説明

リチウムイオン電池のための合金複合材の陰極材料の製造方法

本発明は、噴霧乾燥炭素熱減量による、リチウムイオン電池のための球状炭素マトリックス構造を有する合金複合材の陰極材料の製造方法に関する。本発明は、一般式A−M/炭素[式中、AはSi、Sn、Sb、Ge及びAlからなる群から選択される金属であり、かつMは、Aとは異なり、Mは、B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Al、Geからなる群から選択される少なくとも1つの元素である]を有するリチウムイオン電池のための陰極材料を製造するための方法であって、− 有機ポリマー並びに、化学的に還元可能なナノメトリックA−及びM−前駆化合物、又はナノメトリックSi及び化学的に還元可能なM−前駆化合物、その際前記金属AはSiである、を含む溶液を提供する工程、− 前記溶液を噴霧乾燥して、それによってA−及びM−前駆体を有するポリマー粉末を得る工程、− 自然大気中で、500〜1000℃の温度で3〜10時間前記粉末を焼成して、それによって、このカルボサーマル還元下で、炭素マトリックスを、均一に分布したA−M合金粒子を得る工程を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧乾燥炭素熱減量による、リチウムイオン電池のための球状炭素マトリックス構造を有する合金複合材の陰極材料の製造方法に関する。
【0002】
電子工学及び情報産業の急速な発展で、電池、特に蓄(二次)電池に対する高い要求:例えば小さいサイズ、軽い質量、及びより長い試用期間をもたらす多数の携帯型電子製品、例えば移動通信機器、ノートブックコンピュータ、デジタル製品等は、広く使用されている。リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高い操作電圧、良好な負荷特性、急速な充電速度、汚染のない安全性、及びメモリに対して効果がないこと等の利点に関する多くの人々による研究のためのホットスポットである。
【0003】
リチウムイオン電池のための合金陰極材料は、主に、材料、例えばSn−を基材とする、Sb−を基材とする、Si−を基材とする、Al−を基材とする炭素保持材料を含む。かかる合金陰極材料は、大きい固有の容量、高いリチウムインターカレーション電位、電解質に対する低い感受性、良好な伝導率等の利点を有するが、しかし、合金陰極材料は、充電及び放電中に体積を膨張させ、有効材料の粉末化、電気接点の損失、及び電池性能の劣化をもたらす。
【0004】
炭素マトリックス中で均一に分布される、金属又は金属合金粒子からなる球状構造の合金複合材の陰極材料は、合金の体積膨張を軽減し、ナノ合金のアグロメレーションを妨げ、かつ電極に直接接触することができ、そして良好な電気化学の性能を有する。この構造は、さらに、金属又は金属合金で封入された炭素小球ともいわれる。
【0005】
現在、かかる構造の合金複合材の陰極材料を製造するための方法、例えば表面被覆法、交互吸着法、鋳型法、及び逆マイクロエマルジョン法がある。逆マイクロエマルジョン法は、使用される主な方法であり、かつ例えばWang、Ke et al.、Journal of the Electrochemical Society(2006)、153(10)、A1859−A1862による‘Preparation of Cu6Sn5−Encapsulated Carbon Microsphere Anode Material for Li−ion Battereis by Carbothermal Reduction of Oxides’において示されている。この方法において、界面活性剤を水相又は油相中で分散してミセルを形成し;そして金属酸化物をその中に添加し、そして撹拌及び超音波振動等によって完全に分散し;そして重合可能な有機物質をその中に添加して、その結果炭素マトリックス構造の前駆物質を形成し;そして最終的に、保護大気中で熱処理し、そして有機物質を炭素化して、炭素マトリックス構造を有する球状金属の材料を製造する。逆マイクロエマルジョン法は、かかる構造の複合体材料を製造するために使用されることができ、その際金属又は金属合金粒子は均一に分散され、かつ不可欠な形態を有し、炭素層の厚さは、反応物の質量比の変更によって調整されうる。しかしながら、この方法は、低い収率を有し、かつスケール製造を達成することが困難であり、そして反応の完了後に界面活性剤を回収することが困難であり、そして容易に汚染及び廃棄物をもたらす。
