説明

リチウムイオン蓄電デバイス

【課題】 電極群の中に配置した金属リチウム板を溶解させて生成したリチウムイオンを負極板の負極活性物質に確実にドープすることが可能なリチウムイオン蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】
導電性遮蔽材33は、集電用金属箔35の少なくとも一方の面上に負極活物質層37が形成された構造とする。金属リチウム板31と正極板17との間に導電性遮蔽材33が存在することとなり、金属リチウム板31は、負極板19と導電性遮蔽材33の集電用金属箔35に形成された負極活物質層37とに挟まれることとなる。そのため、金属リチウム板がセパレータを突き破って正極板と接触することがなく、短絡防止をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンキャパシタ及びリチウムイオン電池等のリチウムイオン蓄電デバイスは、エネルギー密度が高く、かつ自己放電が少なくてサイクル性能が良いという利点がある。そのため近年では、非水電解液蓄電デバイスを大型・大容量化することにより、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車の電源として使用することが期待されている。このようなリチウムイオン蓄電デバイスには、使用電圧範囲を広くするため及び容量を大きくするために、予め負極にリチウムイオンをドープ(リチウムプレドープ)しておくものがある。
【0003】
予め負極にリチウムイオンをドープする方法としては、ドーピング前の電極群内に、金属リチウム板を配置しておき、配置した金属リチウム板を溶解させてリチウムイオンを生成し、生成したリチウムイオンを負極板の負極活性物質にドープさせる方法がある。しかしながら、例えば金属リチウム板が折れ曲がった状態で捲回された場合には、金属リチウム板の一部がセパレータを突き破り正極と接触して、金属リチウム板と正極間で短絡を生じてしまうという問題が生じる。
【0004】
従来のリチウムイオン蓄電デバイスでは、特開2010−212266号公報(特許文献1)に示すように、金属リチウム板を金属箔(導電性遮蔽材)で保持した積層体を作り、2枚に分割した正極板を所定の間隔を空けて並べ、2枚の正極板の間に対応する位置、即ち2枚の正極板と対向しない位置に金属リチウム板を保持した積層体を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−212266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2枚に分割した正極板を所定の間隔を空けて配置し、正極板の間、即ち正極板と対向しない位置にリチウム金属を配置すれば、金属リチウム板がセパレータを突き破って(通過して)正極板と接触することがないので、短絡を防止することができる。しかしながら、2枚の正極板と対向しない位置にリチウム金属を配置する作業は、難度の高い作業を必要とする。また、2枚に分割した正極板の切断端面に生じたバリがセパレータを突き破って負極と接触し、ショートを生じさせる問題があった。
【0007】
本発明の目的は、金属リチウム板がセパレータを突き破って(通過して)正極板と接触することがないリチウムイオン蓄電デバイスを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、電極群の中に配置した金属リチウム板を溶解させて生成したリチウムイオンを負極板の負極活物質に確実にドープさせることが可能なリチウムイオン蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、負極板と正極板との間にセパレータが配置された電極群と、薄板状の金属リチウムと、導電性遮蔽材とを有するリチウムイオン蓄電デバイスを改良の対象とする。薄板状の金属リチウムは、負極板の上に直接または間接的に配置される。薄板状の金属リチウムと正極板との間には、負極板と電気的に接続された導電性遮蔽材が配置されている。この導電性遮蔽材は、薄板状の金属リチウムが正極板とセパレータを介して対向するのを阻止する。