説明

リチウムイオン二次電池

【課題】正極表面および負極帳面のいずれか一方または両方に絶縁層が形成されたリチウムイオン二次電池において、負荷特性と安全性とを高水準で両立させる。
【解決手段】正極11と負極12との間にリチウムイオン透過性の多孔質絶縁体15を介在させた電極群10を非水電解質とともに電池ケース26に封入したリチウムイオン二次電池1において、正極11および負極12のいずれか一方または両方の活物質層表面に、活物質間の隙間を埋める第1絶縁層を設け、第1絶縁層の表面にさらに第2絶縁層を設ける。第1絶縁層はリチウムイオン伝導性ゲルを含み、第2絶縁層は多孔質耐熱層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。さらに詳しくは、本発明は主に、正極、負極および多孔質絶縁体を含む電極群の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、軽量で、高エネルギー密度を有することから、主にポータブル電子機器用の電源として実用化されている。また、現在では、大型で高出力な電源(例えば車載用の電源)としても、リチウムイオン二次電池が注目されており、開発が盛んに行われている。
【0003】
一般に、リチウムイオン二次電池では、正極と負極との間に多孔質絶縁体が配置されている。多孔質絶縁体は、正極と負極とを電気的に絶縁し、さらに非水電解質を保持する機能を有している。リチウムイオン二次電池において、多孔質絶縁体には、ポリエチレンやポリプロピレンからなる多孔質フィルムであるセパレータが主に用いられている。
【0004】
セパレータは、その内部に多数の空孔を有することにより、リチウムイオン透過性を示す。セパレータは、電池内が高温になると、その内部の空孔が閉塞し、リチウムイオンの透過を遮断する。その結果、電池内の反応が停止し、電池温度のさらなる上昇が抑制される。これは、シャットダウン機能と呼ばれている。このように、セパレータは、電池の安全性を高める上でも有効である。
【0005】
しかしながら、セパレータは、電極の表面の凹凸や電池組立工程中に生じる電極表面の傷との接触、電池組立工程における異物の混入などにより、損傷し易い。セパレータの損傷箇所では内部短絡が発生し易い。内部短絡が発生すると、短絡部で発熱が起こる。その発熱により、短絡部周辺のセパレータは高温に晒されて収縮する。その結果、短絡面積が拡大し、電池が過熱状態に至る場合があると推測されている。
【0006】
リチウムイオン二次電池における、セパレータの損傷による内部短絡の発生を防止するために、種々の提案がなされている。たとえば、電極表面に、固体フィラーと水溶性ポリマーとからなる絶縁層を設けることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。固体フィラーは非導電性である。固体フィラーには、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどが使用されている。水溶性ポリマーは結着剤である。水溶性ポリマーには、ポリアクリル酸誘導体、セルロース誘導体などが使用されている。
【0007】
また、セパレータに代えて、非導電性粉体および非導電性結着剤を含み、さらに非水電解質を含んでもよい、絶縁層を用いることが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。該絶縁層は、たとえば、電極表面に形成される。非導電性粉体は特許文献1の固体フィラーと同じものである。非導電性粉体には、たとえば、酸化鉄、シリカ、アルミナ、チタニアなどの無機酸化物が使用されている。非導電性結着剤には、非水電解質を保持してゲル状になる各種合成樹脂材料が使用されている。非水電解質は、リチウム塩(支持塩)および非水溶媒を含有している。
【0008】
特許文献1および特許文献2における電極は、図3に示す構造を有している。図3は、特許文献1および特許文献2における負極50の構成を模式的に示す縦断面図である。負極50は、負極集電体51、負極活物質層52および絶縁層55を含んでいる。負極集電体51は、銅箔である。負極活物質層52は負極集電体51の表面に設けられ、黒鉛粒子(負極活物質粒子)52aと図示しない結着剤(合成樹脂)とを含有している。絶縁層55は、負極活物質層52の表面に設けられ、固体フィラーと結着剤とを含有している。
【0009】
絶縁層55は、固体フィラー、結着剤および有機溶媒を含有するスラリーを電極表面に塗布し、乾燥させることにより形成される。この時、前記スラリーが流動性を有するため、黒鉛粒子52a同士の隙間に浸透する。その結果、黒鉛粒子52a同士の隙間に固体フィラーが詰り、負極活物質層52のリチウムイオン伝導性ひいてはリチウムイオン二次電池の負荷特性が低下するおそれがある。
【0010】
また、特許文献1および特許文献2のように、絶縁層55を1層だけ形成すると、負極活物質層52表面の凹凸により、絶縁層55にピンホールが生成し易い。このピンホールは絶縁層55を厚さ方向に貫通し、内部短絡を発生させる原因になる。その結果、リチウムイオン二次電池の安全性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−147916号公報