【0006】
前記の問題は、前記合金複合材の陰極材料をカルボサーマル還元によって製造するための改良された方法を提供することによって解決される。本発明は、一般式A−M/炭素、[式中、AはSi、Sn、Sb、Ge及びAlからなる群から選択される金属であり、かつMは、Aとは異なり、Mは、B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Al、Geからなる群から選択される少なくとも1つの元素である]を有するリチウムイオン電池のための陰極材料を製造するための方法であって、
− 有機ポリマー並びに、化学的に還元可能なナノメトリックA−及びM−前駆化合物、又はナノメトリックSi及び化学的に還元可能なM−前駆化合物、その際前記金属AはSiである、を含む溶液を提供する工程、
− 前記溶液を噴霧乾燥して、それによってA−及びM−前駆体を有するポリマー粉末を得る工程、
− 自然雰囲気中で、500〜1000℃の温度で3〜10時間前記粉末を焼成して、それによって、このカルボサーマル還元下で、炭素マトリックスを、均一に分布したA−M合金粒子を得る工程
を含む方法に関する。
【0007】
有利には、A−及びM−前駆化合物は、酸素、水酸化物、カーボネート、オキサレート、ニトレート又はアセテートのいずれか1つである。より有利には、A−及びM−前駆化合物は、20〜80nmの粒子サイズを有するA−酸化物及びB−酸化物である。溶液中で、A−酸化物の代わりに、ナノメトリック金属Si粉末も使用することができ、Si−M合金は、最終生成物中で形成される。
【0008】
好ましい一実施態様において、有機ポリマー溶液中で、有機ポリマー中の炭素に対する、A−及びM−前駆化合物中に存在するA及びMの質量比は、20〜80質量%、及び有利には30〜60質量%の炭素マトリックス中の残りの炭素を提供するように選択される。カルボサーマル還元反応において消費される炭素の量は、化学方程式:
a A−酸化物+m M−酸化物+c C=>Aam+c CO、例えば:
4SnO2+Sb23+11C=>2Sn2Sb+11CO
に従って算出されうる。
【0009】
それらが有機ポリマーを介した過剰炭素を提供するように、カルボサーマル還元は、金属酸化物を完全に還元する、及びそれらを高分子ポリマーの炭素化によって提供される過剰炭素中に組込む原因である。カルボサーマル還元反応式の知識、ポリマーの炭素含有率及び最終生成物中の金属合金を組込む構造体における炭素含有率は、最初に金属酸化物と混合されるべきポリマーの量を決定する。得られたポリマーからの炭素の収率を確立するために、TG/DSC試験を実施する。例えば、フェノールホルムアルデヒドは、100℃でアルゴン雰囲気下で硬い炭素に完全に炭素化されて、36.01質量%の残りの硬い炭素含有率を得る。
【0010】
好ましい一実施態様においても、有機ポリマーは、水溶性の又はアルコール溶性フェノール樹脂である。
【0011】
噴霧乾燥の工程を同時乾燥によるエアフロー噴霧乾燥器で実施することも好ましい。その溶液を、有利には、260℃より高い温度で蒸発させ、その際ガス流が生じ、その後その溶液を、0.3〜0.5MPaの圧力で該ガス流によって微粒化する。エアフロー噴霧乾燥器の内側で、前記ガス流は入口から出口まで移動し、それによって空気入口の温度を有利には260〜360℃で設定し、かつ100℃〜130℃で出口における温度を設定する。
【0012】
噴霧乾燥は、複合陽極材料を製造するための有効的な方法である。それは、低コストであり、調整が容易な方法であり、かつ大量生産に適している。噴霧乾燥において、ポリマーの液滴を、高圧空気蒸気によって分散し、そして高温で固体化する。ナノ金属酸化物粒子(又は他の金属前駆化合物)を、ポリマー溶液中で均一に分散する。噴霧乾燥によって製造した粒子を直接焼成することができる。前記の逆マイクロエマルジョン法の場合ではなく、エマルジョン生成物は、焼成前に洗浄及び乾燥すべきである。
【0013】
噴霧乾燥は、ポリマー溶液を有する金属前駆体の供給率及び粘度、並びに空気圧を管理することによって、ポリマー−金属前駆化合物の粒子サイズ分布を調整するための効率的な方法でもある。高分子ポリマー鎖が溶液の固体化中に連結するために、これは、炭素化後に得られる炭素エアロゲルの形での多孔質生成物を提供する。炭素の一部が金属前駆化合物を純粋な金属に還元するためにも消費されるために、還元された合金の体積は、金属酸化物の体積よりも小さくなる。得られた粒子の多孔率は、電極の充電及び放電中に合金の膨張及び収縮を軽減することができる。未処理の材料と混合されるいくつかの孔形成剤を使用することも賢明である。
