれた2枚のセパレータ4A、4B間で負極板の捲回延長線上に配置されるように捲回される。この態様では、積層体20を捲回の中央(例えば、捲回開始から捲回終わりまでの長さの中間)に配置することが好ましい。正極板は負極板と対向するように2つに分割するようにしてもよい。この態様でも、セパレータ4A、4Bは、本実施形態と同様に、途中で切断されることなく電極群7内で捲回されていることが好ましい。積層体は、必ずしも上記のように負極板の捲回延長線上に配置されなくてもよく、正極板と絶縁した状態で、負極板と直接またはセパレータを介して対向させるように配置してもよい。
【0084】
また、本実施形態では、積層体20A、20Bがそれぞれ1周捲回された例を示したが、本発明はこれに制約されることなく、複数周捲回するようにしてもよい。この場合には、金属リチウムの溶解による電極群7の脆弱化を防止するために、金属箔(銅箔)を負極板3の銅箔より厚いものにするようにしてもよい。逆に、1周を超えて捲回すると重なり部分が厚くなって不都合が生じる場合には、1周以下で捲回し、1周以下で捲回された箇所が複数箇所あってもよい。この態様の方が電極群7の脆弱化を防止しやすいと考えられる。
【0085】
さらに、本実施形態では、捲回式のリチウムイオンキャパシタを例示したが、本発明は積層式のリチウムインオキャパシタに適用可能なことは論を待たない。このような形態では、電極群は正負極板がセパレータを介して積層され、電極群の両外側には負極板が配置される。その場合、積層体はセパレータを介して負極板の外側にそれぞれ配置するようにすればよい。また、積層体は電極群内に配置するようにしてもよい。この場合には、積層体は両面ともセパレータを介して負極板に対向するように配置することが好ましい。また、本実施形態では、電極群7の中心に軸芯1を配置した例を示したが、本発明はこれに限らず、軸芯のない電極群を用いたリチウムイオンキャパシタにも適用可能である。
【0086】
また、本実施形態では、両面に活物質合剤が塗着された極板を例示したが、本発明はこれに限ることなく、片面のみに活物質合剤が塗着された極板にも適用が可能である。さらに、本実施形態では、正負極板および積層体の孔明き形成部に円形の貫通孔を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、貫通孔の形状は、例えば、三角形、四角形等の多角形、星形、台形等の任意の形状を採ることができる。また、正負極板および積層体の孔明き形成部の貫通孔の開口率に20%のものを例示したが、これについても本発明を制限するものはない。開口率としては、例えば、5%〜55%、好ましくは、10%〜40%、より好ましくは、10%〜25%とすることができる。
【0087】
またさらに、本実施形態では、2枚のセパレータ4A、4Bを使用する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すわなち、1枚のセパレータを折り返して使用すれば2枚のセパレータと同じく使用でき、1枚のセパレータに代えて、薄いセパレータを例えば2枚ないし3枚ずつ重ねて使用することができる。従って、本発明者らは、このような態様も本発明の「2枚のセパレータ」と同じ意味であるかまたは均等のものと考えている。
【0088】
また、本実施形態では、幅方向で4倍幅分のフープ状極板を得る極板形成装置を例示したが、本発明はこれに限ることなく、例えば、6倍幅分のフープ状極板を得る極板形成装置を用いるようにしてもよい。この場合には、活物質合剤が塗着された合剤塗着幅2(e+α)間の未塗着箇所(幅c+2β)が2つ形成されるので、アルミニウム箔供給部から供給されるアルミニウム箔の幅を2c分節約することができる。なお、本発明は、従来のように、1倍幅分の極板を用いたキャパシタに適用可能なことは云うまでもない。また、活物質層のみを予め形成しておき、集電体(アルミニウム箔WまたはW1、銅箔WまたはW3)に貼り合わせた極板を有するキャパシタに適用可能なことも論を待たない。
【0089】
さらに、本実施形態では、セパレータ4A、4Bの捲回開始端を軸芯1に粘着することにより固定する例を示したが、本発明はこれに制約されず、例えば、溶着でセパレータ4A、4Bの捲回開始端を軸芯1に固定するようにしてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、金属リチウムW5に矩形板状のものを例示したが、本発明は金属リチウムW5の形状に制限されるものではない。例えば、円形板状のものや台形板状のものを用いるようにしてもよい。また、容器8の形状についても、円筒状に限らず、断面が楕円状、小判状、矩形状のものも使用可能である。円筒状とは、横断面形状が円形のほか、楕円状、小判状、矩形状のものも、均等物として含む。
【0091】
さらにまた、本実施形態では、樹脂製材11にエポキシ樹脂を例示したが、例えば、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド、ポリアミド等の他の公知の樹脂や、前記他の公知の樹脂の前駆体と、それらの前駆体を加熱により熱的に硬化することができる成分の混合物(樹脂前駆体混合物)等も用いることができることは論を待たない。前記公知の樹脂の前駆体には、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリロニトリル等の不飽和結合を有するモノマ成分等があげられ、これらの樹脂前駆体を加熱により熱的に硬化することができる成分としては、AIBNやBPOのような重合開始剤を用いることが可能である。また、前記前駆体に適度な粘度を与えるために、樹脂をあらかじめ混合しておくことも可能であり、さらに、例えばエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能モノマとの組み合わせなども好適に用いられる。前記多官能モノマと組み合わせる場合は、樹脂と溶剤及び多官能モノマ、及び重合開始剤の組み合わせが好適に用いられ、この場合は、前記公知の樹脂の前駆体としてあげたアクリル酸等の一官能モノマは使用してもしなくてもよい。さらには、前記樹脂前駆体混合物に適度な粘度を与える樹脂に、不飽和結合部を形成しておくことで、より重合を容易にすることも可能である。尚、樹脂製材11として、重合時に水を発生する例えばフェノール樹脂等の材料は、予備充電に用いるリチウムを劣化させるので用いることはできない。また、容器8の内周面を被覆する材質としてポリアミドイミドを例示したが、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR、カルボキシメチルセルロース、エチレン/アクリル酸、ウレタン樹脂等の樹脂材を用いるようにしてもよい。容器8の内周面を被覆する樹脂が溶剤に可溶な場合は、容器8の内周面に塗布後乾燥することができる。容器8の内周面を被覆する樹脂が溶剤に不溶な場合は、予め作製した樹脂フィルムを容器8の内面に貼り合せることも可能であり、また、溶剤に樹脂を分散させて樹脂分散液にしてから塗布、乾燥して被覆することも可能である。さらにまた、樹脂前駆体を容器8の内周面に塗布した後に加熱して被覆層を形成することも可能である。