【特許文献2】特開2000−3728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、正極と負極との間にセパレータと絶縁層とが介在する電極群を含み、絶縁層の形成による負荷特性の低下が抑制され、優れた負荷特性および高い安全性を有するリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電極群、リチウムイオン伝導性非水電解質および電極群とリチウムイオン伝導性非水電解質とを収容する電池ケースを含むリチウムイオン二次電池を提供する。本発明のリチウムイオン二次電池において、電極群は、正極、負極、第1絶縁層、第2絶縁層および多孔質絶縁体を含む。正極は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層と正極集電体とを含む。負極は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層と負極集電体とを含む。第1絶縁層はリチウムイオン伝導性ゲルを含み、正極活物質層および負極活物質層のいずれか一方または両方の表面に設けられている。第2絶縁層は多孔質耐熱層であり、第1絶縁層の表面に設けられている。多孔質絶縁体はリチウムイオン透過性を有し、正極と負極との間に介在するように配置されている。
【0014】
リチウムイオン伝導性ゲルは、リチウムイオン伝導性非水電解質とゲル化剤とを含むことが好ましい。
ゲル化剤はフッ素樹脂であることが好ましい。
フッ素樹脂は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体であることがさらに好ましい。
【0015】
多孔質耐熱層は、絶縁性セラミックフィラーを含有することが好ましい。
多孔質絶縁体は、合成樹脂製の多孔質フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリチウムイオン二次電池は、電極表面に絶縁層が設けられているにもかかわらず、電極のリチウムイオン伝導性が低下せず、かつ絶縁層を厚さ方向に貫通するピンホールが発生しない。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池は、高容量を有し、充放電サイクル特性および出力特性に優れるだけでなく、高水準の負荷特性と安全性とを併せ持っている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の1つであるリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示すリチウムイオン二次電池に含まれる負極の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図3】従来技術におけるリチウムイオン二次電池の負極の構成を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のリチウムイオン二次電池は、絶縁層が第1絶縁層と第2絶縁層とを含むことを特徴とする。第1絶縁層はリチウムイオン伝導性ゲルを含み、正極表面(正極活物質層表面)および負極表面(負極活物質層表面)のいずれか一方または両方に設けられる。第2絶縁層は多孔質耐熱層であり、第1絶縁層の表面に設けられる。ここで第1絶縁層の表面とは、第1絶縁層の正極表面および/または負極表面に接している表面とは反対側の表面である。
【0019】
本発明では、第1絶縁層と第2絶縁層とを形成することにより、正極活物質層および負極活物質層のリチウムイオン伝導性の低下を抑制できる。これにより、リチウムイオン二次電池の負荷特性の低下を抑制できる。また、第1絶縁層と第2絶縁層とを併せた絶縁層を設けることにより、絶縁層全体を厚さ方向に貫通するピンホールの生成が抑制される。その結果、内部短絡の発生および内部短絡が発生しても短絡箇所の拡大によるさらなる高熱の発生が顕著に抑制され、安全性の高いリチウムイオン二次電池が得られる。
【0020】
本発明のリチウム二次電池は、第1絶縁層と第2絶縁層とを含む絶縁層を正極表面および負極表面のいずれか一方または両方に設ける以外は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の構成を採ることができる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態の1つであるリチウムイオン二次電池1の構成を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1に示すリチウムイオン二次電池1に含まれる負極12の構成を模式的に示す縦断面図である。
【0022】
なお、図1においては、負極12表面に設けられる第1絶縁層13および第2絶縁層14の図示を省略している。また、図2において、負極活物質層31に含まれる負極活物質32は規則的に配列されている。しかし、図2は負極12を模式的に示す図であり、実際には負極活物質32が不規則に配列されていることもある。また、規則的な配列と不規則な配列とが混在することもある。
【0023】
リチウムイオン二次電池1は、有底円筒型電池ケース26(以下単に「電池ケース26」とする)内に電極群10および図示しない非水電解質が収容された円筒型リチウムイオン二次電池である。電極群10は、正極11、負極12、第1絶縁層13、第2絶縁層14およびセパレータ15を含む。負極12の表面には第1絶縁層13が形成され、第1絶縁層13の表面には第2絶縁層14が形成されている。