【0014】
本発明の方法によって、リチウムイオン電池のための、一般式A−M/Cを有する陰極材料の複合前駆体粉末は、有利には噴霧乾燥によって製造される。前記前駆体は、有利には、有機ポリマー中に組込まれた均一に分散されたナノメトリックA−酸化物又はM−酸化物からなり、その際Aは、AはSi、Sn、Sb、Ge及びAlからなる群から選択される金属であり、かつMは、Aとは異なり、Mは、B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Al、Geからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、かつAとMは異なり、該複合粉末中に双方とも存在する。
【0015】
リチウムイオン電池のための合金複合材の陰極材料を製造するための方法において使用される合金系は、
a)Sn−M−C合金(M=B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Al、Ge);
b)Sb−M−C合金(M=B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Ca、Mg、V、Ti、In、Al、Ge);
c)Si−M−C合金(M=B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Al、Ge);
d)Ge−M−C合金(M=B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Al);及び
e)Al−M−C合金(M=B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Ge)
を含む。
【0016】
最良の実施態様において、それらの製造方法は以下の工程を含む:
(1)未処理の材料を製造する工程:合金複合体材料及び有機高分子ポリマーを製造するために要求されるナノ酸化物を化学量論比で測定する。Si−M−C合金を製造するために、ナノ酸化物を、ナノメトリックSi粉末で置き換える。
(2)溶液を調合する工程:前記有機高分子ポリマーを、溶剤中に添加してその中に溶解し、そしてそれらを10〜20%の均一な溶液に調合し;そしてナノ酸化物をそれらに添加して、ゆっくりと撹拌する。
(3)噴霧乾燥工程:調合した溶液を噴霧乾燥して、混合粉末を得て、その際乾燥を、同時乾燥によるエアフロー噴霧乾燥器で実施し、2つの液体噴霧ノズルを噴霧装置として使用し、蠕動ポンプを10〜20ml/分の速度で供給材料として溶液を供給するために使用し、噴霧ノズルでのガス流を、圧縮空気の圧力によって調整して約0.4MPaで噴霧し、空気入口での温度を260〜300℃に調整し、そして出口での温度を100〜130℃に調整する。
(4)カルボサーマル還元工程:混合した粉末を、窒素又はアルゴン雰囲気中で、500〜1000℃で3〜10時間焼成して、必須の形態及び均一な分布を有する、リチウムイオン電池のための(前記のような)球状の封入構造を有する合金複合材の陰極材料を得る。
【0017】
この技術において使用される未処理の材料は、主にA+Pの2つのカテゴリーであり、その際、Aは種々の混合物、例えばB23、SnO2、Co34、Sb23、AgO、Cu2O、MgO、CuO、ZrO2、NiO、ZnO、Fe23、MnO2、CaO、V25、Nb25、TiO2、Al23、Cr23、InO、及びGeO2の1つ以上の混合物であり、かつPは、有機高分子ポリマー、例えば水溶性フェノール樹脂、アルコール溶性フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フルフラル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリクロロビニル、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアルコール、及びポリフルフリルアルコールの1つである。
【0018】
前記有機高分子ポリマーを溶解するために使用される溶剤は、水、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、N−メチルピロリドン及びクロロホルムの1つである。
【0019】