薄板状の金属リチウムは、リチウムイオンが負極板の負極活物質層にドープされた後は、存在しない状態となる。特に本発明では、導電性遮蔽材を、集電用金属箔の少なくとも一方の面上に負極活物質層が形成された構造とする。このような構造の導電性遮蔽材を用いると、薄板状の金属リチウムと正極板との間に負極活物質層を備えた導電性遮蔽材が存在することになるため、薄板状の金属リチウムから溶解したリチウムイオンの大部分は、負極板の負極活物質及び集電用金属箔に設けた負極活物質層にドープされることになる。そのため、従来のように正極板を分割して配置する必要がない。そして導電性遮蔽材の負極活物質層にドープされたリチウムイオンは、負極の負極活物質にドープされたリチウムイオンと同じ効果を発揮する。その上、本発明では正極板を2分割し間隔をあけて配置しないため、正極活物質の量を減らすことなく、負極活物質の量を増大させて、所望の使用電圧範囲または容量を確実に得ることができる。
【0010】
導電性遮蔽材は、集電用金属箔の一方の面上に負極活物質層が形成された構造であることが好ましい。この場合には、集電用金属箔の他方の面上に薄板状の金属リチウムが貼り付けられた構造とする。このように構成すると、金属リチウム板を貼り付けることが容易になる。また集電用金属箔の両面上に負極活物質層を形成する場合に比べて、導電性遮蔽材を製造する際の作業工程数を少なくすること及び作業時間等を短くすることができるので、リチウムイオン蓄電デバイスを安価なものとすることができる。なお、集電用金属箔の両面に負極活物質層を形成してもよいのは勿論である。
【0011】
導電性遮蔽材は、負極板と同じ構造を有したものとしてもよい。このようにすると、導電性遮蔽材として既存の負極板を適当な長さに切断したものを導電性遮蔽材として用いることができるため、導電性遮蔽材を新たに準備する必要がなくなる。そのため、導電性遮蔽材を簡単に製造することができて、リチウムイオン蓄電デバイスを安価に製造することができる。
【0012】
薄板状の金属リチウムの配置態様は任意である。例えば薄板状の金属リチウムを負極板上に直接貼り付けて積層してもよい。この場合には、薄板状の金属リチウムは圧力を加えると粘性を持つという性質を利用して、負極板に圧接により薄板状の金属リチウムを直接貼り付ければよい。このように構成すると、部品点数及び作業工程数を減らすことができ、リチウムイオン蓄電デバイスを安価に製造することが可能となる。
【0013】
薄板状の金属リチウムは、負極板に塗布された負極活物質よりも銅の穴明き箔に貼り付き易い性質を有している。そこで、薄板状の金属リチウムの位置決めが容易でない場合には、薄板状の金属リチウムを、銅の穴明き箔を介して負極板上に積層してもよい。このように構成すれば、薄板状の金属リチウムの位置決めが容易となる。
【0014】
導電性遮蔽材は、集電用金属箔の一方の面上に負極活物質層を形成し、集電用金属箔の他方の面の半部領域上に薄板状の金属リチウムを貼り付けた構造とすることができる。そして集電用金属箔の他方の面の薄板状の金属リチウムが貼り付けられていない半部領域が薄板状の金属リチウムを覆うように折り曲げられた状態で、導電性遮蔽材を極板群中に配置する。このようにすると薄板状の金属リチウムは、両面が集電用金属箔で覆われた状態になる。その結果、金属リチウム板を貼り付けることが容易となり、リチウムイオン蓄電デバイスの生産性を向上させることができる。また負極活物質を片面のみに形成すればよいので、リチウムイオン蓄電デバイスを安価に製造することができる。
【0015】
集電用金属箔の一方の面上に負極活物質層を形成した導電性遮蔽材は、折り曲げずに用いることもできる。この場合には、集電用金属箔の他方の面上に薄板状の金属リチウムを貼り付けた構造とする。そして、集電用金属箔の他方の面を負極板側に向けるようにして、導電性遮蔽材を極板群中に配置する。このように構成すると、前者の場合と比べて、容量の増加効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施の形態のリチウムイオン電池の部分断面図である。
【図2】(A)は第一の実施の形態の電極群の捲回前の状態を模式的に示す図であり、(B)は電極群の一部を拡大して示す図である。