【0024】
正極リード20は、正極11と正極端子24とを接続している。負極リード21は、負極12と負極端子になる電池ケース26とを接続している。上部絶縁板22および下部絶縁板23は、電極群10の長手方向両端に装着されている。正極端子24は、封口板25により支持されている。封口板25は電池ケース26の開口に装着され、電池ケース26の開口端部を封口板25に向けてかしめることにより、電池ケース26が封口される。
【0025】
電極群10に含まれる正極11、第1絶縁層13および第2絶縁層14がこの順番で積層された負極12およびセパレータ15は、いずれも帯状である。電極群10は、正極11と前記負極12との間に、セパレータ15を介在させた状態で、幅方向に沿う一端部を捲回軸にして捲回することにより作製される。
【0026】
正極11は、図示しない、正極集電体と正極活物質層とを含む。
正極集電体には、金属箔などを使用できる。金属箔を構成する金属材料には、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンなどがある。これらの中でも、アルミニウムおよびアルミニウム合金が好ましい。正極集電体の厚さは特に制限されないが、好ましくは10μm〜30μmである。
【0027】
正極活物質層は、正極集電体の厚さ方向の両方の表面に設けられ、正極活物質を含有し、さらに結着剤、導電剤などを含有してもよい。本実施形態では、正極活物質層を正極集電体の両方の表面に設けているが、それに限定されず、正極集電体の片方の表面に設けてもよい。
【0028】
正極活物質には、リチウムイオン二次電池の分野で常用されるものを使用でき、リチウム含有遷移金属酸化物などが挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどがある。リチウム含有遷移金属酸化物に含まれる遷移金属の一部を異種元素で置換してもよい。また、リチウム含有遷移金属酸化物粒子の表面を異種元素で被覆してもよい。異種元素には、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bなどがある。正極活物質は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル酸モノマーを含むスチレンブタジエンゴム(商品名:BM−500B、日本ゼオン(株)製)、スチレンブタジエンゴム(商品名:BM−400B、日本ゼオン(株)製)などがある。導電剤には、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛などがある。結着剤および導電剤の添加量は、正極11およびリチウムイオン二次電池1の設計に応じて適宜変更できる。
【0030】
正極活物質層は、たとえば、正極合剤スラリーを正極集電体表面に塗布し、乾燥し、圧延することにより形成できる。正極合剤スラリーは、たとえば、正極活物質、結着剤、導電剤などを有機溶媒に溶解または分散させることにより調製できる。有機溶媒には、たとえば、N−メチル−2−ピロリドンなどを使用できる。
【0031】
負極12は、図2に示すように、負極集電体30と負極活物質層31とを含む。
負極集電体30には、たとえば、金属箔を使用できる。金属箔を構成する金属材料には、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケルなどがある。これらの中でも、銅が好ましい。負極集電体30の厚さは特に制限されないが、好ましくは5μm〜50μmである。
【0032】
負極活物質層31は、負極集電体30の厚さ方向における両方の表面に設けられ、負極活物質32を含有し、さらに結着剤、導電剤、増粘剤などを含有してもよい。本実施形態では、負極活物質層31を負極集電体30の両方の表面に設けているが、それに限定されず、負極集電体30の一方の表面に設けてもよい。
また、負極活物質層31の表面(第1絶縁層13と接する表面)および内部には、負極活物質32の粒子同士の間に、隙間(空隙)が存在していることがある。
【0033】
負極活物質32には、リチウムイオン二次電池の分野で常用されるものを使用できる。具体的には、炭素材料(天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボンなど)、リチウムと合金化可能な元素(Al、Si、Zn、Ge、Cd、Sn、Ti、Pbなど)、珪素化合物(SiOx(0<x<2)など)、錫化合物(SnOなど)、リチウム金属、リチウム合金(Li−Al合金など)、リチウムを含有しない合金(Ni−Si合金、Ti−Si合金など)などがある。負極活物質32は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
結着剤には、PVDF、アクリル酸モノマーを含むスチレンブタジエンゴム(BM−500B)、スチレンブタジエンゴム(BM−400B)、ポリアクリル酸などがある。導電剤には、正極活物質層に含まれる導電剤と同じものを使用できる。増粘剤には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、変性ポリアクリロニトリルゴムなどがある。変性ポリアクリロニトリルゴムには、たとえば、商品名:BM−720H(日本ゼオン(株)製)などがある。結着剤、導電剤および増粘剤の添加量は、負極12およびリチウムイオン二次電池1の設計に応じて適宜変更できる。