【0092】
また、本実施形態では、理解が容易なように、例として種々の数値を挙げて説明したが、特許請求の範囲で定義された数値でない限り、本発明がこれらに制限されるものでないことは云うまでもない。さらに、本実施形態では、リチウムイオンキャパシタを作製するための部材について具体的に例示したが、これらについても、特許請求の範囲で言及のない限り、本発明を制限するものではない。従って、本願出願時点で公知の部材や材料を用いることができる。
【0093】
例えば、負極活物質には、天然黒鉛、人造黒鉛、MCMB(メゾフェーズカーボンマイクロビーズ)、MCF(メゾフェーズカーボンファイバ)、コークス、VGCF(気相成長炭素繊維)、難黒鉛化性炭素、ポリアセチレン系有機半導体、カーボンナノチューブ、これらの混合物、さらにこれらまたはこれらの混合物にホウ素、珪素、窒素などを導入したものを用いることができ、比表面積も例示したものに限られるものではない。また、正極活物質には、材料表面近傍に存在する電気二重層へのリチウムイオンおよび陰イオンの吸脱着を充放電に利用できるものであれば特に制限はなく、代表的な物質として活性炭が選択される。さらに、正負活物質の粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に本発明が制限されるものではない。
【0094】
また、負極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散エマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。
【0095】
正極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダ、PTFE系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散のエマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。正極活物質のバインダが水分散バインダであると、キャパシタの特性上特に好ましい。
【0096】
さらにまた、導電助材には、アセチレンブラックやケッチェンブラック、微粉砕した黒鉛粉末等の導電性炭素粉末を用いることもできる。
【0097】
さらに、非水電解液には、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用してもよく、リチウム塩や有機溶媒にも特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LiB(C、CHSOLi、CFSOLi、(CSONLi、(CFSONLi等やこれらの混合物を用いることができる。さらにまた、非水電解液の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート、トリフルオロメチルプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよい。
【0098】
さらにまた、セパレータとしては、多孔質基材が用いられ、例えば、クラフト紙等のセルロース系の多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロポレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の多孔質フィルム基材や、ガラス繊維からなる多孔質基材あるいはこれらを重ねて用いるようにしてもよい。
【0099】
そして、本実施形態では、積層体20の金属箔に銅箔を例示したが、本発明はこれに限ることなく、コスト等を考慮し、例えば、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は量産性に優れ予め負極にリチウムイオンを十分に吸蔵させることができるリチウムイオンキャパシタを提供するものであるため、リチウムイオンキャパシタの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの断面図である。
【図2】(A)は実施形態のリチウムイオンキャパシタの極板の捲回前の平面図であり、(B)は極板を構成する集電体の平面図である。
【図3】極板のリード片形成部近傍を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】(A)は塗工機内で極板にスラリが塗工される状態を模式的に示す平面図であり、(B)は塗工機の概略を示す構成図である。
【図5】(A)は集電体の孔明き形成部に対し一面側に配置された塗工口から活物質合剤が塗工された状態を模式的に示す断面図であり、(B)は集電体の孔明き形成部に両側に配置された塗工口から活物質合剤が塗工された状態を模式的に示す断面図である。
【図6】極板形成装置を模式的に示す構成図である。
【図7】切断装置でアルミニウム箔が切断される切断位置を示す平面図である。
【図8】(A)は積層体の外観斜視図であり、(B)は積層体の断面図である。
【図9】電極群を捲回する前の状態を模式的に示す説明図である。
【図10】電極群を模式的に示す外観斜視図である。
【図11】捲回装置の中央部を模式的に示す構成図である。
【図12】他の実施形態の電極群を模式的に示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
2 正極板
3 負極板
4 セパレータ
7 電極群
8 容器
20 積層体
30 リチウムイオンキャパシタ
W3 銅箔(金属箔)
W5 金属リチウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔に活物質合剤が塗着された正極板と、金属箔に活物質合剤が塗着された負極板とをセパレータを介して捲回した電極群と、
非水電解液と、
前記電極群および前記非水電解液を収容する円筒状容器と、
を備え、
薄板状の金属リチウムを金属箔で保持した積層体を前記電極群内に前記負極板と導通し前記正極板と絶縁した状態で予め配置しておき、前記積層体は、前記金属リチウムが前記負極板の活物質合剤を構成する負極活物質に吸蔵されることで前記金属箔のみが残存配置されており、前記容器の内周面が樹脂材で被覆されていることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項2】
前記容器は有底缶であり、前記容器が負極の極性を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−192852(P2010−192852A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38371(P2009−38371)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】