【図3】(A)は第二の実施の形態の電極群の捲回前の状態を模式的に示す図であり、(B)は電極群の一部を拡大して示す図である。
【図4】(A)は第三の実施の形態の電極群の捲回前の状態を模式的に示す図であり、(B)は電極群の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明を円筒型リチウムイオンキャパシタに適用した第一の実施の形態をその長手方向に沿って切断した状態を示す断面図である。なお図1においては、リチウムイオンキャパシタの構成部材の一部の図示を省略してある。本実施の形態の円筒型リチウムイオンキャパシタ1は、容器本体3と、蓋部材5と、電極群ユニット7とを備えている。容器本体3は、ニッケルメッキが施されたスチール材料により一方の端部が開口した有底円筒形状を有している。容器本体3の開口部4は、蓋部材5により塞がれている。蓋部材5は、絶縁性および耐熱性を有するゴムまたは樹脂製ガスケット9を介して容器本体3の上部にかしめられている。このため、キャパシタ1の内部は密封されている。また、容器1内には、電極群ユニット7の電極群11全体を浸潤可能な量の非水電解液(図示せず)が注液されている。本実施の形態では、非水電解液としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を電解質として溶解した溶液を用いている。電極群ユニット7は、電極群11と、正極集電体13と、負極集電体15とを備えている。なお、図1においては理解を容易にするため、リチウムイオンキャパシタの一部の寸法を誇張して示している。
【0018】
図2(A)は、電極群11を捲回する前の状態を模式的に示す図であり、(B)は金属リチウム板31と、導電性遮蔽材33とを拡大して示す図である。電極群11は、図2(A)に示すように、帯状の正極板17と帯状の負極板19とを、2枚のセパレータ21及び23を介して中空円筒状の軸芯25を中心として渦巻き状に捲回することにより構成されている。本実施の形態では、図2(B)に示す金属リチウム板31と導電性遮蔽材33とが、電極群11を捲回する際に正極板17、負極板19及び2枚のセパレータ21及び23と一緒に捲回されている。
【0019】
正極板17は、正極集電板としてのアルミニウム箔の両面に、活性炭を含む正極合剤を略均質に塗布して正極活物質層が形成されている。アルミニウム箔の長手方向の一方の辺側には、正極合剤が塗装されていない未塗着部26が形成されている。未塗着部26は、櫛歯状に切り欠かれており、切り欠かれた残部により、複数の正極リード片すなわちタブ27が形成されている。複数のタブ27は、正極集電体13に溶接により接続されている。
【0020】
負極板19は、負極集電板としての電解銅箔または圧延銅箔の両面に、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素粉末を含む負極合剤を略均質に塗布して負極活物質層が形成された構成となっている。銅箔の長手方向の一方の辺側には、負極合剤が塗着されていない未塗着部28が形成されている。未塗着部28は、櫛歯状に切り欠かれており、切り欠かれた残部により、複数の負極リード片すなわちタブ29が形成されている。負極側の複数のタブ29は、正極側のタブ27が位置する側とは反対側に位置し、負極集電体15に溶接により接続されている。図1においては、蓋部材5側に複数の正極側のタブ27が位置し、容器本体3の底部側に複数の負極側のタブ29が位置している。
【0021】
負極板19の一方の側面上には、金属リチウム板31が配置される。金属リチウム板31は圧力を加えると粘性を持つ。そこで本実施の形態においては、負極板19に対して圧接により金属リチウム板31を直接貼り付けている。そして金属リチウム板31の上には、略長方形状に形成された導電性遮蔽材33が配置される。なお、略長方形状に形成された導電性遮蔽材33に金属リチウム板31を貼り付けた後、導電性遮蔽材33を負極板19に配置してもよいのは勿論である。導電性遮蔽材33は、電解銅箔または圧延銅箔からなる集電用金属箔35の一方の面上にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素粉末を含む負極合剤を略均質に塗布した負極活物質層37を備えている。