【0035】
負極活物質層31は、たとえば、負極合剤スラリーを負極集電体表面に塗布し、乾燥し、圧延することにより形成できる。負極合剤スラリーは、たとえば、負極活物質32、結着剤、導電剤、増粘剤などを有機溶媒または水に溶解または分散させることにより調製できる。有機溶媒には、たとえば、N−メチル−2−ピロリドンなどを使用できる。
また、負極活物質32が、リチウムと合金化可能な元素、珪素化合物、錫化合物などである場合は、化学気相成長法(CVD)、真空蒸着法、スパッタリング法などの気相法により負極活物質層31を形成してもよい。
【0036】
第1絶縁層13はリチウムイオン伝導性ゲルを含み、負極活物質層31の表面に設けられている。負極活物質層31の表面とは、負極活物質層31の負極集電体30に接している面とは反対側の面である。本実施形態では、第1絶縁層13を負極活物質層31の表面に設けているが、それに限定されず、正極活物質層表面に設けてもよい。正極活物質層表面とは、正極活物質層の正極集電体に接している面とは反対側の面である。また、第1絶縁層13を、正極活物質層表面および負極活物質層31の表面の両方に設けてもよい。
【0037】
リチウムイオン伝導性ゲルは、リチウムイオン伝導性および接着性を有する絶縁材料である。接着性は、セラミックフィラー、正極活物質および負極活物質32に対する接着性である。これにより、第1絶縁層13が負極活物質層31の表面に強固に接着するとともに、第2絶縁層14が第1絶縁層13の表面に確実に保持される。その結果、第1絶縁層13と第2絶縁層14とからなる絶縁層を設ける効果を、リチウムイオン二次電池1の耐用期間全般にわたって持続させることができる。
【0038】
リチウムイオン伝導性ゲルは、セラミックフィラーを含有しないことがさらに好ましい。セラミックフィラーを含有するリチウムイオン伝導性ゲルを使用すると、セラミックフィラーが負極活物質32同士の隙間に入り込む。しかし、セラミックフィラーを含有しないリチウムイオン伝導性ゲルを用いると、前記隙間にセラミックフィラーが詰まることがない。さらに、リチウムイオン伝導性ゲルを含む第1絶縁層13を形成しても、負極活物質層31のリチウムイオン伝導性が低下することがない。正極11の正極活物質層表面に第1絶縁層13を形成する場合も同じ効果が得られる。
【0039】
また、セラミックフィラーを含有しないリチウムイオン伝導性ゲルを使用して、負極活物質層31の表面に第1絶縁層13を形成すると、セラミックフィラーを含有しないことなどにより、第1絶縁層13におけるピンホールの発生が顕著に抑制される。したがって、第2絶縁層14にピンホールが発生しても、第1絶縁層13と第2絶縁層14とからなる絶縁層全体を厚さ方向に貫通するピンホールの数は顕著に少なくなる。その結果、内部短絡の発生が抑制され、安全性の高いリチウムイオン二次電池1が得られる。
【0040】
また、第2絶縁層14において多少のピンホールが発生しても、リチウムイオン二次電池1の安全性に大きな影響を及ぼさないので、第2絶縁層14を構成する材料の選択自由度が増すという利点もある。
リチウムイオン伝導性ゲルには、たとえば、リチウムイオン伝導性非水電解質(以下単に「非水電解質」とする)とゲル化剤とを含むものを使用できる。
【0041】
非水電解質には、支持塩と非水溶媒とを含む一般的な非水電解質を使用できる。
支持塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiAsF6、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、4塩化ホウ酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCO2CF3、LiSO3CF3、Li(SO3CF32、LiN(SO2CF32、リチウムイミド塩などを使用できる。支持塩は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。支持塩の非水溶媒に対する溶解量は特に限定されないが、好ましくは0.2〜2mol/L、さらに好ましくは0.5〜1.5mol/Lである。
【0042】
非水溶媒には、エチレンカーボネ−ト(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、プロピレンカーボネート誘導体などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、エチルエーテル、トリメトキシメタンなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン誘導体などの環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ジオキソラン誘導体、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチル−2−ピロリドンなどを使用できる。非水溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との混合溶媒、および、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類と脂肪族カルボン酸エステル類との混合溶媒が好ましい。
【0043】