前記技術を使用することによって製造されるリチウムイオン電池のための合金複合材の陰極材料は、優れた電気化学性能を有し、該技術は、低コストであり、かつ単純な方法であり、そしてリチウムイオン電池のための合金複合材の陰極材料の大量の工業化製造のために直接使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明において合成されたCu6Sn5/C複合体材料のSEMグラフを示す。
【図2】図2は、本発明において合成されたCu6Sn5/C複合体材料のXRDグラフを示す。
【図3】図3は、本発明において合成されたCu6Sn5/C複合体材料の最初の充電及び放電曲線を示す。
【図4】図4は、最初の50サイクルに関する、本発明において合成されたCu6Sn5/C複合体材料のサイクル性能曲線を示す。
【図5】図5は、フェノール樹脂を分解することから得られた純粋な硬い炭素のサイクル性能曲線を示す。
【図6】図6は、Cu6Sn5/C複合体材料の粒子サイズ分布を示す。
【図7】図7は、1サイクル、10サイクル及び20サイクルに関する、本発明において合成されたCu6Sn5/C複合体材料の性能曲線を示す。
【図8】図8は、最初の20サイクルに関する、本発明において合成されたCu6Sn5/C複合体材料のサイクル性能曲線(容量及び容量維持)を示す。
【0021】
本発明の技術解決を、前記実施態様と合わせて、さらに以下で詳述する。
【0022】
実施例1:
まず、CuO及びSnO2ナノ酸化物を、6:5のCu:Snのモル比で計量し;そして60%の水溶性フェノール樹脂溶液を計量し、そして樹脂:(CuO+SnO2)=5:3(質量%)の調合比で取り;そして脱イオン水を、その中に添加して15質量%の溶液を調合する。得られた溶液を、エアフロー噴霧乾燥機で乾燥し、そしてその供給材料溶液を、15ml/分の速度での蠕動ポンプで装入し、噴霧ノズルのガス流を、圧縮空気の圧力によって調整して約0.4MPaで噴霧し;空気入口出の温度を300℃に調整し、そして出口での温度を130℃に調整して;そして出口での空気を、一次ボルテックス分離後に開放する。噴霧乾燥によって得られた金属酸化物を組込むフェノール樹脂を、高純度窒素の保護下で、1000℃で5時間焼成し、そして球状の形態を有するCu6Sn5/C複合体の陰極材料を得る。SEMグラフを図1において示し;図2においてCu6Sn5/C複合体材料のXRDパターンを示す。最終の炭素含有率を30質量%に調整した。カルボサーマル還元反応において消費した炭素量を、次の方程式に従って算出することができる:
6CuO+5SnO2+16C=>Cu6Sn5+16CO。
過剰のフェノールホルムアルデヒド樹脂を、Cu6Sn5合金での複合のための過剰炭素を製造するために添加する。Cu6Sn5/Cの試料としての、合計マスバランスでの合成は以下である:
【表1】

【0023】
7.53gのSnO2及び4.8gのCuOの未処理の材料を還元して、10.32gのCu6Sn5を形成する。炭素1.92gを消費して、SnO2及びCuOを還元する。最終生成物は、炭素30%(炭素4.42g)を含む。炭素の合計質量は6.34gである。合計フェノールホルムアルデヒド樹脂の質量は17.61gであり、次の式:6.34/36.01%=17.61によって算出され、その際前記の36.01%は、不活性雰囲気下で1000℃で加熱した場合のフェノールホルムアルデヒド樹脂の残りの炭素比である。
【0024】
最終のCu6Sn5/C複合体材料を、−図4(サイクル数に対するmAh/gでの容量)を参照−、対電極としてリチウム箔を有する室温で370mAh/gの最初の充電比容量を有するように計測し、容量維持の割合は、充電及び放電の50サイクル後に92%である。
【0025】
前記金属合金の寄与率を、Sn−Cu/Cの比容量と、不活性雰囲気下で100℃までフェノール樹脂を加熱することによって得られる純粋な硬い炭素の比容量とを比較することによって示す:図5(サイクル数に対するmAh/gでの容量を示す)を参照。
【0026】
実施例2:
まず、Co34及びSnO2ナノ酸化物を、1:2のCo:Snのモル比で計量し;そして60%の水溶性フェノール樹脂溶液を計量し、そして樹脂:(Co34+SnO2)=5:3(質量%)の調合比で取り;そして脱イオン水を、その中に添加して15質量%の溶液を調合する。得られた溶液を、エアフロー噴霧乾燥機で乾燥し、そしてその供給材料溶液を、15ml/分の速度での蠕動ポンプで装入し、噴霧ノズルのガス流を、圧縮空気の圧力によって調整して約0.4MPaで噴霧し;空気入口出の温度を300℃に調整し、そして出口での温度を120℃に調整して;そして出口での空気を、一次ボルテックス分離後に開放する。噴霧乾燥によって得られる、二酸化スズ及び四酸化三コバルトのビーズ粉末を有するフェノール樹脂を、高純度窒素の保護下で、900℃で10時間焼成し、そして球状炭素マトリックス構造のCoSn2/C複合体陰極材料を最終的に得る。CoSn2/C複合体材料を、対電極としてリチウム箔を有する室温で440mAh/gの最初の充電比容量を有するように測定し、そして容量維持の割合は、充電及び放電の20サイクル後に90.8%であった。
【0027】
実施例3:
まず、Sb23及びSnO2ナノ酸化物を、1:1のSb:Snのモル比で計量し;そしてアルコール溶性フェノール樹脂粉末を計量し、そして樹脂:(Sb23+SnO2)=5:1(質量%)の調合比で取り;そしてエタノールを、その中に添加して20質量%の溶液を調合する。得られた溶液を、エアフロー噴霧乾燥機で乾燥し、そしてその供給材料溶液を、10ml/分の速度での蠕動ポンプで装入し、噴霧ノズルのガス流を、圧縮空気の圧力によって調整して約0.4MPaで噴霧し;空気入口出の温度を300℃に調整し、そして出口での温度を100℃に調整して;そして出口での空気を、一次ボルテックス分離後に開放する。噴霧乾燥によって得られる、二酸化スズ及び三酸化アンチモンのビーズ粉末を有するフェノール樹脂を、高純度窒素の保護下で、800℃で10時間焼成し、そして球状炭素マトリックス構造を有するSnSb/C複合体陰極材料を得る。SnSb/C複合体材料を、対電極としてリチウム箔を有する室温で400mAh/gの最初の充電比容量を有するように測定し、そして容量維持の割合は、充電及び放電の50サイクル後に85.1%であった。
【0028】
実施例4:
まず、ナノSi粉末及びCuOナノ酸化物を、1:1のSi:Cuのモル比で計量し;そしてアルコール溶性フェノール樹脂粉末を計量し、そして樹脂:(Si+CuO)=5:3(質量%)の調合比で取り;そしてエタノールを、その中に添加して20質量%の溶液を調合する。得られた溶液を、エアフロー噴霧乾燥機で乾燥し、そしてその供給材料溶液を、20ml/分の速度での蠕動ポンプで装入し、噴霧ノズルのガス流を、圧縮空気の圧力によって調整して約0.4MPaで噴霧し;空気入口出の温度を300℃に調整し、そして出口での温度を110℃に調整して;そして出口での空気を、一次ボルテックス分離後に開放する。噴霧乾燥によって得られる、ナノSi粉末及び酸化銅のビーズ粉末を有するフェノール樹脂を、高純度窒素の保護下で、900℃で5時間焼成し、そして球状炭素マトリックス構造のSi−Cu/C複合体陰極材料を得る。Si−Cu/C複合体材料を、対電極としてリチウム箔を有する室温で520mAh/gの最初の充電比容量を有するように測定し、そして容量維持の割合は、充電及び放電の20サイクル後に94.7%である。
【0029】
実施例5:
実施例3と同様に、Sb23及びSnO2ナノ酸化物を、1:2のSb:Snのモル比で測定する。最終生成物が炭素30質量%を含むために、未処理の材料の配合は、フェノールホルムアルデヒド樹脂の残りの炭素、及び次の反応方程式:
【表2】

に基づく。
【0030】
8.39gのSnO2及び4.06gのSb23の未処理の材料を還元して、10gのSn2Sbを形成する。炭素1.84gを消費して、SnO2及びSb23を還元する。最終生成物は、炭素30%(炭素4.29g)を含む。炭素の合計質量は6.13gである。合計のフェノールホルムアルデヒド樹脂質量は17.02gであり、(6.13/36.01%)によって算出される。フェノールホルムアルデヒド樹脂を、高温での焼成後に硬い炭素エアロゲルに炭素化する。電極の体積膨張及び収縮を軽減しうる多くの孔を、粒子中に産出した。Sn2Sb/C=3/2の比表面積を第1表に示す。Barrett−Joyner−Halenda(BJH)方程式を使用することによって、孔半径を測定し、19.019〜19.231Åである。前記孔半径を、方法パラメータを調整することによって拡大して、サイクル性能を改良することができる。
【表3】

【0031】
900℃で焼成されたSn2Sb/Cの粒子分布を、図6において示す。d0=3.76μm、d25=6.50μm、d50=7.07μm、d90=7.64μmである。
【0032】