なお導電性遮蔽材33は、電解銅箔または圧延銅箔の両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素粉末を含む負極合剤を略均質に塗布して負極活物質層を形成した構成としてもよい。この場合には、導電性遮蔽材33は、負極板19と同じ構成を有することとなる。集電用金属箔35は、1つの辺に沿って負極合剤が塗着されていない未塗着部39が形成されている。未塗着部39は、櫛歯状に切り欠かれており、切り欠かれた残部により、複数の導電性遮蔽材リード片すなわちタブ41が形成されている。複数のタブ41は、負極側の複数のタブ29と同様に、容器本体3の底部側に位置しており、負極側の複数のタブ29と同様に、負極集電対15に溶接により接続されている。
【0022】
導電性遮蔽材33は、金属リチウム板31の全体を覆うことができる大きさを有している。このように構成すると、金属リチウム板31は、負極板19及び導電性遮蔽材33に挟まれた状態で電極群11内に配置されることとなる。その結果、金属リチウム板31と正極板17との間には、導電性遮蔽材33とセパレータ21とが介在することになる。
【0023】
セパレータ21及び23には、クラフト紙等の多孔質基材が用いられている。本実施の形態においては、電極群11の外周面は、セパレータ21または23の端部により覆われており、その端部は、巻解けを防止するために図示しない粘着テープにより固定されている。軸芯25は、ポリフェニレンサルファイドやポリプロピレンなどの樹脂により形成されている。
【0024】
蓋部材5と電極群11の端部との間には、正極板17からの電位を集電するための複数の正極側のタブ27が接続されたアルミニウム製のリング状の正極集電体13が電極群11の端部に隣接して配置されている。正極集電体13は軸芯25の上端部に嵌着されている。正極集電体13の周囲から一体に張り出している環状部の外周面には、正極板17のタブ27の先端部がレーザ溶接や超音波溶接などで接合されている。また、容器本体3の底部と電極群11の端部との間には、複数の負極側のタブ29及び導電性遮蔽材33のタブ41とが接続された銅製の負極集電体15が、電極群11の端部に隣接するように配置されている。負極集電体15の内周面には軸芯25の下端部が嵌着されている。負極集電体15の外周には、負極板19のタブ29及び導電性遮蔽材33のタブ41の先端部がレーザ溶接や超音波溶接などで接合されている。
【0025】
正極集電体13の周面には、図示しない絶縁被覆が全周にわたって施されている。具体的には、正極集電体13の周面から電極群7の外周面にわたって粘着テープを一重以上巻いて絶縁被覆としている。粘着テープには例えば、ポリイミドやポリフェニレンサルファイドなどからなる基材の片面に、アクリレート系粘着剤を塗布したものを用いることができる。電極群7は、容器本体3内に挿入される。負極集電体15は、下部が有底筒状に形成されており、この底部と容器本体3とを抵抗溶接することにより、容器本体3に接合されている。
【0026】
次に本実施の形態の円筒型リチウムイオンキャパシタの作製について説明する。本実施の形態ではまず、容器本体3内に、軸芯25の内周を利用して所定量の非水電解液を注入する。非水電解液の注入は、作業の安全性を確保するために、温度管理された低湿度環境下で行われることが好ましい。なお軸芯25には、複数本のスリットが形成されていることがある。この場合には、容器本体3の内部は、複数のスリットを介して非水電解液に浸潤される。次に容器本体3の開口部を、正極リード板16を折りたたむようにして蓋部材5により塞ぐ。そして蓋部材5を、樹脂製ガスケット9を介してかしめて密封する。
【0027】
次に本実施の形態における金属リチウム板31の負極活物質へのドープの方法について説明する。本実施の形態では、作製した円筒型リチウムイオンキャパシタを、所定温度(例えば室温)に管理された貯蔵室に所定期間(例えば2〜4週間)放置する。導電性遮蔽部材33のタブ41は、負極板19のタブ29とともに負極集電体15に接合されているため、負極電位とリチウム電位との電位差により、放置されている間に金属リチウム板31は溶解し、溶解により生成したリチウムイオンは、負極板19の負極活物質にドープされる。なお、ドープが終了すると、金属リチウム板31は、すべて溶解するため、存在しない状態となり、導電性遮蔽板33のみが残存配置されている状態となる。以後、負極板19と導電性遮蔽材33とは電気的に接続されているため、導電性遮蔽材33は負極の一部として機能することとなる。その結果、本実施の形態では、所望の使用電圧範囲または容量を有するリチウムイオンキャパシタを確実に得ることができる。