ゲル化剤には、非水電解質を保持できる合成樹脂を使用できる。合成樹脂の中でも、負極活物質層31や正極活物質層に対する第1絶縁層13の接着性などを考慮すると、フッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂としては、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン(VDF)とオレフィン系モノマーとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。オレフィン系モノマーには、たとえば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレンなどがある。これらの中でも、PVDF、VDFとHFPとの共重合体などが好ましく、VDFとHFPとの共重合体が特に好ましい。
【0044】
第1絶縁層13は、たとえば、溶液調製工程、膜形成工程および含浸工程を含む作製方法により、負極活物質層31の表面に形成できる。
溶液調製工程では、ゲル化剤を有機溶媒に溶解させ、ゲル化剤溶液を調製する。有機溶媒としては、ゲル化剤を溶解できるものであれば特に制限されないが、前記した各種の非水溶媒を使用できる。たとえば、ゲル化剤であるVDFとHFPとの共重合体と、有機溶媒であるジメチルカーボネートとの組み合わせが挙げられる。
【0045】
膜形成工程では、溶液調製工程で得られたゲル化剤溶液を負極活物質層31表面に塗布し、乾燥する。これにより、負極活物質層31表面にゲル化剤層が形成される。ゲル化剤溶液の塗布は、たとえば、アプリケータを用いて行われる。また、負極12をゲル化剤溶液に浸漬してもよい。
【0046】
含浸工程では、膜形成工程で得られた、負極活物質層31表面のゲル化剤層に非水電解質を含浸させる。非水電解質のゲル化剤層への含浸は、非水電解質とゲル化剤層とを接触させることにより行われる。より具体的には、たとえば、ゲル化剤層が形成された負極12を非水電解質に浸漬すればよい。これにより、第1絶縁層13が形成される。なお、生産性を考慮すると、非水電解質の含浸は、ゲル化剤層の表面に第2絶縁層14を形成した後に行うのが好ましい。
【0047】
また、第1絶縁層13は、非水電解質にゲル化剤を溶解させた溶液を、負極活物質層31表面に塗布し、前記溶液に含まれる溶媒成分の一部を乾燥により除去することによっても形成できる。
好ましい形態では、第1絶縁層13はリチウムイオン伝導性ゲルのみからなり、かつセラミックフィラーを含有しない。
【0048】
第1絶縁層13は、負極活物質層31と接触する面では、負極活物質層31表面の負極活物質32同士の隙間に入り込む。したがって、第1絶縁層13の厚さは、負極活物質層31の表面状態に応じて変化する。しかし、図2の負極集電体30の表面に垂直な方向において、負極活物質層31表面の最も突出した部分と、第1絶縁層13の第2絶縁層14と接する面との間隔(第1絶縁層13の厚さ)が好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下になるように形成するのが好ましい。第1絶縁層13の厚さは、ゲル化剤溶液および非水電解質にゲル化剤を溶解させた溶液の粘度などを調整することにより、容易に制御できる。
【0049】
第2絶縁層14は第1絶縁層13の表面に設けられ、各種機能を有している。第1絶縁層13の表面とは、第1絶縁層13の負極活物質層31と接している表面とは反対側の表面である。前記の各種機能には、第1絶縁層13の機械的強度の補強、内部短絡の発生防止、内部短絡が発生した場合における短絡部分の拡大の抑制、セパレータ15の熱収縮抑制などがある。
【0050】
第2絶縁層14は、多孔質耐熱層である。多孔質耐熱層は高い耐熱性および機械的強度を有している。これにより、第1絶縁層13の形状を保持するとともに、第1絶縁層13と負極活物質層31との接触(密着状態)を長期にわたって持続させる。また、内部短絡の発生や拡大を抑制する効果が一層確実に発揮される。
なお、第1絶縁層13と第2絶縁層14との境界は明瞭である必要はなく、第1絶縁層13と第2絶縁層14との間に、第1絶縁層13の成分と第2絶縁層14の成分とが混在する層が1層以上存在してもよい。
【0051】
多孔質耐熱層は絶縁性セラミックフィラー(以下単に「セラミックフィラー」とする)を含むことが好ましく、セラミックフィラーと樹脂結着剤とを含むことがさらに好ましい。セラミックフィラーと樹脂結着剤とを含む多孔質耐熱層において、セラミックフィラーの含有量は、好ましくはセラミックフィラーと樹脂結着剤との合計量の80重量%以上であり、より好ましくは80〜99.5重量%、さらに好ましくは90〜99.5重量%である。そして、残部が樹脂結着剤である。
【0052】
セラミックフィラーには各種の無機酸化物を使用できるが、リチウムイオン二次電池1内の環境における化学的な安定性などを考慮すると、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、イットリアなどが好ましい。セラミックフィラーは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
樹脂結着剤には、PVDF、PTFE、アクリルモノマーを含むスチレンブタジエンゴム(BM−500B)などを使用できる。
樹脂結着剤としてPTFEまたはアクリルモノマーを含むスチレンブタジエンゴム(BM−500B)を用いる場合は、樹脂結着剤と増粘剤とを併用するのが好ましい。増粘剤には、負極活物資層31に含まれるのと同じものを使用できる。