図7及び図8は、Sn2Sb/C複合体の電気化学的試験結果を示す。Sn2Sb/C複合体の最初の放電/充電容量は、それぞれ1044mAh/g及び618mAh/gである。最初のサイクルの効率は59%である。20サイクル後に、充電容量は411.3mAh/gであり、そして容量維持は66.6%である。図7において、1サイクル、10サイクル及び20サイクル中のmAh/gでの容量に対する電圧(V)を示す。図8において、サイクル数は、以下、左に容量、かつ右に容量維持を示す。四角は充電容量を示し、丸は放電容量を示し、そして三角は効率(充電/放電容量×100)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式A−M/炭素、[式中、AはSi、Sn、Sb、Ge及びAlからなる群から選択される金属であり、かつMは、Aとは異なり、Mは、B、Nb、Cr、Cu、Zr、Ag、Ni、Zn、Fe、Co、Mn、Sb、Ca、Mg、V、Ti、In、Al、Geからなる群から選択される少なくとも1つの元素である]を有するリチウムイオン電池のための陰極材料を製造するための方法であって、
− 有機ポリマー並びに、化学的に還元可能なナノメトリックA−及びM−前駆化合物、又はナノメトリックSi及び化学的に還元可能なM−前駆化合物、その際前記金属AはSiである、を含む溶液を提供する工程、
− 前記溶液を噴霧乾燥して、ポリマー粉末を有するA−及びM−前駆体を得る工程、
− 前記粉末を、無酸化雰囲気中で、500〜1000℃の温度で3〜10時間焼成して、均一に分布したA−M合金粒子を有する炭素マトリックスを得る工程
を含む方法。
【請求項2】
前記化学的に還元可能なA−及びM−前駆化合物が、酸素、水酸化物、カーボネート、オキサレート、ニトレート又はアセテートのいずれか1つである、請求項1に記載の陰極材料を製造するための方法。
【請求項3】
前記溶液を提供する工程において、有機ポリマー中の炭素に対する、前記A−及びM−前駆化合物中に存在するA及びMの質量比が、前記炭素マトリックスにおける残りの炭素の20〜80質量%、及び有利には30〜60質量%で提供されるように選択される、請求項1又は2に記載の陰極材料を製造するための方法。
【請求項4】
前記有機ポリマーが、水溶性又はアルコール溶性フェノール樹脂である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の陰極材料を製造するための方法。
【請求項5】
前記A−及びM−前駆化合物が、20〜80nmの粒子サイズを有する酸化物粉末である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の陰極材料を製造するための方法。
【請求項6】
前記噴霧乾燥の工程を、同時乾燥によるエアフロー噴霧乾燥機で実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の陰極材料を製造するための方法。
【請求項7】
前記噴霧乾燥を、前記溶液を260℃より高い温度で蒸発することによって実施し、その際ガス流が生じ、かつ0.3〜0.5MPaの圧力で該ガス流によって該溶液を噴霧する、請求項6に記載の陰極材料を製造するための方法。
【請求項8】
前記ガス流が、前記エアフロー噴霧乾燥機の内側を入口から出口まで移動し、その際入口の温度が260〜300℃であり、かつ出口の温度が100〜130℃である、請求項6又は7に記載の陰極材料を製造するための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−519360(P2012−519360A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552339(P2011−552339)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000927
【国際公開番号】WO2010/099864
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(509126003)ユミコア ソシエテ アノニム (23)
【氏名又は名称原語表記】Umicore S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue du Marais 31, B−1000 Brussels, Belgium
【出願人】(501031415)チンファ ユニバーシティ (3)
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Beijing,P.R.China
【Fターム(参考)】