【0028】
図3(A)は、本発明を円筒型リチウムイオンキャパシタに適用した第2の実施の形態で使用する電極群111を捲回する前の状態を模式的に示す図であり、(B)は電極群111内に配置される金属リチウム板131と、導電性遮蔽材133と、銅の穴明き箔151とを拡大して示す図である。なお図3には、図1及び図2に示した実施の形態と同様の部分に、図1及び図2に付した符号に100の数を加えた数の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、第2の実施の形態の円筒型リチウムイオンキャパシタにおいて用いる電極群111は、負極板119の上に直接金属リチウム板131を貼り付けずに、銅の穴明き箔151を介して負極板上に間接的に金属リチウム板131を配置する。本実施の形態の銅の穴明き箔151は、導電性遮蔽材133と略同じ大きさに形成されており、導電性遮蔽材のタブ139が形成された辺に対向する辺に、タブ153を備えている。銅の穴明き箔151に設けたタブ153は、負極集電体に溶接により接合される。金属リチウム板131は、負極板119の負極活物質よりも銅の穴明き箔151に貼り付き易い性質を有している。従って、本実施の形態によれば、金属リチウム板131を負極板119に直接貼り付ける場合と比べて、金属リチウム板131の位置決めが容易となる。また、金属リチウム板131は、導電性遮蔽材133と、銅の穴明き箔151とに挟まれた状態で電極群111内に配置される。その結果、負極活物質へのドープの際に、金属リチウム板131は両面から積極的に溶解されることとなる。
【0030】
図4(A)は、本発明を円筒型リチウムイオンキャパシタに適用した第3の実施の形態で使用する電極群211を捲回する前の状態を模式的に示す図であり、(B)は電極群211内に配置される金属リチウム板231と導電性遮蔽材233とを拡大して示す図である。なお図4には、図1及び図2に示した実施の形態と同様の部分に、図1及び図2に付した符号に200の数を加えた数の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
図4に示すように、第3の実施の形態の円筒型リチウムイオンキャパシタにおいては、金属リチウム板231は、折り曲げられた状態の導電性遮蔽材233に挟まれた状態で電極群中に配置される。本実施の形態の導電性遮蔽材233は、集電用金属箔235の一方の面上に図示しない負極活物質層が形成されて構成されている。集電用金属箔235の他方の面の半部領域上には、金属リチウム板231が貼り付けられている。そして、集電用金属箔235の他方の面のうち、金属リチウム板231が貼り付けられていない半部領域が金属リチウム板231を覆うように導電性遮蔽材233は折り曲げられる。本実施の形態のように構成すると、圧力を加えられた金属リチウム板231は粘性を発揮して、集電用金属箔235を折り返すことにより金属リチウム板231を覆う集電用金属箔235の他方の面の残りの半部領域にも貼り付けられることになる。なお、集電用金属箔235の一方の面上に負極活物質層を形成した導電性遮蔽材233は、導電性遮蔽材233を折り曲げないで用いることもできる。この場合には、集電用金属箔235の他方の面上に金属リチウム板を貼り付ける。そして、集電用金属箔の金属リチウムが設けられた面を負極板側に向けるようにして、導電性遮蔽材を極板群中に配置すればよい。
【0032】
本実施の形態のリチウムイオンキャパシタにおいては、非水電解液として、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を電解質として溶解した溶液を用いているが、一般的なリチウム塩を電解質として有機溶剤に溶解したものであれば他の非水電解液を用いることができるのは勿論である。