【0054】
多孔質耐熱層である第2絶縁層14は、たとえば、スラリー調製工程、スラリー塗布工程および乾燥工程を含む作製方法により形成できる。
【0055】
スラリー調製工程では、セラミックフィラーと樹脂結着剤と有機溶媒とを混合してスラリーを調製する。樹脂結着剤の使用量は、たとえば、セラミックフィラー100重量部に対し0.5〜10重量部である。有機溶媒は特に限定されないが、スラリーを第1絶縁層13表面に塗布する際に、第1絶縁層13に含まれる成分を著しく溶解しないという観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などを好適に使用できる。セラミックフィラーと樹脂結着剤と有機溶媒との混合は、たとえば、双腕式練合機を用いて実施される。
【0056】
スラリー塗布工程では、スラリー調製工程で得られたスラリーを、第1絶縁層13の表面または前記したゲル化剤層の表面に塗布する。スラリーの塗布は、たとえば、ドクターブレード、ダイコート、グラビアロールなどを用いて行う。
乾燥工程では、スラリー塗布工程で、第1絶縁層13の表面または前記したゲル化剤層の表面に塗布された塗膜を乾燥させ、前記塗膜から有機溶媒を除去する。これにより、第2絶縁層14が形成される。第2絶縁層14の厚さは特に制限されないが、好ましくは1μm〜20μmである。また、第2絶縁層14の空隙率も特に制限されないが、好ましくは20%〜70%である。
【0057】
セパレータ15は、多孔質絶縁体である。セパレータ15には、樹脂製多孔質フィルムを使用できる。特に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる多孔質フィルムが好ましい。その中でも、ポリエチレンからなる単層多孔質フィルム、ポリエチレンからなる単層多孔質フィルムとポリプロピレンからなる単層多孔質フィルムとを積層した多層多孔質フィルムなどが好ましい。これらは、延伸フィルムであることが一般的である。
【0058】
正極リード20は、一端が正極集電体に接続され、他端が正極端子24に接続されている。正極リード20には、アルミニウム製リードなどを使用できる。
負極リード21は、一端が負極集電体30に接続され、他端が電池ケース26の内底面に接続されている。負極リード21には、ニッケル製リード、ニッケル合金製リードなどを使用できる。
【0059】
上部絶縁板22および下部絶縁板23は、合成樹脂、ゴム類などの絶縁材料から形成され、電極群10とそれ以外の構成部材との絶縁、電極群10の保護などのために用いられる。正極端子24および電池ケース26は、ステンレス鋼、鉄などの金属材料から形成される。封口板25は、たとえば合成樹脂製、ゴム製などであり、正極端子24を支持するとともに、電池ケース26の開口を封口するために用いられる。
【0060】
電池ケース26内に、電極群10と共に収容される非水電解質には、第1絶縁層13を形成するのに使用する非水電解質と同じものを使用できる。非水電解質は、前記した支持塩および非水溶媒を含有し、添加剤を含有していてもよい。添加剤には、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、フルオロベンゼンなどがある。これらの添加剤は、正極11および/または負極12表面に皮膜を形成し、過充電時の安定性などを向上させる。添加剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0061】
リチウムイオン二次電池1は、たとえば、次のように作製できる。
電池ケース26に、電極群10および非水電解質を収容する。正極リード20および負極リード21の両端を、それぞれ所定の位置に接続する。電池ケース26の開口に、正極端子24を支持する封口板25を装着する。電池ケース26の開口端部を、封口板25に向けてかしめつける。これにより電池ケース26が封口され、リチウムイオン二次電池1が得られる。
【0062】
本実施形態では、捲回型電極群を含む円筒型電池について説明したが、それに限定されない。本発明のリチウムイオン二次電池は、各種形態の電池にすることができる。前記形態には、捲回型電極群を含む角型電池、捲回型電極群を加圧成形した扁平状電極群を含む角型電池、積層型電極群をラミネートフィルム製パックに収容したラミネートフィルム電池、積層型電極群を含むコイン型電池などがある。
【実施例】
【0063】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるわけではない。
(実施例1)
(1)正極11の作製
コバルト酸リチウム3kg、PVDFの12重量%NMP溶液(商品名:PVDF#1320、(株)クレハ製)1kg、アセチレンブラック90gおよび適量のNMPを双腕式練合機で攪拌し、正極合剤スラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布および乾燥し、総厚が175μmとなるように圧延した。これを幅56mm、長さ600mmの寸法に裁断し、正極11を作製した。正極11の正極集電体が露出する部分にアルミニウム製リード20の一端を接続した。
【0064】
(2)負極12の作製
人造黒鉛3kg、スチレン−ブタジエンゴム粒子の40重量%水性分散液(商品名:BM−400B、日本ゼオン(株)製)75g、カルボキシメチルセルロース30gおよび適量の水を双腕式練合機で攪拌し、負極合剤スラリーを調製した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体30の両面に塗布および乾燥し、総厚が180μmとなるように圧延した。これを幅57.5mm、長さ650mmの寸法に裁断し、負極12を作製した。負極12の負極集電体が露出する部分にニッケル製リード21の一端を接続した。
【0065】
(3)第1絶縁層13の前駆体であるゲル化剤層の形成
VDF−HFP共重合体(商品名:#8500、(株)クレハ製)の3重量%ジメチルカーボネート溶液を、負極活物質層31表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥し、第1絶縁層13の前駆体であるゲル化剤層を形成した。ゲル化剤層の厚さは2μmであった。
【0066】
(4)第2絶縁層14の形成
メディアン径0.3μmのアルミナ970g、変性ポリアクリロニトリルゴムの8重量%NMP溶液(商品名:BM−720H、日本ゼオン(株)製)375gおよび適量のNMPを双腕式練合機で攪拌し、第2絶縁層用スラリーを調製した。このスラリーを前記(3)で形成されたゲル化剤層表面に塗布し、120℃の真空減圧下で10時間乾燥し、第2絶縁層14を形成した。第2絶縁層14の厚さは4μmであった。
【0067】
(5)リチウムイオン二次電池1の組立
正極11と、第1絶縁層13の前駆体であるゲル化剤層および第2絶縁層14を表面に形成した負極12とを、これらの間に、厚さ16μmのポリエチレン製微多孔質フィルムからなるセパレータ15を介在させて捲回し、電極群10を作製した。
【0068】
この電極群10の長手方向両端に上部絶縁板22および下部絶縁板23を装着した後、有底円筒型の電池ケース26(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に挿入した。アルミニウム製リードおよびニッケル製リードの他端をそれぞれ正極端子24の下部および電池ケース26の内底面に接続した。
【0069】
その後、非水電解質5.5gを電池ケース26内に注液した。電池ケース26の開口に、正極端子24を支持する封口板25を装着し、開口端部を封口板25に向けてかしめつけ、電池ケース26の開口を封口した。こうして、設計容量2000mAhの円筒型リチウムイオン二次電池1を作製した。なお、非水電解質を注液すると、電極群10に含まれるゲル化剤層と非水電解質とが接触し、ゲル化剤層が非水電解質の含浸によりゲル状になり、第1絶縁層13が形成された。
【0070】
非水電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との体積比1:1:1の混合溶媒97重量部にビニレンカーボネート(VC)3重量部を添加し、LiPF6を1モル/Lの濃度で溶解したものを用いた。
【0071】
(比較例1)
第1絶縁層13を形成せず、負極12表面に直接第2絶縁層14を形成する以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0072】
(比較例2)
第1絶縁層13のみを形成し、第2絶縁層14を形成しない以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0073】
(比較例3)
第1絶縁層13の前駆体であるゲル化剤層の形成において、VDF−HFP共重合体(#8500)の3重量%ジメチルカーボネート溶液に代えて、VDF−HFP共重合体(#8500)とメディアン径0.3μmのアルミナとをジメチルカーボネートに溶解または分散させたスラリーを使用し、かつ第2絶縁層14を形成しない以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。前記スラリーにおけるVDF−HFP共重合体(#8500)の含有量はスラリー全量の3重量%であった。また、前記スラリーにおけるアルミナの含有量はスラリー全量の6重量%であった。
【0074】
(比較例4)
負極活物質層31表面に第2絶縁層14を形成し、第2絶縁層14表面に第1絶縁層13を形成する以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
実施例1および比較例1〜4で得られたリチウムイオン二次電池における、第1絶縁層13および第2絶縁層14の構成を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
(試験例1)
実施例1および比較例1〜4で得られたリチウムイオン二次電池を用いて、次に示す釘刺し試験および充放電試験を行い、安全性および負荷特性について評価した。
【0077】
[釘刺し試験]
各電池に対して、以下の条件で充電を行った。そして、20℃環境下で、充電状態の電池の側面から、直径2.7mmの鉄釘を5mm/秒の速度で2mmの深さまで突き刺し、内部短絡を発生させた。その際の電池の温度を、釘刺し位置から離れた電池の側面に配置した熱電対で測定した。30秒後の到達温度を表2に示す。
【0078】
充電条件:
定電流充電;電流値1400mA/充電終止電圧4.3V
定電圧充電;電圧値4.3V/充電終止電流100mA
【0079】
[充放電試験]
各電池に対して、20℃環境下で、以下の条件で充放電を行い、0.2C放電時および3C放電時における放電容量をそれぞれ求めた。0.2C放電時の放電容量に対する、3C放電時の放電容量の割合を百分率(%)で求め、負荷特性とした。結果を表2に示す。