【0033】
また本実施の形態は、円筒形のリチウムイオンキャパシタに本発明を適用したものであるが、本発明は、角形の極板を積層する積層タイプのリチウムイオンキャパシタや、リチウムイオン電池等の他のリチウムイオン蓄電デバイスにも適用することができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、薄板状の金属リチウムと正極板との間に負極活物質層を備えた導電性遮蔽材が存在することになるため、薄板状の金属リチウムから溶解したリチウムイオンの大部分は、負極板の負極活物質及び集電用金属箔に設けた負極活物質層にドープされることになり、従来のように正極板を分割して配置しなくても、金属リチウム板がセパレータを突き破って正極板と接触することがなく、短絡防止をすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 円筒型リチウムイオンキャパシタ
3 容器本体
4 開口部
5 蓋部材
7 電極群ユニット
9 樹脂製ガスケット
11 電極群
13 正極集電体
15 負極集電体
16 正極リード板
17 正極板
19 負極板
21 セパレータ
25 軸芯
26 未塗着部
27 タブ
29 タブ
31 金属リチウム板
33 導電性遮蔽材
35 集電用金属箔
37 負極活物質層
39 未途着部
41 タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極板と正極板との間にセパレータが配置された電極群を有し、
前記負極板の上に直接または間接的に配置される薄板状の金属リチウムと前記正極板との間に、前記薄板状の金属リチウムが前記正極板と前記セパレータを介して対向するのを阻止するように、前記負極板と電気的に接続された導電性遮蔽材が配置されており、リチウムイオンが前記負極板の負極活物質層にドープされた後は、前記薄板状の金属リチウムが存在しない状態になっているリチウムイオン蓄電デバイスであって、
前記導電性遮蔽材が、集電用金属箔の少なくとも一方の面上に負極活物質層が形成された構造を有していることを特徴とするリチウムイオン蓄電デバイス。
【請求項2】
前記導電性遮蔽材は、前記集電用金属箔の一方の面上に前記負極活物質層が形成され、
前記集電用金属箔の他方の面上に前記薄板状の金属リチウムが貼り付けられた構造を有している請求項1に記載のリチウムイオン蓄電デバイス。
【請求項3】
前記導電性遮蔽材が、前記負極板と同じ構造を有している請求項1に記載のリチウムイオン蓄電デバイス。
【請求項4】
前記薄板状の金属リチウムは、前記負極板上に直接貼り付けられている請求項1,2または3に記載のリチウムイオン蓄電デバイス。
【請求項5】
前記薄板状の金属リチウムは、前記負極板上に銅の穴明き箔を介して積層されている請求項1,2または3に記載のリチウムイオン蓄電デバイス。
【請求項6】
前記導電性遮蔽材が、前記集電用金属箔の一方の面上に前記負極活物質層が形成され、前記集電用金属箔の他方の面の半部領域上に前記薄板状の金属リチウムが貼り付けられた構造を有しており、
前記導電性遮蔽材が、前記集電用金属箔の他方の面の前記薄板状の金属リチウムが貼り付けられていない半部領域が前記薄板状の金属リチウムを覆うように折り曲げられた状態で、前記極板群中に配置されている請求項1に記載のリチウムイオン蓄電デバイス。
【請求項7】
前記導電性遮蔽材が、前記集電用金属箔の一方の面上に前記負極活物質層が形成され、前記集電用金属箔の他方の面上に前記薄板状の金属リチウムが貼り付けられた構造を有しており、
前記導電性遮蔽材が、前記集電用金属箔の他方の面を前記負極板側に向けるようにして、前記極板群中に配置されている請求項1に記載のリチウムイオン蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−79943(P2012−79943A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224195(P2010−224195)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】