【0080】
充放電条件:
定電流充電;電流値1400mA/充電終止電圧4.2V
定電圧充電;電圧値4.2V/充電終止電流100mA
定電流放電;電流値400mA(0.2C)/放電終止電圧3.0V
定電流充電;電流値1400mA/充電終止電圧4.2V
定電圧充電;電圧値4.2V/充電終止電流100mA
定電流放電;電流値6000mA(3C)/放電終止電圧3.0V
【0081】
【表2】

【0082】
表2から、実施例1の電池は、釘刺し試験における電池表面温度が低いので、内部短絡時の安全性が高く、負荷特性も高いことがわかる。
これに対し、第2絶縁層14(アルミナ含有多孔質耐熱層)のみからなる比較例1の電池では、電池表面温度は比較的低いものの、負荷特性の低下が大きくなっている。第1絶縁層13(VDF−HFP共重合体ゲル層)のみからなる比較例2の電池では、負荷特性の低下は少ないものの、電池表面温度が100℃を上回り、内部短絡に対する安全性が低い。
【0083】
第1絶縁層13(アルミナ含有VDF−HFP共重合体ゲル層)のみからなる比較例3の電池では、電池表面温度が100℃を超えるとともに、負荷特性の低下が目立った。比較例4の電池は、第1絶縁層13がアルミナ含有多孔質耐熱層であり、第2絶縁層14がVDF−HFP共重合体ゲル層であり、本発明とは積層順序を逆にしている。この比較例4の電池では、電池表面温度は比較的低いものの、負荷特性の低下が顕著であった。
【0084】
以上の結果から、電極表面にリチウムイオン伝導性ゲルを含む第1絶縁層13を形成し、第1絶縁層13の表面に多孔質耐熱層である第2絶縁層14を形成する構成を採用することにより、内部短絡に対する安全性および負荷特性を高水準で両立できるリチウムイオン二次電池が得られることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のリチウムイオン二次電池は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の用途に使用でき、特に、携帯用電子機器の電源として有用である。携帯用電子機器には、パーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機器、ビデオカメラなどがある。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、プラグインHEVなどにおける電気モーター駆動用の主電源または補助電源、電動工具、掃除機、ロボットなどの駆動用電源、電力貯蔵用電源などとしての利用も期待される。
【符号の説明】
【0086】
1 リチウムイオン二次電池
10 電極群
11 正極
12 負極
13 第1絶縁層
14 第2絶縁層
15 セパレータ
20 正極リード
21 負極リード
22 上部絶縁板
23 下部絶縁板
24 正極端子
25 封口板
26 電池ケース
30 負極集電体
31 負極活物質層
32 負極活物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極群、リチウムイオン伝導性非水電解質および前記電極群と前記リチウムイオン伝導性非水電解質とを収容する電池ケースを含み、
前記電極群は、正極、負極、第1絶縁層、第2絶縁層および多孔質絶縁体を含み、
前記正極は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層と、正極集電体とを含み、
前記負極は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層と、負極集電体とを含み、
前記第1絶縁層はリチウムイオン伝導性ゲルを含み、前記正極活物質層および前記負極活物質層のいずれか一方または両方の表面に設けられ、
前記第2絶縁層は多孔質耐熱層であり、前記第1絶縁層の表面に設けられ、かつ
前記多孔質絶縁体はリチウムイオン透過性を有し、前記正極と前記負極との間に介在するように配置されるリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記リチウムイオン伝導性ゲルが、リチウムイオン伝導性非水電解質とゲル化剤とを含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記ゲル化剤がフッ素樹脂である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体である請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記多孔質耐熱層が、絶縁性セラミックフィラーを含有する請求項1〜4のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記多孔質絶縁体が、合成樹脂製の多孔質フィルムである請求項1〜5のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−267475(P2010−267475A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117411(P2009−117411)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】